フェイツ・ウォーニング Fates Warning 「LONG DAY GOOD NIGHT」
メタル色を失わずに、希望と不安の世界を描く
・・・・遂に13枚目のアルバム登場
<Progressive Metal Rock>
Fates Warning 「LONG DAY GOOD NIGHT」
Metal Blade / Import / MTB1573522 / 2020
レイ・アルダー (Ray Alder) - Vocals(1987年− )
ジム・マテオス (Jim Matheos) - Guitars (1982年− )
ジョーイ・ヴェラ (Joey Vera) - Bass (1996年− )
ボビー・ジャーゾンベク (Bobby Jarzombek) - Drums (2007年− )
(Support)
マイケル・アブドウ (Michael Abdow) - Guitar (2013年、2016年− )
久々の登場で、少々興奮気味だがプログレッシブ・メタルの元祖Fates Warningの13枚目のスタジオ・アルバムの登場だ。彼らは1984年デビューからオリジナル・メンバーはジム・マテオスのみであるがバンドとして35年以上のキャリアを誇る。そしてレイ・アルダー加入時のアルバム『NO EXIT』(1988)(下左)に惚れ込んで以来の付き合いは深くなった。一世を風靡したドリーム・シアター、クイーンズライクに影響を及ぼした彼らの作風は、あのプログレッシブ・ロックが崩壊した時に、ロック界の一時期を守ったとも言える。
ここで取上げるのも、2014年『Darkness in a Differrent Light』以来の7年ぶりだ。
その彼らの復活の第二弾、バンドの頭脳ジム・マテオス(G)とレイ・アルダー(Vo)によって造られたという13曲。かってのマーク・ゾンダー(Dr)の存在も大きかったと思われるプログレ色がここでどうなのかというのも興味があるが、それにつけてもアーマード・セイントのジョーイ・ヴェラ(b/1997年から)と元ライオットのボビー・ジャーゾンベク(dr/2007年から)という布陣も期待度を高める。
私的には残念であるのは、この復活前もそうであったが、かってドリーム・シアターのキーボード・ケビン・ムーアの加盟した頃(アルバム『Pleasant Shade Of Gray』(上中央)、『DISCONNECTED』(上右))のサウンドが消えていることである。実はこの頃が最も懐かしいのだが、このアルバムもキーボード・レスでのバンド・スタイルを貫いていて・・・現行バンドとしては、それは意識外のようだ。
(Tracklist)
1.The Destination Onward
2.Shuttered World
3.Alone We Walk
4.Now Comes the Rain
5.The Way Home
6.Under the Sun
7.Scars
8.Begin Again
9.When Snow Falls
10.Liar
11.Glass Houses
12.The Longest Shadow of the Day
13.The Last Song
いずれにしても、複雑なリズムを好むプログレッシブ・ロック、そしてそこに宿る内省的な精神性はやはり感じられ、しかもヘヴィメタルの圧倒的パワフルな演奏も十分存在していた。まさにプログレッシブ・テクニカル(パワー)・メタルだ。そして中期後期のややダークなイメージもあって、所謂フェイツ・ウォーニングというのはそのまま存在していたのは嬉しい。
しかしあの何処までも伸びるレイ(→)のハイトーンのヴォーカルは、やはり後退していたのはやむを得ないところである。それは『FWX』(2004)でもみられていたことだから。
このバンドは、2016年、プログレッシブ・メタルの色づけが決定的となった3rdアルバム『 Awaken the Guardian』(1986)の発売30周年を記念して、当時のメンバーが集結し同作の完全ライブを再現。これがリユニオンだった。
私の場合は、マーク・ゾンダーが加入したアルバム『Perfect Symmetry 』(1989)以降のプログレッシブ・ロックの要素がさらに強まった頃の技巧派のスタイルに魅力を感じてきていたのだが、そのあたりとの比較ではヘヴィメタル要素は、このアルバムでは寧ろ復活しているところもある。
M1."The Destination Onward"では静かな深遠なるスタート、そして重量感のあるドラムス、泣きに近いギター、情感のヴォーカル。中盤以降にハイテンポに転調、フェイツ・ウォーニングの特徴を十分示してくれている。
M2.M3.あたりは、ヘビーメメタル色をみせる。
M5."The Way Home"は、聴き所の曲。バラード・ヴォーカルで聴かせ、ジャジーなギター、更に変調してメリハリのあるロックへ。最後はヘビー・ロックの要素を入れて終わるというナイスな曲。
M6."Under The Sun"は珍しくストリングスの調べ、ゆったりとしたロック、そしてアコギ、エレキが心に響く。
M9."When Snow Falls"は、マテオス・レイ・コンビの曲だが、メンバー交代の色づけ曲、このアルバムではロック・アルバムとして良いムードで聴かせる。
私の一押しの曲はマテオス(→)の曲・歌詞の M12."The Longest Shadow of the Day"ですね。11分25秒の長大曲であるが、静かなギターで始まり、どちらかというとオルタネティブ・ジャズのパターン。ほぼインスト曲でスタート。中盤は次第に疾走パターンに変調し、再び静かなスローテンポの世界。そして6分あたり経過してレイの訴えるようなヴォーカル、やや泣きに近いギターと要素がたっぷり。次第にテンポは上がってロック世界を築く。プログレ・メタルの面目躍如。
最後のM13."The Last Song"は、美しく優しいアコギでスタート、レイのヴォーカルも語るような落ち着きがあり、絶叫は無く一つの信念を得たかの如き、どこか落ち着いた世界。昔、ロジャー・ウォーターズがよくやった手法ですね。
どちらかというとやや暗めの世界。曲は多彩なロックのパターンに支えられ、変調も加味して飽きさせない。時に襲ってくるヘビー・メタルなサウンドがアルバム全体のメリハリに貢献し、プログレッシブな要素をちらつかせながらの精神的な内面の世界に迫る曲構成。しかし曲の質感としてキーボード・レスが少々寂しく、プログレ色がやや後退している。
又、ツアーギタリストのMike Abdowがソロパートでゲスト出演して味付けに厚みをだし、M9."When Snow Falls"ではPORCUPINE TREEのGavin Harrison(Dr)がゲスト出演、これもちゃんと曲の色合いに変化と味わいを付けていて、単調さを回避している。
久々に、プログレ・メタルの世界が、高度化した演奏と曲の良さで堪能出来るアルバムに仕上がっている。
( 参考 Fates Warning : Discography)
『ナイト・オン・ブロッケン』 - Night on Bröcken (1984年)
『スペクター・ウィズイン』 - The Spectre Within (1985年)
『アウェイクン・ザ・ガーディアン』 - Awaken the Guardian (1986年)
『ノー・イグジット』 - No Exit (1988年)
『パーフェクト・シンメトリー』 - Perfect Symmetry (1989年)
『パラレルズ』 - Parallels (1991年)
『インサイド・アウト』 - Inside Out (1994年)
『プレザント・シェイド・オブ・グレイ』 - A Pleasant Shade of Gray (1997年)
『ディスコネクテッド』 - Disconnected (2000年)
『FWX』 - FWX (2004年)
『Darkness in a Different Light』 (2013年)
『セオリーズ・オヴ・フライト』 - Theories of Flight (2016年)
『ロングデイ・グッドナイト』- Long Day Good Night (2020年)
(評価)
□ 曲・演奏・ヴォーカル 88/100
□ 演奏 85/100
(視聴)
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