e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)は何処に流れてゆくか?(2):マグヌス・オストロムMagnus Öströmの試み「Thread Of Life」
残った二人は歩みを始めた(2)~マグヌス・オストロム
Magnus Öström 「Thread Of Life」
ACT Music 9025-2 , 2011
e.s.t.のピアニスト、エスビョルン・スヴェンソン事故死の後、ドラマーのマグヌス・オストロムも彼らしいアルバムをリリースしている。彼の場合もギターを加え、ピアノ、ベース、ドラムスの編成の形をとった。メンバーはストックホルムで活躍している連中を集めているようだ。
Andreas Hourdakis : guitars
Gustaf Karlöf : grand piano, keys
Thobias Gabrieson : bass
Magnus Öström : drums
もともと彼は、エスビョルン・スヴェンソンとは子供の頃からの付き合いで、二人でピアノとドラムスによって曲を演奏したりという間柄だ。そしてダン・ベルグルンドとの出会いによってトリオ編成され、世界的なジャズ・トリオに成長した。そして彼のトリオにおける位置は意外に繊細にして感受性豊か、そして詩人としての役割を果たしてきたようだ。そして彼にとっては、スヴェンソンの事故死は相当のショックであったろうと推測される。
従ってここに見る彼のアルバムは、完全にe.s.t.を引きずっていると言うか、そうならざるを得なかったと言ったところなのだろう。全曲彼のオリジナル曲で仕上げた。
左のような10曲の中で、”ballard for E”は、かっての共演者のパット・メセニー(acous.Guitar)とトリオ仲間のダン・ヘルグルンド(double bass)とが集結してトリオで演奏している。エスビョルン・スヴェンソンの鎮魂歌のようにも聴ける。
更に”Hymn(賛美歌)”が最後に20分弱の演奏が納められた。彼はスヴェンソンの死に当たって、こうしたアルバムにて自分自身の心や身の処し方を整理したかったのであろうと推測する。
ダン・ヘルグルンドのアルバム(Tonbruketの2nd「Dig it to the end」)とは性格が異なり、どちらかというと旋律を聴かせようとするアルバム。しかし、何年も一緒にやってきただけあって、エレクトリックな音の配置は似ていないこともない。
しかし、印象としてはe.s.t.の矛を収めるべくオストロムの優しさとあのグループの先鋭性をうまく取り合わせた好盤といっておきたい。”weight of death”、”longing”などの曲にはそんなニュアンスが良く出ている。
e.s.t.に注目していた私にとっては、いまや彼らのライブ版の映像DVDやCDなどを聴きながらも、残された二人についても関心を寄せているといったところである。
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