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2024年10月22日 (火)

サマラ・ジョイ Samara Joy 「Portrait」

高い音楽性と斬新な創造性で圧倒的歌唱力をみせるが、私にとっては期待外れ

<Jazz>

Samara Joy 「Portrait」
Verve / International Version / 6801315 / 2024

Uccv1204

Samara Joy(vo)
Jason Charos(tp, flh)
David Mason(as, fl)
Kendric McCallister(ts)
Donavan Austin(tb)
Connor Rohrer(p)
Felix Moseholm(b)
Evan Sherman(ds)

Samarajoy_overview  24歳の若さで、サラ・ヴォーンを思わせる圧倒的な歌唱力で絶賛を集めるニューヨーク出身の女性ジャズ・ヴォーカリスト、サマラ・ジョイ (Samara Joy→)の2ndアルバムの登場である。前作『Linger Awhile』(2022)が好評で当然期待度の高いところだが、前作と異なるのは、メジャー・デビュー前から後見してきたマット・ピアソンではなく、トランペット奏者のブライアン・リンチBrian Lynchとサマラ自身が共同プロデュースしている事のようだ。更にツアー・バンドのメンバー等と録音したのも新展開の試みであったと。
 彼女は第65回グラミー賞ではメジャー・デビュー・アルバム『Linger Awhile』にて「最優秀新人賞」と「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」の2部門を受賞、翌年の第66回グラミー賞ではシングル『Tight』で「最優秀ジャズ・パフォーマンス賞」を受賞と、まさに久々の注目株。「カスタードのようなリッチな歌声」、「静謐で悠然な音楽」などの表現で絶賛の中にいる。

(Tracklist)

1.You Stepped Out Of A Dream
2.Reincarnation Of A Lovebird
3.Autumn Nocturne
4.Peace Of Mind/Dreams Come True
5.A Fool In Love (Is Called A Clown)
6.No More Blues
7.Now And Then (In Remembrance Of…)
8.Day By Day

 オーセンティックなジャズ・ヴォーカルと言われるぐらいに評価があり、2024年2月、多くの名盤がレコーディングされてきたヴァン・ゲルダー・スタジオにて3日間に渡って録音されたもので、「サマラの脇を固めるのはツアーを共にした新進気鋭の若手ジャズ・ミュージシャン7人。スタンダードとオリジナルが織り交ぜられた内容で、彼女の類まれなる歌唱力と表現力を全面に押し出した力作」と早くも好評。

Images1w  しかし、私自身は古典的ジャズ(例えばデキシーランド・ジャズ)などは好まないし、トランペット、トロンボーン、サックス等が合奏するスタイルはどうも好きでないというタイプのせいか、今回のこのゴージャスなスタイルがどうも敬遠したくなるのである。まあ今回のプロデューサーのブライアン・リンチ(→)はアフロ・キューバン系のトランペッターですから、そんな世界になって行くのでしょうが。彼女の歌唱力と迫力は納得のところにあるのだが、ジャズのジャンルは好みの問題で致し方のないところ。前作の方が圧倒的に好きである。

 例えばM7."Now And Then"のように、美しめのピアノのバックでラッパものは静かに後ろでゆったりと支えていてくれ、彼女のヴォーカルがバラード調に流れると、ほっとしつつ、聴き込むのである。このアルバムでは最も親近感を持った。M5."A Fool In Love"はやはりバラード調で、バックも小コンポ様の演奏でゆったりと聴ける。この程度なら私も対応可能だ。
 又M2."Reincarnation Of A Lovebird"などの歌い上げる様はやはり抜きんでてますね。入りはアカペラで実力をみせつけ、前半は説得力あるヴォーカルは魅力なのですが、後半のバックのなんとも古めかしく合奏で盛り上げるところは、私には願い下げなんです。
 M3."Autumn Nocturne"の新解釈の歌いこみは凄いし、そしてM4."Peace Of Mind"の前半の説得力ある歌も聴きこむと魅力はある。
 M6."No More Blues"は期待したのだが、ブルースの味は感じ取れなかった。

Samara_joy_inntne_12  アルバム全体としてどうも私の好むところではない。高い音楽性と斬新な創造性には敬意を払うし評価もする。そして彼女の全域を歌い上げる技量には感服するし、豪華・迫力という線は見事だが、哀愁・情緒・味わいといった線からは、もともと編曲の目的が異なるものなのであろう。いずれにしても進化の途中として、こんな方向にどんどん進んでゆくのだろうか、とすると、それも致し方ないが、私は寂しいところだ。
 まあ、好みのジャズ・スタイルの問題であって、このアルバムを絶賛する世界もあると思うし、高評価のポイントは多いと思うが、いずれ彼女の方向がどのように向かってゆくのかと言うことには、私の関心も高い。いずれにしても私はこの線だとお気に入りの世界に収めるのは無理なのである。

(評価)
□ 曲・編曲・歌   87/100
□ 録音       85/100

(試聴)
"You Stepped Out Of A Dream"

*
"Now and Then"



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