キース・ジャレット

2020年1月 6日 (月)

キース・ジャレットの挑戦 Keith Jarrett Trio 「DIFINITIVE HAMBURG 1989」

キースのスタンダーズ・トリオによるジャズへの挑戦
ベストパフォーマンス
"ムジークハレ(1989)"の完全盤登場

<Jazz>

Keith Jarrett Trio 「DIFINITIVE HAMBURG 1989」
Live At Musikhalle, Hamburg, Germany October 1989
K-PROJECT (Non-Official)

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キース・ジャレット(p)
ゲイリー・ピーコック(b)
ジャック・デジョネット(dr)

 1977年のゲイリー・ピーコックのアルバム『テイルズ・オブ・アナザー』(ECM)が初めての顔合わせとなったキース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットのトリオは、1983年になって再びECMのマンフレート・アイヒャーによって集められ、『スタンダーズVol.1』『スタンダーズVol.2』『チェンジス』の3つのアルバムを発表した。このトリオはスタンダーズと名付けられているが、実はスタンタード・ナンバーを演ずる目的よりは、アルバム『チェンジレス』(ECM1987)にみるように、それを契機に彼らの世界を広めたのであったと言ってもいい。つまり自作の発表の舞台としての役割だったと思うのがスタンダードの演奏であり、しかもそのものの曲自身もスタンダード演奏として誰も聴いていないところがミソなんだろう。

█ ジャズへの挑戦であったこのスタンダーズ・トリオ

  キースがスタンダードを演奏すると言うことは、実はジャズそのものへの挑戦であったというのは間違いないと思う。古くはジャズと言えばデキシー・ランド・ジャズだというアメリカ人の感覚は、キースから見れば、それに対する抵抗であったも言えるのだ。スタンダードをピーコックとディジョネットとのトリオで演ずること事態、実はその影にトリオによるフリー・ジャズの発展を企てたと言って良いのだろう。
 そこが当時のスタンダーズ・トリオの興味が引かれる重要ポイントだ !! 。スタンダーズ・トリオは実はライブで初めて彼らの姿を知ることが出来るのである。

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 そんな流れが確立した時に行われた1986年のドイツはハンブルグでのライブ、これがオフィシャル・リリースがないだけに、"ムジークハレ"と呼ばれ世間の注目度も高く、従来はエア・チェックされたものを音源として、マニアには宝物として扱われたきた。ところがここに来てデジタル音源の登場で、まさにものによってはオフィシャル盤を超えたCD盤の登場を見たモノだ。しかも二枚組でライブ・フル録音盤でありそこに意味があり、取り敢えず私の愛聴盤と化しているのである。

22043000354 (Tracklist)

Disc 1
1.My Funny Valentine
2.Never Let Me Go
3.All Of You
4.The Cure
Disc 2
1.Summer Night
2.Everything Happens To Me
3.I'm A Fool To Want You
4.I Remember Cliford
5.U Dance


 以上全9曲、一曲20分を超える熱演もある。
 実はこの当時の80年代後半から90年代にかけては、キースは本格的なクラシック音楽のレコーディング活動を行っている。ECMのクラシック部門であるECM New Seriesが創設され、しかもその第一弾であるアルヴォ・ペルトの『タブラ・ラサ』のレコーディングへの参加が、最初の本格的なクラシック・現代音楽作品の録音だ。このアルバム収録の「フラトレス」でジャレットはギドン・クレーメルと共演しているのだ。その後キースは1987年のJ.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集第1巻』を、更にJ.S.バッハとショスタコーヴィチ、他にはヘンデル、モーツァルトなどの作品を取り上げている。もともとマルチ・プレイヤーでピアノだけでなく、ハープシコード、クラヴィコードも演奏した。これはこんな時のスタンダーズ・ライブである。

 オープニングM1-1."My Funny Valentine"から、キースが奏でる音の美しさに痺れてしまう。そしてM1-2."Never Let Me Go"では完全に美しく心の奥底に響くのである。ゲイリー・ピーコックの当時のベースの音も包容力がありますね。。ピアノの音にデジョネットのシンバル、スネアが生み出す音が、これまた不思議に重なり合って美しく化して素晴らしい。
 Disc2においてもM2-2"Everything Happens To Me"の中盤からのベース、ドラムスの展開はこれぞジャズと訴えるが、後半キースのピアノががらっと変わって物思いにふけってゆく。
 M2-3."I'm A Fool To Want You"  はベースそしてドラムス・ソロを絡めてピアノの美しさを聴かしいゆく憎い展開。それはなんと20分を超えてのスタンダース越えの曲となる。
 M2-4."I Remember Cliford " も、静かに聴かせるピアノ・ソロに近いパートがしっかりとられ、静かに心の奥に沈むことが出来る。

 これぞ、私にとっては当時のアメリカン・ジャズへの挑戦の姿として捉えるキース・ライブであり、従って当時のオフィシャル盤(『チェンジレス』を除いて)では知り得ないアルバムとして存在する。

(評価)
□ 曲・演奏 :   ★★★★★ 100/100
□  録音   : ★★★★☆    80/100

 

(参考試聴)

 

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2019年11月 9日 (土)

Keith Jarrett American Quartet 「Complete TOKYO 1974」

キース・ジャレット(アメリカン・カルテット)の初来日'74年東京公演の記録
壮絶なカルテット演奏・・・・これは間違いなく愛蔵盤

<Jazz>
Keith Jarrett American Quartet 「Complete TOKYO 1974」
KJ-146 / 2019

Live2

Keith Jarrett : P, ss, per
Dewey Redman : Ts, musette, per
Charlie Haden : B
Paul Motian : Ds, per

Keith_jarrett2  キース・ジャレット(右)話も、このところここでは疎遠になっていたが、この初来日の記念音源の登場で久しぶりに話題とする。なんと1974年東京公演の記録が好録音でブートではあるが登場したのである。当時私はキース・ジャレットにはそれなりに関心があったが、威勢の良いハービー・ハンコックのクロスオーバーというかジャズ・ファンクの『ヘッド・ハンターズ』などに圧倒されていたのだった。しかしそうはいってもキースのアルバムには愛着があり、ついに彼のライブに参戦できたのは10年後の1984年であった。そして次第にジャズ・ピアノとしては、私にとってナンバー1の存在となった経過から、この初来日には非常に興味がある。
 それも当時のアルバム『DEATH AND THE FLOWER 生と死の幻想』(1974年10月録音)には、プログレッシブ・ロックに夢中であった私の当時ジャズに求めた一面を十分に納得させたアルバムであった。これは今でも愛聴盤である。

 さてこのブート盤は、アルバム『生と死の幻想』録音半年前の1月12日東京郵便貯金ホールの公演モノだ。なにせ45年前と言うことになり、その音質には当然疑問の持たれるところだが、なんとこれはマスター音源からのステレオ録音版で・・・"ええ、ほんと!"と思わせるCD2枚組好録音盤である。まさにオフィシャル盤といっても恥ずかしくない。

 この初来日の日本公演は下のような記録になっている。9回のカルテット公演と1回のソロ公演だ。

Deweyredman2w 1月4日&5日、東京厚生年金ホール
1月6日、北海道厚生年金ホール
1月8日、名古屋市民会館
1月10日、京都会館
1月11日、福岡電気会館
1月12日、郵便貯金ホール
1月13日、大阪サンケイホール
1月14日、東京厚生年金ホール
1月15日、東京厚生年金ホール(ソロ・パフォーマンス)

(Tracklist) 1974.1.12 東京郵便貯金ホール

Disc 1 (42m20s)
1.Etude N0.5
2.Death And The Flower
3.(If The)Misfites(Wear It)

Disc 2   (46m03s)
1.The Rich(and The Poor)
2.Everything That Lives Laments
3.Extension No.6

 収録内容は上のように、CD2枚に納められている。会場のアナウンス、メンバー紹介もしっかり収録されていて、キース・ジャレット・トリオ+レッドマン(ts 上)のカルテットで、この会場に当時いたファンにはたまらないアルバムであろうことは想像に難くない。是非とも手に入れておくべき代物だ。

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   CD1-M1."Etude N0.5" キースのソプラノサックスの奇声とも言える不思議な世界からスタート、早々にモチアン(上右)のドラムスが鳴り響く。これには会場は度肝を抜かれたと思う。
 CD1-M2."Death And The Flower" キースのマルチプレイヤーぶりを発揮したWoodFluteにパーカッションによる展開。続くヘイデン(上左)のベースとピアノの静寂の不思議な世界、そしてレッドマンのテナー・サックスと展開してゆく。確かにこれは後のアルバムにお目見えした"生と死の幻想"のテーマだ。後半のカルテットによるスリリングな展開は凄い。そして再びキースのピアノは思索的世界に、そしてベースの描く世界にも吸い込まれる。やはりこの日のライブものでは、私の注目はこの曲にいってしまう。
 そしてCD1-M3."Misfites"のカルテットによる壮絶な即興演奏の嵐に驚愕するのである。
 CD1のこれら3曲は、合間の無い40数分の連続演奏。このキースの演奏には、今となってはアルバム『生と死の幻想』を愛聴している私には何も不思議な世界では無いが、当時の会場のファンはM3を含めて驚き聴き入ったに相違ない。

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  CD2もなかなか面白い。CD2-M1."The Rich(and The Poor)"のクラシック調のピアノ・タッチ、テナー・サックスとピアノのユニゾン、ブルース調の変調と面白い。そして消えるようなピアノとベースの響きで終わる。
 CD2-M2."Everything That Lives Laments" 静かなピアノ、テナー・サックスの歌い上げでスタート、ベースが引き続いてほぼソロで静かに語ってゆく、そしてその後次第にピアノの流麗な流れる演奏が主たる曲構成の役に移ってゆく。そしてドラムスの台頭、最後は四人の合流とこのあたりの息が合った世界はお見事である。
  このCD2も3曲は40数分連続で演奏される。

 しかしブートでも、このような録音盤が出てくるのは珍しい。キース・ジャレットものは色々とあるが、これは久々のブート界のヒットだ。

(評価)
曲・演奏 :  ★★★★★
録音   :  ★★★★☆

(視聴)  この日の映像モノは見当たらない。参考までにアメリカン・カルテットものを


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2018年3月11日 (日)

キース・ジャレットKeith Jarrett Gary Peacock Jack Dejohnette 「After The Fall」

<My Photo Album 瞬光残像>                  (2018-No3)

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「回想」                                        (Feb,2018 撮影)


キース復活直後の”トリオ・ジャズ第一号録音”の登場だ!

<Jazz>
Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack Dejohnette
「After The Fall」

ECM / Germ / ECM2590/91 /2018


Afterthefall

Keith Jarrett (piano)
Gary Peacock (double bass)
Jack DeJohnette (drums)
Recorded live in concert November 14, 1998New Jersey Performing Arts Center; Newark, New Jersey
Produced by Manfred Eicher

 大御所のキース・ジャレット・トリオのニュー・アルバムの登場だ。しかしなんともう20年前の録音もの。慢性疲労症候群という難病に冒され、1996年のソロ・ツアーをもって休養に入った後、復帰したのは1998年。ついこのあいだの事ような気でいたがもう20年前になるんですね、その復帰後初のトリオ・ライブとして今回話題になっているものだ。ニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターで行われたライヴの音源。
 今まであの復帰してのトリオ第一号アルバムは、2000年にリリースされた人気のパリの1999年録音モノ『Wisper Not』(UCCE-1004/5)であったのだったが、今回のこれはまさにそれこそ正真正銘復帰トリオ第一号として当然ここに注目してしまう代物なのだ。
 しかもキース自身が「改めてこのコンサートの音の素晴らしさに驚いた。これは私にとって病気からの復活を示すドキュメンタリーというだけでなく、本当に素晴らしいライヴなんだ。」と語っているようだ。

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(Tracklist)
Disc 1
1.  The Masquerade Is Over (Live)
2.  Scrapple From The Apple (Live)
3.  Old Folks (Live)
4.  Autumn Leaves (Live)枯葉
Disc 2
1.  Bouncin’ With Bud (Live)
2.  Doxy (Live)
3.  I’ll See You Again (Live)
4.  Late Lament (Live)
5.  One For Majid (Live)
6.  Santa Claus Is Coming To Town (Live) サンタが街にやってくる
7.  Moments Notice (Live)
8.  When I Fall In Love (Live)

Kj1w 収録曲は上のようだが、アルバム『Wisper Not』とは、Disc2のM1. "Bouncin’ With Bud"M8. " When I Fall In Love "が共通しているが、このアルバムも全てがスタンダード曲で埋められている。
 中でもDisc1のビル・エヴァンスから始まって誰もが演ずるM4. " Autumn Leaves (枯葉)"だが、13分に及ぶハイテンポにしてインプロヴィゼーション豊富な構成で起承転結が見事に計算された曲に仕上げられていて驚いた。う~~ん成る程キースの世界はこれだけリアルタイムに即興しながらも計算し尽くされているところを見せつけるのだ。
 Disc 2の、演奏面の味つけに重点が於かれている事が一層濃い思われるソニー・ロリンズのM2. " Doxy "やジョン・コルトレーンのM7. "Moments Notice"なども登場させて、キースの回復を祝しているかのような展開もみせている。
 M3. " I’ll See You Again"M4. " Late Lament" にみるムードは、私の感覚では、ちょっとした人まばらな深夜の酒場のムードを連想して、私の好むところなのだ。それをこのライブに於いて聴かせてくれたというのは、やはり彼は復活した事を彼自身とオーディエンスとでお互いに実感しているようにも思えた。
 更にM6. " Santa Claus Is Coming To Town"などお馴染み曲を披露したのは、聴衆サービスにも配慮しているキースがみて取れる。

Themelodyatnighteithyou 1998年に復帰第一作目として発表されたピアノ・ソロ作品『The Melody At Night, With You』(POCJ-1464)(→)や、更に2000年には、パリでのトリオ・ライヴを収録した先述の『Wisper Not』と、この二作でキースの復活を実感して喜びに浸った事を思い出す。そして嬉しいことに、今再び感慨深くこのアルバムに接することが出来たのである。

Atthedeer1_2ついでに一言、今回のジャケ・デザインはそれなりに芸術性は高いのでしょうが、私はキースの病気の少々前の『At The Deer Head inn』(POCJ-1225)(→)のようなタイプの方が好きなんですね。こうした懐古的アルバムは何かその時代を感じさせるようなものであったらどうなんでしょうね。

(参考視聴)

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2015年5月19日 (火)

キース・ジャレットKeith Jarrett 久々のピアノ・ソロ新録音盤「CREATION」

東京、トロント、パリ、ローマのインプロヴィゼイション・ソロ・アルバム

<Jazz>

         KEITH JARRETT 「CREATION」
      ECM Records / Germany / ECM 2450 4721225 / 2015

Creation

         Recorded April,May,June and July 2014
             Keith Jarrett : Piano

 キース・ジャレットの新アルバムだが、久々の最新録音もの。それも日本、カナダ、フランス、イタリアにおける昨年(2014年)のソロもの。これだけ早く出るのも珍しいですね。キースはなかなかアルバムとしてリリースするに即OKというタイプでないのだが、近頃ブートも出回る世の中、若干意識しての早々のリリースか?。まあそれはそれとして本人のプロデュースという事にもなっているので、演奏内容にも納得していると言うことでしょう。ただし今回の世界公演で、ニュー・ヨーク、モントリオール、ベニスが入ってませんね。

Creationlist

 内容は上の通り(クリック拡大)。四都市5会場の演奏を9っに纏められているが、一工夫しての配列であろう。
 アルバム・タイトルは、 「CREATION」というところで、インプロヴィゼイション・ピアノ・ソロであるので、単なる「創作」という意味なのか、それとも「天地創造」とか「万物・宇宙」をイメージしてのタイトルか、近年のキースのあの慢性疲労症候群からの再起後は、なにか人生の感謝とか一つの達観したしたイメージを訴えてきて、昔のような危機感、不安感といったところとはあまり感じられない。多分このアルバムの収録曲のイメージも人生の納得した世界観を描いているように思えてならない。

Kj2 トップのトロントものは、非常に思索的な曲、そして彼の特徴の唸りというかここでは歌うと言ったほうがよい声が入る(この声の入るのは、私はあまり好きではない)が、難解というイメージはない。
 続く東京Kioi Hallは静かな優しさに包まれた世界で、PartⅤとともに美しいメロディーが演奏される。
そしてパリも静かな世界だ。
 若干ではあるが人間の懐疑的な世界という印象の描くところでは、ローマのPartⅦ、Ⅷにそんなところが感じられる。
 とにかく近年のキースは非常に取っつきやすい曲を演じてくれて、特にこのアルバムに収録されたものは、アバンギャルドな攻撃的なものではなく、又危機感とか不安感とかを主体としたものでない。どちらかというと静かな美しい世界であって、最終的には安堵感とも言える世界に連れて行ってくれる。
 人生を達観した姿が感じられるキースであった。

(試聴)

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2013年6月 9日 (日)

キース・ジャレット・トリオ Keith Jarrett Trio :ニュー・アルバム 「Somewhere」

2009年録音もので健在ぶりを披露~それが又好評です

 そういえば、キース・ジャレットの前アルバムは、ソロの「RIO」でしたね(参考①)。あれは2011年録音・同年リリースもので、彼の慢性疲労症候群という難病を克服してのもう心配ない健在ぶりを十分堪能させてもらったわけだが、その2年前のトリオものがここに来てリリースされたということになる。・・・と、言うことはその「RIO」の前にリリースされたやはりソロ・アルバムの「Testament」が2008年録音であったので(参考②)、丁度その間の録音と言うことになる。つまこのトリオもののリリースは、2011年「RIO」発表時にも既に練られていると言われておりここに来てお披露目となった。

<JAZZ> Keith Jarrett  Gary Peacock  Jack DeJohnette 「Somewhere」
               ECM Records   ECM 2200 B0018362-02  ,  2013

Somewhere

 ECM らしいジャケであるが、若干キース・ジャレットのムードとしては少し違う感もあるが、まあそれはそれ結構でありますが、このアルバムはどうも巷で非常に評判が良い。
 先日も”最後の伝統のトリオ公演”と言う話で日本公演を果たしたわけであるが、考えてみるとこのスタンターズ・トリオと言われる1983年以来のこのトリオもののリリースも、録音日でいうと久しぶりのものになる。

 なんと言ってもベースのゲイリー・ピーコックは、キース(68歳)より10歳年上になるので、今年78歳になる。しかし彼はこのトリオのスタートから重要な役を果たしてきた。このトリオの性質を決めてきたキーであることも知っておかねばならない。そうであるからこそ、寄る年波は、そのあたりはやっぱり厳しいのだろうなぁ~~と思うところ。さてさてそんな30年キャリアのこのトリオの演奏はどうだったのかといろいろと考えながら聴いたというのが今回のこのアルバムだ。

Somewheremembers


(tracklist)
1. Deep space ~ Solar
2. Stars fell on Alabama
3. Between the Devil and the deep blue sea
4. Spmewhere ~ Everywhere
5. Tonight
6. I thought about you

 このアルバムはスイスのKKL Luzem Concert Hall でのライブものであるが、なかなかの好録音で、是非ともハイレゾ音源で聴きたいところである。
 そして選曲はいろいろなピアニストが取り上げているものであるが、バーンスタインの”Tonight”以外は若干渋めの曲である。
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 ”I thought about You”は、前回取り上げたイリアーヌ・イリアスのニュー・アルバムのアルバム・タイトル曲であり、彼女の場合は冒頭のスタート曲として気持ちが高ぶるような意気揚々とした曲に仕上げているが、キースの場合はアルバム・エンディング曲としてかなりムーディーに気持ちが安まる曲になっていて、この両者の違いが面白い。
 このアルバムは既に多くの好評を得ている。オープニングもキースのインブロビゼイションのソロ・ピアノ演奏の”Deep space”でスタートして気持ちを次第に引き込んでゆくが如くに展開し、そして”Solar”に入ってゆくところがにくいところ。多分このあたりでファンはもう参ってしまうのである。もともと私はキースの場合、オリジナルものやインプロビゼイションの方が好みであるので、当然こうした演奏は大歓迎である。
 ”Stars fell on Alabana”は、キースのピアノ・ソロとゲイリーのベース・ソロを織り込んでの曲構成で美しさと心に響く一つ一つの音を大切にした世界を作り上げている。
 ”Somewhere”も、このトリオはしっかり自分たちの歴史を噛みしめるが如くに説得力のある流れを醸しだし、彼等のオリジナル曲”Everywhere”と流れ、このアルバムの核をなす20分に及ぼうとする曲となっている。

 しかし考えてみれば、このトリオ・メンバーの歳を考えると、この充実ぶりは恐ろしさすら感ずるのである。録音日からみると前アルバムは「Up for It」だと思うが、あれは2002年の録音であったから、それから7年の間があるわけだ。しかしこうした充実した演奏が展開されたことに万歳をしたいところである。
 今回は、かなり彼等のトリオものとしてはしっかり練ってのニュー・アルバムであったことは、世界各地での多くのコンサートの中でもやっぱりこの日の出來は出色であったのであろう、アルバムとしての曲の配列を含めてのまとめも見事であった。

 さてさて最後に一言、このアルバム、いやに巷にて好評なんですが・・・・、しかし思い起こせば、私が彼の演奏を眼前で観てジャズ・ピアノの魅力を思い知らされたのは1984年、又このトリオとしての私の感動はアルバム「CHANGES」、「CHANGELESS」にあったのだが(既にこれは30年前の話になる)、今でもそちらの方により強い私の心や感動があることには変わりは無いのです。( 参考③)

(参考) ①  http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/keith-jarrett-r.html 
      ②  http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/keith-jarrettte.html
       ③ http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/keith-jarrett-7.html

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=XYJDGhur4AM

         [PHOTO   今日の一枚]

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(NIKON D800   AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4G)

 

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2012年2月21日 (火)

雪の日の幻想 -6-  Keith Jarrett 「BELONGING」

雪の日の幻想 H  ( NIKON D700 + Remodeled Lens )

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<今日の一枚 jazz>

Belonging 「jan garbarek  keith jarrett  palle danielsson  jon christensen  /  BELONGING」 ECM Records  ECM 1050 78118-21050-2 ,  1974

 キースのヨーロピアン・カルテット作品。ヤン・ガルバレクのサックスとキースのピアノとの絡みというか、協調というか、そのあたりが聴きどころ。クリステンセンのドラムスは妙に重くなくこのカルテットとしての役どころを考えてのことか。
 私としては2.4.6の3曲は、どちらかというとスローなテンポの作品で好みです。特に”solstice”は、ガルバレクのソプラノ・サックスが頑張って歌い上げるが、キースのピアノが美しい。そのピアノをベース(ダニエルソン)は絶妙なサポートを演ずる。

   1. spiral dance
   2. blossom
   3. 'long as you know you're living yours
   4. belonging
   5. the windup
   6. solstice

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2012年2月13日 (月)

雪の日の幻想 -5-  Keith Jarrett 「EYES OF THE HEART」

雪の日の幻想 G  ( Olympus E-P3 + M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm )

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<今日の一枚 jazz>

Eyesoftheheart_2 「KEITH JARRETT / EYES OF THE HEART」 ECM Records ECM-1150  78118-21150-2 ,  1979

 1976年5月オーストリア、ブレゲンツのコルンマクルト劇場での”アメリカン・カルテット”の最後のアルバム(ライブ)。
 ライブものにも係わらず非常に繊細な流れがヘイデンとキースの掛け合いに感ずる。”eyes of the heart p.1&p.2”には彼らでなければないような作品だとも言える。
 カルテットによるインプロヴィゼイションの難しさも浮き彫りになったアルバムとも言われているが・・・・。
 ”encore(a-b-c)”は荒々しさを奏でつつ、最後にキースの静かなソロで纏め上げてこのカルテットに終止符を打ったのだ。

   keith jarrett : piano, soprano sax, osi drum, tambourine
   dewey redman : tenor sax, tambourine, maracas
   charlie haden : bass
   paul motian : drums, percussion

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2012年2月12日 (日)

雪の日の幻想 -4-  Keith Jarrett 「Dark Intervals」

雪の日の幻想 F  ( Olympus E-P3 + M.Zuiko Digital 40-150mm )

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<今日の一枚  jazz

Darkintervals 「Keith Jarrett / Dark Intervals」 ECM Records  ECM 1379  78118-21379-2  ,  1988   (1987録音)

 1987年東京サントリー・ホールでのソロ・ライブ。オープニングの曲”opening”は暗闇の世界を感じさせる重々しさ。しかし次第に小品を繋げて展望の見える世界に導く。
 日本に於ける録音も良くやはり貴重な作品である。彼のソロ・アルバムでも私にとっては最右翼にある。
  (いつも思うのだが、曲間の拍手は消して欲しい。全曲をトータルに聴いて初めて彼の世界を知り得るので・・・・・・)
  1. opening
  2. hymn
  3. americana
  4. entrance
  5. parallels
  6. fire dance
  7. ritual prayer
  8. recitative

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2012年2月10日 (金)

雪の日の幻想 -3-  Kieth Jarrett「PERSONAL MOUNTAINS」

雪の日の幻想 E  by Olympus E-P3 + M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm

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<今日の一枚 jazz>

Personalmaountains 「Keith Jarrett / PERSONAL MOUNTAINS」 ECM Records  ECM1382 78118-21382-2 , 1989 (1979録音)

 1979年の日本ライブ(中野サンプラザ)。ヨーロピアン・カルテットの最後のアルバム。こうした美しさはそう聴けるものではない。心に訴えてくるというのはこうゆうアルバムを言うと言っても良い。これがなんと録音してから10年以上没になっていたというから不思議なところ。私の愛聴盤。

   keith jarrett : piano, percussion
   jan garbarek : tenor & soprano saxophones
   palle danielsson : bass
   jon christensen : drums

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2012年2月 3日 (金)

雪の日の幻想 -2- Keith Jarrett「MYSTERIES」

雪の日の幻想 C    by Nikon D700 + Remodeled Lens

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                                   *     *     *     *     *

雪の日の幻想 D    by Nikon D700 + Remodeled Lens

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<今日の一枚  jazz>

Mysteries 「KEITH JARRETT / 秘蹟 MYSTERIES」 (1975.12.10&11 録音)IMPULSE  UCCI-9053 

 これも、キース・ジャレットのアメリカン・カルテットの作品。確かにキースのアルバムで、ここまでサックスの演奏が大きな役割を持ったのはこのカルテット時代であろう。ここでもデュース・デットマンの貢献は大きいし、チャーリー・ヘイデンのベースもこの不思議な世界を描いている。
 ここではキースは、ピアノ以外にフルート、ウッド・ドラムス、パーカッションなどのプレイを曲作りの中で披露している。
   1. rotation
   2. everything that lives laments
   3. flame
   4. mysteries

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