ヘイリー・ロレン

2024年4月19日 (金)

ヘイリー・ロレン Haile Loren 「Dreams Lost and Found」

パンデミックの暗さから新しい展開への意欲の歌

<Jazz>

Haile Loren 「Dreams Lost and Found」
(CD)Victor Entertainment / JPN / VIVJ-61794 / 2024

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Halie Loren : vocal
Taurey Butler : piano
Sam Kirmayer : guitar
Morgan Moore : bass
Jim Doxas : drums

 久々のヘイリー・ロレンのニュー・アルバム登場。アラスカ出身のヴォーカリストの彼女は、Jazzy not Jazz路線でその美貌と相まって日本ではトップ・クラスの人気者。なにせ前作は6年前の『From The Wild Sky』で、原点回帰というかジャズというよりはロック寄りに彼女自身は一つの焦点を持っていて、デビュー作『Full Circle』(2006)同様、彼女の作品集でありロックから進歩したオルタナティブ・ミュージックであつた。
 しかし日本でのヒット『青い影』以来、作られたヘイリー・ロレン像というのは、Jazzy not Jazz路線で、しかもバラード曲が人気を集めているわけであり、彼女のジャズ路線への期待が大きい中での今作の登場である。

 不思議に私が上京する時に彼女は来日公演が行われていて、Cotton clubで2回はライブに参加したのだが、やはり会場の期待度はJazz路線にあって多くのスタンダード曲のカヴァーが人気があった。ロック系は彼女自身のオリジナル曲で浸透していなかったせいもあるかもしれないのだが、しかし日本での人気のスタートは、プロコム・ハレムの"青い影"であり、やっぱりロックとの関係は無視できない。

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 そんな中での今回は、パンデミック経ての久々ということもあり、又前作での彼女の本来のオルタナティブ・ロック路線は十分やりつくしたところもでもあり、期待度の高いJazzy not jazz路線で作り上げられている。ジャジーでしかもポップ,両者の間を自然に行き来する彼女の最新作のテーマは“再生”,“つながり”,“希望”というところにあるようだ。いずれにしてももうデビューから20年で、円熟味を増した表現力,現代シンガーソングライターとしての持ち味,その全てが揃ったヘイリー・ロレンの集大成といえる形での登場である。なおバック演奏では今作ではベースの音が気になったが、そのベーシストのMorgan Moore(上右)の助力が大きく働いての製作であったようだ。

 彼女の言葉・・・「このアルバムでは,内面的な変化に訴えかけるような曲を集めたの。パンデミックを経て私たちは皆,何らかの形で変わり,自身の異なった側面を見つけた。私たちが前進するため,将来に向けて持ち続けるべき新しい夢は,もう以前のものとは異なるかもしれない。今回の曲の多くは,そのような変化について歌っている」

(Tracklist)

1.For All We Know
2.How High The Moon
3.Dance Me To The End Of Love
4.Sabor a Mi
5.All I Want
6.More
7.C’est le printemps (Prelude)
8.It Might As Well Be Spring
9.All Night Long
10.Stop This World
11.Fool On The Hill
12.Under The Same Moon
13.Sukiyaki (You Took Your Love Away)
14.I’ll Be Seeing You
(Bonus Tracks)
15.Sukiyaki (Altenate Version)
16.Sabor a Mi (Altenate Version)

 選曲は、レナード・コーエン、ジョニー・ミッチェル、ビートルズ、坂本九のヒット曲、ジャズ・スタンダードなどと多彩だ。しかし、そこには、パンデミック時の暗い社会の中での苦労や人間関係から一歩脱皮しての希望の展開を歌っているようだ。人の愛情にも女性としての生きざまに光を感じられるようになった様子が歌い込まれてもいるようだ。相変わらずのロレン節が展開されていて楽しい面も十二分に聴くことが出来る。

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M1."For All We Know" 低音の物憂げなヴォーカルでスタート。このしっとり感はロマンティックでもあり悪くない。彼女の今の心境を表現しているようで、未来を見据えているところが納得。そして陽気なジャズ・ギターの印象的なアップテンポの曲M2.へ繋がる。
M3."Dance Me To The End Of Love" コーエンの代表曲。悲しみも喜びも共に人生を歩もうという意欲の湧く曲を歌い込む。Mooreのベースが印象的。
M4."Sabor a Mi" ラテン・ボレロをスペイン語でジャジーにしっとりと歌いこむ。
M5."All I Want" ジョニ・ミッチェルの名曲、節回しが如何にもロレン節。
M6."More" 彼女の曲、切なる想いをピアノのバックと共に歌い上げる。
M7."C’est le printemps" フランス語でのスロー・バラード、なかなか芸達者に。
M8."It Might As Well Be Spring" 活発な曲展開で展望と渇望を歌い上げる
M9."All Night Long" なかなかスロー・ブルースを歌いこんでの心の暴露が聴き応えあり、この世界は彼女の従来のポップさとは別物だが、これからに力を入れてほしいところ。
M10."Stop This World" こちらはアップテンポに変調、ギター・ソロ、ピアノ・ソロと展開が曲を楽しく盛り上げ、彼女もヴォーカルも乗りに乗る。
M11."Fool On The Hill" 昔、セルジオ・メンデスのラテン・タッチが良かったので、つい比較してしまうが・・・まあ、彼女のコンテンポラリな世界を歌い描いていて、これはこれでよく聴くとなかなか面白い。
M12."Under The Same Moon" 切ない想いを歌い、感情の表現がなかなかうまい。
M13."Sukiyaki (You Took Your Love Away)" 上を向いて歩こう"がその軽快なリズムを生かして、悲しみも忘れて未来に展望を歌う
M14."I’ll Be Seeing You" 最後はバラード、しっとりと切ない想いが伝わってくる歌いこみ.
(ボーナス・トラック)
こちらの"Sukiyaki"は、しっとりバラード調。

 ジャージーな面が今作は強くなっていて、おそらくファンの期待度は満足だろうというところ。この6年間のいろいろな想いを彼女としては凝縮させて作り上げたアルバムの様だ。結論的には新しい出発ともいえる心意気が感じたところはよかったと思う。

(最近のヘイリー・ロレンの紹介文・・・ネットより) ヘイリー・ローレンは、国際的に受賞歴のあるジャズシンガーソングライターです。彼女は、昔ながらの音楽の道に新鮮で独創的な視点をもたらし、いくつかの言語で歌い、音楽の境界を越えたつながりについての生来の理解を導き、北米、アジア、ヨーロッパの多様な聴衆との絆を築きます。2008年のデビュー・ジャズCD『They Oughta Write a Song』は、2009年のジャスト・プレイン・フォークス・ミュージック・アワード(当時世界最大のインディペンデント・ミュージック・アワード)で「ベスト・ヴォーカル・ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、アジアでは瞬く間にJVCケンウッド(ビクターエンタテインメント)と契約。その後、ヘイリーはさらに9枚のアルバムをリリースし、シンガーソングライターとして多くの賞を受賞しました。北米や世界各地では、カナダを拠点とするJustin Time Recordsと契約している。レコーディングの成功に加えて、ローレンのライブパフォーマンスは、権威あるインターナショナル・ブリット・フェスト・オーケストラ、ソウルのジャズ・パーク・ビッグ・バンド、シチリアのジャズ・オーケストラ、モンタナのグレイシャー交響楽団、オレゴン州のコーバリス・OSU交響楽団、オレゴン州のユージン交響楽団、ルイジアナ州のモンロー交響楽団との共演にまで拡大している。過去数年間、彼女は米国とカナダ、日本、イタリア、中国、香港、韓国、ハイチ、エジプト、英国、フランスなど、世界の他の地域を東西に旅してきました。ローレンは、米国や他の国を横断するツアーを続けており、彼女のツアーに他の国を追加することを楽しみにしています。ニューアルバム『Dreams Lost and Found』はケベック州モントリオールでレコーディングされ、2024年4月12日にリリース。

(評価)
□ 歌・編曲演奏  88/100
□ 録音      88/100

(試聴)

 

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2018年6月18日 (月)

なんとなく好きな曲(1) 「Cry Me A River」~歌姫の競演

 特別な意味は無いのだが、昔からなんとなく好きな曲(歌)があるもので・・・・そのうちの一つにもう60年前の曲で、今でも女性ジャズ・ヴォーカルのアルバムにはよく登場する「Cry Me A River」だ。

 

 この曲は、近年ロックの大御所にもなりつつあるジェフ・ベックもギター・ソロで演じたりと、登場は延々と今日に繋がっているのだ。そこで取り敢えず最近この曲を唄いあげた歌姫を聴き比べてみようと、手元にあったアルバムから取り出して並べてみたところ十数曲となった。

         ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

Jl1 もともとこの曲は1955年にジュリー・ロンドンJulie London(1926-2000 (→))の歌唱で米国で大ヒットしたものだが、作曲・作詞者はアーサー・ハミルトンArther Hamilton(1926-)である。この曲も意外に難産で、当初は映画音楽(「皆殺しのトランペット」)として作曲されたのだが却下され、なんと映画企画者で監督・主演のJack Webbがこの曲を惜しんで、自分と離婚したばかりのジュリー・ロンドンに紹介したというのである。そしてジュリーは、ギターとウッド・ベースのデュオをバックに唄いあげてヒットとなったものだ。これによりB級女優であったジュリーは一躍歌手として脚光を浴びることになったというもの。

 私が昔初めて聴いた当時は、当然このジュリーの唄ったものだが、歌の歌詞の内容などは特に理解もせず気にもしないで聴いて気に入っていたのだが、一度は裏切りながら復縁を乞う恋人に向かって”いまさらもう遅い、川のように泣くがいい”といういやはや”恨み節”と言えるバラード曲なんですね。しかし究極はそう言いながらも受け入れる女心を臭わせるのが良いのかも。

 

  そして1956年には映画「女はそれを我慢できないThe Girl Can't Help It」にジュリーは特別出演してこの曲を登場させ、世界的ヒットとなった。

 

         ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

そこで私が作製したCD(勿論、私のプライベイトのもの)

「CRY ME A RIVER」 selected by photofloyd

 

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1. Jeff Beck
2. Imelda May
3. Julie London
4. Nicki Parrott
5. Cheryl Bentyne
6. Diana Krall
7. Ilse Huizinga
8. Lyn Stanley
9. Hetty Kate
10. Barbora Mindrine
11. Alexis Cole
12. Halie Loren
13. Tierney Sutton

 

 

 

 

 

 

 

  どうですか、結構興味深いメンバーが集まりました。

Imeldamay_30 ”さあ、皆うまく歌えよ・・・・”と言う感じで、Jeff Beckの演奏からスタートさせた。そして歌姫トップは、ジェフとのコンビの私が言うところのあちらの美空ひばりImelda Mayの歌から始まる(実は美空ひばりもこの曲を日本語歌詞で歌っていますが、良い音源が手元に無し)。このイメルダはロックでもジャズでも何でもこなす、上手いです。そしておもむろにJulie Londonの登場、今聴いても情感の表し方は古くさくなくお見事。そして続いて今や花形のヴォーカリストを登場させるというパターン。いやはやそれぞれ皆個性ありますね。

 

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 Nicki Parrottは無難に唄っていますが、ちょっと情感が少ないかな。Cheryl Bentyneはバックのトランペットが効いてジャズっぽい。Diana Krallはやっぱり独特のクラール節。Ilse Huizingaはやや大人しいかなぁ、ちょっと既成のイメージとは違う。Lyn Stanleyはバックのサックスと共に大人ムード。Hetty Kateは情感抜きの異色派。Barbora Mindrineはバックこそ違ってもジュリー派。Alexis Coleは唄い聴かせる派。Halie Loren は小節を効かしての自分派。Tierney Suttonはまさに彼女の世界で歌い込む、別の曲かと思わせる。

 こうして並べて聴いていても、それぞれに個性があって飽きないところが味噌。従ってまだまだ多くの女性ヴォーカリストがこれからも聴かせてくれることが楽しみな曲である。

 

Cry Me A River
             (Arther Hamilton)

Now you say you're lonely
You cry the long night through
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

Now you say you're sorry
For being so untrue
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

You drove me, nearly drove me, out of my head
While you never shed a tear
Remember, I remember, all that you said
You told me love was too plebeian
Told me you were through with me and

Now you say you love me
Well, just to prove that you do
Come on and cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you
I cried a river over you
I cried a river...over you...

 

 今頃になって あなたは「淋しい」なんて言うのね
一晩中 涙に暮れながら
だったら たくさんお泣きなさい
川のように泣くといいわ(涙が川になるまで泣いてみせて)
私だって あなたの為に たくさん涙を流してきたんですもの

今さら 「すまない」なんて謝られてもね
自分がどんなに不実だったかを
だったら たくさんお泣きなさい
川のように泣くといいわ
私だって あなたの為に たくさん涙を流してきたんですもの

あなたが涙しなかった時も
私はどれほどあなたに夢中だったことか
忘れもしないわ あなたが私に言った事
恋なんて バカらしいとか
私とはもう終わっただとか

それなのに
今さら あなたは「愛してる」なんて言うのね
だったら それを証して見せて
川のように あふれる涙で
        (ネット上でみた日本語訳を拝借)



(視聴)

 

* Imelda May

* Diana Krall

 

 

* 美空ひばり

 

 

 

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2018年4月26日 (木)

ヘイリー・ロレンHalie Lorenのニュー・アルバム 「FROM THE WILD SKY」・・・・・・・・(別話題)アレッサンドロ・ガラティ決定盤登場

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ちょっと期待外れのポップ化路線は彼女の原点回帰?

<Jazz, Pop>
Halie Loren 「FROM THE WILD SKY」
Victor Entertaiment / JPN / VICJ-61772 / 2018

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Halie Loren : Lead Vocals, Piano, Ukulele, Harmonium, Clap & Stomp
Produced & Mixed by Troy Miller



 ヘイリー・ロレンHalie Lore(1984年アラスカ生まれ)と言えば、何と言っても、彼女は今やその美貌と作曲能力とヴォーカルの色気で日本ではジャズ・ヴォーカリストとしては人気No1といっても過言では無い。2016年にライブ・アルバムはあったといえ、スタジオ・アルバムとしては、久々のニュー・アルバムだ。
 そしてなんと驚きですね、今作は10曲彼女によって書かれたオリジナル曲集だ。しかも彼女のリード・ヴォーカルは当然だが、ピアノその他の楽器演奏も演じている。又このアルバム・ジャケも今までのアルバムと違いは感じていたが、なんと彼女のアート・ワークとデザインである。こうしてみると、これは完全に彼女がやりたいことをやったというアルバムとみて良いのだろう。
 更に、英国人プロデューサー、トロイ・ミラーをプロデューサーに迎えコンテンポラリーにしてジャジーな因子の強いとは言え、完全なポップ・アルバムなのだ。

 彼女は、14歳でプロとして歌い始め、22歳(2006年)に自作曲を収録する『Full Circle』(White Moon Production)でアルバム・デビュー。そしてその後の2008年のアルバムが日本で2010年に『THEY OUGHTA WRITE A SONG 青い影』(VICJ61618)として発売され、あっと言う間に人気歌手となる。2012年には初の来日公演などにより人気は不動となり、毎年来日している。

11994398243_7fbed37c6d(Tracklist)
1. Roots
2. How to dismantle a life
3. Wild birds
4. Paper man
5. I can't land
6. Well-loved woman
7. Painter's song
8. August moon
9. Noah
10. Wisdom
11.A mi Manera
12. In My Life *
13. Turn Me On *

 (*印:日本盤ボーナス・トラック)

  彼女のライブには、もう毎年の行事になっているコットン・クラブに2回参じたが、披露曲はジャズ・スタンダードが主力。従って今回のアルバムも、てっきりスタンダード・ジャズ・ヴォーカル集と思っていたのだが、このポップ曲には、ちょっと肩すかしを食らった感覚である。

Fullc2 思い起こせば、彼女のオリジナル曲が主体のアルバムというのは、あのデビュー・アルバム『Full Circle』(→)以来かも知れない。そしてあのアルバムの再来と言って良いと言える今作だ。それは12年ぶりの原点回帰ということでもある。
 日本でのヒット『青い影』以来、作られたヘイリー・ロレン像というのは、Jazzy not Jazz路線で、しかもバラード曲が人気を集めているわけであるが、ライブでの彼女の軽快なアクションをみるにつけ、やっぱりジャズというよりはロック寄りに彼女自身は一つの焦点を持っているのかも知れない。そして『Full Circle』同様、彼女の作品集である今作は、ロックから進歩したオルタナティブ・ミュージックであった。しかもあのデビュー作よりはむしろ更に大衆的に解りやすいところのポップ化されたところとなっているのは、若干後退かと残念がるところである。むしろここに至るのであれば、もっとロック、ポップからの異質性・変質性を高めて欲しかっようにも思うのである(その点では『Full Circle』のほうが面白い)。

   ジャズっぽくて、ちょっと面白い曲はM4. "Paper man"あたり。又 M5. "I can't land"は、ややしっとり感もあって楽しめる。M8.."August moon"、M9. "Noah"は、美しいポップ曲 。11番目に登場する”マイ・ウェイ”("A mi Manera")は、スペイン語でのヴォーカルで魅力的、これが一番ヘイリー・ロレンらしい出来。ライブからのビートルズなどのボーナス曲2曲も彼女らしい曲仕上げ。

 まあ今作は、ロックも好きである私にとっては、この手のポップなアルバムも悪くは無いのだが、こうして聴いてみると、やっぱり彼女への期待はジャズ系のヴォーカルにあるのだろうと言うことをあらためて感じたのであった。
 
(評価)
□ 曲・演奏・ヴォーカル: ★★★★☆
□ 録音          : ★★★★☆

(参考視聴) このアルバムとは全く関係ないHalie Lorenをどうぞ・・・

                *          *          *          *          *

[追記]

本日到着・・・・・

ついに寺島レコードからアレッサンドロ・ガラティ・トリオ決定盤登場

Alessandro Galati Trio 「Shades of Sounds」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1062 / 2018


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Alessandro Galati  : piano
Gabriele Evangelista  : bass
Stefano Tamborrino :  drums

Recorded, Mixed & Mastered by Stefano Amerio
Producer : 寺島靖国


Shadeslist 待望のアルバム本日到着。美旋律ピアニストのAlessandro Galatiの決定盤だ。
 あの寺島靖国が、気合いを入れてのアルバム・リリース。
 ガラティのオリジナル曲は1曲”Andre”の再録音版。あの私のガラティとの接点が出来た1994年のアルバム『TRACTION AVANT』からの美旋律の名曲。
 録音は名エンジニアのステファノ・アメリオとくるから文句の付けようが無い。ピアノとシンバルそしてベースの響きが抜群。

 評価はじっくり聴いてのここへの再登場により、しっかりしたいと思っている。
 収録曲は右記。
 とにかくスタートの"After You Left"からうっとりである。
 ビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーンも登場。
 いずれにせよ、今年No1候補がここに登場した。

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2016年4月18日 (月)

今年も「ヘイリー・ロレンHalie Loren東京ライブ」に参加・・・・

大人のジャズ・ヴォーカルに成長しつつも・・・・

 今年も昨年に続いて東京ライブを行なったヘイリー・ロレン、ローカルの地に住む私ですがたまたま今年もタイミングよく上京中にて、昨年に続いて連年で一夜を楽しませて頂きました。
 そうそう、そう言えば昨年のライブのアルバムもこれに併せてリリースされていて、昨年を思い出しながらのライブ参加となった。

(参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/halie-lorenbutt.html

    <Jazz>
           HALIE LOREN  「LIVE AT COTTON CLUB」
      VICTOR Entertainment / JPN / VICJ-61749 / 2016

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(Tracks) 
1 スウィングしなけりゃ意味がない IT DON'T MEAN A THING (IF YOU AIN'T GOT THAT SWING)
2 青い影 A WHITER SHADE OF PALE
3 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン FLY ME TO THE MOON
4 ヒット・ザット・ジャイヴ、ジャック HIT THAT JIVE, JACK
5 アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ OUR LOVE IS HERE TO STAY
6 フォー・センチメンタル・リーズンズ FOR SENTIMENTAL REASONS
7 ラヴ L-O-V-E
8 ブルー・スカイズ BLUE SKIES
9 バタフライ BUTTERFLY
10 アイヴ・ガット・トゥ・シー・ユー・アゲイン I'VE GOT TO SEE YOU AGAIN
11 トゥー・ダーン・ホット TOO DARN HOT
12 勝手にしやがれ IS YOUR IS OR IS YOU AIN'T MY BABY
13 フィーリング・グッド FEELIN' GOOD
14 パハップス、パハップス、パハップス PERHAPS, PERHAPS, PERHAPS
15 この素晴らしい世界 WHAT A WONDERFUL WORLD
16 みんなビューティフル EVERYTHING IS BEAUTIFUL
17 いとしのエリー ELLIE MY LOVE

HALIE LOREN ヘイリー・ロレン(VOCAL)
MATT TREDER マット・トレダー(PIANO)
MARK SCHNEIDER マーク・シュナイダー(BASS)
BRIAN WEST ブライアン・ウェスト(DRUMS)

2015年2月 東京コットンクラブ 録音

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 今年の彼女は、やっぱり少々貫禄もついてきたかなぁ~という印象で、そう考えて見ればデビューからもう10年になるしね。ジャズ・ヴォーカリストはこれからが勝負だと言いたいところで観賞だ。バックは昨年と同じMatt Trederピアノ・トリオでステージに立った。
 昨年は意外にライブ参加者の出足が遅く、自由席予約であったがゆっくり行っても最前のテーブルでの観賞。今年(4月16日)は開始40分前に会場に入ったがほゞ満席状態。そうだ考えて見ると今日は土曜日だったなぁ~と。
 ロックと違って会場は老弱男女(私は”老”のほうだなぁ~と)、ここに集まった皆はヘイリー・ロレンは何時もどんな環境で聴いているのかなぁ~~と想像しながらの観賞。

 相変わらず、日本のオーディエンスはお行儀が良いので彼女もご満悦。そしてやっぱり”いとしのエリー”、”青い影 ”、”Fever”などが喝采を浴びていた。

Fullc2 年を重ねる度に、バラード調の曲が次第に味が乗ってきたように思う彼女だが、このパターンでこれからもゆくのかなぁ~と、実はふと昔の彼女自身のオリジナル曲で出来ていた・・・↓
 1stアルバム「Full Circle」( White Moon Productions / USA / 2006)
・・・・を思い出しながら、今となって、一度はあのパターンでもう一度アルバムを作ったらどうなるかと、面白いかもしれないと、思っているのである(”Numb”と言う曲なんかは面白いんだが)。
(参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/halie-lorenstfu.html
まあMatt Trederと組んでのアルバム「青い影 They Oughta Write a Song ..」がヒットしてそれ以来、そのJazzy not Jazz路線パターンで今日まで来ているのだが・・・・商業的にはしょうがないのだろう。
 そんな事を頭をよぎらせオーディエンスとなった一夜であった。

(参考視聴)   

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2015年2月16日 (月)

ジャズ路線が強化~ヘイリー・ロレンHalie Loren の新譜「butterfly blue」そして”バレンタイン・スペシャル・ライブ”

        <My Photo Album 瞬光残像 =南イタリア編>

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アルベロベッロAlberobello(南イタリア)の夜・・・・・・
白い壁ととんがり帽子の屋根の可愛い家(トゥルッリTrulliと言われる)で、この村には1000以上が保存されている。この地方では石灰岩が採れ、それを積み重ねて作られているもの。1996年に世界遺産に認定されて、人気の観光地。
                                           (photo 2014.12)


                *    *    *    *

    <Jazz>
       Halie Loren 「butterfly blue」
       Victor Entertainment / JPN / VICJ61709 / 2015

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  この2月は例年のごとく、ヘイリー・ロレンのジャパン・ツアーが行われている。もう彼女は日本では売れ筋のジャズ・ウォーカリストだ。アラスカ出身の彼女が日本で話題になったのは、アルバム「青い影 they Oughta Write a Song・・・」で、当時ここでも取り上げたが、もう5年も経過したんですね(参照 :http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/halie-loren-a9e.html)。
 今回、私も参戦したライブは、今年発売のこのニュー・アルバムを引っさげて「Butterfly Blue-Valentine Special」として東京”Cotton Club”で行われたもの。

Haliecottonclub もともと彼女は2ndアルバム「青い影」でロック畑からのプロコム・ハレムの売れた曲(かって日産のシルビアのコマーシャル・ソングにも使われた)のカヴァーを”Jazzy not jazz”路線で展開して好評、一気に日本でも売れたわけだ。従ってジャズといってもポピュラーに近いアプローチがその後のアルバムでも展開しており、私は是非是非ジャズ路線を深めて欲しいと期待しているのですが、しかし、こうしてライブに望んでみるとステージでの流れにおいてはやっぱりジャズ色が濃く、なかなかその点は良い。今回”A Whiter Shade of Pale”も当然登場したが、ジャズ・アレンジはアルバムのものよりは進んでいる。これがライブでなきゃ・・・というジャズの醍醐味ですね。

 大柄でないスマートな体型、そして手の動きなどは曲に合わせてのジェスチャーが堂に入っており、又腰から足へのリズムの取り方はまだ若いエネルギッシュなダンスを小気味よく曲に合わせて展開し、そこにあのジャケそのままの美人でもあって、ステージ・ショーは見事である。
 更に、アルバムでのウィスパーから高音域に入るところの声がひっくり返るというちょっとしたこねくり回す唱法は、今回のステージでは(曲にも依るが)、むしろ少なく私としては好感が持てた。

Butterflybluelist さて、今回のアルバムの話に戻るが、彼女のヴォーカルのバックは、2nd「青い影」以来相変わらずのピアノ・トリオ(Matt Treder(p), Mark "Mo" Scheider(b), Braian West(ds)=来日のステージもこのメンバー)。そして曲により、フォーン、ギターが加わる(William Seiji Marsh, David Larsen, Joe Frenen, Daniel Gallo)。
 収録曲は右のようなところ。内容の主たるは暦年のスタンダード曲であり、フランク・シナトラ、ナットキングコールなどに挑戦してくれている。今回はジャズ色の濃い編曲であり、一歩洗練されてきた印象にある。これは一つの進化とみたい。

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 以前も触れたことがあるが、彼女のファースト・アルバムは2nd以降とは全く異なって、どちらかというと”オルタナティブ・ミュージック”のパターンであり(参照 : 「Full Circle」(2006年) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/halie-lorenstfu.html)、彼女はピアノ・プレイもみせた。しかしそれがその後”Jazzy not Jazz”路線が売れたため、その線でここ数年は経過して来た。そしてここにきてジャズの本質に迫ろうというアプローチを見せてくれたのである。さあこれは私は歓迎だが、これまでのファンの評価がどうなるか?、それによっては、これからの彼女の歩む道を決めるアルバムと言うことにもなりそうだ。

(試聴)

 

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2013年7月 1日 (月)

ヘイリー・ロレンHalie Loren のニュー・アルバム : 「Simply Love」

「愛」をテーマにヴォーカル・アルバムをリリース

    <JAZZ> HALIE LOREN 「Simply Love」
                     Victor Entertainmnt    VICJ-61686  ,  2013

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 前作「Heart First(参照 ①)から約1年半、まさに順調にニュー・アルバムの登場だ。実は前作がもうちょっとジャズよりへのアルバムを期待していたが、少々ポップよりで残念だった。さてさて今回はどうか?とそんなことを考えながら聴いたのであった。(ヘイリー・ロレンは何回か取り上げているので紹介は省略)

 とにかくこのところは彼女はあらゆるジャンルのヒットした曲を取り上げて、ヴォーカリストとしてのアルバム作りをしている。従ってその出来不出来も比較の対象があるためはっきりしてくるのだが、もともとはこうゆうスタイルの歌手としてデビューしたのではなく、シンガー・ソングライターとして主としてピアノを弾きながらの彼女の作品を売り物にするパターンだった(1st「Full Circle」参照②))。あの2ndアルバム「青い影」参照③)のヒット以来、レコード会社や取り巻きの方針でどうしても売れ筋を考えてのアルバム作りと言うところなんでしょうね。あの時のピアノでバックを支えてきた Matt Treder が今回もプロデュースしていて、つまるところあの延長線上のアルバムということになろう。Credits は、前作と全く同じ。そして多分このアルバムは日本先行発売のようだ。それだけ目下は日本において彼女は定着してきているところなのだ。

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TRACKLISTは左の14曲(12は日本盤ボーナス・トラック)。今回も彼女の売りとイメージを更に押しし進めての「愛」がテーマというところ。中身はジャズ・スタンダードの他、ノラ・ジョーンズの” 7. I've got to see you again ”を筆頭にカヴァー・ソングが多く収まっている。

 オープニングはストリングスの調べから始まり、おやおや優しく美しくというパターン。ピアノもポピュラー・ソング調に美しくというところで面白みはちょっと少ない。今回のアルバムもこのパターンかなぁ~~?と思いきや、続く2曲目は、誰もが知っている”L-O-V-E”だが、ありきたりではやっぱり面白くないと言うことだろうか、結構ジャズ演奏と彼女のヴォーカルもロレン節が出てきた。
 ”4. On the Sunny Side of the Street 明るい表通りで”のような曲もあまりにもポピュラーであるため、結構ギター演奏などもちょっと工夫が感じられ、彼女もジャズ方向に編曲されて唄う。
 ”5. I feel the Earth Move空が落ちてくる”、”6. My Funny Valentine”も、オルタナティブ・ジャズ調でなかなか面白い味のある出來で、このアルバムでの聴きどころ。この調子で行って欲しい。
 11曲目のタートルズの”Happy Together”をはじめ、後半も結構なことにジャズ因子がやや強めになってきている。

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 彼女の歌唱法はもうこのパターンに固まってきたと言っていいだろう。つまりウィスパー調で、時に息を漏らし、そして高音部は声がひっくり返ってややしつこさを感ずる。それでもこのパターンがうけるというところもあるようで、まあそのあたりはひと好き部好きでいいのでしょうね。

 取り敢えず、言うなれば近頃の”Jazzy not Jazz”に近いパターンであるが、このタイプが売れ筋のようで、そんな意味ではこのアルバムもそれなりのセールスを上げそうだ。それでも今回のアルバムは、ジャズ因子が以前より濃くなってきて味が出てきている。これは私は結構なことと歓迎するところである。変なもので、これでちょっとほっとしている私なのである。こうなると次作も期待が持てるというところ。

 Credits
   Halie Loren : Vocals
   Matt Treder : Piano
   Mark Schneider : Bass
   Brian West : Drums
   William Seiji Marsh : Guitar
   

(参照) ①「Heart First」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/halie-loren-hea.html
            ②「Full Circle」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/halie-lorenstfu.html
           ③「青い影」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/halie-loren-a9e.html

(試聴) 「Cry me a river」 http://www.youtube.com/watch?v=5ccKrMpGK1Y  (まだ”YouTube”にニュー・アルバムが登場していないので、ライブの私の好きな曲を付けておく。後ほど追加紹介したい)

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2011年12月22日 (木)

ヘイリー・ロレン Halie Loren (4) : ニュー・アルバム「ハート・ファースト Heart first」

Hlorenheart_first_5

 ここで、ヘイリー・ロレンについて書くのも4回目になってしまった。今回も一年の間隔でのニュー・アルバムの登場でさっそく聴いてみての感想だ。

「Halie Loren / Heart First ハート・ファースト 」Victor VICJ-61660  ,  2011

 前作(3rdアルバム「After Dark」)の野暮ったいジャケに比べると、今回は良くなっていますね・・・・と、ジャケ話から入るのもちょっと何ですが、彼女の日本デビュー・アルバムである2nd「青い影」から期待した3rdがいまいちであったことから、期待は50%の気分でこのニュー・アルバムに臨んだ事の結果である。

 さて、その結論からゆくと、またまた”中途半端なアルバムになっていた”というところだ。もともと彼女の1stアルバムを聴いてみると、彼女自身の曲で詰め込まれたかなり独創性のあるオルタナティブ・ミュージックととれて、なかなかジャズ畑と違った興味もたれるシンガーソングライターと思われた。
 しかし、日本デビューの2nd「青い影」はむしろジャズよりのアルバムに変身して、そのジャズ・ヴォーカリストとしての魅力が大きく開花したと聴き取れ、更にそのジャズよりの線で進化していくのかと思いきや3rd「After Dark」は、どっちとも言えない中途半端な線で収まってしまった。
 そこで、今回は・・・・と、まずそうした興味からアプローチしてしまった訳であるが、前作の線からどうも変わってはいない。ということは、どうもこのパターンが彼女の売りのポイントであるようだ。

Heartfirstlist  さてこのCDの収録曲は左の通りである。実はスタート曲の”taking a chance on love”を聴いたときには、おお、今度はなかなかJazzyにゆけそうなアルバムだと期待を持った。しかしそれに続く2,3曲ではなんとなくやはりシャンソンっぽくなってくるが、それはそれなりきに悪くはないのだが、私の期待とはちょっと方向が異なってくる。それでも”C'est Si Bon”なんかは、ヘイリー節と言っていいのだろう。
 ”Sway”が登場してびっくりするが、やっぱりこれはローズマリー・クルーニーに圧倒された私にとっては、ちよっと味気ない。
 6曲目の”heart first”は彼女とラリー・ウェイン・クラークの共作曲でこのアルバムのアルバム・タイトル曲だけあってちょっとした世界を聴かせてくれる。
 そしてそれに続く”my one and only love”は、このアルバムでも出色の出来だ。バックのピアノも生きている。このパターンで彼女は押していって欲しいと私は思う。その後の”feeling good”も彼女のヴォーカルのみでスタートしてムーディーな結構な出来。このアルバムの中盤に来てこの2曲で盛り上がる。
Halieloren3b  ポヒュラーな”fly me to the moon”は、まあ並と言ったところでしょう。
 ”lotta love”もこれといった味には欠けるし、ジャズ・アレンジとしても中途半端。
 ”in time”は彼女のピアノが聴ける唯一の曲。彼女の曲でもあるが、やはりこれを聴くとジャズの世界とは異なっている。しかし美しさは感じられる良い曲でもある。
 ”smile”これも歴史的ヒット・ナンバーだが、スローにじっくりとした味で彼女なりきの唄に仕上げようとしている努力は解る曲。

 このアルバムには、最初に書いたように本格的ジャズ世界を期待してはいけないのかも知れない。特に2曲のボーナス曲のうちの”ellie, my love”は余分であるし、私の偏見からはどうも中途半端。しかしこれが近年の流行のJazzy not Jazzというパターンと言えばそうなのかも知れない。そんなつもりで最初から聴けば良いのかも知れない。

 まあ、「青い影」以来の彼女は期待株であるのは事実である。ただ、高音部で声がひっくり返るところは、魅力と感ずる人には魅力であろうし、ちょっとねちっこくて耳障りと言えば又そのようにも聴ける。ここのあたりは聴く人の好みであろうと思っている。

(参照)
① 2010.10.28 ヘイリー・ロレン ニユー・アルバム「After dark」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/halie-loren-3-a.html
② 2010.9.3    ヘイリー・ロレン 1st「Full Circle」 
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/halie-lorenstfu.html
③ 2010.5.25  期待のヘイリー・ロレン  http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/halie-loren-a9e.html 

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2010年10月28日 (木)

ヘイリー・ロレン Halie Loren (3) : ニュー・アルバム「After dark」登場

日本盤第2弾は、てんこ盛りの17曲

 今春日本アルバム・デビューで、少なからずの評判を勝ち取ったシンガー・ソングライターのヘイリー・ロレン、来日公演を控えてのニュー・アルバムが登場した。
 このブログでも2回に渉って検証してきたが、彼女のJazzyな世界の源にも若干踏み込むことが出来た。もともとジャンルを問わないスタイルが実は彼女そのものなのだ。
 さて、今回の日本盤2作目は?と、ここでアプローチしてみよう。

Afterdark 「Halie Loren / After dark アフター・ダーク」 Victor VICJ-61641 , 2010

 基本的には14曲のアルバムにボーナス・トラック1曲プラス日本ボーナス・トラック2曲の計17曲の収録サービスだ。
 前回彼女の1stアルバム「Full Circle」に触れたわけであるが、それは当に彼女のオリジナル曲でのオルタナティブ・ミュージックという世界だったわけだ。
 しかし日本盤デビュー「青い影」は、どちらかと言えばジャズ畑で取り扱われるタイプのヒット・パレード的曲群のアルバムだった。これが意外に評判が良く、日本に於いても注目株となった。又、彼女自身の美貌もその一役を担っているのかも知れないが・・・・。

 さて、このアルバムであるが、やはり基本的にはJazzyな世界を目指したものではあるが、4曲のオリジナル・ナンバーに加えてシャンソン(”バラ色の人生”も登場)が出てきたり、1stアルバム調のカントリー風あり、そしてサラ・ブライトマンのナンバー1ヒットの”Time to say goodbye”まで登場するというあれやこれやのてんこ盛り(ただし、サラの二番煎じでなく、ギターのバックで新解釈歌唱といっていい)。残念ながらアルバムとしての統一感はない。つまりジャズ系の後退作でありポピュラー・ミュージックといっていいのかも。

Afterdarkband バンド・メンバーは、前作と同じである(左)。( Piano: Matt Treder,  Bass: Mark Schneider,  Drums: Brian West )
 彼女のピアノ弾き語りはなく、ヴォーカルに徹しているようだ。それはそれで良いのだが、私にとっては残念なのは、このジャンルの中途半端な世界は少々残念であった。もともとの彼女のオリジナルなオルタナティブの世界は興味あるところであるが、ジャズ系でゆくのであるなら、もう少しその線をしっかり追って欲しかった。
 彼女の歌声は相変わらずで、高音部への裏声に変化するところは特徴的。そしてこのアルバムの作風は彼女の唄が前面で、全てバンド演奏は一歩退いてのサポート役である。まあ、演奏の綾には面白みはあまりない。

 注目曲としては、オープニング曲のアルバム・タイトルとなっているオリジナル曲”After dark”、これはクラシックなムードある心打つ曲だ。私が好むものとしては、7曲目の”Ode to Bille Joe”がドラムスとベースのリズムに乗ってなかなか粋に歌う。その他なんと日本盤のボーナス・トラックの”I fall in love too easily”, ”My foolish heart” の2曲がジャズ演奏されたものでいい。つまり雑多の中でも、ジャズ流に演奏され歌ったものがこのアルバムでは光っていた。やはりその世界に主力を於くともっと私にとってはこのアルバムは価値が上がったのかも知れない。

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2010年9月 3日 (金)

ヘイリー・ロレン Halie Loren(2) 1st「Full Circle」の意外性

まさにオルタナティブ・ミュージック(alternative Music )の世界

Borders1_feb_08  今年、日本デビューのヘイリー・ロレンだが、アラスカ出身、サラ・マクラクランやダイアナ・クラールなどに憧れ、ピアノを演ずるシンガー・ソングライターとして、今年の5月25日にこの私のブログで取り上げた。
その時の話題は、初の日本盤リリースの3rdアルバム「They Oughta Write a Song...青い影」を中心に展開したわけだが・・・・このアルバムは、17曲が納められていて、どちらかというと彼女のオリジナル5曲に加えてジャズ畑のスタンダード・ナンバーを多く取り上げている。そしていわゆるジャズの演奏とヴォーカルを聴かせてくれたわけだ。しかし一方更にこのアルバムの収録曲をみると、日本盤アルバム・タイトルとなった曲”青い影”は昔私の好みだったロックのプロコムハルムの曲であるし、”終わりなき旅”はやはりロックのU2の曲である。このような曲を取り上げるところから彼女自身の世界はどんなものなのか?、いわゆる彼女のアルバム「青い影」は明らかにジャズ・アルバムといっていいものであるが・・・しかしその原点は?と、少々興味があって彼女のインディーの1stアルバムを外国から取り寄せてみた。

Fullcircle_2 Halie Loren 「 Full Circle」
White Moon Productions , 2006

 これが2006年の彼女の1stアルバムである。これはジョニ・ミッチェルの”River”一曲を除くと全て彼女のオリジナル曲で埋め尽くされている。そして意外や意外、全くのジャズ・アルバムとは異なる。ある意味では私の予想というか疑問に関しても納得の回答でもあった。
 曲によっては、ギター、ドラムス、チェロ、サックスなども登場するが、彼女のヴォーカルとピアノが主たるものである。まさしく彼女自身のアルバムなのだ。

 (メンバー)
    Halie Loren : Vocals, Piano, Synthesizer etc
    James M.House : Guitar, Bass, Percussion
    Chris Ward : Guitar, Bass
    Brian West Drums, Percussion
    Dale Bradley : Cello
    Paul Biondi : Saxophones

                      
 そしてその曲はどんなものかと言うと、ジャズ系世界でも話題になったとは言うが、私が聴いてみるに、これは当にオルタナティブ・ミュージックという分野と感じ取った。
 なるほど、彼女のお気に入りのミュージシャンはロックからジャズその他広い分野に及んでいるようで、その結果の彼女のオリジナル作品集は、やはり、かなり独創的で多彩である。究極は、ジャズというよりはロックに近いオルタナティブな世界である。
 そして、日本デビューアルバムの「青い影」は、むしろ彼女の世界に通ずる一般的受けを狙ったアルバムで、最近の流行のJazzyのタイプに仕上げてあるが、彼女の本質はこの1stアルバム「Full Circle」の、やや前衛性の加味された創造性に満ちたオルタナティブな曲なのだと思う。
 彼女の発声はこの1stにおいても、高音部への変化において裏声に変わるところが特徴的で、その点は変わっていない。

 さて、そんな原点探索が出来たことにより、この次のアルバムに興味は移る。つまりこの1stのタイプに帰って行くのか?、それとも「青い影」を延長してジャズもしくはジャズィな路線で行くのか?予測は難しいが、「青い影」の好評からこのジャズ路線ということになるかも知れない。しかしどうもこの1st「Full Circle」のほうに私はシンガー・ソングライターの芸術性において軍配を挙げてしまうのである。

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2010年5月25日 (火)

日本デビューした期待のヘイリー・ロレンHalie Loren

それなりに個性ある女性ヴォーカリストのヒット・パレード的アルバム登場

Halieloren  JAZZYな女性ヴォーカリストが又日本盤でお目見えした。アラスカ生まれのヘイリー・ロレン Halie Loren だ。2009年”Just Plain Folks Music Awards 2009”にてベスト・ヴォーカル・ジャズ・アルバムに選ばれて、日本でも3枚のアルバムが輸入盤で売られていた。その3rdアルバム(2008年)の日本盤がVictorからつい最近発売されたのだ。

 そもそもは、自己のオリジナル曲のアルバムをインディ・レーベルから「Full Circle」というタイトルで21歳で2006年にデビューしている。オレゴン大学進学し音楽を学んで、米国地方都市に住んでいるという現在24歳という若さであるが、なかなか聴かせるヴォーカルで、今後の美貌のシンガー・ソングライターとして期待の星といったところか。


Photo 「Halie Loren / They Oughta White a Song... 青い影」 Victor VICJ61618 , 2009

 2008年の3rdアルバム13曲に、今年リリースされたライブ・アルバム「Stages」から4曲がボーナス・トラックとして加えられ17曲収められたアルバムだ。

(MUSICIANS)
  Halie Loren : Vocals
  Matt Treder : Piano
  Mark Schneider : Bass
  Brian West : drums
  Tim McLaughlan : Trumpet

 全17曲の中には、彼女自身のオリジナル曲5曲あるが、その他はまさにヒット・パレードといっていい有名曲。”枯葉”、”サマー・タイム”など、過去の有名ヴォーカルにとらわれず、自分の曲としてしっとりと歌い上げているところは見事である。”God Bless The Child”は、ブルース調を唄い込み、トランペットの音も聴きどころ。このようにジャズ・スタンダード曲もあるが、ロックからもあの英国プログレと言われたプロコル・ハルムの”青い影”とか、U2の”終わりなき旅”などが歌われる他、ジャズ畑でよく歌われる”Fever” なども登場する。
 ロレンのオリジナル曲の”How should i know”は、これもしっとりとしていて彼女の方向性が見えてくる。

 彼女の歌唱法は基本的にはブルージーに歌い聴かせるところであろう。声の質とか歌唱法はサラ・マクラクランに非常によく似ている。特に高音部での若干裏声に変化するところはそっくりだ。サラ・マクラクランはフォークそしてロック的ニュアンスが当初強かったが、このロレンはジャズ調に傾いた仕上げである。それも14.5歳頃にダイアナ・クラールに夢中になったようであり、そのことは伺えるところだ。又、ピアノを担当しているマット・トレダーの影響がそうさせているのかも知れないとのこと。
 いずれにしても、トータルに疲れない曲造りとヴォーカルで、聴く方もリラックスして聴けるアルバムである。
 ジャズ調の女性ヴォーカルの多い昨今であるが、その中でも今後の発展が期待できると思う一人である。
 
 

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