女性ヴォーカル

2021年3月 8日 (月)

エル Elle 「Close Your Eyes」 

演奏展開がジャズらしさを増して

<Jazz>

Elle 「Close Your Eyes」 
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1095 / 2021

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Elle  : Vocal
Alessandro Galati : piano
Guido Zorn : bass
Lucrezio Seta : drums

 我が愛するアレッサンドロ・ガラティに見出されてレコーディング・デビューに至ったというイタリアの若手歌姫:Elle=エルの新作。前第1作『So Tenderly』(TYR-1081)は、「ジャズ批評」誌で2019年ジャズ・オーディオ・ディスク大賞のヴォーカル部門でトップ(金賞)に輝いた注目株。実はあのトップに関しては私はちょっと納得しなかったんですが、まあアレサンドロ・ガラティの曲作りと演奏に魅力があるところで納めていた。
 寺島靖国に言わせると、女性ヴォーカルは巧さより声の質に魅力が無ければ・・・と、成る程その意味においては私も取り敢えず納得しておく。
 今回も前作と同じくガラティ率いるトリオをバックにしたニュー・アルバムだが、全曲ガラティが編曲したという構成であるが、ただ同じモノは造らないと言うことか、オープニングの曲から若干イメージは変わって来ている。

 

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01. Comes Love
02. If I Should Lose You
03. Autumn In New York
04. Close Your Eyes
05. My Old Flame
06. I Concentrate On You
07. Once In A While
08. I Fall In Love Too Easily
09. Besame Mucho
10. I'll Be Seeing You

 エルのヴォーカルは、あるところで「"大人の夜の小唄セッション"ぽい」と表現されていたが、確かにそうかなと言うところか。とにかく力を抜いたテンダーにしてアンニュイ、そしてセクシー度も適当というところが魅力か。歌の巧みさというところでは、クラシック歌手を経てきていると言うのだが高度というところにはイマイチだ。ただ声の質が女性としての魅力があるところが支持されるポイントであろう、ウィスパー・スタイルが売り処。

 今回もガラティの編曲演奏がやはり注目するところだ。ロマンティックな耽美性は相変わらずだが、彼の持ち味の嫌みの無い展開が時にスウィングし、時に刺激的なところを織り交ぜての過去の曲の演奏スタイルにとらわれない独自の世界がいい。選曲そのものは寺島靖国が行なったようだが、編曲にはガラティの独自的解釈が強化されて、バラードっぽくを期待した面を特にM1."Comes Love"のようにスウィングした軽快な出だしで、期待とは別展開させているところが面白い。アルバム・タイトル曲M4."Close Your Eyes"も同様でありピアノ、ベースの演奏も楽しめる。しかしどんな場面でも決して力んだ展開はみせず、あくまでもソフト・テンダリーに押さえている。曲の中で、ガラティのピアノ演奏の占めるところも多く、そんな意味では今回の方が、ある意味では変化が多くジャズっぽい。

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  いずれにしても、このエルのヴォーカル・スタイルは、やっぱりウィスパー系がぴったりで、M5."My Old Flame"の流れはいいし、中盤のガラティのピアノも美しい。そしてそのパターンは、M8."I Fall In Love Too Easily"の世界で頂点を迎える。ここではヴォーカルのイメージを大事に間をとりながらのピアノ演奏の世界が美しく、しかも進行して行くうちにスウィングしてみせたり、その流れは如何にもガラティの世界。

 このタイプの女性ジャズ・ヴォーカル世界は、"特にジャズならでは"というムードであって、それを寺島靖国は求めて企画した事がひしひしと伝わってくる。そんなアルバムとして評価したい。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       85/100

(視聴)
Elle の映像が見当たらないのでA.Galati Trio ものを ↓

 

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2021年2月13日 (土)

ルネッサンス Renaissance 「Sight and Sound in Concert」

涙ものの映像のパーフェクト収録盤

<progressive Rock>

Renaissance 「Sight and Sound in Concert」
Live at Golders Green Hippodrome, London, UK 8th Jan.1977
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 70min.

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Annie Haslam : Vocals
Jon Camp : Bass, Vocal
Michael Dunford : Guitars, Vocal
John Tout : Keyboards, Vocal
Terence Sullivan : Drums, Percussion, Vocal

  かって我々がロックを愛し聴き入った1960-1970年代というのは、まずは英国はじめ欧米の彼らのライブ映像なるものは殆ど見ることが出来なかった。そこでアルバムに載っていた写真や雑誌などのミュージシャンの写真を見ながら、彼らの演奏を頭に浮かべ聴いていたものである。そもそもアルバムすら手にすることが難しかった事があったぐらいだから。
 ここに取上げたクラシックの要素を取り入れたプログレッシブ・フォーク・ロツクのルネッサンスRenaissanceの映像なんて考えてもみないところであった。とにもかくにもアニー・ハズラム (右下)の美しい声にうっとりしながら、聴き入ったものである。
 ところがここ10年の世界の情勢の変化は信じられないところに、このルネツサンスの1970年代ライブ映像を良好なプロショットものでYouTubeにより見ることが出来たのである。まあこんなことも一つの衝撃であった。私自身はもうこの何十年と彼らのアルバムからは離れて別の世界に現をぬかしていた訳であるが、こんな映像の出現で、昔をつい先日のように思い起こすのであった。

 そうこうして数年経ったわけであるが、最近ブート界を少々覗いていると、なんとその衝撃映像のパーフェクト盤が手に入るのではないか。こうして今日のブート映像によって、40年以上前のステージを遅まきながら見ているのである。

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1.Introduction
2.Carpet Of The Sun
3.Mother Russia
4.Can You Hear Me ?
5.Ocean Gypsy
6.Running Hard
7.Band Introduction
8.Touching Once
9.Prologue

 

 これは丁度私が最もお気に入りだったアルバム『Novella お伽噺』(1977)のリリース時のもので、上のような演ずる曲は注目の"Can You Hear Me ?"があり、アルバム3th『プロローグ』から7th『お伽噺』までの五枚のアルバムから選ばれている。1977年英国の音楽番組「Sight & Sound」用に収録されたもので、ロンドンBBCライブによる70分のパフォーマンスがプロショット映像でこうして観れるのだ。当時このようなものが観れたら日本中大騒ぎだったと想像に難くない。

   このRenaissanceというバンドは5人の構成で、アニー・ハズラムという女性ヴォーカルを前面に出して、彼女のクリスタル・ヴォイスが神秘的な香りを漂わせて聴く者を圧倒したわけだ。しかしのメンバーは3rdアルバム『Prologue』(1972)からで、1、2ndアルバムとは、全くの別グループ・メンバーで演じているのだ。
 本来の元メンバー(YARDBIRDSのキース・レルフそしてジム・マッカーティのリーダー・バンド)の一部はこの時から「ILLUSION」というバンドとなっている。しかし我々が日本にいて知ったバンドは、実はこの二代目の方の(新)Renaissance からのメンバーもの (下)であったのである。従ってここに収録されている曲も人気を博した二代目による3rdアルバムからのものである。

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  いずれにしてもリーダーであるマイケル・ダンフォード(G)(上左)のオリジナル曲を中心に展開されており、彼は総入れ替えした前期バンド・メンバーとの関係と彼自身が放送作家へと歩み始めていた時で、表には出ずバックにいた頃(3rd, 4thアルバム)の表舞台のメンバーと共に、晴れてこうして堂々と演ずるライブは頼もしい姿だ。

 当然注目曲はM4."Can You Hear Me ?  私の声が聴こえますか?"だが、アルバムでは、オーケストラ、混声合唱団とクラシック風の展開、そしてアニーのクリスタル・ヴォイスが物語調に流れる。その美しさと日本に無い異国の神秘を感じつつ聴いたものだった。ここではそのオーケストラ、混声合唱団は無いが、ジョン・タウトのキー・ボード、マイケル・ダンフォードのカッティング演奏のギター、ジョン・タウトのベースがしっかりその演ずる姿と音を聴きとることが出来、むしろアニーのヴォーカルの占める位置も多くなり、ドラムスのテレンス・サリバンが頑張っている様子も解って楽しい。アルバムでのこの後に続く曲"The Sisters"の美しさと、"Midas Man"のダイナミックな演奏が無いのが寂しいくらいである。
861749098963d86e351502bf14b786a6  『運命のカード』(1975)からのM3."Mother Rssia "は、ジョン・タウトのピアノとダンフォードのギターが美しい。そしてM5."Running Hard"では、ピアノ・プレイがたっぷり聴くことが出来る。
 こうしてみているとアニーはあまり歌っているときは表情を変えずに、ややクールな出で立ちだったことも解る。


   そして近年のアニーの活動等には殆ど接していなかった私であり、ルネッサンスというのは、1970年代の"私の想い出のバンド"であって、そのことだけで満足してきたのである。このライブ映像はそれを十二分に思い起こさせてくれるものであった。当時何故あれ程このバンドに魅力を感じて心が躍ったのか、そして一方心の安らぎを感じたのかは解らないが、40年経ってみてもこうして当時の心が蘇り楽しめることは嬉しいことだ。
 

(評価)
□ 選曲・演奏   90/100   
□ 映像・音質   85/100
 
(視聴)   

 Renaissance "Can You Hear Me ?" (1977)

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2021年1月15日 (金)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」

欲張りのヴォーカル入りのクインテット・ジヤズ

<Jazz>

Enrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」
Abeat For Jazz / IMPORT / ABJZ 219 / 2020

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Enrico Pieranunzi (piano, arrangement) (electric piano on 1, 9)
Luca Bulgarelli (bass except 7)
Dede Ceccarelli (drums except 7)

*special guests:
Simona Severini (vocal except 3, 5)
Andrea Dulbecco (vibraphone except 7)

  日本で圧倒的人気の エンリコ ・ピエラヌンツィ(1949年ローマ生まれ)のピアノトリオを基軸とし、しかも彼のオリジナル曲を中心としたアルバムだが、ヴィブラフォン&女性ヴォーカルのゲスト二人を迎えてのやや異色のアンサンブル編。
 実はエンリコと言うとあのクラシック・ムードのある情緒あるメロディーのピアノの美旋律トリオを私はどうしても期待してしまうので、その世界とは明らかに異なる彼の近年のアグレッシブな姿勢がやはり前面に出てのアルバム。その為少々評価が難しい為に年を越してここに取上げたという次第。

Vvj106_hqf_extralarge  9曲中7曲に登場する女性ヴォーカルのシモーナ・セヴェリーニの歌声が、先ずは重要な役割を果たしている上に、近年ややジヤズ界から後退気味のヴィブラフォンが登場してのピアノの取り合わせが又微妙で、ちょっと意外な世界に流れていくのである。
  そしてもう一つピエラヌンツィとこの女性セヴェリーニのコンビというと、2012年からの関係で、2016年にはアルバム『My Songbook』(VVJ106/2016)(→)だ。これはピエラヌンツィが彼女を全面的にフューチャーしアレンジ、プロデュースを担当した本格ヴォーカル・アルバムだった。その後あのドビュッシーへの想いというちょっと中途半端だったアルバム『Moisieur Claude』(BON180301/2018)にも登場している。そんな流れの中での今回のアルバムなのである。

(Tracklist)
1. Time's passage (Enrico Pieranunzi) 5,40
2. Valse pour Apollinaire (Enrico Pieranunzi) 4,13
3. Biff (Enrico Pieranunzi) 4,33
4. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard)*Quartet version 4,58
5. Perspectives (Enrico Pieranunzi) 5,15
6. A nameless gate (Enrico Pieranunzi) 5,04
7. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard) **Voice&piano version 3,56
8. The flower (Enrico Pieranunzi) 7,10
9. Vacation from the blues (Arthur Hamilton/Johnny Mandel) 5,53

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 上のように、8曲中6曲はピエラヌンツィのオリジナルと言うことで、さてさてどんな美旋律ピアノの世界かと興味津々といったところ。しかし驚くなかれ、ここは期待に反してと言ったところでもあるが、今回のピエラヌンツィ(p)は、主役の座をヴォーカルのセヴェリーニやパーカッシブにメロディーを演ずるデュルベッコのヴィブラフォンに多くは譲っていて、むしろ引き立て役やリード役に徹した感がある。従って控えめに節度を保ちつつ、ゲスト陣の演ずるところに、端麗な味わい深いピアノを添えて演ずる。ただし時にアクセント聴かせてのリズムカルなプレイも披露もしている。そんなところで所謂ピアノ・トリオものとは全く別のアンサンブルな音作りのアルバムになっているところが特徴だ。

Simonaseverinijbw_20210114205401  そして重要なシモーナ・セヴェリーニのヴォーカルは、なかなかテクニックのある上クラスではあるが、中・低音に質量があるハスキー・ヴォイスでのその発声と声の質にはおそらく好みが分かれそう。

 M1."Time's passage "は、アルバム・タイトル曲で、ピアノ・トリオとゲストのヴォーカルとヴィブラフォンの演奏だが、美しさという世界でも無く、ヴォーカル曲というのでも無く、アンサンブル尊重なのか、意味のあまり理解できない曲。
 まあ、彼女のヴォーカルを主体に聴くならM2., M4.といったところか。M2."Valse pour Apollinaire"は、リズムカルにして、メロディーがよく、彼女は生き生きとしていてパリ・ムード、演奏も躍動感あって良い曲に仕上がっている。一方M4., M7. " In the wee small hours of the morning"はフランク・シナトラが歌った名曲で、しっとり歌い上げて聴き応えあるし、ヴィブラフォンとピアノとの相性が良い美しいヴォーカル曲として上出来。
 ところがM6."A nameless gate"あたりは、ヴォーカルと演奏におけるピアノの美しさが中途半端。何に感動して良いのか考えてしまうという状態。
 とにかく聴くにポイントはそれぞれ多々あるのだが、例えばM7.のヴォーカルと続くM8." The flower"で盛り上げた何か訴えてくるムードはかなり良い線をいっているにもかかわらず、M9."Vacation from the blues "のアンサンブルで全く別世界に連れてゆかれ、描いた世界が台無しになってしまう。描く世界の主体がハッキリしない変わったアルバムであった。

 結論的には、それぞれの曲には聴き所があるにもかかわらず、ヴォーカル・アルバムか演奏のアルバムなのかの聴いた後の感想がまとまらない作品だ。まあヴォーカル込みのクインテット・アルバムとしておこう。


(評価)

□ 曲・演奏・ヴォーカル    80/100
□ 録音            85/100

(視聴)

 

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2021年1月11日 (月)

モニカ・ホフマン Monika Hoffman 「TEN MUSES」

かなり手慣れた華やかなジャズ・ヴォーカルを展開

<Jazz>

Monika Hoffman 「TEN MUSES」
Mochermusic / sweden / MOM-0031 / 2020

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Personnel:
Monika Hoffman - vocals (+ violin on 3)
Arno Haas - saxes on 3,5,8,10
Klaus Graf - alto sax solo on 9
Alexander Buhl - tenor sax solo on 1
Peer Baierlein - trumpet/flh on 2,6,8,10
Marc Godfroid - trombone solo on 6
Christoph Neuhaus - guitar on 4,5,8,10
Patrick Tompert - MD + piano (except 1,9)
Martin Schrack - piano on 1,9
Jens Loh - double bass on 2,4,7,10
Benny Jud - electric bass on 3,5,8
Axel Kuhn - double bass on 1,6,9
Fulgencio Medina Jr. - drums on 2,4,7,10
Alvin Mills - drums on 3,5,8
Guido Joris - drums on 1,6,9
The Jazzfactory Orchestra - on 1,6,9

 昨年聴いてはいたが、ここに登場出来なかったものを少々取上げようと、まずはこのスウェーデンの女性ヴォーカリストのモニカ・ホフマンだ。彼女は1982年生まれの38歳。父はスウェーデン人、母はハンガリ人という歌手。流暢なハンガリー語、スウェーデン語、英語を話す国際派。3歳の時にヴァイオリンを弾き始め、サキソフォンも弾き始めたと。 子供の頃、そして10代の頃、彼女は様々な音楽学校に通い、その後バークリー音楽大学に進学した。彼女は奨学金を受け、マイケル・ブレッカーやチャーリー・ヘイデンとステージを共有するという機会を得ている。 いずれにしても華やかなアメリカン・ジャズに寄っている。しかもし豊かな声量で、ジャズだけでなくクラシック、ポップス、ラテンと幅広くこなす。
 彼女のスタートは、もう15年前の2005年にハンガリー ・メガシュタル(アイドル)のオーディションを受け、総合9位と好評価は得られなかったがその反面、高い人気を獲得して成功した。これにより歌手としてのキャリアをスタートさせ、最高のジャズピアニストの一人、ローベルト・ラカトースとも共演しスタジオ・アルバムが成功。
 本作は彼女のスタジオ・アルバム5作目あたりか。
 
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1. First Time
2. Sway
3. Fading Like a Flower
4. Cheek to Cheek
5. Where Do I Begin
6. Besame Mucho
7. Bang Bang
8. Lover Man
9. What are You Doing the Rest of Your Life
10. Lullabye of Broadway
11. Over the Rainbow

 まあどちらかというと、ジャズの中でもポピュラーな曲が続く。それも自身の敬愛する 10人の女性ヴォーカリスト の Doris Day, Judy Garland, Ella Fitzgerald, Rosemary Clooney, Marie Fredriksson, Shirley Bassey, Cezalia Evora, Cher, Barbra Streisand, Etta James に関係した作品を採り上げて歌い込んだと言うことのようだ。

 M1."First Time", M6." Besame Mucho" など期待したが、なんとビックバンドによるヴォーカルで、騒々しくて私向きで無かった。しかし彼女はジャズ・ステージは相当こなしてきているようで、その曲での歌い込みはかなり手慣れていて堂々と歌い上げている。
   とくに、M4."Cheek to Cheek"などは、ジャズの典型的なスタイルをオーソドックスに、しかも彼女らしさも出して危うさがない。
 私の場合は、M2."Sway"がバラード調に流れ、バックも静かな中で彼女なりきの編曲も多彩に込められて、後半のトランペットもバックにピアノと共に入るが、落ち着いていて好感度が高かくこの線なら期待度高い。

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 M5."Where Do I Begin(Love Story)"は懐かしい曲だ。最近聴いていなかったせいか、熱唱とバックのギターの味と妙に気に入ってしまった。
 M7."Bang Bang"ベースのリズムの刻みが効を呈して、ピアノの演奏も快調で彼女の熱唱に盛り上がって、この曲の編曲も面白く聴ける仕上げ。
 M9."What are You Doing the Rest of Your Life"バック演奏も、彼女のヴォーカルが始まると当時にサポートに変化して彼女の情感を盛り上げる。
 M11."Over the Rainbow" 彼女のオリジナル旋律の歌から始まって、この曲本来のメロディーがすぐに出てこないが、締めくくりに相応しくしっとりと歌い込むところは充実感ある。

 彼女のジャズ・ヴォーカリストとしての経験の豊富さが感じられる曲の展開と歌い込みがアドリブも含めて見事である。後は声の質など好みの問題だが、ユーロ系を感ずるよりアメリカン感覚でありその点が私的には気になるところ。しかし所謂ジャズ・ヴォーカルとしてはそれなりの評価は十分出来る。

(評価)
□ 選曲・編曲・歌   85/100
□ 録音        80/100

(視聴)  "Sway"

 

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2020年12月25日 (金)

アンドレア・モティス Andrea Motis 「do outro lado do azul もう一つの青」

女流 「歌うトランペッター」の世界を演ずる

<Jazz>

andrea motis 「do outro lado do azul もう一つの青」
VERVE / JPN / UCCM1251 /2019

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Andrea Motis : Vocals, Trumpet, flugelhorn, sax
Josep Traver : Guitar
Ignasi Terraza : piano
Joan Chamorro : double bass
Eateve Pi : drums
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 アンドレア・モティスは1995年バルセロナ生まれの若き女流トランペッターにしてシンガーのジャズ・ミュージシャン。彼女はスペインの天才少女的存在で、7歳からトランペットを吹いてきたと言うが、サン・アンドレウ市立音楽学校でジャズを学び、2012 年クインシー・ジョーンズが彼女をステージに上げたことがきっかけとなり一躍脚光を浴び2017 年にデビュー。まだ二十歳代半ばというには日本では名が売れている。再三の来日効果であろうが、それなりのジャズを演ずるからこそ、そして若き女性の魅力とともに話題を誘うのである。

 実は私はちょっと敬遠していたのだが、今年の秋の「ジャズ批評218」の"いま旬の歌姫たち2020"にもトップを飾って紹介されていて、それならばとアルバム入手に踏み切ったというところ。
  どちらかというと、ヴォーカルはキュート系でスペイン語、カタルーニャ語、ポルトガル語などもこなす言語達者、トランペット・プレイは可愛い彼女から発する音に聴く者はうっとりしているようだ。これは彼女のセカンドアルバムでブラジル音楽の世界へ接近していて彼女の歴史になろうと言われる作品。コロナ騒ぎのこのところは、丁度出産もあってお休みしているようだ。

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1.Antonico
2.Sombra De La
3.Brisa
4.Sense Pressa
5.Mediterraneo
6.Filho De Oxum
7.Pra Que Discutir Com Madame
8.Danca Da Solidao
9.Saudades Da Guanabara
10.Choro De Baile
11.Record De Nit
12.Samba De Um Minuto
13.Baiao De Quatro Toques
14.jo vine

 

 曲は、オリジナル及びカヴァーの曲によって構成されている。
   M1."Antonico" やや物憂いように歌うサンバが意味ありげで気を引きますね。
 M2."Sombra De La"は、彼女のオリジナル曲で、ヴォーカルとFlugelhornが演じられている。特に印象に残るという程ではない。
 M3."Brisa" 快調なテンポで展開する。トランペット、ヴァイオリン、ピアノ、ドラムスのソロを後半並べて展開するが、聴く方より演者が楽しんでいるような曲仕上げ。まあメンバー紹介のようなものとして聴きました。
 M4."Sense Pressa"も彼女自身の曲。スローに展開する中にバックも小コンポで控えめ、何か意味深に訴えているようで、Flugelhornもしっとりしていて若き彼女としては成熟感あり聴き応えあり。
 M5."Mediterraneo"は典型的ラテン・タッチでありながら、スペイン・ムードを描く。彼女のソプラノ・サックスが後半に聴かせるところが味噌。
 M6."Filho De Oxum" 彼女のアカペラで始まり、カヴァキーニョ(ギター)の弦の響きに乗って艶のあるヴォーカルに焦点のある曲。

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 M7."Pra Que Discutir"はサンバの古典をハイテンポで、M8."Danca Da Solidao"は三つのローカル色の高いギターが列び、クラリネットが旋律を流し、彼女の充実ヴォーカルはこうだとブラジルの名曲をフラメンコ調でゆったりとひとりコーラスを含めて聴かせ魅力的。
 M9."Saudades Da Guanabara"はコーラスとトランペット・ソロというだけのもの。
 M10.".Choro De Baile" インスト・ナンバー、彼女のミュート・トランペットが登場しこれが聴きたかったがようやく登場。ヴァイオリンとの共演が珍しくテンポの良く明るめの曲であるが、私的にはちょっと期待外れ。
 M11."Record De Nit" なかなか味わい深い7弦ギターと彼女のヴォーカルのデュオ。この世界はいいですね。
 M12."Samba De Um Minuto" は、ムードはどっちつかず。
 M13.".Baiao De Quatro Toques"は、彼女のポルトガル語世界で締めくくる。このアルバムの意味づけがここにあることを強調している事が解るが、挿入曲からしてもブラジルをも関連して意識させるところがにくい。

 彼女のスペイン、ポルトガル、ブラジルの世界のそれぞれの文化や言語、リズムの意味に入っていこうとしての意欲が強く感ずるアルバムだ。若き天才と言われるのもそうした姿勢にも現れているのか、聴き応えのあるアルバムである。さて年輪を重ね侘(わ)び寂(さ)びがもう少し加わるとこれ又魅力が増すと思われた。

 

(評価)
□ オリジナル曲、カヴァー選曲、歌、演奏  85/100
□   録音・ミックス             80/100

(視聴)

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2020年12月17日 (木)

カジサ・ゼルフーニ Cajsa Zerhouni 「ESTUARY」

スウェーデンから有力ジャズ・ヴォーカリストの登場

<Jazz>

Cajsa Zerhouni 「ESTUARY」
Do Music / Sweden / DMRCD075 / 2019

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Cajsa Zerhouni, vocals
Birgitta Flick, tenor saxophone
Mattias Lindberg, piano
Arvid Jullander, bass
Peter Danemo, drums

  スウェーデンで注目の(名前の読み方の難しい)女性ヴォーカリスト、カジサ・ゼルフーニの初の完全アルバムが登場、なかなかオーソドックスなジャズ・ヴォーカルを演ずる。バックはスウェーデンのピアニストのマティアス・リンドバーグ、ベーシストのアルビッド・ジュランダー、ドラマーのピーター・ダネモと、それに加えてベルリンを拠点としているというテナーサックス奏者ビルギッタ・フリックからなるカルテットであり、ジャズを究めんとしている様がしみじみ感じられる演奏、これも一つの注目点。

 そして彼女の全域にわたって温かみのある親近感があって居心地の良い歌声で、アメリカン・スタンダーズと自身のオリジナル2曲を歌っています。彼女は2018年に”My Billie”というビリー・ホリデイ・トリビュートのEPアルバムでデビューしたようだが、それは知らなかった。 

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1. September In The Rain
2. Let's Face The Music And Dance
3. Estuary *
4. How Deep Is The Ocean
5. Humdrum Blues
6. I Only Have Eyes For You
7. You Don't Know What Love Is
8. Contemplating Moon *
9. Dearly Beloved
10. Blame It On My Youth
( *印 : 彼女とメンバーなどとのオリジナル )

 こういった言い方も変だが・・・彼女自身、そしてバック・メンバー含めて、なかなか真面目にジャズを演じているという印象。それもスタンダード曲の編曲のパターンがそう思わせるのか、演奏の形、彼女の歌い方と共にそんな響きである。
 そして彼女の歌声は全域にわたって比較的ソフトでクリアで、むりやり技巧を凝らすいうところでなく素直な印象。それが魅力といった方が良さそうだ。

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   冒頭のM1."September In The Rain"そしてM2." Let's Face The Music And Dance"を聴くと、彼女のヴォーカルが如何にも中心であるという曲仕上げで、その曲のアレンジがスウェーデン流なのか、なんとく未完成っぽくて逆に新鮮度がある。バックの演奏もサックスが演ずるところでも、いやに出張ってくることもなく、ヴォーカル・アルバムを意識して仕上げているところに好感度高い。M2.などのピアノもなかなか中盤に熱演して見せて、ジャズの面白みもある。
 M3."Estuary "はアルバム・タイトル曲。スロー・ナンバーに仕上げていて、ヴォーカル、ピアノ、サックスが交互に展開の主役を演じながらも、何か一つの物語を聴かせてくれているようで引き込まれる。それはM4."How Deep Is The Ocean"でも同様で、聴く方にとってはゆったり感の中で、ジャズを楽しる。
 M5."Humdrum Blues"のブルース・リズムが異色で、楽しさもありこのアルバムでいい色を添える。   
 M6."I Only Have Eyes For You"などを聴くと、スウィングする中に極めてオーソドックスなジヤズ演奏である。
 M7."You Don't Know What Love Is" のバラードにしてもピアノ、サックスが美しく力みが無いところが良いし、歌声は嫌みが全くない。 

 とにかく、ちょっと希なジャズに接した印象で聴いたアルバムだ。おそらくこれは何回か聴いてゆくに味が出てくるというタイプだと思っている。私の評価は良い。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  88/100
□ 録音       85/100


(参考視聴)

*

 

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2020年12月12日 (土)

ローレン・ヘンダーソン Lauren Henderson 「Alma Oscura」

叙情派ラテン・ヴォーカルにセクシーアッピール度も増して

<Jazz>

Lauren Henderson 「Alma Oscura」
BRONTOSAURUS RECORDS / IMPORT / BSR201901 /2019

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Personnel:
Vocals - Lauren Henderson
Bass - Michael Thurber
Piano - Sullivan Fortner (4, 7, 8) & Damian Sim
Drums - Allan Mednard & Joe Saylor (4, 7)
Percussion - Moses Patrou
Violin Soloist - Tessa Lark
Violins - Lavinia Pavlish and Brendan Speltz
Harp - Charles Overton
Guitar - Gabe Schneider
Clarinet - Mark Dover
Flute - Emi Ferguson
Trumpet - Jon Lampley
Viola - Rose Hashimoto
Cello - Tara Hanish
Guest Vocals - Leo Sidran

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 ローレン・ヘンダーソンの実力評価については既に知られているところだが、今回私は初めて彼女のアルバムに手を付けてみた。これも寺島靖国の誘導ですね。もう8年前の『Jazz Bar 2012』、そして今年の『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』です。
 ラテン・タッチのヴォーカルが特徴あるが、マサチューセッツ州生まれだ。ただしもともとメキシコ、スペインに住んでいたことがあるようでスペイン語OKで、又フラメンコもこなしているという。
 収録曲は8曲で少なめのアルバム。プロデューサーはベーシストのMichael Thurberで4曲提供している。又彼女自身のオリジナル曲も4曲登場。うち両者の共作が1曲。

(Tracklist)
1. From The Inside Out (Leo Sidran)
2. Something Bigger (Michael Thurber)
3. Alma Oscura (Lauren Henderson & Michael Thurber)
4. El Arbol (Lauren Henderson)
5. Ven Muerte (Michael Thurber)
6. Where Are You Now? (Michael Thurber)
7. Protocol (Lauren Henderson)
8. Dream (Lauren Henderson)

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 M1."From The Inside Out" このアルバムの技術陣のMix担当のLeo Sidranの曲を、物憂げなラテンタッチで描き、なんと中盤から彼とのデュエットで仕上げた曲。意識的にセクシーにしたというのでなく、彼女の歌うところなんとなく不思議な女性としての魅力が漂う。
  M3."Alma Oscura" はアルバム・タイトル曲、プデューサーと彼女の共作曲で、このアルバムでの私の一押しの曲。しっとりとスペイン語で歌い込んで、これもなんとなくどこかセクシーなのだ。
 M5."Ven Muerte"も囁き調のヴォーカルで、雰囲気が女性ならではの味を出してうまい。
 M6."Where Are You Now?"、柔らかくソフト・タッチ・ヴォーカル、美しく歌うのだが、どこかこの作曲者のベーシストのMicheal Thurberの曲とはマッチングが良い感じで、彼女の女性的魅力を引き出している。
 M3.は、フルート、M5.はクラリネット、M6.はハープが入って曲作りも上手いし、M7."Protocol"はタンゴ調で、アルバムの曲の配列にメリハリを付けている。

 とにかく、オリジナル曲で作り上げていて、女性ヴォーカルとしてはなかなか引きつけるものがあるのが特徴。ラテン・タッチといっても、やや妖艶なムードをしっかり演ずるところは心憎いところがあるアルバムだ。今後も注目すべきヴォーカリストとしておきたい。

(参考)
Profile_vrt_raw_bw <Lauren Henderson : Discpgraphy>
Lauren Henderson (2011)
A La Madrugada (2015)
Armame (2018)
Alma Oscura (2019)
The Songbook Session (2020)

 

(評価)
□ 曲・演奏・歌   88/100
□ 録音       85/100

(参考視聴)

*

 

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2020年12月 4日 (金)

グレッジェ・エンジェル Gretje Angell 「...in any key」

ヴェルベット・ヴォイスで・・・温かくソフトタッチで

<Jazz>

Gretje Angell 「...in any key」
GREVLINTO RECORDS / IMPORT / / 2018

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Gretje Angell (vocals)
Dori Amarilio (guitar)
Kevin Axt (Bass)
Gabe Davis (Bass)
Kevin Winard (Percussion)
Steve Hass (Drums)

Produced, arranged, recorded, mixed, mastered by Dori Amerilo

  このグレッジェ・エンジェルも私にとっては初物。彼女はオハイオ州アクロン生まれ、LAで活躍しているジャズヴォーカリストで、なんと遅咲きデビューアルバムだ。これも寺島靖国『For Jazz Vocal Fans Only Vol.4』で知ったもの。
 2世代に渡りジャズドラマーであった祖父と父親のもとに育った彼女は"幼少の頃からスモーキーで薄暗いジャズクラブで過ごした。そういう環境から物心つかないころから常にジャズが横にあった"と紹介されている。しかし音楽はクラシック、オペラを学んだ経歴があるようだ。
 このアルバムは、LAのギタリスト、プロデューサー、アレンジャーのドリ・アマリリオDori Amarilioによる企画のようだが、その彼とのデュオ作品。曲はスタンダーズやボサノバの比較的ポピュラーな曲が中心で、曲によってはPercussion 、Bass、 Drums 、Trumpet などの入る曲もあるも、 どちらかというとインティメイトな仕上がりである。

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1. Love Is Here to Stay
2. I'm Old Fashioned
3. Fever
4. Deep in a Dream
5. Berimbau
6. Do Nothing 'Til You Hear from Me
7. One Note Samba
8. Tea for Two
9. Them There Eyes

 

 もともとは、ソプラノ・オペラ歌手として活動していたという彼女だが、それとは信じられないほどのソフトで力みの無い優しいヴォーカルを展開する。主としてギターを演ずるプロデューサーのアマリリオの自宅での録音のようであり、その為か非常にリラックスした雰囲気である。
 流れはボサノバを中心とした軽めにソフトに軽快にといった流れで聴く方もリラックスできる。彼女の声も紹介ではベルベット・ウォイスと表されているが、とても好感度の高いところにある。

 ただ一曲だけオーケストラの入った曲M4."Deep in a Dream"があり、このアルバムでは異色。いわゆるJazzy noy Jazzのパターンでゆったりした美しく優しさ溢れた歌声であり、バックにミュートの効いたトランペットも入ってムード満点の仕上げ。これは寺島靖国に選ばれた曲。
 とにかくオープニングのM1." Love Is Here to Stay"からボサノバ・ギターのバックで、リラックスした雰囲気が盛り上がってくる。
 M3." Fever"は、彼女らしい世界。Percussionが流れを刻み、押さえたギター、ドラムスなどがリズムが快く展開。この曲は強烈に歌い上げることが出来るが、そうではなく力みが無くソフト・タッチ。これが彼女流なんでしょうね。
 M7."One Note Samba"、M8."Tea for Two"も、ギターとのデォオで、手慣れたヴォーカルを展開。途中にはアドリブも入って個性的作品にしている。

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 全9曲で36分24秒という短めのアルバムで、あっという間に終わってしまったという感のあるところ。これはアルバム番号も無く、自己出版なのか、いずれにしてもデビュー・アルバムとはいえ、彼女はキャリアも十分の既に円熟歌手の風格すらある。もっと頑張って欲しいヴォーカリストだ。

(評価)
□ 編曲・歌  88/100
□   録音    85/100

(視聴)   "One Note Samba"

 

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2020年11月30日 (月)

カーリン・アリソン Karrin Allyson 「'ROUND MIDNIGHT」,「BLLADS」

本格的ジャズを歌い上げる ~ ~ ~

カーリン・アリソンKARRYN ALLYSON  

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1w_20201130172101  オーディオ・マニアが結構気に入っているアルバムに PREMIUM RECORDS の『BEST AUDIOPILE VOICES』というコンピレーション・アルバムがあるが、これは主としてJazzy not Jazz パターンから、Jazzにいたる女性ヴォーカルが主体である。目下7巻目の「Ⅶ」がお目見えしている。実はその記念すべき2003年の第1巻(→)においては、ここで何度も取上げているEva Cassidyが2曲収録されて主役の役を果たしているが、この米国女性ジャズ・ピアニストにしてヴォーカリストのカーリン・アリソンKarryn Allysonmも登場。そこで実は気にはしていたが、私は欧州系に寄ってしまうために、これまでアルバムをしっかり聴くということなしで来てしまった。しかしなんとなく気になっていて、この秋にアプローチしてみようと思ったのである。

  そこで、あらためて1963年生れのカ-リンの私の好きなバラード調のアルバムに焦点を当てて、この秋向きに2枚のアルバムを仕入れた次第。それは、2001年の『BALLADS』と、2011年の『Round Midnight』である。

 <Jazz>
KARRIN ALLYSON  「BALLADS-Remembering John Coltrane」
Concord Jazz / USA /  CCD-4950-2 / 2003

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Karrin Allyson : Vocals, Piano
James Williams : Piano
John Patitucci : Bass
Lewis Nash : Drums
Bob Berg : Tenor Sax
Lames Carter : Tenor Sax
Steve Wilson Soprano Sax

71tsoackrml_ac_sl850  彼女は1963年生れであるが、丁度30歳の1993年から何枚かジャズ・ヴォーカル・アルバムをリリースしていて、なんと30歳後半に恐れ多くも7枚目のアルバムにおいて、ジョン・コルトレーンに挑戦しているのだ。
  彼女はピアニストであるからして、そのあたりの流れは知るよしも無いが、ライナーに"何年も愛してきたジョン・コルトレーン"と記していることより、彼の演ずるジャズに惚れ込んでいたんでしょうね。とにかくJohn Coltrane の代表作『Ballads』( 1963 →)を、このアルバムでそっくり彼女のヴォーカルで演じきっているのである。

(Tracklist)

1. Say It (over And Over Again)
2. You Don't Know What Love Is
3. Too Young To Go Steady
4. All Or Nothing At All
5. I wish I Knew
6. What's New
7. It's Easy To Remember
8. Nancy (With The Laughing Face)
9. Naima
10. Why was I Born ?
11. Everytime We Say Goodbye

 このように、M1-M8 までコルトレーンのアルバムと完全に曲順も同じに演じきった。ピアノ演奏はここでは彼女はM5.の一曲のみで、他はJames Williamsがピアノ・トリオのパターンで演じ、それにSaxが加わる。
 とにかく彼女はヴォーカルに専念し、力んで気負っていることも無く例のハスキーがかった声で、当時のまだ若き年齢を考えると深みのある心を寄り添っての歌に驚きだ。全体に明るいジャズでなくバラードでやや暗めの線を行くも、なかなかの表現力があって聴き応えは十分。なにせコルトレーンですからサックスのウェイトが気になるが、彼女のヴォーカル以上の位置には出ずに、本来のコルトレーン・パターンとは異なった世界を築いていることは、むしろ好感が持てる。
   冒頭のM1."Say It"から、サックスとデュオのパターンで進行して、この女性ヴォーカルを生かしたパターンはそれなりに花があり、こうしたこのアルバム造りはスタートから面白いと感ずる。ジャズ・アルバムはスタンダードが人気があるのは、曲だけを聴くのでなく、その演奏者の解釈と演者自身の魅力を味わうところにあるのであって、ここまで徹底して自己のジャズ世界で、トリビュート・アルバムを作り上げた意欲に脱帽する。M5."I wish I Knew"はサックス抜きの彼女のピアノ・トリオで演じたことにその意欲が表れているところだ。又M7."It's Easy to Remember"のようにピアノ主体のバックで、アカペラに近いところも聴き応えあり。
 全体に決して軽さの無い深みのある女性ヴォーカル・アルバムに仕上げてくれたことに私は寧ろ大きく評価したい。

        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

 <Jazz>
KARRIN ALLYSON 「'ROUND MIDNIGHT」
Concord / US / CJA-32662-02 / 2011

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Karrin Allyson: vocals, Piano, Fender Rhodes
Rod Fleeman: guitar
Bob Sheppard: woodwinds
Randy Weinstein: harmonica
Ed Howard: bass
Matt Wilson: drums

  カーリン・アリソンのアルバムとして、実は今回はこっちが本命でした。彼女のバラード調のヴォーカルがこうしてスタンダードを如何に個性を発揮しつつも聴かせてくれるかというところに評価のポイントをおいていたんです。このアルバムは上の『BALLADS』から約10年後の50歳直前の円熟期ですから、もう頂点に近い状況でジャズを如何に歌い込んでいるか興味津々であった。

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1. Turn Out the Stars (Bill Evans-Gene Less)
2. April Come She Will (Paul Simon)
3. Goodbye (Gordon Jenkins)
4. I'm Always Chasing Rainbows (Harry Carroll-Joseph McCarthy)
5. Spring Can Really Hang You Up the Most (Fran Landesman-Tommy Wolf)
6. Smile (Charlie Chaplin)
7. Sophisticated Lady (Duke Ellington-Irving Mills-Mitchell Parish)
8. There's No Such Thing As Love (Ian Fraser-Anthony Newley)
9. The Shadow of Your Smile (Johnny Mandel-Paul Francis Webster)
10. Send In the Clowns (Stephen Sondheim)
11. 'Round Midnight (Thelonious Monk-Cootie Williams-Bernard Hanighen)

  このアルバムでは、彼女のピアノを中心としたベース、ドラムスのトリオがバック演奏だ。そして曲によりギター、サックス、ハーモニカが加わるパターン。
 曲は聴き慣れたスタンダードが中心で、彼女のジャズ・ミュージシャン活動の真髄を集めたようなプロのアルバムであり、彼女の評価には十分な代物だ。
 
 やはり持ち前の米国には珍しいやや陰影のある中に、情感豊かにして曲の描く世界を十分に歌い込んでいる。
 驚きはM1."Turn Out the Stars"はジャズで、M2."April Come She Will "はフォーク調と、その変化も自在である。
 M3."Goodbye "のポピュラー・ナンバーが良いですね、低音の深く厚い歌声の魅力を発揮。
 M5."Spring Can Really Hang You Up the Most"の語りかけるように歌い上げ、ジャズとしては美しさを強調して聴かせる。
 M6."Smile" 彼女の得意のレパートリーの一つ、ピアノが美しく、編曲をこらしてゆっくりじっくり歌い込む。途中のハーモニカは不要か。
 M7."Sophisticated Lady"は彼女の思い入れが感ずるし、M9."The Shadow of Your Smile "これは私の好きな"いそしぎ"ですね、alto FluteとAcoustic Guitarの演奏の中で、ゆったりとしっとりと歌い込んでナイスです。
   M.10."Send In the Clowns"ギターとともに静かさが描かれていいですね。M11." 'Round Midnight"はアルバム・タイトル曲で、夜の静かさと寂しさをベースとの語るようにしっとり歌うところも魅力的。

 哀愁を帯びたハスキー・ヴォイスと曲の内容によって変幻自在の歌声が彼女の魅力でしょうね。つまり上手いのである。私自身の女性ヴォーカルに求める声質とは残念ながら若干異なってはいるが、ジャズ心の質によってそれは十分カヴァーしている。スローなバラード調は彼女の得意の世界でしょうね、従って、私にとっては、ちょっと何時も流しておきたいアルバムとなっている。

(評価)
□ 選曲・編曲・歌  88/100
□ 録音       85/100

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(参考)

<Karrin Allyson Discography>

I Didn't Know About You (Concord Jazz, 1993)
Sweet Home Cookin' (Concord Jazz, 1994)
Azure-Té (Concord Jazz, 1995)
Collage (Concord Jazz, 1996)
Daydream (Concord Jazz, 1997)
From Paris to Rio (Concord, 1999)
Ballads: Remembering John Coltrane (Concord Jazz, 2001)
Yuletide Hideaway (Kas, 2001)
In Blue (Concord Jazz, 2002)
Wild for You (Concord, 2004)
Footprints (Concord Jazz, 2006)
Imagina: Songs of Brasil (Concord Jazz, 2008)
'Round Midnight (Concord Jazz, 2011)
Many a New Day: Karrin Allyson Sings Rodgers & Hammerstein (Motema, 2015)
Some of That Sunshine (Kas, 2018)
Shoulder to Shoulder: A Centennial Tribute to Women's Suffrage, as The Karrin Allyson Sextet (eOne Music, 2019)

(参考試聴)

 

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2020年11月22日 (日)

エレン・アンデション Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」

ジャズ・ヴォーカルはこれだ !!・・・・と、
スウェーデンからの4年ぶりの待望本格派ジャズ・ヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Ellen Andersson 「YOU SHOULD HAVE TOLD ME」
Prophone Recpords / sweden / PCD204 / 2020

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Ellen Andersson エレン・アンデション (vocal) 
Joel Lyssarides ヨエル・リュサリデス (piano except 3, 4, 5)
Anton Forberg アントン・フォシュベリ (guitar on 4, 5, 8, 9)
Niklas Fernqvist ニクラス・フェーンクヴィスト (bass)
Johan Lötcrantz Ramsay ユーハン・ローヴクランツ・ラムジー (drums)
Peter Asplund ペーテル・アスプルンド (trumpet on 1, 4)
Johanna Tafvelin ユハンナ・ターヴェリーン (violin on 2, 6, 8)
Nina Soderberg ニーナ・ソーデルベリ (violin on 2, 6, 8)
Jenny Augustinsson イェニー・アウスティンソン (viola on 2, 6, 8)
Florian Erpelding フローリアン・エーペルディング (cello on 2, 6, 8)

 四年前にスウェーデンからの新人女性ジャズ・ヴォーカリストの有望株として紹介したエレン・アンデション(『I'LL BE SEEING YOU』(PCD165/2016))の待望のニューアルバムの登場だ(1991年生まれ)。とにかく嬉しいですね、あのセンス抜群のジャズ演奏とヴォーカルの協演がここに再びと言うことだ。ダイアナ・クラール、メロディ・ガルドーとこの秋、期待のニュー・アルバムが登場したが、彼女らの円熟には及ばずとは言え、あのJazzy not Jazz路線と違って、香り高きジャズ本流のヴォーカル・アルバムに挑戦していて感動であり、しばらく聴き入ってしまうこと間違いなし。
 彼女はデンマークのヴォーカル・グループ「トゥシェ」のメンバーとしても活躍しているが、これは彼女のソロ・アルバム。
 今回はジャズ・スタンダードそしてビートルズ、ミッシェル・ルグラン、ランディ・ニューマンなどの曲(下記参照)を、ジャズ色濃く編曲して妖艶さも増して披露している。

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(Tracklist)

1. You Should Have Told Me (Bobby Barnes / Redd Evans / Lewis Bellin)
2. Once Upon A Summertime (Michel Legrand / Eddie Barclay)
3. You've Got A Friend In Me (Randy Newman) (vo-b-ds trio with 口笛)
4. Just Squeeze Me (Duke Ellington / Lee Gaines)
5. Too Young (Sidney Lippman / Sylvia Dee) (vo-g-b-ds quartet)
6. The Thrill Is Gone (Ray Henderson / Lew Brown)
7. ‘Deed I Do (Fred Rose / Walter Hirsch) (vo-p-b-ds quartet)
8. Blackbird (John Lennon / Paul McCartney)
9. I Get Along Without You Very Well (Hoagy Carmichael / Jane Brown Thompson)

 
 エレン・アンデションの声は、なんとなくあどけなさの残った瑞々しい可憐さが感じられる上に、意外にも前アルバムでも顔を出した妖艶さが一層増して、ちょっとハスキーに響く中低音部を中心に、高音部は張り上げず優しく訴える端麗ヴォイスだ。
 M1." You Should Have Told Me "のように、バックがジャズの醍醐味を演ずると("M7." ‘Deed I Do"なども)それと一体になりつつも、彼女の特徴は失わずに協演する。
 M2."Once Upon A Summertime"はミッシェル・ルグランの曲、とにかく一転してピアノとストリングスでの美しさは一級で、彼女の心に染み入る中低音のテンダーなヴォーカルが聴きどころ。
 M4."Just Squeeze Me"は、トランペットの響きから始まって、彼女のあどけなさとけだるさと不思議な魅力あるヴォーカルでベースの語り歌うような響きと共にジャズの世界に没頭させる。

Pressellenanderssontr  女性叙情派ユーロ・ジャズ・ヴォーカル・ファンにお勧めは、なんと言っても素晴らしいM6." The Thrill Is Gone"だ。ストリングスの調べが加味した美しいピアノの音とメロディーに、しっとりと優しく囁きかけるように歌い上げるところだ。中盤にはピアノ・トリオがジャジーに演ずる中に後半ストリングスも加わって、再び彼女のヴォーカルが現れると静かに叙情的な世界を演ずる、見事な一曲。
 M5."Too Young"のナット・キングコールの歌で歴史的ポピュラーな曲は、冒頭からアカペラで彼女の世界に引っ張り込み、静かに現れるバックのギターとジヤズ心たっぷりに描いてくれる。次第にベース、ドラムスが続き「静」から「動」にスウィングしてゆく流れはお見事と言いたい。

 とにかく演奏陣が手を抜かない演奏が魅力的な中に、彼女のテンダーにして語りかけるロマンティックなヴォーカルと、なかなかアッシーな味付けの世界もみせ、それが一転してハードボイルドな色合いの強い演奏とのマッチングも出現し、そんな変幻自在な味付けが見事なアルバムである。一曲づつも良いがアルバム・トータルに是非聴くべき一枚。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌   90/100
□ 録音        85/100

(試聴)    "The Thrill is gone"

*
       "Too Young"

 

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