アレッサンドロ・ガラティ

2023年1月 7日 (土)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati 「TRACTION AVANT vol.2」

あの名作の続編の登場だ !!

<Jazz>

Alessandro Galati   Palle Danielsson   Peter Erskine
「TRACTION AVANT vol.2」
JAZZMUD / Euro / AWD 544260 / Released: 18 February, 2022
(320kb/s MP3)

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Alessandro Galati (p)
Palle Danielsson (b)
Peter Erskine (ds)

Maxresdefaultw2_20230105120301   またしても、アレッサンドロ・ガラティ話である。いっやー-知らなかったですね、私がガラティにぞっこんになったのは、アルバム『TRACTION AVANT』(Via Vento Jazz / Euro / W5820007 / 1994 録音はECMの名エンジニアJan Eric Kongshaug (下左))だったんですが、なんと昨年に・・その続編という事だろうか、この『TRACTION AVANT  Vol.2』がリリース(2022年2月18日)されていたんですね。もともとガラティが先輩二人のキース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットのメンバーであったヨーロッパのトップ・ベーシストPalle Danielssonと、ウェザー・リポートなどのジャズ・シーンをリードしつつけるスーパー・ドラマーPeter Erskineと初トリオを組んでのオリジナル曲やスタンダードの演奏を披露し高評価を得た。そしてここに再びトリオを組んでの(録音日不明)ニュー・アルバムである。
 更に、なんと『TRACTION AVANT deluxe』(下右)もリリースされていて、こちらは両アルバムの合体ものなんですね。

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 そしてリリース・レーベルはイタリアのJAzZMUDで、どうも私の思うにはストリーミング・サービスによるリリースのようだ。(Before the creation of LPs, CDs or the like, music resided in the air. With the advent of digital downloads, music simply returns home, again it is more magical and pure.)

(Tracklist)

1 - Red Milk (with Palle Danielsson & Peter Erskine) 07:42
2 - Someday My Prince Will Come (with Palle Danielsson & Peter Erskine) 06:09
3 - Ripple (with Palle Danielsson & Peter Erskine) 07:07
4 - Blues If and As You Please(with Palle Danielsson & Peter Erskine) 06:51
5 - Palle's Solo (Palle Danielsson ) 01:38
6 - You Don't Know What Love Is (with Palle Danielsson) 07:06
7 - Crinkle (with Palle Danielsson) 04:52
8 - Solar (with Palle Danielsson & Peter Erskine) 07:59

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  1994年の『TRACTION AVANT』(VVJ007)は、当時このバック・メンバーの二人のほうが当然知れていて、ピアニストのガラティはむしろ新人といったところのトリオであったにもかかわらず、素晴らしいピアノ・タッチとメロディ、そしてその叙情性は見事で聴くものを驚かした。そしてガラティの名が知れ渡ることとなるのだが、現在までの多くの名盤がリリースされているにもかかわらず、ここに『Vol.2』のリリースを見たのである。
 このアルバムもまさに美学そのものである。リリカルなプレイで注目を集めている彼だが、透明感溢れるサウンドとその描く世界は、ユーロ・ジャズ・ファン必聴ものである。最後の曲は再演"Solar"であった。

 冒頭のM1."Red Milk"から、優しいガラティのピアノ・タッチの美旋律が流れ即彼らの世界に引っ張り込まれる。
 M2." Someday My Prince Will Come"は、意外に軽快な展開とインプロヴィゼーションが冴えわたり見事と言いたい。
 M3."Ripple "旋律よりは、やや前衛的な音の3者の応酬が聴きどころ。
 M4." Blues If and As You Please"ドラムス・ソロに誘導されてのピアノ、ベースの速攻が描くところにこの3者の相性の良さが聴け、最後は静かに一段落。
 M5."Palle's Solo"ベースの語るような短いソロ演奏。
 M6."You Don't Know What Love Is"ぐっと落ち着いたピアノとベースのデュオ。透明感のあるピアノの響き、相づちをうつようなベース、描く世界はぐっと優しく思索的。
 M7." Crinkle "深いベース音、それに乗ってピアノも静かな美旋律の世界に・・・、そして次第にピアノのペースが上がって即興性が加わって展開。
 M8."Solar "ピアノのゆったりした序奏から、見事なトリオのそれぞれの持ち味を生かしスウィングする展開に織り成すジャズの醍醐味を見せて幕を閉じる。彼らの懐かしがつての演奏のようにも聴こえるが。

 どんなきっかけからこの『Vol.2』の企画がなされたか不明だが、ピアノ・トリオとしてのガラティのクリアな音でのリリカルな演奏は相変わらず見事であるが、この3者のスキのない織り成す演奏が、繊細さばかりでなくダイナミックな展開をも見せ、いかにもトリオとしての相性の良さが聴けて楽しいアルバムであった。

(追記)

 未発表トラックを追加しての「Vol.2」盤であり「Deluxe」盤であることが判明しました。ただし、「Vol.2」の最後の曲"Solar"は、間違えて"alt.version"を加えるべきところ元のものを入れてあるようです。以下がガラティの言葉です。
 「スタジオセッションのオリジナルテープを聴きながら見つけたいくつかの新曲を挿入したアルバムのリリースで新年を迎え、私のキャリアに多くの幸運をもたらし、私の音楽を世界中に知らしめました。
 数日間注意深く聴いた後、私は8つの未発表トラックを選び、元々トラクションアバントCDに収録されていたトラックに追加しました。
その結果、雰囲気が信じられないほど魔法のようなダブルアルバムになりました:私の作曲、標準、自由な即興演奏が新しいバランスで交互になり、多くの新旧のファンの好みに合うことを願っています。」     ( A. Galati. )
(2022年1月6日リリース)Recorded by Jan Erik Kongshaug at Larione 10 (FI).

 

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    87/100

(試聴)

*

 

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2023年1月 2日 (月)

アレッサンドロ・ガラティ alessandro galati 「The Freeway」

            謹賀新年  2023年 

 

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  今年もよろしく御願いします

 昨年は、押し迫ってAlessandro Galati の強力盤TERASHIMA RECORDの『Portrait in Black and White』(TYR-1109)が登場してこちらでも取り上げたのだが、ふと昨年冒頭のCDの入手が困難であったガラティのJAzZMUDのピアノ・トリオ盤を思い出したので、多分多くが聴き逃していたアルバムではないかと、ここに今年の冒頭に登場させます。

 

<Jazz>

Alessandro Galati, John Patitucci, Peter Erskine
「The Freeway」

JAZZMUD / AWD543031 / 2022

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Alessandro Galati(piano)
John Patitucci (bass)
Peter Erskine(drum)

Images_20230101153401 (Tracklist)

1. Sea Shore  06:08
2. Woody's Grouse  03:00
3. You Don't Know What Love Is  07:38
4. Ascending  04:46
5. Bye Bye Blackbird  08:00
6. Hi Dance With You  07:42
7. Tobaccoless  04:52

 相変わらず、ガラティの力みがなく繊細にして流れるようなピアノの美学が満ち満ちているM1."Sea Shore "
 M2."Woody's Grouse "は、一転して畳みかけるアグレッシブな演奏。
 M3." You Don't Know What Love Is"のスウィング・ジャズから静への美学に。
 M4."Ascending " 静かに想いを深く染み通るベ-スのアルコ奏法に、しっとりと聴かせるピアノが、次第に美しさを増して語り聴かせるように響き渡る曲。
 軽快に流れる中にトリオのパワーが満ちていて、三者のバランスが絶妙なM5."Bye Bye Blackbird"に続いて、M6." Hi Dance With You"のベースとピアノの低音の深い沈み込んだ所から、次第にリズミカルに流れる軽いタッチの音世界の描くところはなかなか味な世界。
 最後のM7."Tobaccoless"のベースと共に軽妙に展開するピアノ、リズムにしっかりと乗せるスティック音、次第に盛り上げてゆくところはジャズの醍醐味。

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 このアルバムは米国の二人のミュージシャン(John Patitucci (bass 上左)、Peter Erskine(drum 上右))とのトリオだが、ガラティがリーダーであるピアノ・トリオは、一味も二味も繊細であったり、奥深かったり、美しかったりと欧州ぽい。更にそれに加え、時にはアグレッシブにと、聴くものを飽きさせない。又今年の活動に大いに期待である。

(試聴)

 

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2022年12月27日 (火)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio「Portrait in Black and White」

カルロス・ジョビンをガラティ世界にて蘇えらせる

<Jazz>

Alessandro Galati Trio「Portrait in Black and White」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1109 / 2022

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Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Andrea Beninati (drums)

Artesuono Recording Studios (Italy)
Recorded by Stefano Amerio

Ag5xw  アレッサンドロ・ガラティの新作は、なんとボサノヴァのアントニオ・カルロス・ジョビン集。ちょっとピンとこないのだが、果たしてガラティの手によるとどうなるのか、まさに興味津々のアルバムの登場。
 ガラティは、私の最も愛するイタリアのジャズ・ピアニスト、彼に関してはここで何回と取り上げているが、それはアルバム『TRACTION AVANT』(Via Veneto Jazz/1994)から始まっての歴史ではあるが、近年寺島レコードとの契約によって矢継ぎ早にアルバム・リリースがある。

 当初、寺島靖国はこの作品をリリースすることに前向きではなく、寺島レコードとしてジャズ作品のリリースを望んでいた。しかし、送られてきた音源を聴いてその思いは一転し、"アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲が、ジャズ・ピアノ・トリオ作品として成立していることに驚き、その出来栄えに感嘆したのだ"・・・と言うのがこのアルバムのリリースまでの経過らしい。
 確かに、イタリアのピアノ・ジャズ名手といえども、ユーロ・ジャズのまさに中軸にあって、ジャズとも言えないボサノヴァとは聴き手を裏切ってしまうだろうと心配するのは当然である。
 しかし、冒頭の曲から驚きはスタートするのだ。

(Tracklist)

1. O Que Tinha de Ser
2. Modinha
3. Samba de Uma Nota S
4. Inūtil Paisagem
5. STinha de Ser Com Voc
6. Fotografia
7. Dindi
8. Vivo Sonhando
9. Eu Sei Que Vou Te Amar
10. Retrato Em Branco e Preto
11. Por Toda a Minha Vida
12. Luiza

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   M1."O Que Tinha de Ser"から、完全に裏切りというか大歓迎というか・・優しくリリカルな奥ゆかしく繊細ながらしっかり描くピアノのガラティ・ムード満開で、どこにボサノヴァがあるのやら、メロディも初物感覚でジョビンもおどろきの世界ではないでしょうか。いっやーーいいムードだ。
 そして次に聴いていっても、ボサノヴァ感覚のラテン・ムードは完全に消え去られ、そこにあるのはガラティの優しく軽やかさから一方耽美なやや陰影のあるピアノの調べに、ベースがしっかり支え、ドラムスのシンバル音が響く。ああ見事なユーロ・ピアノ・トリオ作品だ。
   M4."Inutil Paisagem"ではガラティの前衛性もチラッとみせ、M9."Eu Sei Que Vou Te Amar"は、低音のベースの語りがピアノの軽さと対照的で面白い。
 M10." Retrato Em Branco e Preto"は、ドラムスのスティック・ワークが繊細の美、ベースの低音の響き、ピアノの流れる演奏が盛り上がる。
 M12."Luiza"は、ピアノの静かな旋律美で幕を閉じる。

 今回のトリオはベースはグイド・ツォルン(上左)でしっかりと低音でリズム、時にメロディーとガラティの世界を支えているし、ドラムスはアンドレア・ベニナティ(上右)が、これも私の好きなシンバル音の多様で堂々と渡り合って演じている。トリオ作品としての価値も高めている。
 とにかく、私がジョビンとして聴いたことがあるなと解ったのは、M3."Samba de Uma Nota S"だけだが、かってのセルジオ・メンディスにたたき込まれたメロディーが頭に浮かんだだけで、他は完全にガラティ・メロディとして聴き入ったことになった。

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 録音に関しては、やはり名手ステファノ・アメリオが担当し、なんとミックス、マスターはガラティというのには驚いた。とにかくベースがしっかり中央に陣取って、やはりピアノも中央だがやや左右に広がり、そしてドラムスは更に広く左右にシンバル音を響きかせ、トリオ・メンバーの音がしっかりと聴き取れる。彼の技はここまで広がっているようだ。見事な粒立ちの良さと繊細な美しさを描く好禄音盤。この年末に来て今年のベスト盤最有力候補の強力なアルバムの登場だ。

 

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏  95/100
□ 録音        95/100

(試聴)

"O Que Tinha de Ser"

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2022年3月24日 (木)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio 「EUROPEAN WALKABOUT」

トラッドをピアノ・トリオで・・・そこには美旋律世界

<Jazz>
Alessandro Galati Trio 「EUROPEAN WALKABOUT」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1100 / 2022

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Alessandro Galati (p)
Guido Zorn (b)
Andrea Beninati (ds)
Recorded on Jan.18, 2022 at Artesuono Recording Studio
Recorded,mixed & mastered by Stefano Amerio

 驚きましたねぇーー、昨年から出る出るといっていて延期になって待たしていたアルバム、ようやく発売されたアレッサンドロ・ガラティの新作。見てみると録音がミックス・マスターリングは期待のStefano Amerioはそのまま期待通りで良いのですが、なんと録音日が今年2022年の1月18日となっていて、これなら去年の年末12月や今年1月に出るわけないですね。これでも早いくらいです。

 それはそれとして、ガラティは私の期待のミュージシャンですが、寺島レコードとの関係が出来てから、新作のリリースが早いですね。前作は昨年の『SKYNESS』(TYR-1098)ですからほぼ半年です(録音は2017年で、4年前ですが)。そしてトラッドのピアノ・トリオによる演奏集だ。このリリース目的が、おそらく彼がアルバム作りをしたいとミュージシャンとしての情熱と目さすところの集積というのでなく、希望に答えての演奏集といったところでしょう。その為、今回のアルバムで彼のこんな意思が見えてきた・・というのでなく、我々に楽しませてくれるという範疇のものなんでしょう。そんなところで実は彼の『Traction Avant』(vvj-007/1995)以来惚れ込んで新作に期待してきた私は、若干期待度というのがちょっと違った姿勢でこのアルバムに接しているのである。

 さて、このアルバム、やっぱり寺島氏からの要求に答えたものだろうとのことは、彼のライナー・ノーツを見ても想像できる。勿論、ガラティも決して今回のトラッド集は否定するものでなかったと思うが、果たして彼が今ミュージシャンとして、そしてアルバム造りとしての意思であったかどうかは疑問のところだ。そんなことも想像しながらこのアルバムを聴くのである。
 そして"際立つ美しいメロディ、細部まで行き届く繊細な表現力。哀愁の美旋律は歌心溢れる音楽世界へと誘ってくれる"という宣伝文句そのもものの美しいピアノ・トリオ作品である。

Ag1w (Tracklist)

01. Love in Portofino
02. Verde Luna
03. Dear Old Stockholm
04. Almeno tu nell'universo
05. Last Night a Braw Wooer
06. Cancao do Mar
07. Danny Boy
08. The Water is Wide
09. Liten Visa Till Karin
10. Parlami d'amore Mariu

 「トラッドは外れナシの美曲」と寺島氏は語るように、このアルバムは文句なしの哀愁の美旋律を十分堪能できるトラッド集に仕上がってますね。冒頭のM1." Love in Portofino"から聴き惚れますね。
  しかしガラティ・ファンの私にとっては期待が大きいだけ・・・・ピアニストとして旋律を愛し奏でる"メロディ至上主義"と言われてはいるガラティですが、過去の作品を聴くと必ずしもそれだけではない。彼の目指すところ、いわゆる美しい旋律の重要性と同時にミュージシャンとしての演奏をどこまで極められるかという実験的な世界も作ってきた。そんな意味からは若干虚しさも感ずるのである。

 例えば、彼の作品群の中でもどちらかというと異色に入る『JASON SALAD!』(VVJ-014/2010)の単なる美旋律というよりジャズの奥深さを探る世界とか、又『UNSTANDARD』(VVJ-068/2010)のあの美しい"CUBIQ"のオーボエ、ギターはじめメンバーとのそれぞれの描くところを一つの曲の中でまとめ上げてゆくピアノプレイ。更に『WHEELER VARIATIONS』(SCOL-4024/2017)のインタープレイの真迫のスリルなど、いわゆるジャズ・ピアニストとしての描く世界の極みが尽きない。そんな意味では、今回のアルバムは、美しく演奏するところを聴かせると決まっての曲作り、それぞれの美は素晴らしくても、どこか彼の挑戦的演奏が見えないところがちょっと寂しい。

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   しいて言えばM6."Cancao do Mar"は、ファドで有名なポルトガルの伝統的な歌謡曲のようだが、私にとってはようやくこの曲でトリオとしてそれなりに作り上げたという感じがするのだ。つまり、アルバム全体的に、ちょっと感じられる"ガラティの美旋律演奏にベース、ドラムスが合わせている"というような曲作りでは若干むなしい。私的希望として、もっとトリオとなると、三者それぞれの解釈による演奏と協調が魅力的なのであり、ある意味ではバトル的な感覚での演奏から協調へと向かい曲仕上げを高めてゆくところが聴きたいのであり、そのような流れの中でふと現れる美旋律の美学がガラティの得意とするところであり、聴く者にとっても感動が大きい。ミュージシャンというものは、期待されることは当然嬉しいが、作品に一つの枠が決められてのアルバム造りは、実はそんなに納得しているものでもないのだ。

 トリオ三者にてのスリリングなインタープレイのジャズ美学は、ガラティにもともとある一つの世界であって、その特徴への私の期待があるのである。今回、前作と異なるメンバーのグイド・ツォルン(Bass 上左)とアンドレア・ベニナチ(drums 上右)との演奏準備は十分あったのかどうか、もっと二人は我を出して頑張ってもよかったのではないかと、特にツォルンは遠慮っぽかったように感じた次第。
 しかし、そんなことより"郷愁が感じられ美しい情緒あるピアノがとにかく聴ければよい"ということであれば、やっぱりこれは素晴らしいアルバムである。まあ、テーマがそうゆうことであるので、ガラティ自身も職人ですから難しいことなしで演じたのであろう。したがってこれで実際のところ正解なのかもしれない。

 今回も、録音そしてミックス、マスターリングとStefano Amerioが担当していて、素晴らしいリアルにして繊細で美しくミュージシャンの演ずるところをしっかり描き聴かせてくれるところは見事であった。

(評価)
□ 曲、演奏 :  88/100
□   録音   :  90/100

(視聴)

私のこのアルバムでは一押しの" Cancao do Mar"

 

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2021年9月27日 (月)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Oslo Trio 「SKYNESS」

素晴らしい演奏は、こうした好録音で聴くべしと言うお手本

<Jazz>

Alessandro Galati Oslo Trio 「SKYNESS」
Terashima Records / JPN / TYR1098 / 2021

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Alessandro Galati アレッサンドロ・ガラティ (piano)
Mats Eilertsen マッツ・アイラーツェン (bass)
Paolo Vinaccia パオロ・ヴィナッチャ (drums)

Recorded in Jan.2017, Rainbow Studio, Oslo, Norway
Recording Engineer : Jan Erik Konghaug
Recording & Mastering Engineer : Stefano Amerio
Producer : Yasukuni Terashima

   このニュー・アルバムは、実は2017年に、レインボー・スタジオで実力派ヤン・エリック・コングスハウグをエンジニアに迎えて録音されたもので、もう四年前のものだが、マスタリングは、これまた人気者のステファノ・アメリオである。しかし、これが直ちにリリースされなかったのは、ライセンスを持っている澤野工房の澤野由明(↓右)の意志であったようだ。しかし、澤野由明と寺島靖国(↓左)の絆が実現させたアルバムとしてここにリリースされたわけで、それには惚れ込んだ寺島の熱意であろう。
 寺島は歴史に名を刻む最高音質として評価し実現に向かったのだが、このアルバムはもともと澤野のジャズ心とはうまくリンク出来ずにリリースに至らなかったいたものらしい。しかし「幻の作品」と言うには、大げさだが、ここに寺島レコードとして日の目を見ることになったのである。

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 アレッサンドロ・ガラティは「Keeping the Faith on Melody」(メロディー信仰)、メロディー至上主義を信条としていて、過去に素晴らしいアルバムを残してきた。しかし一方ピアノ・トリオとしても前衛的な世界もしっかり持っていて、その面を強調した世界も持っている。つまり二面をもっているのだ。勿論私は彼のイタリア独特の美旋律のピアノ世界にあるアルバム『TRACTION AVANT』(Via Vent Jazz /VVj007 / 1994)以来惚れ込んでしまって、その後日本では澤野工房が彼のアルバムのリリースに貢献してきた。そして現在に至って寺島靖国がアプローチして近年は寺島レコードと関係が密である。

 とにかく、私の好きな澤野工房のアルバム『Cold Sand』(ATELIER SAWANO / AS155 / 2017=インジニアはStefano Amerio)をリリースする直前の2017年1月に別メンバーで録音し、そのクオリティーの高さに澤野工房がリリースを躊躇してしまった作品であったらしい。しかしこれを知った寺島が澤野との関係の中で、これは最高傑作と信じて発表に至ったもののようだ。

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01 Rob as Pier
02 Silky Sin
03 In My Boots
04 Balle Molle
05 Flight Scene #1
06 Raw Food
07 Flight scene #2
08 Entropy
09 Jealous Guy
10 Skyness

 寺島はとにかく惚れ込んでしまったその音とメロディでの「このアルバムは世に出すには早すぎる最高傑作かもしれない」と豪語するだけあって、成る程このヤン・エリック・コングスハウグとステファノ・アメリオの両エンジニアが関係した音には圧倒される。
 とにかくトリオがそれぞれの位置をしっかり確保しており、冒頭のM1."Rob as Pier"のスタートから、シンバルの清んだ音が響き、ピアノと同列に響き渡るところは、これはまさに寺島の好きな世界であることが解る。又、ベースがその世界を支えているが如く響き渡り、ピチカット奏法にスラッピングした音もリアルに聴くことが出来る。それはこのアルバムの描く一つの重要な世界である曲M5,M7."Flight Seene #1,#2"に特に特徴的だ。
 究極はピアノの響きが余韻までしっかり聴き取れて、その美しさと描く深さに感動である。これはまさに録音・ミックスの芸術品でもある。

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  そして曲の印象は同時期の『Cold Sand』のアルバムにかなり近い。このアルバムの曲群は、ガラティのオリジナルで、一曲のみがジョン・レノンのものだ。つまりスタンダード集というものとは全くの別物で、ガラティが当時想う世界をオリジナルで自己の目指すところに演じていると思う。
 アルバム・タイトル曲M10."Skyness"は、最後に出てくるが、このタイトル名はガラティによる新造語ということらしく、それはオスロに向かう飛行機での「北に向かう空と北欧の氷の大地にみる独特の虚無感」と言うことらしい。このトリオ名には、Osloという名が付けられていることからも、そのガラティの描く世界に繋がっているようだ。聴いてみれば解るが、そんな世界をベースにしたガラティの世界が演じられているのだ。

 ガラティの描く演奏の世界とエンジニアの目指すオーディオ的世界の音の両面からの傑作と位置づけたい。
 こうして、少しでも良い音で聴くことが重要であることを示したアルバムとして、高評価したいところである。

(評価)
□ 曲・演奏 :     95/100
□   録音   :     95/100

(参考試聴)
目下、このアルバムの音源はアップされていない為、同時期のものを・・(いずれ追加予定)

 

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2021年3月 8日 (月)

エル Elle 「Close Your Eyes」 

演奏展開がジャズらしさを増して

<Jazz>

Elle 「Close Your Eyes」 
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1095 / 2021

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Elle  : Vocal
Alessandro Galati : piano
Guido Zorn : bass
Lucrezio Seta : drums

 我が愛するアレッサンドロ・ガラティに見出されてレコーディング・デビューに至ったというイタリアの若手歌姫:Elle=エルの新作。前第1作『So Tenderly』(TYR-1081)は、「ジャズ批評」誌で2019年ジャズ・オーディオ・ディスク大賞のヴォーカル部門でトップ(金賞)に輝いた注目株。実はあのトップに関しては私はちょっと納得しなかったんですが、まあアレサンドロ・ガラティの曲作りと演奏に魅力があるところで納めていた。
 寺島靖国に言わせると、女性ヴォーカルは巧さより声の質に魅力が無ければ・・・と、成る程その意味においては私も取り敢えず納得しておく。
 今回も前作と同じくガラティ率いるトリオをバックにしたニュー・アルバムだが、全曲ガラティが編曲したという構成であるが、ただ同じモノは造らないと言うことか、オープニングの曲から若干イメージは変わって来ている。

 

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01. Comes Love
02. If I Should Lose You
03. Autumn In New York
04. Close Your Eyes
05. My Old Flame
06. I Concentrate On You
07. Once In A While
08. I Fall In Love Too Easily
09. Besame Mucho
10. I'll Be Seeing You

 エルのヴォーカルは、あるところで「"大人の夜の小唄セッション"ぽい」と表現されていたが、確かにそうかなと言うところか。とにかく力を抜いたテンダーにしてアンニュイ、そしてセクシー度も適当というところが魅力か。歌の巧みさというところでは、クラシック歌手を経てきていると言うのだが高度というところにはイマイチだ。ただ声の質が女性としての魅力があるところが支持されるポイントであろう、ウィスパー・スタイルが売り処。

 今回もガラティの編曲演奏がやはり注目するところだ。ロマンティックな耽美性は相変わらずだが、彼の持ち味の嫌みの無い展開が時にスウィングし、時に刺激的なところを織り交ぜての過去の曲の演奏スタイルにとらわれない独自の世界がいい。選曲そのものは寺島靖国が行なったようだが、編曲にはガラティの独自的解釈が強化されて、バラードっぽくを期待した面を特にM1."Comes Love"のようにスウィングした軽快な出だしで、期待とは別展開させているところが面白い。アルバム・タイトル曲M4."Close Your Eyes"も同様でありピアノ、ベースの演奏も楽しめる。しかしどんな場面でも決して力んだ展開はみせず、あくまでもソフト・テンダリーに押さえている。曲の中で、ガラティのピアノ演奏の占めるところも多く、そんな意味では今回の方が、ある意味では変化が多くジャズっぽい。

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  いずれにしても、このエルのヴォーカル・スタイルは、やっぱりウィスパー系がぴったりで、M5."My Old Flame"の流れはいいし、中盤のガラティのピアノも美しい。そしてそのパターンは、M8."I Fall In Love Too Easily"の世界で頂点を迎える。ここではヴォーカルのイメージを大事に間をとりながらのピアノ演奏の世界が美しく、しかも進行して行くうちにスウィングしてみせたり、その流れは如何にもガラティの世界。

 このタイプの女性ジャズ・ヴォーカル世界は、"特にジャズならでは"というムードであって、それを寺島靖国は求めて企画した事がひしひしと伝わってくる。そんなアルバムとして評価したい。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       85/100

(試聴) ""My Old Flame

 

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2020年4月 6日 (月)

キアラ・パンカルディChiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」

やはりパンカルディのヴォーカルはハイレベルであるが異色
~~注目のアレッサンドロ・ガラティとのデュオ

<Jazz>

Chiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1086 / 2020

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Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocalヴォーカル)
Alessandro Galati アレッサンドロ・ガラティ(piano ピアノ)

 このところジャズ・シンガーとしての話題の豊富な個性派キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ。つい先日アルバム『PRECIOUS』(CR73497/2020)のリリースがあった)と、最近、寺島レコードからリリースが多い私の注目の叙情派でありながらアヴァンギャルドな面も見せるキャリア十分のピアニスト:アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリアのフィレンツェ生まれ)のデュオ作品。両個性派同士で実は注目していたアルバム。
  主題はアルバム・タイトルどおりのコール・ポーターの作品に迫ろうとしたもの。もともとキアラ・パンカルディの唄は独特の世界があって、どうも100%万歳して受け入れている訳ではないため、このアレッサンドロ・ガラティのセンスで如何に変貌して迫ってくれるかが楽しみのポイントでもあった。

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(Tracklist)

1. Easy To Love
2. Just One Of Those Things
3. Night And Day
4. So In Love
5. All Of You
6. My Heart Belongs To Daddy
7. It's Delovely
8. Let's Do It
9. Dream Dancing

Ag5x  デュオとは言っても、やはりヴォーカルの占める位置は大きいですね。私にしてはガラティのピアノにそって優しく歌ってくれる方が期待していたんですが、なになにパンカルディの独特の節回しによっての彼女のヴォーカルの独壇場にも近い世界が造られている。パンカルディの声の質は中高音のつややかさはなかなかのものと言えるものでこれには全く不満はなく、更になんといってもハートフルでありテンダリーである点は素晴らしい。しかしその節回しと音程の変化はどこか異質であって、その歌は一種独特な世界ですね。先のアルバムとその点は全く変わっていない。この世界にぞっこん惚れ込むという人が居るとは思うが、どうも素人向けとは言えず、万人に受けるという点ではちょっと疑問にも思っている。

 イタリアのミュージシャンはあらゆる分野に多く活躍していて人気も高いが、この世界においてはパンカルディはやはり独特である。まさか私自身のみがそう感ずるのだろうか ?、ライナーノーツを担当している寺島靖国も声の質の良さを認めては居るが、あまり異質性については語っていない。
 いずれにしても彼女の唄はやっぱり上手いというのは当たっているのだろうと思う。とにかく上手い・・・しかし私は魅力については、もう少し馴染みやすい世界であってほしいと思うのである、残念ながらそんなことで万人向きではない。そうは言っても、丁寧にじっくりと語りかけてくる様は出色であり魅力も大いにあるところが聴く方は複雑ですね。一方リズムの展開においては、意外に彼女の魅力的なパンチ力のセンスもみられて、多芸な能力の持ち主と言って良いのだろう。

 そして今回のように、コール・ポーターの曲を何故選んだのかと言うことでは、ガティもパンカルディも曲の良さと言うことに一致していた。そしてこのアルバムで私が好きなのは、M4."So in Love"で、彼女の歌が情感豊かでいいですね、ムードが最高。続くM5."My Heart Belongs to Daddy"のガラティのピアノは美しい。
 しかしちょっと期待に反して、ガラティは対等なデュオというのでなく「伴奏者」に徹していて、彼の味のあるメロディーの表現は、ヴォーカルを生かす為に仕組まれたピアノの味をしっかり作り上げているのだ。

 私の個人的評価はまあ質の高さは認めるが、受け入れやすさや聴きやすさと言う点ではちょっと低くなった。こうゆうのはイタリア本国ではどんな評価か知りたいところだ。

(評価)

□   編曲・歌・演奏  ★★★★☆ 85/100
□ 録音       ★★★★☆ 85/100

(視聴)

このアルバム関係はまだ見当たらないので・・・過去のモノを
Cole Porter "So in Love" (これは惚れ惚れしますね)

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2019年7月25日 (木)

エルELLEのファースト・アルバム「SO TENDERLY」

美しいガラティのピアノをバックにウィスパー・ヴォイスで

<Jazz>

ELLE 「SO TENDERLY」
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1081 / 2019

Sotenderly

Elle (vocal)
Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Lucrezio De Seta (drums)

Ag1   初お目見えのエルElle本人が期待していたとおりの、日本盤としてはビックリのデビュー・アルバムですね。これは寺島レコードとイタリアのピアニストのアレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati(→)とのプロジェクト、その結果の産物なんですね。ガラティはジャズ畑での私の最も愛するピアニストであり、その彼に見いだされたというエルであるが、彼女がイタリアのジャズ・クラブで歌っているのを見つけたようだ。
 そんな結果生まれたアルバムであるので、ガラティの優しい美旋律の生きたピアノ・トリオの演奏で、彼女のヴォーカルがしっとりと聴ける。それはまあウィスパー・ヴォイスという世界ですね。寺島靖国もお気に入りとか・・・そうなれば聴かねばならない一枚となってます。

(Tracklist)

1. How Insensitive
2. Tenderly
3. Time After Time
4. These Foolish Things (Remind Me Of You)
5. Moon River
6. The Nearness Of You
7. Body And Soul
8. Over The Rainbow
9. I Wish You Love

Safe_image

 やはり日本向け仕上げか、ポピュラーなスタンダード曲を中心に収録されている。
  そして成る程M1."How Insensive"での冒頭からソフトにしてマイルド、やや物憂いエルのウィスパー・ヴォイスが迫ってくる。続くM2."Tenderly"でもその流れは続き、中盤にガラティのソロに近いピアノ、そしてGuido Zornのベースが聴かれ、成る程ガラティの優しく美しくといった演奏もテーマになっていることが解る。
 とにかくエルはもともとはオペラ歌手も務めたとはいうが、極力抑えた発声で夜のジャズ・ムードを盛り上げている。
   しかし、その点はアルバム作りにも有能なガラティのこと、M3.,M4ではメディアム・テンポ曲を配して、そして再びM5."Moon River"、M6."The Nearness Of You"はスロー・テンポに仕上げている。そして彼女のややハスキーで語りかけるような歌声が相変わらず続く。それならむしろM3.,M4.ではもう少し明るく歌い上げたほうがアクセントがあって良かったのではとも思ったところである。まあ私にしてみれば、肩の力を抜いたガラティの美しい旋律のピアノを聴けるのであまり文句はないのだが、とくにそれはM6.M8."Over The Rainbow"の中盤にも顔を出して、しっとりとした中に美しさがあるピアノは出色である。まあこれが目当てでこのアルバムを手に入れているというところもあって、取りあえず満足のアルバムであった。

Trentinoinjazz

 エルに関しての情報は少ないのだが、ボサノバ曲を自作自演していたふしもあり、かなりの実力派か。年齢も30歳代 ?。又こうして聴いていると彼女の押さえられたややハスキーなウィスパリング型の声はむしろ作られたもので、かなり透明感のある声を持っている様子も窺える。そしてかなりチャーミングな面も持っていそうだ。又これからのガラっと変わった発展もありそうな予感がする。

(評価)

□ 選曲・歌・演奏  ★★★★☆
□ 録音       ★★★★☆

( 試聴 目下、この関係の映像等は見当たらないので・・・ちょっとお預け)

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2019年2月 5日 (火)

アレッサンドロ・ガラティのニュー・アルバム Alessandro Galati 「Live from The Inside Out」

トリオはやっぱりライブが楽しい!!

<Jazz>

Alessandro Galati 「Live from The Inside Out」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1077 / 2019


1007803908

ALESSANDRO GALATI(PIANO)
GABRIELE EVANGELISTA(BASS)
STEFANO ATKINSON(DRUMS)

Recorded in 2015-2018 in The Cities of Pisa, Prato, Roma, Bolzano, Palermo.

 このブログを見ると解ると思いますが、私はとにもかくにもアレッサンドロ・ガラティのファンである(ここでは12回目の登場だ)。それはアルバム『TRACTION AVANT』(VVJ007/1994)の感動以来なんですね。
 今回、こうして前回に続いて彼のニュー・アルバムの感想を書くということは、何とも幸せ感いっぱいで有るのだ。寺島靖国の努力から生まれたのでしょうが、今回「ソロ版(『Augustine』(TYR-1078))」とこの「トリオ・ライブ版」が同時にリリースされるという快挙があったのです。

 そしてここでは、この2枚組のトリオ・ライブ版のほうに注目してみる事にした。”アレサンドロ・ガラティ・トリオ”というのはこのところ不変のメンバーで(上記)、これもお互いの関係が上手くいっていると言うことなんでしょうね。ピアノ・トリオといってもベース、ドラムスの活動もしっかりしていてはじめて楽しめるのでありますからね。

A_g_2(Tracklist)
Disc 1
1. L'incontro
2. Sorry I've Lost Your Number
3. Nina
4. Seals
5. How Deep Is The Ocean

Disc 2
1. Casi Abstemia
2. Trampin’
3. Taylor Without Scissors
4. Cherokee



<Disc-1>
 M1-1. "L'incontro"は、アルバム『On A Sunny Day』からの曲だが、うーん寺島靖国はこれから攻めてきたかと、やはり優しく美しく美旋律を大切にしてのライブ・アルバムであることを窺い知れる。
  M1-2"Sorry I've Lost Your Number"も美しい。そしてさらにスリリングな展開が圧巻でそれが美旋律との対比が聴きどころ。3者それぞれが演奏しがいのある曲だろうと思うのだ。聴く方も納得モノ。強弱・遅速の織り交ぜが素晴らしい。ガラティ様々の11分越えの長曲。これを聴いただけでもこのアルバムを買った価値は十分。
 やっぱりM1-4. "Seals"が登場します。この曲があってガラティといったところですので9分とじっくり展開ですね。
 そしてM1-5." How Deep Is The Ocean"が凄い。このスタンダードがこうなるんですね、まさにトリオ作品、3者の美学とパワーが炸裂、これぞライブの醍醐味だ。あっと言う間の11分12秒。

<Disc-2>
 M2-1. "Casi Abstemia" では、ガラティのピアノが美しい旋律を奏でるが、ライブらしく9分以上の曲となっている。アルバム『SEALS』では約5分の曲であった。ここではベースも旋律を奏でたり、ドラムスのスティックの音が印象的で、このあたりはライブの魅力である。
 ガラティの美旋律だけでない面の M2-2. "Trampin’"を登場させてアルバムにアクセントを上手く付けている。この曲では美旋律というよりは3者のインタープレイが楽しめる13分になろうとする長曲。スタジオ盤と違ってドラムスのソロも聴き所となっているし、そこに入っていくピアノも頼もしい。やっぱりライブは良いですね。
 最後はスタンダードのM2-4. "Cherokee"で仕上げですね。ドラムスの奮戦とベースの主張、ピアノの盛り上がりと語り、3者の鬩ぎ合いが楽しめる。

Alessandrogalatitrioa_2

 今回は、ソロとトリオ・ライブの2タイトルでのリリースで、2019年の幕開けをしっかり楽しませていただいたのだが、やはりソロの美旋律も良いのだが、このトリオ・ライブ盤に私は軍配を挙げる。もともと両者の狙いは違うのだから比較というのもおかしいところだが、やっぱりジャズはトリオが良いですね、しかもライブが。録音もしっかりしている。・・・・今年のベスト・アルバム間違いなし。

(評価)

□ 演奏・曲 : ★★★★★
□ 録音   : ★★★★★

(視聴) "CHEROKEE"

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2019年2月 2日 (土)

アレッサンドロ・ガラティのニュー・アルバム Alessandro Galati 「Augustine」

全編、繊細な優しさ美しさに満ちている

<Jazz>
Alessandro Galati 「Augustine」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1076 / 2019

Augustine

ALESSANDRO GALATI (PIANO SOLO)

 1007803908イタリアの名ジャズ・ピアニストのアレッサンドロ・ガラティを引っ張り込むに成功したアルバム『Sheads of Sounds』(TYR1062)を昨年リリースした寺島靖国だが、ここに最新作が早くも登場した。今作はガラティのピアノ・ソロ作品『Augustine』(TYR1076)とトリオでのライブ録音作品『Live From The Inside Out』(TYR1077)(→)と、2タイトルが同時発売となった。

 まずここで取りあげるのはそのソロ作品。確かにこれはガラティのソロによる小品集といったところで、17曲が収録されている。彼の曲が6曲で、その他は比較的ポピュラーな曲で占められて居る。
 これは彼が何かを求めて作り上げた作品というのでなく、あくまでも日本のファン向けのサービス版といったところを感じさせる。

(Tracklist)

List2_2

  ガラティの世界には、3面ぐらいの多彩さがあるが、このソロ録音はピアノの繊細さ、そして美しさ、優しさのみに目的化された最新録音作品だ。トリオ作品に見られる情緒豊かな優しさの面がたっぷりこのソロ全編に満ちていて、如何にも寺島靖国版といったところに仕上がっている。

Trentinoinjazz

  トップの曲M1." In Beijing"は、アルバム『On a Sunny Day』で楽しませてくれた美旋律の曲で、このアルバムのスタートに相応しい。そして彼の名曲M6. "Seals"も登場する。
 又ふと懐かしさに見舞われるのは、M7. "Theme From Sunflower"(映画「ひまわり」のテーマ=ソフィア・ローレンが頭に浮かびました。いやー懐かしい)、坂本龍一の M9. "Merry Christmas Mr. Lawrence"(「戦場のメリークリスマス」)と、心が熱くなる。
 又、ちょっと気になったのはイタリアのルイジ・テンコの曲がM12. "In Qualche Parte Del Mondo"(世界のどこかで)はじめ3曲も登場するのだが、これはガラティが非常に愛しているミュージシャンであるとの事と言うことらしい。

 とにかく全編ガラティがスタジオで一人物思いに耽りながら、周囲のことは気にせずしっとりと情感を込めて演奏した曲群という印象である。深夜に心休めるには最高のアルバムだ。

(評価)
□演奏 : ★★★★★
□録音 : ★★★★☆

(参考試聴)  Alessandro Galati  "Seals"

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