イタリアン・プログレッシブ・ロック

2016年10月18日 (火)

ノーサウンドnosoundのニュー・アルバム 「Scintilla」

Blu-ray 5.1surround 24bit/96kHz イメージ映像付きで登場!!

<Progressive Rock>

Nosound 「Scintilla」
CD+DVD   Kscope / Poland  / KSCOPE327 / 2016 

Scintilla_3

 イタリアのマルチ奏者Giancarlo Erra 率いるNosoundは、又もやここに素晴らしいアルバム(5th)をリリースしてくれた。
 これも70年代に円熟したプログレッシブ・ロックを基礎にしての現代の一つの流れなんだろうなぁ~~と思っている。曲の流れは全体にスローであり、静かにして何か心に響くやや陰鬱さが聴きどころであるが、非常にサウンドは美しい。こうゆう世界を聴くと、ロックというのは単なる若者のミュージックと言うだけで無く、音楽としての大きな貴重な分野を築き上げたと思うのである。

Memb
 おきまりのギター、ベース、キーボードそしてドラムスの構成に、このアルバムではチェロ、トランペット、フレンチホーン、トロンボーンと曲によって加わるが、基本的には彼らのNosoundサウンドは壊れていない。M5”Sogno E Incendio ”では泣きのギターも聴かれて、う~んやっぱりこれはロックの流れなんだと言うことが実感できる。
Original ちらっとステーヴン・ウィルソンを思い浮かべる英国的暗さもが感じられるところが、イタリアである彼らの味噌だろうなぁ~~。
 そして現在も健闘しているマリリオンMarillionが社会の陰影に迫ろうとするのと違って、彼らはイメージとしては、人間の深層心理に迫ろうとしているのではないかと思うのだ。ピンクロフロイドというかロジャー・ウォーターズの内省的なところに主眼を持って行った頃に若干通ずるところも感じられる。
  又このアルバムではAnathemaからVincent Cavanaghの協力を得て、M7”The Perfect Wife ”では非常にヴォーカルによる盛り上がりをみせるところもあり、M8”Love Is Forever ”美しいコーラスも聴かれ、彼らの世界が以前のアルバムよりは少し身近になってきたとも言える。
  しかし今日、このNosoundの世界を期待している輩は、知らないこともあって少ないのではないかと思うにつけ、広く聴いて欲しいと願うところである。

 ここに来てプログレのニュー・アルバムがいろいろと登場しているが、ユーロ系での廃れない流れに私なんかは大いに歓迎しているところである。

Songs / Tracklist

1. Short Story (2:24)
2. Last Lunch (7:00)
3. Little Man (4:38)
4. In Celebration Of Life (5:34)
5. Sogno E Incendio (4:44)
6. Emily (3:19)
7. The Perfect Wife (7:27)
8. Love Is Forever (2:51)
9. Evil Smile (4:33)
10. Scintilla (6:27)

Musicians

Giancarlo Erra / vocals, guitars, keyboards
Marco Berni / keyboards, vocals
Alessandro Luci / bass, upright bass, keyboards
Paolo Vigliarolo / acoustic & electric guitars
Giulio Caneponi / drums, percussion, vocals

guest musicians:
Marianne De Chastelaine / cello
Vincent Cavanagh / vocals (4,7)
Andrea Chimenti / vocals (5)

(視聴)

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2016年9月27日 (火)

イタリアン・ロックの軌跡(8) カテリーナ・カセッリ「PRIMAVERA組曲"春"」

まさに音の洪水の世界~夢と美しさと限りなく響く哀愁と・・・・

     <Progressive Rock,  Italian Love Rock>
  CATERINA CASELLI「PRIMAVERA 組曲「春」」
      CGD  / 69071 /  1974
      King Records (CRIME) / JPN / 292E 2029 / 1989

Pimavera1
 とにかくイタリアン・プログレ・ロック・ファンを唸らせた名作、このジャケを見てお解りの通り、サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)の名画『プリマヴェーラ (春)』(↓)から来てますね(ポッティチェッリと言えば、ルネッサンス期のイタリアの画家、我々の知るところはその他に『ヴィーナス(ウェヌス)の誕生』という有名な名画がある(参照:末尾))。
 なんと大それた事に、この名画の世界に挑戦したイタリアの若きポップス女性歌手カテリーナ・カセッリCATERINA CASELLIの渾身の作なのである。

Botticelliprimaveraw2         (Sandro Botticelli「プリマベーラ」)

 今でも私にとっては不思議なのは、このアルバムが"プログレ"なのか?と言うことなのだが、しかし日本の多くのイタリアン・プログレ・ロック・ファンは、このアルバムに虜になったのである。そして今でもその範疇で語り継がれているものであるから、つまり歴史的にはそうだということになるのだろう。
  しかし"イタリアン・ラヴ・ロック Italian Love Rock"という範疇として、つまり”限りなく哀愁を奏でる音楽”として捉えるのが正しいと思うのである。
 
 いずれにせよ、このアルバムは1960年代のイタリアの”ポップ・ファン”にとっては、当時期待外れという感覚で不評であっとも言われている。それはこの作品が、あまりにもポップファンの期待したそれまでのカテリーナの乗りのビートでなく、全く異なったところに展開したところにあった。つまりメロディーとイタリア独特の歌心を大切にしたオーケストラをバックに哀愁漂よいながら壮大に歌い上げる世界であった事だ。しかしそれは逆に一方の”プログレ・ファン”の心を捉えてしまったのであった。

『PRIMAVERA』 (邦題 『組曲「春」』)
1. Primavera (春・序曲)
2. Momenti Si, Momenti No (ひとときの夢)
3. Desiderare (憧れ)
4. Il Magazzino Dei Ricordi (思い出の店)
5. Una Grande Emozione (溜息)
6. Prima Non Sapevo (愛の遍歴)
7. Io Delusa (失したもの)
8. Piano Per Non Svegliarti (静かな眠り)
9. Buio In Paradiso (天国の秘密)
10. Noi Lontani, Noi Vicini (あなたを想って)
11. Primavera (春)

Arranged by Danilo Vaona (ダニーロ・ヴァオーナ)
Produced by Giancarlo Lucariello (ジャンカルロ・ルカリエッロ)

Hqdefault オープニングは透明感ある深遠な合唱からスタートし、全編ギターの美旋律と、大編成オーケストラ、メロトロン、合唱隊と音の限りを尽くした名盤。それにはアレンジのダニーロ・ヴァオーナの成せる技・功績が大きいのだと思う。スタートと締めの曲”Primavera春”は彼の作である。
 そしてヴォーカルはショート・カットで人気のカテリーナ・カセッリ(→)の個性に負うところが大きい。彼女のややハスキーな低音に幅があり、素直に伸びる繊細感のある高音が、イタリアの歌心と美感覚を盛り上げるのだ。

 丁度このオイル・ショック経済不況時代に、春の陽光のように営々とした光を投げくれてくれた事は想像に難くない。そしてまあこれは70年代ロック・ファンにはこれほどの慰みは無かったのだろう。
 とにかく”このアルバム1枚がある限り、ユーロ・ロック・ファンから彼女は消えることはないであろう”と言われるくらいの感動作。

Caterinacaselliカテーリナ・カセッリ (・・カゼッリ、・・カセルリ)
Caterina Caselli、1946年10月25日生まれ 、今年70歳)はイタリアの歌手、後に音楽プロデューサーとして活躍。1963年のカストロカーロ新人コンクールに入賞しデビュー。1966年にサンレモ音楽に初出場し、「Nessuno mi può giudicare 青春に生きる」を歌って入賞(パートナーはジーン・ピットニー)、魅力的なスタイルとファッション、そこにハスキーな声で一躍スターとなる。1967年には「Il cammino di ogni speranza 風に消えた恋」でサンレモ音楽祭に連続出場。1969年にCGDレコード副社長のピエロ・シュガーと結婚し、1975年には引退。その後はCGDのプロデューサーとしてアンドレア・ボチェッリ(テノール歌手、ヒット曲”コン・テ・パルティロ”、この英語版はサラ・ブライトマンとの”タイム・トウ・セイ・グッバイ”で世界的ヒット)らを世に出している。

サンドロ・ボッティチェッリ
(Sandro Botticelli, 1445年3月1日- 1510年5月17日)は、ルネサンス期のイタリアのフィレンツェ生まれの画家で、本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ (Alessandro di Mariano Filipepi) という。
 なんと言っても『プリマヴェーラ』と『ヴィーナス(ウェヌス)の誕生』(↓これは誰でも知っている絵ですね)の作者として日本でも当然有名である。異教的、官能的なテーマの絵画と言われ、フィレンツェ・ルネサンスの最盛期を飾る。

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(試聴) "天国の秘密" from 「Primavera」

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2016年9月23日 (金)

イタリアン・ロックの軌跡(7)ムゼオ・ローゼンバッハ「ツァラトゥストラ組曲」

イタリア・プログレの真骨頂~そこには人間復興への歌

<Progressive Rock>
    MUSEO ROSENBACH  「ZARATHUSTRA」
       BMG / BVCM-37425 / 1973
       KING /  JAPAN / K32Y 2117 /1982

Zarathustra
Stefano "Lupo" Galifi / vocals
Enzo Merogno / guitar, vocals
Pit Corradi / Mellotron, Hammond organ, vibraphone, Farfisa el. piano
Alberto Moreno / bass, piano
Giancarlo Golzi / drums, timpani, bells, vocals

 1970年代初めに一口にプログレッシブと呼ばれるロックであっても、それには多種多様なパターンがあった。特にイタリアでは、アレアのようなジャズ・ロックも当然一つの形であったが、やはりなんと言ってもイタリアの特徴はクラシック音楽の伝統をバックに壮大なオーケストレーションを加え、時に合唱をも取り込み、そしてドラマチックな手法や様式美を築き、しかもそこにカンツォーネの歌心が盛り込まれるという叙情性も加味されたヘビー・シンフォニックである。そしてその代表とも言えるのが、1アルバムで消えたこのムゼオ・ローゼンバッハMuseo Rosenbachである。

Museo1_2
 当時”ヘビー・シンフォニック・ロック”と言う言葉が生まれた対象ともなったこのアルバム、日本ではマニアに圧倒的人気があり、再発前は簡単に手に入らず数万円で取引されていたもの。それもキング・レコードから「EUROPIAN ROCK COLLECTION」としてリリースされファンは歓喜した。更にCDブームで1982年には、CDのリリースもあって、ようやく一般人に広げられた。なんとそれはイタリアでのリリースから10年後であった。私も彼らの音源はそれなりに持っていたが、このCD発売の恩恵に与った人間である。

Zarathustralist ニーチェの哲学叙事詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を元にしていると言うが、そのあたりは詳しくないので解らないが、反キリスト教的思想が貫かれていると言うことは間違いない。(イタリア、時の政権は右翼キリスト教民主党)
 ”パワフルなキーボード・オーケストレーションを駆使した、エネルギッシュかつ交響曲的高揚を持つヘヴィ・ロックの傑作”と表現されるが、まさにそのどうりの圧巻の一大叙情詩。
 当時プログレの代表楽器のキーボードであるオルガン、メロトロンが雄大に響き、それに止まらずギターのハード・ロックなプレイが絡んで重厚なる深遠なる世界を描いている。

 スタート”最初の男”はギターによる物語の始まりで、歌心あるヴォーカル、そしてキーボードの盛り上がりといったところ。
 ”昨日の王”は深遠な世界、ここでもカンツォーネの流れを感ずるヴォーカルが聴ける。
 ”善悪の彼方に”はハードにスタート、ヴォーカルも力が入る。ギターとオルガンのコンビネーションによるハードロック調のヘヴィなプレイ。
 ”超人”再び世界を歌い上げる。
 ”砂時計の宮殿”全楽器でハードでシンフォニックな世界を盛り上げる。そして壮大なテーマのメディーが再び流れる。
 
 組曲とは別の”女について”ではギターの泣き、ハードなオルガン、高らかに唄うヴォーカルと、イタリアものらしい曲である。”自然”はE.L.Pを思わせる。”永遠の回帰”は彼らの主張をハードに。

Rare とにかく当時は1アルバムのロック・グループとして重宝がられたわけだが、その後、まさにイタリアンなドラマティック・ポップで一世を風靡したバンドのマティア・バザールMatia Bzar(このバンドにも一度焦点を当てる予定)にも流れていった訳だが、当時プログレ・ファンにはこのアルバムが忘れがたく、その為1992年には当時のレア・トラックのアルバム「Rare & Unreleasd」(→)というアルバムを産むほどであった。

(社会背景からのロック)
 しかし、重要なことは、当時のイタリアの社会情勢である。当時のオイル・ショック(1973年10月)は日本と同様に資源の無いイタリアには大打撃で有り、社会危機と政権交代(キリスト教民主党)などはロック・コンサートの否定と走り、イタリア・ロック界は撃沈される。そんなところを予知しての彼らの高貴な支配者を期待したゾロアアスター教(ツァラトゥストラ)への永遠の回帰を期待する世界、人間復興が歌われているのである。そしてこのバンドは解散。
 こうした時代背景は常にロックの形を作り上げてきた重要因子であったことを知らねばならないだろう。これこそがロックの醍醐味なのだ。

 そして1アルバムで消えた彼らも2000年には(Stefano “Lupo” Galifi(vo)、Alberto Moreno(key)、Giancarlo Golzi(dr/per/vo)のオリジナル・メンバー三人を中心として)再結成となってアルバム「EXIT」のリリースをみたのである。

<MUSEO ROSENBACH ~Discography>
1973  Zarathustra
1992  Live72 ,  Rare and Unreleased
2000 Exit
2012 Zarathustra- Live In Studio
2013 Barbarica

(参考)
当シリーズ過去の「イタリアン・ロックの軌跡」に登場バンド
1.I Giganti
2.Il Volo
3.Lucio Battisti
4.Mario Panseri
5.Premiata Forneria Marconi (PFM)
6.Il Rovescio Della Medaglia (RDM)

(試聴)

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2016年9月19日 (月)

イタリアン・ロックの軌跡(6)ロヴェツィオ・デッラ・メダリア「CONTAMINAZIONE汚染された世界」

イタリアン・クラシック・シンフォニック・ロックの美と哀愁の世界

<Progressive Rock>
          IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA
    「CONTAMINAZIONE汚染された世界」

        BMG / BVCM-37503 / 1974
        BMG - EDISON / JPN / ERC-32010 / 1989

Cont
Engineer : Rodolfo Bianchi
Producer : Luis Enriques Bacalov
Techncian : Franco Finetti
Written By Vita,Enriquez,Sergepy,Bardotti 


   秋の夜長を迎えて、ふと懐かしき時代に想いを馳せるのである。
 やっぱりイタリアン・プログレッシブ・ロックの感動は今でも忘れられない。それは私のミュージックとの関わり合いにおいても大きな役割を果たしてきた。
 何年も前に「イタリアン・ロックの軌跡」シリーズを、ここに開始したが中途半端で中断してしまっていたので(PFM)、今年はそれをそれなりのところまで纏めてみたいと言う気持ちなのである(暇があったらの話で、どうなるやら)。

A76576313707564667893_jpeg そして復活第一号がこのロヴェツィオ・デッラ・メダリアIL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA だ(イタリア語で、”メダルの裏側”という意味)。そして最も最高傑作がこの彼らの3rdアルバム「CONTAMINAZIONE汚染された世界」
 このグループはRDMと呼ばれ、当初はサイケデリック・ヘビー&アート・ロック・グループとして親しまれた。メンバーは下記。

  • Pino Ballarini (voce, flauto)
    Enzo Vita (chitarra)
    Stefano Urso (basso)
    Franco Di Sabatino (tastiere) - dal 1973
    Gino Campoli (batteria)
  •  過去に1stアルバム「La Bibbia」(1971)、2ndアルバム「Io Come Io」(1972)があって、2ndアルバムからプログレッシブな感覚が盛り込まれている。
      そしてFranco Di Sabatino(キーボード)が1973年に加入して、当時のイタリア・プログレ・バンドの流行形は整った。そしてこの3rdが最後のアルバムであり、77年解散してしまった。
     (なおこのバンド、1993年ギターのVitaにより再結成、2013年来日)
  • Contlist_2 このアルバムは13曲構成だが(左)、あのバロック音楽のバッハの曲をモチーフとしている。それはバカロフLuis Enriques Bacalovによって企画されたものだ。このバカロフはイタリア・プログレを世界に知らしめた男で、オザンナにはアルバム「ミラノ・カリブロ9」ニュー・トロルスにはアルバム「コンチェルトグロッソ」にてオーケストラを導入して、クラシック・シンフォニック・ロックの形を作り上げ、我々のようなプログレ・ファンを痺れさせた男だ。

     とにかくヴォーカルの美しさは勿論だが、M1”消滅した世界”のスタートで、シンセの永遠なる響き、次第に表れるバッハの旋律、そしてロックの醍醐味へと流れて行く導入のうまさには感動だ。
     そしてダイナミックM3”静寂なる響き”を経てM4”目覚め・・そして再び夢の中”ではストリングス・オーケストラとオルガンの喩えられないほどの美しさが響き、イタリア独特の哀愁あるヴォーカル、壮大な盛り上がりはまさに当時のロック界に衝撃であった。

      M6”君に捧げる歌”、これはかってのLPではA面最後の曲だが、美しさと哀愁とをキーボードとカンツォオーネのヴォーカルの冴えたるもので描き、心に響く。

     しかし後半に入って驚くのは、ヘビー・ロックの味をしっかり盛り込んでのクラシック・シンフォニック・ロックを作り上げているところである。
      M9”独房503号室”、M10”汚れた1760年”におけるアコースティック・ギターの美しさとフルート、チェンバロ、オーケストラのアンサンブルの技、そしてパイプオルガンの響きの壮大さを加味して当にプログレッシブ。
     そしてM12”絢爛豪華な部屋”の内省的静寂の対比的登場はお見事。

     多分、こうした世界を全く知らずに、クラシック、ジャズ、ロック、ポップなど多岐に渡る現代ミュージックを楽しんでいる輩が殆どあろうと思う今、もし機会があったら一度これを聴けば驚きの世界だろうとここで紹介するのである。

     久しぶりにかってのイタリアン・プログレッシブ・ロックの並ぶ棚に目をやり、まず一番にこのRDMのアルバムに手を付け、この「秋の感傷」をスタートさせた私であった。

    (試聴)

    (視聴)  2013年ジャパン・ライブ

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    2013年5月17日 (金)

    貴重なり、プログレ派 NOSOUND の新譜 :  「afterthoughts」

    相変わらずの思索に導くプログレッシブ・ロック・サウンド

    <Progressive ROCK> NOSOUND 「Afterthoughts」
                                    kscopemusic  KSCOPE245,  2013

    Afterthoughts

     待望のニュー・アルバム。このバンドを扱っている”Kscopemusic”とはUKのレーベルで、プログレ派なら知っているあのAnekdotenをリリースしているんですね。ところでこのバンド nosound は昨年知ったところなのですが、ここにきて彼等の4thアルバムがリリースされた。
     なんと言っても、イタリアのバンドでありながら、かっての懐かしい英国風のプログレ・サウンドを展開する。それも懐かしのプログレ四天王のうちピンク・フロイド風で、その後のマリリオンの味も感じられ、更にスペース・ミュージックの醍醐味も感じられるという世界。
     はっきり言って今時そう売れるとは思わないのだが、世界には昔のプログレ愛好家の残党も沢山居るであろうというところから(わはっは、私もその一人)、それなりに彼等のwebsite を見ると、結構勢いを感ずるところが面白い。

    Afterthoughtslist_2  Track-List は、左のように9曲。このアルバム、なかなか立派なジャケとブックレットが付いていて、しかもサウンドに凝っているというところはプログレの特徴を繋いでいる。なんとCDとDVDの2枚組。そしてDVDには、High Resolution 24bit/96kHz mixe 始め DTSによる5.1surround を納めている。オーディオ・サウンド愛好派にもしっかり対応しているところがにくい。
     曲のパターンは、これまでのアルバムと大きな変化はない。リーダーでギタリストでありリード・ヴォーカルの Giancarlo Erra の世界そのもので、キーボードがスペーシーにバックに流れ、そこにギター・サウンドが乗ってゆく。比較的陰鬱感のないところで、精神的には安定的な世界に導いてくれる。
     
    (members)
      Giancarlo Erra : vocals, guitars, keyboards
       Paolo Vigliarolo : guitars
       Alessandro Luci : bass
       Marco Berni : Keyboards
       Chris Maitland : drums
       Marianne De Chastelaine : cello

     Afterthoughtstx

     左のようななかなか味のある私好みの写真が、アルバムのブックレットに多く配置されているが、それもErra自身の手によるもののようだ。ミュージック以外にも彼はアートを伴ってのトータルな感覚で、繊細にして思索的世界を構築していると言える。
     ヴォーカルが各曲に入るが、歌物と違って演奏の中に溶け込んでいる。非常に聴きやすいところであり、聴く者に思索に導くムードをもっているところが、このバンドの世界と言いたいところ。

     <Discography>

          1st  「Sol29」  2005
          2nd 「Lightdark」  2008
          3rd  「A Sense of Loss」   2009
          4th  「Afterthoughts」   2013
    (当アルバム)

    Nosoundband1jpg  いずれにしても、こうしたバンドが健闘してくれるところは、私は歓迎だ。nosoundは、バンドとしては2002年からのスタートのようで、既に10年以上は経過している。と言うことは、多分それなりにファンも固まってきていると思うのだが?。
     昨年末に、このバンドのことを書いたときにも多分記したと思うが、あと一つ、このバンドへの期待は、アルバムの完成度を上げるものとして、やっぱりスリリングな展開の曲を持つことではないだろうか?、そうして山と谷と水平線が築かれると名盤と言うことになりそうなのだが。

    (試聴) http://www.youtube.com/watch?v=VfaEpsfcxLk

    (参考) 「ろくろくロック夜話」http://professor-kei-diary.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-d590.html
         「灰とダイアモンドと月の裏側の世界」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/rock-bf59.html

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    2013年1月 4日 (金)

    イタリアン・ロックの軌跡(5) : P.F.M. 「幻想物語」、「友よ」

    イタリア・プログレの原点的バンド~P.F.M.

     昨年をちょっと振り返ってみたら、そうそうイタリアン・ロックの回顧を始めて中断したままになっていた。それならばと、最も原点的なイタリア・プログレッシブ・ロックを取り上げて再び時々この回顧を続けていこうと思った次第。
     1970年代に、その道で知る人ぞ知るイタリア・プログレ、これが’80年代後半になってCDの登場でにわかに再発ブームによって一大ブームを起こした。
     それにはなんといってもキングレコードの功績が大きい。地方にいた私はなかなか手に入らなかった為に、わざわざLP購入のために上京したものだが、それがCD再発によって地方でもある部分は購入できるようになった。その代表格が、キングの”EUROPEAN ROCK COLLECTION~CRiME シリーズ”だった。

    P.F.M.  「幻想物語 STORIA DI UN MINUTO」
    KING RECORDS   K32Y 2180  ,   1988  (Original  1971)

    1st_2

     P.F.M.(PREMIATA FORNERIA MARCONI)とくれば、これぞイタリア・プログレの代名詞。まずこの彼等の1stアルバム「Storia di un minuto」とは、日本版のタイトルは”幻想物語”になっているが、直訳すれば”1分の物語”だ。このタイトルからしてまさに我々に何かを示唆している。彼等はここに探求したロックという世界を超えた音楽の世界が見え隠れする。そして私が愕然としたのは英国プログレの原点キング・クリムゾンからそれに止まらない発展形とも思えるクラシックをベースにしたイタリア独特の歴史的音楽の世界が出没していたからだ。

     ユーロ・プログレと言うか、イタリア・プログレを語るなら、やっぱりこのP.F.M.を取り上げておかねば・・・と、新年早々の40年前の作品登場である。もともとこのグループの誕生も、あのイタリアの大御所ルチオ・バッティスティLucio Battisti(参照 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/lucio-battisti-.html、既に取り上げたのも、この人がイタリアものではキー・マンなんですね)の功績であった。彼の以前に取り上げたアルバム「AMORE E NON AMORE 8月7日午後」から2つの歴史的バンドが生まれのだ。一つはアルベルト・ラディウス率いるフォルムラ・トレ、そしてもう一方がこのP.F.M.であるからだ。
     P.F.M.(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)というバンド名も、なんと日本語訳すると”選ばれたマルコーニという名の菓子屋”という意味のようで、北イタリアにあるマルコーニという店のように、まさに選ばれた音楽を目指そうとしたようだ。
     もともとクラシックの技量を持った連中の集まりで、メンバーは
        Flavio Premoli : Key.
             Franz Di Cioccio : Drums
             Giorgio Pizza : Bass
             Franco Mussida : Guitars

       ・・・・の4人による”イ・クエッリ”というバンドに、Mauro Pagani (Violin) が加わっての5人によって、1970年にP.F.M.は結成デビューし、バッティスティの作ったレーベルのヌメロ・ウーノからこのアルバムを1971年リリースした。

    1stlist_2 収録曲は左のようで、なんといっても2曲目の”9月の情景 Impressioni Di Settembre”はシングル・カットされ、このアルバムと一緒にヒットした。日本ではそんな世界も知らずに、プログレと言えば、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエスの御三家が全ての入り口であった時代である。
     アルバムのイントロは極めて静かに叙情的でスタートして、バンドの全合奏、そして”9月の情景”の美しい曲に繋がり、そしてメロトロンによる盛り上がりに圧倒される。
     このアルバムに組み込まれたクラシック的曲の流れに、なんとジャズ的センスまで盛り込まれ、フルート、ヴァイオリンも・・・もうプログレの展開そのもの。リアル・タイムではないが、最初にこれを聴いたときは、恐るべしイタリアと思わせるに十分だった。
     イタリアという音楽の深さを知らされ、そしてこれは彼等のロックへの探求の序章であったのだ。

    P.F.M. 「友よ PER UN AMICO」
    KING RECORDS  K32Y2156 , 1988 (Original 1972)


    2nd

     1stアルバムの好評を得て早速リリースされた2ndアルバム。
     ここにはイタリアならではの美しいメロディー・ライン、そしてキング・クリムゾンのあのロックにおける冒険的探求の流れを私はこのバンドに後に感ずることになる。それはただ荒々しいのでなく、美しさ、叙情をもちながら、これぞ音楽、これぞプログレッシブ・ロックの道なりと感じさせてくれるに十分だった。70年代初めは、こうして英国で起きたロックの流れがユーロ各国でも若い力によって探求が始まっていたのだった。

    2ndlist2  ”appena un po' ほんの少しだけ” は、ギターの静かな流れから、フルート、チェンバロ、そしてベース、ドラムスと次第に盛り上げ、静から動へとの展開が見事。そしてヴォーカルが登場し、さらにシンセサイザー、メロトロンの美しい流れは、もうこれだけで堪能するところだ。かってクリムゾンの「宮殿」に感動した心が私には蘇ったのだった。それはなんと遅れること1980年代であった。
     ”generale生誕”のクラシック、ジャズ、そして歴史的民謡の世界を纏め上げたテクニック、”per un amico 友よ”のドラマチックな展開、”il banchetto 晩餐会”、”geranio”の芸術性など天下一品であると、私は今でも太鼓判を押す。

    Photos_of_ghosts  あのE.L,P.のピート・シンフィールド(元キング・クリムゾン)がイタリア公演でこのP.F.M.を発見、感動して、彼が英語の詩を書いて、この2ndアルバム「友よ」と1stアルバム「幻想物語」の世界版アルバム「Photos of Ghosts 幻の映像」(VICTOR VICP-60970、 KING RECORDS KICP2701)を制作し、リリースしたわけだ。これが1973年のこと、そしてこれにより世界にイタリア・ロックが開花した言っても過言ではない。当然日本にても、このアルバムからユーロ・ロックが知られるようになったということになる。
     勿論、私も上の1st、2ndは後に聴いたわけであり、この2枚のイタリア・オリジナル盤の素晴らしさを知ることになったのだった。 
     
     今、ユーロ・ロックの原点をこうして新年に聴いてみると、かっての記憶が脳裏に展開し今年もロックからはやっぱり離れられない自分を知るのである。

    (試聴) ①http://www.youtube.com/watch?v=2T1oKGynRVs

          ②http://www.youtube.com/watch?v=P5WwrgC1qZk

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    2012年3月 7日 (水)

    イタリアン・ロックの軌跡(4) : マリオ・パンセーリMario Panseri 「ADOLESCENZA 秘められた記憶」

    プログレッシブ・ロックにおけるカンタウトーレの活躍

     ”イタリアン・プログレッシブ・ロック”という世界が、日本においての一大ブームを引き起こしたのは、1970~80年代における時代だったと思う。当時はイタリア独特のメロディー・ラインやシンフォニックなアプローチ(ジャズィなタイプももちろんあったが)に圧倒され、ブリティッシュの影響を受けながらも、イタリア独特の世界に満ち満ちていて我々に迫ってきたものだった。
     そしてその流れの中に、どうしても無視できないところに、カンタウトーレといわれるシンガーソングライターの大きな役割が見えてくる。そこには前回検証してたルチオ・バッティスティはもちろんであるが、彼らの活躍はロックの世界に大いに影響をもたらしたし、又彼らの作品もプログレ派には注目されそして受け入れられたのであった。そんな中から印象の強かった一枚を取り上げてみる。
     

    Adolescenza 「Mario Panseri / ADOLESCENZA 秘められた記憶」 (イタリア1973年作品) BMG VICTOR (EDISON) ERC-28019 ,  1989

     歌ものと言われたものでも、曲を形取る方法論に於いて、プログレッシブ・ロックとしてのシンフォニックな演奏やはたまたメロトロンやギターそしてピアノに於いても美しく時として激しく迫ってくるものが多く出現した。
     このアルバムもイタリア独特の哀愁を多種多様な楽器で奏でると同時に、その歌にも魅力があった作品。
     イタリアが最もプログレッシブな波の高かった1973年の作品(RCAレーベル)だが、CDとしての日本リリースはそう古くなくEDISONの企画のEUROPIAN ROCK SERIES にて1989年にリリースされたもの。当時直ちに飛び付いたものである。
     カンタウトーレであったマリオ・パンセーリMario Panseri の作曲、歌、アレンジという才能を見せ付けた最も印象深い作品だ。(私は知らないがアルベルト・モラヴィアという人の小説「アゴスティーノ」をテーマにしている)そしてアルバム・タイトルの”ADOLESCENZA”は、”思春期”とい意味であるが、この EDISON盤の日本タイトルはなかなか味がある。

     1. 貴女の季節
     2. 家 (君の家)
     3. 迷路 (君は知らない)
     4. 海の果て
     5. a)隣人 (母の側)
       b)失望
     6. a)初めての友達
       b)貴女の横顔
     7. 苦悩 (君の混乱)
     8. 神秘の瞳 (あの目)
     9. 消えた子供 (君はもうあの子供じゃない) 

    Adolescenza2  収録曲は2つに分かれた2曲を入れて9曲。これらが一つのコンセプティブにアルバムを通して歌い上げられていて、トータル・アルバムの仕上げとなっている。
     少し内容について触れてみると・・・・・
     1.のオープニングは、ピアノのアルペジオ奏法をバックにオーボエによる旋律が流れるという楽器の綾で、やや暗めの哀愁感あるヴォーカルととに、何とも言えない印象深い旋律の曲
     2.となるとベースがゆったりと刻むリズムに非常に美しいストリングスも入った曲が流れて、続いてアコースティック・ギターも美しく弾かれヴォーカルも魅力的。突如エレクトリックなギターが唸ってロックと化すかと思いきや再び美しい曲に戻る。
     4.はドラムスの効いたロックで始まりトランペット、トロンボーンと思われる管楽器も加わって圧巻、そしてフルートがイタリア・プログレの世界の色を見せ、最後は海の如くピアノにより静かにおさまる。
     5.は、このアルバムでも聴かせどころの青春の哀愁を歌い上げる世界と、ドラマチックな世界の交錯は見事と言わざるを得ない。
     実はこの多彩なバック・ミュージシャンが不明である。もちろんベース、ドラムスのリズム隊は各所でポイントを占めるが、生ピアノ、チェンバロらしき音、シンセサイザー、ストリングス・アンサンブル、acギター、elecギター、ホーンなどなど多種多様な楽器が彩る限りない愛と哀愁が響き渡る。多分彼自身の演奏もかなりの位置をしめているのではないかと推測する。
     とにかく、これぞイタリアの美のアンサンブルの世界である。
     7.から8.は、如何にも若き人間の甘い苦悩ともいえる姿を、ややジャズィでプログレッシブな激しさと、一方普遍的なもの哀しさをゆったりとピアノにより美しく描く。非常に格調高い。
     9.で聴かれるジャズ・キーボード、ジャズ・ギターのセンスの良さには驚かされる。

     20年少々前に知った私にとってはとにもかくにもベタ褒めのアルバムなのである。そして未だに聴き惚れてしまうもの。これが1973年という年のイタリアに生まれていたのかと信じがたい程だった。ブリティッシュのピンク・フロイドで言えば「狂気」の時であり、キング・クリムゾンで言えば「太陽と戦慄」の時だが、全く異なったアプローチの世界であるだけに、まさに恐るべしイタリアなのである。
     彼にはこれ以外に2枚のアルバムがあるが(それらは私は聴いていない)、2ndであるこの一枚が最高傑作と言われている。

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    2012年2月18日 (土)

    イタリアン・ロックの軌跡(3):ルチオ・バッティスティ Lucio Battisti 「AMORE E NON AMORE 8月7日午後」

    彼のを語らないとイタリアン・プログレッシブ・ロック話は始まらない・・・・

     イタリアものを語るには、やっぱりこのルチオ(ルーチョ)・バッティスティを見ておかないと、どうも話がうまく回転しない。そんなとこから彼に焦点を当てておく。

    Luciobamoreenonamore 「Lucio Battisti / AMORE E NON AMORE  8月7日午後」 KING RECORDS KICP 2105 ,  1991 (1971年作品)

     
    これはシンガーであり、シンガーソングライターであり、プロデューサーでもあるルチオ・バッティスティ(ルーチョとかルーチオとか言うが、日本で当初はルチオと呼んでいた)の3rdアルバムであるが、何と言ってもイタリアのロックの道を作り上げた作品として注目度は現在においても高いもの。
     それはイタリアン・プログレの代表ともいっていいPFMやフォルムラ・トレを産み、そしてイル・ヴォーロへの流れへと発展させた起爆剤の作品であるからだ。

     イタリアのポピュラー音楽界のドンともゴットファーザーとも言われる彼が、カンタウトーレとしてのスーパー・スターであるが上に行った一つの実験でもあった。
     彼の歌もの曲と、ここに集まったのちにPFMを結成するフランコ・ムッシーダ以下の4人、そしてフォルムラ・トレを結成するアルベルト・ラディウス、更にソリスト、アレンジャーとして有名になるダリオ・バルダンの6人のセッションによるインスト曲を加えてのアルバムを作ったのだ。

    Luciobamoreenonamorelist_2 曲は左のとおりの8曲であるが、1.3.5.7の4曲が彼の唄もの。そして2.4.6.8が、セッションでの奏でるインスト・プログレ曲という「対」になった構成。
     このアルバムは、日本タイトルは4曲目のタイトルからとっての「8月7日午後」というものだが、もともとのタイトルを訳すと「愛と愛でないもの」となり、内容が対をなしている形をとっていることを表していると思われる。
     その”8月7日午後”というインスト曲も”8月7日午後、自動車の墓場の焼けるような鉄板、ぼくだけ、静寂しかしながら僕は異常に生きている”という長いタイトル曲で、ギターの音を中心としての静かに語られ次第にキー・ボードが加わる不思議な曲。と、思えば対照的に5曲目の”私を求めるなら”は、唄もののロックン・ロールだ。
     2曲目も”プラタナスの下に座ってマーガレットを口に洗剤の白い泡で汚染された黒い川をながめながら”というタイトルで、イタリア・ムードのあるジャズっぽいインスト・プログレ曲。3曲目は、この後のイタリア・ヴォーカルものの形を見せた佳曲。
     6曲目の”フィオーリ”は、これぞこの後のイタリアン・プログレの開花である曲の方向を示唆したキーボードの哀愁あるなかなか心に染みこんでくる名曲。むしろクエラ・ベッキア・ロカンダを思い起こす。

    Batisti5  このバッティスティは、1943年生まれで1998年に、55歳で亡くなっている。そもそもはミラノで作曲家としての活動であったようだが、作詞家のモゴールとの連携で、シングル曲など発表を経て1969年にデビュー・アルバム「LUCIO BATTTISTI」を発表。
     この記念すべきアルバム「8月7日午後」は3枚目のもの。彼はこれ以降、イタリアン・プログレ・バンドを支えるべくヌメロ・ウノ・レーベルを起こしている。そして彼はイタリアン・バンドを世界に売り出したのだ。更に彼自身も多くのアルバムを作成、全19アルバムが確認される。

    Luciobumanamenteuomo 私の所持しているアルバムで、プログレっぽいものは、まず左は彼の5作目のアルバム。

    「Lucio Battisti / umanamente uomo : il sogno 人間の夢」 BMG Ariora PD 74009 ,  1989  (1972年作品)

     これは彼のやりたいことを自由気ままにやったという感じだ。1曲目からアコギと彼のヴォーカルが印象的な優しい魅力的な曲。面白いのは、フォルムラ・トレの代表的な曲”sognando e risognando 夢のまた夢”が、ギターをバックにしてのバッティステイの唄で7曲目に聴けることだ。勿論彼の作曲曲だから彼のアルバムに登場してもおかしくないことだ。しかし私の痺れたフォルムラ・トレの演奏の原曲を聴く思いである。彼のアルバムは全てプログレ系ではないが、このアルバムはどちらかと言うとプログレを含めての広いロック分野を網羅している。

    Luciobaminalatna 「Lucio Battisti / ANINA LATINA (二大世界)」 BMG Ariora PD 74012 , 1989  (1974年作品)

     これは、私流に解釈すると彼の最も傑作に入るかも知れない。ラディウスやラヴェッツィも参加しているせいか、まさにイル・ヴォーロを彷彿とさせる。原題は”ラテンの魂”と言っていいのだろう。情熱の感ずる中に、多彩な音が入り交じってそして一つの統一感ある昇華した世界に引っ張り込むところは、只者の作品ではない。
     音の広がりと浄らかさ、そして感動呼ぶ愛燐の情感がたっぷりで彼のプログレっぽい最右翼の作品。彼の8作目のアルバムだ。

     イタリアン・プログレシブ・ロックを語るときに、必ず一つのキーとなっていたルチオ・バッティスティに焦点を当ててみた。

     

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    2012年2月16日 (木)

    イタリアン・ロックの軌跡(2) : イル・ヴォーロ IL VOLO 「IL VOLO」 & 「Essere O Non Essere? 」

    スーパー・グループの奏でるスリリングな哀愁と宇宙空間

     私が過去に感動したイタリアン・プログレッシブ・ロックを対象として、ここで再考察しているわけであるが、何から取りあげて良いか若干困る。それはあまりにも多彩であるが為に・・・・。
     そこで特別な理由無く、最近になっても時々聴いているものから少しづつ書いてみようかと・・・そんな流れである。(まあこれを機会に、埃がのりつつある棚をまさぐってみようとも思ってますが)

    Ilvolo 「IL VILO / "IL VOLO" & "Essere O Non Essere?"」 KING RECORD  K32Y 2051 ,  1981 (1974,1975作品)

     これもバンド・メンバーを見ただけで興奮する。つまりスーパー・グループそのものだ。そしてこのアルバムは彼らの残した1974年と1975年の2枚のアルバムをカップリングしたもの。(左のように1stのジャケをこのカップリング盤は使っている)
     彼らのバンド名の”volo”は、英語は”flight”つまり”飛行”という意味だと思うが、この時代大きな飛躍を試み、多分世界進出を試みたのかも知れない。
     基本的には、私のお気に入りでもあったイタリアン・プログレ・グループの”フォルムラ・トレFormura Tre”の発展系であるも、ツイン・ギター、ツイン・キーボード、ベース、ドラムスの6人編成。
     PFMの世界進出を成功させたイタリアのレーベルの「ヌメロ・ウーノ」の一つの企画であったろうと思うが、話題のグループ結成でもあった。

    Ilvolo2b (左は2ndのジャケ)

       vince tempera : p, k
       alberto radius : g, vo
       mario lavvezzi : g, mandolin, vo
       gabriele lorenzi : org, synth
       gianni dall'agio : ds, perc, vo
       bob callero : b

     メンバーはこの6人、その内ギターのアルベルト・ラディウスとオルガンを中心としたガブリエーレ・ロレンツィが、イタリアン・ロックを代表するといってもよいバンドの”フォルムラ・トレ”解散後にこのバンドに集結。又イタリア音楽界を代表するキーボード奏者でありプロデュサーのヴィンチェ・テンペラ(前回紹介したジガンティの「TERRA IN BOCCA」の作曲とピアノ)。ロレンツィがいたことのある”カマレオンティ”にやはりいた名ギタリストのマリオ・ラヴェッツィ。ジャンニ・ダラリオのドラマー、ボブ・カレロのベーシストも一流のセッションマン。
     こうした一流のミュージシャンの集結したスーパー・グループによる作品がこのアルバムだ。

    Ilvololist2   曲は左のとおりの14曲で、1~8が1st、9~14が2ndからである。作曲はそれぞれが提供している。
     1stは、唄ものと演奏のバランスの取れた曲群であるが、2ndは、殆どインスト曲といっていい。
     
     スタートは、キーボートの静かなうねりと曲名どおりの蚊の鳴くが如きギターで始まるが、一転して一気にスリリングそのもののリズムと全楽器で展開するアンサンブルは身震いする。ヴォーカルはあまり前面に出ないパターンでの曲構成を推し進める。
     メンバーそれぞれの担当するパートが繊細きわまりなく、又そのリズムの交叉が一級の芸術品。
     ギターも3の”情念”では見事に泣いて見せ、それにアコースティック・ギターが絡んでヴォーカルも美しくまさにこれがイタリア・プログレと言ってしまう。
     異質の技術を持った強者が結集して作り上げた完成度の高い曲群には無駄が全くなく、間のとり方や音の強弱は繊細にしてダイナミック、聴くものにとっては鳥肌の立つ思いである。

     この作品群が、当時世界的に何故羽ばたくことがなかったのか、不思議と言えば不思議である。この1970年代中期に於いて、こうしたロックの技術的高度化は、むしろ一般の若者にとってはついて行けないところまで行ってしまったことによるのかも知れない。つまり身近なところから遠ざかってしまったのが大きな要因かとも推測出来る。考えてみれば巷にはあのパンク・ロックの流れが動き始めた時でもある。確かにイギリスでは1976年にはセックス・ピストルズのデビューもある。
     
     おそらく、流れる時代の中で、その時代を勝ち取ることが出来なかったのがこのイル・ヴォーロなのかも知れない。しかしイタリア・プログレを語るにおいては、このイル・ヴォーロは忘れるわけにはゆかないのだ。

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    2012年2月14日 (火)

    イタリアン・ロックの軌跡(1): ジガンティ i GiGanti 「犯罪の唄 TERRA IN BOCCA」

    これはまさに衝撃であったジガンティ!!

     

     イタリアン・プログレッシブ・ロックには、取り付かれた人も多分多いと思う。70年代ロックは英国主流であった中で、イタリアを知ったものにとっては衝撃にも似た感動があったものだ。私もそんな人間の一人であるが、これは1980年代のCDによる再発ブームが大きな役割を果たしていた。
     当時は幻のアルバムといわれるものも、CD化の動きによって手に入ることができるようになったものが幾つかとあり、このジガンティ i GiGanti もCDで手にしてその感動も大きかったものだ。
     そんな昔の時代を思い出しながら、最近なんとなく回顧といった状態でイタリアン・プログレ・アルバムを聴いている。そこで手持ちのコレクションを、少しづつチェックしていってみたい。

     

    Gigantiterrainbocca

     

    「ジガンティ i GiGanti / 犯罪の唄 TERRA IN BOCCA poesia di un delitto」 (1971年作品) ①Vinyl Magic VM013 , ② KING KICP2103  , ③ BELLE ANIQUE   BELLE091627

     

     このアルバムを聴くと何故か最低1週間は頭から離れないという最強の代物。そして我々の手に入ったものは、3種類ある。最初に私が聴いて驚いたのはLPの71年ものでなく、1980年代になってのイタリアの Vinyl MAGIC のものだった(上)。つまり地方に生息している私には、そう簡単には初期LPは手に入らず上京して手に入れたものがそのCDだった。後にキングが日本盤としてリリース。そして又ベル・アンティークが高音質SHM-CDでリリースするのである。ところが私が当初感激したVinyl MAGIC盤は、後にオリジナルとは別テイク(デモ・テープ)であることが解るのだが、その別テイクにても衝撃的感動を得た。そしてキング盤、ベル・アンティーク盤がオリジナル・マスター音源でリリースしている。

     

    Gigantimembers  このジガンティが何故プログレ・アルバムが作ることになったかは不明だが、全曲作曲している後のIL VOLOのヴィンチェ・テンペラ(Piano)をゲストに迎えての壮大な絵巻を展開したのはまさに衝撃と言っていい。メンバーは下記のとおりで、このアルバムの後には、イタリア・プログレ界の兵(つわもの)として日本にも伝わってきたギターにマルセロ・デラカサ(LATTE E MIELE)、そしてAREAのアレス・タヴォラッツィ(Guitar)、エラーデ・バンディーニ(Drums)名前もある。いやはや豪勢そのもの。

     

    members

     

    Drums: Ellade Bandini, Enrico Maria Papes
    Bass: Ares Tavolazzi, Sergio Di Martino
    Piano & Organ: Francesco Marsella, Vince Tempera
    Guitars: Ares Tavolazzi, Sergio Di Martino, Giacomo Di Martino, Marcello Dellacasa
    Mellotron: Francesco Marsella & His Ten Fingers Ten

     

     曲目は下記のとおりであるが、アルバム一枚の組曲だ。

    1. 最初ゆっくりと(Largo Iniziale)
    2. 非常のゆっくりと (Molto Largo )
    3. 前進 ( Avanti )
    4. さらに前進~つきのない時~プリン・プリン(Avanti Tutto-Bruto Momento-Plim Plim)
    5. 発作的プリン・プリン~優雅に、歩く速さで(Alim Alim Al Parossismo-Delicato Andante)
    6. 暴動~突然の結末 ( Rumori-Fine Incombente )
    7. 遠い結末~無へのアレグロ (Fine Incombente-Allegro Per Niente)
    8. デブのメス猫が行く~右往左往 (Tanto Va La Gatta Al Largo-Su E Giu)
    9. 極端にゆっくりと~全てはこころの内に(Larghissimo-Dentro Tutto)
    10. 音の始まり~悲しい水切り遊び(Alba di Note-Rimbalzello)
    11. 楽しい水切り遊び ~脅迫的に、しかしはなはだしくなく~結末 (Rimbalzello Compiacente-Ossessivo,ma non troppo-fine)

     

     

    2terrainbocca_2 (左がVinyl MAGIC盤、右がBELLE ANTIQUE盤)
     このアルバムは語るよりは聴いてみることに尽きるが、イタリアン・ブログレのエッセンスを全て網羅していると言って大げさではない。私自身はイタリアン・プログレの入り口のバンドはPFMであった訳であるが、このようなアルバムが存在していたことを、後に知って驚いたのだった。
     BELLE ANTIQUE盤には歌詞とその訳まであるが、当初聴いたVinyl MAGIC盤のときには内容がよく解らなかった。イタリア語辞書を買ってそのアルバムのタイトルから想像していくという程度。後に解ったことで、このアルバムはイタリアの暗黒の権利を我がものにしていたマフィアを題材にしている。唄い描かれたのは、一人で対抗した純朴な農民である。この主人公の16歳の息子は惨殺されてしまうが、その姿がこのアルバム・ジャケに見れるのだ。

     美しくも激しくそして印象的な哀愁のある曲が展開する。ギター、ピアノの美しさとメロトロン、オルガン、シンセサイザーの圧倒的な響き、イタリア独特のヴォーカルが押し寄せる波の如く迫ってくる。しかしその内容には怒りと悲しみの物語が展開しているのだ。

     確かにBELLE ANTIQUE盤は、オープニングから重厚で、技術陣のミックス作業も緻密であり、フェイド・アウトなどの手法もあって完成されたアルバムの形を呈している。しかしVinyl MAGIC盤も荒削りさがむしろ面白く、サウンドも良好で、これはこれ楽しめることも事実。

     ここにイタリア・プログレの最強盤を紹介した。

     

     

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