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2025年4月17日 (木)

ヤニエル・マトス Mani Padme Trio 「The Flight-Voo」

創造的リズムで描く精神的な要素を表現して・・・・

<Jazz>

Mani Padme Trio 「The Flight-Voo」
(CD) Red Records / Import / RR1233492A / 2025

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Yaniel Matos (piano)
Sidiel Vieira (acoustic bass)
Ricardo Mosca (drums)

Recorded In THe Parede-Meia Studio In Sao Paulo, Brazil on 2 & 3 August 2015

 南米のバンドの「マニ・パドメ・トリオ」の作品。これはブラジルのドラマー、リカルド・モスカ(↓右)とキューバのピアニスト、ヤニエル・マトス(↓左)のラインナップに加え、今回はコントラバスのシディエル・ヴィエイラ(↓中央)が加わった。このトリオの音楽がこれまでの作品で追い求めてきたグルーヴをしっかりと保ちながら、さらに進化し、内容が豊かになったことを強調する3作目の作品である。私は初聴きのピアノ・トリオ。

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 録音は、2015年と10年前であるが、今回イタリアからのリリースで日本でも聴くことになったもの。
 ピアニストのヤニエル・マトスはブラジル人とキューバ人のハーフで、N.Y./サンパウロで活躍。モダン・キューバン・ジャズの表現力、奔放センス、 Herbie Hancock, Keith Jarretの洗練さ・・・これらを呑み込んだセンシティヴ・ラテン・ジャズを演ずると。ラテン・ピアニストならでは滑らかな指運びにトリッキーでいてロマンティックなコード・ワーク、そしてコンテンポラリーかつアーティスティックなアレンジで奏でられるCUBA & BRAZILIAN JAZZ コンテンポラリーの進化系の評価がある。彼のアルバムは過去に日本でもリリースされている。

 この南米のバンドは、12年間でわずか3枚のアルバムしか制作しておらず、それぞれの作品はリスナーに好評で批評家の評価も得ていると。2003年のデビュー作『Um DiaDe Chuva』は、創造的インスピレーションで溢れ固定観念を超越した音楽を生み出し、ジャズシーンの歓迎すべき変化として受け入れられ、その3年後、『Depois』は、ジャズへの独自のアプローチにおけるトリオのバイタリティを証明したと。今作はシディエル・ヴィエイラの加入で一段と安定感のある演奏になったと言われている。

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(Tracklist)

1. Partida (R. Mosca, S. Vieira, Y. Matos) 1:50
2. Gotas De Rocio (Y. Matos) 5:18
3. Cais (M. Nascimento, R. Bastos) 7:04
4. Compreensiva (S. Vieira) 8:41
5. Cimarron (Y. Matos) 4:54
6. Estrada Rural (S. Vieira) 5:54
7. El Vuelo (Y. Matos) 5:22
8. Farofa (Y. Matos) 5:00
9. Rosa Morena (D. Caymimi) 5:14

 ブラジルのみで発売されていたこのアルバムが、今回ヨーロッパで初めて発売され日本に入ってきた経過だが、なるほど印象として意外にもヨーロッパ的なコンテンポラリーの世界が感じられる。
 そしてこのトリオの名前も重要で「Om Mani Padme Hum、「宝石と蓮を身に着ける人」は、慈悲深い仏陀(Chenresig)の世界です。Omは身体の浄化を、Maは言語を、Niは心を、Padは感情を、Meは潜在意識を、Humは知恵を」を表しているということだ。この特定のマントラ(Mantraとは、サンスクリット語で「言葉」「音」「詠唱」を意味する言葉で、心を整える働きがある。宗教的には讃歌や祈りを象徴的に表現した短い言葉)に関連して名前を選択することは、精神的な要素にあることを示している。そんな世界から彼らの作り上げるアルバムに心を馳せなければいけないし、それに足る十分な響きを聴かせている。

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 M1."Partida "はオープニング宣言のようなもので、新加入のコントラバスを効かしたトリオメンバーの即興曲
 マトスの曲M2." Gotas De Rocio"(露のしずく)は、美しい繊細なピアノのメロディーが流れ心を奪われる
 M3."Cais " ピアノが神聖な世界を描き、中盤からクラシックの世界、後半はドラムスが響きジャズがが襲ってくる
 M4."Compreensiva "ピアノの流れと、ベースの響き、そしてドラムスとピアノの共鳴で広い世界への旅立ちの様だ
 M5." Cimarron "は荒々しいスタートであるが、一転して美しいリズムカルな流れに
 M8."Farofa"で初めてキューバ色が描かれて郷愁が支配、トリオは開放的な世界を描く。最後のM9." Rosa Morena"は、オリジナルではないが、ゆったりと重いベース、静かに心を一つにまとめる。

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 ブラジル、キューバなど我々が持つ華やかで開放的でリズムが展開するイメージとは全く異なった世界で、究極ヨーロッパ的な精神的な世界を求める美旋律の流れとともに、クラシック的な面を持ちながら創造的リズムでコンテンポラリーな面をしっかり描くところの近未来的ジャズ・アルバムに仕上がっている。マトスのピアノは繊細で美しい音色で自由にメロディーを作り出している。ヴィエラのベースはオーソドックスな響きで効果的なメロディーとリズムのサポートとともに曲のリードにも対応する。モスカは洗練されたダイナミックなリズミカルな推進力を位置付けている。
成程、10年前のものを敢えてヨーロッパから再リリースした意義が十分理解できたところであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    88/100

(試聴)

 

 

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