マルチン・ボシレフスキ

2024年7月 3日 (水)

トーマス・スタンコ・カルテット TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」

スタンコの荒々しさとダーティーな哀感の世界をマルチン・ボシレフスキ・トリオが支える

<Jazz>

TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」
Universal Music / Jpn / UCCE-1207 / 2024

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トーマス・スタンコ TOMASZ STANKO (trumpet)
マルチン・ボシレフスキ MARCIN WASILEWSKI (piano)
スワヴォミル・クルキエヴィッツ SLAWOMIR KURKIEWICZ (bass)
ミハウ・ミスキエヴィッツ MICHAL MISKIEWICZ (drums)

録音年 2004年9月9日
録音場所 ミュンヘン、ムファットホール

 2018年に享年76歳で他界したポーランドを代表するトランペッターのトーマス・スタンコ(1942-2018 下左)が、“21世紀のECM”を代表する同じポーランドのピアノ・トリオと繰り広げた今から20年前の2004年のライヴ音源が登場した。つまりECMデビュー前夜のマルチン・ボシレフスキ・トリオ(下右、まだ“シンプル・アコースティック・トリオ”として活動していた頃)をフィーチャーしたカルテットで繰り広げた2004年のミュンヘンでのライヴ音源。
 この年には、このカルテットでのアルバム『Suspended Night』がリリースされて、彼としても更なる発展段階にあった時で魅力的なドキュメントであり、又我が愛するマルチン・ボシレフスキにおいても、若手としての技能の高さで注目度の高まった時期の状況を知れるものとしても魅力たっぷりのアルバム。

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  この組み合わせは、2年前の2002年にこのポーランドのカルテットとしての共演作がお目見えし、トーマス・スタンコを新たな評価へと押し上げた。 それがボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィツとのECM第1弾『Soul of Things』(2002)であり、 ヨーロッパ・ジャズ賞を受賞することになる。
 そして今回のこのライブ音源は、その2004年このカルテットでの第2作アルバム『Suspended Night』のレパートリーである歌曲の形式と、翌2005年に録音された第3作アルバム『Lontano』で探求された即興的な分野の間を巡り巡っているところが、グループの音楽の発展段階を捉えた魅力的なドキュメントとなっていて貴重であるのだ。

  この2004年には、ボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィッツは、彼ら自身も確固たる国際的評価を確立していた。10代に結成した「シンプル・アコースティック・トリオ」として10年間を経て、彼らは「マルチン・ボシレフスキ・トリオ」として新たなアイデンティティを確立し、アーティストとしてますます力をつけている。これにはトーマス・スタンコは当時、彼らを評価し語っている「ポーランドのジャズ史上、このようなバンドは存在しなかった」「私は毎日、このミュージシャンたちに驚いている。 そして、彼らはますます良くなっている」と。

(Tracklist)
1. Hermento’s Mood ヘルメントズ・ムード 5:28
2. Song For Sarah ソング・フォー・サラ 6:20
3. Euforia ユーフォリラ  9:44
4. Elegant Piece エレガント・プレイス 10:22
5. Kaetano カエターノ 8:48
6. Celina セリーナ 10:44
7. Theatrical シアトリカル 6:34

 このこのミュンヘン公演は、スタンコ・カルテットがアメリカとヨーロッパで大規模なツアーを行った年の最高潮の演技と言えるものであると言われている。当時、過去にポーランド・ジャズの大御所クリシュトフ・コメダとの共演などの多くの実績のある偉大なトランペッターとしての評価のあるスタンコは、ここでリーダーシップと最高の魅力を十二分に発揮し、スラブの伝統に根ざしクラシック音楽からの発展形をベースに新しいジャズを演じてきていた若きボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィッツのピアノトリオのエネルギッシュなサポートと見事なカルテットとしての演奏力に力を得て、彼らしい素晴らしい演奏を披露している。

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  M2."Song For Sarah "あたりから、マルチン・ボシレフスキ・トリオの本質がちゃんと見えてきて、彼らがピアノによる深遠な世界を構築し、スタンコがダーティーに乗って行くかのスタイルが見える。
 M3."Euforia"は、ベースのリードからスタートして、それにスタンコがエネルギッシュに盛り上がると、反応するがごとくピアノ・トリオが動を即興で演じ更にエモーショナルな展開をみせ、中盤は今度はピアノが語り始め、ドラムスが展開を形作る。まさにピアノ・トリオの主導のバトルに再び終盤にはトランペットが逆に収める役を果たし、ドラムスが答えて最後はトリオとスタンコでまとめあげる。
 そしてM4."Elegant Piece "は再び静の世界に、10分を超える曲で中盤からトランペットの訴えが始まり、つづいてピアノが延々と語り始める。最後は両者の響きでハーモニックなところを見せながら納める。

 このような、四人の対等なカルテットの演奏が流れ、やはりスタンコのトランペットは彼独特の荒々しい音色は響かせるのだが、ドラマチックな展開の中に憂鬱感の暗さがあったり、哀愁感に満ちたりと人間的な世界を描くところは抜きんでている。そこに又ジャズの激しさをちらっと見せグルーヴ感をちゃんと聴かせながらも、どこか深淵にして人の心を哀感を持って描いてくれるポーランド風ボシレフスキ・ピアノ・トリオの世界が顔を出し、いつの間にか引き付けられてしまう。これがライブ録音かと思うぐらいカルテットとして充実していて、曲の配列も見事でアルバムとしても完成している。
 ここに来て、スタンコの名盤に入るアルバムが登場した感がある。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     87/100

(試聴)

 

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2021年9月14日 (火)

マルチン・ボシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」

鉄壁のトリオによるインプロの華と深遠なる美

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」
ECM / IMPORT / ECM 2677 /2021

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Marcin Wasilewski(p)
Slawomir Kurkiewicz(double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Recorded August 2019
Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines
Engineer : Gerard de Haro
Mastering : Nicolas Baillard
Cover photo : Max Franosch
Design : Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher

  待望のマルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski(このポーランド人の名前の読み方が難しく、当初このように言っていたのでそのままとしている)のトリオによるニュー・アルバムのリリース。
 もう何年か前に彼が新進気鋭としての結成したシンプル・アコースティック・トリオの『コメダ』がお気に入りになってから、もうこのトリオも25年にはなると思うが、とにかくポーランドの音楽性の高さには何時も驚かされてきた。そして彼も円熟して最高潮の中で、こうして久しぶりにトリオのみのメンバーでのアルバムと言うことで大いに期待していたところである。
 近年はネットにての音楽配信が盛んになり、既に当アルバムの曲MQAハイレゾ・サウンドの"In Motion,Part Ⅰ"をダウンロードして聴いていたので、おおよそのこのアルバムの雰囲気も解ってはいたが、ここにやはりアルバムを手にして全7曲を一貫して聴くとその感動も大きい。

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(Tracklist)

1.In Motion (Part I)
       Wasliewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
2.Variation No.25 from: Goldberg Variations
       J.S.Bach,Goldberg Variations
3.Vashkar
       Carla Bley
4.In Motion (Part II)
       Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
5.Glimmer Of Hope
       Marcin Wasilewski
6.Riders On The Storm
       Morrison/Densmore/Krieger/Manzarek
7.In Motion (Part III)
      Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz

  昨年5月にリリースしたテナー・サックスのJoe Lovanoを迎えた作品『Arctic Riff』も好評だったが、今回はマルチン・ボシレフスキ・トリオとしてのECM7作目。やはり私としては純粋にこのようなトリオの作品が圧倒的に好きで、今回は大いに喜んでいる。

 そもそもこのトリオはスタートは「SIMPLE ACOUSTIC TORIO」の名前であったが、現在はピアニストのボシレフスキをリーダーとして「Marcin Wasilewski Trio 」と名乗っている。しかしメンバーは一貫して変わっておらず、鉄壁のトリオで音楽性においても三者共に乱れのない発展をしてきているところが魅力。ジャズ界では美しさと真摯なる世界としてもピアノ・トリオが燦然として輝いているが、欧州でのその発展は素晴らしい。そんな世界を堪能出来るのである。

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 三人による共作"In Motion"が、上のリストにみるようにPart 1から3と、3曲構成としてアルバムのスタート、中盤、締めくくりと位置している。このようにトータル・アルバムを一つの世界として描いていて、その美しさと深遠さとそしてフリー度が高まった世界で有りながら三者の乱れない奥深さに納得する。
 そしてなんとバッハのM2."Variation No.25 from: Goldberg Variations"が登場し、これがここではモーツァルトの美しさの如く演じられるのには驚いた。
 更に何故かCarla BleyのM3."Vashkar"の登場、彼女の実験色の世界に突入。
 そしてボシレフスキー自身の安らぎに通ずる曲M5."Glimmer Of Hope"、更にM6."Riders On The Storm"と、ドアーズの曲が気品をもって演じられるところは、かなり謎が掛けられた気分である。

 しかし、究極はマンフレッド・アイヒヤーの世界に通ずるところ、彼らのトリオの描くインプロヴィゼーションの不思議な美に纏め上げられたこのアルバム、静かにして深遠、そしてその美しさは、ピアノのメロディー・ラインや響きに止まらず、繊細なスティック音のドラムスや、ベースの単なるズム隊でなくメロディにも大きな役を担っていて、トリオとしてのセンスの高さが感じられた。
 相変わらず、このトリオは虜にされてしまう世界を持っている。

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[参考] Discography

(Marcin Wasilewski Trio)
『シネマ・パラディーゾ』 - January (2008年、ECM)
『フェイスフル』 - Faithful (2010年、ECM)
「Spark of Life」 (2014年、ECM) (with Joakim Milder)
「Live 」(2018年、ECM)
「Arctic Riff」(2020年、ECM) (with Joe Lovano)

(Simple Acoustic Trio)
『コメダ』 - Komeda (1995年、Gowi)
「When Will the Blues Leave」 (1996年、Polonia)
「Live in Getxo」 (1996年、Hillargi)
『HABANERA』 - Habanera (2000年、Nottwo)
『ララバイ・フォー・ローズマリー』 - Lullabay for Rosemary (2001年、Nottwo)
『トリオ』 - Trio (2005年、ECM)

(評価)
□ 曲・演奏 :  90/100
□   録音   :  90/100

(試聴)

 

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2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

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(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - - -

ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

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Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

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 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

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01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

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 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

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2018年10月 3日 (水)

マルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski Trio 「Live」

抒情派の真髄と、圧巻の迫真プレイで迫る熱演が聴ける

<Jazz>
Marcin Wasilewski Trio 「Live」
ECM / Germ / ECM 2592 6738486 / 2018

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Marcin Wasilewski (piano)
Sławomir Kurkiewicz (double bass)
Michał Miśkiewicz (drums)

 Recorded Aug. 2016 at Jazz Middelheim, Antwerp

Marcinsolo_imgwjpg ポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski (1975年ポーランドのスワヴノ生まれ)の、今回もレギュラー・トリオによる、2016年8月ベルギーのジャズ祭でのライヴ収録盤。もともとシンプル・アコースティック・トリオ(私は1995年アルバム『Komeda』(その後『Lullaby for Rosemary』に変わる)以来ファンである)で注目され、その後も不動のメンバーで、自己名義トリオに名を変えての活動が続いている。
 哀愁の抒情派ピアノを演じ、一方ではかなりの躍動的な展開をみせるこのトリオは、取り敢えずは注目株で、ニュー・アルバムは何時も待望しているところだ。

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(Tracklist)
1. Spark Of Life / Sudovian Dance [Live]
2. Message In A Bottle (Sting)[Live]
3. Three Reflections [Live]
4. Night Train To You [Live]
5. Austin [Live]
6. Actual Proof (Sting)[Live]

Sparkoflife さて、このアルバムのM2、M6以外は、Marcin Wasilewski のオリジナル曲だが、2014年のアルバム『Spark Of Life』ECM/ECM2400/2014)(→)でお目見えした曲M1、M3、M5が演奏されている。ただ2016年のライブ録音で有り、当初のアルバムにみるスタジオ録音盤との違いというか発展形というか、そのあたりが興味の持たれるところである。
 M1."Spark Of Life "、"M5." Austin "は、スタジオ・アルバム同様抒情的にしてメロディーも優しく心に染み込んでくる。これぞマルチン・ボシレフスキと言いたくなるところだ。

Faithful しかし思うに今回の目玉はM4. "Night Train To You"の圧巻のプレイだ。この曲は2011年のアルバム『Faithful』 (ECM/ECM2208/2011)(→)に登場した曲だ。成る程これがライブの醍醐味でもある。 とにかくこの14分に及ぼうとする迫真のプレイは凄い。ボシレフスキ(p)の集中力でアドリブが尽きること無く演じきる熱演に痺れる。しかもそれを支えるリズム隊の挑戦的アプローチによる攻撃的プレイが一層この展開に凄みを加味して迫ってくる。ベースの途切れること無く流れるようなプレイ、ドラムスはかってのスタジオ盤よりは録音の締める位置も高く楽しめる。しかもその3者のプレイに何故か美しさが秘められていて感心するのである。こうゆう演奏をECMがリリースするのは珍しいと思うが、中にちゃんと”Album produced by Manfred Eicher”と記されていて、Eicherご承認の演奏というところにあるとみる。

 ポーランドのジャズに限らずあらゆる分野の音楽レベルの高さは何時も感心するところだが、20歳代でデビューしたこのトリオは確実に発展・進歩しているところが嬉しい。ヨーロッパ耽美系らしい叙情性が満ちたところと、スリリングなトリオ格闘が聴けるこのトリオは貴重だ。
 さてさて次なるスタジオ・ニュー・アルバムに益々期待が持たれるところだ。

(評価)
□ 演奏 ★★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆

(My Image Photo)  2018 Autumn

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Sony ILCE-7M3,  Zeiss Vario-Tessar Fe 4/16-35 ZA OSS, PL

(視聴)

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2018年1月 1日 (月)

謹賀新年   波蘭ジャズ=ピアノ・コンビレーション・アルバム「POLISH PIANISM」

 明けましてお目出度う御座います
 今年もよろしくお願いします       2018年元旦


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                             (Mt. Asama)
                  *          *          *          *


波瀾ジャズ=更なる
発展期待のアルバムの登場だ!

<Jazz>
「POLISH PIANISM」
CORE PORT / RPOZ-10037 / Japan

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Mozdzer = Danielsson = Fresco,  Franciszek Raczkowski Trio,  Slawek Jaskulke Trio, Piotr Wylezol,  Hania Rani & Dobrawa Czocher,   Simple Acoustic Trio,   Sebastian Zawadzki Trio & Strings

  いずれそんな時が来るのでは・・・と、期待を込めながら待っていたアルバムの登場だ。ここれはポーランドのピアノを中心としたジャズ演奏陣のコンピレーションもの。
 このポーランドと言えば、2012年に旅行したことがあるのだが、とにかくクラシックは当然としてロック、ジャズをはじめ音楽というモノ全体を非常に愛して居る国民によって、重みのある長い歴史を乗り越えてきた新しい時代の国作りが行われいる国だ。
 又あのショパンの国だけあって、あらゆる音楽にその基礎には”音楽という学問”がきちんと備わっている印象を受けるのである。多分想像するに、国民の教育には音楽の価値感をしっかり幼少時からたたき込んでいるのではないかと思うのである。
 そんなところからも、ロックにおいてもプログレッシブ・タイプが好まれているし、ジャズにおいても美しいリリカルな旋律を聴かしながらも、新しいところにアプローチしていく姿が感じ取れる。しかも歴史的トラッド的ミュージックの尊重の姿もしっかり備わっているのだ。
 そんなところから、新年の第一号のアルバムとしては、これだと満を持して登場させる。

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                                         (Kraków(Poland)にて 2012年筆者撮影)

 このアルバムは、そんなところを背景にこのジャンルに於いて今や追従を許さないオラシオ氏が選曲して作り上げたものだ。その結果下に全てを記すが、今やポーランドに限らすユーロ圏そして世界に支持者のいるミュージシャンの集合となった。
 かってのポーランド・ジャズ界での功労者クリシュトフ・コメダを思い起こすわけだが、今日に於いては、その流れをしっかりと発展させているレシェク・モジジェル、マルチン・ヴァシレフスキなどが、ここにも登場して楽しませてくれる。

  さてオラシオ氏の選曲だが、このアルバム製作に於いて彼の意気込みはかなりのものであったかと理解は出来るが、ちょっとポーランドのミュージシャンの芸術性に少々懲りすぎた感はぬぐえない。まあそんなところで、少々力が入りすぎたか?、このアルバムは非常に奥深く聴き応えは十分ではあるが、ちょっとゆとりを持って、ポーランドの親近感を増す為にも、もうちょっとポピュラーなイジーリスニング的な面も盛り込んでは良かったのではと、ふと思う。例えばコメダものであれば、Simple Acoustic TrioかLeszek Możdżerの”Sleep Safe a Warm (ローズマリーの赤ちゃん)”とか。
 そうは言っても、私のように特にジャズにおいてはユーロ系のリリカルな世界を好む人間にとっては、ポーランドというのは当然その対象として重要で有り、こうしたアルバムが登場したことは、極めて歓喜に値すると評価してしまうのである。

(Tracklist)

Leszek_mozdzerw1 モジジェル=ダニエルソン=フレスコ/「サファーリング」
Możdżer - Danielsson – Fresco / 「Suffering」
(Lars Danielsson) from "THE TIME" album P C 2005 Leszek Możdżerc
# Leszek Możdżer (p), Lars Danielsson (b), Zohar Fresco (perc)

2 フランチシェク・ラチュコフスキ・トリオ/「5/8」
Franciszek Raczkowski Trio / 「 5/8」
(Franciszek Raczkowski) from "Apperentice" album PC2015 for tune
# Franciszek Raczkowski (p), Paweł Wszołek (b), Piotr Budniak (ds)


Slawekjaskulke2trw_23 スワヴェク・ヤスクウケ・トリオ/「メアリ」
Sławek Jaskułke Trio / 「Mary」
(Sławek Jaskułke) from "ON" album PC2015 Sławek Jaskułke
# Sławek Jaskułke (p), Max Mucha (b), Krzysztof Dziedzic (ds)

4 ピョトル・ヴィレジョウ/「ホワイト・ウォーター」
Piotr Wyleżoł / 「White Water」
(Piotr Wyleżoł) from "Improludes" album P C 2014 Hevhetia
# Piotr Wyleżoł (p)

5 ハニャ・ラニ&ドブラヴァ・チョヘル/「レプブリカ・マジェニ」
Hania Rani & Dobrawa Czocher / 「Republika Marzeń」
(Grzegorz Ciechowski, Zbigniew Krzywański) from "Biała Flaga" album P C 2015 MyMusic
# Hania Rani (p), Dobrawa Czocher (cello)


Marcinw6 シンプル・アコースティック・トリオ/「シンプル・ジャングル」
Simple Acoustic Trio / 「Simple Jungle」
(Marcin Wasilewski) from "Habanera" album PC 2000 Marcin Wasilewski
# Marcin Wasilewski (p), Sławomir Kurkiewicz (b), Michał Miśkiewicz (ds)

7 セバスティアン・ザヴァツキ・トリオ&ストリングズ/「ズヴウォカ」
Sebastian Zawadzki Trio & Strings / 「Zwłoka」
(Sebastian Zawadzki) from "Euphony" album PC2015 for tune
# Sebastian Zawadzki (p), Sofie Meyer (1st vln), Polyxeni Zavitsanou (1st vln), Kalina Wasilewska (2nd vln), Susan Bregston (viola), Valeriya Sholokova (cello), Johannes Vaht (b), Morten Lund (ds)

1tubisw8 トゥビス・トリオ/「シェデム・シェデム」
Tubis Trio / 「Siedem Siedem」
(Maciej Tubis) from "Live in Luxembourg" album PC2008 Maciej Tubis
# Maciej Tubis (p), Marcin Lamch (b), Przemek Pacan (ds)


9 レシェク・クワコフスキ/「プションシニチュカ」
Leszek Kułakowski / 「Prząśniczka」
(Stanisław Moniuszko) from "Katharsis" album PC1999 Leszek Kułakowski
# Leszek Kułakowski (p), Jacek Niedziela (b), Marcin Jahr (ds), Paweł Kukliński (1st vln), Jakub Rabizo (2nd vln), Błażej Maliszewski (viola), Tadeusz Samerek (cello)


Michaltoajw10 ミハウ・トカイ・トリオ/「ザ・サイン」
Michał Tokaj Trio / 「The Sign」
(Michał Tokaj) from "the sign" album P C 2014 Hevhetia
# Michał Tokaj (p), Michał Barański (b), Łukasz Żyta (ds)

11 スワヴェク・ヤスクウケwithハンセアティカ・チェンバー・オーケストラ/「バイ・ゾポト」
Sławek Jaskułke with Hanseatica Chamber Orchestra / 「By Zopt」
(Sławek Jaskułke) from "Fill the Harmony Philharmonics" album PC2005 Sławek Jaskułke
# Sławek Jaskułke (p), Sławomir Kurkiewicz(b), Krzysztof Dziedzic(ds), Hanseatica Chamber Orchestra

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2016年12月18日 (日)

マルチン・ボシレフスキ絡みで・・・イェジィ・マウェクjerzy małek 「ON AIR」

マルチン・ボシレフスキのピアノと・・・・・・・
トランペッター:マウェクjerzy małek のカルテット・アルバム

<Jazz>
jerzy małek 「ON AIR」

UNIVERSAL MUSIC POLSKA / POL / JZ111026-06 / 2011

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Jerzy Małek - trumpet / Marcin Wasilewski - piano /Michal Baranski - doubloe bass / Michal Miskiewicz - drums
Recorded 1 March 2011 at the tokarnia studio nieporęt

Jm これもポーランドからの一枚。ピアニストのマルチン・ボシレフスキがらみだから当然と言えば当然。
  私はこのイェジィ・マウェクjerzy małek(←)というトランペッターは知らなかったのだが、これは2011年リリースの彼のリーダー・カルテット・アルバムである。ボシレフスキのピアノが参加しており、そしてシンプル・アコースティック・トリオのMichal Miskiewicz が共演。
 マイルスを敬愛しているというこのマウェクが、かっては自主制作盤やマイナーレーベルから地道な発信をし続けてきたというが、ここにUniversalからのメジャー・デビューを果たした作品。全6曲全て彼のオリジナル曲で構成されているカルテットによる演奏。

(Tracklist)
1.  Slavs
2.  Starka
3.  White Tulips
4.  Specjal
5.  Air
6.  Benio

 
Jm2 音楽の国ポーランドらしいメロディーの豊富な曲を展開している。私はマルチン・ボシレフスキのピアノを大いに期待しているのだが、いやはやこのアルバムは明らかに主体はトランペットを中心とした曲作り、彼のピアノは明らかにサポート役に回っている。
  つまりカルテット構成とはいえ、トランペッターのリーダー作らしく、メロディーを浪々とトランペットが歌いあげる。
  印象としては、かなりインプロヴィゼーションを大切にしている曲作りとみた。

 スタート曲M1.”Slavs”は、ボシレフスキのトリオ・アルバムの印象とかなり違っており、叙情的な曲作りというところでは無い。ここでは彼のピアノもトランペットの荒々しい展開に追従して鋭く攻めながらも締め役に貢献して、最後は曲を静かに落ち着かせる。
 全曲比較的長い曲が多く、短いモノでも2曲目の7分11秒。従ってM3.”White Tulips ”は10分を超える曲で、そこで中間部にてピアノやベースのソロも交えて楽しませてくれる。
 全体的に比較的聴き易い曲で占められているが、ここではマルチン・ボシレフスキは、面白いことに前衛的タッチを披露していて、彼のトリオものとは別の面を知ることが出来た。
  そんな中で、M5.”Air ”では、ピアノ・トリオと思われるぐらいたっぷりととられた5分以上の導入部で、ボシレフスキらしい情緒豊かなピアノを聴くことも出来る。
 こうしてみると、ポーランドのジャズ事情はほんとに豊富で驚かされるといったところである。

(参考:Jerzy Małek の Discography)
"By Fife" 2000
"Gift" 2002
"Spirit of the time" 2005
"Bop Beat" 2006
"Culmination" 2009
"On Air" 2011
"Stalgia" 2014

(試聴)

 

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2016年12月 3日 (土)

マルチン・ボシレフスキ絡みで・・・マヌ・カッチェManu Katché 「PLAYGROUND」

ドラマー(マヌ・カッチェ)の作品での
マルチン・ボシレフスキの名プレイ

Marcinw  ポーランドのピアニスト=マルチン・ボシレフスキ好きの私である。ここまでに彼のピアノ・トリオである「シンプル・アコースティック・トリオ」(近年のECMからのリリース・アルバムは同メンバーでも「マルチン・ボシレフスキ・トリオ」と名乗っている)のアルバムは、手に入るモノは全て聴いてきているのだが、次第に彼がフィーチュアーされたアルバムも聴きたいと言うところで、先頃トーマス・スタンコTomasz Stankoとのカルテット・スタイルによるアルバム(『Suspended Night』、『Lontano』)など回顧したのだ。しかしまだその他、トランペッターやドラマーとの共演作もあって、先頃ECMからの2007年のアルバムを遅まきながら手に入れたのでここで取りあげる。

<Jazz>

Manu Katché 「PLAYGROUND」
ECM / GERM / ECM 2016 / 2007

Playground

MATHIAS EICK(tp), TRYGVE SEIM(ts,ss), MARCIN WASILEWSKI(p), SLAWOMIR KURKIEWICZ(b), MANU KATCHE(ds)
Recrded jan. 2007, Avatar Studios, New York

 フランス系アフリカ人ドラマーのマヌ・カッチェが放つECMからの第二弾。期待通りシンプル・アコースティック・トリオのマルチンMARCIN WASILEWSKIとスワヴォミルSLAWOMIR KURKIEWICZ(b)が良い役をこなしている。
 全体に非常に落ち着いた世界を描く曲群で占められている。全曲マヌ・カッチェによるものだ。
 基本的には、どんな場面に於いてもマルチンのピアノが冷静で静かな情景を描く。それをベースが支え、そしてMATHIAS EICKとTRYGVE SEIMによる二管が、やや押さえられた演奏で旋律を歌いあげ、美しい響きを展開する。
 ドラマーのアルバムとしては、ドラムスは意外に控えめで、ゆったりとした曲の流れにメリハリをうまく付けていくところはさすがで、曲をうまく洗練された世界に描ききる。
 M10.” Inside Game ”では、ピアノとドラムスが共にリズムカルなリズムを刻んでゆくところは面白い展開で、こうしたクインテットでは有りなんだと、なるほどと思わせる。
 アルバムの印象は都会の夜、影を感じさせ、私にとっては納得の作品だった。

(Tracklist)
1. Lo
2. Pieces Of Emotion
3. Song For Her
4. So Groovy
5. Morning Joy
6. Motion
7. Project 58
8. Snapshot
9. Possible Thought
10. Inside Game
11. Clubbing
12. Song For Her


Neighbour_2<参考1>
(前作)Manu Katché 「NEIGHBOURHOOD」
     ECM / GER / UCCE1068 / 2005

 マヌ・カッチェがECMでの最初のリーダー作(→)。タイトルどおりのECMファミリーの仲間達、トーマス・スタンコ のベテラン・トランペッターに、シンプル・アコースティック・トリオのマルチンとスワヴォミルの二人など錚々たるミュージシャン達を従えマヌ・カチェらしいヨーロッパ風味の美しい作品。
MANU KATCHE(ds),TOMASZ STANKO(tp),JAN GARBAREK(ts),MARCIN WASILEWSKI(p),SLAWOMIR KURKIEWICZ(b)

Mi0003439625<参考2>
(マヌ・カッチェのプロフィール)
 1958年生まれ。父親はアフリカ出身、母親はフランス人。7歳からピアノを習い、音楽大学でパーカッションを習得した。ユニークでありながら洗練されたドラム演奏が好評。1986年にリリースされたピーター・ガブリエルのアルバム『So』のセッションに加わった事で一気に有名になった。
 もちろん作曲にも才能を発揮し、ポップやロック音楽の分野での活動が主力であったが、2005年、ソロ・ジャズ・アルバム『Neighbourhood』をECMからリリース(上記)。ヤン・ガルバレク(サクソフォーン)、トーマス・スタンコ(トランペット)、マルチン・ボシレフスキ(ピアノ)などの蒼々たるメンバーでのジャンルを超えた作品で注目された。
 近作にManu Katché『UNSTATIC』(SongsJapan / JPN / SONGX037 / 2016)がある。

(視聴)

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2016年11月 7日 (月)

トーマス・スタンコTomasz Stanko とシンプル・アコースティック・トリオ

ECM世界を描くポーランドのベテラン・トランペッター

230405_stanko_1_event_detail

 これも秋の夜の回顧シリーズである・・・・・。
 ポーランドのベテラン・トランペッターのトーマス・スタンコTomasz Stanko(1942-)と、マルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski(1975-)のシンプル・アコースティック・トリオの結合でのカルテット・スタイルによる十年前のアルバムを回顧している。
 この私の愛するシンプル・アコースティック・トリオの近作は、昨年リリースされたサックス奏者とのカルテット作品「Speak Of Life」であった訳だが、以前に同じこのECMから、トーマス・スタンコとのカルテットで2枚がリリースされている。マルチン・ボシレフスキ自身、おそらくスタンコから自己のピアノ・トリオへのトラペットやサックスを加えたカルテットの面白さ多くを学んだのではないかと想像し、その結果、もう一度聴き直しと言うところなんです。

<Jazz>
Tomasz Stanko Quartet「Lontano」
ECM / GERM / ECM 1980 9877380 / 2006

Lontano

Recorded Nov. 2005, Studio La Bussonne,Pernes-les-Fontaines
Prodused by Manfred Eicher


TOMASZ STANKO(tp), MARCIN WASILEWSKI(p), SLAWOMIR KURKIEWICZ(b), MICHAL MISKIEWICZ(ds)

Lontanolist  スタンコ本人が”これまでで最高の作品になると思うよ”と予告していたECMからの作品で評判になったモノだ。母国ポーランドの私の好みのピアニスト・マルチン・ボシレフスキのシンプル・アコースティック・トリオを従えたカルテットでの作品。
 とにかくマルチン・ボシレフスキのピアノの叙情性と美しさをバックにしてのスタンコのミュートを効かせたトランペットが永久な響きで歌いあげるわけで悪いわけが無い。
 そこに又Eicherが絡むわけで、そりゃー理知的であり、哲学的世界でもあり、深遠な世界の異空間の構築はお見事なのだ。
 オープニングはボシレフスキの澄んだピアノが響き、冷徹とも言える世界を描いたところにスタンコのトランペットがむしろ暖かさと深遠さを交えた響きが重なるというECM世界、とにかく痺れきったアルバムだった。

              *           *          *

<Jazz>
Tomasz Stanko Quartet「Suspended Night」
ECM / GERM / ECM 1868 / 2004

Suspendednightw

TOMASZ STANKO(tp), MARCIN WASILEWSKI(p), SLAWOMIR KURKIEWICZ(b), MICHAL MISKIEWICZ(ds)
(Tracklist) 1.Song for Sarah    2. Suspended Variation I-ⅹ


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 75年生まれのボシレフスキが30歳になろうとしているころのスタンコの指揮下での作品。彼のピアノは、キース・ジャレットに惚れ込んでピアニストを志したと言うだけあって、ビル・エヴァンスからのスタイルを見事に演じている。そしてこのスタンコとの共演が又若きシンプル・アコースティック・トリオを大きく育てたとも言われている。ゆったりと叙情的に流しながらも、スタンコのトランペットのメロディーを支える技術はお見事である。
  このアルバムもかなりクールな世界といって良いのでしょうね。トランペットが深遠な緊張感もって迫り、一瞬の叫びで切り込んでくるところが凄い。とにかく2曲目から11曲までの10のバリエーションでアルバム一枚を埋めてしまう。とにかく繊細さは、スタンコに勝るとも劣らないボシレフスキの持つピアノであって、その
兼ね合いの見事なインプロヴィゼーションの世界としてはバラエティにもとんでいて多分Eicherも満足の一作であったと思う。

(試聴)

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2015年1月 2日 (金)

謹賀新年 2015 ~ マルチン・ボシレフスキ・トリオMarcin Wasilewski Trio「Spark Of Life」

明けましてお目出度うございます
               今年もよろしくお願いします

                                       2015年 

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ナポリ Napoli(南イタリア)の12月の朝        (photo 2014.12)
    ポンペイを全滅させたヴェスヴィオ火山(左側の山影)のむこうに太陽が登る   

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ユーノーの神殿 Tempo di Giunoneにて地中海を臨む   (photo 2014.12)
  (アグリジェントAgrigento=南イタリア・シチリア島)
 紀元前470年、シチリア島に入植してきたギリシャ人によって建造された神殿遺跡

                **    **   **

 さて新年早々のミュージックとなると、まずは昨年リリースされたアルバムでお気に入りながらここに書き落としていたアルバムを記しておきたい。それも昨年の大晦日からこの新年を迎えての二年越しに選んで聴いたアルバムでもあります。

   <Jazz>

     Marcin Wasilewski Trio w/ Joakim Milder
     「Speak Of Life」
      ECM / GER / ECM 2400 / 2014

Sparkoflife

Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz (ds)
Joakim Milder (ts)
Recorded at Lugano in March 2014
Produced by Manfred Eicher

Sparkoflifelist ポーランドのSimple Acoustic Trioのマルチン・ボシレフスキ・トリオの久々のアルバム。今回はトリオにサックスが加わっての作品。私にとっては所謂ボシレフスキのピアノ・トリオもので満足なんですが、これにスウェーデンのサックス奏者ヨアキム・ミルダーを招いてのマルチン・ボシレフスキのオリジナル4曲に、あのポーランドのジャズの巨匠コメダはじめハービー・ハンコックそしてスティングの曲などが演じられている(右)。

 マルチン・ボシレフスキについては過去にも何回か取り上げてきたが(参照:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/marcin-wasilews.html ) 、このアルバムは、ECMからも4枚目になるところからみても解るように、多分Eicherのお気に入りと思われる。そんなところら想像されるように、確かに彼のピアノ・トリオで醸し出す世界は非常に美しく心が落ち着く演奏である。
 そこで2014年を送り心新たに2015年を迎えるに当たり、静かにこのアルバムをじっくりと聴いて過ごしたというところなのである。そしてヨアキム・ミルダーのサックスもなかなか叙情的な演奏で心に響く世界を構築する。そんなところからもマルチン・ボシレフスキ・トリオとの組み合わせも文句は無い。
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  このアルバムにも、ボシレフスキが何回と演奏しているあのコメダの映画「ローズマリーの赤ちゃん」のテーマ曲”Sleep Safe And Warm”の名曲が登場する(6曲目)。ここではサックスによるメロディーが奏でられ、これ又過去の演奏と一味違ったところを披露している。
 又このアルバムのタイトル曲であるボシレフスキの曲”Speak Of Life”は、このカルテットでの演奏が3曲目に登場し、控えめなドラムスの刻むリズムにピアノが美しく流れ、それにサックスが哀愁のメロディーを乗せる。そして最後に再びこの曲が登場し、それは今度はピアノ・トリオのみの美しい演奏でアルバムを閉じるところは心憎いところだ。

(視聴) Marcin Wasilewski Trio w/ Joakim Milder

                 **            **

  さて今年は未(ひつじ)年ですね・・・・と言うところでこの年の幕開けとしてRoger Waters (Pink Floyd) の「Animals」からの”SHEEP”を視聴しましょう(↓)

(視聴)Roger Waters  "SHEEP"

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2013年3月 5日 (火)

マルチン・ボシレフスキ(Marcin Wasilewski)Simple Acoustic Trio : 「Lullaby Rosemary」

今、旬なピアニストにとってのクリシュトフ・コメダの曲
  ~特に”ローズマリーの赤ちゃん”が印象的~

Wtrio_2  今、ポーランドの旬なJazzピアニスト、レシェック・モジジェルのアルバム「Komeda」を先日取り上げたが、これはポーランドの代表的Jazzピアニスト・作曲家のクリシュトフ・コメダの曲をモジジェルのセンスでシャズ演奏したものだ。しかし・・・・これを聴くと言うことはやっぱりポーランドのマルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski(マルチン・ヴァシレフスキとも発音されるようだが)が、既に1995年にピアノ・トリオ(↑)でやはり挑戦しているので、そのアルバムをここで取り上げるのである。


<JAZZ> Simple Acoustic Trio 「Lullaby for Rosemary」
              nottwo Rcords  , MW727-2  (GPTS 707) ,  2001
              Recorded Feb.7-8,1995 at S3 Studio Warsaw

Lullabyforrosemary

 このシンプル・アコースティック・トリオは、ポーランドの若きピアニストのマルチン・ボシレフスキがリードする少年時代の友(ベースのクルキェヴィッチ)と結成しているトリオで、1990年に15歳でデビューしているポーランド民主化の落とし子である。2000年代になって私は知ったわけであるが、その演ずるピアノのタッチと旋律の美しさはポーランドにおける今や代表株。フリーなセンスをも持ち合わせて聴く者を楽しませてくれている。(参考:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/marcin-wasilews.html
 もともとポーランドという国は文化の中核に音楽をおいており、ジャズに対してもその評価は高い。ヴァシレフスキもカトヴィッツェ音楽大学ジャズ・ポピュラー音楽部を卒業して現在に至っているという。
  Members
       マルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski : Piano
   スワヴォミル・クルキェヴィッチSławomir Kurkiewicz : Bass
   ミハウ・ミシュキェヴィッチMichał Miśkiewicz : drums


Sat_komeda_2     さてこのアルバムであるが、1995年のリリースで、なんと恐ろしいというかボシレフスキの20歳時の作品。当時はこのような作曲者コメダの顔のジャケ(右)であった。そしてリニューアルされての登場は、ジャケが変えられ一曲加えられたものが現在手に入る。タイトルも「KOMEDA」から「Lullaby for Rosemary」と変えられているのである。
 一方彼等の近年のアルバムは、ECMからとなり、トリオ名は変わって”Marcin Wasilewski Trio”の名でリリースしている(アルバム「January」、「Faithful」)。

Lullabyforrosemarylist  このアルバムのTrack-Listは左のような8曲+1曲。もちろんいずれもコメダの作品を彼等の解釈で演奏している。コメダは本来医者であったらしいが、音楽にご執心になって、名前も本名からコメダに変えてしまったというのだが・・・・・。
 モジジェルのアルバムもオープニングはこの”Sventetic”からスタートさせたが、これも素晴らしい曲で、彼はややテンポを早めスリリングな感じを出した。一方このトリオの15年前の演奏は、イメージが違っている。テンポはやや緩めにそして優雅さ美しさが前に出ている。しかもトリオとしてDouble-Bass やDrumsをも前面に出してのパートを含んでの展開をみせる。
 このように、コメダの曲といえども演奏家の感覚で異なってくるところが醍醐味であって、それぞれ私にとっては快感だ。

Rosemary1  さてメインは”Sleep Safe and Warm”(映画「ローズマリーの赤ちゃん」の主題曲)になると思うが、このトリオは最後にこの曲を持ってきて、このアルバムの中盤の起伏を静かに納めるべく演奏する。それにつけてもあの「ローズマリーの赤ちゃん Rosemary's Baby」は恐ろしいと言うか、強烈なインパクトを持たされた映画であった。主人公ローズマリーの純粋さを美しく讃え挙げているかのようにも聴こえる曲でありながら、その裏の恐怖をジワッと感じさせるコメダの曲は彼の最高峰であろう。それを見事に演奏してみせるのである。20歳にしてこの味付けをしているところに恐ろしさも感ずるマルチン・ボシレフスキであった。
 このロマン・ボランスキー監督の1960年代末の映画「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・レノン、オノ・ヨーコが住んでいたダコタ・ハウスで撮影されたもので、ホーラー映画と言われるが、現在のものとは一線を画して、映像でなくストリーで恐ろしいインパクトを与えるところは芸術性が高い。そこに描くものも女性の神秘にも似た世界が展開するところも更に評価されるところだ。原作はアイラ・レヴィンというが、この映画が原作どおりなのかは未だに確かめてないが、コメダの曲が見事に文学と映画の芸術の歴史を作るに大いに貢献している。

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=zd8iXsbXlLQ

  [PHOTO 今日の一枚]

P2102401monoblog
(OLYMPUS PEN E-P3   M.ZUIKO DIGITAL 12-50mm 1:3.5-6.3 EZ )

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