ハービー・ハンコック

2010年9月 9日 (木)

ハービー・ハンコック Herbie Hancock (3) : やはりアルバム「River」は凄い

Herbie_hancock4d051_2   ジョニ・ミッチェルに敬意の作品

 多くのミュージシャンをフューチャリングして、そして一つの世界を構築する最近のハービー・ハンコック。前回は最新作アルバム「Imagine Project 」をレビューしてみたんですが、私にとっては、前作(2007年)のジョニ・ミッチェルをトリビュートしたアルバム「River」が忘れられず、つい比較してしまうのである。つまり両者全く思想の異なるアルバムであると思うし、比較の仕方がこれ又難題である。しかし好みはどっちか?と言われると個人的であって答えは出しやすい。そんな意味でここで取り上げると言うことは、こっちが好みなんです。

River 「Herbie Hancock / RIVER the joni letters」 VERVE B0009791-02 , 2007

 昔私がハンコック・ファンに遂になってしまったアルバム「Secrets」 (1976)、そしてその後のVSOPなどの活動を思い起こすと、ちょっと考えられない作品がこのアルバムだ。
 そして、あのカナダ出身の芸術家と言ったほうがいい泣く子も黙る女性ミュージシャン(シンガー・ソングライター)であるジョニ・ミッチェルJoni Mtchell とハンコックはどうゆう関係にあるのかは知らないが、しばらく音楽活動が途絶えていた彼女の再起を歓迎してのトリビュート・アルバムなのだ。
 彼の多くのアルバムは全て所持しているわけではなく、ただしグラミー賞最優秀アルバム賞ということになると買わざるを得なかったこの作品。ほんとに手に入れて良かったと思うのである。ここで改めてレビューする。

  1. Court and Spark : featuring Norah Jones
  2. Edith and the Kingpin : featuring Tina Turner
  3. Both Side Now (instrumental)
  4. River : featuring Corinne Bailey Rae
  5. Sweet Bird (instrumental)
  6. Tea Leaf Prophecy : featuring Joni Mitchell
  7. Solitude (instrumental)
  8. Amelia : featuring Luciana Suza
  9. Nefertiti (instrumental)
10. The Jungle Line : featuring Leonard Cohen

  7 (Duke Ellington)、9 (Wayne Shoter) の2曲以外の8曲はジョニ・ミッチェルの作品だ。そして招かれた女性ヴォーカルがジョニ・ミッチェル本人の他4人の錚々(そうそう)たるメンバーである。

 (バンド・メンバー)
    Herbie Hancock : Piano
    Wayne Shorter : Sop. and Tenor Saxophone
    Dave Holland : Bass
    Vinnie Colaiuta : Drums
    Lionel Loueke : Guitar

 とにかくハンコックのピアノ・サウンドがクリアで心地よく説得力のある響きがあり、ウェン・ショーターのサックスがムードを盛り上げるそんなアコースティック・ジャズ・アルバムである。
 スタートは、ハンコックの静かなピアノにより始まり、いかにもトリビュートといった感が満ちている。ヴォーカルはノラ・ジョーンズが先陣をきって登場。そして続いて2曲目には昔CCRの”プラウド・メアリー”を歌ってヒットし、1980年代にはグラミー賞を獲得したロックのティナ・ターナーが懐かしの声で迫る。女性ヴォーカルは続いて4曲目に英国のこれはどちらかというとソウフルなスタイルで話題の若いところのコリーヌ・ベイリー・レイ。5曲目はジニ・ミッチェルが歌う。そして8曲目にはブラジルの優雅な歌姫のルシアーナ・ソウザ、彼女とショーターのサックスとの競っての歌い上げが印象深い。このようにハンコックの招集能力は凄い。そして最後の曲はがらっと変えて、レオーナード・コーエン(このブログ2010.3.22に紹介しているので参照)の年季の入った男の語りに近いヴォーカルが登場してこのアルバムを締める。
Wayneshorter  こうした多彩な女性ヴォーカルを中心に、詩情豊かに仕上げたジャズ・アルバムということであるが、実は私は3、5、7、9曲目のインストゥルメンタルの4曲の演奏に注目している。ハンコックとショーターの一つの境地でもあるのかと思うのだが、この達観した人生観といった演奏に感じられる。静かな中の人間の精神性を描いているように思えてならない。私の好きなアルバムなのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年9月 7日 (火)

ハービー・ハンコック Herbie Hancock (2):70歳の挑戦か?「IMAGINE PROJECT」

世界各地でのミュージシャンとの共演は「平和と地球規模の責任」と

Herbie1  今年の4月で70歳を迎えたハービー・ハンコックがニュー・アルバムをリリース。彼の記念アルバムのようだが、その規模は大きい。
Imagineproject 「Herbie Hancock / The IMAGINE PROJECT」 Hancock Records HR 0001 , 2010

 このところ数年、彼は自ら前面に出るというのでなく、多くのミュージシャンとの交流を楽しんでいるかのごとくの様子が窺えたが、このアルバムはそんな世界観からか?と・・・聴いてみると、いやいやなかなか彼のピアノ・プレイが十分に押し出されているいる。
 もともと、彼の歴史の中で(私のこのブログ2010.2.14「ハービー・ハンコックの衝撃」参照)、彼の音楽活動の多面性には驚かされるところであったが、それは彼の挑戦の歴史でもあると思ってきた。そして現在もその延長線にあると言ってもいいのかも知れない。
 前作「River the joni letters」はグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞して、そこに出た言葉には”現在になってようやく音楽の分野においても世界的規模に平等感が生まれたと感じた”と言っている。彼の音楽活動の人生でも、マイルス・デイビスなどの過去における評価に不満もあるのだと思う。

 それはさておき、このアルバム”イマジン・プロジェクト”と題されて、世界各地でレコーディングするという離れ業に加えて、参加ミュージシャンの多様性に圧倒される。収録10曲で以下の通りである。

   1. IMAGINE  featuring : P!nk, Seal, India.Arie, Jeff Beck
   2. DON'T GIVE UP featuring : P!nk, John Legend
   3. TEMPO DE AMOR  featuring : Ce'u
   4. SPACE CAPTAIN  featuring : SusanTedeschi, Derek Trucks
   5. THE TIMES, THEY ARE A'CHANGIN'  featuring : The Chiftains, Lisa Hannigan
   6. LA TIERRA  featuring Juanes
   7. TAMATANT TILAY/EXODUS  featuring : Tinariwen, K'naan, Los Lobos
   8. TOMORROW NEVER KNOWS  featuring : Dave Matthews
   9. A CHANGES IS GONNA COME  featuring James Morrison
  10. THE SONG GOES ON  featuring : Chaka Khan, Wayne Shorter, K.S.Chithra

Herbie_hancock_2  ジョン・レノン、ピーター・カブリエル、ボブ・ディラン、サム・クック などなどの曲が取り上げられ、バーデン・パウエルの曲も登場する。アメリカ、英国、フランス、ブラジル、インドなどで録音している。曲の展開のカラーはアフリカ色が強い。単にジャズという世界とは異なって、やはり民族音楽的ニュアンスをハンコックの実にクリアなピアノ・サウンドが支え、とにかく一曲一曲の完成度が高い。それなりのミュージシャンが揃うとやはり中身が濃い。よくもまあこれだけの企画を成功させたものと、ハンコックの実力には敬服する。近年彼の得意な一つのパターンとして、多彩なミュージシャンを生かして彼のアコースティック・ピアノの響きを展開するこの手法も板についている感じがする。サンタナも彼の場合はギター・サウンドで同様な世界を構築しているところが面白い。この両者、東洋思想に傾倒したところも似ている。

 一曲目には、ジェフ・ベックがフューチャリングされているが、彼のギターをじっくり聴こうと期待しない方がいい、わずかにそれらしく聴こえる程度。イマジン・プロジェクトとは言えども、ボブ・ディランの曲”The times,They are A'Changin'”の意味も大きそうで、The Chieftains そしてLisa Hanniganが頑張って Larry Klein がBass を担当している。
 Bass といえば、この企画ではあの Tal Wilkenfeld 嬢が何曲かに参加して、サム・クックの”A Change is Gonna come” ではその実力を発揮している。 この企画の流れのハービー・ハンコック70歳記念ライブでは、彼女がBassで参加しているがヴォーカルも女性としてはクリスティーナ・トレインと共に披露している。
 
 聞き応えは十分なアルバムである。ただし前作の「River」のような詩情豊かな作品(実は私はあのタイプのほうが好みであるが)とは異なるので、別の楽しみ方をして欲しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月14日 (日)

LP-playerの復活(6) ハービー・ハンコック Herbie Hancock の衝撃

ブルー・ノート時代から驚きのファンキー・ミュージックへの着手

Secrets  懐かしのLP盤回顧シリーズで、このハービー・ハンコック Herbie Hancock に到達した。’70代ってほんとに面白かったんだなぁ~と改めて思う。

 「SECRETS / HERBIE HANCOCK」 CBS SONY 25AP-244   1976 (左)

 このアルバムは彼の1973年の衝撃新展開ジャズ・ファンクの「Head Hunters」以来3年経てリリースされたもの。この間なんと年2枚ペースで新アルバムをリリースしてきた。
 ’70年代はジャズ分野よりはロック分野に主たる興味のあった私であるが、当時は16ビートのファンキー・ミジックが世間の関心をよんで、ロック界でもかなりの影響を受けた。
 しかし、マイルス・デイヴィス・クインテットの一員としての活動や「処女航海 Maiden Voyage」などのストレート・アヘッド・ジャズ、スタンダード・ジャズのイメージのハービー・ハンコックが、あの1973年のアルバム「ヘッドハンターズ Head Hunters」以来、ファンキー・ミュージックを取り入れ、エレクトリック・ピアノを使い、その他電子楽器を駆使して挑戦してきたのだった。
 (personnel)
    Herbie Hancock (P, el.P, Syn )
    Benny Maupin (ss, ts )
    Wah Wah Aatson (g, syn )
    Ray Parker (g )
    James Levi (ds )
    Paul Jackson (b )
    Kenneth Nash (perc )
 このアルバムで、特に私が引きつけられたのは、B面トップの”Spider” という曲、聴きようによっては、ジャズというよりロックのファンキー化とも言っていい曲で、ギターからスタートするが、強烈に全楽器が何度と響き渡りそしてギターとベースがリズムを刻み、キーボードも並行してリズミカルに曲を進める。私はこれで完全にハービーの虜となってしまったのだ。更にこのアルバム全体に於いてもワーワー・ワトソンのギター(カッティング奏法がお見事)の意味が重要な役割が果たされているところも、私が魅力を感じた一つと言っておきたい。
 もともとプログレシブ・ロックのピンク・フロイドを愛する私が、彼らで言えば「炎」から「アニマルズ」に変身していく時であり、他方こうしたハービーの分野にも惹かれたのは、一つのところに止まらない時代背景の中での私自身の多様な変化もあっての事であったのかも知れない。
 いずれ又この後には、ハービーも一方にはこの年にあの有名な”VSOPクインテット”の時代に原点回帰して行くのであるが、この時代は今回顧してみると驚くべき変動の時代でもあった。

Speaklikeachild  ハービー・ハンコックで私が彼の世界に興味を持ったのは、実はこうしたフュージョン化していった以前のブルー・ノート時代の1968年のアルバム「Speak Like a Child」 BLUE NOTE LNJ-80124  1968 (左)だった。
 もともと、バド・パウエル、ビル・エヴァンスなどのオーソドックスという表現は変であるが、アコースティックなジャズの流れの中で、ハービーは展開していたと言っていいと思う。そうした中でのこの作品に関しては、上のアルバム「SEDRETS」とは私は全く別の感覚で接してきていたのである。
 このアルバムでは、ホーンセクションが支える中を、ハービーのピアノが美しく語ってくれます。ここには彼のピアノが非常に繊細に変化しながら曲を構築していく姿が浮き彫りになっていて、私の好きな昔の思い出のアルバムなのだ。

 しかし、ハービー・ハンコックはこうした二面性を持って進化してきた訳で、LP時代の遺産を顧みているとそのことが良く解る。それと同時に、私自身の若き時代の多面性にも思いが馳せて懐かしいのである。
Headhunters_3 Thrust Vsop   
 

当時のアルバム「Head Hunters」CBS SONY SOPL-238 1973,  「Thrust」CBS SONY SOPN-96 1974, 「VSOP:Live Under the Sky」CBS SONY 40AP1037-8 1979 などのLP盤も健在で、それらをとっかえひっかえして聴いていると、ハービー・ハンコックの挑戦の姿が見えて来るのだった。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

その他のカテゴリー

Audio CLASSIC Progressive ROCK アイオナ アガ・ザリヤン アデル アヤ アレクシス・コール アレッサンドロ・ガラティ アンジェイ・ワイダ アンナ・マリア・ヨペク アヴィシャイ・コーエン アーロン・パークス イエス イタリアン・プログレッシブ・ロック イメルダ・メイ イモージェン・ヒープ イリアーヌ・イリアス イーデン・アトウッド ウィズイン・テンプテーション ウォルター・ラング エスビョルン・スヴェンソン エスペン・バルグ エミリー・クレア・バーロウ エミール・ブランドックヴィスト エンリコ・ピエラヌンツィ エヴァ・キャシディ カレン・ソウサ ガブレリア・アンダース キャメル キャロル・ウェルスマン キング・クリムゾン キース・ジャレット クィダム クレア・マーティン ケイテイ・メルア ケイト・リード ケティル・ビヨルンスタ コニー・フランシス コリン・バロン ゴンザロ・ルバルカバ サスキア・ブルーイン サラ・ブライトマン サラ・マクラクラン サラ・マッケンジー サンタナ サン・ビービー・トリオ ザーズ シェリル・ベンティーン シゼル・ストーム シネイド・オコナー ショスタコーヴィチ シーネ・エイ ジェフ・ベック ジャック・ルーシェ ジョバンニ・グイディ ジョバンニ・ミラバッシ ジョルジュ・パッチンスキー スザンヌ・アビュール スティーヴン・ウィルソン スティーヴ・ドブロゴス ステイシー・ケント ステファン・オリヴァ スノーウィ・ホワイト スーザン・トボックマン セリア セルジオ・メンデス ターヤ・トゥルネン ダイアナ・クラール ダイアナ・パントン ダイアン・ハブカ チャーリー・ヘイデン ティエリー・ラング ティングヴァル・トリオ ディナ・ディローズ デニース・ドナテッリ デヴィット・ギルモア デヴィル・ドール トルド・グスタフセン ドリーム・シアター ナイトウィッシュ ニコレッタ・セーケ ニッキ・パロット ノーサウンド ハービー・ハンコック パスカル・ラボーレ パトリシア・バーバー ヒラリー・コール ビル・ギャロザース ピアノ・トリオ ピンク・フロイド フェイツ・ウォーニング フランチェスカ・タンドイ フレッド・ハーシュ ブッゲ・ヴェッセルトフト ブラッド・メルドー ヘイリー・ロレン ヘルゲ・リエン ペレス・プラード ホリー・コール ボボ・ステンソン ポーキュパイン・ツリー ポーランド・プログレッシブ・ロック ポール・コゾフ マティアス・アルゴットソン・トリオ マデリン・ペルー マリリオン マルチン・ボシレフスキ マーラー ミケーレ・ディ・トロ ミシェル・ビスチェリア メコン・デルタ メッテ・ジュール メラニー・デ・ビアシオ メロディ・ガルドー モニカ・ボーフォース ユーロピアン・ジャズ ヨアヒム・キューン ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ ヨーナ・トイヴァネン ラドカ・トネフ ラーシュ・ダニエルソン ラーシュ・ヤンソン リサ・ヒルトン リッチー・バイラーク リリ・ヘイデン リン・エリエイル リン・スタンリー リヴァーサイド リーヴズ・アイズ ルーマー レシェック・モジュジェル ロジャー・ウォーターズ ロバート・ラカトシュ ロベルト・オルサー ローズマリー・クルーニー 中西 繁 写真・カメラ 北欧ジャズ 問題書 回顧シリーズ(音楽編) 女性ヴォーカル 女性ヴォーカル(Senior) 女性ヴォーカル(ジャズ2) 女性ヴォーカル(ジャズ3) 寺島靖国 戦争映画の裏側の世界 手塚治虫 文化・芸術 映画・テレビ 時事問題 時代劇映画 波蘭(ポーランド)ジャズ 相原求一朗 私の愛する画家 私の映画史 索引(女性ジャズヴォーカル) 絵画 趣味 雑談 音楽 JAZZ POPULAR ROCK SONYα7