北欧ジャズ

2018年12月 9日 (日)

ラーシュ・ヤンソンのニュー・アルバム Lars Jansson Trio 「JUST THIS」

端麗なピアノ・タッチは緩急・メリハリの効いたメロディーに乗って

<Jazz>
Lars Jansson Trio 「JUST THIS」
Spice of Life / JPN / SOLSV41 / 2018

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Lars Jansson ラーシュ・ヤンソン (piano)
Thomas Fonnesbaek トーマス・フォネスベック (bass)
Paul Svanberg ポール・スヴァンベリー (drums)

 スウェーデン抒情派ピアノのベテラン・ラーシュ・ヤンソンLars Jansson (1951年スウェーデンのオーレブロ生まれ)の、レギュラー・トリオによる全曲13曲をオリジナルで構成したアルバムの登場だ。2015年の『Facing The Wall』(SV-0033/2015)以来3年ぶりとなる。
 前回ここで取りあげたのは2年前のセルフ・カヴァー・アルバム『More Human』(SOLSV-00371/2016)だったが、あのアルバムからは、人間性が溢れていたところにどっぷりと浸かることが出来たが、さてこのオリジナル曲集は?と興味の湧くところである。

20170720_210108trw 少し難題にはなるが、タイトルの「Just This」は彼の探求する禅の心「ビギナーズ・マインド “初心”」の見地から生まれたと説明されている。全13曲には全てが彼の人生への深い想いと彼自身の心の反映されたものとして受け入れられているが・・・・。
 更に、このアルバムをレコーデイングする直前に夫人のクリスティーナの重篤な病気という精神的に苦悩する中での作品作りとなったものと言うことで、彼の持ち前の人間性の表現がここにありと言う世界のようだ。

 ”その追い込まれた精神の中で葛藤する彼のピアノは今まで以上に人間味溢れ極めて説得力のある力強いものになっている”と評価されているが・・・・。
 ヤンソンの言うところよると「人生の全てを受け入れるということは簡単なことではない。しかし現在を見つめ完全に自分を没頭させること、Just This。」と・・・・。

(Tracklist)
01. ジャスト・ジス / Just This
02. ピュア・センセイション / Pure Sensation
03. ワルツ・フォー・ビル / Waltz For Bill
04. レシーヴィング / Receiving
05. ボーヒュースレン / Bohuslan
06. ムスタファ / Mustapha
07. インティメイト・トーク / Intimate Talk
08. チェリッシュド / Cherished
09. ターン・ザ・ホール・シング・アップサイド・ダウン / Turn The Whole Thing Upside Down
10. ノー・パーパス / No Purpose
11. セイフ・トリップ / Safe Trip
12. アナッタ/ Anatta
13. トゥー・ハヴ・オア・トゥー・ビー/ To Have Or To Be

(all tracks composed and arranged by Lars Jansson)


Larsjansson01 スタートからアルバム・タイトル曲M01."Just This"が登場するが、なるほどヤンソンの陰影の感じられない家族愛的優しいメロディーが流れる。
 M02."Pure Sensation"やビル・エヴァンスに捧げたと言うM03."Waltz For Bill"は、ややアップ・テンポに展開する曲。しかし意外に印象に残らない、それは難点らしいところが無いのだ。これが実はヤンソンの演ずる曲の一つの特徴であるように思う。
 M04."Receiving"は、彼の技巧の妙による流れの魅力的な曲。
 中盤には、トリオとしての三者の技量の交錯が聴きどろの数曲が展開する。
 M10."No Purpose"M12. "Anatta"は、彼らしい心に落ち着きと安らぎを与えてくれる。
 最後のM13."To Have Or To Be"は、締めくくりに相応しいどこか愛情のあるバラッド。

  相変わらず彼の持ち味どおりで、難解な展開にはならない。やはり「ピアノ・トリオの教科書」的安定感があり、安心して聴いていられるピアノ・トリオ世界だ。そこがヤンソンの特徴だろうと思うが、聴き終わって”これだ!”というインパクトがない。逆にそうしたところが魅力なのかも知れないが、私にとってはどこか”毒”とまでは言わないが、そんな刺激がないところがちょっと寂しいのである。
 

(評価)
□曲・演奏 ★★★★☆
□録音   ★★★★☆

(試聴)

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2018年11月 9日 (金)

アレクシ・トゥマリラ・ピアノ・トリオAlexi Tuomarila Trio 「Kingdom」

ブラッド・メルドーお墨付きのピアノ・トリオ

<Jazz>
Alexi Tuomarila  Mats Eilertsen  Olavi Louhivuori
「Kingdom」

EDITION / ADN 1090 / 2017

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Alexi Tuomarila (アレクシ・トゥオマリラ, piano)
Mats Eilertsen (マッツ・ アイレットセン, bass)
Olavi Louhivuori (オラヴィ・ロウヒヴオリ, drums)

Recorded on 5th December 2017 at K.K.Studio, Finnland
Produced by Alexi Tuomarila
Executive Producer: Dave Stapleton

15977464_1382560951794505_296827606 このピアノ・トリオは初聴きである。この秋、日本ライブが行われて知るに至った。
 ピアニストアレクシ・トゥオマリアAlexi Tuomarila、1974年-)は、Brad Mehldauが絶賛しているというだけあって、なかなかのピアノ・テクニシャン。又ミュージック・パターンもメルドーに一脈通ずるところもある。
 彼は、フィンランドのジャズピアニストだ。クラシック・ピアノを始め、20歳からブリュッセル王立音楽院へと留学しナタリー・ロリエなどに従事した。在学中に自己名義のアレクシ・トゥオマリア・カルテットを結成し、1999年にベルギーのHoeilaartで開催された国際ジャズ祭で最優秀賞に選ばれているとか(アルバムは、二枚リリースされている。末尾Discograpgy参照)。
 ジャズ界の新生と言えば新生だが、既にその後トリオによるアルバムもリリースし、5枚のアルバムが認められる。又賞の受賞もあって年齢的にも円熟のときを迎えていると思う。

(Tracklist)
1. The Sun Hillock (Alexi Tuomarila)
2. Rytter (Mats Eilertsen)
3. The Girl in a Stetson Hat (Alexi Tuomarila)
4. Vagabond (Alexi Tuomarila)
5. The times they are a-changin’ (Bob Dylan)
6. Shadows (Olavi Louhivuori)
7. Aalto (Alexi Tuomarila)
8. Bruin Bay (Alexi Tuomarila)
9. White Waters (Olavi Louhivuori)


 曲は上記の如く、M5は、Bob Dylanの曲で、ほかの8曲はトリオ・メンバーのオリジナル(リーダーのトゥマリラは5曲)である。
 トゥオマリラのピアノ演奏内容は、コンテンポラリーな面と、一方クラシックに通ずる面との混在で、なかなか面白い。ありきたりのジャズは既に超越していてレベルは高い。
 又ポーランドのベテラン名トランペッター・トマシュ・スタンコTomasz Stankoの下で研鑽を積んでいて、そのせいか演奏も中身は濃い。
 このトリオは、メンバーそれぞれが個性を持って演奏するなかなか一筋ならないトリオであり、しかしそのコミュニケーションは素晴らしくお互いが上手く通じ合ってのことであろう、それぞれの存在が録音も良くベースの弱音やドラムスのシンバルの音も明解に解るが、決して乱れては居ない。そのあたりが敬服してしまうところ。

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 M2. "Rytter"の流れは、アイレットセンがアルコ奏法をもみせるなか、三者の流れの統一感と盛り上がりは納得もの。
 ただユーロ独特の抒情性溢れるメロディーが心に浸みるというタイプでなく、それぞれ及び三者一体の技量の濃さが聴く者に迫ってくると言うタイプで、プロ好み。M4."Vagabond"やM8. "Bruin Bay"の後半は少々難解である。こんなところは、今まで一般受けはもう一つといったところのポイントか。
 私は結構M9."White Waters"は、北欧的世界を頭に描くことが出来、又フィロソフィーも感じられて評価は高い。

<Alexi Tuomarila Discography>
▼Alexi Tuomarila Quartet
2001: Voices Of Pohjola (Igloo - IGL 158)
2003: 02 (Finlandia Records, Warner Jazz - 0927-49148-2)

▼Alexi Tuomarila Trio (Mats Eilertsen, Olavi Louhivuori)
2006: Constellation (Jazzaway Records - JARCD 030)
2013:  Seven Hills (Edition Records - EDN1041)
2017:  Kingdom (Edition Records - EDN1090)

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴)

**

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2018年9月12日 (水)

聴き落としていたアルバム(2)~ヤコブ・カールソンJacob Karlzon 3 「THE BIG PICTURE」

*この「聴き落としていたアルバム」シリーズは、諸々の事情で遅まきながら聴いたところ、なかなかの聴きどころのあったものを取りあげている~~~

コンテンポラリー抒情派モード・ジャズ

<Contemporary Jazz>
Jacob Karlzon 3 「THE BIG PICTURE」
STUNT / Denmark / STUM23011 / 2011

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Jacob Karlzon(p,elp,org,key,programming)
Hans Andersson(b)
Jonas Holgersson(ds,per)

もともとこのブログを書くようになったのは、”感動した、好きだ、知って欲しい”という事柄を綴り、多くの人に見てもらういうと言う事が目的かと言えば、実はそうでは無い。ここは私個人の記録の場であって、こうして書いておく事によって忘れないでおこうという、つまり「備忘録」なのである。従って取りあげることもどちらかというと私の趣味の分野が多く、又偏っているところも否めない。そんな気楽さの為、開始から既に12年になろうとしているのである。しかしそれによって嬉しいことに、偶然目にした人がご意見や教えてくれる事が幾度とあって、何度と知識を広げられて助かったり感動もしてきた。

Hirez51a4004edit そんな事から、今日の本題のジャズ・アルバムであるが、大体これは聴き逃したというより知らなかったアルバムである。スウェーデンのピアニスト、ヤコブ・カールソンJacob Karlzon(1970年生まれ)(→)のリーダー・ピアノ・トリオ・アルバム。と言うと、おおよそ見当が付こうと言うところだが、それがなかなか一筋縄では行かない。クラシックなアメリカン・ジャズやオーソドックスなピアノ・トリオでは全くないのだ。ならば何故聴いたのかと言えば、なんとあのスウェーデンの女性シンガービクトリア・トルストイViktoria Tolstoy(ロシアの文豪トルストイのひい孫)関連から、そこは有り難いことに友人のアドバイスなのである。

(Tracklist)
1. The Big Picture
2. Bakersfield Revisited
3. Maniac
4. On The Horizon
5. In God's Country
6. Newbie
7. Ma Salama
8. Utopian Folksong
9. At The End Of The Day

 ヤコブ・カールソンと言えば、北欧一円と言うより近年欧州を広く股にかけて活躍を続けているスウェーデンのピアニストだ。もともとビル・エヴァンスやキース・ジャレットといった叙情的で伝統的なプレイを知らしめていたと思うのだが、このアルバムは、あのESTもちらっと思い出すパターンのアコースティック・ピアノを中心に、エレクトリック・ピアノ、オルガン、プログラミングなどはエフェクトのように重ね合わせて効果を上げ、ジャズ・4ビートから逸脱して、当に現代的なサウンドを展開している。

M1. "The Big Picture"は、アルバム・タイトル曲だが、あまり印象の無い曲でこのアルバムは何だろうと不安になる。
 M2. "Bakersfield Revisited"、M8. "Utopian Folksong"あたりは、聴きようによってはジャズ好きのロック・バンドのアプローチにも似たアグレッシブなスリリングな展開を見せる。
 かと言って、M3. "Maniac" となると一転してメロデックになり、M4. "On The Horizon"では、静寂を描き広大な自然風景が浮かぶ北欧ムードたっぶりのピアノ美旋律を堪能できる。
 更にM6. "Newbie"は、ドラムスの圧倒的軽快なリズムに乗ってのピアノ、ベースのご満悦の曲進行という世界に入る。
 M7. "Ma Salama"これは素晴らしい。ゆったり落ち着いた美しいピアノの響きの序章から次第に宇宙感覚に広がってく。
 最後のM9. "At The End Of The Day"はピアノ・ソロで余韻の美しいピアノが心を落ち着かせてくれる。

 ファンキーなリズミカルな生きの良い刺激的トリッキーな熱演があるかと思うと、癒し的なピアノ旋律によって心を洗うが如く深遠な奥行き・広がりを感じさせたり、緩急や色合いの多彩さで圧倒する。これは妙演と言うべきかも、確かにカールソンのオールラウンドな辣腕ぶりが十分発揮されている。アコースティックなピアノに加えエレクロニックの色合いを加味したり、所謂オーソドックスなピアノ・トリオとは異なる世界である。これがクラシック、現代音楽を加味したニューエイジ世界として受け入れられて行くというのもジャズの一つの世界なのであろう。

(評価)
演奏: ★★★★☆
録音: ★★★★☆

(参考)

 Vt2① Viktoria Tolstoy との共演盤
     Viktoria Tolstoy & Jacob Karlzon 「Moment Of Now」→
         ACT /Germ/9727-2/2013

 ② Viktoria Tolstoy     http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-4886.html
            

(My Image Photo)  「どこか不安な空」

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Sony α7Ⅲ ILCE-7M3,  FE 4/21-105 G OSS, PL  Aug. 2018

(試聴)

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2018年9月 3日 (月)

久々のトリオで・・・トルド・グスタフセンTord GustavsenTrio「The Other Side」

グスタフセンのピアノが待望のトリオで・・・・・

<Jazz>
Tord GustavsenTrio 「The Other Side」
ECM / Germany / 2608 6751618 / 2018

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Tord Gustavsen (piano, electronics)
Sigurd Hole (double bass)
Jarle Vespestad (drums)

Recorded January 2018, at Rainbow Studio, Oslo
Produced by Manfred Eicher

 久々のノルウェーのトルド・グスタフセンTord Gustavsen のピアノ作品がトリオでリリース。2007年の『Being There』 (ECM/2017 B0008757-02)以来となりますね。近年は彼のレパートリーの拡大と新分野への挑戦などで、カルテットやアンサンブルといったところがお目見えしてきたわけだが、私にとっては待望のピアノ・トリオ作品で、これは今年の一月の録音だ。

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 トリオのメンバーは、ベーシストが、Harald JohnsenからSigurd Holeに変わっている。ドラムスはもう長年のお付き合いで変更無しのJarle Vespestad だ。ノルウェー出身の三者によるトリオで、グスタフセンの緩徐で深く沈み込むピアノの流れは変わらずに、心に染み込む静かなメロディーによるトリオの世界を構築している。
 録音もピアノに対してベース、ドラムスも生きていて、なかなかトリオ・バランスを重視した好録音である。

Tord_croppedw(Tracklist) 

1. The Tunnel
2. Kirken, den er et gammelt hus
3. Re-Melt
4. Duality
5. Ingen veinner frem til den evige ro
6. Taste and See
7. Schlafes Bruder *
8. Jesu, meine Freude * Jesus, des eneste
9. The Other Side
10. O Traurigkeit *
11. Left Over Lullaby No.4
12. Curves

  今回はトルド・グスタフセン自身の曲が主だが、J.S.Bachが取りあげられている(上記*印の3曲)。
 オープニングM1. "The Tunnel" から、グスタフセン世界が迫ってくる。何度聴いてもドップリと浸れるグスタフセン世界は、やはり深遠であり哲学的でも有り、人間心理の究極の姿を描くが如くで、このアルバムも全編を通して真摯な気持ちで聴くことが出来る。
  M4. "Duality" M5.、 "Ingen veinner frem til den evige ro"に来るともう自他共に許すグスタフセン世界だ。
 アルバム・タイトル曲である彼の曲M9."The Other Side "は、珍しく”彼独特の静寂の中に流れる美しさと深遠さ”というタイプでなく、静かに物語り調に淡々と描いてどこか明るさも感じられる。この"Other Side"の意味はそんなところにあるのだろうか。
 これに続いてM10. "O Traurigkeit"は、やや対比的にJ.S.Bachのメディーをオリジナルの世界とは全く異なる完全なグフタフセン世界に沈み込ませるが、中盤から後半にかけてはトリオで盛り上がる珍しいタイプ。これも彼の今回の一つの試みの曲とみる。
 そしてM11. "Left Over Lullaby No.4"は、彼のファン・サービスの演奏。完全に本来の静寂と沈静の世界ですね。

 いっや~~、やはりトルド・グスタフセンはいいですね。完璧と言ってしまいたいアルバムだ。ピアノの弾くメロディの深遠さ、そして緩急、強弱、余韻の生かし方もハイレベル。何時もニュー・アルバムを待っているのだが、期待を裏切らない。北欧の世界感なのであろうか、又彼の学んだ心理学が生きているのか、この世界はしっかりと守りつつ、今後にも発展していって欲しいものである。

(評価)
□演奏:★★★★★
□録音:★★★★★☆

(私のイメージPHOTO=「夏の記憶に2018」)

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2018.9.3撮影(志賀高原)  Sony α7Ⅲ ILCE-7M3,  FE 4/21-105 G OSS, PL

(視聴)

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2018年6月25日 (月)

(検証シリーズ)ボボ・ステンソン・トリオBobo Stenson Trio検証 アルバム「Serenity」

フリー・ジャズの世界から・・・・何が生まれたか?

Contralaindw_2  このホボ・ステンソン・トリオ(スウェーデン)は、今年久々にリリースされた『Contra La indecisión』ECM2582 5786976)(→)が素晴らしかった。そして既に過去に聴いていた二作『Reflections』(1993)、『Goodbye』(2005)を参考に、今年1月にここで感想を少々書いたのだが、この歴史あるトリオを、もう少し聴き込んでみよう思った次第。

 もともと私はアルバムを一枚の作品として聴くタイプであるので、ライブものは避けることが有り、その為聴き逃していたモノがある。しかし考えて見ると、ライブものが意外にそのトリオのその姿を如実に示すと思い、過去の8枚のアルバムの中で、2000年リリースの2枚組ライブ・アルバム『Serenity』を、ここで今になってアプローチしたのである。

<Jazz>

Bobo Stenson Trio 「Serenity」
ECM / GERM / ECM 1740/41 / 2000

Serenity

Recorded April 1999 at HageGrden Music Center, Brunskog, Sweden
Recording Engineer : Åke Linton

Bobo Stenson : piano
Anders Jormin : double-bass
Jon Christensen : drums

12012 スウェーデンの人気ベテラン・ピアニスト、ボボ・ステンソン(1944-)のリーダー・アルバム。アンデルス・ヨルミンとヨン・クリステンセンによるレギュラー・トリオ作品。ライブ演奏盤だが、そこにみるは、インプロを交えての濃密なインタープレイが楽しめるフリー・ジャズの一つの発展形、なかなかテンションも高い。録音も素晴らしくちょっとライブ盤とは思えない緻密性を感ずる。
 既にベテラン中のベテランとなっている彼であるが、この18年前のアルバムにてもその一つの形を作り上げている。もともとフリー・ジャズと言う分野になろうかと思うが、ここにはあまり実験性というものは感じない。もしろこのスタイルによってトリオが主張する北欧の音楽界に存在する芸術性の結晶をみる思いである。
 そして恐ろしいのは、なんとボボ・ステンソンの演ずるピアノの音には濁りというモノとは全く縁の無い透明感のある音であり、そこも痺れるところである。しかも全編”不思議な耽美な世界”が存在している。
 ECM盤の特徴である”静的な世界”は当然存在しているのだが、決して単なるそこに終わるので無く、結構スリリングなトリオとしてのエネルギッシュな交錯も展開しているのだ。

2000

 印象としては、このアルバム『Serenity』及びこの前後の『Reflections』、『Goodbye』の2アルバムを含めての2000年前後の3作は、今年のアルバム『Contra La indecisión』よりは、さすがにバリバリの活動期にあっただけに、その演奏の緊迫性は高い。これらを経過しての今年のアルバムを聴き込むと、成る程ボボ・ステンソンの年齢と共に構築されて来た人生観が見えてくるように思う。近作の方がどちらかというとソフトな美学が感じられ、過去のものには緊迫性の美学が感じられるのである。

Ajorminw オリジナル曲が主体のアルバムだが、ベーシストのアンデルス・ヨルミン(→)がいずれのアルバムにおいても多くの曲を提供しており、彼の役割の重さも忘れてはならないと思う。近年ではドラムス担当が変わっているが、彼の場合は現在まで長くこのトリオを支えている。
 又2枚のCDに収録されている19曲の中でも、特に評判通りWayne ShorterのM8."Swee Pea"の繊細なシンバル、そしてアルコ奏法ベースからから始まって、おもむろにピアノの語りへとの流れ、続くM9. "Simple & Sweet"(Disc1)のベースへの展開の辺りは痺れます。 又M8. " Serenity"(Disc2)のような静穏な世界も彼らの特徴に思う。 

(Tracklist)
Disc 1
1.  T 
2.  West Print 
3.  North Print 
4.  East Print 
5.  South Print 
6.  Polska Of Despair (II) 
7.  Golden Rain 
8.  Swee Pea 
9.  Simple & Sweet 
10.  Der Pfalaumenbaum 

Disc 2
1.  El Mayor 
2.  Fader V (Father World) 
3.  More Cymbals 
4.  Extra Low 
5.  Die Nachtigal 
6.  Rimbaud Gedicht 
7.  Polska Of Despair (I) 
8.  Serenity 
9.  Tonus


  このような北欧のフリー・ジャズ世界は独特の世界を持っていて、それはこの基礎にある北欧ならではのトラッドからの流れとクラシック音楽との融合から発展したジヤズ感覚によって構築されている”進歩的味わい”というものが存在すると思うのである。

(評価)
□ 演奏、曲  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★★☆

(参考視聴 1990年代 Bobo Stenson Trio)

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2018年5月12日 (土)

ヨーナス・ハーヴィスト・トリオJoonas Haavisto Trioのニュー・アルバム「Gradation」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (我が家の庭から・・・・「モッコウバラ」   NikonD800/90mm/PL/May,2018)


北欧の世界を感じさせるコンテンポラリー・ジャズ

<Jazz>
Joonas Haavisto Trio「Gradation」
BLUE GLEAM / JPN / BG009 / 2018

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Joonas Haavisto : Piano
Antti Lötjönen : double bass
Joonas Riippa : Drums
Recorded December 17-19,2017 at Kallio-Kuninkala Studio, Järvenpää, Finland


 ヨーナス・ハーヴィスト(フィンランド)は北欧気鋭のピアニストだ。その4枚目のトリオ作が日本のBlue GLEAMレーベルからリリースされた。
 前作は日本でも好評の『Okuオク』(BLUE GLEAM/BG007)で、あれから2年ぶりとなる。日本の「奥」の世界をイメージしてのあの深遠なる演奏に再び触れたいと今作にも自ずから期待してしまう。今作は、ヨーナスのトリオ結成12年目の作品となるようだ。
 彼はなんと世界からの好評を受ける中、2017年には、あの名門ピアノ・メーカーのSteinway & Sonsの専属アーティストにもなったようだ。
 今作、収録全8曲(ハーヴィストのオリジナル7曲、トラディショナル1曲)で構成されたアルバムで、今回も何とも北欧の世界を感じさせるアルバムである。


Joonas001trw(Tracklist)
1.  Surge
2.  Moriens
3.  Sitka*
4.  Flight Mode
5.  Sigh
6.  Emigrantvisa
7.  Polar Night (Bonus Track )
8.  At The Dock

All compositions by Joonas Haavisto exept "6"(traditional)
Teemu Viinikainen : guitar (*印)

 過去の様式から一歩前進しての現代感覚で作り上げるジャズ芸術も多様化しているが、彼らのピアノ・トリオのジャンルはコンテンポラリー・ジャズというところに納まるのかも知れない。
 しかし美旋律ものというものではないが、北欧の自然からの美しい印象が流れてくる。新しいセンスのジャズを構築するのだが、所謂アヴァンギャルドという印象も無く、むしろ郷愁を誘うクラシックな深い世界を感じることが出来る。

16681581_2294595660679072_52860314516711618_2294595480679090_2765969_2 スタートは意外にもダイナミックにしてやや激しいピアノ・プレイで迫ってくるが、M2. " Moriens"になると、北欧をイメージする深い味わいのトリオ演奏が展開する。特に中盤のベース独奏が深く想いをもたせ、そして続くピアノが深遠な自然の展開をイメージするリリカルな見事なプレイにしみじみとしてしまう。
 M3. " Sitka"は、アラスカにある都市だそうだが、この曲のみ美しく優しいギターが加わってイメージを変える。それがこのアルバム・・トータルからみて、一つのアクセント効果をもたらしている。
 M4. " Flight Mode"のようにピアノのエネルギーを展開する曲もあるが、スウェーデンのトラッドというM6. " Emigrantvisa"は、なんとなく郷愁を誘うところがあって北欧の自然豊かな世界を想像させるに十分な曲だ。

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  相変わらずこのトリオは、過去に捕らわれない世界に挑戦しつつも、人の心をつかむ技に長けていて、なんとなく引き込まれていってしまう。そんなところが持ち味で、日本的な感覚にもマッチするところがポイントだ。

(評価)
□ 曲・ 演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴) Joonas Haavisto Trio

 

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2018年4月 4日 (水)

フロネシスPHRONESIS 「A LIVE」

[My Photo Album (瞬光残像)]   四月の高原

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「融雪の時」-1-


欧州情緒を秘めての緊迫感に圧倒される・・・・
現代感覚のモダン・ジャズ

<Jazz>
PHRONESIS 「A LIVE」
AGATE/Inpartmaint Inc./ JPN / AGIP-3608 / 2017

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Jasper Høiby (bass)
Ivo Neame (piano)
Mark Guiliana (drums)

 デンマーク出身のベーシスト・ジャスパー・ホイビー Jasper Høiby を中心にロンドンで活動するピアノトリオPHRONESISの2010年のUKツアーを収録したもので2枚組。
 これは2010年にリリースされた3rdアルバムだが、隠れた名作とされており、ここに国内にてCDリリースとなったらしい。ちなみにこのトリオは今日までに7枚のアルバムをリリースしている。

Jasperhoiby_dsc01w ジャスパー・ホイビー(→)は77年生まれで40歳、コペンハーゲンのベーシストであるが、メンバーは彼自身の活躍の場である英国におけるミュージシャンでの構成であるが、このアルバムはドラムスには、アヴィシャイ・コーエン・トリオの注目株の米国のマーク・ジュリアーナMark Guiliana が参加している。本来このトリオのメンバー構成はドラムスは、2007年の1stアルバム『Organe Warfare』からアントン・イガーAnton Egerとなっているが、この時は替わっている。又ピアノは、私はマークしていなかったのだが、英国の1981年生まれの若きサキソフォン奏者でもあるという現代ジャズ天才肌のマルチ奏者のアイヴォ・ニーム  Ivo Neame が担当している。
 近年はJasper Høiby、Ivo Neame、Anton Egerに落ち着いたトリオで、彼ららしい三者のバトルを繰り返している。(最近作『Parallax』(EDN1070))

(Tracklist)
▶Disc 1
1. Untitles #1
2. Blue Inspiration
3. French
4. Eight Hours
5. Abraham’s New Gift
6. Rue Cinq Diamants
7. Happy Notes
8. Love Songs
▶Disc 2
1. Untitled #2
2. Smoking the Camel
    (all music by Jasper Høiby)


Giuliana_markimage1w_2 とにかく優しいピアノ・トリオではない。ここではジャスパー・ホイビーの重低音ベースが響き渡るが、マーク・ジュリアーナ(→)のドラムスも決して奥に引っ込んでいないで明解にリズムを刻む。ピアノ・トリオではあるが、ピアノ主役にしてドラムス、ベースがバックのリズム隊として支えていくというパターンではない。見事な三者対等のインター・プレイだ。録音もピアノだけがいやに前に出ているのでなく、三者が対等にその位置を確保され明解にそのプレイが聴く事が出来る。ライブ録音であるため時折会場のオーディエンスの音が入るがそれ程気になるほどでなくうまく仕上げている。

 しかしライブだけあって、長曲が多い。10分以上が5曲ある(Disc1-M2, M5, M7, M8, Disc2-M2 )。それだけ三者それぞれが納得の演奏で仕上げにもっていってのトリオ作品とみる。
 
  全曲リーダーのジャスパー・ホイビーの作曲。ユーロ独特のピアノの哀愁ある美旋律でうっとりというタイプでなく、ピアノの響きはやはりどこか哀感を含んだ響きを繰り返す中に、ベースは独自の低音を響かせるのだが、なんとそれはしっかり融合して聴くものに快感を味合わせてくれる。そしてこれに又ドラムス、シンバルの響きが的確に誘導していくパターンはスリリングで緊迫感あってにくいところだ。

 特にハイテンポで疾走感あるベースに平行してドラムスのステック音が共鳴し、そこにピアノが乗ってくるM5."Abraham’s New Gift"では、10分の中に、ベース、ピアノ、ドラムスの順にそれぞれの締める位置が明確に演じきり、聴く者にとっての緊張感と共に、十二分にトリオのインター・プレイが次第に天空に昇華する気分を楽しませてくれる。

Ivo2 M6."Rue Cinq Diamants"は、静かに美しいアイヴォ・ニーム(→)のピアノ・プレイから始まって、ドラムスの響きが緊張感を高めて行く。そして中盤にはベースがやはり深遠な世界を描いて次第に三者の交錯は格調高く展開。
 とかく全曲無駄なしのトリオ・アンサンブルが光り、つい引き込まれてしまう。
 最後の締めくくりDisc2-M2."Smoking the Camel"は、どことなく哀感あるピアノ旋律、響くベース音、シンバル音がメリハリを付ける・・・・といったなかなか深遠な流れから始まって、中盤のドラムス・ソロが次に来る三者のアンサンブルの妙を暗示する。後半もスティックが軽快な流れを聴かせてのドラムスのソロが説得力をみせ、そして三者の競演に展開。これぞジャズと思わせる。

 成る程このアルバムは、ユーロのロマンとスリリングな現代ジャズを演ずるピアノ・トリオの隠れた名作と言うのが解るところ、お勧めだ。

(評価)
□ 曲・演奏    ★★★★★
□ 録音    ★★★★☆


(視聴)

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2018年3月27日 (火)

ヘルゲ・リエン&クヌート・ヘムHelge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No8

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「春到来」        

ドブロ好きにはたまらないのかも・・・・しかし私にとっては欲求不満

<Jazz>
Helge Lien, Knut Hem  「Hummingbird」
Ozella Music / Germ. / OZ079CD / 2018

Hummingbirdw

Knut Hem - Dobro / Weissenborn
Helge Lien - Piano


  このアルバムは、今年に入って早々にお目見えしたものだが、私の狙いはノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・プレイなのである。このところの彼は、昨年の前作であるヴァイオリニストのAdam Bałdychとの共作 『Brothers』(ACT9817-2)もそうだったが、今作も主役から降りて支え役のピアノ・プレイを披露している。おそらく・・・そうだろうと想像して、今まで聴かなかったのだが、少々暇になっての結果、ここに聴くに至ったというところなのである。

 中身はリエンと同国ノルウェーのクヌート・ヘムKnut Hem(1963年-) とのアコースティック・デュオ作品と言っているが、全く対等の両者のインタープレイの作品という印象は無い。それは相い対する楽器との性質が大いに関係するところなのであろうが、今回はリエンのピアノの相手は、ギターの発展形のようなドブロそしてワイゼンボーン(ラップスライドギター)という楽器であり、その結果がこの作品だ。このギター系の持つやや強烈なサウンドを前面においての演奏であるので、ピアノはサポート役に甘んじ、主役的メロディーを奏でるのはドプロということになっている。それもおそらくこのアルバムの目的としたるところであったのだろうと推察され、まあ不思議は無いとしておこう。

Hlkhw

(Tracklist)
1. Dis (03:58) *
2. Take Another Five (4:31)  *
3. Winterland (7:20) *
4. Moster (3:27) #
5. Music Box (2:57) *
6. Rafferty (5:41) *
7. We Hide and Seek (4:39)
8. Hummingbird (6:42) #
      (*印:Knut Hem  #印:Helge Lien)


Formhall112017holnsteiner049web 上のTracklistに見るように、曲はオリジナル曲が主体だが、クヌート・ヘムが5曲、ヘルゲ・リエンが2曲と、やはりこのアルバムの主役はヘムのドブロ/ワイゼンボーン(→)演奏とみてよいのだろう。やはり曲の展開はドブロが主役で、リエンのピアノはそれを支えるが如く、曲を優美に流している。
 とにかくドブロは高く強く響く。これが好きな人にはたまらないかも知れないが、私自身は好みからは外れるといったところ。(それって不思議なのだが、ロックとなれば、エレキ・ギターが泣いて、キー・ボードはそれを支えるパターンで納得するんですが)

 M4.". Moster"
と M.6" Rafferty" では、ようやく彼のピアノ・メロディが少々聴けるので、なんとなくホッとする。
 タイトル曲のM8." Hummingbird" はリエンの曲で、冒頭ピアノから入るが、彼のピアノの調べもドブロに打ち消される。いずれにしてもこの曲も穏やかに奏でられる美しい旋律が印象的なところだが、私としてはリエンのピアノの調べで聴きたいと思うのである。だが、なかなかそれも許されない。ここでも結局間奏程度に終わってしまう。

 このアルバムは、ゆったりとした優しくほのぼのとしたメロディーの美しい曲集である。にも関わらず、結局何だったんだろう?と、若干欲求不満に終わったアルバムでもあった。

 もともと私はよっぽどでないと、このようなギター系の楽器とピアノのデュオってあまり納得していない。それはピアノというものは、ギターやヴァイオリンとの関係では、その果たす役割が私の期待するところから薄れてしまう為かも知れない。
 ここに見るが如く、ピアノの音とドブロのアンプを通しての音との関係とは、ピアノの調べが優位と言うことには録音による工夫というか操作がない限りはやはりあり得ないと思う。そしてその結果はドブロの世界に落ち着くのである。それがどうも空しいというのは、つまるところ"私の個人的好み"から来るモノといって良いのだろうが、それを如実に示されたアルバムであった。
 お笑いであるが参考までに、・・・・ピアノにはやっぱりベースとドラムス(勿論、シンバルの音を含めて)が合いますね。だからその構成のピアノ・トリオが盛んなのでしょう。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(参考視聴) Knut Hem のDobro演奏

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2018年1月29日 (月)

ボボ・ステンソンBobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

久しぶりに巨匠のピアノの世界に浮遊

<Jazz>
Bobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

ECM / Germ / ECM2582 5786976 / 2018

Contralaindw

Bobo Stenson (piano)
Anders Jormin (double bass)
Jon Fält (drums)

Bstriow

  しばらく聴いていなかったため、なにか懐かしい気持ちになって聴いているスウェーデンのピアニストの巨匠ボボ・ステンソンのトリオ最新作。過去のアルバムにみせた耽美で叙情詩的な世界を落ち着いた中に構築し、しかしフリー・ジャズのニュアンスのある彼ら独自のインプロをハイレベルで三位一体で展開してみせることも忘れていないアルバムとなっている。この浮ついたところのない静かな世界は、新年の新たな出発にぴったりのアルバムだ。

Bobo_stensonw2(Tracklist)
1. Canción Contra La Indecisión (Silvio Rodriguez)
2. Doubt Thou The Stars (Anders Jormin )
3. Wedding Song From Poniky (Béla Bartók)
4. Three Shades Of A House (Anders Jormin )
5. Élégie (Erik Satie)
6. Canción Y Danza VI (Frederic Mompou)
7. Alice (Bobo Stenson )
8. Oktoberhavet (Anders Jormin )
9. Kalimba Impressions (Bobo Stenson, Anders Jormin, Jon Fält)
10. Stilla(Anders Jormin )
11. Hemingway Intonations(Anders Jormin )

 さて収録曲は上のようなところ。7曲は彼らのオリジナル(ベーシストのアンデルス・ヨルミンAnders Jormin はなんと5曲、ボボ・ステンソンBobo Stenson は1曲、トリオ3人での1曲)で、その他はサティ、バルトークのほかモンポウなどの曲がお目見えするが、意外やキューバのシルヴィオ・ロドリゲスの曲(アルパム・タイトル曲)が冒頭に登場する。
 とにかく、全てを知り尽くしたと言えるベテランのボボ・ステンソンのピアノには、静謐な美しさと共に乱れのない彼の築く空間の世界が厳然とこのアルバムにも構築されている。しかし今回も私は過去のアルバムから感じているところだが、ベーシストのヨルミンの果たしている役割が意外に大きいと思っているのだが・・・。

 M1. "Canción Contra La Indecisión"、ボボ・ステンソンの美しく思いの外明るいピアノのメロディーが展開。 
 M3. "Wedding Song From Poniky"は、 Béla Bartókの曲で、特にピアノの調べは、このアルバムでもピカイチの美しさにしばし我を忘れる。
 M2. "Doubt Thou The Stars"、 M8. "Oktoberhavet"などヨルミンによる曲では、彼のアルコ奏法に織り交ぜてのシンバルの繊細な響きも加わった美しい世界で、なかになか深遠で聴き応えある。
 M7. "Alice"は、ステンソンの曲だが、彼の特徴の一つでもあるECM的空間にフリー・ジャズとも言える世界を展開している。繊細なシンバルの響き、メロディというよりは静寂な空間を描くピアノの音、こうした味付けは過去にも見られた手法である。そしてこの曲と同時に、その後の3者によるM9. "Kalimba Impressions"も、そこにはトリオのインプロヴィゼーションによる静かな中に描くスリリングなインタープレイの味が聴き所だ。
 M10. "Stilla"は、彼らのジャズ心をトリオのそれぞれの味を交錯させての見事なアンサンブルを演じた1曲。

Reflectionsw_2 私は思い起こせば、ボボ・ステンソンを最初に聴いたのは、1996年のECM盤アルバム『Reflections』(ECM/ECM1516)(右上)であったかも知れない。あのアルバムは、美しさの漂う曲と共に、決して軟弱でない彼らの凜々しさを感じたアルバムであった事を思い出す。
 その後ニューヨークに進出してのドラマーにポール・モチアンを迎えてのこれもECM盤『Goodbye』(2005年リリース、2016年再発ECM/UCCU-5753)(右下)あたりは、その取り合わせに驚きつつもGoodbyew
キース・ジャレットとは又違った北欧の臭いのするフリー・ジャズの流れに感動して聴いたのだった。

 この今回のアルバムは、過去のものとの比較では、フリージャズの実験性の色合いは減少していて、ボボ・ステンソンの野心性は後退してはいるが、やはり美しさの中に描くハイレベルの空間の美はお見事と言わざるを得ない。

(参考)Bobo Stenson
 1944 年、スウェーデン出身。音楽一家に育つ。 10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねたようだ。 1970 年代には盟友ヤン・ガルバレクと共にカルテットで活動を開始、この頃は私はあまりマークして居らず、当時の作品は歴史的名盤と言われているが実のところ聴いていない。1971 年にはアリルド・アンデルセンとヨン・クリステンセンを迎え、自己のトリオを結成。 その後、トーマス・スタンコ、チャールズ・ロイドなどのグループにも参加。現在は、トリオとしてアンデルス・ヨルミンとヨン・フェルトと活動を続けている。このトリオは、北欧の自然をイメージする音楽的空間を描きつつ、音楽をプログレッシブな感覚で構築する現代最高のアンサンブルとして尊敬を集めていると言うのだ。ステンソンは既に70歳を越えており、キース・ジャレットと双璧をなす北欧の巨匠とされている。 

<Bobo Stenson Discography>
Underwear (ECM, 1971)
Reflections (ECM, 1993)
War Orphans (ECM, 1997)
Serenity (ECM, 1999)
Goodbye (ECM, 2005)
Cantando (ECM, 2007)
Indicum (ECM, 2012)
Contra la indecisión(2018)

The Sounds around the House, Piano Solo (Caprice Records, 1983)
Very Early (Dragon Records, 1987)
Solo Piano (La Sensazione, 1999)

(視聴)

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2018年1月18日 (木)

Trio X of Sweden  「Atonement」

( 2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-9 )

美メロによる快感と安心感・安堵感のアルバム
      ~良識ジャズの典型 ~

<Jazz>
Trio X of Sweden 「Atonement」
Prophone / SWE / PCD171 / 2017

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レナート・シモンソンLennart Simonsson(p)
パー・ヨハンソンPer V Johansson(b)
ヨアキム・エクバーグJoakim Ekberg(ds)

 レナート・シモンソン、パー・ヨハンソン、ヨアキム・エクバーグの3人によって2002年に結成されたピアノ・トリオ「Trio X of Sweden 」のニュー・アルバム。
 調べてみると、この「Trio X of Sweden」はスウェーデン中部のウプサラ県が地域の音楽文化を支える目的で主宰する「ウプランドの音楽(Musik i Uppland)」のアンサンブルのひとつと言うことだ。1987年に「Trio con X」として発足、2002年から現在の名称で活動しているとのこと。
 2012年に発表されたアルバム『Traumerei』は、クラシックをジャズアレンジした作品で好評を博したらしいが、私は未聴。ちょっと聴いてみたい気持ちになっている。
 今回のこの最新アルバムは、映画音楽やポピュラーミュージックをカヴァーして、シモンソンはじめ彼等のオリジナル曲をも適度に配して、とにかく優しく優雅に聴かせてくれる。アルバム・タイトルの『Atonement』とは”償い”という意味で、これには結構深い意味を込めているのかも知れない。美しくメロディアスでエレガントな作品である。

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(Tracklist)
1.  I skymningen (Wilhelm Peterson-Berger) たそがれに
2.  Somaoh (Lennart Simonsson)*
3.  Atonement (Lennart Simonsson)*
4.  Nå skrufva fiolen, Fredmans Epistel No 2 (Carl-Michael Bellman)
5.  Wedding March (Felix Mendelssohn) 結婚行進曲
6.  Urban Reconnection (Lennart Simonsson)*
7.  Vallflickans Dans (Hugo Alfvén) 羊飼いの娘の踊り
8.  Naomi (Per V Johansson)*
9.  Utskärgård (Bobbie Ericson)
10.  I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325 (Trad. Hymn)
11.  Liksom en herdinna, Fredmans Epistel No 80 (Carl-Michael Bellman) フレードマンの手紙
12.  Theme from Schindler’s List (John Williams) シンドラーのリストのテーマ
13.  Raindrops Keep Fallin’ on My Head (Burt Bacharach) 雨にぬれても
14.  The Mulberry Tree (Lennart Simonsson)*
15.  Send in the Clowns (Stephen Sondheim)
                   
 (*印:オリジナル曲)

  このトリオの演奏は、まずは癖が無いといったところをまず感じますね。対象の曲も確かにジャズ、クラシック、トラッド、ソウル、ポップ、ロックとオールラウンドにこなします。もちろんピアニストLennart Simonssonを中心としての彼らのオリジナル曲も5曲登場している。ポピュラーに知られた曲も、勿論彼らなりきの編曲やインプロヴィゼーションの導入などが成されているが極めてオーソドックスなものに感じるし、なにかジャズの教科書的演奏に聴こえてくるんです。

 オリジナル曲も非常に優しいし、聴く方には快感です。特にベーシストのヨハンソンの曲M8.  "Naomi" は、なにか懐かしいメロディーで、郷愁におそわれる。そんな思いに連れて行ってくれる良い曲ですね。ベースによるメロディー、それに続くピアノに取って代わるメロディー両者の美しさにホッとするところです。
 更にシモンソンのM14. " The Mulberry Tree "(Lennart Simonsson)は、そのピアノの奏でるやや不安げな美メロによるなかなかの名曲。
 又なんとM5. " Wedding March" (Felix Mendelssohn)結婚行進曲まで登場するが、これが又結構静かな思索的ジャズに変身なんですね、これはちょっと驚き。
 スウェーデンの賛美歌M10. " I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325"などにも心安まります。
 その他私にとってはジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリストのテーマ」M12.  "Theme from Schindler’s List" (John Williams)には美しさと懐かしさで参ったと言ったところです。

 こんな良識と快い響きと安心感の漂ったアルバムも珍しい。誰にでも勧められるアルバムです。

               - - - - - - - - - - - - - - -

<追記> 2018.1.29

714f2h8rhllw さっそく彼らの2012年のアルバム『Träumerei』(PROPHONE/PCD139)(→)を早速聴くことが出来ました。いやはやこれもにくいアルバムですね。冒頭にM1."Träumerei"が登場するも、美しい中にやっぱりジャズなんですね。トリオ・メンバーのインプロが展開します。そしてM3."Sound the Trumpet"でスウィングするジャズを惜しげも無く展開して圧倒してくる。これはうかうか油断成らないぞと思わせ、そしてその後美しいピアノ・トリオに名曲のオンパレードで又々引き込むのです。Mozartの M10."Lacrimsa"やBachのM11."Air"にはもうメロメロにされました。
  (Tracklist)
1.  Träumerei Robert Schumann 1810-1856 From Kinderscenen op 15
2.  Vid Frösö kyrka / At Frösö Church Wilhelm Peterson-Berger 1867-1942From Frösö Flowers
3.  Sound the Trumpet, Beat the Drum Henry Purcell 1659-1695 Welcome Ode for James II
4.  Aria Johann Sebastian Bach 1685-1750 From The Goldberg Variations
5.  Promenade Modest Musorgskij 1839-1881 From Pictures at an Exhibition
6.  Moonlight Sonata Ludwig van Beethoven 1770-1827 Sonata No 14 op 27, 1st Movement
7.  Roslagsvår / Swedish Polka Hugo Alfvén 1872-1960
8.  Boléro Maurice Ravel 1875-1937
9.  Largo Frédéric Chopin 1810-1849 From Preludes op 28
10.  Lacrimosa Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791 From Requiem K 626 / Drick ur ditt glas Carl-Michael Bellman 1740-1795 Epistel No 30
11.  Air Johann Sebastian Bach 1685-1750

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