北欧ジャズ

2018年6月25日 (月)

(検証シリーズ)ボボ・ステンソン・トリオBobo Stenson Trio検証 アルバム「Serenity」

フリー・ジャズの世界から・・・・何が生まれたか?

Contralaindw_2  このホボ・ステンソン・トリオ(スウェーデン)は、今年久々にリリースされた『Contra La indecisión』ECM2582 5786976)(→)が素晴らしかった。そして既に過去に聴いていた二作『Reflections』(1993)、『Goodbye』(2005)を参考に、今年1月にここで感想を少々書いたのだが、この歴史あるトリオを、もう少し聴き込んでみよう思った次第。

 もともと私はアルバムを一枚の作品として聴くタイプであるので、ライブものは避けることが有り、その為聴き逃していたモノがある。しかし考えて見ると、ライブものが意外にそのトリオのその姿を如実に示すと思い、過去の8枚のアルバムの中で、2000年リリースの2枚組ライブ・アルバム『Serenity』を、ここで今になってアプローチしたのである。

<Jazz>

Bobo Stenson Trio 「Serenity」
ECM / GERM / ECM 1740/41 / 2000

Serenity

Recorded April 1999 at HageGrden Music Center, Brunskog, Sweden
Recording Engineer : Åke Linton

Bobo Stenson : piano
Anders Jormin : double-bass
Jon Christensen : drums

12012 スウェーデンの人気ベテラン・ピアニスト、ボボ・ステンソン(1944-)のリーダー・アルバム。アンデルス・ヨルミンとヨン・クリステンセンによるレギュラー・トリオ作品。ライブ演奏盤だが、そこにみるは、インプロを交えての濃密なインタープレイが楽しめるフリー・ジャズの一つの発展形、なかなかテンションも高い。録音も素晴らしくちょっとライブ盤とは思えない緻密性を感ずる。
 既にベテラン中のベテランとなっている彼であるが、この18年前のアルバムにてもその一つの形を作り上げている。もともとフリー・ジャズと言う分野になろうかと思うが、ここにはあまり実験性というものは感じない。もしろこのスタイルによってトリオが主張する北欧の音楽界に存在する芸術性の結晶をみる思いである。
 そして恐ろしいのは、なんとボボ・ステンソンの演ずるピアノの音には濁りというモノとは全く縁の無い透明感のある音であり、そこも痺れるところである。しかも全編”不思議な耽美な世界”が存在している。
 ECM盤の特徴である”静的な世界”は当然存在しているのだが、決して単なるそこに終わるので無く、結構スリリングなトリオとしてのエネルギッシュな交錯も展開しているのだ。

2000

 印象としては、このアルバム『Serenity』及びこの前後の『Reflections』、『Goodbye』の2アルバムを含めての2000年前後の3作は、今年のアルバム『Contra La indecisión』よりは、さすがにバリバリの活動期にあっただけに、その演奏の緊迫性は高い。これらを経過しての今年のアルバムを聴き込むと、成る程ボボ・ステンソンの年齢と共に構築されて来た人生観が見えてくるように思う。近作の方がどちらかというとソフトな美学が感じられ、過去のものには緊迫性の美学が感じられるのである。

Ajorminw オリジナル曲が主体のアルバムだが、ベーシストのアンデルス・ヨルミン(→)がいずれのアルバムにおいても多くの曲を提供しており、彼の役割の重さも忘れてはならないと思う。近年ではドラムス担当が変わっているが、彼の場合は現在まで長くこのトリオを支えている。
 又2枚のCDに収録されている19曲の中でも、特に評判通りWayne ShorterのM8."Swee Pea"の繊細なシンバル、そしてアルコ奏法ベースからから始まって、おもむろにピアノの語りへとの流れ、続くM9. "Simple & Sweet"(Disc1)のベースへの展開の辺りは痺れます。 又M8. " Serenity"(Disc2)のような静穏な世界も彼らの特徴に思う。 

(Tracklist)
Disc 1
1.  T 
2.  West Print 
3.  North Print 
4.  East Print 
5.  South Print 
6.  Polska Of Despair (II) 
7.  Golden Rain 
8.  Swee Pea 
9.  Simple & Sweet 
10.  Der Pfalaumenbaum 

Disc 2
1.  El Mayor 
2.  Fader V (Father World) 
3.  More Cymbals 
4.  Extra Low 
5.  Die Nachtigal 
6.  Rimbaud Gedicht 
7.  Polska Of Despair (I) 
8.  Serenity 
9.  Tonus


  このような北欧のフリー・ジャズ世界は独特の世界を持っていて、それはこの基礎にある北欧ならではのトラッドからの流れとクラシック音楽との融合から発展したジヤズ感覚によって構築されている”進歩的味わい”というものが存在すると思うのである。

(評価)
□ 演奏、曲  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★★☆

(参考視聴 1990年代 Bobo Stenson Trio)

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2018年5月12日 (土)

ヨーナス・ハーヴィスト・トリオJoonas Haavisto Trioのニュー・アルバム「Gradation」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (我が家の庭から・・・・「モッコウバラ」   NikonD800/90mm/PL/May,2018)


北欧の世界を感じさせるコンテンポラリー・ジャズ

<Jazz>
Joonas Haavisto Trio「Gradation」
BLUE GLEAM / JPN / BG009 / 2018

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Joonas Haavisto : Piano
Antti Lötjönen : double bass
Joonas Riippa : Drums
Recorded December 17-19,2017 at Kallio-Kuninkala Studio, Järvenpää, Finland


 ヨーナス・ハーヴィスト(フィンランド)は北欧気鋭のピアニストだ。その4枚目のトリオ作が日本のBlue GLEAMレーベルからリリースされた。
 前作は日本でも好評の『Okuオク』(BLUE GLEAM/BG007)で、あれから2年ぶりとなる。日本の「奥」の世界をイメージしてのあの深遠なる演奏に再び触れたいと今作にも自ずから期待してしまう。今作は、ヨーナスのトリオ結成12年目の作品となるようだ。
 彼はなんと世界からの好評を受ける中、2017年には、あの名門ピアノ・メーカーのSteinway & Sonsの専属アーティストにもなったようだ。
 今作、収録全8曲(ハーヴィストのオリジナル7曲、トラディショナル1曲)で構成されたアルバムで、今回も何とも北欧の世界を感じさせるアルバムである。


Joonas001trw(Tracklist)
1.  Surge
2.  Moriens
3.  Sitka*
4.  Flight Mode
5.  Sigh
6.  Emigrantvisa
7.  Polar Night (Bonus Track )
8.  At The Dock

All compositions by Joonas Haavisto exept "6"(traditional)
Teemu Viinikainen : guitar (*印)

 過去の様式から一歩前進しての現代感覚で作り上げるジャズ芸術も多様化しているが、彼らのピアノ・トリオのジャンルはコンテンポラリー・ジャズというところに納まるのかも知れない。
 しかし美旋律ものというものではないが、北欧の自然からの美しい印象が流れてくる。新しいセンスのジャズを構築するのだが、所謂アヴァンギャルドという印象も無く、むしろ郷愁を誘うクラシックな深い世界を感じることが出来る。

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 M3. " Sitka"は、アラスカにある都市だそうだが、この曲のみ美しく優しいギターが加わってイメージを変える。それがこのアルバム・・トータルからみて、一つのアクセント効果をもたらしている。
 M4. " Flight Mode"のようにピアノのエネルギーを展開する曲もあるが、スウェーデンのトラッドというM6. " Emigrantvisa"は、なんとなく郷愁を誘うところがあって北欧の自然豊かな世界を想像させるに十分な曲だ。

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  相変わらずこのトリオは、過去に捕らわれない世界に挑戦しつつも、人の心をつかむ技に長けていて、なんとなく引き込まれていってしまう。そんなところが持ち味で、日本的な感覚にもマッチするところがポイントだ。

(評価)
□ 曲・ 演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴) Joonas Haavisto Trio

 

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2018年4月 4日 (水)

フロネシスPHRONESIS 「A LIVE」

[My Photo Album (瞬光残像)]   四月の高原

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「融雪の時」-1-


欧州情緒を秘めての緊迫感に圧倒される・・・・
現代感覚のモダン・ジャズ

<Jazz>
PHRONESIS 「A LIVE」
AGATE/Inpartmaint Inc./ JPN / AGIP-3608 / 2017

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Jasper Høiby (bass)
Ivo Neame (piano)
Mark Guiliana (drums)

 デンマーク出身のベーシスト・ジャスパー・ホイビー Jasper Høiby を中心にロンドンで活動するピアノトリオPHRONESISの2010年のUKツアーを収録したもので2枚組。
 これは2010年にリリースされた3rdアルバムだが、隠れた名作とされており、ここに国内にてCDリリースとなったらしい。ちなみにこのトリオは今日までに7枚のアルバムをリリースしている。

Jasperhoiby_dsc01w ジャスパー・ホイビー(→)は77年生まれで40歳、コペンハーゲンのベーシストであるが、メンバーは彼自身の活躍の場である英国におけるミュージシャンでの構成であるが、このアルバムはドラムスには、アヴィシャイ・コーエン・トリオの注目株の米国のマーク・ジュリアーナMark Guiliana が参加している。本来このトリオのメンバー構成はドラムスは、2007年の1stアルバム『Organe Warfare』からアントン・イガーAnton Egerとなっているが、この時は替わっている。又ピアノは、私はマークしていなかったのだが、英国の1981年生まれの若きサキソフォン奏者でもあるという現代ジャズ天才肌のマルチ奏者のアイヴォ・ニーム  Ivo Neame が担当している。
 近年はJasper Høiby、Ivo Neame、Anton Egerに落ち着いたトリオで、彼ららしい三者のバトルを繰り返している。(最近作『Parallax』(EDN1070))

(Tracklist)
▶Disc 1
1. Untitles #1
2. Blue Inspiration
3. French
4. Eight Hours
5. Abraham’s New Gift
6. Rue Cinq Diamants
7. Happy Notes
8. Love Songs
▶Disc 2
1. Untitled #2
2. Smoking the Camel
    (all music by Jasper Høiby)


Giuliana_markimage1w_2 とにかく優しいピアノ・トリオではない。ここではジャスパー・ホイビーの重低音ベースが響き渡るが、マーク・ジュリアーナ(→)のドラムスも決して奥に引っ込んでいないで明解にリズムを刻む。ピアノ・トリオではあるが、ピアノ主役にしてドラムス、ベースがバックのリズム隊として支えていくというパターンではない。見事な三者対等のインター・プレイだ。録音もピアノだけがいやに前に出ているのでなく、三者が対等にその位置を確保され明解にそのプレイが聴く事が出来る。ライブ録音であるため時折会場のオーディエンスの音が入るがそれ程気になるほどでなくうまく仕上げている。

 しかしライブだけあって、長曲が多い。10分以上が5曲ある(Disc1-M2, M5, M7, M8, Disc2-M2 )。それだけ三者それぞれが納得の演奏で仕上げにもっていってのトリオ作品とみる。
 
  全曲リーダーのジャスパー・ホイビーの作曲。ユーロ独特のピアノの哀愁ある美旋律でうっとりというタイプでなく、ピアノの響きはやはりどこか哀感を含んだ響きを繰り返す中に、ベースは独自の低音を響かせるのだが、なんとそれはしっかり融合して聴くものに快感を味合わせてくれる。そしてこれに又ドラムス、シンバルの響きが的確に誘導していくパターンはスリリングで緊迫感あってにくいところだ。

 特にハイテンポで疾走感あるベースに平行してドラムスのステック音が共鳴し、そこにピアノが乗ってくるM5."Abraham’s New Gift"では、10分の中に、ベース、ピアノ、ドラムスの順にそれぞれの締める位置が明確に演じきり、聴く者にとっての緊張感と共に、十二分にトリオのインター・プレイが次第に天空に昇華する気分を楽しませてくれる。

Ivo2 M6."Rue Cinq Diamants"は、静かに美しいアイヴォ・ニーム(→)のピアノ・プレイから始まって、ドラムスの響きが緊張感を高めて行く。そして中盤にはベースがやはり深遠な世界を描いて次第に三者の交錯は格調高く展開。
 とかく全曲無駄なしのトリオ・アンサンブルが光り、つい引き込まれてしまう。
 最後の締めくくりDisc2-M2."Smoking the Camel"は、どことなく哀感あるピアノ旋律、響くベース音、シンバル音がメリハリを付ける・・・・といったなかなか深遠な流れから始まって、中盤のドラムス・ソロが次に来る三者のアンサンブルの妙を暗示する。後半もスティックが軽快な流れを聴かせてのドラムスのソロが説得力をみせ、そして三者の競演に展開。これぞジャズと思わせる。

 成る程このアルバムは、ユーロのロマンとスリリングな現代ジャズを演ずるピアノ・トリオの隠れた名作と言うのが解るところ、お勧めだ。

(評価)
□ 曲・演奏    ★★★★★
□ 録音    ★★★★☆


(視聴)

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2018年3月27日 (火)

ヘルゲ・リエン&クヌート・ヘムHelge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No8

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「春到来」        

ドブロ好きにはたまらないのかも・・・・しかし私にとっては欲求不満

<Jazz>
Helge Lien, Knut Hem  「Hummingbird」
Ozella Music / Germ. / OZ079CD / 2018

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Knut Hem - Dobro / Weissenborn
Helge Lien - Piano


  このアルバムは、今年に入って早々にお目見えしたものだが、私の狙いはノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・プレイなのである。このところの彼は、昨年の前作であるヴァイオリニストのAdam Bałdychとの共作 『Brothers』(ACT9817-2)もそうだったが、今作も主役から降りて支え役のピアノ・プレイを披露している。おそらく・・・そうだろうと想像して、今まで聴かなかったのだが、少々暇になっての結果、ここに聴くに至ったというところなのである。

 中身はリエンと同国ノルウェーのクヌート・ヘムKnut Hem(1963年-) とのアコースティック・デュオ作品と言っているが、全く対等の両者のインタープレイの作品という印象は無い。それは相い対する楽器との性質が大いに関係するところなのであろうが、今回はリエンのピアノの相手は、ギターの発展形のようなドブロそしてワイゼンボーン(ラップスライドギター)という楽器であり、その結果がこの作品だ。このギター系の持つやや強烈なサウンドを前面においての演奏であるので、ピアノはサポート役に甘んじ、主役的メロディーを奏でるのはドプロということになっている。それもおそらくこのアルバムの目的としたるところであったのだろうと推察され、まあ不思議は無いとしておこう。

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(Tracklist)
1. Dis (03:58) *
2. Take Another Five (4:31)  *
3. Winterland (7:20) *
4. Moster (3:27) #
5. Music Box (2:57) *
6. Rafferty (5:41) *
7. We Hide and Seek (4:39)
8. Hummingbird (6:42) #
      (*印:Knut Hem  #印:Helge Lien)


Formhall112017holnsteiner049web 上のTracklistに見るように、曲はオリジナル曲が主体だが、クヌート・ヘムが5曲、ヘルゲ・リエンが2曲と、やはりこのアルバムの主役はヘムのドブロ/ワイゼンボーン(→)演奏とみてよいのだろう。やはり曲の展開はドブロが主役で、リエンのピアノはそれを支えるが如く、曲を優美に流している。
 とにかくドブロは高く強く響く。これが好きな人にはたまらないかも知れないが、私自身は好みからは外れるといったところ。(それって不思議なのだが、ロックとなれば、エレキ・ギターが泣いて、キー・ボードはそれを支えるパターンで納得するんですが)

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と M.6" Rafferty" では、ようやく彼のピアノ・メロディが少々聴けるので、なんとなくホッとする。
 タイトル曲のM8." Hummingbird" はリエンの曲で、冒頭ピアノから入るが、彼のピアノの調べもドブロに打ち消される。いずれにしてもこの曲も穏やかに奏でられる美しい旋律が印象的なところだが、私としてはリエンのピアノの調べで聴きたいと思うのである。だが、なかなかそれも許されない。ここでも結局間奏程度に終わってしまう。

 このアルバムは、ゆったりとした優しくほのぼのとしたメロディーの美しい曲集である。にも関わらず、結局何だったんだろう?と、若干欲求不満に終わったアルバムでもあった。

 もともと私はよっぽどでないと、このようなギター系の楽器とピアノのデュオってあまり納得していない。それはピアノというものは、ギターやヴァイオリンとの関係では、その果たす役割が私の期待するところから薄れてしまう為かも知れない。
 ここに見るが如く、ピアノの音とドブロのアンプを通しての音との関係とは、ピアノの調べが優位と言うことには録音による工夫というか操作がない限りはやはりあり得ないと思う。そしてその結果はドブロの世界に落ち着くのである。それがどうも空しいというのは、つまるところ"私の個人的好み"から来るモノといって良いのだろうが、それを如実に示されたアルバムであった。
 お笑いであるが参考までに、・・・・ピアノにはやっぱりベースとドラムス(勿論、シンバルの音を含めて)が合いますね。だからその構成のピアノ・トリオが盛んなのでしょう。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(参考視聴) Knut Hem のDobro演奏

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2018年1月29日 (月)

ボボ・ステンソンBobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

久しぶりに巨匠のピアノの世界に浮遊

<Jazz>
Bobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

ECM / Germ / ECM2582 5786976 / 2018

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Bobo Stenson (piano)
Anders Jormin (double bass)
Jon Fält (drums)

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  しばらく聴いていなかったため、なにか懐かしい気持ちになって聴いているスウェーデンのピアニストの巨匠ボボ・ステンソンのトリオ最新作。過去のアルバムにみせた耽美で叙情詩的な世界を落ち着いた中に構築し、しかしフリー・ジャズのニュアンスのある彼ら独自のインプロをハイレベルで三位一体で展開してみせることも忘れていないアルバムとなっている。この浮ついたところのない静かな世界は、新年の新たな出発にぴったりのアルバムだ。

Bobo_stensonw2(Tracklist)
1. Canción Contra La Indecisión (Silvio Rodriguez)
2. Doubt Thou The Stars (Anders Jormin )
3. Wedding Song From Poniky (Béla Bartók)
4. Three Shades Of A House (Anders Jormin )
5. Élégie (Erik Satie)
6. Canción Y Danza VI (Frederic Mompou)
7. Alice (Bobo Stenson )
8. Oktoberhavet (Anders Jormin )
9. Kalimba Impressions (Bobo Stenson, Anders Jormin, Jon Fält)
10. Stilla(Anders Jormin )
11. Hemingway Intonations(Anders Jormin )

 さて収録曲は上のようなところ。7曲は彼らのオリジナル(ベーシストのアンデルス・ヨルミンAnders Jormin はなんと5曲、ボボ・ステンソンBobo Stenson は1曲、トリオ3人での1曲)で、その他はサティ、バルトークのほかモンポウなどの曲がお目見えするが、意外やキューバのシルヴィオ・ロドリゲスの曲(アルパム・タイトル曲)が冒頭に登場する。
 とにかく、全てを知り尽くしたと言えるベテランのボボ・ステンソンのピアノには、静謐な美しさと共に乱れのない彼の築く空間の世界が厳然とこのアルバムにも構築されている。しかし今回も私は過去のアルバムから感じているところだが、ベーシストのヨルミンの果たしている役割が意外に大きいと思っているのだが・・・。

 M1. "Canción Contra La Indecisión"、ボボ・ステンソンの美しく思いの外明るいピアノのメロディーが展開。 
 M3. "Wedding Song From Poniky"は、 Béla Bartókの曲で、特にピアノの調べは、このアルバムでもピカイチの美しさにしばし我を忘れる。
 M2. "Doubt Thou The Stars"、 M8. "Oktoberhavet"などヨルミンによる曲では、彼のアルコ奏法に織り交ぜてのシンバルの繊細な響きも加わった美しい世界で、なかになか深遠で聴き応えある。
 M7. "Alice"は、ステンソンの曲だが、彼の特徴の一つでもあるECM的空間にフリー・ジャズとも言える世界を展開している。繊細なシンバルの響き、メロディというよりは静寂な空間を描くピアノの音、こうした味付けは過去にも見られた手法である。そしてこの曲と同時に、その後の3者によるM9. "Kalimba Impressions"も、そこにはトリオのインプロヴィゼーションによる静かな中に描くスリリングなインタープレイの味が聴き所だ。
 M10. "Stilla"は、彼らのジャズ心をトリオのそれぞれの味を交錯させての見事なアンサンブルを演じた1曲。

Reflectionsw_2 私は思い起こせば、ボボ・ステンソンを最初に聴いたのは、1996年のECM盤アルバム『Reflections』(ECM/ECM1516)(右上)であったかも知れない。あのアルバムは、美しさの漂う曲と共に、決して軟弱でない彼らの凜々しさを感じたアルバムであった事を思い出す。
 その後ニューヨークに進出してのドラマーにポール・モチアンを迎えてのこれもECM盤『Goodbye』(2005年リリース、2016年再発ECM/UCCU-5753)(右下)あたりは、その取り合わせに驚きつつもGoodbyew
キース・ジャレットとは又違った北欧の臭いのするフリー・ジャズの流れに感動して聴いたのだった。

 この今回のアルバムは、過去のものとの比較では、フリージャズの実験性の色合いは減少していて、ボボ・ステンソンの野心性は後退してはいるが、やはり美しさの中に描くハイレベルの空間の美はお見事と言わざるを得ない。

(参考)Bobo Stenson
 1944 年、スウェーデン出身。音楽一家に育つ。 10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねたようだ。 1970 年代には盟友ヤン・ガルバレクと共にカルテットで活動を開始、この頃は私はあまりマークして居らず、当時の作品は歴史的名盤と言われているが実のところ聴いていない。1971 年にはアリルド・アンデルセンとヨン・クリステンセンを迎え、自己のトリオを結成。 その後、トーマス・スタンコ、チャールズ・ロイドなどのグループにも参加。現在は、トリオとしてアンデルス・ヨルミンとヨン・フェルトと活動を続けている。このトリオは、北欧の自然をイメージする音楽的空間を描きつつ、音楽をプログレッシブな感覚で構築する現代最高のアンサンブルとして尊敬を集めていると言うのだ。ステンソンは既に70歳を越えており、キース・ジャレットと双璧をなす北欧の巨匠とされている。 

<Bobo Stenson Discography>
Underwear (ECM, 1971)
Reflections (ECM, 1993)
War Orphans (ECM, 1997)
Serenity (ECM, 1999)
Goodbye (ECM, 2005)
Cantando (ECM, 2007)
Indicum (ECM, 2012)
Contra la indecisión(2018)

The Sounds around the House, Piano Solo (Caprice Records, 1983)
Very Early (Dragon Records, 1987)
Solo Piano (La Sensazione, 1999)

(視聴)

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2018年1月18日 (木)

Trio X of Sweden  「Atonement」

( 2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-9 )

美メロによる快感と安心感・安堵感のアルバム
      ~良識ジャズの典型 ~

<Jazz>
Trio X of Sweden 「Atonement」
Prophone / SWE / PCD171 / 2017

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レナート・シモンソンLennart Simonsson(p)
パー・ヨハンソンPer V Johansson(b)
ヨアキム・エクバーグJoakim Ekberg(ds)

 レナート・シモンソン、パー・ヨハンソン、ヨアキム・エクバーグの3人によって2002年に結成されたピアノ・トリオ「Trio X of Sweden 」のニュー・アルバム。
 調べてみると、この「Trio X of Sweden」はスウェーデン中部のウプサラ県が地域の音楽文化を支える目的で主宰する「ウプランドの音楽(Musik i Uppland)」のアンサンブルのひとつと言うことだ。1987年に「Trio con X」として発足、2002年から現在の名称で活動しているとのこと。
 2012年に発表されたアルバム『Traumerei』は、クラシックをジャズアレンジした作品で好評を博したらしいが、私は未聴。ちょっと聴いてみたい気持ちになっている。
 今回のこの最新アルバムは、映画音楽やポピュラーミュージックをカヴァーして、シモンソンはじめ彼等のオリジナル曲をも適度に配して、とにかく優しく優雅に聴かせてくれる。アルバム・タイトルの『Atonement』とは”償い”という意味で、これには結構深い意味を込めているのかも知れない。美しくメロディアスでエレガントな作品である。

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(Tracklist)
1.  I skymningen (Wilhelm Peterson-Berger) たそがれに
2.  Somaoh (Lennart Simonsson)*
3.  Atonement (Lennart Simonsson)*
4.  Nå skrufva fiolen, Fredmans Epistel No 2 (Carl-Michael Bellman)
5.  Wedding March (Felix Mendelssohn) 結婚行進曲
6.  Urban Reconnection (Lennart Simonsson)*
7.  Vallflickans Dans (Hugo Alfvén) 羊飼いの娘の踊り
8.  Naomi (Per V Johansson)*
9.  Utskärgård (Bobbie Ericson)
10.  I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325 (Trad. Hymn)
11.  Liksom en herdinna, Fredmans Epistel No 80 (Carl-Michael Bellman) フレードマンの手紙
12.  Theme from Schindler’s List (John Williams) シンドラーのリストのテーマ
13.  Raindrops Keep Fallin’ on My Head (Burt Bacharach) 雨にぬれても
14.  The Mulberry Tree (Lennart Simonsson)*
15.  Send in the Clowns (Stephen Sondheim)
                   
 (*印:オリジナル曲)

  このトリオの演奏は、まずは癖が無いといったところをまず感じますね。対象の曲も確かにジャズ、クラシック、トラッド、ソウル、ポップ、ロックとオールラウンドにこなします。もちろんピアニストLennart Simonssonを中心としての彼らのオリジナル曲も5曲登場している。ポピュラーに知られた曲も、勿論彼らなりきの編曲やインプロヴィゼーションの導入などが成されているが極めてオーソドックスなものに感じるし、なにかジャズの教科書的演奏に聴こえてくるんです。

 オリジナル曲も非常に優しいし、聴く方には快感です。特にベーシストのヨハンソンの曲M8.  "Naomi" は、なにか懐かしいメロディーで、郷愁におそわれる。そんな思いに連れて行ってくれる良い曲ですね。ベースによるメロディー、それに続くピアノに取って代わるメロディー両者の美しさにホッとするところです。
 更にシモンソンのM14. " The Mulberry Tree "(Lennart Simonsson)は、そのピアノの奏でるやや不安げな美メロによるなかなかの名曲。
 又なんとM5. " Wedding March" (Felix Mendelssohn)結婚行進曲まで登場するが、これが又結構静かな思索的ジャズに変身なんですね、これはちょっと驚き。
 スウェーデンの賛美歌M10. " I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325"などにも心安まります。
 その他私にとってはジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリストのテーマ」M12.  "Theme from Schindler’s List" (John Williams)には美しさと懐かしさで参ったと言ったところです。

 こんな良識と快い響きと安心感の漂ったアルバムも珍しい。誰にでも勧められるアルバムです。

               - - - - - - - - - - - - - - -

<追記> 2018.1.29

714f2h8rhllw さっそく彼らの2012年のアルバム『Träumerei』(PROPHONE/PCD139)(→)を早速聴くことが出来ました。いやはやこれもにくいアルバムですね。冒頭にM1."Träumerei"が登場するも、美しい中にやっぱりジャズなんですね。トリオ・メンバーのインプロが展開します。そしてM3."Sound the Trumpet"でスウィングするジャズを惜しげも無く展開して圧倒してくる。これはうかうか油断成らないぞと思わせ、そしてその後美しいピアノ・トリオに名曲のオンパレードで又々引き込むのです。Mozartの M10."Lacrimsa"やBachのM11."Air"にはもうメロメロにされました。
  (Tracklist)
1.  Träumerei Robert Schumann 1810-1856 From Kinderscenen op 15
2.  Vid Frösö kyrka / At Frösö Church Wilhelm Peterson-Berger 1867-1942From Frösö Flowers
3.  Sound the Trumpet, Beat the Drum Henry Purcell 1659-1695 Welcome Ode for James II
4.  Aria Johann Sebastian Bach 1685-1750 From The Goldberg Variations
5.  Promenade Modest Musorgskij 1839-1881 From Pictures at an Exhibition
6.  Moonlight Sonata Ludwig van Beethoven 1770-1827 Sonata No 14 op 27, 1st Movement
7.  Roslagsvår / Swedish Polka Hugo Alfvén 1872-1960
8.  Boléro Maurice Ravel 1875-1937
9.  Largo Frédéric Chopin 1810-1849 From Preludes op 28
10.  Lacrimosa Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791 From Requiem K 626 / Drick ur ditt glas Carl-Michael Bellman 1740-1795 Epistel No 30
11.  Air Johann Sebastian Bach 1685-1750

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    2018年1月11日 (木)

    エスペン・バルグ・トリオEspen Berg Trio「Bølge」

    (2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-8

    美意識が支配する中にモダニズムを追求する静と動の交錯

    <Jazz>
    Espen Berg Trio「Bølge」
    BLUE GLEAM / JAPAN / BG008/ 2017


    51tiembhujl

    Espen Berg (p)
    Barour Reinert Poulsen (b)
    Simon Olderskog Albertsen (ds)

    Recorded at  Rainbow Studio, Oslo, Norway

     2016年にここでアルバム『モンステルmønster』(BlueGleam/JPN/BG-006/2015)を紹介したノルウェーの気鋭ピアニストの第2弾だ。彼らは2016年ジャパン・ツアーを行って、高評価を得ている。
     相変わらず憂いを湛えたリリシズムと静謐な美意識が支配する中にモダニズムを追求する静と動の交錯する3者のインタープレイが楽しめるアルバムである。ブラッド・メルドーエスビョルン・スベンソンの影響を受けていると言われておりその先進性を追求する姿勢も諾(うべな)るかなと言うところだ。

    1004670(Tracklist)
    1. Hounds of Winter
    2. Maetrix 
    3. XIII
    4. Bølge
    5. Tredje
    6. Cadae
    7. For Now
    8. Bridges
    9. Skoddefall
    10. Climbing
    11. Vandringsmann (Bonus Track)
    12. Scarborough Fair (Bonus Track)


     オープニングのM1. "Hounds of Winter"は、スタートから美しさと静かさとそして安定感をもって安堵感を醸し出してくれる。しかし中盤からはテンポを早めての変調して流麗なピアノの流れとアンサンブルの妙を見せる演奏、これが"Hounds"の姿なのか。そしてハイテンポのM2. "Maetrix"へと流れる。
     さてこのアルバム・タイトルの「Bølge」というのは、ノルウェー語で「波」を意味しているとか、なるほど寄せては返すという曲の流れを表現しているものと思われるがそんな世界を堪能できる。
      とにかくそのM4. "Bølge"の約7分の曲は彼らの真骨頂の美しさだ。「波」と言っても高い荒々しい波でなく、静かに広がりをもって寄せてくる人の心に精神的安定感と幸福感に満たしてくれる情景だ。この曲でこのアルバムは私のお気に入りとなるんです。
     しかし一方M6. "Cadae"に見るようなトリッキーにして荒々しくポリリズムの描くところ、彼らの尋常ならぬインタープレイの境地を示している。
     そして続くM7. "For Now"の反転しての美しい落ち着きの世界へと繋がり、自然と人間との交わりの中から描く情景に心を奪われる。
     M8. "Bridges"、M9. "Skoddefall"を聴くと、なるほど彼らのジャズ心はこんな複雑なアンサンブルのある先進性のあるところに目指していることが知ることが出来る。
     Bonus Trackとして聴き慣れたM12. "Scarborough Fair" が登場するが、流麗なピアノ・プレイを聴かせ編曲の妙を見せる。

     とにかく美しい旋律や哀感のある情景のみに浸ろうとすると、複雑な変拍子やポリリズムがパンチを浴びせてくる。しかしそれはあくまでも美しい世界を構築する彼らの目指す方法論としての重要な役割の一つとして果たしていることなのだろう。こうしたハイレベルな現代主義的トリオ・ジャズはこれからも注目のところにあると言える。

    (視聴)

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    2018年1月 5日 (金)

     (新年第2弾) ヨーナ・トイヴァネン・トリオJoona Toivanen Trio 「XX」

    音の余韻を生かし透明感と共に深遠なる世界を描く

    <Jazz>

    JOONA TOIVANEN TRIO 「XX」
    CAM JAZZ / ITA / CAMJ7920-2 / 2017

    71hfsyvvadlxx

    Joona Toivanen (p)
    Tapani Toivanen (b)
    Olavi Louhivuori (ds)
    Recorded and mixed Cavalico on 31 May,1-2 June 2017 at Artesuono Recording Studio
    Recording & Miixing engineer Stefano Amerio

    Numurkah 澤野工房からの『Numurkah』(ATELIER SAWANO022 / 2000 (→))がリリースされて、我々も知ることになった若きメンバーのヨーナ・トイヴァネン・ピアノ・トリオ。全てを自らのオリジナル曲で網羅し、美しいピアノの流れに圧倒されたのだが、フィンランド生まれでスウェーデンで活躍中のトリオだ。今は嬉しいことにCAM JAZZから確実にニュー・アルバムをリリースしている。
      ここでも過去に取りあげた如く、このトリオの前作は2014年の『NOVEMBER』(CAMJ7878)で、更に最近は、ヨーナ・トイヴァネン自身のピアノ・ヒロ・アルバム『LONE ROOM』(CAMJ7904/2016)のリリースもあった。

    Miikkapirinen6650w

     トリオ・リーダーのヨーナ・トイヴァネンは1981年フィンランド生まれで、今年は30歳代後半に入ったところ。トリオは、弟であるタパニ(b)と、同級生だったオラヴィ・ルーヒヴオリ(ds)と共に1997年にフィンランドで10代に結成。過去に拘らない若さで、コンテンポラリーな雰囲気のある中に北欧独特のアンビエントな世界を描くジャズを持ち味として私もお気に入りのトリオだ。これはその不変のトリオのCAM JAZZからの3年ぶりのアルバムで、エンジニアとして今売り出しのステファノ・アメリオが担当している。
     そう言えば、ドラマーのオラヴィ・ルーヒヴオリは、ベテランの「トーマス・スタンコ・カルテット」にも加わっていて、今やスウェーデンでは名ドラマーの仲間入りか。

    Joonatoivanentriow(Tracklist)
    1. Polaroid (J. Toivanen)
    2. Robots (O. Louhivuori)
    3. Grayscape I (J. Toivanen)
    4. Grayscape II (J. Toivanen)
    5. Lament (J. Toivanen)
    6. The Owl (O. Louhivuori)
    7. Gemini (T. Toivanen)
    8. Seconds Before (J. Toivanen)
    9. Orion (J. Toivanen)
    10. Trails (T. Toivanen)
    11. Mt. Juliet (O. Louhivuori)

     収録リストを見ても、全11曲全て彼らのオリジナルに徹している。
     このアルバムもそうなのだが、北欧独特の叙情性を感じさせるプレイは、ピアノも打音が少なく、余韻を味わうべく透明感の高いどちらかというと「静」を描いている。このスタイルは、若さとは裏腹という感じで、つまるところ深遠なる世界を描くのである。
     又、時にピアノの弦も操作(ミュート)によってメロディーを流すことも有り、コンテンポラリーな世界も構築したりする。そんな中での北欧の都会とは離れた大自然の雰囲気すらも醸し出すところはお見事。ベースもアルコ奏法も交えて広がりと深みを構築する。更にドラマーのルーヒヴオリの曲M6."The Owl "にみるように、ドラムスによる描くところも如何にも北欧の自然を脳裏に浮かばせる一打一打の音に魂を込めているところは感動だ。とにかく曲作りの根本は、3者の演ずる音一つ一つをしっかりと聴かせる手法で構築する。聴く方もそんな流れに自然に集中してしまうのである。
     ところどころこのアルバムではミニマル奏法的なところが見受けられるが、曲の流れを次第に盛り上げていく手法としての一つだろうが、あまり拘るところがなく、アンビエントな世界に流して行くとこにおいては適量で納めている。このようなところも若さを感じさせないテクニシャンぶりには驚かされるのだ。

     こんな若き彼らの描く深遠なる世界で新年を迎えて心を新たにしているのである。

    (視聴)  "Polaroid"

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    2017年12月30日 (土)

    2017年の別れに・・・・・ブッゲ・ヴェッセルトフトBugge Wesseltoft のピアノ・ソロ「Everybody Loves Angels」

    2017年 さようなら・・・・・・・

    Tr3w
     (Togakushiyama, Takatumayama)

     今年もいろいろと有り難うございました。

                   *          *          *          *


    これはまさに『It’s Snowing On My Piano』の続編だ!

    <Jazz>

    Bugge Wesseltoft 「Everybody Loves Angels」

    ACT / Germ / ACT 9847-2 / 2017

    22045804_10154

    Bugge Wesseltoft (piano solo)
    Recorded at LofotKatedralen, Lofoten, Norway,Feb.24-26,2017

    Buugepianow ブッゲ・ヴェッセルトフトのアルバム『It’s Snowing On My Piano』 (ACT 9260-2(→))から20年になるんですね。もっともあのピアノ・ソロ・アルバムを私が聴いたのは遅まきながら2年前なんですけど・・・・このアルバムはまさににその続編です。とにかくこれは誰が聴いても静謐にして美しくそして静かな世界に浸れます。安息の世界ですね。
     このアルバムの収録は、ノルウェイの北部、ロフォーテル諸島の教会で行われたとか(末尾の「視聴」参照)、そこはブッゲの祖父の生まれ育った土地で、厳寒の地であると同時に美しい自然の地であるようですね。

    Wesseltoft3_byw(Tracklist)
    1. Es sungen drei Engel (traditional & Bugge Wesseltoft)
    2. Bridge Over Troubled Water (Paul Simon)
    3. Koral (Johann Sebastian Bach & Bugge Wesseltoft)
    4. Angel (Jimi Hendrix)
    5. Reflecting (Bugge Wesseltoft)
    6. Morning Has Broken (Cat Stevens)
    7. Salme (Christoph Ernst Friedrich Weyse & Bugge Wesseltoft)
    8. Blowing In The Wind (Bob Dylan)
    9. Angie (Mick Jagger & Keith Richard)
    10. Locked Out Of Heaven (Bruno Mars, Philip Lawrence & Ari Levine)
    11. Let It Be (John Lennon & Paul McCartney)

     これは当にブッゲ・ヴェッセルトフトの究極のソロ・ピアノ・プロジェクトと言って良いです。何処かに書いてありましたが確かに「音楽の聖域」とも言って良いくらいの世界感に満ちていて虜になってしまう。

    1935404_132685463353_4155409_n 取りあげた曲はトラディショナルもあるが、彼の経歴から見れば当然と言えるポール・サイモンの"明日に架ける橋"から始まって、ジョン・レノン&ポール・マッカートニーの"レット・イツ・ビー"、ボブ・ディランの"風に吹かれて"、キャット・スティーヴンス"雨にぬれた朝"、ジミ・ヘンドリックスの"エンジェル"、またブルーノ・マーズ"天国の外"といったロックやフォーク系のポピュラーな代表曲から、バッハの楽曲へと広く多彩な曲群を取りあげている。しかし不思議に彼のソロ・ピアノ・プレイのマジックによって、全く異なった深遠なる静謐にして美しくしかも何か人間的な暖かさを感ずる世界に導かれるのである。
      何時までもふと思い出して聴いてゆきたいアルバムだ。

              *          *          *          *

     さて、今年2017年も結局のところ、いろいろと騒がしい一年でした。何か「不安」が蓄積した一年とも言えると思います。
     特に気になることは、日本はじめ世界が過去の反省の歴史が薄らいで、何か又逆行が始まっているのではと心配するところです。来る年はそんな「不安」が一掃できる年であって欲しいと願っています。

     そんな事をふと頭をよぎらせつつ、昨年同様に、今年もユーロ・ジャズからこのアルバムで、心を落ち着かせ美しい静かな世界の中で来る新年を迎えたいと思います。
     このブログは、今年はこれで一つの締めにいたします。
     今年も、この拙いブログを見て頂き、そしていろいろな感想やご意見ご示唆を頂いた諸兄に改めてここに感謝いたします。来る新年もよろしくお願いします。それでは皆様良いお年をお迎えください。 (photofloyd(風呂井戸))

    (視聴)

     

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    2017年12月 5日 (火)

    シーネ・エイSinne Eegのニュー・アルバム「DREAMS」

    北欧美人がしっとりと描くジャズ世界

    <Jazz>
    Sinne Eeg 「DREAMS」
    Victor Entertainment / JPN / VICJ-61764 / 2017

    Dreams

    Sinne Eeg シーネ・エイ(vocal)
    Jacob Christoffersen ヤコブ・クリストファーセン(piano)
    Larry Koones ラリー・クーンズ(guitar)
    Scott Colley スコット・コリー(bass)
    Joey Baron ジョーイ・バロン(drums)
    Add.Vocals:Sinne Eeg,Warny Mandrup,Lasse Nlsson,Jenny Nilsson

      デンマークの人気美人歌手シーネ・エイのニュー・アルバムの登場だ。彼女は10年前に2007年の『Waiting For Dawn』と2010年の『Don't Be So Blue』でデニッシュ・ミュージック・アワード「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム」を受賞して、自国のデンマークでは既に押しも押されぬ人気歌手。そして世界で注目されることとなるのだが、そして今やベテランの雰囲気すらある(体格もネ)。日本でも人気ジャズ歌手だ。
     私の印象では、意外に北欧にしては不思議にアメリカ風のジャズを展開する彼女だが、このアルバムも私にはそんな印象の部分が多く聴かれる。彼女を支える演奏人は、お決まりのピアニストはデンマークのヤコブ・クリストファーセンで、残るクインテットのメンバーは、ラリー・クーンズ(g)、スコット・コリー(b)、ジョーイ・バロン(ds)などアメリカのミュージシャンである。

    Sinneeegw

     そして収録曲は、シーネ作詞作曲のオリジナルが6曲登場するというなかなかの才女ぶりを発揮している。その他はジャズ・スタンダード5曲が演じられる。

    (Tracklist)
    1 ビター・エンド *
    2 ヘッド・オーヴァー・ハイ・ヒールズ*
    3 ラヴ・ソング *
    4 恋とは何でしょう
    5 フォーリング・イン・ラヴ
    6 ドリームス *
    7  アレッポ *
    8  タイム・トゥ・ゴー *
    9 四月の思い出
    10 エニシング・ゴーズ
    11 オン・ア・クリア・デイ(日本盤ボーナス・トラック) 
               (*印:Sinne Eagのオリジナル曲)

    Sinneeegprisw3 オープニングから米国ムードが漂うのだが、刺激的と言うよりは優しくじわっと感じさせるタイプは相変わらずだ。年齢も多分中年になっていてその声質も重みが増してきた。中盤のアルバム・タイトル曲のM6."Dreams"、そして続くM7."Aleppo"、M8"Time To Go"の一連の彼女のオリジナル曲を聴くと、そうはいってもやっぱり何となく物思いの世界に導く北欧ならではの雰囲気が溢れている。このあたりが彼女の一つの聴かせどころなんだろうか。
     とにかく全編を通して、しっとりとした女性独特の世界が感じられる。そんなアルバムであってやっぱり日本人にはこれからもかなり支持を得て行く事は間違いない。しかしファンには叱られそうだが、私には意外に迫るモノを感じないのですね。セクシーという面が弱いのかなぁ~~、しかし北欧美人であるし更にその辺りが相乗効果を発揮して今後も多分手堅くファンを獲得して行くだろう事は間違いないと思う。

    (視聴)

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