パトリシア・バーバーPatricia Barber 「HIGHER」
ベテランの醸し出す世界は展望に満ちていた
<Jazz>
Patricia Barber 「HIGHER」
ArtistShare / U.S.A / AS0171 / 2019
Patricia Barber, piano, voice
Patrick Mulcahy, bass
Jon Deitemyer, drums
Neal Alger, acoustic guitar
Jim Gailloreto, tenor saxophone
Katherine Werbiansky, lyric soprano
ヴォーカリスト、ピアニストにして作曲家でもあるパトリシア・バーバーの久々の新作(レーベルはArtistShare、彼女のDiscographyは末尾参照)。私の米国では最もと言ってよい関心の高い女流ミュージシャンだ。なんと1955年生まれであるから、歳はおして知るべしというところ。
過去にここで何回か取り上げてきたように、様々な作品に取り組んできたヴェテランである。そして今回は8曲の自作曲でジャズの枠組みの中での組曲的手法によって聴かせるところに、まだまだチャレンジ精神はみなぎっている。そんな意欲作であるが、極めてヴォーカルは聴きやすく優しく説得力あるところにある。いずれにしてもヴェテランならではの味わいが溢れている。
(Tracklist)
Angels, Birds, and I ...
1. Muse (Patricia Barber)
2. Surrender (Patricia Barber)
3. Pallid Angel (Patricia Barber)
4. The Opera Song (Patricia Barber)
5. High Summer Season (Patricia Barber)
6. The Albatross Song (Patricia Barber)
7. Voyager (Patricia Barber)
8. Higher (Patricia Barber)
- - - - - - - - -
9. Early Autumn (words: Johnny Mercer, Ralph Burns, Music: Woody Herman)
10. In Your Own Sweet Way (Music: Dave Brubeck)
11. Secret Love (Words: Paul Francis Webster, Music: Sammy Fain
12. The Opera Song with Katherine Werblansky (Patricia Barber)
スタートのM1."Muse "がいいですね、語り調で優しいヴォーカル、そしてそれにも増して優しさ溢れるピアノの美旋律。
このM1.からM8.まで彼女のオリジナル曲が連なり、" Angels, Birds, and I "命名されたこの8曲の組曲に仕上げているようだ。
M2."Surrender "はアコースティック・ギターを中心にバックを支える。ここにも後半のピアノの美しさの流れは圧巻。
M3."Pallid Angel"にはサックスの登場と多彩。M4."The Opera Song "はこの流れの中で、特異な展開に驚く。
流れは比較的ゆったりとしていて、一つ一つかみしめての味わいを示すが、曲は多彩な展開をしている。
M6."The Albatross Song "の描くところは解らないにしても、何か抵抗との対抗的な雰囲気あり。
それに続くM7."Voyager"では、新しき迫る世界に向かってのやや複雑な試みと展開がなされる。そしてアルバム・タイトルのM.8""Higher は、ゆったりとしたピアノ・ソロのバックで、ここに来る展開を経ての身に感じての射してくる光明を感じさせ、展望の中に終わる。
続いて組曲によるコンセプトは一締めとなって・・・カヴァー曲となる。
M9."Early Autumn "の優しいヴォーカル、そして後半のピアノの流れは美しいの一言。
M10."In Your Own Sweet Way "では、彼女のジャズ・ピアノのテクニカルな聴かせどころ。ここに来てベース、ドラムスとのジャズ展開が堪能出来る。
M11."Secret Love"は、聴き慣れた曲をハイテンポで演奏してみせ、彼女の一筋ならないところを垣間見せる。
M12."The Opera Song with Katherine Werblansky " ここで締めとして彼女の曲となり、高音のオペラティックなヴォーカルには驚かされる。いっやー、ただでは終わらないのが彼女だ。
パトシア・バーバーは、音楽一家で育った米シカゴ州出身のジャズ・ピアニスト・作曲家でありヴォーカリスト。アイオワ大学では当初クラシック・ピアノを専攻、しかし次第にジャズへの要素が濃くなる。89年に1stアルバム『Split』で30歳代半ばでCDデビューを果たすと、94年の3rdアルバム『Cafe Blue』(BN 90760)で一気に日本でも知られるところとなる。注目点は20世紀時代の米国音楽芸術に対して、なんと私も注目のロックの要素も大胆に取り入れた。それらは彼女独自のむしろクールと言われる感覚の一つの姿であり、そんなジャズを超えた作品を多く発表している。2002年に通算7枚目となるスタジオ・アルバム『VERSE』(KOC-CD-5736)やその後『Smash』(Concord Music/2013)などをリリース。又2017年に『Modern cool』(Blu-ray Audio/2013)をサラウンド・サウンドで再発している。
いずれにしても、米国ジャズ界での一つの世界を築いてきており、私にとっても貴重なミュージシャンだ。
(参考) <Patricia Barber : Discography>
1. Split : Premonition Records (1989)
2. Distortion of Love : Antilles (1992)
3. Cafe Blue (Two versions) : Blue Note Premo. Records (1994)
4. Modern Cool (Three versions) : Blue Note, Premo. Records (1998)
5. Companion : Blue Note, Premonition Records (1999)
6. Nightclub : Blue Note, Premonition Records (2000)
7. Verse : Blue Note, Premonition Records (2002)
8. Live: A Fortnight In France : Blue Note (2004)
9. Live: France 2004 :DVD Blue Note (2005)
10. Mythologies (Two versions) : Blue Note (2006)
11. The Premonition Years : 1994-2002 Blue Note (2007)
12. The Cole Porter Mix : Blue Note (2008)
13. Smash : Concord Records (2013)
14. MONDAY NUGHT (Live at the Green Mill) : not an Label (2016)
15. Higher : ArtistShare (2019)
(評価)
□ 曲・演奏・歌 ★★★★★☆ 90/100
□ 録音 ★★★★☆ 80/100
(試聴)
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