« エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」 | トップページ | アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」 »

2024年11月 5日 (火)

メロディ・ガルドー Melody Gardot 「THE ESSENTIAL」

15年以上のキャリアの中から、自身の選曲による初のベスト盤
・・・・チャーリー・ヘイデンも登場

<Jazz>
Melody Gardot 「THE ESSENTIAL」
<限定盤/White Colored Vinyl>
DECCA / International Version / LC-00171 / 2024

61shbwagmhl_ac_sl900w

 Melody Gardot : Vocals, Guitar, Piano

Images_20241101213701  私の押すジャズ・シンガーの3本の指に入るメロディー・ガルドー(米国、1985年生まれ →)のベスト盤の登場。2008年にデビュー以降過去の彼女のキャリアの14年間に及び、6枚のスタジオアルバム、リミックス、ライブ録音、未発表曲からのセレクションをフィーチャーした24曲により構成されている。その中身はスペシャルエディションと初登場曲5曲も含まれているが、彼女の過去のアルバムは一つの色でなく異なる性格であったものを、単なるヒット曲を並べたのでなく、彼女なりきの意思でここに一つの世界へとまとめ上げた点も評価したい。

 かって、交通事故後の後遺症での歩行障害があり、頭部強度打撲による健忘症と光・聴覚過敏症にての光に敏感な障害を持って2ndアルバム『My One And Only Thrill』を引っ提げて、2009年に来日して、サングラスとステックをついて歩く姿でライブ・ステージに登場し、日本という国に来れたことを子供のように喜んでいた姿をみ、又、丸の内ビルのMARUCUBEで、演奏終了後に私も彼女と話も少しできた昔を思い出すと、今日への進歩も計り知れないところにあり、こうして作り上げたベスト盤を実はお祝いしたい気持ちになる。そこで今回はCD盤でなくLP2枚組のアナログ盤を購入してここに楽しんでいるのである。

 こうしてみるとメロディー・ガルドー自身のオリジナル曲の多いのにも驚くが、それがSSWとしての芸術性における才能にも長けている事を表していると思うのである。彼女のその音楽的個性はが単純な分類に属すことが難しいアーティストであることは、作品群のそれぞれの異なった特徴が示している。ガルドーの音楽キャリアは、彼女の個人的な生き様と関連が濃い、19歳の時、事故に遭った後、彼女は音楽療法を回復のための重要なツールとして使用し、歌や作詞作曲を通じて話す方法と楽器の演奏もを身に着けた。こんな経過は、彼女が持っていた基本的な技能を取り戻すのに役立っただけでなく、繊細さを持って訴え感じる世界を特徴とする音楽というものの分野に足を入れるにも役立ったと思われる。

 

(Tracklist)
Disc 1
A1. Baby I’m A Fool
A2. If The Stars Were Mine
A3. C’Est Magnifique
A4. Morning Sun
A5. Sweet Memory
A6. Mira
A7. Over The Rainbow
B1. Worrisome Heart
B2. Our Love Is Easy
B3. Love Song Feat. Ibrahim Maalouf
B4. La Chanson des vieux amants
B5. Les Etoiles (Live)
B6. La Vie En Rose
Disc 2
C1. First Song *UNRELEASED*
C2. This Foolish Heart Could Love You (Paris Strings Session)
C3. Once I Was Loved
C4. Ain’t No Sunshine (Live In Paris)
C5. Moon River
D1. Your Heart Is As Black As Night
D2. If I Tell You I Love You
D3. Who Will Comfort Me
D4. Love Me Liker A River Does (Live In Paris)
D5. Bad News (Live)
D6. La Llorana (Live) *UNRELEASED*

Image_20241102123701  このベスト盤であるアルバムは、ガルドー自身の音楽の世界と生き様を描く目的に沿って造られていることが良く解る。私が彼女に最初に接した2nd『My One And Only Thrill』(2009)(さらに『Sunset In Blue』(2020)など、ラリー・クラインのプロデュース)からの曲"Baby I’m A Fool"からスタートするのも歓迎だ。それはかって十数年前に書いた彼女の評価である"包み込む暖かいヴォリュームのある低音、そして美しい高音にゆったりと流れていく歌声、哀愁と説得力のある語りにも通ずる唄の流れ"が最高なのだ。ストリングスをバックにJazzy not Jazzといったパターンであるが、ある意味優雅さもありながらミステリアスなところ良い。そしてアルバムのまま"If The Stars Were Mine"に続く。(右上は、2009年の来日時に、彼女にサインしていただいた記念アルバム・ジャケ)。

319501547_688270392651951aw


 素材の6枚のスタジオ・アルバムは、2006年の『Worrisome Heart』から、2022年のフィリップ・パウエルとのコラボで製作された『Entre eux deux』の最新作までだが、ライブものは『Live in Europe』(2017)など、そしてその他からの24曲は、まだまだその他に名曲があるが、まあかなり彼女の姿を描くには十分な選曲であった言えそうだ。
 難物は故郷であるフィラデルフィアに想いを馳せたソウルでありロックでもあるアルバム『Currency Man』(2015)であるが、これは私は落としてならない彼女の重要な世界であり、そこの"Preacherman"は印象的だが、"Bad News""Morning Sun"が採用されていて、取り敢えずホッとしているのである。
 一方、音楽伝統へ足を入れた『The Absence』(2012)は、アルゼンチン、ポルトガル、ブラジルなどの世界各国に探求が及んでいたし、又多国語をこなしいろいろな国の文化を深める事にも注目もあるが、ここに来てはフランスに自己の世界を発見したりとその世界の広さには圧倒される。
   又"Love Song"のハイレベルのジヤズの出来の素晴らしさは、やはりここでも取り上げられている。
 そこに来て、このベスト盤の驚きは、未発表曲今は亡きチャーリー・ヘイデンとの貴重な共演2曲が登場し、"First Song"は優しく美しく彼女の繊細なヴォーカルとヘイデンの歌い上げるがごときベースに酔える。更に締めくくりの伝統曲"La Llorona"(2019年マヨルカ島にて録音)などは彼女の感情表現の深さに感動的でもあったし、ヘイデンのベースが聴けてチェロも加わり感動だ。

 このベスト盤は、改めてメルディ・ガルドーの世界を見直す良いチャンスであり、又彼女の質の高さを改めて知らしめられるところにある。
   (参考:メロディ・ガルドー関係全記事はこちら →http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat36978461/index.html)

(評価)
□ 曲編集・歌  90/100
□ 録音     87/100

(試聴) "First Song" with Charlie Haden

 

|

« エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」 | トップページ | アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

メロディ・ガルドー」カテゴリの記事

女性ヴォーカル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」 | トップページ | アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」 »