サラ・マクラクラン

2022年11月11日 (金)

レナード・コーエン・トリビュート・アルバム「HERE IT IS : A TRIBUTE TO LEONARD COHEN」 

なかなか味な試みのトリビュート盤、10人の歌手が集合

<Jazz>

 HERE IT IS : A TRIBUTE TO LEONARD COHEN
BLUE NOTE Hi-Res MQA-flac 96kHz/24bit / 2022

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 詩人、作家、シンガー・ソングライター、ミュージシャンとして世代、国境、ジャンルを超えて人気を獲得していたカナダ出身のレナード・コーエン(下左)。2016年に82歳で急逝したが亡くなる直前までミュージシャンとして頑張っていた。そこで名プロデューサーとして名高いラリー・クライン(下右)がコーエンとは"1982年頃から友人であり、人生の最後の15年間は特に親しくなった"と言い、さまざまなジャンルの豪華ゲスト・ヴォーカリスト(下記Tracklist参照)と、ジャズ界でちょっとした持ち味を誇るミュージシャンをマッチングさせて制作したコーエンのトリビュート作品。
(なお、私は Hi-Res MQA-flac 96kHz/24bit で聴いています)

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   レナード・コーエンは、カナダ出身(1934年生まれ)だが、父はユダヤ系、母はロシア系のようで、1960年いわゆるフォーク・ロックと一般には表現されている音楽を奏でるシンガー・ソングライターとしてスタートした。「エロティックな悲惨な詩人」なんて表現を見たが、そんな要素もあったくらいで一種独特の世界があった。私は当時は特に興味もなかったので当時の事はよく解らないが、詩人としての大学卒の経歴があり、人生のいろいろな流れの中で、革命後のキューバに渡ったりとその生きざまは多彩だ。(かって私は彼をここで取り上げたので参照してほしい→「今にして知る レナード・コーエン Leonard Cohen の世界」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/leonard-cohen-c.html)。

 私が彼に関心を持ったのはたったのこの十数年のことである。しかしその後彼に関しての音楽を聴いてみるにつけ、彼は老年期に入ってからのミュージシャンとしての味は、若き時のものと比較しても格段も中身が濃く味があり人生の風格が滲み手出ての傑作ものであった。特に余談だが、彼のバック・コーラスを務めていたJennifer Warnesなども世にでることにもなって、私の興味を誘ってくれたのである。

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         a                           b                           c                             d

(Tracklist)

1. Steer Your Way / Norah Jones (2016年『ユー・ウォント・イット・ダーカー』収録)
2. Here It Is / Peter Gabriel (2001年『テン・ニュー・ソングス』収録)
3. Suzanne / Gregory Porter (1967年『レナード・コーエンの唄』収録)
4. Hallelujah / Sarah McLachlan (1984年『哀しみのダンス』収録)
5. Avalanche / Immanuel Wilkins (1971年『愛と憎しみの歌』収録)
6. Hey, That's No Way to Say Goodbye / Luciana Souza (1967年『レナード・コーエンの唄』収録)
7. Coming Back to You / James Taylor (1984年『哀しみのダンス』収録)
8. You Want It Darker / Iggy Pop (2016年『ユー・ウォント・イット・ダーカー』収録)
9. If It Be Your Will / Mavis Staples (1984年『哀しみのダンス』収録)
10. Seems So Long Ago, Nancy / David Gray (1968年『ひとり、部屋に歌う』収録)
11. Famous Blue Raincoat / Nathaniel Rateliff (1971年『愛と憎しみの歌』収録)
12. Bird on The Wire / Bill Frisell (1968年『ひとり、部屋に歌う』収録)

(奏者):ビル・フリゼール (g)、イマニュエル・ウィルキンス (as)、ケヴィン・ヘイズ (p, Estey)、スコット・コリー (b)、ネイト・スミス (ds)、グレゴリー・リース (pedal steel g)、ラリー・ゴールディングス (Hammond, org)

 上のように、多くのヴォーカリストによる詩を重んじた曲が中心であるが、バックは上記のようなそれぞれの味のある演奏者がクラインによって集められたプロジェクトであった。これはアルバムとしての一貫性を失わないように多くの歌手をサポートするにあたり、世界観を統一している試みである。一アルバムのように感じる一貫性のある統一されたサウンドを考えたのだ。それにしても1967年のデビュー作から2016年までの50年の経過の作品の流れをまとめ上げるところにクラインの腕の見せどころであっただろう。

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         e                      f                         g                              h


 さて、それぞれの曲を聴いてみると・・・・
 M1."Steer Your Way"のNorah Jones(↑a)はそれなりに無難に歌い、驚きはアルバム・タイトル曲M2."Here It Is "のPeter Gabriel(↑b)だ。彼の演ずるところコーエンの質をしっかり捉えて歌い上げていて、おやコーエンではと思うほどだ。そんなところではM8."You Want It Darker "のIggy Pop(↑e)もそっくりだったが、彼なりの切り口は独特。
 M3."Suzanne"のGregory Poter(↑c)はちょっとクールで面白い。
 M5."Avalanche "M12."Bird on The Wire"はインストもの、Immanuel Wilkinsはサックスで、Bill Frisellはギターで、それぞれ曲に色を添えるべく演じている。
 M7."Coming Back to You" James Taylerの低いキーでの唄もコーエン節が印象的。
 女性群がいいですね、M4." Hallelujah"の私のお気に入りのSarah Mclachlan(↑d)は、しっとりと自分の世界に引き込んで歌い上げる。M6."Hey, That's No Way to Say Goodbye "のLuciana Souzaは甘いところを見せつつ意外におとなしく素直に哀悼の意。M9."If It Be Your Will"のMavis Staples(↑f)は、なかなか個性が生きていてその訴えが響いてくるところはお見事と言いたい。
   M10."Seems So Long Ago, Nancy " David Gray(↑g)も自分の世界で哀感ある歌い上げて納得。
 M11."If It Be Your Will "のNathaniel Rateliff(↑h)が印象深いですね、ここでは他の男性軍は自己主張して挑戦的なところはあまりなく、おとなしくコーエンを描こうとしているが、彼は彼なりの世界で、なかなか哀感もたっぷりで聴き応え十分な歌を披露。私はこのアルバムでは出色と見た。 

 晩年のコーエンが益々人気が上がったのは、男が歳をとったらこんな洒落っ気がある魅力が欲しいと思わせるところがプンプンしていたことで、歌や詩で語り掛けるところには、ゴスペルの要素がなんとなく見え隠れしていた。逆にそれに皮肉なユーモアも感じさせている。1984年以降の『哀しみのダンス』以来、明るい訳でもなくどこか暗めで人を引き付ける。そして加えてユーモアのセンスは抜群だった。人間的な弱さと強さがみえる歌が人に訴えた。
 このアルバムを聴くと、コ-エンの唄はコーエンが一番良いという事を逆に実証したような感がある。しかしこうして一つの世界に統一しての彼を想う10人という歌手の集まりもなかなか味があったことも事実であった。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌        : 88/100  
□ 録音(MQA・Hi-Res) :   88/100

(試聴)
Gregory Porter"Suzanne"

*
Mavis Staples"If It Be Your Will"

 

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2014年6月27日 (金)

サラ・マクラクランSarah Mclachlanの新譜「SHINE ON」

人生の新展開か?

 

<Rock、Popular>

 

        Sarah Mclachlan 「SHINE ON」
        The Verve Music  B0020606-02  ,  2014

 

Shineon
 そうですね4年ぶりの新作ということですね。前作「The lows of illusion」も6年ぶりの新作だったが、今回は心機一転新たなVERVE移籍第一弾。
 ここでは既に何回かと彼女については取り上げてきたので、取り敢えずこのアルバムに話を持って行きます

(参照)
■サラ・マクラクラン久々のニュー・アルバム「LAWS of ILLUSION」登場
     http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/laws-of-illusio.html
■サラ・マクラクランの評価はどこに求められるか?(3)
     http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/3-2b12.html

 何と言っても彼女自身は離婚しての2児の母親、長年のマネージャーからの離れ、そして父親の死などこのところネガティブな環境にあって、ここに登場するはアルバムは”父親に捧げる”といった性質のものであるようだ。とにかく彼女も48歳になるし、もともと既に築いてきた世界は、単なるポップ歌手というところから、社会活動等に意欲と実績を残してきている。そんな意味からもこのアルバムに接してみると、むしろ逆境から彼女なりきの落ち着きどころを得ての何か達成感というか自分の世界に何かを見いだしているところを感ずる。

 

収録曲は以下のような11曲。

 

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 一曲以外全て彼女のオリジナル曲。”6. Song for my father”は明らかに父親への感謝の曲である。いっや~しかしかっての陰影や問題意識によるネガティブ感のあるところが無くなり、私としてはちょっと物足りないといった方がよいのか、とにかく落ち着いたアルバムに仕上がっている。
 1曲目はややアップテンポな曲作りだが、ライブなどで聴くこの曲のイメージとは変わった仕上げになっている。これからの歩む将来に希望や期待を感じている世界が感じ取れる方向に仕上げたのであろう。このアルバムの全体的な流れも、多分噂にある人生の新展開がバックにあってのことかも知れない。殆どの曲は、どちらかというとしっとりとしたムードだが、自己を見つめ”光のある”方向に感じたところを歌い上げているように思う。

 

Sara6
 こうしてある意味では自己の人生に歩むべき道を感じて充実感を持って感謝の気持ちでアルバム・タイトルのように"Shine on"しているならば、それはそれで結構と歓迎しようではありませんか。
 それでも”4.Broken Heart”では、やはりマクラクランらしいところを感ずることが出来る。
 又、彼女のこと・・・多分社会的な活動においても新展開は必ずみせるであろうと想像はしているのだが・・・・。

(参考)過去のオリジナル・アルバム

 

1. タッチ Touch (1988)
2. ときめき Solace (1991)
3. エクスタシー Fumbling Towards Ecstasy (1993)
4. サーフェシング Surfacing (1997)
5. アフターグロウ Afterglow (2004)
6. ザ・ロウズ・オブ・イリュージョンThe Laws Of Illusion (2010)

(視聴)

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2010年7月10日 (土)

サラ・マクラクラン久々のニュー・アルバム「LAWS of ILLUSION」登場

サラ節満開の好評・好セールスアルバムであるが・・・

Lawsofillusion 「Sarah McLachlan / LAWS of ILLUSION」 ARISTA 88697-55367-2 , 2010

 

 いやはや、ほんとに久しぶりです。2008年にベスト盤をリリースしているが、オリジナル・スタジオ・アルバムとしては、2004年の5thアルバム「アフターグロウ」以来の6年ぶりということになるようだ。
 リリス・フェア(女性主体のライヴイベント)などの彼女の一本筋の通った活動は今や多くの認めるところであるが、もうアルバム作りからは離れたのか?とも思わせる長い期間の空白であった。2008年の次女の出産の後、ドラマーの夫と離婚ということになったようで、2人の娘を育てているシングル・マザー。その為かどうかは解らないが、リリス・フェアの再開などもここに来て11年ぶりに北米40ケ所にて行われるという。再び活動が活発になってきての今回の新作発表だ。
 もともと彼女の新盤リリースは、長いブランクがあってのことは今回ばかりでなく、そう不思議なことでもなさそうだ。かっての4th,5thの間も7年が開いている。

Sarahmc1 (曲目リスト)
   1.Awakening    2.Illussions of bliss    3.Lovining you is easy   4.Changes   5.Forgineness   6.Rivers of love   7.Love come   8.Out of tune   9.Heartbreak   10.Don't give up on us    11.U want me 2   12.Bring on the wonder

 さて、その内容であるが、どちらかというとアルバムの印象はしっとりと訴えてくるタイプ。つまり彼女の過去の好評曲のタイプのオンパレードだ。
 そしてほとんど彼女のオリジナル曲とピアノ演奏により作り上げられていて彼女の作品への拘りを感ずる。
 特にテーマは「愛」というものに絞られていると思うが、5曲目”Forgiveness”はなかなかの出来でじっくりと聴かせてくれる。又”River of love”泣きギターの音色と共にやはり何か静かに訴えてくるものを感ずる。今の彼女の環境を聞き知っているところからみると、多分傷を受けた心の叫びのように私には取れてしまう。愛の価値観と、それに伴う影の部分を歌っているのだろうか。それでも決して暗くはない。と、言っても明るくもない。
 多分、この盤は彼女の十数年前の「Serfacing」にも勝るとも劣らないアルバムとして位置づけられるだろうことは間違いない。7曲目の”Love come”はリズムカルに展開する曲だが、最後にPiano Version が追加され、こちらではじっくりとストリングスもバックに入って聴かせる。 歌唱力は相変わらずレベルは高い。高音部への変化も例のごとく裏声の転換を独特に聴かせる。
 
 とにかくこのアルバムは、何か再スタートを宣言したようであり、又過去の総決算のようでもあり、その点はいずれ評価されるのであろう。一つ難点というか若干寂しいのは、私の印象としては、それぞれの曲も一貫して同じ雰囲気に終わってしまって最初から最後まで単調に流れてしまうところだ。これは良しとすることもあろうが、もう少し変化がほしかったかなぁ~と思うのは、ちょっと要求が多すぎるかどうか?。

 

 
 

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2010年2月14日 (日)

サラ・マクラクランと上村愛子

スタートしたバンクーバー冬期五輪の話題

Parities  (話題1)やはりカナダですね。冬期オリンピックへの力の入れ方は凄い。12日(日本時間13日夜)の開会式は見事な華やかさであった。(残念ながら、4本の聖火の一本がオイル圧の不完全で立たなかったというアクシデントがあったが)
 その開会式で、昨年12月24日にこのブログで取り上げた左のアルバム「Sarah McLachlan / Rarities, B-Side, and Other Stuff  Volume2 」にある曲” Ordinary Miracle” をサラ・マクラクランがムードたっぷりに唄った。カナダでの彼女の存在感が如何に大きいかが解る。この曲は2006年の映画「シャーロットの贈り物」のエンディング・テーマに取り上げられた人気の曲だ。改めて楽しく聴かせてもらったというわけである。

Photo  (話題2)ちょっと残念だったのは、日本時間今日の午前第2日(現地13日)の女子モーグル決勝での上村愛子だ。4度目になる五輪挑戦で初のメダルを狙ったが、残念ながら四位に終わった。う~~ん、やっぱり若干予想はしていたが、彼女のピークは世界選手権優勝のあたりだったのかも・・・?。とは言え、まだまだ頑張って欲しいと思うところもある。 
 しかし、かっての冬期五輪を考えてみれば、優勝を狙う競技があるというだけ、いいのかも知れない(長野五輪にて優勝という快挙の里谷多英は19位に終わったが、今考えても長野の結果は驚くべき事だった)。

 

 

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2009年12月26日 (土)

サラ・マクラクランSarah Mclachlanの評価はどこに求められるか?(3)

魅力のライブ、そしてセッション・ナンバー

 

Freedomse_2 1997年グラミー賞(最優秀女性ポップ・ヴォーカルパフォーマンス、最優秀ポップ・インストゥルメンタル両部門)に輝いたサラ・マクラクランであるが、それより2年前(1995)にリリースされた「The Freedom Sessions」 ARISTA 07822-18784-2 (左) が実は私のお気に入りなのである。
 特に彼女のヴォーカルの特徴や曲の展開、抑揚、そして彼女自身のギター、ピアノの流れは実に手に取るように迫ってくる。登場する曲は、もともと1993年の3rdアルバム「Fumbling Towards Ecstasy」の曲が中心で、1曲のみカヴァー曲という構成だ。
 しかし、ここに収められたものは、デモ・トラックといったものなのか、ライブ・セッションなどのものか?定かではないが、彼女のミュージック世界をダイレクトに知れる貴重盤。
    1.CD-ROM multimedia presentation
    2.Elsewhere
    3.Plenty
    4.Mary
    5.Good Enough
    6.Hold On
    7.Ice Cream
    8.Ice
    9.Ol'55
 スタートの2.”Elsewhere”は、ジャズっぽい若干暗い世界であるが、もうこのアルバムに引っ張り込むに十分な曲だ。セッションものの魅力はやはりアーティストが浮き彫りになるところだ。4.”Mary”、5.”Good Enough”はサラ・マクラクマン節そのもの。6.”Hold On”はピアノの流れにサラのヴォーカルが実に美しい。
 特筆はベースとドラムスの音からスタートし、彼女のエレクトリック・ギターとヴォーカルの交錯する8.”Ice”が素晴らしい。この世界は私好み。そしてラスト曲のカヴァー曲である”Ol'55”は、前半は比較的ありきたりであるが、結構話題になった曲である。後半は一変して(これはこの盤には記してなかったが、”Hold On”に変わる)語るように歌い上げ、アコースティック・ギターとの絡みも見事で、出来はレベルが高い。

 

Ecstasy 一方、サラにとって重要なアルバムは、この「Freedom Sessions」に先駆けてリリースされた1993年の3rdアルバム「エクスタシー Fumbling Towords Ecstasy」だと思う。
 そして、この2008年には両アルバムをカップリングして、しかもライブ映像DVD付3枚組で、レガシー・エディションとして左の
「Fumbling Towords Ecstasy LEGACY EDITION」 ARISTA BVCZ 35109-11
がリリースされた。
 ここには、彼女の爆発的ヒットの「Surfacing」の原点が見いだせるから、見逃して欲しくない。そして彼女自身もセッション・ナンバーを重要視している結果がこのレガシー・エディションのリリースに繋がったのだと思う。
 サラ・マクラクランの魅力はライブやセッションに、アルバムの魅力とは別に又一つのポイントがあるように思う。

 

 ところで、彼女のナンバー1ヒットの”Angel”も、アルバムやライブもので多く観たり聴いたり出来るが、時によって変化している。そんな中で私が最も最高の出来だと思っているものがある。
Withsantana 左のシーンがそれだ。これはサンタナ起死回生の2000年「SUPER NATURAL LIVE」に招かれて、彼女はピアノを弾きながら唄う訳だが、それにぶっつけ本番で、サンタナがアコースティック・ギターで伴奏を付けたものだ。サンタナの嬉しそうな顔も忘れられないが、この曲のこの時の出来は出色でDVDライブ映像に収められている。
 こうしてみて解るように、彼女はライブにおいても非常に魅力を発揮する。これはシンガー・ソングライターであることの結果でもあろうか、その時の場面によって曲を変化させ、又新しい世界を作り上げていくという能力が成せる技であろう。

Mirrorballdvd
そんな意味で、彼女のライブを映像で楽しませてくれるのは、DVD「Mirrorball」 ARISTA 07822-15740-9 , 1999 (左) がある。
 内容は彼女の1998年のライブで、まさにヒット・パレード(主としてアルバム「Surfacing」「Fumbling Towords Ecstasy」からの選曲)だが、アルバムと異なったバージョンもあり非常に興味深い。
 例によって、ステージに裸足で立つサラ・マクラクラン。ギターそしてピアノを操り、オーディエンスを魅了する。このあたりは曲の歌詞のやや暗い内容とは裏腹に、彼女の多彩な歌唱力となかなか味のあるバック・バンド、バック・ヴォーカルが会場の雰囲気と合体して、なにか快感のある美しい世界に導いてくれる。

 今、こうして目の前に彼女の過去の作品群を並べて聴いてみると、彼女の慈善事業などの社会的な活動が異次元の世界のように感じられてしまう。
 しかし、それがサラ・マクラクランと言っていいように思う。これからも多分私はのめり込んでしまうようなことにはならないと思うが、彼女の活動には興味を持ってみて行きたいと思うのである。
  

 

 

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2009年12月24日 (木)

サラ・マクラクランの評価はどこに求められるか?(2)

多彩な活動が物語るもの

 サラ・マクラクランを知る意味に於いても、又気楽に聴けて楽しめるアルバムとして
Parities 「オーディナリー・ミラクル~プレシャス・ソングス Rarities , B-Sides , and Other Stuff」 ARISTA BVCP-21611 , 2008 というのがある(左)。タイトルどうりまさに”珍品”である。
 これは彼女の映画サントラものと、いろいろの多くのアーティストとのコラボレーション曲の集めたもので実に楽しい。
 まあ、余興盤といっていいのだろうが、特に映画「シャーロットの贈り物」でエンディングに流れる”Ordinary Miracle”に魅せられた人も多かったことからの企画かどうか?、いずれにしてもこの曲からスタートして、シンディー・ローパー、ブライアン・アダムス、DMC、エミール・ハリス、ザ・ベリッシャーズ、レディスミス・ブラック・マンバーゾなどとの競演が収められている(もちろんライブものもある)。彼女の過去のアルバムの印象とは異なって、かなりポップな印象だ。(しかしここに収められた曲としては”Prayer of St.Francis”や”Unchained Melody”などの彼女自身のソロの曲が私は好むところであるが・・・・)そして最後の曲デレリアムDELERIUMとの12分に及ぶ”Silence”は圧巻だ。プログレッシブ・ロックの愛好者である私ではあるが、なにを隠そう実はこうゆうダンス・ビートを基調としてのプログレ・タイプの曲にも目がない。この曲だけでもこのアルバムを買った価値はあったと思うほどだ。

 

Sarmc5  しかし、サラのこうした多くのアーティストとの交流が、他のアーティストと異なる特徴であることを知らねばならないところである。

 サラ・マクラクランと言うと、男性主体のフェスと対抗(?)してか、女性アーティストをジャンルや人種を越えて多くを集めてのフェスティバル「リリス・フェア」を1997-1999年に企画して成功したとが大きなポイントだ。又チャリティー・コンサートはじめ各種の慈善事業が多方面に及んでいる。2005年ピンク・フロイドの再結成で話題になった”ライブ8”にも参加したのが思い出される。こうしたところが、彼女の存在感も高めているところであり、そしてカナダの国民栄誉賞も2004年に受賞している。
 社会の中のアーティストとしてのこうした存在が、今や彼女の姿であり、そしてそれがこれからの2人の娘を抱えてのシングルマザーとしての生き様との交錯が注目されるところでもある。

Touch 振り返ってみると、左のアルバム「TOUCH」 ARISTA ARCD-8594 , 1988  から若干19歳でシンガー・ソングライターとしてスタートしたサラである。このアルバムは彼女の若き時代の記念碑だ。当時このアルバム・ジャケも単なるポップ・アルバムとは一線を画すると言いたいのか、極めて静かな、そして過去の遺産を感じさせる地味なイメージにむしろ私は興味を持った。
 ギター、ピアノを中心にしたアコースティックな小編成のバックに、かなり美しさをイメージした曲群で構成されたアルバムで、ヒーリング・エイジといったところか。インパクトという面では若干弱かったと思うが、一部トラッドっぽい曲にも感じられ、又清純なイメージと神秘的な部分もあった。高音の美しさは出色で将来に期待したことを思い出す。(その後の彼女は社会性を中心とした方向に発展したことは、当時とても考えられなかった)
 いずれにしても、年齢からは感じさせない大人ぽさは、このアルバムの特徴でもあろう。近年のサラの原点として興味ある人は一度は聴いてみる価値は十分にある。

 ここで、近作の異色盤と原点盤を紹介したわけであるが、もう少し彼女の特徴に言及したい部分もあり、更に次回にその部分は譲りたいと思う。

(参考視聴)
 

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2009年12月23日 (水)

サラ・マクラクランSarah Mclachlanの評価はどこに求められるか?(1)

女性シンガー・ソングライターの歩み

Sarmc13  サラ・マクラクラン Sarah McLachlan という歌の上手いシンガー・ソングライターがお目見えして、早20年になる。ピアノそしてギターを操りながら、あの高音部への展開に特徴がある感情豊かな歌声は聴くものに確かにアッピールする。
 私は、当初より彼女のアルバムは聴いてきた一人あるが、それも魅力を感じつつも、さりとて熱烈なファンというところには至らずに来たというのが現実だ。
 友人と女性歌手の話で、サラ・マクラクランを取り上げたら、”なかなかそれなりにいいね”という返事が返ってきて、”うん、やっぱり”とそんな感じでいるところである。つまり聴くものの評価は確かに誰もが持っているようである。
 彼女のアルバムはライブ版、ベスト盤、フリーダム・セッション盤など多彩に多くリリースされているが、基本的には6枚のアルバムがその骨格である。

Closer 取り敢えず彼女の概要を知るには、この・・・・・

「closer the best of Sarah Mclachlan」 ARISTA BVCP-21638, 2008
(左)が最も手っ取り早い。 
 過去のアルバムからの全16曲を網羅しているベスト盤だ。もともとクラシックの教養があって、ピアノ、ギターを主として演奏しての彼女の作り上げる曲と歌は、ヒーリング・エイジといったところから、オルタナティブ・ロック、フォーク・ロックといった分野にあるといって良いのか、一概に決めつけられない。曲そのもののイメージは癒やし系といっていい雰囲気が醸し出されるが、歌詞の内容はもう少しシュビアだ。
    1.Vox
    2.The path of Thorns
    3.Into the Fire
    4.Possession
    5.Hold On
    6.Good Enough
    7.Building a Mystery
    8.Sweet Surrender
    9.Adia
   10.Angel
   11.I Will Remember You
   12.Fallen
   13.Stupid
   14.World On Fire
   15.Don't give up on Us
   16.U want me 2

 日本で、大騒ぎされる歌手でないのは、一般向けのポップではなく、分野としては渋い範疇なのかも知れない。歌手のテーマも単なるラブ・ソングでなく、人間性、社会性としての深遠な世界にも踏み込んでいる。
 しかし、美しく流麗なメロディーと彼女の美声に虜になっているファンが多いのも事実である。特にあの高音で発声が裏返るところは彼女の一つのポイントであろう。
 そしてこのアルバムはベスト盤であるだけ、それぞれの曲は魅力的であるが、最も愛された曲は10.”Angel”であろう、これは確かに名曲だ。私なんかは6.”good Enough”のような流れも好きであるが、12.”Fallen”の説得力ある歌には魅力が感じられる。又14.”World On Fire”のような曲は問題意識をもっての厳しさの姿勢も見えてきて緊張感を与えられる。

 

 やはりサラ・マクラクランは曲作りに長けてしかも歌唱力は強力であることへの評価は当然としても、中身においての社会や人間を追求するコンセプトが、評価のポイントの大きな部分なのかも知れない。

 

 彼女は1968年カナダ生まれで、幼少時からピアノを中心にクラシック声楽を学んで、音楽との関わりは強い。17歳で既にニュー・ウェイブ系のバンド活動をして、19歳にしてファースト・アルバム「タッチ Touch」(1988)をリリースしている。

Surfacing  もともと私は、そのアーティストの作品鑑賞としては、やはりベスト盤はあくまでもさわりであって、アルバムを一つの作品として初めて評価の対象になると考えている。その意味では、やはり彼女のベスト・アルバムは
4th「サーフェシング Surfacing」 ARISTA BCCM-37912 , 1997 (左)
であろうと思う。
 これを聴いてみると解るが、サラ流の美しくうねりのあるメロディーが快くアルバム全体に流れ、彼女のデビュー以来約10年の完成度を感じさせる。例によって彼女の声は抱擁感のあるそして静かに訴える魅力を秘めている。
  2曲目の”I Love You”には、囁くような歌声でまさに彼女の世界に引き込まれる。一方3.”Sweet Surrender”はオルタナティブ・ロックだ。そして4.”Adia”、7.”Angel”はもう文句なしだ。6.”Witness”というスロー・ロック・ナンバーも好きだ。そして9.”Full Of Grace”も魅力的。このアルバムは、サラにかぎらずポピュラー・ミュージック界の宝であるとも言っていいように思う名盤である。

 彼女は、自己のミュージック・アルバム作り以外の活動も多方面からの讃辞がある。そんな面を考察しながら、次回、もう少しサラ・マクラクランの活動や魅力に迫ってみたい。

 

 

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