クレア・マーティン Claire Martin 「Almost in Your Arms」
充実感たっぷりのヴォーカルで説得力十分
<Jazz>
Claire Martin 「Almost in Your Arms」
Stant Records / Import / XSTUCD24062 / 2024
Claire Martin クレア・マーティン (vocal)
Martin Sjöstedt マッティン・ショーステット (piano) (maybe organ on 05, 09, 10?)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (double bass)
Daniel Fredriksson ダニエル・フレードリクソン (drums) (percussion on 04, 05)
guest musicians
Karl-Martin Almqvist カール=マッティン・アルムクヴィスト (tenor saxophone on 02, 06)
Joe Locke ジョー・ロック (vibraphone on 01, 07, 10)
Mark Jaimes マーク・ハイメス (guitar on 04, 10?, 11)
Nikki Iles ニッキ・アイルズ (accordion on 04)
Charlie Wood チャーリー・ウッド (vocal on 02) (voice≒narration on 07)
James McMillan ジェイムズ・マクミラン (trumpet, flugelhorn on 02, 05, 09, 10) (keyboard, programming on 02, 04, 05, 06, 07, 08, 09, 10, 11)
2024年1月24-26日 Quiet Money Studios (英国)録音
円熟味を増してきた英国のベテラン女性ジャズ・シンガー=クレア・マーティン(1967年英国サウス・ロンドンのウィンブルドン生まれ→)の、デンマークStunt Recordsからの4作目となるアルバムがリリースされた。本盤は、過去にも共演しているスウェーデンのマッティン・ショーステット(p下左)のピアノ・トリオ(ニクラス・フェーンクヴィスト (double bass下中央)、ダニエル・フレードリクソン (drums下右) )によりバックを固めている。
そして注目は、更に多くのゲスト・ミュージシャンが参加している。スウェーデンのサクソフォン奏者カール=マッティン・アルムクヴィスト、アメリカのヴァイブ奏者ジョー・ロック、イギリスのギタリスト、マーク・ハイメス、イギリスのここではアコーディオン演奏しているニッキ・アイルズなど、更にアメリカのオルガニスト&ピアニスト、チャーリー・ウッドはヴォーカルで参加。イギリスのジェイムズ・マクミランがトランペット、フリューゲルホルン、キーボード、プログラミングを担当しています。
そして今回の選曲は、ミュージシャンとプロデューサーを務めるジェイムズ・マクミランと共にクレア・マーティンが選曲し、ポピュラーとジャズの幅広いナンバーを取り上げている。 彼女は、2018年「ベスト・ヴォーカリスト」賞を含め、過去に英国ジャズ賞(British Jazz Awards)を計8回分受賞してきた英国最高のジャズ・シンガーの位置を獲得している。
(Tracklist)
01. I Feel A Song Coming On
02. This One's From The Heart
03. Almost In Your Arms
04. Apparently, I'm Fine*
05. Bitter With The Sweet
06. The Art Teacher
07. Train In The Desert
08. This House Is Empty Now
09. Water And Salt
10. September Song*
11. Do You Ever Wonder?
*印: マクミランと彼女共作とマクミランのオリジナル
曲は、私の知らない曲が主だが、彼女の幅広い知識を反映しているレパートリーだという。それは映画音楽(M1, M2, M3)や、キャロル・キング(M5)、ルーファス・ウェインライト(M6)やマーク・ウィンクラー(M7, M11)、タイ・ジェフリーズ(M9)らの曲で、クレアが高く評価するソングライターたちの作品だそうだ。その他、バート・バカラックとエルヴィス・コステロの名コンビの書いた(M8)、そしてマクミランとクレアの共作によるオリジナル(M4)や、マクミランの曲(M10)で、オープニングからクレア・マーティンの意欲の感ずる曲群が登場する。
私は、彼女の場合、バラード系の曲をしっとりと歌い上げるのが好きなので、まずM2."This One's From The Heart"のチャリー・ウッドとのデュオがいいですね。彼女のややハスキーであり魅力的な声が一層響いてくる。
M4."Apparently, I'm Fine"の語り聴かせる説得力が凄いし、M6."The Art Teacher"ピアノとサックスのバックに沿っての優しく歌い上げるムードも最高だ。
更に、M8."This House Is Empty Now"の歌い描く世界の物語性は、ジャズの良さを感じ取れて一流の証。
M10."September Song"のSeptemberのやや寂しさも見事。トランペットとの相性もいい。
M11."Do You Ever Wonder?" アルバム締めの曲。ベースの響きと共に、ギターの優しい調べ、そしてそれにも勝る優しい別れの歌声で、満足感がある。
バラード調以外でも、M2."This One's From The Heart"、M5."Bitter With The Sweet" のような軽快な曲も貫禄の歌いまわしが見事。とにかく変な話だが、どんな曲も安心して聴けるというのが素晴らしいのである。M9."Water And Salt"は、名曲"Fever"を想わせるところがある曲だが、これもジャジーな味付けが旨い。
このアルバムはバラード調の曲も多く、その間をリズムカルな曲でうまく繋ぐという構成が旨い。彼女の歌声は、自然体の中に潤いや温もりのある安定感に満ちていて、ハスキーと中音域の美声の味付けがうまく、しかも包容力を感じさせる。歌詞とメロディーを大切にした歌いっぷりは素晴らしく、優しい情緒豊かな節回しを聴かせてくれるが、スウィンギンな曲でのグルーヴ感もしっかりと聴かせるというジャズ・ヴォーカルの神髄をいっていると思う。これは彼女にとっても上位のアルバムと評価する。
(評価)
□ 選曲、編曲、歌 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
"The Art Teacher"
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