イェスパー・サムセン 「Jasper Somesen Invites Anton Goudsmit Live!」
ギターとベースのデュオの描くジャズの新しい道が感じられる
<Jazz>
Jasper Somesen Invites Anton Goudsmit Live!
(CD)CHALLENGE RECORDS / Import / CR73592 / 2025
Jasper Somsen - Double bass
Anton Goudsmit - Guitar
録音:2024年2月22日、Loburg(ヴァーヘニンゲン、オランダ)
ここでも取上げたエンリコ・ピエラヌンツィとの共演で(Enrico Pieranunzi& Jasper Somsen 『Voyage in Time』Challenge Records /CR73533 / 2022)、私も意識しているようになったオランダの名ベーシスト、イェスパー・サムセン(下左)が、今回はアムステルダムを拠点に活動するギタリスト兼作曲家のアントン・グーズミット(下右)を招待して行ったライヴ・レコーディング・アルバムである。
このサムセンの主導で作られたアルバム『Voyage in Time』は、クラシックのニュアンスを旨く生かし、ピエラヌンツィのピアノと共に素晴らしいアルバムを造り上げていたので気になっていたのだが、ここにギターとのデュオということで、これまたいかなる世界を構築するのかと興味津々というところである。
これは2024年2月にヴァーヘニンゲンのライヴ・カフェ&バー「Loburg」で行われたライヴ録音で、美しい音色、スリリングな展開、軽妙な気まぐれと抑制された静けさなどと表現される評価があり、期待を倍増させられた。
イェスパー・サムセン(1973-)は、オランダのコントラバス奏者、作曲家、プロデューサー。ジャズとクラシックの両方のコントラバス奏者としての資格がある。ジャズミュージシャンとして彼の関心と専門分野には、クラシック、ポップ、ワールド、映画音楽、演劇作品へのクロスオーバーも含まれていて、国際的なジャズシーンで活躍するミュージシャンたちと共演してきている。そしてChallenge Recordsのアーティストであり、有名なスタジオプロデューサーでもある。又ポルトガルのジャズとファドのボーカリスト、マリア・メンデスと共にオランダのEDISON AWARD 2020(ジャズ/ワールドミュージック)を受賞し、又過去に4回、アメリカングラミー賞とラテングラミー賞の両方にノミネートされた。アルバム、ビデオ、映画音楽のスコアは50以上。 アーネム(オランダ)のArtEZ芸術大学で教育者を務め、故郷のワーヘニンゲン文化都市財団のゼネラル・ディレクターを務めている。
一方、ギタリストのアントン・グーズミット(1967-)は、自らのオリジナル曲ばかりでなく提示された音楽演奏でも評価が高く、非常に人気のあるプレーヤーである。2001年、NPSラジオから委嘱された彼の作曲シリーズを演奏するために、プロクトーンズPloctonesを結成し、非常に創造的で革新的なグループとして浮上し、グルーヴと即興を組み合わせ演奏する。また、ニュー・クール・コレクティブやエリック・ヴロイマンスのフギムンディ・トリオ(2008年と2010年のアメリカ・ツアー)でも国際的に演奏している。オランダのジャズシーンでの貢献と地位が認められ、2010年に憧れのボーイ・エドガー賞を受賞した。
(Tracklist)
1.Blue Anton 17 (A. Goudsmit/T. Monk)
2.Strange Meeting (B. Frisell)
3.Ernesto (A. Goudsmit)
4.Let’s Stay Together (A. Green/ W. Mitchell/A. Jackson)
5.Nuages (D. Reinhardt)
6.Bye-Ya (T. Monk)
7.Desberato (A. Goudsmit)
アルバム・タイトルからして、これはサムセンの企画でのグーズミット招請によるデュオと思われるが、グーズミットの曲が3曲演じられており、又印象はやはり全体にギターによるリードが目立っていて、それが又インパクトのある攻めの演奏を極めて安定感のある世界にありながらスリリングな印象を与えるという不思議なところにあって極めて印象深い。
又ベースの音が極めてソフトに心地よいのだが、ギターが鋭さを示す抑揚が見事でクリーンな音で迫ってくる。それもじっくりとした間とメロディーの関係が見事で、深くむ引き込むのが旨い。
スタートがM1."Blue Anton 17"がブルース・ギターで、その音・ムードでまずは好き者を引っ張り込む。中盤のベースの主導メロディーが優しく演ずるも、ギターが刺激を加えるところが面白い。
M2."Strange Meeting"でのギターのうねりには驚き。
M3."Ernesto"は感情の渦巻きを両者の回転性のかかわりによっての表現が面白い。
M5."Nuages" ここにまで手を伸ばし、宇宙感覚に誘導しこのアルバムの頂点に。
M6."Bye-Ya"では、かれらの余裕の場と化して遊び心も感じさせる。
M7.".Desberato "繊細にして、間を生かしての味に痺れる。
やっぱりベーシストと言うのは、ピアニストとかギタリストを泳がせるのが旨いですね。メロディーを流してリードしているつもりが、なんとなくベーシストの術中にはまっているような展開にも誘導されつつも、次第に本性を発揮させられてしまう。そんな印象でギターが、冒頭のブルース味で聴く者を引っ張り込んで、一般的ジャズ・ギターからロック寄りの音も出して楽しませてくれつつ、モダン・ギター・ジャスの一つの方向も感じさせ、又いつの間にか彼らの術中に聴く我々もはまってしまって、ジャズとベースのデュオの世界の面白さも感じ取れるのだ。
(評価)
□ 曲・編曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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