メロディ・ガルドー

2022年5月24日 (火)

メロディ・ガルドー Melody Gardot & Philippe Powell 「Entre eux deux」

深い詩と堅実なメロディーへのデュオでの挑戦

<Jazz>

Melody Gardot & Philippe Powell 「Entre eux deux」
universal music / JPN / UCCM-1268 / 2022

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Melody Gardot(vo)
Philippe Powell(piano, vo)

 私の期待のメロディ・ガルドーのニュー・アルバム、今回は今までの中では最も異色と言っていい作品。彼女は歌手・作曲家そしてギター、ピアノを演ずるが、ここではヴォーカルに専念して、かって私が入れ込んだブラジル音楽を代表するギタリスト/作曲家バーデン・パウエル、その息子のフィリップ・バーデン・パウエルのピアノとのデュオ作品だ。

 とにかく彼女の言葉からも「深い詩と堅実なメロディーという、同じものを愛し、評価する2人の間のダンスのようなものです。「Entre eux deux」(私たち二人の間)というタイトルは真実です。お互いを本当に掘り下げ合う2人のアーティストの世界がここに広がっている。聴くあなたも本当にそれを掘り起こすことを願っています(メロディ・ガルドー)」という事で、それに対してのフィリップの言葉は「ピアニストや作曲家が夢見る最も素晴らしい贈り物のようなもの。現代の偉大なアーティストの1人とデュオで作曲し演奏することは、私がこれまで経験した中で最も素晴らしい音楽体験でした。彼女(ガルドー)の愛、信頼、指導、私の中のベストを引き出してくれたこと、そしてこの美しいレコードを作るためのたゆまぬ努力に対して深く感謝しています」と答えている。かなり宣伝どおりのインティメイトな作品となっている。

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Dsc04047trw  嬉しいことに、私はこのピアニストのフィリップ・パウエルの父親のブラジルのギタリストのバーデン・パウエルのかってはファンであったということ(かっての愛聴盤LP「TEMPO FELIZ(バーデン・パウエルの芸術)」(SFX-7299 →)は、現在も健在でターンテーブルに乗るのである。尚この名盤昨年55年ぶりにCD化で再発)と、現在はメロディ・ガルドーのファンであって、その取り合わせというのが、私から見ると普通では考えられない奇遇であって興味津々なのである(前作『Sunset in The Blue』が、その始まりか)。

 全編ピアノとのデュオというアルバムは彼女にとって初の試みである。彼女の新曲を中心に、映画『男と女』でピエール・バルーが歌った「あらがえないもの」や、なんとフィリップの父バーデン・パウエルの名曲「プレリュードのサンバ」なども収録している。又彼女の詩の朗読(M.9)や、フィリップのソロピアノのインスト曲(M.6)も登場するという気合の入れようだ。

  又、メロディ・ガルドーがパリを拠点としていることから、昨年12月にパリで録音されている。更にフランス語の歌詞も登場し、フランス映画の名作「男と女」がイメージされ、パリのムードも随所にみられる。

Mmelody_cartiercelinew (Tracklist)

1. This foolish heart could love you
2. What of your eyes
3. Plus forte que nous あらがえないもの
4. A la Tour Eiffel
5. Fleurs de Dimanche
6. Samba em preludio プレリュードのサンバ
7. Perhaps you’ll wonder why
8. Recitativo
9. Ode to every man
10. Darling fare thee well

 このアルバムは、この二人が心から音楽(ジャズ)を愛し、そしてそれを極めようとしている姿がひしひしと伝わってくる。もともと二人とも作詞作曲に熱意があり、自己のアルバムにもそれを挿入し、そのアルバムの何たるかを訴えてきているところからも、その道を常に真摯に歩んでいるところが素晴らしい。

Gpw  今作も冒頭のM1."This foolish heart could love you"フィリップの曲にガルドーが詩をつけており、このアルバムでは共作が5曲に上る。フィリッブも女性ヴォーカルのサポート・ピアノとしての存在でなく、自己のアルバムとしてもガルドーのヴォーカルを有効に掴もうとしていることが良く解る。このバラード曲でその点ははっきり見える。彼女もガルドー節が満開であり、説得力たっぷりに迫ってくるし、ピアノも一つの世界を描こうと演ずる。
 M2."What of your eyes"は彼女の曲だが、このアルバムの世界をしっとりと主張する。どこかパリ・ムードが感じられるところが彼女の最近の拠り所を描いている。そこにM3." Plus forte que nous あらがえないもの"は、懐かしの映画「男と女」が登場してフランス語の歌声が響き、フィリップの歌も登場し大人の愛の物語が浮かび上がる。 
 M4."A la Tour Eiffel" こうしてエッフェル塔も登場して、パリの物語とジャズの結合が面白い。
 M5." Fleurs de Dimanche" これは曲も歌詞も完全に共作で、彼女の囁くごとくのフランス語ヴォーカルがしっとり訴えてくるも、もう昔見たフランス映画のムードが満開だ。
 M6."Samba em preludio "は、フィリップの父バーデン・パウエルの曲。ガルドーとのデュエットは、ここまでしっとりと仕上げたところは、相当の心を寄せたことが解る。
 M7."Perhaps you’ll wonder why" ここにきて英語歌詞となり、彼女がこのアルバムでは、しっとりとしながらも最も歌い上げる曲。情感が伝わってくる。
 M8."Recitativo"は、フィリップのピアノのみのソロ・インスト曲だ。彼のこのアルバムへの意欲の証、美しいピアノ旋律が響く。
 M9."Ode to every man" 余韻を残すピアノの音に、彼女の世界に引っ張り込まれるポエトリー・リーディングだ。
 M10."Darling fare thee well" ガルドーの作詞作曲、このアルバムの締めにふさわしい人間愛の表現だ。

 いっやー-、ほんとに心憎いアルバムを造ってくれたものだ。久々の人間への愛と音楽への愛が相乗効果してしっとりと迫ってくる。こんなにフィリップ・パウエルとをもって成し遂げるとは、彼女自身が当初から描いていたのであろうか、お互いが演ずる中で相乗効果で思いがけないところまで広がっていったというのが偽らざるところではないのか。彼女の社会における人間としての存在に対しての思い入れの深さがアルバム『CURRENCY of MAN ~出会いの記憶~』(2015...あれから7年にもなるんですね)で爆発して以来、次第に深く広いところに進行していることが伺えた最新アルバムであった。芸術的評価も十分感じ取れた作品だ。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  90/100
□ 録音      88/100

(試聴)

"This foolish heart could love you"

*

"Perhaps you’ll wonder why"

*

 

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2020年10月23日 (金)

メロディ・ガルドーのニュー・アルバム登場 Melody Gardot 「Sunset in the Blue」

原点回帰 : ガルドー節に更なる充実感が、そして相変わらずの陰影濃いブルーの世界が・・・・

<Jazz>

Melody Gardot 「Sunset in the Blue」
DECCA(universal music) / JPN / UCCM-1260 / 2020

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Credits

 待ちに待ったメロディ・ガルドーのニュー・アルバムだ。2015年の彼女の心をぶつけた意欲作『カレンシー・オブ・マン〜出逢いの記憶〜』以来 実に5年振りとなる。恐らくあそこまで意欲的に社会に立ち向かって訴えた後であるので、しばらくは静かな時を迎えるだろう事は解っていたが、この5年間は少々長かった。そしておそらく次の作品は原点に返っての最も世界に受け入れられた2ndアルバム『マイ・オンリー・スリル』の続編と言えるものであろうと予想していたが、やはりその通りのアルバムの登場となった。
 実際、プロデューサーはグラミー賞受賞のラリー・クライン、そしてアレンジを作曲家のヴィンス・メンドーサが担当するという2ndアルバムのコンビである。

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 近作のライブ・アルバムを見ても、かって彼女が来日して私が彼女と話することが出来た2009年のサングラスにステッキという交通事故後の体調回復期と違って、全力投球できる体力が戻ってきているため、作品に内容の変化があるかどうかも実は興味津々でこのアルバムを聴くのである。それはボーナス曲を除いての12曲中なんと8曲は彼女のオリジナル曲で占められている為で、それによりここには完全と言ってもいい彼女の意志が込められているだろうと思うからである。

 

(Tracklist)

01 イフ・ユー・ラヴ・ミー(Dadi Carvalho,Melody Gardot)
02 セ・マニフィーク(Dadi Carvalho,Melody Gardot,Pierre Aderne)
03 ゼア・ホエア・ヒー・リヴズ・イン・ミー(Melody Gardot,Phillipe Baden Powell,Pierre Aderne)
04 ラヴ・ソング(Lesley Duncan)
05 ユー・ウォント・フォーゲット・ミー(Fred Speilmann,Kermit Goell)
06 サンセット・イン・ザ・ブルー(Jesse Harris,Melody Gardot)
07 ウン・ベイジュ(Melody Gardot)
08 ニンゲイム・ニンゲイム(Melody Gardot)
09 フロム・パリ・ウィズ・ラヴ(Melody Gardot,Pierre Aderne)
10 アヴェ・マリア(Melody Gardot,Reese Richardson)
11 ムーン・リヴァー(Johnny Mercer,Henry Mancini)
12 アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー(Jule Styne,Sammy Cahn)
13 懐かしき恋人たちの歌 (日本盤のみのボーナス・トラック)(Gerard Emile Jouannest,Jacques Brel)
14 リトル・サムシング (feat. スティング)(Melody Gardot,Antoine Chatenet, Dominic Miller,Hilda Stenmalm,Conor Blake,Nora Abakar,Sting)

 ほぼ全曲という9曲にストリングス・オーケストラがバックを支えている。そして例の如く彼女のヴォーカルをトランペット、サックス、ギター、ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションという演奏陣が曲により色を添えてサポートする。 
 冒頭のM1."If you love me"から、情緒たっぷりのガルドー節が聴かれ、おおこれがあの『マイ・オンリー・スリル』の当時の彼女の世界の再現かと感ずる処に浸れる。
 そして得意のブラジル世界の曲M2."C'est Magnifique"ここでは珍しく男性ヴォーカルとのデュオで、このアルバムに色を添える。それに加えてしかもボーナス曲として、これは日本のみならず世界盤につけられたもので、スティングとのデュオ曲M14."Little Something"(メルドーのオリジナル曲)が登場する。実はこれらは彼女のこのアルバムに変化をもたらす役割をなしているのだ。この作品はアルバム・タイトル曲の彼女の曲M6."Sunset in the Blue"を中心としたところにあって、それは決してブラジル色のサンバ調の明るさのある世界ではなく、究極は"ブルー"であることが、このアルバムを通して聴くと解ってくる (実はこのアルバム・ジャケが彼女の過去のアルバムと比較しても異色である。このブルーの世界は何かと思ったが、こうして聴いてみると理解できるのだ)。そんなことからもスティングとのボーナス曲は、このアルバムのムードとは一致しないながらも、その影の部分を補う効果があって、聴く者にとって面白いボーナス曲効果を上げているのであった。

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 米国フィラデルフィア生れ(1985年)の彼女は、母親がフランス人だったことにより、フランス語は得意、そして彼女の気質からパリに現在住んでいて、M9."From Paris with Love"が、なかなかそんなヨーロッパのムードもあって聴き応え十分。
 又注目は M5."You won't forget me "で、例の如くストリングス・オーケストラに乗って、そこにピアノ、ギターとサックスのバックに支えられてのガルドーのしっとりとしたヴォーカルがたまらなく良いですね。
 ポピュラーなM11."Moon River"にほっとしつつ・・・・、
 M12."I Fall In Love Too Easily"がギターの静かな音と彼女のしっとりヴォーカルが描く恋に落ちやすい女心の世界が全てであるが如くこのアルバムを閉めるのである。
 日本盤ボーナス曲には、シャンソン名曲"懐かしき恋人たちの歌"の登場で楽しませてくれるのも余興として受け入れよう。

 この秋になって、季節と合致して久々のメルドー・ガルドー世界の良さに浸ることが出来るアルバムの登場で、今年も私にとってのジャズ・ヴォーカル界に良い色をつけていただいたと思いつつ聴いたところである。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  95/100
□ 録音      90/100

(視聴)

*

Melody Gardot "Little Something" with Sting

*

Melody gardot "C'est Magnifique"feat. Antonio Zambujo

 

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2018年2月 9日 (金)

メロディ・ガルドーMelody Gardotのライブ・アルバム「Live in Europe」

心の琴線にふれる歌心のライブ・ベスト盤

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★ライブで大切なものはただ一つ。・・・それはハートです。このアルバムには私のハートとツアー中に応援してくださった皆様の愛情が込められています。私にとって大切な思い出溢れたギフトであると同時に、リスナーの皆様にも贈りたいギフトでもあります。このアルバムは長い「ありがとう」のメッセージです。感謝しています。・・・・メロディ・ガルドー

(上記はメロディ・ガルドーのこのアルバムにおけるメッセージです。そう言えば2009年の彼女の私にくれたサインにも、”Arigato !”と記してあった)

<Jazz>
Melody Gardot 「Live in Europe」
Universal Music / JPN / UCCM-1243 / 2018


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Vocals , Guitar and Piano : Melody Gardot
Trumpet: Shareef Clayton,  Sax: Irwin Hall,  Organ: Devin Greewood,  Guitar: Mitchell Long,  Bass: Edwin Livingston,  Drums: Chuck Staab


 いやはや頑張っているジャケですね。このヌードの女性はメロディ・ガルドーなんでしょうか?、ギターを弾き語りしていますね。何処かに今回のアルバムを作るに当たって彼女は自らヌードを披露することを選んだとか書いてあったような気がしますが・・・・・。と、すれば気合いが入ってますね。

 まあそれはそれとして、このアルバムはメロディの精力的な2012年から2016年までに行われた世界ライブからのヨーロッパにおけるもの。彼女自身が厳選したものを納めている。2枚組という豪華版に仕上がった。デビュー10周年記念としての意味もあるようだ。

Mg 私は彼女に直接話をしたり生演奏に接したのは、2009年の話。2ndアルバム・リリース時でした。右はその時の彼女のサイン。あれ以来ファンと言えばファンである。
  もともと彼女はライブへの力の入れ様は高い。従ってアルバムの出来とライブの出来には、そのパターンにかなりの違いがあり、それぞれ興味深いのである。ライブではよく編曲も行っているし、そんな意味でもライフ盤の価値は結構高い。又彼女のライブ盤への力の入れ様も解るのである。

 今回は初のCDライブ・アルバム盤となっているが、既にライブ映像オフィシャル版は、一昨年ここでも取りあげたようにリリースされている( 『Live At Olympia Paris』(EVB335359/2016))。
  又、ブート・ライブ・映像版『DONOSTI 2012』 (MegaVision, Live at SPAIN)もあった。

(Tracklist)
Disc 1
1.  Our Love Is Easy - Live in Paris / 2012 *
2.  Baby I'm A Fool - Live in Vienna / 2013 *
3.  The Rain - Live in Bergen / 2013 *
4.  Deep Within The Corners Of My Mind - Live in Amsterdam / 2012 *
5.  So Long - Live in Frankfurt / 2012 #
6.  My One and Only Thrill - Live in Barcelona / 2012 *
7.  Lisboa - Live in Lisbon / 2015 #
8.  Over The Rainbow - Live in Zurich / 2013 *

Disc 2
1.  (Monologue) Special Spot - Live in London / 2016
2.  Baby I'm A Fool - Live in London / 2016 *
3.  Les Etoiles - Live in London / 2016  *
4.  Goodbye - Live in Utrecht / 2016 #
5.   (Monologue) Tchao Baby - Live in Utrecht / 2016
6.  March For Mingus - Live in Utrecht / 2016 %
7.  Bad News - Live in Utrecht / 2016 %
8.  Who Will Comfort Me - Live in Amsterdam / 2015 *
9.   Morning Sun - Live in Paris / 2015 %

 *印 アルバム『MY ONE AND ONLY THRILL』より
 #印  アルバム『ABSENCE』より
 %印  アルバム『CURRENCY of MAN~出逢いの記憶~』より

 さてこのライブ盤の内容であるが、成る程、上のようにヒット曲満載の作品に仕上がっていると同時に、見事な編曲が施されているものが選ばれている。そしてファンから愛される代表曲 ”Baby I'm A Fool ”(2013年のウィーン、2016年のロンドン録音)、”My One and Only Thrill” (2012年のバルセロナ録音)、”Who Will Comfort Me”(2015年アムステルダム録音)など聴き応え十分。更に”Les Etoiles ”(2016年ロンドン録音)、”March For Mingus” (2016年ユトレヒト録音)なども収録されている。とにかくオリジナル・アルバム(スタジオ録音盤)を持っていても、このライブ盤は全く別のアルバムとして聴くに十分だ。
  ”The Rain”(2013年ベルゲン録音)は、11分以上に及ぶ曲と化して、器用なIrwin Hallのサックスなどの演奏の別仕立てによっての編曲はお見事。
 又 ”Lisboa” (  Lisbon / 2015) ”Over The Rainbow” ( Zurich / 2013 )の2曲などは、会場との一体感を表現しているなど聴き手を飽きさせない。

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 もともと歌唱能力が高く、ギターやピアノの演奏能力も長けているメロディのライブは聴くものにとっては魅力十分で有り、こうしたミュージャンは貴重である。
 彼女の交通事故による重体などの不幸な経歴を乗り越えての活動に喝采を浴びせるのであるが、それはむしろ彼女自身が、自己の作曲や演奏活動の力にしているところが共感を呼ぶところである。
 スタジオ最近作は、2015年の『CURRENCY of MAN~出逢いの記憶~』(UCCU-1468)であったが、勿論女性としての心の流れを描くと同時に、現在の社会に目を向けて、ジャズからプログレッシブ・ロックっぽい技法でコンセプト世界も描いてみせるところは稀有な存在である。目下は当然スタジオ次作にも期待をしているところだ。

(視聴)

 

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2016年5月12日 (木)

メロディ・ガルドーMelody Gardot のライブ映像版「Live At Olympia Paris」

待望の「"CURRENCY of Man" Tour」の映像版Blu-rayで登場!
~見よこの「メロディ・ガルドー・ジャズ・ワールド」の超越性~

        <Jazz、Rock、 Soul、 Root's Music>
         
 Melody Gardot 「Live At Olympia Paris」
            Decca Records/Eagle Vision  /  EVB335359 / 2016   

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Recorded at L'Olympia Bruno Coquatrix on Oct. 26&27,2015
(Tracklist)
1.Don't Misunderstand  2.Same To You   3. She Don t Know    4.Bad News   5.March For Mingus    6.Morning Sun    7.Les Etoiles    8.Baby I'm A Fool    9.Who Will Comfort Me    10.Preacherman     11.It Gonna Come

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 ようやく登場しました!。私に言わせれば2015年ジャズ・アルバム大賞候補の最右翼のメロディ・ガルドーの「CURRENCY of MAN」、そのリリース後の彼女のツアーの映像モノ。これがジャズでなきゃ何なんでしょう?。これがロックでなければ何なんでしょう?(フュージョン?、ソウル?)、はっきり言えば「Root's Musicの発展型」・・・こうゆうのに評論家は弱いんですね。・・・ある「ジャズ雑誌」の2015年総括には名前も出てきません。
 
 つまり評論家に言わせると”ジャズという昔ながらの型”にはまっていなければジャズとしての評価が出来ないということなんでしょう。時代の動きと共に変化があってジャズなんですよ(例えば今時の”Jazzy not Jazz”って何なんでしょう?)。だから評論家というのは・・・ちょっとね(?)。後になって言い訳はして欲しくないですね。
 ところでこれって新しいの?、そうじゃないでしょう。その道の解ったようなことを言っている人が、評価が出来ないだけのものですよ。(わっはっは、これは私のような素人が言うのだけのものですけどね)

P5111755w しかしこのライブは凄いですね。アルバムよりは何歩も発展している。メロディ・ガルドーの凄いところはアルバムに停滞していないところです。
 これを観ずに、講釈は垂れて欲しくない。彼女の音楽というモノの極みを知って欲しい。いっや~~、私は感動しました。

(Tour Members)
 ギター、ピアノ、ヴォーカルの彼女を支えるのは、ギター、ベース、ドラムス、アルト・サックス、テナー・サックス、トランペット、キー・ボードの7人(↓)。
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  収録Listを見て解るように、殆どアルバム「CURRENCY of MAN」からの曲です。
 ところが” Who Will Comfort Me ”も登場するが、この編曲の極みは凄い。もともと過去のライブでも、その都度新しい編曲とアドリブを施して来たが、又々更にここでは更に一歩前進。これがメロディ・ガルドーなんですね。

P5111805w 彼女は、ヴォーカルといっても、ギター、ピアノを演ずるわけで、このライブでも重要な役回りをしている。
 又、かっての交通事故による障害によって、杖なしでの歩行は困難であったが、昨年ようやく歩行は可能になり、このステージでもかなりのアクションも見せて、かっての彼女のステージとは大きく変わっているところも見所だ。

P5111765w 究極は、彼女のミュージシャンとしてのブルージーな味付けの編曲によるジャズ、フォーク、フュージョン、ロックを超越した「メロディ・ガルドー・ワールド」なんですね。これを評価せずに、ジャズは語れないと(いや、語って欲しくないと)私は断言するのである。

(参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/melody-gardot-c.html

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(視聴) Live at Olympia Paris 2015

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2015年6月 9日 (火)

(続)メロディ・ガルドーMelody Gardot の新譜「CURRENCY of MAN」 ~考察その2~

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「スタンダード盤」の完成度は?

 メロディ・ガルドーのニュー・アルバムを考察しているのだが・・・実は是非対比してみなければならないことがある。
 それは前回このニュー・アルバム『CURRENCY of MAN カレンシー・オブ・マン~出逢いの記憶~』の感想を書いたのは、基本的には2種あるバージョンのうち所謂「Delux Edition」(全15曲)であったわけだが(日本盤はこれを取りあげてリリースしている)、しかし「スタンダート盤」は全10曲であって、全くの曲の配列が異なっている。実はそこが面白いところで比較して聴いてみるとかなり印象が異なってくるのだ。

Melody Gardot 「CURRENCY of MAN」
Universal / International / 54724682 / 2015

New2 スタンダード盤では、まず3曲のインスト曲がない。それとこのアルバムでの最高のパワーを効かせる”Preacherman”が2曲目に登場して、アルバム冒頭近くから哀しい怒りを叩きつけるパターンをとる。
 これは「デラックス盤」の問題点を積み上げながら、徐々に最高潮に盛り上げて行く手法とは異なっている。

 そんな相違が意外に印象を変えているのだ。

   つまりアルバムの流れは以下のようになる。これが・・・・

Album2list1.2.先ずは問題意識を叩きつける

3.そして 光明を見いだそうとする

4.反省

5.自己の要望

6.自分相応の世界へ

7.美しき悟りへ

8.悪しき展開

9.哀しきストリート・ガールの姿に未来はあるか

10.過去の貴重な記憶に未来を託す

  ・・・・こんな流れであるが、つまるところ、デラックス盤の”No Man's Prize”と”Byrying My Troubles”の2曲が納められていない。まずメロディ・ガルドー節の典型の”No Man's Prize”が無いのは寂しい。そしてデラックス盤の最終曲”Burying My Troubles”の一つの光明を信じて行くところがやっぱり無いのは更に空しいのである。
 そんなところと、曲間の繋ぎの3曲のインスト曲が又ムードを盛り上げるのに良い味があるが、それが「スタンダード盤」には無いわけで、これからこのアルバムを聴くならば、やっぱり「デラックス盤」にして欲しい(日本盤はこれを取り入れている)と思うのだが・・・・・いかがであろうか?

 いずれにせよ、2種あるとどうしても比較してしまうのだが、「スタンダード盤」はメロディ・ガルドーのCD一枚を聴いたという感じには満たされるが、「デラックス盤」は、物語を感ずる一編の映画を見終わったという感覚になる。
  両者には、そんな違いを感ずるのだが・・・・。

(試聴)

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2015年6月 4日 (木)

メロディ・ガルドーMelody Gardot渾身の注目新譜「Currency of Manカレンシー・オブ・マン~出逢いの記憶~」

           <My Photo Album> ~花の季節(6)~

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                                            NIKON D800 , AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4G
             *    *    *    *

<今日のミュージック>

  私の一押し=メロディ・ガルドー待望のニュー・アルバム
~闇、哀しき訴え、光明、悟り・・・「社会意識」
へのアプローチ~
             今年の問題作

<Jazz、Rock、 Soul、 Root's Music>

             Melody Gardot 「Currency of Man」
        Universal Classics & Jazz / UCCU-1488 / 2015

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 今回のニュー・アルバムも気合いが入ってますね。新譜発売からいくつかのバージョンがあって、お付き合いが大変です。少なくとも輸入盤で3タイプ?(10曲アルバム、15曲アルバム、デラックス・エディション(The Artist's Cutヴァージョン収録))あり、それに日本盤(16曲・SHM-CD)がリリースされた。

 前作『The Absence』からもう3年ですかね、あれはメロディ・ガルドーのラテン版というか、それまでのイメージを変えての彼女の意志でのセルフ・プロデュース作品であったが、今回は2009年のヒット作『My One & Only Thrill』のラリー・クラインのプロデュース。

(参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/melody-gardot-a.html

Mg2_2 彼女は1985年生まれのアメリカ・フィラデルフィア出身だが、19歳の時の交通事故で現在も後遺症が残っている。2009年に来日した際も光刺激を避けるためのサングラスと、下肢の障害をカヴァーするためのステッキによる歩行をしていた(しかし我々にはサービス精神旺盛な対応をしてくれたあの時からもう6年経つんですね)。
 しかし彼女のシンガー・ソングライターとしての才能は素晴らしく、都会的センスのジャジーな曲作りと歌唱力は魅力たっぷり。ピアノやギターも操っての弾き語りも得意で音楽そのものへの拘りも大きい。

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 さて今回のアルバムは左のような15曲。全曲メロディ・ガルドーのオリジナル(3曲に共作者が入る)、そして3曲のインスト曲もある。ロックやソウルっぽいところから、ジャズ、ブルースまでのまさにアメリカ南部文化と言うべき”roots music”への挑戦でもある。そしてそこにメロディ・ガルドー節が詰まっている。

  しかし最も注目は、勿論彼女のミュージックとサウンドにこだわったものである事だが、又それ以上に彼女の社会派活動と関連したコンセプト・アルバムだと言うことだ。彼女の言う”「社会意識」の世界”がテーマなのだ。それは彼女がこの数年に出会った印象深い人々を取り上げて歌い訴える・・・・。
 ”currency of man”つまり”人間の声価”に心を馳せるべきと言うところか?。彼女の言葉を借りると”今の世界における我々自身の価値の再認識。肌の色、社会的地位、出自に関わらず、誰もが人生の目的を持っている”と・・・・・人間の価値を訴える。

 既に公開されているプロモーションビデオにも描かれているように、”It Gonna Come”はストリート生活のホームレスのインテリジェンシーの高い老人の姿に何を見るか?。
 更に問題のPreacherman”は、1955年の黒人少年の虐殺事件の「エメット・ティル事件」を取り上げている。この母親の悲しみ・憤りを歌い上げ、この人種差別に関わるテーマをロック調のミュージックで迫ってくる。

 このアルバムの前半は社会の陰の部分に焦点を当て、”No Man's Prize”で彼女の唄が堪能できる。そして10曲目の”Preacherman”で問題意識の頂点に叩きつけるリズムで達する。しかしその後”Morning Sun”では心を広げる一つの光明を与え、12曲目の”If Ever I Recall Your Face”のこのアルバムでピカイチの美しい曲が流れ、自己を説得する。そして最後の”Burying My Troubles”で希望を感じさせて幕を閉じる。
 このアルバムは一つの映画を見たような展開をみせる。メロディ・ガルドー自身の音楽人生と人生観を集約したアルバムの完成だ。
       Still I know     I will find my happiness at last
        Somewhere in the bottom of a bottle  of a stone cut glass

 かって来日の際の、”日本の饅頭が旨かった”と笑いながら話す明るさの影には、「死」や「絶望」を一度見た人生の経験から作り上げられた彼女のもう一つの姿がこのアルバムには込められているのだろう。今年の一押しアルバムになることは間違いない。

                (credit ↓クリック拡大
Credit

(試聴1)

(試聴2)

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2015年4月30日 (木)

期待の話題 : メロディー・ガルドーMelody Gardot & ロジャー・ウォーターズRoger Waters

 期待の2015年初夏の話題-2題

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 我が家のクレハモクレンも咲いて春たけなわとなりましたが(↑)・・・・ここに来て期待のニュースが入ってます。

<Jazzの話題>
 メロディー・ガルドーMelody Gardot のニュー・アルバム「Currency of Man ~出逢いの記憶~」がこの6月にリリースされる。
New いっや~~、久しぶりです。メロディー・ガルドーは私の期待のシンガーソングライターですからね。彼女の2012年の「アブセンスAbsence」以来3年ぶりのニュー・アルバムですね(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/melody-gardot-a.html)。前作はラテンよりの作品で、ちょっと私の期待する”都会の夜”ムードとちょっと違ってはいたが、全米ジャズ・アルバム・チャート1位にはなりました。
 期待の今作は又プロデュサーがラリー・クラインに戻って、ジャジーな世界を聴かせてくれるのは間違いなさそうです。

(試聴1) ”Same To You”

(試聴2) ”Preacherman”

<Rockの話題>
 さて話はジャズからロックの方に変わって、続いての期待は、あのピンク・フロイドのGenuineと言われるロジャー・ウォーターズの「The Wall」ライブを記録した映画が今秋劇場公開が決まったことですね。多分いずれDVD化はされるでしょう。

Rogerwatersthewalllive これはToronto International Film Festival (2014年9月)にて公開された映像もの。
 2010-2013年の4年にわたっての記録的ロング・ラン・ライブとなった「The Wall Live」の記録ものが、ここに来てようやくオフィシャルに公開される。
 残念ながら日本嫌いのロジャー・ウォーターズのこと”日本ライブ”は実現しなかったが・・・・と、言うよりも実際のところは、とにかく資材が大量で、ちょっと東洋ライブまでは拡大できなかったようですね。
 しかしこの映像ものは単なるライブ記録に止まらず、関係映像が盛り込まれているようで、期待ものである。

002 そしてロジャー・ウォーターズのもう一つの話題は、あのイスラエル問題に対峙したニュー・アルバムの噂があったんですが、目下は1992年の話題作「Aused to Death 死滅遊戯」がリマスタリングされ高音質化、SACD、 Blu-ray Audio 5.1チャンネル・サラウンド・リミックスで、ジャケもリニューアルされてこの7月に発売と言うことになってます(LP盤もあり)。
 このアルバムは、私はこれこそ真のピンク・フロイド最終盤と勝手に思っている作品で、彼の社会に対する警鐘というコンセプト・アルバムであったことと(中国の天安門事件など忘れられない)、中身の音楽的濃さも抜きんでている名作だったので、ここで再発は時代感覚も現在にも十分通ずるところから当然と判断する。参加ミュージシャンはジェフ・ベック始め充実しての中身の濃いアルバムであっただけに、サウンドの高音質化というのも興味のあるところ。
 そしてそれに続いて彼のニュー・アルバムが登場すれば文句のないところだが・・・・・そこは目下定かな話は浮上していない。

(試聴1)

(試聴2)

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2013年2月17日 (日)

圧巻のライブ映像=メロディ・ガルドーMelody Gardot:「DONOSTI 2012」

アルバム「Absence」の”ハイネッケン・ジャズ2012”のライブ映像

Mg6

 またしてもここで取り上げるのは、ブート映像でのライブ鑑賞である。なにはともあれ、オフィシャル映像がなければ、この手で楽しんでいるというところ。
 これは、私の一押しのJAZZシンガーソングライターであるメロディ・ガルドーMelody Gardotのライブだ。つい最近の2012年7月、スペインはDONOSTIにおけるジャズ・フェス「ハイネッケン・ジャズ HEINEKEN JAZZALDIA」の模様である。

<JAZZ> MELODY GARDOT 「DONOSTI 2012」
              Bootleg DVD - MegaVision
       Live at 47th HEINEKEN JAZZALDIA, DONOSTI, SPAIN July 20, 2012

Donosti2012   
 もともと彼女の場合は、アルバムは殆ど自己のオリジナルの曲で構成されているが、それをライブにおいては諸々のアレンジを凝らしてくれて、明らかにその出來はアルバムを超えて素晴らしい。前作「MY ONE AND ONLY THRILL」も、パリでのライブものが良かったのは記憶に新たなところだ。今回のこのアルバム「Absence」は昨年リリースされた最新作であるので、こうしてライブでの出來はどうかと、実は興味津々であったが、案の定アルバムを遙かにしのぐ曲の仕上げは見事で、もうこのライブものでリリースして欲しいと思うほどである。
 これは2012年7月20日 歴史あるジャズ・フェスの第47回ハイネッケン・ジャズ(於スペイン)における彼女のパフォーマンスである。

Donosti2012list 収録セットリストは左のごとく8曲。昨年のニュー・アルバムの「Absence」からの曲が中心。実は私にとってはこのアルバムは若干期待とは別物であったアルバムで(彼女には、私の期待はどちらかというと”都会の夜派”をイメージしている)少々残念であったというのが偽らざるところだった。しかしなんとこのライブ・ステージの演奏と唄には、アルバムの雰囲気とは一転して、なるほど彼女のステージは、いつも通り、アルバムを遙かに超えての納得の世界描いてくれて、魅せられるのである。

 しかもこのDVDの映像はプロショットでサウンドも良好というもの。これもブートとしては良好の部類に入る。
 オープニングの”No More My Load”は、彼女のアカペラでエキゾチックなムードでスタート。そしてその後彼女のピアノ弾き語りも披露してくれる(”Goodbye”、”Lisboa”の2曲)。
 しかし後半に入って、アルバム「MY ONE AND ONLY THRILL」からの曲No6.”Les Etoiles”のサックス、パーカッションの掛け合いから始まっての展開は、バックのジャズ・センスの良さが十分感じ取れ、この曲の練り上げは見事と言える・・・(試聴:http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=8kPvUIHYENI&NR=1 )。
 更にNo7.”so we meet again my heartache”クラリネットとギターが曲の展開を誘導して彼女のヴォーカルへと流れ、この出來は更に更に極上で、ステージのレイアウト、照明も加味されて大人の魅惑の世界へと誘われてしまう。

Donosti2012members 演奏陣はメロディ・ガルドーの他は総勢8人で、バッキング・ヴォーカルの女性2人の他は、ギター、ベース、チェロ、サックス・フルート、パーカッション、ドラムスという構成。これに彼女のピアノが加わる。
 彼女のヴォーカルは、いつものように演奏の中の一つの楽器のように溶け込んでゆく。そしてリズムはボサ・ノヴァ、サンバ、カリプソのパターンを取り入れ、更にタンゴまで登場するが、曲の流れはあくまでもディープにしっとりとしかも浮遊感が漂って流す。このあたりがガルドーの十八番で聴きどころとも言える。
 ブラジル、ラテン系のアコースティック・ギターのMitchell Long が、バッキング・ヴォーカルと共に味付けが良く、又サックス、フルートのIrwin Hall が健闘している。

(試聴)
http://www.youtube.com/watch?v=4k-70DpmB1c
 今年もこの3月から広く各地で彼女はライブを展開するが、日本にも是非と、期待しているのだが・・・・・・。

 このところブート映像ものがシリーズのように続いてしまっいるが、いやはやこうしたものを探すのも楽しみの一つなんです。そんな結果でついついここに書いてしまったという次第、だがまだ獲物はあります又次回。

<Today's PHOTO>

Monoblog
(Hasselblad 503CX , Planar 2.8/80 , PL)

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2012年6月 3日 (日)

メロディ・ガルドーMelody Gardot のニュー・アルバム「The Absence」

メロディ・ガルドー世界(jazzy not jazz)への意欲作

Melody Gardot 「The Absence」
DECCA  B0016816-02 ,  2012

Absence

 私の最も期待株のメロディ・ガルドーの3rdとなるニュー・アルバムが3年ぶりに登場した。彼女のアルバムについては何度と語ってきたが(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/jazzymelody-gar.html)、久々のニュー・アルバムの登場は大いに歓迎である。
 シンガー・ソングライターとしての全曲自己の曲であるスタジオ・フルアルバム。
   
    Vocal : Melody Gardot
    Piano : Melody Gardot, Heiter Pereira 他
    Guitar : Heiter Pereira
    Bass : John Leftwich
    Potuguese Guitar : Melody Gardot
  orchestra conductor : Nick Glennie Smith

<収録曲>
1. ミラ
(Mira - Melody Gardot)
2. アマリア
(Amalia - Melody Gardot / Heitor Pereira / Phil Roy)
3. ソー・ロング
(So Long - Melody Gardot)
4. ソー・ウィ・ミート・アゲイン・マイ・ハートエイク
(So We Meet Again My Heartache - Melody Gardot)
5. リスボン
(Lisboa - Melody Gardot)
6. インポッシブル・ラヴ
(Impossible Love - Melody Gardot)
7. イフ・アイ・テル・ユー・アイ・ラヴ・ユー
(If I Tell You I Love You - Melody Gardot)
8. グッバイ
(Goodbye - Melody Gardot / Jesse Harris)
9. セ・ボーセ・ミ・アマ
(Se Voce Me Ama - Melody Gardot / Heitor Pereira)
10. マイ・ハート・ウォント・ハヴ・イット・エニー・アザー・ウェイ
(My Heart Won't Have It Any Other Way - Melody Gardot)
11. イエマンジャ
(Iemanja - Melody Gardot)
 ・・・・(
これに続いて隠しトラック)

Melody3tr  まず私の印象としては、このアルバムは意外であった。もともと”Jazzy not jazz” 路線とは言え、2ndアルバムのその後の流れからも、若干想像したジャズへの流れが異なり、むしろボサ・ノヴァやサンバ、更にタンゴ、その上にカリプソの味まで取り入れての意欲作だ。
 南米各地やヨーロッパでもスペイン、ポルトガル、フランスのラテン系に彼女はライブ活動とともにその地に関心を持って接してきたと言われているが、その結果としてうなずけるところでもある。
 
 彼女の交通事故による後遺症から、自己を解放してゆく道としての音楽、それが身を結んできた現在の形としての3rdアルバムとして位置づけて良いのかも知れない。
 しかしその南国の開放的世界と言っても、彼女のアルバムにはその独特の派手さはない。むしろ異国情緒を醸し出すところに逆に寂しさすら感ずるところもある。
 フランス語、ラテン語も登場しての今作は、彼女の一つの挑戦的意欲作であるとも言える。

 スタート曲”mira”の軽快な南国タッチのギターをバックにしての曲には驚いたが、・・・・・
 3曲目の”so long”、続く”so we meet again my hearttache”などでメロディ・ガルドー節が本番となる。彼女独特の細部に及ぶ繊細で深みがありそして説得力あるヴォーカルは相変わらずで、聴く者を引き込んでゆく。
 更にバックの演奏陣もストリングス・オーケストラ、そしてそれにも増してギターなどの演奏陣の相変わらずセンスの良さが滲んでいる。
 ”lisboa”もバック演奏の明るさに反して彼女のヴォーカルは陰影を残すがごとく歌われ、このあたりの彼女の描く世界が見えてくる。SEも独特の効果を上げている。
 6曲目”impossible love”、7曲目”if i tell you l love you”の曲は、シャンソン調も取り入れてバックの演奏陣のアレンジの妙も絡んで曲自身の仕上げが見事である。このあたりは、プロデュースとアレンジを行っているギター奏者のヘイター・ペレイラHeitor Pereira の成せる技か?。

 11曲の”iemnja”終了後に約10分の間隔を空けて突如出てくる鐘の響きに続き前衛的な演奏の隠しトラックがある。この演奏パターンは私好み、こうしたバックにメロディの唄も聴いてみたいところ。この隠しトラックのアルバム造りには賛否両論あろうが、メロディ含めて制作陣の何か挑戦が感じられるアルバムであった。

(最近、彼女は自分自身も患った事故による外傷性脳損傷の後遺症に対して、その治療の為の施設を作る活動をスタートさせたとか・・・)

 

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2011年7月14日 (木)

チャーリー・ヘイデンCharlie Haden QUARTET WEST : ニュー・アルバム「Sophisticated Ladies」

オーソドックスで楽しく聴けるジャズ~6人の女性ヴォーカリストをフィチャー

Charllieh3  ベース奏者のチャーリー・ヘイデンというと、どうしても私の接し方はキース・ジャレットの世界からである。近作は「JASMINE」 (このプログにて、2010.6.4”静かなる安堵感:キース・ジャレット「JASMINE」”参照http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/keith-jarrett-j.html)で、彼とキースの30年ぶりの共演、キースの誕生日に合わせてのリリースとその内容に二人の関係が如何に人間的であったかを窺い知らされた。
 一方、キースとの歴史を鑑みると、やっぱりアメリカン・カルテットであろう。その中では私にとって強烈な印象のアルバム「DEATH AND THE FLOWER 生と死の幻想」(当プロク2010.6.14”キース・ジャレットの世界(3)孤独と生と死”参照http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/keith-jarrett-1.html)とか「The Survivors' Suite 残もう」のアルバムを思い出す。これらはベーシストのチャーリーのフリーな、コンテンポラリー・ジャズ感覚がなかったら出来なかったとも思われるキースの名盤だ。もう20-30年前のことであった。

Sophisticatedladies さて、ここに登場するチャーリー・ヘイデンのニュー・アルバム。
「CHARLIE HADEN QUARTET WEST / SOPHISTICATED LADIES」 UNIV.MUSIC UCCM-1191 ,  2011

  これは彼の1986年に結成されたカリフォルニアを基盤としたカルテットによるものだ。
 今回は11年ぶりに新ドラマーを迎えてのそのカルテット・ウェストで、なんと6人の女性をフィチャーしての12曲(うち6曲に女性ヴォーカルを登場させている)を聴かせてくれる。 
 その6人の女性は、アルバム・タイトルどおりの”Sophisticated Ladies (洗練された女性といっていいのか)”のメロディ・ガルドーMelody Gardot, ノラ・ジョーンズNorah Jones, カサンドラ・ウィルソンCassandra Wilson, ルース・キャメロンRuth Cameron, ルネ・フレミング Runee Fleming, ダイアナ・クラールDiana Krall (登場順)だ。
 私がこのアルバムに接したのは、私がメロディ・ガルドーのファンであることを知っている友人からの紹介だった。それぞれの女性シンガーは一曲のみの登場で、少々残念なのであるが、それでも昨年の彼女らの現状報告みたいなもので、そんな感覚でこのアルバムを聴いたわけである。

(members)
   charlie haden : double-b
   emie watts : ts
   alan broadbent : p,cond
   rodney green : ds

Melodygb  1曲目”if i'm lucky”からメロディ・ガルドーが登場。この演奏にはカルテットの演奏に加えてストリングス・オーケストラもバックに登場し、意外にクラシカルな印象のジャズに仕上がっている。ガルドーが優しく歌うが、彼女の特徴のちょっとした遊びがすくないかなぁ~という印象で、彼女自身のアルバム曲とは趣が異なる。
 このアルバムのカルテット・ウェストの演奏は、かなりオーソドックスなアコースティック・ジャズで肩が凝らずに聴けるところは73歳になるチャーリー・ヘイデンのなせる技か?。
 3曲目”ill wind”を唄うノラ・ジョーンズはいつもの彼女のパターン。続く”today i am a man”のカルテットの演奏は、それぞれの持ち味を出して楽しんでいるかのようだ。
 5曲目のカサンドラ・ウィルソンの唄う”my love and i”は、ゆったりと聴くものの気持ちを静めてくれ、特にチャーリーのベースが楽しめる。
 6曲目の”theme from "markham"”の彼らの演奏は私好み。チャーリーの妻のルース・キャメロンの”let's call it a day”とルネ・フレミングの”a love like this”はなかなか説得力がある。
Diana_krall  ダイアナ・クラールの”goodbye”は、彼女の語るような歌の低音も生きていい仕上がりだ。エルビス・コステロ夫人の彼女は目下育児に奮戦中のようだが・・・。

 このアメバムはスタンダード曲を、6人の女性シンガーをフィーチャーして色づけしつつ、カルテット・ウェストのどちらかというとオーソドックスな演奏集である。そんな意味では聴いていて休まる世界でもある。彼女らに2曲づつ歌わせてもよかったかなぁ~~とも思うが、まあこんなところがいいところなのかもしれない。
 いずれにしても、誰が聴いてもいいJAZZアルバムといったところだ。(ちょっと余談だが・・・もう少し洒落たジャケ・デザインにしてほしかったとは思うが)

(試聴)

 

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