アガ・ザリヤン

2019年1月30日 (水)

アガ・ザリアンの久々のニュー・アルバムAga Zaryan 「HIGH & LOW」

ポーランドからの
相変わらずの美しいソフトなヴォーカルが・・・・・しかし

<Jazz>
Aga Zaryan 「HIGH & LOW」
WARNER MUSIC POLAND / IMP./ ZARYAN201801 / 2018
Hl
Aga Zaryan (Vocals)
Michal Tokaj (Keyboards)
David Doruzka (Guitars)
Slawek Kurkiewicz (Electric Bass)
Pedro Segundo (Drums,Percussion)
Lukasz Zyta (Drums #4,9)
Munyungo Jackson (Percussion #3)
Marcin Kaletka (Tenor Saxophone)
Robert Majewski (Trumpet,Flugelhorn)
Grzegorz Nagórski (Trombone)
Corbin Jones (Tuba #5,9,10)
Irena Kijewska (Background Vocals)
Recorded in Warsaw, Sep.-Oct. 2018, Polish Radio Studio S4
  いやはやポーランドの女性シンガー・アガ・ザリアンAga Zaryanの話になるのも久しぶりである。
 ここで彼女のアルバムを取り上げた最後が、ポーランドで手に入れたライブ・アルバム『LIVE AT PALLADIUM』(COSMOPLIS 070・071/2008)の紹介だったと思うので6年前の話になる。とにかく歴史的な悲劇のワルジャワ蜂起をテーマとしてのアルバム『UMIERA PIEKNO』(ポーランド2007年、EMI music poland/2010)を製作して、国家的評価をも勝ち取り頂点に立った彼女である。その後日本でも知られるようになるのだが、ポーランド・ミュージックの日本紹介はそれ程歴史が無い。彼女についても日本でのデビューは2010年になってからだった。従って彼女の数枚のアルバムは殆ど当時に纏めて注目されたのである。
 その後はアルバム『A BOOK OF LUMINOUS THINGS』(2011)を聴いたが、今後への発展におそらく問題意識にテーマがなかなか持てなかったのではと推測する。私にとってはそれ以来7年の経過がある。そしてここに久しぶりにニュー・アルハセムを聴く事になった。
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(Tracklist)
1. Back
2. High & Low
3. Not Here For Long
4. Paths
5. Spirit Voices
6. Proof
7. Dreams, Themes & Schemes
8. Turn Me On
9. A Story From A Tram (Listen, Little Man)
10. Boo To You Too
11. Geri
12. Evil

 相変わらず、彼女の歌声はソフトできつい刺激というものはない。そして充実感あるところがいい。
 ただ今回のアルバムのコンセプトは?、実はよく解らない。しかしバックの演奏はMichal Tokaj (Keyboards)を中心に、構成はジャズ・バンドそのものである。
 アルバム・タイトル曲のM2."High & Low" は、バックにトランペット、トロンボーンが入ってギターを主力に展開する如何にもジャズらしい曲。しかしどうも心に響いてこない。旋律に美しさというもが感じないためかと思う。
 ほとんどの曲はアガ・ザリアン自身が英語で詩をつけているので・・・そのあたりを聴きこまないと・・・・。
 M4 "Paths"にはバックのサックスも歌い上げるのだが、どうも曲自身がピンとこない。
 全体に暗さはなく、むしろ弾むほうが印象深い。
 ただそんな中で後半になって、M6 "Proof"、M7."Dreams, Themes & Schemes"にそれでもキーボードと彼女の唄に美しさが感じられたことは救いであった。
   又M8."Turn Me On"、M11." Geri"はしっとりと歌い込んで不思議なムードがあり、彼女の味が出ていて、この辺りはちょっと注目される。



 とにかく、このアルバムを聴くにつけ何を期待して何に感動するのか、というポイントが見つからないのである。彼女のアルバム『UMIERA PIEKNO』(2007)は、ポーランドという国の独立するまでの苦しい時代を生きてきた女性たちの心が歌われていて、そこには悲劇と陰と力強い意志とが美しく歌われたのだが、そのイメージがあまりにも強いので、このようなよりどころのないヴォーカル・アルバムを聴くと、彼女の歌がうまいだけにちょっと逆にむなしくなる。
 

0006yls0q4em06usc122[アガ・ザリアンAga Zaryan]
 1976年、ポーランド・ワルシャワ生まれの円熟女性ジャズ・ヴォーカリスト。父はクラシック・ピアニスト、母は英語教師/作家らしい。紹介ではエラ・フィッツジェラルドとマイルス・デイヴィスを聴いてジャズに夢中になったという話がある。2002年にアルバム『My Lullaby』でデビュー。2010年のアルバム『Looking Walking, Being』(日本盤は翌年発表)は、ポーランドで最も権威にある音楽賞“フリデリク”でジャズ・コンポーザー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。スタンダードからポップス、ワールド・ミュージックのフィーリングを織り交ぜ、作品ごとに多彩な味付けがある。私の推薦盤は『Umiera Piękno』。
<Aga Zaryan  Discography>
2002 My Lullaby
2006 Picking

2007 Umiera Piękno
2010 Looking Walking, Being
2011 A Book Of Luminous Things
2013 Remembering

2018 High & Low
(評価)
□ 曲・演奏・歌 : ★★★★☆
□ 録音      : ★★★★☆
*
(視聴) 参考までにアルバム『UMIERA PIĘKNO』より"MIŁOŚĆ"

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2012年10月27日 (土)

アガ・ザリヤンAga Zaryanをしっとりと聴ける : 「LIVE AT PALLADIUM」

波蘭(ポーランド)で仕入れてきた一枚

 今回のポーランド旅行では、ポーランドという国を知るが為にも諸々の計画を持って出向いた訳であったが、なかなか思うようにもゆかず、取りあえず日本ではあまり見ないアルバムとして仕入れたうちの一枚がこのライブ盤だ。

AGA ZARYAN  「LIVE AT PALLADIUM」
COSMOPOLIS,  Warner Music Poland ,  COSMOPOLIS 070/071,  2008

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 ポーランドの歌姫アガ・ザリヤンのライブ・アルバム。2008年ポーランドのワルシャワにあるPALLADIUMクラブにてのライブもの。その年の2008年にリリースされている2枚組アルバム。

 父親が、クラシツク・ピアニストで、母親は英語教師で゛ヨーロッパを広く旅しており、そしてイギリスのマンチェスターの小学校にも通ったという人生で、英語には自信のある彼女だけあって英語で地元ポーランドでも唄っている。選曲ではLeonard Cohen、 Herbie Hancock、 Stivie Wonder などの曲も登場する。

CD-1
  1. seventh heaven
    2. it might as well be spring
    3. woman's work
    4. throw it away
    5. picking up the pieces
    6. i hear music
    7. answer me

CD-2
  1. tender as a rose
    2. day dream
    3. here's to life
    4. suzanne
    5. never said / trust me
    6. visions

Liveplist_3  バック・バンド・メンバーは左のようにギター、ベース、パーカッションという比較的落ち着いた静かな演奏で、じっくりと彼女の唄が響き渡る。特にベースのDarek oles Oleszkiewiczは、彼女のデビュー・アルバム「My Lullaby」にも登場し、その後作曲にも貢献している。
 とにかくギター、ベースは繊細に、そして彼女のヴォーカルを見事に誘導して曲を纏め上げる。
 Jacksonのパーカッションも、”i hear music”ではコンガの響き、マラカスなどを駆使して曲を静かに盛り上げてゆく、そしてギターに繋ぎ、ザリヤンのヴォーカルを誘導する。この曲は彼女の1stアルバムに登場するが、ここでは全く編曲が異なっている。
 ”answer me”では、ベースと彼女のヴォーカルのデュエットという感じで進行し、どちらかというとこのアルバムはしっとりとした展開で聴かせる曲群である。
 ”tender as a rose”は、既にベテラン・ジャズ・ヴォーカリストの風格すら聴かれる彼女の唄いっぷりには驚かされる。

Aga2  以前にも触れた2006年のアルバム「Umiera Piękno」は、ポーランドの最も重要な歴史的事件の1944年の”ワルシャワ蜂起”を歌い上げた傑作で、彼女は国民的歌手に躍り出た。

 こんなキャリアを積み上げての彼女のステージは、もはや聴く者に、落ち着いた演奏の中で、ひとつひとつ語り聴かせるようなタイプのライブ・ステージになっていることが良く解るのである。

(参考)
 「ワルシャワ蜂起の悲劇とジャズ」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/umiera-pikno-5f.html

Pa082006monoblog
(ポーランド・ワルシャワにて  2012.10)

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2012年9月 5日 (水)

ワルシャワ蜂起の悲劇とジャズ : アガ・ザリヤンAga Zaryan「UMIERA PIKĘNO」

Aga3 波蘭(ポーランド)のワルシャワ蜂起を唄う

 さて、再び三度、ポーランドですが、もう少し注目してみましょう。
 この国においては、ようやく1989年になっての国としての自立と民主化によって、それ以来初めて芸術に真の心が表現できる時代となった。そして今や音楽の分野にても、ショパンの国としてと言うだけでなく、ロックやジャズの世界でも注目度は高い。しかしそうは言っても、それからまだ二十数年、あらゆるところに第二次世界大戦、そしてその後のソ連支配の悪夢が見え隠れする。従って民族的文化を愛する彼らの芸術は、国際的な発展を期しているところは哀しくも美しい。
 ジャズ・ヴォーカリストのアザ・ザリヤン(1976年1月ワルシャワ生まれ)もその一人である。
  (参照: http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/looking-walking.html )

AGA ZARYAN 「UMIERA PIĘKNO (死する美)」
Music from EMI  50999 0 94944 2 8  ,  2010


Umeerapiekno_2

 このアルバムが出来上がったのは、2007年に行われた”ワルシャワ蜂起63周年記念”の式典にて、アガ・ザリヤンがあの惨劇下に当面し刻まれた詩人達の心をから生まれた詩作を唄ったことによるらしい。これ以前の2枚のアルバムで既に国民的評価を得ていた彼女であり、その”心の唄”は絶賛を浴びたようだ。

Aga Zaryan : vocals
Michał Tokaj : Piano
Michał Barański : bass
Łukasz Źyta : drums


 基本的には、彼女のヴォーカルにバックはピアノ・トリオのスタイルだが、オーボエ、ハープの調べとオーケストラも加わる。全ての曲はピアニストのミハウ・トカイの手により作曲・編曲され、比較的静かにしっとりと唄われ、演奏する曲群である。このアルバムは勿論ポーランド語の詩であるが、タイトルの「UMIERA PIĘKNO」は、英語で”Beauty is Dying”と訳されている。
 1944年の”ワルシャワ蜂起”こそ、ポーランドの人民のナチス・ドイツに対しての自国の精神と団結をもっての独立への戦いの姿であった。そして 悲惨な結末を迎えたときに、彼らの極限の世界における挫折感を乗り越えて人間としての真実の姿が残された。これは今日ポーランドの魂としてこの国には生きている。

Umeerapieknolist_2  収録曲は9曲。ブックレットには詩人6人の紹介が記されている(残念ながらポーランド語で判読不可)。特に1.3.4.9.の4曲は、Krystyna Krahelskaという1914年生まれで、このワルシャワ蜂起の1944年に30歳で亡くなっているいる女性の戦時下の心の詩のようだ(彼女はガールスカウト参加、戦時下で負傷者の救助活動、自ら負傷しそれが原因で死亡)。

 ミハウ・トカイMichał Tokajは、悲しみと鎮魂と湧き出る民族の心を抱く曲をジャズの心で描ききった。そしてアガ・ザリヤンが哀愁の漂う落ち着いたヴォーカルを披露している。これはジャズを超えてポーランドの人々の心を捕らえ、その美しさにも絶賛が浴びせられたという。
 歌詞は解らなくとも何故か聴く我々にもいつしか敬虔な姿に変えてゆく力を持っている。

 これらの曲は2007年の式典において、ワルシャワ蜂起博物館で演奏され、全国に放映されている。
 この感動的な曲の散りばめられたアルバムのリリースで、翌年にはアガ・ザリヤンにはポーランドレコード業界から最高の栄誉が与えられた。

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Photo
参考)~ワルシャワ蜂起1944年~
 1944年8月旧ソ連軍がナチスドイツに対して攻勢に立ってワルシャワの近く10キロのところに迫ったときポーランド人がナチスドイツに対して蜂起したものである。
 ナチス・ドイツ占領下のポーランドは、ナチスからの自力開放に民族としての結集を試みた。旧ソ連軍がワルシャワのビスツーラ川の対岸に迫った時、旧ソ連軍や他の連合国による支援を期待しながら、ロンドンの地下政府からの命令と、旧ソ連軍からレジスタンスへの指示で、ワルシャワの地下軍組織がナチスに対して攻撃を開始、いわゆる人民蜂起が起こった。しかし、旧ソ連軍は残酷にもそれには答えず、対岸に自軍の補給に終始し待機して動かなかった。結局ナチスに対して人民蜂起軍はほぼ独自で90日間文字通りの死闘を尽くすが10月にはほぼ全滅し、20万人が殺害されたといわれている。ワルシャワはナチスにより完全に破壊され廃墟と化した。そして、旧ソ連軍は1945年1月になって初めてワルシャワに攻め入ることになるのである。その後不幸にもポーランドは今度は実質ソ連の支配下となってしまい、自由の道は閉ざされた。

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2012年8月18日 (土)

ワルシャワ蜂起を乗り越えて・・・アガ・ザリアンの日本デビュー盤:「LOOKING WALKING BEING」

彼女の詞には人の生きる精神が満ちている

Agazaryan2_3  ポーランドのジャズを探っていると、その魅力は更に増してゆくところを感じている今日この頃ですが・・・、昨年春に、アガ・ザリアンAga Zaryanを知って、ここで彼女の1stアルバム「MY LULLABY」(2002年)を紹介した。(2011.5.29 「ポーランドからの女性ジャズ・ヴォーカル」=http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/aga-zaryanmy-lu.html
 その後、昨年夏になって、彼女の2010年の5thアルバム「LOOKING WALKING BEING」が、日本盤として(1stアルバムの3曲をボーナス・トラックとして加え)1年遅れでリリースされ、彼女も遂に日本デビューを飾ったわけだ。
 私から見れば、これだけ出来の良いヴォーカル・アルバムが日本で知られないのは、やっぱりポーランドという国の遠さを感じていたわけだが、この日本リリースによって若干安堵していたというところであった。

 そんな流れの中で、先日来のポーランドの歌姫アンナ・マリア・ヨペクを取り上げている以上、やっぱりアガの日本デビュー・アルバム(5thアルバム)もここに書いておこうと言うことになった次第です。

AGA ZARYAN 「LOOKING WALKING BEING」
EMI Music Japan    TOCJ-90071  ,  2011

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 ポーランドのジャズ・アルバムとしては、先ずは歌詞が英語であるところが理解しやすい。アガ・ザリアンは、母親が英語の教師であり作家であったという環境と、父親がクラシック・ピアニストということで、両親と共にヨーロッパ各地を巡っている。そして更にイギリスの小学校にも通ったということから、英語には何の抵抗もなかったということだろう。
 そしてこのアルバムにおいても、彼女は殆どの曲の英語作詞をしていて、その内容には一目のところがある。それは2006年の3ndアルバム「Umiera Piękno」は、なんと悲劇の極みでもあったナチス・ドイツに対しての1944年のワルシャワ蜂起に直面した詩人達の詩に曲を付けてジャズ・アルバムとして歌い上げたのである。ここに彼女の姿勢が凝縮しているし、その生き様の中でのアルバムとして聴く必要もあるのかも知れない。しかしこのことは、日本から見ると特殊な様にもみえるが、ポーランドの国民にとってみればごく自然な国民性の姿と言えるところなのかも・・・・・。

Aga Zartan  Discography
2002 - 'My Lullaby' CD
2006 - 'Picking up the Pieces' CD
2007 - 'Beauty is Dying' '(Umiera Piękno)' CD
2008 - 'Live at the Palladium' CD/DVD
2010 - 'Looking Walking Being' CD
2011 - 'A Book of Luminous Things' CD

Lookingwalkingbeinglist  このアルバムは左のように12曲によって出来ている。ここに日本盤は更に1stアルバムから3曲ボーナス・トラックとして追加されている。
 そしてまさにジャズ・アルバムそのものというパターンを成した。宣伝文句のようにボッサ、サンバがあれば一方ブルース調、そしてバラードなど、更にロックまで聴かせる。彼女のヴォーカルは25歳時の1stアルバムからして大人っぽかったが(1976年ワルシャワ生まれ)、このアルバムはそれから8年後のものだけあって更に円熟した唄を披露している。
 タイプは、アンナ・マリア・ヨペクのような清楚感というか郷愁の美の世界と違って、ややハスキーで厚みがあり若干影を感じさせるところが興味深いところ。

 Aga Zaryan : vocals
  Michał tokaj : piano
  David Dorúžka : guitars
  Michał Baranski : double bass
  Munyungo Jackson : percussion

Agazaryan1  しかし、ポーランド・ジャズの恐ろしさというか凄いところは、バック・ミュージシャンも築き上げた技術のレベルの高さを十分に感じさせる。とくに曲作りに貢献しているピアニストのミハウ・トカイがポーランドの音楽の奥深さを醸し出す。間奏のピアノの美しさも聴きどころ。そして彼女の詞には、女性ヴォーカルものの主流である”恋愛もの”の世界から一線を画し、生きる人間の哲学的な世界に踏み込んでいる。

 そんなアガ・ザリアンのヴォーカル・アルバムも興味は尽きないが、特に興味ある3rdアルバム「Umiera Piękno」については、もう少し勉強して(笑)書いてみたいと思っているのである。

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2011年5月29日 (日)

ポーランドからの女性ジャズ・ヴォーカル:アガ・ザリヤンAga Zaryan「My Lullaby」

温かさのある本格的ジャズ・ヴォーカルを聴かせてくれるアガ・ザリアン

 あのポーランドのジャズ界は今や注目の世界。先日取り上げたマルチン・ボシレフスキのピアノ・トリオに感動して、もう一つ女性ボーカルにも焦点を当てざるを得ない。

Mylullaby 「AGA ZARYAN / MY LULLABY」 EMI Blue Note X-0949422 ,  2010

 昨年(2010年3月)発売されたアガ・ザリアンAga Zaryanの5thアルバム「Looking Walking Being」が好評であった(日本でも注目を浴びた)ことによって、彼女のデビュー・アルバムがリマスターされ発売されたものだ。このアルバムはもともとポーランドはワルシャワで2001年9月に録音、2002年にリリースされ、そしてほぼ10年後の今に我々に届いたわけだ。

 まず驚きは、これがデビュー・アルバムか?と思わせるところ。中身はジャズのエッセンスが十分に盛り込まれている。彼女のヴォーカルは実にオーソドックスでダイナミックな唱法で好感が持てる。声の質も充実していて高音部がややハスキーになるが、その点も魅力。そしてなんと言っても彼女の歌声には温かさが感じられるところは出色だ。
 このバック・バンドは・・・・
   Darek Oleszkiewwicz (double bass)
   Tomasz Szukalski (tenor Sax.)
   Michal Tokaj (piano)
   lukasz Zyta (drums)
といったBassのDarekを中心としたカルテットだ。

Agazaryanphoto2  女性ヴォーカルものは、最近の傾向としてバック・バンドは比較的前面に出ないで、歌声を支えるパターンが多いが、このアルバムはそうではない。Drumsはあまり暴れないが、Tenor Sax.、Piano そして Bass が、それぞれの曲で前面に出て演奏する。アガのヴォーカルと対等に主張して演奏するところが面白い。
 そして又録音が実に良いのだ。この音の良さもアルバムの出来をバック・アップしている。

(List)
   1. to see a world
   2. waltz for debby
   3. i've got the world on a string
   4. my lullaby
   5. you and the night and the music
   6. i put a spell on you
   7. never said(chan's song) /trust me
   8. still we dream(ugly beaty)
   9. i hear music
  10. polka dots and moonbeams

 私のお薦めは、やっぱりタイトル曲の”my lullaby”だ。スローな展開の中に味わいが濃い。サックスの演奏と競うような彼女のヴォーカルを聴くと、これは彼女の歌声が、曲を展開する楽器群の中の重要なポイントを占めている一つの音とも言える役割である。
 ジャズの楽しさは、”i've got the world on string”、”you and the night and the music”、”i hear music”の3曲だろう。全楽器の演奏が代わる代わる主役を演じて乗ってくるところはお見事である。
 ピアノとの彼女の関わりが楽しい”still we dream”とか、”to see a world”、”never said”はサックスが主張して面白い仕上げ。
 最後の”polka dots and moonbeams ”は、ベースのみのバツクに彼女の歌唱力をみせつけて静かに幕を降ろす。

 彼女は1976年生まれ(ポーランドの首都ワルシャワ)だから現在35歳ぐらい(このアルバムは10年近く前であるので当時は25、6歳というところか)。父親はクラシック・ピアニスト、母親は英語教師で作家という環境で育って、ヨーロッパ各地を広く旅しているし、小学校はイギリスのマンチェスターだという。両親の音楽環境はポップ・ミュージックにも接していて彼女に多大な影響をもたらしたであろう。10代に再びポーランドに戻っている。
 そして音楽学歴もきちんとしているし、2008年にはポーランドの権威ある賞の「フレデリック・ショパン・アワード」受賞。なにせポーランドというとショパンの国、多分推測ではあるが、音楽の歴史的伝統はしっかりしたものがあると思われる。そんな国からのジャズの贈り物を紹介した。

Photo
(花の季節 : 「エゴノキ」  = 我が家の庭から・・・)

 

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