マテウス・パウカ MATEUSZ PALKA TRIO 「MELODIES.THE MAGIC MOUNTAIN」
クラシック的世界が築く美的抒情性の世界
<Jazz>
MATEUSZ PALKA TRIO 「 MELODIES.THE MAGIC MOUNTAIN」
Polskie Radio / Import / PRCD2431 / 2024.4
MATEUSZ PALKA (piano)
PIOTR POLUDNIAK (bass)
PATRYK DOBOSZ (drums)
Recording, Mixing and Mastering Engineer : Leszek Kaminski
Recorded at Polish Radio's S-3/S4-6 Studio, Warsaw, 2022.11.28,29
ちょっと場つなぎになるが、昨年のアルバムを取り上げる。ポーランドのピアノ・トリオのジャス・アルバムだが、現地では一昨年登場しているようだ。このアルバムは雑誌「ジャズ批評」の"ジャズ・オーディオ・ディスク大賞2024"に銅賞に輝いている。昨年春にタイミングを逸して購入できなかった代物だったが、私が今回聴いているのは今流行のストリーミング「Qobuz」によってである。おそらくCDは又輸入品があるかどうかと言うところだと思う。最近はそんな傾向の続く状況が多い。まあストリーミングもそれなりの音質で聴けるので悪くはないのだが、なんとなくLPやCDを手にとって聴く習慣は未だに抜けない私でちょっと空しいのである。
さて、このアルバムは1993年ポーランドのクラクフ出身の若きピアニスト、即興演奏家、作曲家、マテウシュ・パウカMATEUSZ PALKA(右上)が率いるピアノ・トリオ(ピョートル・ポウドニェク (bass,↓左)、パトリック・ドボシュ (drums,↓右))。パウカの音楽には印象派、後期ロマン派の精神が息づいていると言われており、ポーランド・ジャズのもっとも才能豊かなミュージシャンの一人として注目を集めているようだ。そしてポーランドの公共放送局『ポーランド放送(Polskie Radio/Polish Radio)』から音質にこだわったピアノトリオ作品として登場したもの。
そしてこれはこのトリオのセカンド・アルバムとなる。注目点は、トリオ・メンバーが、詩、小説、絵画、自然、クラシック音楽、ジャズ音楽など、あらゆるものからインスピレーションを得ていることと、又音質的には最高を追求し、ポーランドの名手 Leszek Kaminskiが担当しているという点にもある。
(Tracklist)
1.Czarodziejska Góra 3:39
2.Kora 4:46
3.a Paris 4:52
4.Introitus 4:24
5.Letter to Norah 3:33
6.Aria 3:52
7.Chiaroscuro 4:14
8.Solo 1:35
9.She Doesn’t Like Doing Homework 7:10
10.Leaving 5:44
一口に言うと、如何にも音楽の国ポーランドというところで、非常にクラシックからの流れを感ずる演奏である
オープニングのM1."Czarodziejska Góra"の冒頭から、ピアノのみの演奏で硬質のクリーンなピアノの高音が響き、録音の良さを訴えてくる。そしておもむろにベース、ドラムスのサポートでメロディーが流れ、非常に美的で詩的な世界に導かれる。
M2."Kora" 刺激のない語りにも近いピアノ、後半次第に盛り上がるも暴れることは無く非常に常識的範囲で流れる。
M3."A Paris" ゆったりとしたピアノの美しいメロディー、ベース、ドラムスも刺激は示さずそのサポートに納まる。
M4."Introitus" ちょっと異質な展開を見せる。初めてベースが主張しドラムスが助長しピアノが更に展開を高める。ちょっとコンテンポラリーさが出てきた。
M5."Letter to Norah" 再び静かに状況を語り、続く M6."Aria" 初めてベース・ソロでスタート、これも静であり、ピアノに誘導して一層静かな心の安定を響かせる
M7."Chiaroscuro" ここでもピアノが主体に絵画的美の世界が描かれる 。
M8."Solo" 再びベースのソロで深い語り、M9."She Doesn’t Like Doing Homework" は、最も長い7分をを超える曲。ここも日常の情景の描きで流れる印象。後半に入ってドラムスの展開が初めて意味深く訴えてくる。
M10."Leaving " ゆったりとそこに残ったものの美しさをピアノが訴えてくる。何かクラシックを聴き終わった気分にもなる。
しかし聴いてみて大きな感動したと言う世界ではない。日常の美しい流れが描かれているのか、聴くに全く抵抗なく美しさと抒情性も溢れていて快感ではある。こうした世界は刺激がなくむしろ寂しいとも思われるが、聴いていてこれはこれで納得させられるところにある。深遠な苦しさの世界でもなく、哲学的に瞑想に入る訳でもなく、どこか詩的な世界と言っても美しさに誘導されているところが、若きミュージシャンとしては意外な感じもするが、今後の展開に期待は十分持てるメロディーの美しさの世界の好盤だと思う、推奨盤だ。
(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)
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