マルチン・ボシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」
鉄壁のトリオによるインプロの華と深遠なる美
<Jazz>
Marcin Wasilewski Trio 「En attendant」
ECM / IMPORT / ECM 2677 /2021
Marcin Wasilewski(p)
Slawomir Kurkiewicz(double-b)
Michal Miskiewicz(ds)
Recorded August 2019
Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines
Engineer : Gerard de Haro
Mastering : Nicolas Baillard
Cover photo : Max Franosch
Design : Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
待望のマルチン・ボシレフスキMarcin Wasilewski(このポーランド人の名前の読み方が難しく、当初このように言っていたのでそのままとしている)のトリオによるニュー・アルバムのリリース。
もう何年か前に彼が新進気鋭としての結成したシンプル・アコースティック・トリオの『コメダ』がお気に入りになってから、もうこのトリオも25年にはなると思うが、とにかくポーランドの音楽性の高さには何時も驚かされてきた。そして彼も円熟して最高潮の中で、こうして久しぶりにトリオのみのメンバーでのアルバムと言うことで大いに期待していたところである。
近年はネットにての音楽配信が盛んになり、既に当アルバムの曲MQAハイレゾ・サウンドの"In Motion,Part Ⅰ"をダウンロードして聴いていたので、おおよそのこのアルバムの雰囲気も解ってはいたが、ここにやはりアルバムを手にして全7曲を一貫して聴くとその感動も大きい。
(Tracklist)
1.In Motion (Part I)
Wasliewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
2.Variation No.25 from: Goldberg Variations
J.S.Bach,Goldberg Variations
3.Vashkar
Carla Bley
4.In Motion (Part II)
Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
5.Glimmer Of Hope
Marcin Wasilewski
6.Riders On The Storm
Morrison/Densmore/Krieger/Manzarek
7.In Motion (Part III)
Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz
昨年5月にリリースしたテナー・サックスのJoe Lovanoを迎えた作品『Arctic Riff』も好評だったが、今回はマルチン・ボシレフスキ・トリオとしてのECM7作目。やはり私としては純粋にこのようなトリオの作品が圧倒的に好きで、今回は大いに喜んでいる。
そもそもこのトリオはスタートは「SIMPLE ACOUSTIC TORIO」の名前であったが、現在はピアニストのボシレフスキをリーダーとして「Marcin Wasilewski Trio 」と名乗っている。しかしメンバーは一貫して変わっておらず、鉄壁のトリオで音楽性においても三者共に乱れのない発展をしてきているところが魅力。ジャズ界では美しさと真摯なる世界としてもピアノ・トリオが燦然として輝いているが、欧州でのその発展は素晴らしい。そんな世界を堪能出来るのである。
三人による共作"In Motion"が、上のリストにみるようにPart 1から3と、3曲構成としてアルバムのスタート、中盤、締めくくりと位置している。このようにトータル・アルバムを一つの世界として描いていて、その美しさと深遠さとそしてフリー度が高まった世界で有りながら三者の乱れない奥深さに納得する。
そしてなんとバッハのM2."Variation No.25 from: Goldberg Variations"が登場し、これがここではモーツァルトの美しさの如く演じられるのには驚いた。
更に何故かCarla BleyのM3."Vashkar"の登場、彼女の実験色の世界に突入。
そしてボシレフスキー自身の安らぎに通ずる曲M5."Glimmer Of Hope"、更にM6."Riders On The Storm"と、ドアーズの曲が気品をもって演じられるところは、かなり謎が掛けられた気分である。
しかし、究極はマンフレッド・アイヒヤーの世界に通ずるところ、彼らのトリオの描くインプロヴィゼーションの不思議な美に纏め上げられたこのアルバム、静かにして深遠、そしてその美しさは、ピアノのメロディー・ラインや響きに止まらず、繊細なスティック音のドラムスや、ベースの単なるズム隊でなくメロディにも大きな役を担っていて、トリオとしてのセンスの高さが感じられた。
相変わらず、このトリオは虜にされてしまう世界を持っている。
[参考] Discography
(Marcin Wasilewski Trio)
『シネマ・パラディーゾ』 - January (2008年、ECM)
『フェイスフル』 - Faithful (2010年、ECM)
「Spark of Life」 (2014年、ECM) (with Joakim Milder)
「Live 」(2018年、ECM)
「Arctic Riff」(2020年、ECM) (with Joe Lovano)
(Simple Acoustic Trio)
『コメダ』 - Komeda (1995年、Gowi)
「When Will the Blues Leave」 (1996年、Polonia)
「Live in Getxo」 (1996年、Hillargi)
『HABANERA』 - Habanera (2000年、Nottwo)
『ララバイ・フォー・ローズマリー』 - Lullabay for Rosemary (2001年、Nottwo)
『トリオ』 - Trio (2005年、ECM)
(評価)
□ 曲・演奏 : 90/100
□ 録音 : 90/100
(試聴)
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