女性ヴォーカル

2020年7月10日 (金)

ディナ・ディローズ Dena DeRose 「Ode To The Road」

叙情性と風格のある円熟ヴォーカルの本格的ジャズ・アルバム

<Jazz>

Dena DeRose 「Ode To The Road」
HIGH NOTE / US / HCD 7323 / 2020

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Dena DeRose (vocal, piano)
Martin Wind (bass)
Matt Wilson (drums)
Sheila Jordan (vocal on 04, 06)
Houston Person (tenor saxophone on 07, 11)
Jeremy Pelt (trumpet on 02, 08)

2019年10月1&2日ニュージャージー州ティーネックのTeaneck Sound録音

 

  ピアノ弾き語りの、もうベテラン組に入る私の注目女性歌手ディーナ・ディローズ(1966年ニューヨーク州ビンガムトン生まれで今年54歳)の、前作『United』(HCD7279/2016)以来の4年ぶりのニュー・アルバムだ。なんか非常に久しぶりって感じで聴いている。
 今作もマーティン・ウィンド(b)&マット・ウィルソン(ds)とのトリオ作品だが、シーラ・ジョーダン(vo)、ヒューストン・パーソン(ts)、ジェレミー・ペルト(tp)というゲスト陣を迎えて本格的ジャズ・ヴォーカル・アルバム。
 彼女の演ずるは、NYジャズそのものだが、現在はオーストリアに住んでいてグラーツ音楽大学で教鞭をとっているという。そしてNYには頻繁に戻って活動しているという生活のようだ。

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(Tracklist)

01. Ode To The Road
02. Nothing Like You
03. Don't Ask Why
04. All God's Chillun Got Rhythm / Little Willie Leaps
05. That Second Look
06. Small Day Tomorrow
07. The Way We Were
08. Cross Me Off Your List
09. I Have The Feeling I've Been Here Before
10. A Tip Of The Hat
11. The Days Of Wine And Roses

 

  スタートはアルバム・タイトル曲M1."Ode To The Road"、ピアノ・トリオのバックに堂々の彼女のヴォーカルは、風格すら感ずるダイナミックスさとパッションある躍動感はジャズそのもので、安心してリリカルなハード・パップの世界に身を寄せて聴くことの出来る世界だ。
  そしてM3."Don't Ask Why" 、M6."Small Day Tomorrow"のスロー・ナンバーになると、その叙情性と円熟感あるヴォーカルにうっとりというところ。私はバラード好きであって、このテンダーであるにも関わらずブルージーな情熱の世界を演ずる彼女の世界は貴重である。
 M7."The Way We Were"は、ヒューストン・パーソンのテナー・サックスが加わって、更にスロー・ナンバーを朗々と歌い上げてお見事。
 M8."Cross Me Off Your List"は、今度はジェレミー・ペルトのトランペットが加わって軽快な展開に快活スウィンギン・ジャズ。
   M9."I Have The Feeling I've Been Here Before"のバラードは、説得力十分。
 締めくくりのM11."The Days Of Wine And Roses"は、ミディアム・テンポのトリオ演奏とパーソンのテナー・サックスも快感。

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 彼女はピアニストであり"弾き語り"だけあって、メロディーを十分意識しての歌詞に味付けと叙情性を描いている。その様は風格のヴォーカルでありお見事だ。中音域を中心としての歌声には温かみもあって細かいニュアンスをじっくり訴えてくれる。そして躍動感あるスウィンギーな曲にはドラマティックにパンチ力も備わっていてパッションを感じ、文句の言いようのない歌世界だ。
 もともとの彼女のピアノ・プレイも文句なく快調に流れて快適だ。
 又、このアルバムでのゲストのシーラ・ジョーダンの90歳の若々しいヴォーカルには驚かされた。更にゲスト陣も奮戦していて良いアルバムに仕上げられている。久々の本格ジャズ・ヴォーカル・アルバムを聴いた思いである。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌  90/100
□ 録音       85/100

(試聴)

 

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2020年7月 3日 (金)

ジュリア・カニングハム Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」

ハープ奏者のエレガントな優しさ溢れるヴォーカル・アルバム


<Jazz>
Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」
Soul Harp Music / IMPORT / JC1901 / 2019

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Harp & Vocals: Julia Cunningham
Piano: Miles Black
Violin & viola: Richard Moody
Trumpet: Miguelito Valdes
Guitar: Reuben Wier (tracks 1, 2, 4, 5, 10-12)
Adam Dobres (tracks 2, 7, 8, 10, 11)
Quinn Bachand (solos on tracks 1 & 4)
Joey Smith (track 13)
Bass: Joey Smith (tracks 1, 2, 4-6, 10, 12, 13, 15)
Joby Baker (tracks 3, 7, 8, 11)
Congas: Joby Baker
Drums: Kelby MacNayr

Recorded at Baker Stugios, Prospect Lake, BC, Canada

 カナダの美人ハープ奏者でありヴォーカリストであるジュリア・カニングハムが、変動的コンポ編成をバックに録音したアメリカン・スタンダードを中心としての作品。彼女はカナダのブリティッシュ・コロンビア州ヴィクトリアを拠点として活動を続けているという。
 ノスタルジックなムードで優しくエレガントなヴォーカルと彼女のハープ演奏も入ってのなかなか聴きやすいアルバムだ。

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(Tracklist)

1. Medley: Dream a Little Dream of Me & I’ve Got a Crush on You
2. Sunny Side of the Street
3. There’s a Small Hotel
4. Aged and Mellow Blues
5. God Bless the Child
6. My Romance
7. Besame Mucho
8. Bye Bye Blackbird
9. All I Do Is Dream of You
10. Pennies from Heaven
11. L-O-V-E
12. Boy from Ipanema
13. What the World Needs Now
14. Smile

  このハープ奏者がどのような経過でジャズ・ヴォーカリストとなったかは知らないのだが、非常に落ち着いた優しく優雅なジャズ・ヴォーカルを展開する。曲によっては得意のハープの演奏も入って、ジャズとしてはちょっと変わったタイプの味が出ている。
 このアルバムはジャズ特有の夜のムードとか、ちょっとした酒場のムードとかとは違った暗さは全くなく又哀愁という世界でもない。どちらかというと難しさのない自然体での心地よいエレガントな親近感たっぷりの世界を展開する。恐らく彼女はヴォーカルというよりはハープ演奏が主体であったと思われる若干素人っぽいヴォーカルもなかなか聴きどころというか、特別のところがないのが取り柄という面白い世界なのである。
   M7."Besame Mucho"はハープ演奏を主体にビオラも入ってインストでの演奏、久々にハープの良さも堪能した。
 14曲の中で最も長い曲がM6."My Romance"であり5分12秒だが、なかなかシットリとしたムードが漂って彼女の囁き様のヴォーカルで気持ちが休まる。M14."Smile"も同様だ。
 M9."All I Do Is Dream of You" 3分弱の短い曲だが、ハープ演奏に加えて最も彼女らしいやや夢のある展望の曲だ。
 M.11"L-O-V-E" 聴き慣れたこうゆう曲もなかなか軽快に無難にこなしている。

 しかしカナダは後から後から、女性・ジャズ・ウォーカリストが出てきて、ちょっとしたブームを感じますね。そんな中からの一枚だ。とにかく彼女は期待株。

(評価)
□ 選曲・歌     80/100
□   録音       80/100

(視聴)
   このアルバムの曲が見つからないので参考までに・・曲「Fragile」の彼女の演奏

 

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2020年6月28日 (日)

ナーマ・ゲーバー Naama Gheber 「Dearly Beloved」

NYシーンのジャズムードたっぷりのロマンティック・ヴォーカル

<Jazz>

Naama Gheber 「Dearly Beloved」
Cellar Live Recors / Canada / CM100119 / 2020

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Naama Gheber (vocal)
Ray Gallon (piano)
David Wong (bass except 09)
Aaron Kimmel (drums except 09)
special guest:Steve Nelson (vibraphone on 01, 05, 08, 10, 12)

2019年3月31日&4月1日Bunker Studios(NY)録音

 名前は初聞きと思いきや、これはイスラエル出身の若手女性ヴォーカリスト:ナーマ・ゲーバーNaama Gheber(1991年イスラエルのベエルシェヴァ=Be'er Sheva生まれ ) のデビュー・アルバム。中身はスタンダード集で、バックはピアノ・トリオにヴィブラフォンのスティーヴ・ネルソンがゲスト参入していてしっかりしたジャズ演奏。
 彼女は テル・アヴィヴの音楽学校でジャズ・ヴォーカルとクラシックの声楽を学び、更に米ニューヨークのThe New Schoolにも学んで修練を積み、2017年に同校卒業後はNYシーンでかなり意欲的にライヴ活動を続けてきたという若手女性ヴォーカリストだ。

Naamag1w (Tracklist)
01. Dearly Beloved
02. So In Love
03. 'S Wonderful
04. Since I Fell For You
05. I Can't Give You Anything But Love
06. Get Out Of Town
07. This Time The Dream's On Me
08. You Stepped Out Of A Dream
09. What's New (vocal & piano duo)
10. Just Squeeze Me
11. Sometimes I'm Happy
12. Good Night My Love

 

 久々にこうしてスタンダード曲を演じて、ヴィブラフォンが入ると、如何にも一時代のアメリカン・ジャズを思い出すというところ。そんな落ち着いたジャズの典型的演奏をバックに彼女がしっかりと歌い上げる。声の質はややトーンは高めにあるがどちらかというとかなり純粋な清澄ヴォイスと言っておきたい。しかし曲によっては甘い潤いが大人っぽくあって、そこに若干癖を感ずる。時折イメージの変わる芸をみせるという芸達者ぶりも感ずるし、また時には適度に渋い味もみせハスキーになるところもあって、ジャズ・ヴォーカリストとしてはなかなか良い線をいっているのだ。
 所謂都会派のムードもった世界を描くが、それもコール・ポーターなどの30-40年代の作曲家に興味があるのか、ジャズのある意味でのよき時代を描いている。

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 M1." Dearly Beloved "は、意識してのことと思うが、ちょっと癖のある発声が気になったが、コール・ポーターのM2."So in Love"になって、かなり素直なバラード・ヴォーカルになって、この方は頂けるぞといったところでスタート。
 M4."Since I Fell For You"では、彼女のアレンジもあって大人っぽく歌い上げたり、M5." I Can't Give You Anything But Love "はヴィブラフォン入りのバック演奏のウェイトも多く取って曲を十分楽しめる。
 M6."Get Out Of Town"そしてM9."What's New"もバラード仕上げで、しっかり歌い込んでいて情感の歌唱力は十分。
  その他、スウィングする曲の対応も手慣れていて、バックのトリオもなかなかジャジィな味付け良く、NYシーンを描くには十分の仕上げ。

 スウィート・テンダーなしっとりと艶っぽいバラード・シンガーとしてのアプローチと、スウィンギン調やブルージーな曲では、意外に姉御肌の色合いを見せたりと、若いと言われていても百戦錬磨のイメージのある歌いっぷりだ。私はバラード派だが、これからどう発展していくか楽しみでもある。

 

(評価)
□ 選曲・歌・演奏    80/100
□ 録音         80/100

 

(視聴)

*

 

 

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2020年5月24日 (日)

ジェニファー・ウォーンズ Jennifer Warnes 「Another Time, Another Place」

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(今日の一枚)  我が家に咲くエゴノキの花
       Sony α74RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

                                  - - - - - - - - - - - - - -

 

ソフトにマイルドに優しくフォーク、カントリー調の世界
~~~18年ぶりのスタジオ・アルバム

 

<Folk, Country-and-Western>

Jennifer Warnes 「Another Time, Another Place」
IMPEX / US / IMP8317 / 2019

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Jennfer Warnes : Vocals

81gqtkgtpul850   とにかく18年ぶりのスタジオ・ニュー・アルバムですから、まあシェニファーが健在であったことをまず喜ぶべきでしょう。前作『The Well』(→)は傑作というよりは既に記念碑的取り扱いで、ここで取り上げてたのは2001年のこのアルバムの2009年リニューアル再発のGold Editionがリリースされた頃であった。あのアルバムはフォーク、カントリーをベースに、ブルース調の曲、更にトラディショナルに至るまでカヴァーして、彼女の総集編的なもので文句の付けようのないモノだった。
 ところが昨年驚きの70歳代の彼女が、ヴォーカルをこなしてのニュー・アルバムをリリースしたのである。そんなところから我が友人がそれは見落とせないと私に紹介したわけである。そうなれば、当然ここで考察しておこうというところとなった。

 そして注目しておきたいのは、ここに彼女の長年の友の一流ミュージシャンが参加している。彼女にぴったりついてのバックにギターの名手、ディーン・パークス、そしてベーシストのエイブ・ラボリエル、ペダル・スティールのグレッグ・ライズ、ドラマーのヴィニー・カリウタ、さらにパーカッショニストのレニー・カストロ、バック・コーラスにはブロンディ・チャップリン、そしてブルース・ギタリストのソニー・ランドレスなど、所謂ヴェテラン陣が協力・参加しての名を連ねての祝賀盤の気配だ。

Image_20200524193701   更に、彼女はレナード・コーエンとの関係も重要だが、かってのアルバム『Famous Blue Raincoat』(→)ではコーエンのトリビュート・アルバムでヒットしたのだったのだが、そのコーエンのバンドメンバーであった友人のロスコー・ベックが、共同プロデュースという形でに協力している。

(Tracklist)
01. Just Breathe
02. Tomorrow Night
03. Once I Was Loved
04. So Sad
05. I See Your Face Before Me
06. I Am The Big Easy
07. The Boys And Me
08. Back Where I Started
09. Freedom
10. Why Worry

  ゆったりとしたテンポのフォーク、カントリー調の曲が中心。アコースティックな演奏をバックに彼女は一曲一曲慈しむように丁寧に歌い上げている。しかし声では年齢は解らない、刺激のないソフトにして美声の癖のない歌声は健在。いやはや70歳を超えたお婆ちゃんとはとても思えない。古き良きアメリカ音楽の遺産とも言える曲を伝えてくれる心地よい作品。アルバムジャケットのイメージどおり、昼下がりのテラスに腰掛けて、カセットテープ・プレイヤーを横に置き、ゆったりとした世界が伝わってくる。

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 アルバムのレコーディングはテキサス州オースティンで行われ、幅広いジャンルから名曲をえりすぐってのカヴァーしたと言う。ロスコーとともに、30から50曲に亘る候補の中から選んだ結果らしい。
 オープニングのパール・ジャムの曲M1."Just Breathe"が良いですね、往年の彼女が思い出されます。
 そして最後はマーク・ノップラーのM11."Why Werry"で締めくくっているんですが、アコースティック・ギターの響きの中に、これぞ優しさと癒やしの究極の姿ですね。
7d4a5ff7ad6c56d13bebddec0f344aea  とにかく、古き良き仲間と再会しながら演奏し歌い上げた古き良き時代を想い起こすべく造られたアルバムであって、現代の再び歪み始めた時代に何か教訓らしい気持ちにもさせるところがニクイと言えるアルバムであった。
 歌うために戻ってきたと言う彼女のプロらしさに、なにはともあれ喝采したい。

(評価)

□ 選曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       80/100

(試聴)

 

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2020年5月19日 (火)

リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」

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(今日の一枚) 薔薇の開花 (我が家の庭から)
       Sony α7RⅣ,  FE4/24-105 G OSS , PL
 
       
           --------------------------------

リン・エリエイルの強い意志の情熱的芸術的表明
・・・深刻さのあるコンセプト・アルバム

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」
Challenge Records / AUSTRIA / CR73494 / 2020

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Pianist : Lynne Arriale (USA)
bassist/co-producer : Jasper Somsen (NL)
drummer : E.J. Strickland (USA) 
guest vocalist : K.J. Denhert (USA)

  所謂「コンテンポラリー・ジャズ」の注目女流ピアニストのリン・エリエイルのニュー・アルバム。前作『GIVE US THESE DAYS』に続いて、オランダのChallenge Recordsから(2作目)、自身のリーダー作全体としてはもう15枚目となるベテランの作品。
 しかし今作は彼女の作品群からみても異色である。ボブ・ディランの初期の名曲「自由の鐘(Chimes of Freedom)」を中心に、自身のオリジナル7曲とポール・サイモンを取り上げ、その精神を通して、現在の社会現象に自由と高邁な思想の文化を取り上げて訴えるアルバムとして作り上げている。そこには所謂メロディーの美しさといったところから一歩厳しさに打って出ていて、彼女の一つの世界を思い知らされる。

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 メンバーは、オランダの名ベーシストであり副プロデューサーのイェスパー・サムセンとニューヨーク・ジャズ・シーンで活躍するE.J.ストリックランドとの強力トリオで、ややアグレッシブなテクニックを展開している。
 なんと、ボブ・ディランの「自由の鐘」、ポール・サイモンの「アメリカン・チューン」では、アーバン・フォーク&ジャズ・シンガーのK.J.デンハートがゲスト参加でのヴォーカルが入ってくる。 

 

Imageasset (Tracklist)

1.Sometimes I Feel Like A Motherless Child (Harry Burleigh)
2.Journey *
3.The Dreamers *
4.3 Million Steps *
5.Hope *
6.The Whole Truth* 
7.Lady Liberty *
8.Reunion *
9.Chimes Of Freedom (Bob Dylan)
10.American Tune (Paul Simon)

*印 compositions by Lynne Arriale

 アルバム・タイトルからしてボブ・ディランの「自由の鐘」が中心であることが解る。そこには自由という基本的な流れが見て取れるが、このアルバムでの彼女のオリジナル曲のM2-M8までの7曲が、如何にも今までのアルバムと変わって意志の強さが聴き取れるし、彼女の個人的な人生からの感覚的でありながら、社会にも向いている姿が現れている。それはM1."Sometimes I Feel Like A Motherless Child"を取り上げ、彼女自身の感覚「ときどき母のいない子供のように感じる」というところからの人生の過去も振り返りつつ、この曲を重低音で始めて、このアルバムで語る物語の重要性を意識させ、ピアノで語る哀しい旋律にはどこか人間性を語っているように聴ける。
 M2."Journey"から始まるリンの刺激的な人生の旅の物語からの7曲によって、自由と文化、そして世界に見る難民への心、それは彼らが民主的な国家によって安全に迎えられることを祈ると言うことに通じてゆく彼女の世界を演じているようだ。従って甘い演奏はこのアルバムでは見られない。強いて言えばM7."Lady Liberty"に、どこか広く包容力のある愛情の感じられる曲が救いでもあった。
Safe_image_20200518201501  最後のM9"Chimes Of Freedom",M10"American Tune "は、デンハート(→)のヴォーカルが入る。彼女はジャズ、フォーク、レゲエなどを身につけている。そしてそのスピリチュアルな歌唱力によって、ボブ・ディランとポール・サイモンのアメリカンチューンを歌い上げ、そこにかってのアメリカに見た精神を訴えているのかも知れない。

 前作もそうだったが、ベーシストのイェスパー・サムセンの力は、あまり目立たないがトリオとしての土台の役割を果たしつつ、曲仕上げにも大きく貢献している。又ストリックランドのドラムスもアグレッシブなところがテーマの意志と決意を表すに十分だ。
 
 このアルバムはリン・エリエイルとしては異色の範疇に入る。ここに来て世界的にも戦後の真摯な姿勢からやや異常な世界に変動しているところに、自己の歴史と重ね合わせ、このような深刻なコンセプト・アルバムを作り上げ、一つのけじめを付けようと試みているように感じた。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100
 
(視聴)

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2020年4月19日 (日)

ナイトウィッシュNightwishのニューアルバム「HVMAN NATVRE」

"人類"と"自然"をテーマに、オーケストラをフィーチャーしての壮大なドラマ

<Symphonic Metal Rock>

Nightwish「HVMAN NATVRE」(Human Nature)
WardRecords / JPN / GQCS90881-2 / 2020

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Floor Jansen – vocals
Tuomas Holopainen – keyboards
Marco Hietala – bass & vocals
Emppu Vuorinen – guitars
Kai Hahto – drums
Troy Donockley – Pipes, flutes & whistles

 フインランドのシンフォニック・メタル・バンドのナイトウィッシュの5年ぶりのスタジオ・ニューアルバムの登場だ。既に世界的バンドに成長した彼らが6作連続でナショナル・チャート1位という金字塔を建てたところで、ここに9thアルバムは“ヒューマン=人類”と“ネイチャー=自然”を2大テーマにした壮大なCD2枚組アルバムだ。メンバーは変化なしの歌姫は前作以来のオランダのフロール・ヤンセンが相変わらず務めている。又ドラムスはカイ・ハートがこのところのメンバーとして落ち着いての初アルバムとなる。
 2枚目CDは、そのすべてを使ったインストゥルメンタル組曲「All The Works Of Nature Which Adorn The World」は、フル・オーケストラをバックにシンフォニックな演奏の世界を披露する。

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Floorjansen1 (Tracklist)

CD1
01. Music
02. Noise
03. Shoemaker
04. Harvest
05. Pan
06. How’s The Heart?
07. Procession
08. Tribal
09. Endlessness

CD2
01. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Vista
02. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Blue
03. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Green
04. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Moors
05. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Aurorae
06. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Quiet As The Snow
07. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Anthropocene (incl. “Hurrian Hymn To Nikkal”)
08. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Ad Astra

 

 昨年リリースされた最新ライヴ・アルバム/映像作品『DECADES:ライヴ・イン・ブエノスアイレス』もチャート1位に輝いたし、フロール・ヤンセン(ヴォーカル)が初のソロ・ツアー。マルコ・ヒエタラ (ベース、ヴォーカル)もソロ・アルバムとライヴを行うなど、昨年はそれぞれのメンバーの活動も盛んであった為、ナイトウィッシュはどんな状態かと、若干いろいろな噂も多かったが、遂に5年の間をおいての待望のニュー・アルバムが我々の前に出現した。

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 メインはCD1で、スタートM1."Music"はメタル・バンドとは思えない静かな深遠なスタートである。大地の鼓動を感じさせる。そして美しいコーラス、次第に盛り上がる中にヤンセンの高音の優しいヴォーカル、ドラマの開幕にふさわしい。そしてギターが響き、成る程、テーマ"自然"にふさわしい世界が出現する。これは完全にコンセプト・アルバムとして受け入れられるが、バンドのリーダーであり全曲作曲しているツォーマス・ホロパイネン (キーボード)は、本作のコンセプトは当初から考えたので無く、曲を作っていく中での“偶発的コンセプト・アルバム”と言っている。
 M2."Noise"冒頭から軽快なリズム、そして中盤からはメタリック・サウンドに。人類の、自然界の不安な部分を歌い上げる。
 M3."Shoemaker" なんといっても美しい曲だ。未知の世界へ夢を。
 M5."Pan"、M6."How's the Heart"は、 人間を取り巻く世界の夢と現実の現象をドラマチックに歌い上げる。
 M7."Procession" ヤンセンの美しく優しいヴォーカルでスタート、地球の生命の誕生そして人類賛歌に流れてゆく。
 M8."Trival" ここに来て神と宗教に、メタリック・サウンドで対峙。最後は深遠なる世界に。
 M9."Endlessness" 大地、宇宙、人間の物語を壮大に演奏し、ヒエタラのヴォーカルが締めくくる。

Tuomash  深遠さとドラマチックと疾走感と神秘のシンフォニック・サウンド、そして優しさと美しさと・・・更にドノックレイのパイプによるトラッドぽい匂いも加味して見事に色彩豊かな世界を織り交ぜての一大ドラマの展開である。ここに来てヤンセンの世界も完全にナイトウイッシュの世界と同化し、曲展開も緩・速、強・弱、美しいメロディー、ドラマティックな重厚感と壮大な展開などメリハリが効いているために飽きさせない。そしてトータルの流れは、なんと芸術的匂いすら感じられる。お見事。

 CD2は、ツォーマス・ホロパイネン(→)がおそらくやりたかったシンフォニック・オーケストラとの共演によるインストメンタル交響詩だ。なんとクラシック音楽を聴く感覚で"地球と自然"に想いを馳せて、一時を納得してに聴き込める。

 とにかくゴシック・メタル、シンフォニック・メタルで世界を制覇したナイトウィッシュの壮大な絵巻のアルバムの登場である。

(評価)
□ 曲・演奏 :   ★★★★★☆   95/100
□ 録音   : ★★★★☆   80/100

(視聴)
   "Music"

 

 "Noise"

 

 

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2020年4月15日 (水)

アンヌ・デュクロ Anne Ducros 「SOMETHING」

スタンダード曲を自己の世界に歌い上げるベテラン・ヴォーカル

<Jazz>

Anne Ducros, Adrien Moignard, Diego Imbert 「SOMETHING」
SUNSET RECORDS / IMPORT / SUN29 / 2020

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Anne Ducros - Vocal
Adrien Moignard - Guitar
Diego Imbert - Double Bass

 フランスのアンヌ・デュクロAnne Ducros(アン・デュクロとも言われている)の最新アルバム。彼女をここで取り上げたのはもう6年前で、アルバム『Either Way from Marilyn to Ella』(NJ623611/2013)であった。彼女は1959年生れですから、もうなかなかのベテランで、当時も落ち着いたオーソドックスなヴォーカルに評価を付けていたのを思い出す。私にとっては久しぶりのアルバムで興味深く聴いたというところであった。
  このアルバムはスタンダードを歌い上げているが、ベース、ギターのみのバックであり、それだけでも彼女のヴォーカルの占める位置の大きさが解る。

(Tracklist)

1. The Very Thought of You
2. Something
3. Estate
4. Honeysuckle Rose
5. I Didn't Know What Time It Was
6. Nuages
7. Samba Saravah
8. I Thought About You
9. April in Paris
10. Your Song
11. Tea for Two
12. The Good Life

 かってチック・コリア(p)などとの共演作で話題を呼んだ彼女であり、ウィーン国際ジャズ・コンクールでも優勝したことがあるという、そんな経歴からもベテラン実力派のヴォーカリストということがうかがい知れるところである。

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 スタートM1."The Very Thought of You"、そして ビートルズ1969年の「アビイ・ロード」ナンバーのM2." Something"のアルバム・タイトル曲と、静かなギターをバックに手に取るように聴けるしっとりとバラード歌を展開。それは誰をも心から包む魅力を発揮。
 そして圧巻はなんとM3."Estate"だ。これは多くのミュージシャンが取り上げているイタリアのブルーノ・マルティーノの曲で、私の好きな曲だけに注目度は高かったのだ。それがやはり静かにゆったりとしたバックのギター、ベースに彼女の編曲を凝らした展開を歌い上げる。特に中盤以降は彼女独自のオリジナル曲風に語り調を交えて歌い、いやはや暦年の実力派を知らしめる。
  M6."Nuages"も古い曲ですね、超スロー編曲でいやはや引き込まれますね。そしてM7." Samba Saravah"サンバも登場して雰囲気を明るくし、アルバムを通して聴いているものに変化を与える。
 M11."Tea for Two"の編曲も凄いですね、ハイテンポでギター・プレイと共に変調展開。こりゃ全く別の曲ですね
 M12."The Good Life"、アルバム最後曲らしく先への展開を夢見るグッバイである。

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(評価)
□ 編曲・歌・演奏 : ★★★★☆  85/100
□ 録音                 :   ★★★★☆      80/100

(試聴)

 "Something"

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2020年4月10日 (金)

キャンディス・スプリングスKandace Springs 「THE WOMEN WHO RAISED ME」

ソウルフルにしてブルージーなピアノ弾き語りヴォーカルの名盤だ


<Jazz>

Kandace Springs 「THE WOMEN WHO RAISED ME 私をつくる歌」
Universal Music / Jpn / UCCQ-1118 / 2020

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Kandace Springs (vocal, piano, electric piano)
Steve Cardenas (guitar)
Scott Colley (bass)
Clarence Penn (drums)

featuring:
Christian McBride (bass on 01)
Norah Jones (vocal, piano on 02)
David Sanborn (alto saxophone on 03)
Avishai Cohen (trumpet on 04, 06)
Elena Pinderhughes (flute, vocal on 05, 11)
Chris Potter (tenor saxophone on 07, 08)

 いっやー、久々に痺れるアルバムの登場ですね。Blue Noteよりこのところの期待の歌姫、ソウル溢れるピアノ弾き語りヴォーカルのキャンディス・スプリングス(1989年テネシー州ナッシュヴィル生まれ)の最新作である。"今の自分をつくりあげた"と語る女性ヴォーカルの名曲をカヴァーしてのしかも豪華メンバーを迎えての作品集のリリースだ。

 メインはスティーヴ・カーディナス(g)、スコット・コリー(b)、クラレンス・ペン(ds)をバックに、なんと豪華なゲスト(クリスチャン・マクブライド(b)、ノラ・ジョーンズ(vo,p)、デヴィッド・サンボーン(as)、アヴィシャイ・コーエン(tp)、クリス・ポッター(ts)など)を迎え、そしてエラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、ノラ・ジョーンズ、シャーデー等々歴代の大物・女性ヴォーカリストの人気・名楽曲を自己の世界に引き込んでのアレンジでカヴァーした作品集。

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(Tracklist)

01. Devil May Care / featuring Christian McBride
02. Angel Eyes / featuring Norah Jones
03. I Put A Spell On You / featuring David Sanborn
04. Pearls / featuring Avishai Cohen
05. Ex-Factor / featuring Elena Pinderhughes
06. I Can't Make You Love Me / featuring Avishai Cohen
07. Gentle Rain / featuring Chris Potter
08. Solitude / featuring Chris Potter
09. The Nearness Of You
10. What Are You Doing The Rest Of Your Life
11. Killing Me Softly With His Song / featuring Elena Pinderhughes
12. Strange Fruit
*
13. Lush Life
14. You've got a Friend / featuring Masayoshi Yamazaki

(13,14 : Bonus Tracks for Japan)

  アルバム・タイトル『The Women Who Raised Me』は日本盤では『私をつくる歌』と訳されているが、その通りのキャンディスをアーティストとして、さらには人作りにおいても色々なインスピレーションを与えた女性アーティストたちの曲をこのアルバムでは取り上げているのだ。それもさすがにBlueNoteですね、上に紹介したような豪華メンバーをフューチャーして、そして彼女は彼女なりの歌に仕上げているところが立派。
 彼女の歌声は、さすが黒人系の重量感がある中でも、基本的には温かい歌声であり、低音から高音まで優しいしなやかさ、そして力強さをもっていて、曲によっては切なさも歌い上げてくれる。聴きどころ満載のアルバム。

A-springs-2w  M1. "Devil May Care"、オープニングからクリスチャン・マクブライドのベースが効いていいムード、それにキャンディスのジャズ・ヴォーカルがリズムに乗って濃厚な味付けで登場。そしてM2."Angel Eyes "小節を効かしての情感たっぷりのヴォーカル。ここではノラ・ジョーンズのピアノが美しく流れそしてヴォーカルがデュエット風に流れる。M3."I Put A Spell On You"は完全に原曲から離れてキャンディス節、それにデヴィッド・サンボーンのアルト・サックスも加わっての盛り上がりがお見事。
 M4."Pearls",M6." I Can't Make You Love Me "では今度はアヴィシャイ・コーエンのロマンチックなトランペットが加わっての、やや暗めの世界を朗々と歌い上げる。
 M7."Gentle Rain", M8." Solitude" はクリス・ポッターのテナー・サックスが優しく情緒たっぷりに響き渡る中に、彼女のヴォーカルはサックスとデュエットをしての歌い上げで、このバラード世界もなかなかのもの。

 いやはやこのような多彩なゲストを迎えての世界であるが、しかしキャンデイス・スプリングスのソウフルにしてブルージーな叙情派世界はきちっと流れているところが見事である。なんといっても特徴は、高度な歌い回しの世界でありながら聴くものを難しさを感じさせない身近なジャズで引っ張り込んでゆくところは素晴らしく、久しくお目にかからなかった名盤に直ちに入れたくなる仕上がりである。

 なるほどこれはこれからのBlue Noteにしてみれば、ヴォーカルの魅力もさることながら、M10."What Are You Doing The Rest Of Your Life"に見るが如くジャズ・ピアノの演奏も繊細で情緒豊かにして美しい。これはまさに期待の星であることは間違いない。

(評価)
□ 歌・演奏 :   ★★★★★☆  95/100
□ 録音    :    ★★★★★☆  90/100

(視聴) "Pearls"
 

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2020年4月 6日 (月)

キアラ・パンカルディChiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」

やはりパンカルディのヴォーカルはハイレベルであるが異色
~~注目のアレッサンドロ・ガラティとのデュオ

<Jazz>

Chiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1086 / 2020

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Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocalヴォーカル)
Alessandro Galati アレッサンドロ・ガラティ(piano ピアノ)

 このところジャズ・シンガーとしての話題の豊富な個性派キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ。つい先日アルバム『PRECIOUS』(CR73497/2020)のリリースがあった)と、最近、寺島レコードからリリースが多い私の注目の叙情派でありながらアヴァンギャルドな面も見せるキャリア十分のピアニスト:アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリアのフィレンツェ生まれ)のデュオ作品。両個性派同士で実は注目していたアルバム。
  主題はアルバム・タイトルどおりのコール・ポーターの作品に迫ろうとしたもの。もともとキアラ・パンカルディの唄は独特の世界があって、どうも100%万歳して受け入れている訳ではないため、このアレッサンドロ・ガラティのセンスで如何に変貌して迫ってくれるかが楽しみのポイントでもあった。

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(Tracklist)

1. Easy To Love
2. Just One Of Those Things
3. Night And Day
4. So In Love
5. All Of You
6. My Heart Belongs To Daddy
7. It's Delovely
8. Let's Do It
9. Dream Dancing

Ag5x  デュオとは言っても、やはりヴォーカルの占める位置は大きいですね。私にしてはガラティのピアノにそって優しく歌ってくれる方が期待していたんですが、なになにパンカルディの独特の節回しによっての彼女のヴォーカルの独壇場にも近い世界が造られている。パンカルディの声の質は中高音のつややかさはなかなかのものと言えるものでこれには全く不満はなく、更になんといってもハートフルでありテンダリーである点は素晴らしい。しかしその節回しと音程の変化はどこか異質であって、その歌は一種独特な世界ですね。先のアルバムとその点は全く変わっていない。この世界にぞっこん惚れ込むという人が居るとは思うが、どうも素人向けとは言えず、万人に受けるという点ではちょっと疑問にも思っている。

 イタリアのミュージシャンはあらゆる分野に多く活躍していて人気も高いが、この世界においてはパンカルディはやはり独特である。まさか私自身のみがそう感ずるのだろうか ?、ライナーノーツを担当している寺島靖国も声の質の良さを認めては居るが、あまり異質性については語っていない。
 いずれにしても彼女の唄はやっぱり上手いというのは当たっているのだろうと思う。とにかく上手い・・・しかし私は魅力については、もう少し馴染みやすい世界であってほしいと思うのである、残念ながらそんなことで万人向きではない。そうは言っても、丁寧にじっくりと語りかけてくる様は出色であり魅力も大いにあるところが聴く方は複雑ですね。一方リズムの展開においては、意外に彼女の魅力的なパンチ力のセンスもみられて、多芸な能力の持ち主と言って良いのだろう。

 そして今回のように、コール・ポーターの曲を何故選んだのかと言うことでは、ガティもパンカルディも曲の良さと言うことに一致していた。そしてこのアルバムで私が好きなのは、M4."So in Love"で、彼女の歌が情感豊かでいいですね、ムードが最高。続くM5."My Heart Belongs to Daddy"のガラティのピアノは美しい。
 しかしちょっと期待に反して、ガラティは対等なデュオというのでなく「伴奏者」に徹していて、彼の味のあるメロディーの表現は、ヴォーカルを生かす為に仕組まれたピアノの味をしっかり作り上げているのだ。

 私の個人的評価はまあ質の高さは認めるが、受け入れやすさや聴きやすさと言う点ではちょっと低くなった。こうゆうのはイタリア本国ではどんな評価か知りたいところだ。

(評価)

□   編曲・歌・演奏  ★★★★☆ 85/100
□ 録音       ★★★★☆ 85/100

(視聴)

このアルバム関係はまだ見当たらないので・・・過去のモノを
Cole Porter "So in Love" (これは惚れ惚れしますね)

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2020年3月23日 (月)

ペトラ・リネッカーpetra linecker 「Warm Embrace」

温かみの世界を狙った・・女性ヴォーカルとピアノとのデュオによる秀悦作品

<Jazz>

Petra Linecker & Martin Gasselsberger 「Warm Embrace」
ATS Records / Eu / / 2019

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Petra Linecker (vo)
Martin Gasselsberger (p)

 世界の美女狩りを得意とする我が友人から紹介のあったアルバムである。 
 オーストリアの女性ヴォーカリスト、ペトラ・リネッカーとピアニスト、マーティン・ガッセルスベルガーのデュオ作品。私にとっては全くの初物であるが、彼女は既にオーストリアではベテランであるようだ。
 とにかく"リネッカーの美しく透明感に富みながら深みと情感あふれたヴォーカル"がどうも売り物のようで、ピアノとのデュオでたっぷり聴くことが出来る。アルバム・ジャケのデザインからして並の世界でなさそうな雰囲気が伝わってくる。

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(Tracklist)
Image2_20200322094201 1. Warm Embrace *
2. Over the Rainbow
3. Lullaby of Birdland
4. The Nearness of you
5. I can't stand the Rain
6. Imagine
7. Georgia on my Mind
8. Honeysuckle Rose
9. In Heaven's Spaces *
10. On a clear Day *
11. Everything must change
12. Wrong way round *
13. Anxious Moments *

 収録曲は上のようで、*印がオリジナル。M1."Warm Embrace "は彼女自身の曲で、残るはこの二人による共作となっている。そしてその他はかなり広いジャンルからの選曲だ。
 インティメイトと表現される世界で、冒頭M1.から静かなピアノをバックに、優しい彼女のヴォーカルが響く。どうも歌詞をしっかり理解しないといけなそうな世界だ。
 M4."The Nearness of you"を聴いても解るのだが、このマーチン・ガッセルスベルガーのピアノが又クラシックに裏打ちされたと思われる知的でクラシカルな響きが秀悦である。
2176454_xxlw_20200323204101  一方M5."I can't stand the Rain "となると一変してブルージーなジャズをしっかり演じているところもあってなかなかキャリアーのあるシンガーであることがわかり、そしておなじみのM6. "Imagine "、M7."Georgia on my Mind"は、ぐっとしっとりムードで歌い上げ、心に響いてくるところは芸達者。
 リズムカルなM8."Honeysuckle Rose "に続いて、二人の共作M9."In Heaven's Spaces "は一変してフォーキーにしてトラディショナルなムードの曲で、ヴォーカルやソロピアノも美しく、この世界に安らぎを求めたような普遍性の世界。
 更にM11."Everything must change "はこのデュオの世界観を凝縮したような尊大なる思想が感じられる素晴らしい演奏。そして二人共作のM13."Anxious Moments"の二人のヴォーカル・デュオも入ったトラディッショナルな世界で幕を閉じる。

 なかなかジャズ世界としては珍しいインティメイトな心洗われる世界を構築していて好感の持てるアルバムとして、お勧めである。

(評価)
□ 曲・歌・演奏  ★★★★★☆  90/100
□ 録音      ★★★★☆   80/100

(視聴)

 
 

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