PINK FLOYD AT POMPEII-MCMLXXII (BLue-Ray) Sony Music / Jpn / SIXP-51 / 2025
Music : Pink floyd Recorded in the Roman Amphitheatre at Pompeii, 4-7 Oct. 1971
1971年10月、イタリアのポンペイ遺跡で収録されたピンク・フロイド伝説のライヴ・パフォーマンスの映像版は、1972年9月2日に英国映画祭で初公開されたもので、プログレッシブ・ロック・バンドとして日本に定着することとなる大きな切っ掛けとなったものだ。それはどうした経過かは今となっては解らないが、1973年3月17日にNHK総合テレビ「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されたことによる。日本では英国ロックとしてビートルズは知られていたが、一つの重大分野でもあった所謂プログレ御三家のピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエスといったところまでは、今の時代のような情報はなかなか浸透するまでには時間がかかった。このNHKの映像には日本のロック・ファンへの大きな刺激をもたらした。こんなロックがあるのかという若きものにとっての関心は大きかった。それでもこの時は既にピンク・フロイドは過去に7枚のアルバムをリリースしていて(1970年アルバム『ATOM HEART MOTHER原子心母』で日本でもプログレッシブ・ロック・バンドとして定着していた)、私にとっては、1968年の『神秘』以来、リアル・タイムに聴いてきたバンドであるが、なんと現在でもロック界最高のセールスを示したアルバムであり彼らの頂点であった『The Dark Side of The Moon 狂気』の8枚目がリリースされる年であったのだ。それまで日本でピンク・フロイドは知る人ぞ知るバンドにはなってはいたが、それは少なくとも来日した「箱根アフロディーテ」(このポンペイの録画の2ヶ月前)のライブが大きかったと言える経過であった。
いずれにしても、ある程度の年月が経つと必ずもち上がって来るのがこのポンペイ・ライブものだ。ライブものとはいっても観衆なしのポンペイ遺跡の“世界遺産”古代ローマ「円形闘技場」でのピンク・フロイドの無観客ライヴ・パフォーマンスものである。 そしてこの映像版は勿論現在も世界的にも"人気ロック・ライブもの"として君臨している。そして又今年2025年に新盤の登場となったもので、少なくとも最初からは主に5回の手が加えられて、40年以上の経過を経てきたモノで、それは以下のような経過である。 ① 1972年 60分もの Edinburgh Film Festival(映画祭)の公開映像版「Live at Pompeii」 ② 1974年 80分もの 劇場公開版「Live at Pompeii」(+studio映像) 1976年 初めてのパッケージ化 (ベーターマックス版「ピンク・フロイドの幻想」) 1981年 広く一般パッケージ化 (Leser Disc版, VHS版) ③ 2003年 ニューバージョン化「Live at POMPEII - The Director's Cut」 ④ 2016年 「The Early Years 1965-1972」収録「Live at Pompeii」5.1ch化 ⑤ 2025年 「PINK FLOYD AT POMPEII MCMLXXII」( 2025リミックス)
①は、モノラル録音盤であったが、②はアルバム『狂気』録音中のアビー・ロード・スタジオで撮影されたフッテージを追加して80分に拡大され劇場公開された。しかしなんと、前に触れたように、その前の年の1973年にNHK総合テレビで放映され、これは世界でも最も早い一般公開であり、それはこの最初の60分ものであったが、私にとってはなかなかそれまでは彼らの姿をじっくり見るという状況にもなく手段もなかったわけで、モノクロで興奮して見たのが懐かしい。彼らのヴェスヴィオ火山を四人で歩く姿が又印象的であった。そしてその後、誰もが自分の意思で見れるようになったのが1976年のビデオ・テープのベータマックス版、1980年代になって、VHS版とレーザーディスク版として市販されたことによる。そのLD版は今も持っている代物であり、私は①②もDVDに記録されたモノを持っていて、今も比較鑑賞できる。 そして③2003年には、新盤として「Live at POMPEII - The Director's Cut」が発売された。これは更に手が加えられスタートのイントロ映像には人工衛星の打ち上げシーンなどが加えられ、又CGなどや火山爆発の被害映像などが加えられワイドスクリーン化してのモノだった。 そして更に2016年には、ピンク・フロイドの箱物の記念版の「The Early Years 1965-1972」が発売され、そこに収録された「Live at Pompeii」のサウンドは、ジェイムズ・ガズリーによる5.1ch化が行われたものであった。私は取り敢えずここまででフロイドのポンペイものは完璧と思っていたのである。 こうしてこのように一定の年が経過すると何度も何度も手が加えられ、このポンペイ・ライブの映像・サウンドモノはリリースされてきたところであるが、ここに来て何と主として五回目の改良版「POMPEI」が発売されたわけである。
■2CD+BD収録曲 <CD1> 1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro 2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1 3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene 4.神秘 A Saucerful of Secrets 5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days 6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun 7.マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs 8.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2
<CD2> 1.ユージン、斧に気をつけろ Careful With that Axe, Eugene - Alternate Take 2.神秘 A Saucerful of Secrets - Unedited
<Blu-ray> Feature Film 1. ポンペイ・イントロ Pompeii Intro 2. エコーズ (Part 1) Echoes Part 1 3. 走り回って On The Run (studio footage) 4. ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene 5. 神秘 A Saucerful Of Secrets 6. アス・アンド・ゼム Us and Them (studio footage) 7. 吹けよ風、呼べよ嵐 One Of These Days 8. マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs 9. 狂人は心に Brain Damage (studio footage) 10. 太陽賛歌 Set The Controls For The Heart Of The Sun 11. エコーズ (Part 2) Echoes Part 2
Concert 1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro 2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1 3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene 4.神秘 A Saucerful of Secrets 5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days 6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun 7.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2
Audio Specs: 2.0 Uncompressed LPCM Stereo [96k/24b] 5.1 Dolby TrueHD Surround [96k/24b] Dolby Atmos [feature only] Feature film run time: 1:24:58 Concert run time: 1:02:45
ピンク・フロイドが世界的にプログレッシブ・ロックとして浸透したのは1970年のアルバム『ATOM HEART MOTHER 原子心母』からであり、これは彼らがむしろ収拾の付かない曲としてあきらめていたものであり、更に又彼らは分裂の危機にもあった為、リーダーであったロジャー・ウォーターズが友人の実験音楽家のロン・ギーシン(その時、ウォーターズの力を借りてアルバム『Music from"THE BODY"』をリリースしている)に預けて、ギーシンがチェロ奏者、10人の管楽器奏者、20人の合唱団を起用してロック交響楽組曲を造り上げたもので、圧倒的支持を得た。更にこのアルバムでは、ギルモアのギターが曲"Fat old sun"で開花し、ウォーターズは、曲"If"で彼の"不安"を初めてオープンにして、以降のピンク・フロイドの方向性をスタートさせたモノだ。これからピンク・フロイドの一つの道が開け、このポンペイ・ライブは1971年のアルバム『Meddle おせっかい』の製作に関わった世界であり、「Careful With That Axe, Eugene」というシド・バレットと決別後の常連・歴史的曲から「エコーズ」「神秘」「吹けよ風、呼べよ嵐」といった極めて重要な曲がフィーチャーされ、円形闘技場の昼と夜両方の姿を捉えた神秘性のあるビジュアルは、かれらの日常から超越した演奏が作り出す幻想性をさらに強調している。そんなピンク・フロイドの重要な時期のライブがポンペイなのである。これが次のロジャー・ウォーターズ主導の始まりであった最高作品『The Dark Side of The Moon 狂気』(1973年)に繋がってゆくモノであった。
David Gilmour 「MADISON SQUARE GARDEN 2024」 Madison Aquare Garden, New York, NY, USA 10th November 2024 DVD / Amity 795 / COLOUR NTSC Approx.164min / 2024
さてそのピンク・フロイドだが、結成当時からのロジャー・ウォーターズ(↓上)は、今年82歳になるが、現在はソロ・アーティストとして'23年までも大々的世界ツアー(『「THIS IS NOT A DRILL 」ツアー』)を敢行し、ピンク・フロイド時代の彼の曲やソロ時代になつての曲を展開して反戦・反核のアジテーションをも行って社会的・音楽的話題を残してる。そしてその上にアルバム『The Dark Side of The Moon Redux』をリリース、若き50年前から今の姿を見直している。又ニック・メイスン(↓下)も81歳で、2023年から今年にかけて新グループを結成し『 saucerful of secrets tour 』を展開、懐かしのピンク・フロイドの原点に近いアルバムからの曲群で好評を得ている。
Roger Waters「This is not a Drill Tour」
Nick Mason「saucerful of secrets tour」
一方メンバーの少々若いデヴィット・ギルモアは今年79歳になるところだが、昨年ソロアルバム『LUCK AND STRANGE(邂逅)』リリースし、その後のローマ・ロンドン・北米ツアー『LUCK AND STRANGE Tour』を行った。それがここで取り上げたこのブートで映像盤である。 私から見ると三者ともかってのピンク・フロイド時代の曲も多くを演じているが、全く印象の違う世界を醸し出しているのが面白い。まあ、それだけ個性があるということにもなって、それはそれ悪いことではない。
ギルモアの昨年9月上旬ローマから始まったツアーのファイナルとなる北米ツアーの11月10日のニューヨークは Madison Square Gardenに於けるライブの全記録だ。残念ながらプロショットではない。しかしマルチ・カメラ仕様となるハイクオリティー・オーディエンス映像にて2時間44分にわたりフル収録している。これはWEB上にアップされた映像を元に、海外ファンの複数のアングル映像を最新機器を用いてマルチ化しプロショットに近いモノに仕上げたもので、アリーナ至近距離からのカメラやステージ全体を体感できるスタンド席カメラ、さらに他にも多彩なアングルを納めている。そしておまけにイメージ映像も挿入されており、黒猫や時計、太陽など、曲のイメージに沿った映像が差し込まれ、時には参加メンバーの写真やギルモアのオフショットまで登場する結構凝った編集だ。音声パートもバラバラの映像からの音源をバランス調整も施し違和感なくライブ全編を再現している。まあオーディエンスによる映像モノとしてはなかなか上出来の部類に属するものだ。
David Gilmour 「LUCK AND STRANGE Tour」
(LUCK AND STRANGE Tour-Tracklist) (Disc 1) : 1. Guy Pratt Intro 2. 5 A.M. 3. Black Cat 4. Luck And Strange 5. Speak To Me 6. Breathe 7. Time 8. Breathe (reprise) 9. Fat Old Sun 10. Marooned 11. A Single Spark 12. Wish You Were Here 13. Band Introductions 14. Vita Brevis 15. Between Two Points 16. High Hopes (Disc 2) : 1. Sorrow 2. The Piper's Call 3. A Great Day For Freedom(『The Division Bell』) 4. In Any Tongue 5. Band Crew Introductions 6. The Great Gig In The Sky 7. A Boat Lies Waiting 8. MC 9. Coming Back To Life 10. MC (dedicated to Polly Samson) 11. Dark and Velvet Nights 12. Sings 13. Scattered 14.Comfortably Numb -Bonus Footage- 15. Luck and Strange
従って、ピンク・フロイドの1970年代の大成功で、ギルモアのギター・サウンドを愛する者も多く今日まで来ていて、今回のアルバムそしてツアーによるライブはそれなりに大成功している。そしてアルバム『飛翔』と『邂逅』からのソロと、フロイド・ナンバーがちょうど半々づつというバランスの良い構成で、ちなみに『邂逅』からはやはりタイトル・ナンバーを含み計9曲を披露(ここには、娘と息子の二人も参加)。フロイド・ナンバーとしては、今回は定番ばかりでなく、70年代の「Breathe (In The Air)」や、90年代の彼の時代になってのアルバム『対』よりの「A Great Day For Freedom」、「Marooned」などの4曲もセットインしているのが一応の注目点。加えてツアー・メンバーとして参加しているギルモアの娘ロマニー・ギルモアも、「Vita Brevis」と「Between Two Points」でボーカルやハープを披露したりと、所謂、ロック・コンセプトの流れる社会派ウォーターズのライブのような緊迫感と世界の暗部に迫るソロ・ツアーとは違い、若干お祭り的ビック・ショーに終わらせている。そしてやはり観衆は昔のピンク・フロイドが聴きたいので、79年のウォーターズの自伝とアーティストの狂気を描いた『ザ・ウォール』からの「 Comfortably Numb」などが一番盛り上がっていて、今回のアルバムからの曲は静かに聴いている。
こうして、ギルモアのライブ・ステージを観ていても、やはり全盛期からもう数十年経ったピンク・フロイドの人気は衰えず、ギルモア・ギター・ファンは現在も健在だ。しかし華々しい中にアメリカ的ミュージック・ショー因子が強いのは、ギルモアのアルバムにおける曲作りに大きな役割を果たしている女房のポリー・サムソンの影響が大きい事は理解しているが(テーマは「老化と死」にあると言うが)、しかしやはりロック愛好家として若干空しくなったのは、歳はとったとはいえ、かってのロックの根底に流れる時代を見つめ、社会というものに対してのコンセプトを持って、そして問題意識を持ち、訴えて、そして大衆に主張してゆく事の価値感が薄れていることは残念である。かってウォーターズが描いたアルバム『狂気』の曲「Money」、『炎』の「Welcome To The Machine」で描いた恐ろしい現実、レコードの売り上げやソーシャルメディアでの成功を求める業界やのアーティストの欲望によって音楽の姿がしばしば変わる時代に警告を発していたが、ギルモアはむしろウォーターズに言わせると"お人好し的人間"であるだけに、なんとなくそんな世界に流されていないだろうかと・・・もう80歳になろうとしている人間に言うことでもないが、ちょっと頭によぎるものがあるのだ。
Pink Floyd 「Animals 2018 Remix」 ①Sony Music Japan / JPN /SICP-6480 ②e-onkyo /Hi-Res flac 192kHz/24bit ③Blue-ray audio : 5.1 surround
(BLUE-RAY AUDIO) 2018 Remix - Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA 2018 Remix - 5.1 Surround: 24-bit/96kHz Uncompressed, dts-HD MA 1977 Original Stereo: 24-bit/192kHz Uncompressed, dts-HD MA
(Tracklist)
1.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part One) 2.Dogs 犬 3.Pigs 豚(Three Different Ones) 4.Sheep 羊 5.Pigs on the Wing 翼を持った豚(Part Two)
ピンク・フロイドの第4期スタートとなったロジャー・ウォーターズ主導で制作された1977年発売のコンセプトアルバム『Animals』の2018年リミックス盤が、なんだかんだとすったもんだしてようやくリリースされた。ジェームス・ガスリーによってオリジナルマスターテープからのリミックスだが、特に最近「Pink Floyd権」を持つD.ギルモアとその一派(敢えて一派というのは、まさしくロジャー・ウォーターズがいみじくも歌ったアルバム『炎』の曲"Welcome To The Machinようこそマシーンへ"で批判した音楽産業の営利独占主義そのものになってしまっているギルモアの女房で実業家のpolly samson主導のアメリカ流商業主義の組織である)のマーク・ブレイクMark Blake(英国ミュージック・ジャーナリスト)がこのリミックス盤の為に書いたライナー・ノーツを拒否するというみっともない独占欲の抵抗で、遅れに遅れてここに日の目を見た。・・・これに関しては既に詳しくここ記したところである(参照:"2021.7.4「Pink floyd 「Animals」(5.1Surround)」リリースか")
このアルバムの中身は長編"Dogs犬", "Pigs豚(Three differrent ones)" 、"sheep羊"3曲と、ウォーターズのソロ"Pigs on The Wing翼を持った豚 part1,part2"によって成り立っているが、一曲はウォーターズとギルモアの共作だが、その他は全てウォーターズの曲、そして作詞は全てウォーターズであり、"支配階級"(豚の社会構造連鎖の頂点に金と権力で太る存在)、"権力者"(ビジネスのボスたる犬)、"従順な羊"を描き社会の三構造に痛烈な批判をする(しかし、よく聴いてみると一般に言われるようなそんな単純でないところにウォーターズの意図は隠されている。社会の疎外と残酷さが暗くのしかかってくるし、羊の犬に対しての逆襲をも示唆している)、なんと冒頭と最後の曲"翼を持った豚"は、対照的に非常に優しい歌でウォーターズのロマンスの相手キャロライン・クリスティーに捧げているという芸達者だ。
今回は、当然私はリミックス盤として、「BLUE-RAY AUDIO」盤を手に入れたが、ここには「2018REMIX」の①5.1Surround 24bit/96kHz と、②Stereo 24bit/192KHz が収録されている。又e-onkyoからHi-Res192kHz/24bitもダウン・ロードして聴いているが、しかし今回のREMIXは、宣伝にあるほどの大きな変化はない。従って5.1Surroundがお勧めである。しかしこのSurroundも昔のもののような著名な音の分離はなく、比較的前面に音を集めていて聴きやすく作られている。そんな訳で、面白さという点では少々期待を裏切っていた。 目下80歳を目の前にしているウォーターズは北米ツアー「This is not a Drill」を展開して、相変わらず社会問題としての訴えを続けている。そしてそこには今回はこのアルバムからの"Sheep"を演じているのだ。彼は過去のどのツアーにおいてもこの『Animals』からは必ず一曲は演じ、特に"Bigs"によるトランプ前米国大統領批判はインパクトを残している。
今回のこのCDシングルには、一曲の新曲M1. "Hey Hey Rise Up"が収録されている。そしてこの曲にはA.クリヴニュクのインスタグラムの投稿から、キーウのソフィア広場で歌う彼の声を使用。彼の歌う「ああ、草原の赤きガマズミよ(英題:Oh, The Red Viburnum In The Meadow)」が使われている。従って彼とD.ギルモアらは一緒に録音していない。この曲は第1次世界大戦中に書かれたもので、ウクライナの抗議のフォーク・ソングであって、同国がロシアから侵攻されてからウクライナの人々を鼓舞すべく世界各地で歌われてきたもの。そしてピンク・フロイドのこの曲のタイトルは、この曲の歌詞「さあ、立ち上がろう、勝利の喜びを(HEY HEY RISE UP and rejoice)」からきているものである。 この曲のアートは、キューバ人芸術家のヨサン・レオン(Yosan Leon)の描いたウクライナの国花ヒマワリの絵が使われている。
R.ウォーターズは、D.ギルモアは結構お人好しなんだと言い、アルバム『The Final Cut』制作においても彼一人協力してくれたと感謝している。そしてR.ウォーターズの過去の大々的なライブにも顔出し出演を誘ってきた。しかし人間関係はそれを取り巻く人々によってゆがめられて行ってしまう事も多い。今のピンク・フロイド・サイドは商業的営利主義が旺盛で(特にギルモアの作品の歌詞を殆ど書いている出版業界から始まった商業感覚の旺盛な米国人の女房のポリー・サムソンPolly Samsonの影響が大きいようだ)、そんなことで、R.ウォーターズの反発も大きい。そしてその波に乗らざるを得なくなっているD.ギルモアも、被害者なのかもしれない。R.ウォーターズがかって曲"Welcome To The Machine"で訴えた現実がここにもあるようだ。
HAKONE Aphrodite, Hakone, Japan 7th Augast 1971 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (65:51)1. The Circle Game (Buffy Sainte-Marie) 2. Soundcheck / Announcement 3. Atom Heart Mother 4. Soundcheck 5. Green Is The Colour 6. Careful With That Axe, Eugene 7. Soundcheck 8. Echoes
Disc 2 (43:55) 1. Soundcheck 2. Set The Controls For The Heart Of The Sun 3. A Saucerful Of Secrets 4. Soundcheck 5. Cymbaline
演奏内容は"原子心母"からスタートするが、オートバイの効果音は冒頭に配しているが、勿論アルバムのようにチェロ、ブラスバンド、コーラス隊はない。実は彼らのライブは殆どこのタイプだが、ギルモアのギターやウォーターズのベースとライトのキーボードの旋律の流れなどの演奏の味があって、このほうが私は好きなのである。そして続くは、美しいウォーターズの曲"Green is The Colour"、これはシド・バレットの抜けた後、ギルモアをなんとか売り出そうとウォーターズが彼に歌わせたモノである。そしてウォーターズの絶叫曲"ユージン"もしっかり披露している。又この年11月にリリースされた『おせっかい』の"エコーズ"も24分の演奏でほぼ完成されている。 その他も改めて聴くと後半の"神秘"の演奏も19分で迫力満点、しかも打ち上げられた花火の音も収録されている。最後は"シンバライン"で聴衆の拍手の音頭と共に演奏され括っているのも感動もの。
そんな時に、ピンク・フロイドも例外でく影響を受け批判も浴びた。アルバム「狂気」(1973)、「炎」(1975)など、AOR(Adult-Oriented Rock, Album-Oriented Rock)化したロックとして否定的な流れに直面したのだ。ところが音楽の方向性に追究してやまないロジャー・ウォーターズの基本的思想に強烈な刺激を与えることになった。彼は当時ライブで盛んに演奏した曲"Raving And Drooling"、"You're Gotta Be Crazy"が、前作第9作「炎」に相応しくないと判断して温存していたものに手を加え(歌詞も変更した)、この第10作「アニマルズ」のアルバム作りに彼の根底にある社会批判を露骨に示し、逆にパンク、ニューウェーブに打って出ることを試み、ここにロジャーは3曲を追加して一つの回答を示したのであった。内容は、収録の5曲のうち、1曲のみロジャーとギルモアの共作で、それ以外は全てロジャーひとりによる作曲となり、全曲作詞となった。そして録音はかなりの難航があったが、彼の決断でかってのスタイルからむしろ敢えてシンプルな音作りに変更し挑戦した。しかし当時過去のものにとらわれるミュージック評論家からは、その変化を受け入れる事無く賛辞は得られなかった。一方、なんと新たな変化が功を奏してか、大規模なツアーはパンクを圧倒し更なる成功を成し遂げ、バンドにも過去以上の成功をもたらしたのだ。
こんなパンク・ニューウェーブに対してのピンク・フロイドの葛藤とロジャーの発想の流れを教えてくれた貴重なライナーを拒否するというギルモア側の暴挙によって、5.1サラウンド・リミックス版はそのリリースまでも風前の灯火となった。 そこまで露骨なやり方に対して、ロジャーとメイスンはアルバムのリリース実現のために、この貴重なライナーを付けることを断念したのである。もともとニック・メイスンのピンクフロイド回顧録「INSIDE OUT - A personal History of PINK FLOYD」(→)にも発行をさせないように働いたギルモア、これはギルモアとポリー・サムソンの自利主義の結果によるものである。しかし、メイスンはこの回顧録を断固発刊した。しかし今回は、又もやのライナーの拒否にあきれつつも、大人の対応としてロジャーと共にメイスンもやむを得ないと折れたのである。
Mark Blake: Liner Notes Pink Floyd: Animals Despite being recorded in London during the long, summer heatwave of 1976, Pink Floyd’s Animals remains a dark album. Its critique of capitalism and greed caught the prevailing mood in Britain: a time of industrial strife, economic turmoil, The Troubles in Northern Ireland, and the race riots of Notting Hill. The album was released on January 23rd 1977, but the roots of Pink Floyd’s tenth studio album go back earlier in the decade. Following the success of 1973’s The Dark Side Of The Moon, Pink Floyd pondered their next move. During a two-to-three week jam session in early 1974, the band worked on ideas for three new compositions. From these sessions the band developed Shine On You Crazy Diamond, (A passionate tribute to Syd Barrett, words by Roger Waters. Added by me, sorry couldn’t help it.) which became the centrepiece of Floyd’s next album, Wish You Were Here, and Raving And Drooling (composed by Roger Waters) and You Gotta Be Crazy written by Waters and David Gilmour. Raving And Drooling was a tale of violent social disorder, while You Gotta Be Crazy told the story of a soulless businessman clawing and cheating his way to the top. Both were performed live for the first time on the Floyd’s winter tour of 1974. They were both considered for the Wish You Were Here album, but Roger insisted that neither song was relevant to the overall idea, that “Wish You Were Here” was essentially about absence, and as neither song fitted his conception of the record’s overall theme, neither song should be included. The band eventually concurred. Scroll forward two years, and Roger had an idea for the next Pink Floyd album. He borrowed from George Orwell’s allegorical story, Animal Farm, in which pigs and other farmyard animals were reimagined anthropomorphically. Waters portrays the human race as three sub-species trapped in a violent, vicious cycle, with sheep serving despotic pigs and authoritarian dogs. You Gotta be Crazy and Raving And Drooling perfectly fitted his new concept. In the meantime, a year earlier, the group had bought a set of disused church buildings in Britannia Row, Islington, which they’d converted into a studio and storage facility. Prior to this every Pink Floyd studio release had been partly or wholly recorded at Abbey Road studios. Pink Floyd had also found a new recording engineer. Brian Humphries, an engineer from Pye studios, who they had met while recording the sound track for “More”, a movie directed by Barbet Schroeder. Brian had gone on to engineer Wish You Were Here at Abbey Road, and also helped them out on the road, so they had got to know him very well. Using their own studio marked a significant change in their working methods. There were setbacks and teething problems, but also a great sense of freedom. Following Roger’s instincts about the new songs paid off, the songs had an aggressive edge far removed from the luxuriant soundscapes on Wish You Were Here. It was a timely change of direction. At Britannia Row, he renamed Raving And Drooling, Sheep and Gotta Be Crazy became Dogs. The narrative was completed by the addition of two new Waters songs: Pigs (Three Different Ones) and Pigs On The Wing.
On Pigs (Three Different Ones), the lyrics namechecked Mary Whitehouse, the head of the National Viewers And Listeners Association. Whitehouse was an outspoken critic of sex and violence on British television and a topical target for Roger’s ire. The subject matter was bleak, but Nick Mason recalled lighter moments over dubbing songs with special effects and barnyard noises. While Sheep also made room for Roger’s blackly comic variation on Psalm 23: “He maketh me to hang on hooks in high places/ He converteth me to lamb cutlets…” The music and the performance mirrored the intensity of the lyrics. Keyboard player Richard Wright’s eerie-sounding synths and Hammond organ cranked up the unease. While David Gilmour’s shared lead vocal on Dogs and his guitar playing throughout Animals offered a striking counterpoint to Roger’s brutal lyrics. In contrast, Animals began and ended on an optimistic note. The verses of Pigs on The Wing were split in two and bookended the album. Roger’s lyrics and vocal performance of acoustic intro and outro (“You know that I care what happens to you/ And I know that you care for me too…”) suggested hope for humanity. The idea for Pink Floyd’s flying pig was also Roger’s. He had already commissioned its building as a stage device for the next tour. Storm Thorgerson and Aubrey Powell of the design company Hipgnosis, had produced a number of design ideas for an Animals sleeve and presented them to the band but none of the band, liked them, and when Roger added his disapproval someone said, ”Well why don’t you come up with something better then?” So he did, on the drive from his house in South London to Britannia Row, he regularly passed Battersea Power Station. He was drawn to the imposing brick building, and by the number four. Four in the band, four phallic chimneys, and if the power station were turned upside down then it resembled a table with four legs. He pursued his idea and had a maquette made, a small scale model of the eventual full scale inflatable pig. He then took photographs of Battersea Power station and created a photographic mock up of an album sleeve. The rest of the band loved it. Storm and Po, who had designed all of the previous Pink Floyd album covers, graciously offered to source photographers for the photo shoot, and did. On the first day of the photo shoot, the pig failed to inflate. On the second day, it broke free of its moorings and disappeared into a beautiful brooding sky, prompting a frantic call to the police and a halt to all flights in and out of Heathrow. The pig eventually crash-landed in a farmer’s field in Kent. The following day, the shoot went ahead without a hitch, great shots of pig in situ but no brooding sky. So Storm and Po stripped Day three Pig into Day two sky, bingo! History. Animals was a hit, reaching Number 2 in the UK and Number 3 in the US. Pink Floyd’s pig, Algie, made its live debut on their subsequent “In The Flesh” tour in 1977. At stadium shows in America, it was joined by another Water’s idea, an inflatable nuclear family comprising a mother, father and 2.5 children, surrounded by the spoils of a consumerist lifestyle: an inflatable Cadillac, oversized TV and refrigerator. Roger called it Electric Theatre. Both the album and the tour signposted the way to Pink Floyd’s next release, The Wall, and to Roger’s ever more ambitious ideas, both in terms of his music, narratives, politics and stage shows. But his themes and ideas explored on Animals have endured. More than 40 years on the album has been remixed in stereo and 5.1. In troubled times and an uncertain world, Animals is as timely and relevant now as it ever was. Mark Blake
(Mark Blake 紹介 - Wikipediaより)
Mark Blake is a British music journalist and author. His work has been published since 1989 in The Times and The Daily Telegraph, and the music magazines Q, Mojo, Classic Rock and Prog. In May 2017, he was hired as launch editor of Planet Rock magazine and is a contributing editor to the title.
Career Blake is the author of the 2007 music biography, Pigs Might Fly: The Inside Story of Pink Floyd,[2] published by Aurum Press (available under the title Comfortably Numb: The Inside Story of Pink Floyd in the United States); Stone Me: The Wit & Wisdom Of Keith Richards,[3] (Aurum Press, 2008); Is This The Real Life: The Untold Story of Queen (Aurum Press, 2010) and Pretend You're in a War: The Who and The Sixties, published by Aurum Press in September 2014. His next book, Bring It On Home: Peter Grant, The Story Of Rock's Greatest Manager is due for publication by Little Brown/Da Capo in the UK and US in 2018.
Blake is a former Assistant Editor of Q, and previously edited the books Dylan: Visions, Portraits and Back Pages and Punk: The Whole Story" (Dorling Kindersley, 2004 & 2005). He has also contributed to official projects for Pink Floyd, including Pink Floyd: Their Mortal Remains, The Who, Queen and the Jimi Hendrix estate. He is represented by Matthew Hamilton at The Hamilton Agency.
Books Blake, Mark (2008). Pigs Might Fly : The Inside Story of Pink Floyd. London: Aurum. Blake, Mark (2010). Is This the Real Life : The Untold Story of Queen. London: Aurum. Blake, Mark (2014). Pretend You're in a War : The Who & The Sixties. London: Aurum. Articles Blake, Mark (Dec 2014). "The birth & death of Pink Floyd : in the beginning". Mojo. 253 (6): 66–73.
PINK FLOYD 「LIVE THE BEST OF TOUR72 - DEFINITIVE EDITION」 Sigma / ITA-JPN / Sigma 249-1,2 /2020
Rainbow Theatre, Finsbury Park, London , UK 20th February 1972
(Tracklist)
<Disc1> (74分14秒) Breathe Variation Of "On The Run" Time Breathe Reprise Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part One Variation Of "The Grate Gig In The Sky" Part Two Money Us And Them Any Colour You Like Brain Damage Eclipse One of These Days Careful with That Axe, Eugene
<Disc-2> (66分49秒) Tuning Echoes A Sauceful Of Secrets Blues Set The Controls for The Heart Of The Sun
ここにフロイド・ファンにとっては、かけがいのない「72年レインボーシアターライブ」(右上)の決定版アルバムの出現をみた。 これは1972年の冒頭を飾る「UK TOUR '72」において、1年後にリリースした彼らの最も最高傑作のアルバム『The Dark Side of The Moon狂気』の全容を、初めてステージで公開した最も注目されるライブであった (これは前年71年の11月29日から12月10日までロンドンのDecca Studiosにてアルバムとライブの為にデモ・レコーディングを行い、'72になって1月17-19日リハーサルを行い、1月20日からUKツアーをスタートさせ、2月20日に打ち上げたもの)。 つまりその最終日の録音ものだ。 更に注目は、この直後3月には「JAPANESE TOUR」を(東京、大阪、京都、横浜、札幌)行ったのだっだ。しかし当然日本ではまだ知らざる曲の披露で戸惑ったというのも事実であった。
█ PINK FLOYD 「Live , THE BEST OF TOUR' 72」 (→) We Did It For You / UK / LP / 1973
ピンク・フロイドの多くの歴史的名ライブ録音盤の中でも、ファンにとって貴重で5本の指に数えられるものの一つが、注目の1972年2月20日のレインボーシアター公演を収録したこのコレクター盤(当初はLP、後に当然CD化された)である。これは翌年1973年リリースの世紀の名盤『The Dark Side Of The Moon 狂気』の原型が聴けるとして注目されたもの。以来この50年近く、このアルバムに関してはLP盤、CD盤、別テイク盤も含め、音質の改善がなされつつ現在解っているところでもなんと61枚が手を変え品を変えリリースされてきた。 非公式音源盤(Bootleg)であるが、この"親子ブタ"のジャケは、知る人ぞ知る忘れられない逸物だ ( 右のように、ジャケ表には何の文字も無いのが初期LP盤の特徴。アルバム『原子心母』の"牛"は傑作と言われているが、それにも匹敵する出来映え)。
私が以前から所持しているこの改良版CDは、既に音質の良さから究極のモノとされている「THE SWINGIN' PIG RECORDS」の"TSP-CD-049"盤 PINK FLOYD「LIVE」(1990年↓)であるが、これはこのライブの中の第一部での公式アルバム『The Dark Side of The MOON 狂気』(1973)に関する音源のみを収録したものだ。従ってその他のこの日の演奏曲は入っていない、それでも私は満足していたのだが・・・更に全容を求める声もあった。 更にこの名盤でも、フロイド・ファンなら良く聴くと解るとおり、編集では上手く繋いでいるのだが、曲("time"、"eclipse"など)の一部、音の欠落している部分が少々あったりしている。従ってこんな感動モノでありながら更にその上を求めるのがファン心。
そもそも、ピンク・フロイドは、ライブ演奏を繰り返しながら曲を完成させてゆくバンドであり、この名盤『The Dark Side of The MOON 狂気』がリリースされたのは1973年3月で、その内容はなんと一年以上前には、ここに聴けるが如く既にほぼ完成させライブ演奏していたのである。そんな中の1972年7月には映画音楽曲集のニューアルバム『OBSCURED BY CLOUDS 雲の影』がリリースし、『The Dark Side of The MOON 狂気』はその更に後のリリースであるから、このレインボーシアター公演は新曲を求めるファンにとっては注目の公演であり、それが又高音質で聴けるとなれば当時大騒ぎになったのも当然の話である。更に一方その直後の3月に「JAPANESE TOUR」(S席2800円→)が行われた歴史的年だ( 当時は日本では当然未発表アルバム『狂気』は知らない訳で、キャッチフレーズが "吹けよ風 呼べよ嵐"であった)。
私の関心もピンク・フロイドとなると、1983年の『THE FINAL CUT』までが興味の対象で、それ以降はオマケの部類であって、特に1970年代がほぼ最高潮の時であったと言っても良い。そんな事情から、現在もこの1972年のレインボーシアター公演は注目されるのである。 そうして50年近くを経過しようとしている今日においても、この『THE BEST OF TOUR 72』をなんとか完璧にと求める作業は続いていたのである。そしてここに出現したのが、究極の1972年レインボーシアター盤であるピンク・フロイド専門レーベルSigmaの「DEFINITIVE EDITION」である。これはこのレーベルの意地によって究極版を仕上げたと言って良い。
(三つある有名録音)
実はこの日のライブ音源というのは、雑多であるが、基本的にほぼ認められているものは三っあるのである。 ① Recorder 1 (デレクDerek・A氏録音) : 過去最高の音質を誇る。上に紹介した名ブート盤「Live , THE BEST OF TOUR' 72」だ。曲の一部に欠落あり。マスターテープは盗難にあって現存しない為修復不可。 ② Recorder 2 (スティーヴSteve・B氏録音) : 平均以上の音質を維持、曲間は欠落。近年音質の改善が行われ再び注目。 ③ Recorder 3 (ジョン・バクスターJohn Baxter氏録音) : 当日のショーの曲間も含め完全録音。しかしやや音質に難。 それぞれこの3つともこのように何らかの難点を抱えていて、特に高音質の①は、内容の完璧さに欠けているのが最も残念なところである。そこで、②がここに来て音質の改善が高度な技術でかなり為し得てきたと言うことで注目された。
この注目のSigmaの「DEFINITIVE EDITION」においては、まず上のTracklistにみるDisc1の「第一部」は、音源は最高音質の「① Recorder 1」をベースに仕上げている。冒頭は「③ Recorder 3」 を使って、ライブ開始までの臨場感と観衆の興奮を伝え、"Spek to me"は「③ Recorder 3」を使い、続く"Breathe"は最高音質の「① Recorder 1」が登場すると言った流れで、冒頭のロジャーのベースの迫力と続くギルモアのギターのメロディーのリアル感はスタジオ版と違って圧巻である。 "Time"においては、欠落のあった3:36-56の間は完全に補填されて完璧な姿となっている。"Eclipse"も後半知り切れ部分を「③Recorder 3」で補填して完璧な姿に。 チューニングの部分も「③Recorder 3」を使って臨場感ありだ。"Careful with That Axe, Eugene"も冒頭のロジャーの曲紹介などが入っていてライブそのものの形が出来ている。 後半のDisc2の「第二部」は、「①Recorder 1」の音源が無いため「②Recorder 2」をベースにして曲間、チューニングなどは「③Recorder 3」で補填している。ここでもおなじみの"Echoes" は尻切れから完全型となり、"Set The Controls for The Heart of The Sun"も、中間部の当時の彼らの得意のミステリアスな世界が浮き彫りになっている。終演部も十分当時のライブの様を聴かせてくれる。とにかくその補填の技術が違和感なくスムーズに移行させていて、このあたりの技術の高さも感ずるところだ。
1. Love Scene 2. Intermezzo 3. The Violence Sequence 4. Crumbling Land Pt.1 * 5. Sleep 6. Oenone Pt.1 7. Fingal's Cave 8. Red Queen Prelude 9. Crumbling Land Pt.2 * 10. Rain In The Country 11. Blues 12. Red Queen Theme 13. Oenone Pt.2 14. The Embryo 15. Heart Beat Pig Meat * 16. Oenone(Reprise) 17. Come In Number 51 Your Time Is Up *
*印 映画に採用された3曲(”Heart Beat, Pig Meat”(”若者の鼓動”),”Crumbling Land”(”崩れゆく大地”),”Come In Number 51, Your Time Is Up”(”51号の幻想”)) 又、採用されなかった曲の内 4曲:”Country ”Song",”Unknown Song",”Love Scene (Version 4)”,”Love Scene (Version 6)” は、後に 2枚組の 『 Zabriskie Point Original Motion Picture Soundtrack 』 に登場。 更にその他の曲の一部が、2016年のボックスセット「THE EARLY YEARS 1965-1972」に収録された。
M1-M3 美しいピアノのメロディーが流れる。M1はギターの別バージョンもある。M3.は"us and them"の原型が聴かれますね。 M5."Sleep" 静かな世界は出色。 このあたりまで、当時のライトのクラシック・ピアノを学んだキーボードの効果が甚大に出ている。 M6."Oenone" フロイド得意のサイケデリックな浮遊感たっぷり世界。後半には当時ウォータースがよく使ったドラムの響きと、ギルモアのギターによる音により盛り上がる。当時のフロイドの世界を十分に堪能出来る。これがM13,M16と登場する。 M7."Fingal's Cave"このサイケデリックにしてハード、そしてヘヴィ・メタルっぽい盛り上がりも凄い。 M8." Red Queen Prelude"アコギによるプレリュード M9." Crumbling Land Pt.2"初期のフロイドの音と歌声と英国ロックを実感する。 M10."Rain In The Country "ギターの調べが優しい。後半は当時のウォータース得意のベースのリズムに、おそらくギルモアのギターの二重録音が聴かせる。 M11."Blues"ギルモアの原点であるブルース・ギターそのものの展開だ。 M12."Red Queen Theme " 珍しい歌モノ、ギルモアが歌う。 M13."Oenone Pt.2 " は懐かしいピンク・フロイドの音がたっぷりと再現されてますね。 M14."The Embryo" ここに挿入されているところが、一つの遊びでもあり、考えようによっては、どのアルバムにも寄りどころの無かった名曲"The Embryo"の住処を見つけたかの如く居座っているところがニンマリです。これがフロイド・マニアにとっては原点だという曲。 M15." Heart Beat Pig Meat " このリズム感が聴きどころ、映画のオープニングに流れる。これは映画サウンド・トラックでしょうね。 M17." Come In Number 51 Your Time Is Up" 当時のピンク・フロイドの代表曲ウォーターズの奇異感たっぷりの"Careful With That Axe, Eugene"の世界で幕を閉じる。映画の最後の爆発のシーンをも思い出すところだ。
Pink Floyd 「PINK FLOYS LOS ANGELSE 1975 4TH NIGHT」 ~ MIKE MILLARD ORIGINAL MASTER TAPES Bootleg / Sigma 242 / 2020
Live at Los Angeles Memorial Sports Arena, Los Angeles, CA, USA 26th April 1975
Pink Floyd Venetta Fields : Backing vocals Dick Parry : Saxophone Cariena Williams : Backing vocals
とにかくこの何十年の間にもピンク・フロイドのブートは何百枚と出現している。あのボックス・セット「Early Years 1965-1972」「The Later Years (1987-2019)」のオフィシャル・リリースによって下火になるのかというと全くそうでは無い。むしろ火を付けているのかと思うほどである。それもピンク・フロイドそのものはディブ・ギルモアの手中に握られたまま、全くと言って活動無くむしろ潰されている存在だ。これが本来のロジャー・ウォーターズにまかせれば、今頃米国トランプや英国の低次元の騒ぎなど彼の手によって一蹴されているだろうと思うほどである。相変わらずのファンはこのバンドの世界に夢を託しているのである。
そんな時になんとあの彼らの絶頂期であった1975年の「FIRST NORTH AMERICAN TOUR」のライブものが、オフィシャルに使われるほどの名録音で知られるマイク・ミラードの手による良好録音ものの完全版が出現をみるに至ったのである。
そして1975年1月ようやく次のアルバム『炎』(1975 →)の作業に入る。しかしそこには『狂気』当時の彼らのクリエイティブなエネルギーのグループの姿はなかった。メイスンは個人的な問題から意欲は喪失していた("Shine on you Crazy Diamond","Wish You Were Here "の2曲はロジャー、デイブ、リックの三人、""Welcome to The Machine,"Have a Ciigar"の2曲はロジャーの作品である)。又ロジャー・ウォーターズの葛藤がそのままライブ(この「NORTH AMERICAN TOUR」)にも反映されていた。まさにライブとスタジオ録音が平行して行われメンバーも疲弊していた。更に慣れない4チャンネル録音で、技術陣も失敗の繰り返し。とにかくつまづきの連続で困難を極めたが、そこでロジャーは一つの開き直りで"その時の姿をそのままアルバムに"と言うことで自己納得し、ライブで二十数分の長い"Shine On"(後に"Shine On You Crazy Diamond")を2分割し、間にロジャーが以前から持っていた曲"Have a Cigar"を入れ、当時の音楽産業を批判したロジャー思想の"Welcome to the Machine"を入れ、更にロジャーのシドへの想いと当時の世情の暗雲の環境に対しての"詩"だけは出来ていたその"Wish you were here"は、ロジャーとギルモアが主として曲を付け仕上げた。しかしこの75年がバンド・メンバーの乖離の始まりであり、そんな中でのアルバム作りとなったのであるが・・・。 そして予定より半年も遅れて9月にこの『炎』のリリースにこぎ着けたのだが、今想うに『狂気』に勝るとも劣らない名作だ。
Disc 1 (63:33) 1. Mike Test 2. Intro. 3. Raving And Drooling 4. You Gotta Be Crazy 5. Shine On You Crazy Diamond Part 1-5 6. Have A Cigar 7. Shine On You Crazy Diamond Part 6-9
Disc 2 (56:54) The Dark Side Of The Moon 1. Speak To Me 2. Breathe 3. On The Run 4. Time 5. Breathe(Reprise) 6. The Great Gig In The Sky 7. Money 8. Us And Them 9. Any Colour You Like 10. Brain Damage 11. Eclipse
"Raving And Drooling "は、『アニマルズ』の"sheep"の原曲だが、スタートのベースのごり押しが凄いしギターのメタリックの演奏も特徴的だ。"You Gotta Be Crazy"は"dogs"の原曲でツインギターが響き渡る。 この難物の2曲もかなり完成に至っている。『狂気』全曲も特に"On the run"のアヴァンギャルドな攻めがアルバムを超えている。そして一方この後リリーされたアルバム『炎』の名曲"Shine on you Crazy Diamond"の完成に近づいた姿を聴き取れることが嬉しい。 又アンコールの"Echoes"にDick Parryのサックスが入っていて面白い。
いずれにしても、今にしてこの時代の良好禄音盤が完璧な姿で出現してくるというのは、実はギルモアというかポリー・サムソン支配下の現ピンク・フロイド・プロジェクトが、このロジャー・ウォーターズの葛藤の中からの重要な歴史的作品を産み、そして時代の変化の中でロックの占める位置を進化していった時期を無視している事に対して、大いに意義があると思うのである。そのことはピンク・フロイドの最も重要な『狂気』から『ザ・ウォール』までの四枚のアルバムに触れずに、ここを飛ばしてピンク・フロイド回顧と実績評価のボックス・セット「Early Years 1965-1972」「The Later Years (1987-2019)」を完成させたというナンセンスな実業家サムソンの作為が哀しいのである。
当時のライブものとしては、この後5月はスタジオ録音に没頭、そして再び6月から「NORTH AMERICAN TOUR」に入って、『HOLES IN THE SKY』(Hamilton,Canada 6/28/75=HIGHLAND HL097/098#PF3 下左 )、『CRAZY DIAMONDS』(7/18,75=TRIANGLE PYCD 059-2 下右)等のブートを聴いたのを懐かしく思う。
まあ回顧は別として、今年もピンク・フロイド絡みでは、デヴィッド・ギルモアの「飛翔ライブ=ライブ・アット・ポンペイCD+DVD発売」、そしてロジャー・ウォーターズのニュー・アルバム『is this the life we really want?』と「UA+THEM ライブ」は、もはや何をさておいてもロック界のトップニュースになってしまっているのだった。
まずギルモアは、結構なことに取り敢えずはギルモアらしいアルバム『飛翔』(Columbia/88875123262)をリリースして、ようやくピンク・フロイドという重責から逃れて自分を演じた。そしてその「飛翔ライブ」を欧州南北米ツアーを展開、その中でも欧州各国の遺跡や古城、宮殿などでの世界遺産公演を敢行したのであった。 一方ウォーターズは、なんとロック・アルバムとしては25年ぶりに『is this the life we really want?」』をリリースし、同時に「UA+THEM ライブ」南北米ツアーを半年に渡って展開、更には来年早々引き続いてオーストラリア、欧州ツアーを行う。
こんな流れから出てきたギルモアのライブ版 『ライブ・アット・ポンペイ』 (SonyMusic/SICP-31087)(→) もちろん彼の”「飛翔」ライブ”の一会場モノである。それもCDそしてDVDと映像絡みでリリースして、”ピンク・フロイドのその昔の無人ポンペイ遺跡円形闘技場の記念すべきライブ”の再現とばかりにアッピールしているのである。 いやはや頼もしいと言えば頼もしい、しかし如何せんギルモア女房のジャーナリストのポリー・サムソンの商業主義の展開そのもので、ギルモアの意志はあるのかないのか、派手なライト・ショーが会場いっぱいに展開、なんとお祭り騒ぎに終わってしまっている。もともとアルバム『飛翔』も、”アダムとイヴの旅立ち”という如何にもコンセプトというか思想があるのか無いのか、むしろ無いところがギルモアらしい。まあ女房の作詩頼りに彼女の発想にまかせての気軽さだ(それが良いとの見方もあるが)。 しかしそうは言っても、あのかってのピンク・フロイド時代の曲を織り交ぜてのギター・サウンドの魅力を引っさげての展開は、それはそれファンを酔わせてくれるのである。まさにギタリストの所謂「The Voice and Guitar of PINK FLOYD」なのである。 しかし、ウォーターズの去ったピンク・フロイドを数十年引きずってきた男が、あの昔のピンク・フロイドの円形スクリーンそままで、ピンク・フロイドは俺だと言わなければならないところに、未だピンク・フロイド頼りの姿そのままで、ちょっと哀しくなってしまうのである。
■ ロジャー・ウォーターズ『US + THEM ライブ』
一方ロジャー・ウォーターズは、70歳を過ぎた男にして、今日の混乱の時代が作らせたと誰もが信じて疑わないアルバム『is this the life we really want?」』(Sony Music/SICP-5425)(→)をリリースした。 それはNigel Godrichとの名コンビで、”現代プログレッシブ・ロックはこれだ”と圧巻のサウンドを展開。”ロック=ギター・サウンド”の既成概念を超越したダイナミックなピンク・フロイドから昇華したサウンドには感動すらある。 ”歪んだポピュリズムPopulism・ナショナリズムNationalismへの攻撃”と”新たな抵抗Resistのスタート”のコンセプトと相まって、ミュージック界に殴り込みをかけた。
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