ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「Concert in Hannover 2020」
オーケストラとの圧巻の協演による・・・
メルドーの欧州伝統クラシックへの挑戦 (歴史的貴重盤登場)
<Classic>
Brad Mehldau,piano
Clark Rundell, conductor NDR Radiophilharmonie
「Concert in Hannover 2020」
HEADLESS HAWK / HHCD-20703 / 2020
ここに来て、コロナ渦への心象のアルバム『Suite:April2020』、そして先般の聴く方はあまり気合いが入らなかったアルバム『Finding Gabriel』と違って、本格的ジャズ・アルバム『Round Again』と発売が続くフラッド・メルドー(→)だが、今年2020年の一月に、ドイツにてのメルドーの古典派からロマン派音楽のクラーク・ランデル指揮によるNDRラジオフィルハーモニーとの共演ライブの模様を収録した最新ライブ盤がコレクター相手にリリースされている。
つまり今やジャズ・ピアニスト世界ナンバー1とまで言われるブラッド・メルドーの驚きのヨーロッパ伝統クラシック音楽への挑戦だ。考えてみれば、2年前にはアルバム『アフターバッハ』では、バッハ曲のクラシック演奏に加えて、それをイメージしての彼自身のオリジナル曲を展開したわけで、クラシック・ファンにも驚きを持って歓迎されたわけで、そんなことから、今回のドイツでのこんな企画もさもありなんと思うのである。
このコレクター・アルバムは、音質も期待以上に良好で、メルドー・ファンにとっては彼を語るには是非必要で内緒に持っていたい貴重盤になりそうだ。
(Tracklist)
1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered ClavierBbook I), BWV 855 7:50
プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855
2.Concerto For Piano And Orchestra 1st Movement 14:17
3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement 12:12
4.Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement 12:30
プレリュードBの後のプレリュード 10の短調
「フーガの芸術」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX
ヨハンセバスチャンバッハ/アントンウェーバーン
「ミュージカルの犠牲者」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)
(Bonus Track) ライブ・アット・コンサートホール、ハノーファー、ドイツ 01/31/2020
5.West Coast Blues / Brad Mehldau Trio
やっぱりスタートは、バッハの楽曲「プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855」からで、クラークランデル(→)の指揮によるこのオーケストラ(NDR-Radiophilharmonie 右下)にメルドーのピアノが融合というか協演というか素晴らしい刺激的演奏が展開する。しかもこのアルバムはコレクターものではあるが、放送音源を収録しているもので、所謂オーディエンス録音モノとは異なり、プロ収録でクリアな迫力のある音が聴ける。
パターンはピアノ協奏曲スタイルであって、この録音はオーケストラ自身のそれぞれの音の分離もよく、更にメルドーのピアノは中央にはっきりクリアーに聴ける録音となっていてファンにはたまらない。
M3."Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement"は、素晴らしい勢いを描いて演奏され展開するが、管楽器群の高揚をメルドーのピアノがそれをきちっとまとめ上げるが如く響き渡り、それを受け手のストリングスの流れが美しい。普段のジャズの響きとは全く異なったメルドーのピアノ迫力の音に圧倒される。一部現代音楽的展開もみせるところが、なんとメルドーのピアノによってリードしてゆくところが快感。ちょっとショスタコーヴィッチを連想する演奏にびっくり。
M4."Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement"は、ストリングスのうねりが納まると、ほぼソロのパターンでピアノがやや強めの打鍵音でゆったりしたテンポで響き次第に落ち着く中にホルンが新しい展開を、そして再びストリングスの美しい合奏とコントラバスのひびき、ハープの美音、それを受けてのメルドーの転がるようなピアノの響きを示しつつも次第に落ち着いたメロディーに繋がってゆく。
こうゆうクラシック・スタイルの評価には何の術もない私であって、感想も至らないのだが、そこにみるメルドーのジャズにおける音との違いがくっきりとしてこれを一度はファンは聴いておくべき処だろう。
なお、このアルバムには、ブラッド・メルドー・トリオが最近よく演奏する曲"West Coast Blues"がボーナス収録されている。こちらは録音はそう期待できないが、演奏の内容はそれなりに楽しい。
2年前にリリースされた名作『アフター・バッハ』の成功により、クラシック畑からも絶賛を浴びたことで彼の多様なピアノ・スタイルは絶好調だ。今回、ドイツで行われたクラシック・ライブも彼にとっては更なる充実の一歩になることは間違いないところだ。
(評価)
□ 演奏 90/100
□ 録音 85/100
(視聴)
現在、このHannoverのライブ映像は、見当たらないので「アフターバッハ」を載せます
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