ポーランド・プログレッシブ・ロック

2019年2月18日 (月)

ポーランドのプログレ ANAMOR 「ZA WITRAŹEM」 

メランコリーな楽曲を展開するプログレ・バンド

<Neo Progressive Rock>

ANAMOR 「ZA WITRAŹEM」 
LYNX MUSIC / POL / LM143CD-DG / 2018

Xyz

Anhsueimsa1089 アナモーANAMORはこのブログに初登場のバンドだ。彼らはポーランドの1990年代中期に結成された6人編成のもうベテラン・バンドである。どのような経過かは不明だが、ちょっと遅れて1stアルバムは2003年の『IMAGINCJE』(→)であった。もちろん私は当時から知らなかったのだが、ここに来て15年ぶりにニュー・アルバム(2nd)が登場したのである。ロック・ブログを展開しているフレさんが見つけて私も知ることになった。

  まずこのジャケの眼光を見るとやっぱり手にしたくなるロック・アルバムである。とにかくこのアルバム・タイトルも何か解らない。解らないなりきに聴くのも良しとするのがロックであって、聴いてから何か感ずればそれはそれOKとするのである。

Members_2

  なにせポーランドという国は音楽の宝庫である。”ショパンの国”としての誇りをもって、音楽というモノを大切にしている国なのだ。おそらく子供の頃からの音楽教育も充実しているのではないかと推測する。クラシック、ジャズの分野でも優れている上に、ロックも盛ん、そして他の国より目立つのがプログレッシブ・ロツクの充実度である。

(Tracklist)

List_2

 とにかく、主たるはポーランド語とくるから曲名も解らないのがある。しかし、
 M1."W GÒRĘ"いっやーー、このオープニングが良いですね。重厚にしてシンフォニック、そしてギターが流れを作る。ベースがちょっと不安な展開をする。そして女性ヴォーカルが登場するが、それは美しいがやや暗めでそしてメランコリックいった感じの世界を構築する。後半のギター・ソロは説得力十分。
 M2."POD PRĄD"は、メロディの充実したヴォーカル曲。
 M4."STARS"唯一英語の歌詞の曲。意外に内向的。
 M6."PODRÓŹ DO WTEDY"やや暗めであるが、情景の美しい曲。
 M8."SZMARAGOWO"Marta嬢の歌う世界に誘い込まれるところは深遠。それに続くギターの歌いあげが聴き所。
  M9."ZA WITRAŹEM"はエンディングの曲にふさわしく、なかなか抒情的な世界で、さらに彼女のヴォーカルはしっとりと歌い、又歌いあげも哀愁感が漂っていて感動的、そして聴く者の心に迫ってくるのだ。

 もともとこのバンドはMarek Misiak(g)、Tomasz Rychlicki(g)、Roman Kusy(b)、Jerzy Misiak(dr)、Marcin Ozimek(key) と女性リード・ヴォーカルのMarta Głowackaという6人編成デスタート。当時の一つの流れであったツイン・ギター・バンドであった。しかしその後Tomasz Rychlicki(g)に替わりMaciej Karczewski(key)が加入して、ツインキーボード編成バンドに変化して今日まで来たようだ。

 したがってその特徴はシンフォニックな展開をするロック・バンドなのである。しかしギターは、かってのプログレ・バンドのように美しいソロやフィードバックによるロングトーンを取り入れ、泣きも聴かせて楽しいのだ。どちらかというとCamelのAndy Latimerが頭に浮かんだ。
 全体のサウンドの印象はRiversideにも通ずるモノを感ずる。
 ヴォーカルのMarta嬢は、もう既にそれなりの年齢にはなっているが、声の質は若い。ロック独特の叫びはみせずに、なかなか情感に満ちたメランコリックな味があって、このバンドの一つの特徴を作っている。かってのQUIDAMのEmila Derkowska嬢をちょっと感ずるところがある。

 私は強いて言えば、M1とM9がお気に入りだが、なかなか聴き所を心得たシンフォニックにして哀愁までも感じさせるメロディック・ロックだ。

(評価)
□ 曲・演奏・歌 : ★★★★☆
□ 録音     : ★★★★☆

(視聴)

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2018年10月10日 (水)

リバーサイドのニュー・アルバムRiverside「WASTELAND」

美しさと哀しさと・・・そして不安感と(しかし光明が)

<Progressive Metal Rock>

Riverside「WASTELAND」

INSIDEOUT/ Euro / 19075871852 / 2018

Wastelandw

Waste7and_01w_2Riverside
     Mariusdz Duda : Vocal, Guitar, Bass
     Piotr Kozieradzki : drums
     Michał Łapaj : Keyboards


 久しぶりにロック話。ちょっとサボっていて気恥ずかしい感じだ。しかし期待のRiversideだからと・・・気合いが入る。
 しかし今やロックは低調の極みと言っても・・・。社会現象とロックの道に乖離が起きているのだろうか?。若きエネルギーは?、問題意識は?。現代に於いて、60年代からの社会現象としてのロックの道との相違は何なのか・・・・。

  Riverside、前作『Love, Fear and the Time Machine』以来の3年ぶりの7thアルバム。今作にかける期待は大きい。それは前作が彼らの方向転換を意味するのか、私にとっては不完全燃焼だったからだ。
 このバンドはポーランドが生んだ世界に誇るプログレ・バンドである。あの悲劇を繰り返したポーランドの歴史の中から、現代に彼らが何を得ることが出来たのか、そこに期待を裏切る矛盾を感じ取ってしまった彼らの進むべき道はこれから何処に向かうのか、それは問題意識を持ったバンドが常に問われる道なのである。
 しかも結束のメンバーの一人であったギタリストのPiotr Grudzinskiが、2016年2月前作リリース直後に40歳で急死する悲劇がバンドを襲う。それから2年、なんとここに残った3人が、深い悲しみと解散の危機を乗り越えてのアルバム・リリースとなったのである。

Riverside2

 まずは印象は、リーダーのMariusz Dudaの描く曲が益々美しくなっていることだ。しかし冒頭M1."THE DAY AFTER"は、アカペラで唄われる悲劇の予感のテーマである。曲の終わりにかけて表現できないほどの暗い不安なテーマが流れる。ここにもともと彼らの持つ不安感と、現実に友を失った悲劇とどうしてもオーバーラップさせて聴くものを沈み込ませる。
List_2 M2."ACID RAIN"にその流れは繋がるが、彼らのヘビーなメタリックなサウンドが展開する。ここには彼らのかってのサウンドの復活がイメージ出来る。
 M3."VALE OF TEARS"もヘビーではあるが、ヴォーカルは美しく流れる。
 中盤から終盤に演じられるアコースティック・ギターをバックにポーランドらしい情緒あふれるな美旋律を取り入れた曲群には、悲哀と優しさと人間的な世界が描かれている。これぞ彼らが発展し獲得してきた一つの姿で有り、更に音楽的にもロック世界を超越して空気感が漂う深遠にも聴こえる普遍的なサウンドを大胆に取り入れたスタイルはプログレッシヴ・ロックの一つの姿として十分堪能できるアルバムに仕上がっている。

 しかしアルバム・タイトル曲M8"WASTELAND"は、"荒廃した地"と言う事だろうか、精神的にも文化的にも期待感が持てない世界を描こうとしているのか?。中盤でメタリックなサウンドが出現し次第にやや悲壮感が満ちるサウンドが展開する様が印象的だ。しかしかっての彼らの演ずる救いようのない暗さには至らない。そして終曲M9."THE NIGHT BEFORE"に繋がるのだが、そこには未来志向が覗いている。これが今のRiversideなのだろうか。

  かってのアルバムを思い起こすと、ヴォーカルのウェイトも多くなり、非常に聴きやすいアルバム造りに変わってきたというところは、前作からの流れも続いていると言ったところである(私的には若干不満も無いでは無い)。しかし「暗」から少しではあっても「光明」の感じられる結論に導くところは、彼らの今の状態が見えると同時に、上手い手法のアルバム製作であったと結論する。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(My Image Photo)
Dsc04345trw2
Sony ILCE-7M3, FE 4/24-105 G OSS,  PL

(視聴)

 

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2013年7月31日 (水)

クィダムQUIDAM (波蘭プログレ)の変身を2枚のライブ映像で・・・・

QUIDAM のロック・バンドとしての挑戦

 既にここでQUIDAMの話は3回目になる。このポーランドのプログレッシブ・シンフォニック・ロック・グループは、リード・ヴォーカルにエミラ嬢Emila Derkowskaを擁した1期と、現在の男性6人グループとなった2期とでは、本質的変化は無いとは言え、やはりイメージはかなり変わったといっていい。
 そのあたりは、ライブ映像で観ると、同じサウンドで同じ曲を展開してもイメージは大きく違うのが面白い。そんなところをここで2つのDVDによってチェックしてみる。

<DVD>  QUIDAM 「SEE EMILY PLAY - LIVE BOOTLEG」
          Live at Teatr MIejki in Inowrocłow, Poland,  16th feb 2003 ( Release 2009)

Quidamno2members

Quidambootleglist
 オフィシャル・アルバム「POD NIEBEM CZAS」(参照:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/quidam-rdthe-ti.html)2009年再発豪華版に付いたオフィシャル・ブートレグである。2003年のポーランドでのステージで、映像はマルチ・カメラで撮っているし、サウンドもそれなりに70点でエミラ嬢の多分最後のステージということであろうが、彼女の奮戦と、当時までこのQUIDAMというバンドの狙い線がみえて楽しい。 

 Set-List は左のように19曲。一日のステージをたっぷりみせてくれる。Jacek Zasadaのフルートが入り、そこにMaciej Mellerのギターが泣いて、実はその両者のムードのギャップがこのバンドの特徴のようなものだ。フルートとエミラ嬢のクリスタル・ヴォイスの唄声がちょっとゴシック調でありながらアイオナ風のトラッドっぽいムードを造るのだが、そこにそう似つかわしいと思わないキャメルやピンク・フロイド風のギターとキーボードでプログレ・ロックっぽく盛り上げて曲を纏め上げる。そのあたりがなかなか一風変わった味があってこれが又私が注目するところであった。

<DVD> QUIDAM 「The Fifth Season」
              ~LIVE IN CONCERT~
           WYSPIANSKI THEATRE KATOWICE, 15th Nov. 2005
                                            (released in 2006)

Quidamfifths さてこちらがリード・ヴォーカルがエミラ嬢から男性のBartek Kossowicz に変わってのステージ映像。彼は表情がちょっと若き頃のピンク・フロイドのギルモアに似ているところがご愛敬。そして声を張り上げずにソフトにマイルドに唄う。
 この映像盤は、もちろんオフィシャルものであり、十分の映像とサウンドが堪能できる。
 はっきり言って、彼等は女性ヴォーカルでもゴスペル寄りの彼女に見切りをつけて、英語のリード・ヴォーカルでロック・バンドとしてインターナショナルな発展を期したのではないかと思う。そしてかなりハードな演奏とメロディアスでムードある叙情性豊かな演奏の交錯は彼等の初期からの持ち味ではあるが、イメージはかなり変わっている。ヴォーカルが女→男でこうも変わるのかと思うところ。良く聴くと演奏の方法論はそう大きく変わっていないのであるが、ソフトなヴォーカルでその位置を下げギターの占める位置が前面になっているところがポイントか。その為ロック・バンドとしての演奏に重きが増してきた。
 この彼等の変身は、多分この方が世界的には認知されてゆきそうだ。ロック・ファンとしては、この男性化したQUIDAMに大いなる期待をしたい。、

 このDVDにはインタビューも納められており、彼等の歩みの話も聞ける。初期はキャメルをイメージし、男性化した近年はポーキュパイン・ツリーも視野に入れているというところのようだ。しかし彼等の独自の世界は常に頭に入れているらしい。

Songs / Tracks Listing 
1. Hands off
2. Queen of Moulin Rouge
3. SurREvival
4. Sanktuarium
5. Oldies but Goldies : including excerpts from  List z pustyni I ,  Pod powieka ,
    Plone, Wesola , Jest taki samotny dom , Niespelnienie ,Gleboka rzeka
6. No Quarter (guitar solo from "Quimpromptu")
7. The Fifth Season (including excerpts from Genesis' "Los Endos")
8. Credo
9. Everything's Ended
10. Jestes (including excerpts from K. Komeda's "Lullaby" of "Rosemary's Baby")
11. Not So Close (including excerpts from Joe South's "Hush")

収録曲はこんなところだが、上のオフィシャル・ブートレグと同じ曲としては注目曲のレッド・ツェッペリンの”No Quarter”が視聴出来る。エミラ嬢とバーテックの違いと同時に、明らかにこの2005年ものには、2003年に比してロックとしてのハードな味とメリハリが高まっていることが解る。彼等の狙いはここにあることがこの曲で見て取れるのだ。ロック・バンドとしての挑戦が始まっている。頼もしい。
 又注目は、ちょっと考えられないあのポーランドのジャズの神様のクリストフ・コメダの曲”Lullaby”、”Rosemary's Baby”をやってみせるところだ。こんなところが彼等のミュージックを究めようとするバンドの一端が観れる。(参考②)

 この変身は、バンド・メンバーの一新も計っている。中心のギター、フルート、キーボードの3人は不動で、新メンバーとしてドラムス、ベースを迎えている。
  Line-up / Musicians

Quidammembers4
(写真 左より)
Zbyszek Florek / keyboard
Maciej Meller / guitar
Bartek Kossowicz / vocal, chorus
Maciek Wroblewski / drums
Mariusz Ziolkowski /bass
Jacek Zasada / flute

Guest musicians:
- Robert Mowalski "Myca" / chorus (2, 3, 4)
- Grzegorz Nadolny / contabass (4)
- Pawel Molenda ''DJ Paulo'' / scratching (6)

(参考) ① http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/alone-together-.html
      ② http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/nbs.html

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=yILeZDZYx2Q
     http://www.youtube.com/watch?v=ob3r42VEYRE

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2013年7月22日 (月)

ミレニアムMillenium の 9thアルバム「Ego」~ポーランド・プログレの花

ここ十数年の健闘を集約した今年のこのアルバムは聴きやすかった

<Progressive Rock> MILLENIUM 「EGO」
                  LYNX MUSIC LM80-DG ,  2013

Milleniumego

 さてさて、ポーランドのプログレッシブ・ロックもフロイド派 Riverside、 Quidam 。そしてイエス派 Collage、 Satellite などなど話題は尽きないが、そこはポーランドだけあって彼等はやっぱりそれなりに自分の世界をしっかり持っていることは、今まで語ってきたところである。
 そこで今度は、どっちかというとジェネシス派のミレニアムMilleniumだ、そうは言ってもやっぱりジェネシスそのものではない。ポーランドという国は、国民の基礎にしっかりとポーランドの伝統の音楽の血が流れていて、特にロックにおいてはプログレ派に非常に馴染みやすいのである。彼等も叙情的な世界もたっぷり聴かせてくれる。人によっては聴き方でマリリオンっぽいとか、フロイドの流れも感ずるとか、まあそれは聴いてのお楽しみ。

Milleniummembers
 さてこのアルバム「Ego」のミレニアムは5人バンドでピーター・ガブリエルばりでありながらややハイトーンのヴォーカル担当のGallがじっくりと唄って聴かせてくれる。そこに素晴らしいメロディーを持って、Plonkaは泣きのギターも響かせてくれるので飽きるところが無い。なんとゲストに女性ヴォーカルを迎えてバックを美しく流す。

 2000年にデビューして、これは彼等の9作目と実に多作。かって「Exist」なる私が興味を持ったアルバムがあったが、ここに来て彼等はポーランド・プログレの中心的バンドに育ちつつあるといったところ。

Milleniumegolist
さて収録曲だが、左のように、プログレらしく10分前後の曲が4曲。
 とにかくメロディアスなシンフォニック・ロックを聴かせてくれる。
 どうもテーマはちょっと明るそうな世界では無いのだが、曲のイメージはそう暗さは無く、物語りを聞いている感じにアルバム・トータルに聴きやすく流れる。

Milleniumphoto2
オープニングのアルバム・タイトル曲”ego”のシンセの音の流れをバックにしてのギターの音で、もう聴き耳を立ててしまう魅力がある。何となく壮大な物語の始まりを示唆しているような曲。メタル色は全くなく全体にゆったりと流れる。この曲は後半の盛り上がりとギターの泣き叫びもいい。最後は美しいピアノの調べ。もちろんGallのヴォーカルの歌詞は英語であって耳に馴染みやすい(初期のアルバムはポーランド語)。なかなか纏まって良く出来た曲だ。
 そして ”dark secrets”の序盤の泣きギターは確かにギルモアの音に似ているところがあって、フロイドに似ているという人のいるのも解るが、キー・ボードのパターンが少々異なっているし、全体的にはメロディーが溢れていてロジャー・ウォーターズの内省的な深刻性のフロイド流とはこのアルバムではちょっと違うと思う。
 ”when i fall”のピアノは実に美しく、中盤のシンフォニック・サウンド、そして後半へ流れるギターも美しさに満ちている。
 

 彼等はスタートは1998年「Framauro」というバンド名でスタートして、2ndから「Millenium」に改名している。そして既に十数年順調に9枚のアルバムをリリース。自己のパターンをしっかり堅持してここに来ているところは立派。見方を変えれば、つまるところポーランドにはロック界に於いてもプログレッシブなミュージック探求派を支える母体があるというところだと思う。

Milleniumphoto

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=YfZv7SLJTj4

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2013年7月20日 (土)

レボウスキLebowski 「Cinematic」=ポーランド・プログレの新鋭の傑作

何か、大きく発展の予感のユニット~これが新人?
”Music for a non-existant Film”の世界

<Progressive Rock> Lebowski 「Cinematic」
                         Lebowsi  CD 001,  2010

Lebowskicinematic

 これは完全にジャケ買いしそうなアルバム。そしてその結果は決して間違いでは無い。これぞポーランドの奥深さ、新鋭プログレ・バンド「レボウスキLebowski」 のデビュー・アルバム。彼等の情報があまり無くて解らないが、2005年に結成したいる。バンド名は映画の゜”Big Lebowski”が関係しているようだ。
 恐ろしくサウンドが美しく、全曲インストゥメンタルであるが、時に語りが入り、更にゲストの女性の声が憂いある美しさで流れて、まさに”cinematic”。キャメル、ピンク・フロイドというところが彼等の基礎にあるらしい。そして映画というものを想定しての作品とみてよい("music for a non-existant Film"と表現されている)。
 このアルバムは2010年リリース。既に3年経過しているがその後の情報があまりない。まさかこのアルバムのみのユニットではないだろうなぁ~~と思いつつ、そうは言ってもこのアルバムをリリースするまでにバンド結成から5年も経ているのだから・・・そんなことはなさそうだ。いずれにしても感慨にふけって聴いている訳だ。

Lebowskicinematicmembers
左のように、メンバーは定型の4人バンド。それぞれのパートが明確にされていて演奏はそれぞれ対等の位置にあり、見事なシンフォニックな世界を展開する。ブックレットに4人のスナップが載っているが、若いといえば若いが、ライブ映像からはそれほど若くない。はっきり言って壮年期でしょう。どうもそれなりに経験を積んだ連中に見える(作曲はメロディー隊の二人のMarcin)。つまり強者の集まりか?。
 録音も良く、それぞれの楽器の音に厚みと繊細さもあって、それぞれの演奏が手に取るように聴き取れる。
 まずギターはメタル色はなく、柔らかくメロデックに又時に泣きに近く朗々と流し、ある時は重厚なサウンドを聴かせる。
 キーボードはシンセによる流れと、ピアノの美しい響きがあって叙情的な表現が見事。これぞシンフォニック・プログレッシブ・ロックという世界に連れて行ってくれる。

Lebowskicinematiclist
Track-List全10曲。先ず導入はクラシック・ミュージツクを思わせるところもあるり、そして甲乙付けがたいやや長めの曲が流れるが、いつの間にか全曲1時間以上を聴いてしまう。それは確かにアルバム・タイトル”Cinematic”そのもので、ドラマティックな一つの映画を観たかの如く頭に浸透してくる。
 そしてそれぞれの曲が非常に聴きやすく、一方さすがポーランド、なにか楽観的で無く深遠にしてどこか社会の暗部を描いているような印象を受ける。それでもRiversideほどは暗くない。

 しかしデビュー・アルバムにしては荒削りなところも無く、この完成度には驚く。プログレッシブな音を追求するそれなりのメンバーが集結して作り上げたアルバムなのであろう。従って録音とミキシングには相当の神経を使ったと思う。それは音の余韻と残響への配慮も行き届いているところから見て取れるところだ。
 ”Old British Spy Movie”には美しくヴァイオリンも流れピアノの音の美しさが印象的。
 いずれにしても全編一つの曲として聴いても良いくらいの作品に仕上がっている。これなら2ndが待ち遠しい。

Lebowski4members

(試聴) ① http://www.youtube.com/watch?v=cNvlhDfDsoU
      ② http://www.youtube.com/watch?v=TdBBf7Ai5Hw

 

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2013年7月14日 (日)

ポーランド・プログレの宝石=クィダムQUIDAM 3rd「The Time Beneath The Sky」

プログレッシブに展開するトラッドをベースにしたロック・ミュージックの美学

 ポーランド・プログレの代表グループ QUIDAM を先日紹介したが、かっての「3rdアルバム」のクリスタル・ヴォイスの女性を擁した美しさを強調したままで、男性のみにになった「5thアルバム」を取り上げたため、”その「3rd」をちゃんと取り上げろ”というお叱りを受けたのでここにあわてて取り上げる次第。

<Prigressive Rock> QUIDAM 「The Time Beneath The Sky」
                                              
(原題「POD NIEBEM CZAS」)
                                ROCK-SERWIS   RSCD104  ,  2002

Quidampod2

 当時のクィダムは、なんと言っても女性リード・ヴォーカルのエミラ・ターコウスカ Emila Derkowska のクリスタル・ヴォイスを前面に出してのややトラッドぽいアプローチで、実にエレガントにしてメロディー重視のシンフォニック・バンドという印象だった。
 特にキーボードの流れの中でのフルートとギターによるメロディーの展開の美しさなどはその典型のパターン。そして特にこの3rdアルバムはその極致。取り敢えず東欧といわずヨーロピアン・プログレの一つの宝物として取り扱ってよいと思う。

Quidammembers1 メンバーは左の6人。曲によっては、Oboe, Flugelhorn, Mandolin, Accordion のゲストも加わる。
 実はこの時までの彼等は、トラッドをベースにファンタジックに、ロマンティックに、そしてメロディアスというロックを目指していたのだろうと思う。しかし先日紹介したアルバムのように、リード・ヴォーカルのエミラの脱退後の彼等は、やはりかってのプログレの雄であるピンク・フロイドの世界にも大いに魅力を感じていたのであろうことが解るのである。そしてそんな因子も既にこのアルバムで芽生えているが為に、この価値観を高めているのである。
  (TRACKLIST)
  * Letter From The Dersert (1.  2.Still wating)
    * 3.No Quarter
    * 4. New Name
    * 5.Kozolec
    * THE TIME BENEATH THE SKY
       (6.Credo1   7.Credo2   8.You are   9. Quimpromptu    10. The Time Beneath The Sky)

    
 TrackListは組曲構成があるが上の10曲。フルートの美しさとギターの哀愁感もこのバンドの一つのポイントである。そこにきて面白いことに3曲目の”No Quarter”はレッド・ツェッペリンのカヴァーなんですね。これには彼等の世界とのギャプに驚きなんですが、ここではまさにクィダム演奏でなんら違和感ないところが不思議なくらいである。まあ彼等のアンビエントな演奏もみられるところから、そうは言っても我々はロック・グループなんだと言っているようで面白い。

Quidammembers3rd
 このアルバムには3種の曲が収録されている。一つはエミラのヴォーカルを聴かせる曲(”New Name”、”Kozolec”)。二つ目は曲の中に彼女のヴォーカルも楽器の一部のように取り込んでゆく(”Letter from the Desert”、”No Quarter”)。三つめはインストメンタル曲( ”Quimpromptu” )。このように構成されているが、私としては二つ目三つ目の曲群に軍配を上げる。つまり1stアルバムにおいての彼女の重要性もこの傑作アルバムでは後退し、もはやこのバンドの演奏の主たるところはむしろプログレッシブなロック演奏に発展しているというところだ。

 アルバム・タイトル曲”THE TIME BENEATH THE SKY”は5曲より成り立っていて、スタートからフロイドを思わせる展開。フロイド流の口笛を吹きながら床を歩くSEや、エミラの美しいヴォーカル、 ”Quimpromptu”の約10分のインスト曲は、静寂からスタートしてギターの美しい旋律、次第にシンフォニックに盛り上がり、最後はシンセの音に泣きのギターと私好み。

 さてこのアルバムを最後にポーランド語のリード・ヴォーカルの彼女は脱退することになった。これは惜しむファンも多かったが、バンドの発展に伴っての必然的なことであったと思うのである(この後のアルバムからヴォーカルは男性、歌詞は英語になる)。彼女はこの後、ポーランドの1982年結成のゴスペルを中心にしたコーラス・バンドのTGD(Trzecia Godzina Dnia)に加入し、活動を続けている。

 ここに取り上げたアルバムは2009年に豪華に再発したもの。なんとふるっていることに「SEE EMILY PLAY-Live Bootleg」と記して(ご存じのようにピンク・フロイドの初期の代表曲が”See Emily Play”である)、エミラの最後のステージを納めたライブ映像のDVDが付いている。なんとも洒落ていますね。そしてこれが彼等の一つの締めくくりであったことは間違いない。

(試聴)http://www.youtube.com/watch?v=3pKLj_7kZ_8
 
 

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2013年7月11日 (木)

ポーランド・プログレ=サテライト SATELLITE 「EVENING GAMES」

叙情的なシンフォニック・ロック・バンドの道を歩み続ける

 ポーランドのプログレッシブ・ロックを探っていると、ポーランドならではの薄暗さの中に叙情的なメロディーが流れてくるのが特徴的だ。その道をしっかり継承して聴かせてくれるのがこのサテライトSATELLITEだ。

<Progressive Rock> SATELLITE 「EVENING GAMES」
            Metal Mind Production   MMP cd 0298 DG  ,  2004

Satelliteeveningg

 このバンドは、2003年に1st「Street Between Sunrise And Sunset」をリリースしているが、実は前回紹介したコラージュCOLLAGEの解散後その中のメンバー(ギター、ドラム、ヴォーカルが中心になって)が結成したバンドなのだ。そしてこのアルバムは2ndアルバムであるが、これまた名作と言われている。
 ところがこのアルバムになると、肝心のギタリストMarek Gil は脱退している(彼はここで既に紹介したBELLIVE を後に結成して今日まで活躍中)。まあ一つのバンドに両雄(Gili とSzadkowski)は難しいのでしょうね。そしてメンバーは下記のようなところ(*印が元コラージュのメンバー)。
    *Robert Amiran : Vocals
     Sarhan Artur Kubeisi : Guitars

    *Krzysiek Palczewski : Keyboards
     Przemek Zawadzki : Bass

    *Wojtek Szadkowski : Drums, ac.guitars

 もともとコラージュでは、ドラマーのザドコフスキSzadkowski が曲作りには貢献していたので、そのままこのバンドにおいては全て彼の曲で埋め尽くされている。従ってコラージュの流れをしっかり繋いでのシンフォニックなロックを展開している。ギタリストが変わっているが、そのKubeisi も流れを彼なりきに旨く繋ぎ、又曲によっては更にギタリストを加えているといった恰好。

Eveningglist
 さてこのアルバムには10曲納められている。
 オープニングが結構凝っていてSE(夕暮れの子供達の遊び声、そして落雷の音)を使って導入する。アルバム・タイトル曲”Evening Games”のタイトルどおり、彼等はあらゆるところで夕暮れの情景を描くところに焦点を持っている。この曲17分にも及ぼうとする長曲。彼等の夜を迎えるわけだがそこに希望はあるのか?・・・彼等の唄はそこから始まるわけだ。曲のシンフォニック・パターンは見事。まさに叙情詩、そしてやや暗い情景だが一筋の光明が見えるような曲展開。これははっきり言って名曲である。
 そして続く”Never Never”は彼等の訴えが響いてくる。このあたりのシンセ、ピアノのキーボードの流れに乗っての各楽器の交錯、そしてヴォーカルの交錯はシンフォニックを代名詞にしているサテライトの真骨頂。そしてドラマーのリードによって造られているこの曲群、複雑なバチ裁きはみごとである。

 さてさてこんな調子で全編貫いている。私の印象としては都会の黄昏から夜にかけての彼等の希望が失われていく社会に於ける存在の不安感が描かれているのではないかと思うのである。実際には、ロシアの暗い不安定な政情から生まれる不安社会を主題にもっているようだ。

 しかしこうしたアンサンブルの妙を集約した演奏のレベルの高さと壮大な叙情詩を展開するアルバムを生んでゆくポーランドの実力には脱帽である。
 さて結論だが、彼等のパターンは、イエス、ジェネシス、マリリオンと言ったところであることを付け加えておく。とにかく途切れなく叩き込んでくるアンサンブルと変調子を交えてのドラムスの交錯には若干疲労感も感じられるほどだ。
  彼等の近作は2009年4thアルバム「Nostalgia」

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=2VkhiCdnWQQ
     

 

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2013年7月 8日 (月)

ポーランド・プログレ=コラージュCOLLAGE「MOONSHINE」

1990年以降のポーランド・プログレ活動の一つの原点

 このところ、音楽の国ポーランドのプログレッシブ・ロックに焦点を当てている。既にQUIDAM(参照①)、Riverside (参照②)、BELIEVE(参照③)などを取り上げてきたので、それならコラージュCOLLAGE もと言うことになる。

<Progressive Rock> COLLAGE 「MOONSHINE」
                   Metal Mind Production  MMP CD 0231 , 1994

Collagemoonshine

 1990年代になんとなく湧いて出てくるプログレッシブ・ロック、それは70年代に圧倒的支持を得ながらも、ロックの原点回帰によって80年代は寂しい時代となった。しかしこの流れはロックを音楽という眼で見つめ深めようとする流れと、一方哲学的に社会現象、人間探求の道に歩もうとするこの両方の姿は嬉しいことに決して無くなることも無かったのである。特にヨーロッパでは、イタリアが先陣を切りそして音楽を愛する北欧、東欧に再び姿を現して来たのであった。

Collagemembers
 そんな中での貴重なポーランドのバンドが、このコラージュCOLLAGE だ。そして彼等の残した傑作が1994年のこの2ndアルバム「MOONSHINE」

  (Members)
   Robert Amirian : Vocals,
   Piotr Mintay Witkowski : Bass
   Mirek Gil : Guitar
   Krzysztof Palczewski : Keyboads
   Wojtek Szadkowski : drums


 このような5人バンド、実はこのメンバーから後にプログレ・バンドのサテライトSATELLITE、(2003年)そしてビリーブBELIEVE(2006年)が生まれるのであるが、その話は後にして、彼等のロックの世界を語ってみる。
 とにかくこのコラージュは、メンバーそれぞれの演奏技術は非常に高いのが特徴で、そしてそれぞれの音が折り重なって展開するのだ。

Moonshinelist2 TRACKLISTは左。とにかくオープニングが格好良くて圧巻。シンフォニック・ロックそのものをゆく。
 やはり特徴はGilのギターのメロデックな演奏。そしてキーボードのサウンドが絶妙にメロディーを支える。
 そして面白いのは曲作りは、もちろんギターの Gil が主役を成すのは解るのだが、主としてドラムスの Szadkowski が担当しているところだ。Lyrics も殆ど Szadkowski が書いている(英語)。

 このバンドの演奏は各楽器が一斉にそれぞれが自己のセンスで自己の世界の演奏を展開して、それがシンフォニックに洪水の如く押し寄せて合流してゆくというパターン。と言うとお解りでしょうが、プログレの世界を語るにいつも言うところのクリムゾン、フロイド、イエス等と比較してしまうのだが、このバンドはどちらかというと、フロイドではなく、もちろんクリムゾンでもなく、イエス、ジェネシス寄りのタイプである。
 そしてポーランドらしく、やや薄暗さを感ずるところもあるが、やや変形シンフォニックというかそんなところに美しいメロディーが出色なバンドというところだ。私のようなフロイド、クリムゾン派にとってみると若干好みに違いがあるのだが、こうゆう世界も貴重なのである。

 そしてこの名盤をリリースしたのが1994年で、この後1995年に3rdアルバム「SAFE」をリリースして彼等はしばらくのライブ活動展開後に解散。そのあたりの事情は良く解らないが、なんと2003年になって、ニュー・バンドのサテライト(1stアルバム「A Street Between Sunrise And Sunset」)を結成することになる。

(参照)  ①「QUIDAM」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/alone-together-.html
      ②「Riverside」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-044e.html
      ③「BELIEVE」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/believe-world-i.html

(試聴) COLLAGE ”Heroes Cry”  http://www.youtube.com/watch?v=tABoKXcGXIA

 

 

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2013年7月 4日 (木)

ポーランド・プログレ=クィダムQUIDAM 「ALONE TOGETHER」

知らぬ間に男らしくハードに・・・・そしてプログレッシブな叙情美を聴かせる

 先日取り上げたポーランドのロック・グループ”Riverside”によって、久々にこのところ東欧(ポーランドは中欧といったほうがよいかも知れないが、東西冷戦時代としては東欧に入ってしまう)のプログレッシブ・ロックを回顧したり、聴き逃したものを今になって聴いているところである。もう昔話になるが(1983年)、何せ東欧と言えばハンガリーのソラリスSOLARISには驚かされたものだ。フルートとギターでシンフォニック・ロックを展開したあの音は忘れられない。そしてそれこれ忘れかけた10年以上経て、今度はポーランドのクィダムQUIDAMが出現。やはりフルート、ギターで叙情的な世界を聴かせてもらった。

<Progressive Rock> QUIDAM 「ALONE TOGETHER」
          ROCK-SERWIS  RSCD-068 ,  2007

Quidamalonetogether

 あの深淵で、そして女性ヴォーカルがアンビエントな世界を聴かせてくれたクイダム。しばらく遠ざかっていたが、このあたりで近作があれば聴いてみようと探したところ手に入ったのはこの2007年作。いや~結構ご無沙汰していたんだなぁ~~と・・・・・・(この後5年の経過があって2012年に6thアルバム「Saiko」がある~これは又次回に)。久々に彼等のプログレッシブ・ロックを聴いてみたというところなのである。

 まずなんと言っても決定的な変化はヴォーカルである。私が惚れ込んだ2002年の3rdアルバム「THE TIME BENEATH THE SKY」(原題「Pod Niebem Czas」)は、当時の欧州各地では、ゴシック・メタルの流れが盛んである中で、メタル色の無いゴシック・ロックというか、しかもシンフォニックで、決定的な特徴はアンビエントな流れを聴かせ、クリスタル・ヴォイスの女性ヴォーカル(エミラ・ダーコウスカEmila Derkowska)によるメロディアスな世界が襲ってきたのであった。ところが、今回手に入れたこの5thアルバムとなるこの「ALONE TOGETHER」はなんと男性ヴォーカルである(この前の4thアルバムからの交代)。そしてあの頃と違って結構ハード・ロックっぽい音も聴かれて知らぬ間の大変身。

Quidam2 このバンド・メンバーをみると、かってのように6人編成。
    Zbyszek Florek : keyboards
     Maciek Meller : Guitar
     Bartek Kossowicz : Vocals
     Mariusz Ziółkowski : bass
     Maciek Wròblewski : drums
     Jacek Zasada : flutes

 
 それでも変わらないのはフルート、ギター、キー・ボードのメロディー隊の3人である。そして女性リード・ヴォーカルのエミラに変わった男性ヴォーカリストはパ-テックという。エミラはポーランド語のヴォーカルであったが、このバーテックは英語で歌う。このあたりは一つのインターナショナルな発展性も期したのであろうか。
 何せ出だしがダイレクトに男性ヴォーカルでスタート。ちょっとバンドが変わったのかとも思われたくらいだが、なになにやはりクィダムだ、泣きのギターとあのフルートがかってのように哀愁を誘いピアノの音がそれをカヴァーするが如く流れる。

Quidamalonetogetherlist
 収録曲は9曲でプログレらしく曲は長い。3曲目の”Depicting Colours of Emotions”は、10分を超える曲。最初のメロディーはフルートによって導かれ、ヴォーカルも叫ぶのでなくやや暗めではあるが抒情性豊かな唄い回し。曲展開はこれぞクイダムといったメロディアス・ロックであり、泣きギターあり壮大なシンフォニックな世界をも聴かせてくれると言ったプログレそのもの。
 ”Of illusion”は、結構ハード・ロック調でしかもパーカッションが活動的、フルートも結構暴れるところが面白い。最後はギターが泣き叫ぶ。
 そして一転して”We lost”は、やさしく泣くようなギターが心に浸みる。中盤はリズムカルに転調してシンセの調べをバックにやはり哀愁のヴォーカル。ギターとフルートが詩情豊かにメロディーを流す。最後はややヘビーなサウンドとメロディーが交錯して盛り上げる。
 Maciekのギターは主としてギブソンだが、”One day we find”のギターは、ピンク・フロイドのギルモアを感じさせるストラト(?)ぽい音が流れるところもある。

 このアルバムより数年前のクイダムと比較すると、ポーランドらしい哀愁のメロディーは変わらない。特にやや暗めであるが荘厳な曲も特に”We are alone together”に聴かれ、哲学的孤独感が感じられる曲。そしてその締めくくり方もプログレそのもの。
 結論的にはこのアルバムは、全体にはハード・ロック調が増して男性的なバンドに変化したところが聴ける。

 2000年前後という比較的最近のポーランドのプログレの一翼を担うクイダムを思い出して、2007年のアルバムを聴いてみた。プログレの位置を表すには、フロイド、クリムゾン、イエス、ジェネシス、ELPあたりと比較すると良いのだが、このバンドは2/3はフロイドよりってところと言っていいと思う。う~~ん、ここにもプログレは健在であったことに万歳である。

Quidammembers2

(試聴)http://www.youtube.com/watch?v=TNNuQSan5_E

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2013年6月18日 (火)

ピンク・フロイドを超えたか?=リヴァーサイドRiverside :「Shrine of New Generation Slaves」

ポーランドからのハード・プログレ・バンド~資本主義・自由社会は病んでいるか?

 実は私にとっては、なんか久々にRockを語れるアルバムに到達出来たという気分なんです。そうゆう意味ではフレさんのブログでこの5thアルバムを知って感謝です。
 なんといってももう私の愛してきた”プログレッシブ・ロック”、その言葉自身過去のものと言うか?死語というか?、・・・・60年終わりから70年代のあの世界で貴重な若い(?)時を消費してきた私にとっては、何時もそうでは無いと言い聞かせつつ、現実ではその空しさの中で実はいつももがいているんです(笑)。そんな訳ですが、堂々とプログレを語れるなんて、それだけでも嬉しい限りです。

 さてさて、ここにポーランドからその嬉しい一枚です(実は2枚組ですから2枚と言わなきゃいけないかな?)。

<Prog. ROCK> Riverside 「Shrine of New Generation Slaves」
          Mystic Production/InsideOut Music   0630-2  ,   2013


Songs


 このジャケ・デザイン(トラヴィス・スミスTravis Smith作)から、もうあのソ連管轄下の東欧諸国にみられた都市の暗いイメージを先ず感じてしまう。かっての共産圏の東欧諸国と言われた時代には、チェコ・スロヴァキア、ハンガリーなど訪れたことがあったが、残念ながらポーランドには足を入れていなかった。それでもなんとなくイメージとしてその世界が頭に浮かぶ。昨年ようやくポーランドに行く機会があったが、現在解放されて20年の歳月を経た国ポーランド、あの国に於いては国民は文化の貴重な一つが音楽であるという生活をしていて、現在も諸々のジャンルに於いて多くのミュージシャンが活動している。そしてそれを国民は大切にしているのである。しかし残念ながらその中で、ロックの世界のウェイトはむしろ小さいようにも思う。もともとショパンを愛し、クラシックから出発しているミュージシャンは多く、そしてジャズへの進出は盛んで(クリストフ・コメダを代表にして)あるが、一方ロックはむしろやや弱いとも思っているのだ。

Reversidemembers
 そんな中で、しかしこのポーランドのロック・バンドのリヴァーサイドRiverside の活動は、やっぱり私にとっては喜びでもあり驚きでもあった。
 さてこのアルバム、タイトルを日本語に訳すと「新世代の奴隷達の霊廟」というところだろうか?。これだけでも社会意識の強いバンドとして感じ取れる。

Personnel
Mariusz Duda– vocals, bass, acoustic guitar
Piotr Grudziński – guitar
Michał Łapaj – keyboards
Piotr Kozieradzki – drums

  •  このバンドの路線はベーシストのマリウス・デューダによって造られているといっていいのだろう(Directed by Mariusz Dusa)。とにかく全曲のLyricsは彼が担当していて、ヴォーカルも彼が主役だ。そして”Music by Riverside”というところから、それぞれの曲は、彼等の4人編成バンドとしての持ち場上からの協力関係で曲作りをしているというところであろうか。

     このアルバムは2枚組で、2つのパートに別れている。

     <Disc-1>
      1. New Generation Slave
      2. The Depth Of Self-Delusion
      3. Celebrity Touch
      4. We Got Used To It
      5. Feel Like Falling
      6. Deprived (Irretrievably Lost Imagination)
      7. Escalator Shine
     8. Coda

      <Disc-2>
      1. Night Session (Part One)
      2. Night Session (Part Two)
  •  <Disc-2>は、インスト曲による作品。アンビエントで・・・・暗い幻想的な世界へと誘い込まれる(part twoではサックスも導入されている)。この流れはマリウスのソロプロジェクト「Lunatic Soul」寄りの世界らしいが、このバンドのこれからの流れへの試行錯誤の一幕なんであろう。多分彼等の一つのよりどころであるピンク・フロイドからみれば、あの”Echoes”のような曲作りの一つの発想とみてよい。いやはや頼もしい。
  • Mariusz_duda
     さてこのアルバムのメインは<Disc-1>であるので、そちらを探ってみよう。オープニング曲” New Generation Slave”は過去の彼等のアルバムを聴いてみると、ピンク・フロイドとドリーム・シアターの中間的プログレッシブ・メタルというところであったが、それよりはむしろ過去の70年代よりに戻ってのピンク・フロイド寄りのウェイトが増したプログレッシブ・ハード・ロックという感じで、非常に聴きやすく、そこにマリウス(左)のハイレベルのヴォーカルがスタートする。
     しかしLyricsの中身は厳しい。彼等が自由を得てここに築き上げてきた世代、しかしそこには”新しい世代の奴隷”の姿ではないか。人生を自己のものにする余裕も無いと・・・・、このアルバム・ジャケにみる暗くエスカレータで画一的に流れている”個々の個性ある顔”の全く見当たらない都会の人間の姿を描いていたのだ。
     2曲目”The Depth Of Self-Delusion ”では、響き渡るギター・リフはヘビー・メタルよりのパターンだが、なんとピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズの「壁」を思い起こさせる”自己の異国人化”を嘆いている。自由主義・資本主義国に形成されてくる個人というのは「自らが築かざるを得ない壁」を知る世界である事を唄い上げているのだ。
     ” Feel Like Falling ”はヘビーなサウンドが炸裂するも、"混雑孤独の中で、私自身からの隠れ家を得た。そして今ダッシュする、それは空白の世界に遠く離れて落下するのを感じてしまう"と訴える。これは彼等の得た社会への警鐘であるのだ。次なる” Deprived (Irretrievably Lost Imagination) ”の暗い世界に落ち込んで・・・・・・ゆく。”Escalator Shine”の後半の美しいギターの調べが如何にももの悲しく、次第に更に沈んだ世界に埋没してゆくのだ。そして終章”Coda”の流れは、アコースティック・ギターをバックに一つの光明を唄う。まさにロジャー・ウォーターズ=ピンク・フロイドの再来そのもの。

     いやはや、これは30年前にロジャー・ウォーターズの描いた「社会の壁」「人間の壁」が、今解放後20年を経験した自由社会に「新世代の壁の世界」がマリウスの目に再び見えていることに驚きを感ずるである。

    Blog2

     70年代プログレッシブ・ロックのミュージック様式美、サウンド重視世界は、パンクの流れに壊滅状態にされた。しかし現在に至るまでにプログレは大きく二分化してその命を長らえている。その一つがミュージック・スタイルは大きく変えることは無いが、彼等の矛先は社会矛盾と人間の内面的葛藤に目を向けたことだ。この代表がロジャー・ウォーターズの世界(あの時、「アニマルズ」から「ファイナル・カット」において崩壊寸前のプログレッシブ・ロックの再生に成功した)。そしてその流れとしてこのRiverside があるとみる。
     もう一つは、あくまでもミュージックとしての探求に精力を注ぐもの。こちらの代表がロバート・フリップのキング・クリムゾンの世界だ。こちらも今でも脈々と流れている(Anekdotenなど)。
     

     そして今やプログレッシブ・ロックとは、プログレッシブという意味を超越して一つのパターンとして結実している。そんな意味に於いてもこのバンドの暗さと哲学的思索の世界が快感だ。シンフォニック・プログレ・ハードと言えば英国のPallasを思い出すが・・・彼等の宇宙感覚とは別ものであるが、こうしたプログレッシブ・ロックの現代版である事には両者は変わりは無い。

     
     
     Riverside は、ピンク・フロイドを超えたか?・・・・それはそれぞれが感じたところに任すべきだろう。しかし今日にヘビー・メタル・サウンドを持ちながらの社会と人間に迫るプログレッシブ・ロックが存在していることに喝采を浴びせたい。

    (試聴) http://www.youtube.com/watch?v=eQKSJ_9TT9k

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