セルジオ・メンデス

2010年1月26日 (火)

LP-playerの復活(4) ハービー・マン Herbie Mann の多様なジャズ・フルート

ロック、ボサ・ノヴァをこなすジャズ・フルートのハービー・マン

 長らく離れていたLP盤の再聴を今年のスタートに当たって行っていると、やはり1960~70年の熱き時代が、いまもつい先日のように感じられる。
 そんな中で、このところ触れてきた”セルジオ・メンデス&ブラジル’66”そして”バーデン・パウエル”のブラジル・ボサ・ノヴァの世界に足を入れたところで、当時ジャズ・フルートのハービー・マンに繋がるところをここで回顧するのだ。

Vossanova 「Do the Bossa Nova With HERBIE MANN ボサ・ノバ/ハービー・マン」 ATLANTIC P-6096A 1972
 
 日本でこのアルバムがお目見えしたのは、セルジオ・メンデスやバーデン・パウエルのボサ・ノヴァをベースにしての音楽が60年代後半に知れ渡ったことによる。実はそれより前の1962年に、ジャズ・フルート奏者のハービー・マンが彼らのブラジル音楽に注目して収録したアルバムがあった。それがこのアルバムで、日本では1972年にお目見えしている。

 当時、バーデン・パウエルはボサ・ノヴァ・ギターにその実績を積み上げているが、セルジオ・メンデスはまだ例のロック感覚を加味したブラジル’66の世界には至っておらず、むしろサンバにジャズ的アプローチを試みていたジャズ・ピアノ奏者だった。
 そしてこの両者は、ハービー・マンがブラジルを訪れた際に共演したのである。収録8曲の内、2曲にセルジオ・メンデスとボサリオ6重奏団が、さらに別の2曲にバーデンのギターが登場する記念的貴重盤だ。特にB面3曲目には、あのバーデンの曲”Consolacao コンソレーション”が彼のギターで登場し主たる旋律を奏でて、ハービーのフルートがバックを構成しながら合間にアドリブ的演奏で味付けしている。こんな共演が楽しめるのだ。
 このようにハービー・マンはクールでモダンなサンバ=ボサ・ノヴァに興味を持ち、彼のフルートを生かす方法論を作り上げたのだった。

Menphisunderground  日本において、ハービー・マンは「Memphis Underground メンフィス・アンダーグラウンド」ATLANTIC AMCY-1042  1969 で名を馳せたと言っていい。

 今でもこのアルバムには絶賛する人が多い。’60年代後半のソウル、ロック、ファンクなど取り入れたジャズ・スタイルが興味が持たれてきた中で、特にハービー・マンのそうした意欲は旺盛で、このあと大きなジャズ界のムープメントであったフュージョンの先駆者とも言える。
 アルバム・タイトル曲”Menohis Underground”は彼の作った代表作。リズム・セッションが流れる中に、ハービーのフルートとロィ・エアーズのヴィブラフォンが掛け合いを繰り返し、アドリブを効かせて進行する。
 メンバーは、フルートのHerbie Mann と ヴァイブラフォンのRoy Ayers、ギターの Larry CoryellとSonny Sharrock それに加えてのメンフィスのリズムセクションである。永遠の名盤だ。(デジタルリマスターした2007年のCD盤 WPCR-75356 がある)

Goldenprize 左の「HERBIE MANN and Soul Flutes  GOLDEN PRIZE」 A&M  GP-204   1971 という如何にも大衆受けを狙ったアルバムもあった。

 アルバム名にある Soul Flutes というのは、このアルバムの為に結成されたグループのようであるが、全12曲あらゆる分野のポピュラーな曲をハービー・マンのフルートを中心に、主としてラテン・ロックに乗ったイージー・リスニング・ミュージックとして展開している。こうした大衆サービス的なアルバム造りをしたのは、当時あまりにも彼のフルート・サウンドが広く受け入れられた為であろう。そんな意味で、私にとっては若干魅力には乏しいところであったが、”Unchain My Heart”、”Scarborough Fair”、”朝日のあたる家”などなど続々ポヒュラー・ミュージックが登場する中で、私はディズニーの漫画映画からの”Trust in Me”が、彼らしいフルートの美しい世界が聴けて救いであった。

Pushpush さて、その後ATLANTICから、ロック・ギタリストのデュアン・オールマンを迎え、バックにはジャズ界のセッション・マンを集め、彼独特のロック、ソウル、ジャズのクロスオーバーを作り上げたアルバムをリリースした。
「HERBIE MANN  PUSH PUSH」 P-8164A  1971

 このあたりは、本当の彼のやりたかった曲なのだと思う。アルバム・タイトル曲の”push push”などは、フルートとパーカッションの掛け合いから、エレキギターのリードなどを織り交ぜて素晴らしい。これは当時、他にみない独特の感覚を呼び起こしてくれてハービー・マンのファンになったものだ。このアルバムはその他フルートとギターの掛け合いが面白い曲など、今聴いても素晴らしい。これがハービー・マンだ。

Mississippi もう一つ私のお気に入りのLPがあった。
「HERBIE MANN  MISSISSIPPI GAMBLER」 ATLANTIC P-8246A  1972

 
これは、ハービー・マンが余りにも多彩な音楽スタイルを取り入れて演奏する中で、再び彼自身の原点回帰をしたようなもので、あのヒットしたアルバム「メンフィス・アンダーグラウンド」の流れのアルバムだ。ディープ・サウスのミシシッピー一帯は黒人達のミュージックをもとにジャズ感覚の宝庫。彼はそこから多くを汲み取ってこのアルバムを作り上げたのだろう。彼の曲”mississippi gambler”は、コンガが刻むリズムにフルートが踊り、そしてテナー・サツクス(David Newman)、ギター(Reggie Young)が次第に色づけして行くスタイルで楽しい。

 1930年ニューヨーク生まれのハービー・マンは、残念ながら2003年に亡くなっている。テナー・サックス奏者からフルートに転向して、ワールドミュージュックの要素を多角的に取り入れて、ボサ・ノヴァをいち早く演奏したり、ニュー・ロックとジャズを組み合わせ一つの世界を作り上げたりして、一世をを風靡した。私にとっては、やはりLP時代の忘れ得ないミュージシャンであった。

(視聴)

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2010年1月20日 (水)

ニュー・ボサ・ノヴァのセルジオ・メンデス ~Part2~

進化するセルジオ・メンデスの歩み

 ”セルジオ・メンデス&ブラジル’66”は、1971年には”ブラジル’77”となり、更に’70年代末には”ブラジル’88”と発展して行くわけであるが、彼の音楽スタイルは、ブラジルを基盤としての多彩な時代の流れを取り入れて多様に変化しつつ現在まで繋がっているわけだ。特に’70年代はスティービー・ワンダーも参加する交流があったり、フュージョン系のアルバム(アルバム・タイトル「SERGIO MENDES」1975年)もリリースしたりと多彩である。

Segiomendes2006  特に、私の思い入れはブラジル’66時代であり、その後の流れには希薄になってしまったが、近年2006年には、少なくとも10年の音沙汰無し後の復活で、左の「SEGIO MENDES -timeless-」Concord/Hear 0013431231523 リリースして驚かされた。
 このアルバム、ヒップ・ホップ&RAP と彼のかってのブラジル’66時代のニュー・ボサ・ノヴァ・ビートとの混成ミュージッックを開拓したのだ。とにかく40年経過して、その時代の流れを吸収する能力には恐れ入ったというところ。これはヒップポップアーティストであるウィル・アイ・アムとの合作と言っていい。特に私の知らない分野の多くの面々をゲストに迎えてのこのダンス・ミュージックは、世界の若い世代にブラジル・ミュージックを広げたという成果も大きかったようだ。
 とりあえず、昔のブラジル’66時代からの変化を知ろうとして、このCDアルバムは手元にあるが、一口で言うと、楽しい世界と言っていいと思う。

 とにかく、私にとってはセルジオ・メンデスは60年代のある意味でのラテン・ロックというブラジル’66時代が全てであって、その当時の女性ヴォーカルのラニ・ホールなんかは非常に懐かしい。彼女は当時のプロデューサーのハープ・アルパートと結婚して、その後の音楽活動も長く、映画007の主題曲”never say never again”の世界的ヒットなどもある。

Sergio66besto  昔のLPでは少々頼りないため、何年か前に買ったブラジル’66時代のベスト盤が左のアルバム「SERGIO MENDES & BRASIL'66 BEST SELECTION」 EMC-504 である。
 これには、”mais que nada”を代表に18曲が収録されている。復刻のためノイズありの断りがありますが、取り敢えずはベスト盤としての意味はあるものだ。ただ欲を言えば、ビートルズの”Daytripper”は収められているが、”Fool on the hill”がないのが寂しい。などなどそれでもCDのベスト盤として、ときには聴いてきたわけであるが・・・・。

Sergio66bestn  ところが、2008年には、UNIVERSAL CLASSIC & JAZZ から「SERGIO MENDES & BRASIL'66 BEST HITS THE LOOK OF LOVE」 UCCU-8009 がリリースされている。
 これはブラジル’66時代のかなり出来の良いベスト盤で20曲が収められ、取り敢えず私は納得の一枚である。音質も改善が計られていて、セルジオの60年代衝撃のボサ・ノヴァ・ビートを知るにはお勧めの一枚である。

 私にとっては、セルジオ・メンデスは、ブラジル音楽のボサ・ノヴァというもののポップな発展形を楽しませてくれた若き時代の宝でもあり、古きLP盤を再検証しているなかで、懐かしき思い出を引き出してくれたアーティストである。彼は1941年生まれで、今年は69歳になると思われるが、なんか70歳記念の新展開なんかもありそうな雰囲気を感じているというところだ。
 

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2010年1月18日 (月)

LP-Playerの復活(2)   ”セルジオ・メンデスとブラジル66”のニュー・ボサ・ノヴァ

熱き時代の’60年代後半の花 :  圧巻のニュー・ボサ・ノヴァ・ビート

 1960年代は、日本ならず世界が一つの転機を迎えていた。英国のビートルズのニュー・ロックは世界を巻き込んで一大革命をもたらした。昨年末に、私はLPターン・テーブルを復活させたことにより、過去のLPアルバムを紐解いている中で、60年代後半は非常に熱くそして密度が高かったことが思い起こされる。
 ロック畑では、私の場合はビートルズにはいまいち興味は薄く、CCR、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、サンタナと言う流れでロックに開眼したわけであるが、その当時一方で私が傾倒した中で、”セルジオ・メンデスとブラジル’66”があったことを思い出したのだ。

Photo 当時手に入れたセルジオ・メンデスとブラジル’66の1stアルバム「SERGIO MENDES & BRASIL'66」A&M Records AML15 1968
  昔からブラジルにあるどちらかと言えばクールな大人のイメージのボサ・ノヴァを、ブラジルのサンバとロック・ビート、ゴーゴーのインパクトを加味してのセルジオ・メンデス独特のニュー・ボサ・ノヴァの出現は、当時の若き私にとっては強烈だった。
特に”Mais Que Nada マシュ・ケ・ナダ”の新鮮なビート、そしてリズム感たっぷりの女性ヴォーカルは、今までになかった新しい世界だった。今ここに破れて落ちそうになっている帯付きのLPを再生していると、私の音楽を愛する一翼であるポピュラー・ミュージュックの世界のスタートをみる思いである。
 このアルバムには、ビートルズの”DAYTRIPPER”も演奏されているが、まさにビートルズの世界とは全く異なったリズム感と女性ヴォーカルの醸し出す世界は魅力的で、お見事であった。更にブラジルの世界を醸し出す”おいしい水Aqua de Beber”、スロー・ナンバーの”Slow Hot Wind”などは私の好む世界である。

  (メンバー) ジャニス・ハンセン(女性ヴォーカル)
         ラニ・ホール(女性ヴォーカル)
         セルジオ・メンデス(ピアノ)
         ボブ・マシーズ(ベース)
         ジョアン・パルマ(ドラムス)
         ジョゼ・ソアレス(各種打楽器)

Photo_2これは、彼らの3rdアルバム「LOOK AROUND」 A&M Records  AML-16 1968 
  この盤を聴き直しているが、意外に当時の印象が少なかった。しかし、このアルバムではビートのみでなく、ストリングスがバックに登場しての女性ヴォーカルの美しく歌い上げる流れも一つの聴きどころとして受け止めた記憶がある。
 B面のトップに映画「カジノ・ロワイヤル」の”The Look of Love”が登場するが、このセルジオ・メンデス流の編曲が楽しめる。又それに続いての”Pradizer Adeus さよならをいうために”は、ビートはあまり前面に出さずに、甘いムードで構成していてこれも聴きものだ。

Photo_3

 さて、いずれにしても一番私が何度も聴いたのは、この4thアルバムである。「FOOL ON THE HILL」 A&M Records AML-23 1969
 言わずと知れたビートルズの”Fool On The Hill”をサンバに近いタッチで、そしてラニ・ホールらの女性ヴォーカルが妙にクールな印象を醸し出す。これを聴いたとき、ビートルズの原曲以上にインパクトがあったのを思い出す。
 実は、このアルバムからこのブラジル’66はメンバー・チェンジをしている。オリジナル・メンバーはセルジオとラニのみである。他の4人はむしろブラジルの実力者を集めている。”FESTA”という曲も聴いても解るが、サンバ・ロックを聴かせその後それに変わってスロー曲への変調を取り混ぜて、曲の構成を複雑にしている。
 これまでのアルバムは全て中村とうようがライナー・ノーツを書いている。そしてかなりセルジオの曲分析には説得力があると思う。彼はこのアルバムにおいては、彼らの曲はボサ・ノヴァと言うよりは、むしろ”ラテン・ロック”と表現したほうが的確かもしれないことを、セルジオのインタビューも含めて紹介しているところが興味深い。
 いずれにしても、このアルバムは私にとっては愛聴盤であった。ラス前の”去りゆく夏 When Summer Turns To Snow”などの美しさは忘れられない。

Photo_4 6thアルバム「モーニン YE・ME・LE」 A&M Records AML-51 1970
 このアルバムには、4thアルバムと同メンバーであるが、そこにギターが加わった。そして更にブラジル色を発展させている。又ビートルズの曲は何時も取り上げてきたが、ここでは”ノールウェイの森”が登場する。やはり彼ららしい編曲でかなり活性度が高い印象に変わっている。
 このアルバムになってセルジオの曲の完成度は更に高まっていると言っていい。それはある意味ではスタート時より、若干マニアックになってきていると思う。
 こうして40年前のLPを現在に再現してみている中で、このアルバムはあまり印象に残っていないのだが、むしろ今となって新鮮な感覚で聴いているところが不思議である。特にセルジオが歌っている”Where are You Coming From あなたは何処から”は、何か現代調といってもおかしくない説得力のあるものだ。

 LPターン・テーブルの復活から、過去に虜になったと言ってもよいアルバムを今にして聴き直していると、不思議に当時の若かりし頃の気持ちになれるところが実に楽しい。ロックの開花と並行してのセルジオ・メンデスとブラジル’66の活動は、私にとっての一つの花でもあったのだ。
 

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