キース・ジャレットの挑戦 Keith Jarrett Trio 「DIFINITIVE HAMBURG 1989」
キースのスタンダーズ・トリオによるジャズへの挑戦
ベストパフォーマンス"ムジークハレ(1989)"の完全盤登場
<Jazz>
Keith Jarrett Trio 「DIFINITIVE HAMBURG 1989」
Live At Musikhalle, Hamburg, Germany October 1989
K-PROJECT (Non-Official)
キース・ジャレット(p)
ゲイリー・ピーコック(b)
ジャック・デジョネット(dr)
1977年のゲイリー・ピーコックのアルバム『テイルズ・オブ・アナザー』(ECM)が初めての顔合わせとなったキース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットのトリオは、1983年になって再びECMのマンフレート・アイヒャーによって集められ、『スタンダーズVol.1』『スタンダーズVol.2』『チェンジス』の3つのアルバムを発表した。このトリオはスタンダーズと名付けられているが、実はスタンタード・ナンバーを演ずる目的よりは、アルバム『チェンジレス』(ECM1987)にみるように、それを契機に彼らの世界を広めたのであったと言ってもいい。つまり自作の発表の舞台としての役割だったと思うのがスタンダードの演奏であり、しかもそのものの曲自身もスタンダード演奏として誰も聴いていないところがミソなんだろう。
█ ジャズへの挑戦であったこのスタンダーズ・トリオ
キースがスタンダードを演奏すると言うことは、実はジャズそのものへの挑戦であったというのは間違いないと思う。古くはジャズと言えばデキシー・ランド・ジャズだというアメリカ人の感覚は、キースから見れば、それに対する抵抗であったも言えるのだ。スタンダードをピーコックとディジョネットとのトリオで演ずること事態、実はその影にトリオによるフリー・ジャズの発展を企てたと言って良いのだろう。
そこが当時のスタンダーズ・トリオの興味が引かれる重要ポイントだ !! 。スタンダーズ・トリオは実はライブで初めて彼らの姿を知ることが出来るのである。
そんな流れが確立した時に行われた1986年のドイツはハンブルグでのライブ、これがオフィシャル・リリースがないだけに、"ムジークハレ"と呼ばれ世間の注目度も高く、従来はエア・チェックされたものを音源として、マニアには宝物として扱われたきた。ところがここに来てデジタル音源の登場で、まさにものによってはオフィシャル盤を超えたCD盤の登場を見たモノだ。しかも二枚組でライブ・フル録音盤でありそこに意味があり、取り敢えず私の愛聴盤と化しているのである。
Disc 1
1.My Funny Valentine
2.Never Let Me Go
3.All Of You
4.The Cure
Disc 2
1.Summer Night
2.Everything Happens To Me
3.I'm A Fool To Want You
4.I Remember Cliford
5.U Dance
以上全9曲、一曲20分を超える熱演もある。
実はこの当時の80年代後半から90年代にかけては、キースは本格的なクラシック音楽のレコーディング活動を行っている。ECMのクラシック部門であるECM New Seriesが創設され、しかもその第一弾であるアルヴォ・ペルトの『タブラ・ラサ』のレコーディングへの参加が、最初の本格的なクラシック・現代音楽作品の録音だ。このアルバム収録の「フラトレス」でジャレットはギドン・クレーメルと共演しているのだ。その後キースは1987年のJ.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集第1巻』を、更にJ.S.バッハとショスタコーヴィチ、他にはヘンデル、モーツァルトなどの作品を取り上げている。もともとマルチ・プレイヤーでピアノだけでなく、ハープシコード、クラヴィコードも演奏した。これはこんな時のスタンダーズ・ライブである。
オープニングM1-1."My Funny Valentine"から、キースが奏でる音の美しさに痺れてしまう。そしてM1-2."Never Let Me Go"では完全に美しく心の奥底に響くのである。ゲイリー・ピーコックの当時のベースの音も包容力がありますね。。ピアノの音にデジョネットのシンバル、スネアが生み出す音が、これまた不思議に重なり合って美しく化して素晴らしい。
Disc2においてもM2-2"Everything Happens To Me"の中盤からのベース、ドラムスの展開はこれぞジャズと訴えるが、後半キースのピアノががらっと変わって物思いにふけってゆく。
M2-3."I'm A Fool To Want You" はベースそしてドラムス・ソロを絡めてピアノの美しさを聴かしいゆく憎い展開。それはなんと20分を超えてのスタンダース越えの曲となる。
M2-4."I Remember Cliford " も、静かに聴かせるピアノ・ソロに近いパートがしっかりとられ、静かに心の奥に沈むことが出来る。
これぞ、私にとっては当時のアメリカン・ジャズへの挑戦の姿として捉えるキース・ライブであり、従って当時のオフィシャル盤(『チェンジレス』を除いて)では知り得ないアルバムとして存在する。
(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★ 100/100
□ 録音 : ★★★★☆ 80/100
(参考試聴)
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