E.S.T.結成30周年記念 E.S.T. feat. Joel Lyssarides 「 A TRIBUTE TO Esbjörn Svensson Trio」
リュサリディスらを迎え、セクステットでE.S.T.再現ライブ
<Jazz>
E.S.T. feat. Joel Lyssarides
「 A TRIBUTE TO Esbjorn Svensson Trio」
E.S.T. 30th Anniversary Year / STOCKHOLM JAZZ FESTIVAL 2023
2023 after-hours products. / ah23-196(2CDR)
Dan Berglund: bass
Magnus Öström: drums
Joel Lyssarides: piano
Ulf Wakenius: guitar
Magnus Lindgren: flute, tenor sax
Verneri Pohjola: trumpet
結成から30周年となるE.S.T.は、哀しいかなリーダーのエスビョルン・スヴェンソンEsbjörn Svensson(右)の2008年の事故死というアクシデントにみまわれたが、あれから既に15年の経過をみる。しかしその後も残されたメンバーのダン・ベルグルンド(下左)とマグナス・オストロム(下中央)はそれぞれ活動を続けてきた。そしてスヴェンソンの後継者と言われ今最も注目され、ここでも何回か取り上げてきたピアニストのヨエル・リュサリディス(下右)らを向かえ「E.S.T.デビュー30周年記念公演 30Years of E.S.T. - Tribute Esbjörn Svenson Trio」を行った。これは2023年10月13日に開催された母国最大のストックホルム・ジャズ・フェスティバル公演での事である。
当日、メンバーは、ヨエル・リュサリディスの外に、オスカー・ピーターソンの最後のカルテットのレギュラー・メンバーを務めた名ギタリストのウルフ・ワケーニウス(下左)、更に18歳でハービー・ハンコックとの共演を果たし注目された実力派フルート/サックス奏者のマグヌス・リングレン(下中央)、プログレッシヴ・ロックのペッカ・ポーヨラの子息で、ヨーロッパでは人気と評価の高いジャズ・トランペット奏者/作曲家のヴェルネリ・ポーヨラ(下右)という、現在のヨーロッパ・ジャズ第一線の強者を迎えて6人の充実したスタイルで行われた。
さてこのアルバムはブートと言ってもゴージャスなセクステット演奏を、高音質ステレオ・サウンドボードにて1時間半以上にわたり完全収録したCD2枚組で、音質に関しては文句なしのオフィシャルなみ以上の高音質盤。又この公演のセットリストは下記のような、まさに"ベスト・オブ・E.S.T."と言ってもよい見事な内容で、代表曲のオンパレードで感動ものである。
(参考)「ストックホルム・ジャズ・フェスティバル(Stockholm Jazz Festival)」は、スウェーデンで最も古く、1980年にスウェーデンのストックホルムで設立された毎年恒例の音楽祭で、もともとは「ストックホルムジャズとブルースフェスティバル」と呼ばれていた。最大のフェスティバルのひとつです。ついこの10月13日から22日まで開催された今年のフェスティバルには、Lakecia Benjamin、Incognito、30 Years of e.s.t. – Tribute to Esbjörn Svensson Trio、Brandee Youngerなどの有名アーティストが出演した。このフェスティバルは、ストックホルム全土の50以上のステージで開催されたもの。
(Tracklist)
(Disc 1)
1. From Gagarin's Point Of View
2.Seven Days Of Falling
3.Tuesday Wonderland
4.Eighthundred Streets By Feet
5.Good Morning Susie Soho
(Disc 2)
1. When God Created The Coffebreak
2.Waltz For The Lonely Ones
3.Behind The Yashmak
4.Dodge The Dodo
もともとE.S.T.は、美しく深淵なるメロディーが溢れ出る「北欧ならではの静」を描く曲と、対比される彼らが試みたエフェクターを駆使したプレイによるスリリングな「ダイナミックな動」の曲がものの見事に展開する独特の「E.S.T.ミュージック」で流れてきて、私はのめり込まずにはいられなかった。そして未だに彼らのリリースしたアルバムは座右から消えることはない。そんな中での、この30周年記念公演ではピアノ・トリオでの演奏が勿論中心にはなってはいるが、なんとギター、フルート、サックス、トランペットといったジャズに多用される楽器も加わり、上記メンバーによるセクステットのスタイルで、若干お色直ししつつ、迫力のダイナミックさは一層増しての「E.S.T.ミュージック」を聴くことが出来た。
Disc1のM1."From Gagarin's Point Of View "では、ヨエル・リュサリディスのピアノがなんといっても美しい。クラシック音楽からの影響の強いジャズを奏でると評されるところ、北欧の冷えて澄み切った大気の清涼感あるイメージにピッタリである。スヴェンソンの築いた世界をしっかり表現しているところはさすがである。
M2."Seven Days Of Falling"は、ギタリストのウルフ・ワケーニウスの技量が美しく展開して、これまたダン・ベルグルンドのベースのやや異様なアルコ奏法の音と対比して面白い。
M3."Tuesday Wonderland"では、ピアノの重低音の響きに乗りつつも、マグヌス・リングレンの意外に独自にリズムカルに展開してのフルートの味も見事。ピアノの展開と並行して、かっての60-70年代のプログレ・ロックのフルートを思い出した。
M4."Eighthundred Streets By Feet"は、今度はヴェルネリ・ポーヨラのトランペットが静かな世界を描く。後半はマグナス・オストロムのドラムスのリズムに乗っての展開をみせ、そこにピアノ、ベースがサポートして素晴らしい。
Disc2においては、M1."When God Created The Coffebreak "のようなコンテンポラリーな世界と、スリリングなところを再現してくれているし、M4."Dodge The Dodo"は、オストロムのドラムソロから始まって全楽器のユニゾン、そしてそれぞれの個性的ソロに近い演奏を挟み込んでの展開、なんと15分を超える演奏で圧巻。
こうして強者によるこのセクステットは、ピアノ・トリオとは一味違った様相を呈してはいるが、現在のヨーロッパを代表する実力者達の見事な演奏が、ジャズ・ピアノ・トリオの歴史を一変させたE.S.T.のその結成30周年を記念して、むしろE.S.T.の素晴らしい楽曲群が、再びここに新たに息を吹き返すが如く感じられ、もうこの世にいないエスビョルン・スヴェンソンがふとそこに現れるような錯覚をもたらしてくれた。
録音音質も良好で、各楽器が手に取るように聴きとれて、それでいて音楽的統一感もしっかり築かれていて快感である。
(評価)
□ 演奏・編曲 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
目下今年のStockholm 2023 のE.S.Tの演奏画像はまだアップされていないので、かっての"Dodge The Dodo"の演奏映像を懐かしく観てください
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