スティーヴン・ウィルソン

2017年8月26日 (土)

スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson のニュー・アルバム 「to the bone」

なんと意外や、ポップ色が前面に・・・・

<Progressive Rock>
Steven Wilson  「to the bone」
Caroline / EU / CAROL016BR / 2017


Tothebone

Blu-ray版(収録内容)
〇アルバム・ハイレゾ・ステレオ・ミックス音源(24-bit/96k)
〇アルバム・ハイレゾ・5.1サラウンド・サウンド・ミックス音源(24-bit/96k)
〇「Pariah」ミュージック・ビデオ
〇「Song of I」 ミュージック・ビデオ
〇「Ask Me Nicely」アルバム・レコーディングのドキュメンタリー映像(約85分) 


 現代プログレッシヴ・ロックシーンのナンバー1=スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson  (英国プログレ・バンドのポーキュパイン・ツリーのリーダー)が2年振りとなるソロ名義の5枚目(ソロは2008年に1st)のアルバム『トゥ・ザ・ボーンto the bone』をリリースした。2016年のアルバム『4 1/2』以来だ。

  なんと言っても彼は、あの大御所キング・クリムゾンからエマーソン・レイク・アンド・パーマー、イエス、ジェスロ・タル、XTC、ティアーズ・フォー・フィアーズ、 ロキシー・ミュージックなどのリイシューで最新ミックスを任されるエンジニアであって、それだけ自身の作品にもサウンドには拘っている。従って今回もそれを体感するために、ハイレゾ・サウンドそして5.1サラウンドにも拘ってのBlu-ray版を購入した。

Xyz

(Album"to the bone"Track list)
1. to the bone
2. nowhere now
3. pariah
4. the same asylum as before
5. refuge
6. permanating
7. blank tapes
8. people who eat darkness
9. song of i
10. detonation
11. song of unborn

Stevenwilson  オープニングM1.”to the bone”は意味深なサウンドだが、なかなか軽快にパーカッションがリード。しかもスティーヴンのヴォーカルも意外に軽い。しかし不思議に演奏の重厚感は伝わってくる。それでも今までのメタリックなサウンドは姿を消して、おやっと思うのだ。
 全く前知識なしで聴いたのだが、どうも今作はこんな風に紹介している事が解った。それは”スティーヴンが若い頃に好きだったピーター・ガブリエル『So』やトーク・トーク『Colour of Spring』、ティアーズ・フォー・フィアーズ『Seeds of Love』と言ったタイプのプログレッシブ・ポップ作品からインスピレーションを受けた作品”と言うことの様なのだ。

 M2.”nowhere now” を聴いても、プログレじゃなくポップそのものだ。

Ninet_tayeb_1w_2 しかし、そう思って聴いているとM3.” pariah” なんかは良い曲だ。イスラエルの女性シンガー、ニネット・テヤブNinet Tayeb(→)がボーカルとして参加していて、これがなかなかハスキー・ヴォイスでスティーヴンのどちらかというと美声に対比して面白く、なかなか味わい深い。後半バックの演奏も盛り上がりが壮大でこれは魅力曲。
 M4. ”the same asylum as before” では、ギター・ソロも、コーラス・ヴォーカルもと、とにかく聴く方はかしこまること無くイージーに聴ける。
 M5.”refuge”が彼らしい曲と言えそうな暗めで味わい深さがある。

 そしてそうこう聴いていると、今までのスティーヴン・ウィルソンのソロものとの比較では、圧倒的に異色で有り、う~~んどっかで聴いたムードだと思って見たら、そうです後半の数曲はなんとカナダのラッシュの何年も前の全盛期のタイプだなぁ~~。そう、そんなとところが今回のアルバム。今までの暗さもヘビーさもそれなりに見せるは見せるが、明らかにその世界でないのが今作だった。
 さ~~て、スティーヴン・ウィルソン・ファンはどう受け止めるのか・・・・??>肩すかし?そう言ったところでもない。曲の完成度の高さはやはり彼の成せる技。

(視聴)  ”pariah” SW with Ninet Tayeb

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2016年10月 8日 (土)

スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson ベスト・アルバム 「TRANSIENCE」

ソロ名義ベスト・アルバムの登場~それは美しかった

<Progressive Rock>
Steven Wilson  「TRANSIENCE」
K Scope / Germ /  KSCOPE411 /  2016

Transience
  私にとっては、今やプログレ・ロック界の最も期待の人はスティーヴン・ウィルソンだ。
 近作は『HAND.CANNOT.ERACE』2015)、『4 1/2』2016)の2作で、ここで既に取りあげたのであったが、今ニュー・アルバムというのはちょっと早い(目下は構想をねっているはずだが)のであるが・・・。
 しかし嬉しいことに、ここに彼のベスト盤がリリースされたのだ。それは 2015年にアナログ盤のみでリリースされた『TRANSIENCE』のCD盤。
 彼のバンドの「ポーキュパイン・トゥリー」ものでなく、ソロ名義のほうの3アルバムからのベスト盤。その中の数曲は、2016年最新リマスターを施されていて、そこにボーナストラックを追加収録したものだ。
 日本盤は高音質のK2HD+HQCD仕様だが、私はまあそこまでは期待しないで一般標準CD盤(ドイツ盤~1000円以下で手に入るので)でお茶を濁している。
 基本的に歌モノの寄せ集め集である。

(Tracklist)
1. Transience (Single Version) (3:10)
2. Harmony Korine (2016 Remaster) (5:07)
3. Postcard (4:28)
4. Significant Other (2016 Remaster) (4:31)
5. Insurgentes (2016 Remaster) (3:55)
6. The Pin Drop (5:01)
7. Happy Returns (Edit) (5:11)
8. Deform To Form A Star (Edit) (5:53)
9. Happiness III (4:31)
10. Thank You (4:39)
11. Index (4:47)
12. Hand Cannot Erase (4:13)
13. Lazarus (2015 re-recording) (3:57)
14. Drive Home (7:33)

  このアルバム自体は、ベスト盤という性質からみて多くは期待するところに無いが、全体に選曲内容は、(プログレッシブなアプローチの下に、ヘビーでメタリックなサウンドも得意としているスティーヴンであるが)殆ど静かな叙情的な世界を歌い上げる曲集というところ。その為なかなか美しいアルバムに仕上がっている。こうして聴くと、こんなに優しかったのか?と思うところであったが、とにかくちょっと暇つぶしには良い。

       *         *         *         *

 今回はそんな訳で、スティーヴン・ウィルソンの歩んできた歴史にスポットを当ててみると・・・・

 1967年、英国ヘメル・ヘムステッド出身。幼いときに父親の聴くPink Floydの『狂気』に感動、ミュージックというものに興味を持つようになったという。

2823451■バンド活動
 80年代には、Porcupine Tree(→)そしてNo-Manというプロジェクトを始動。当初Porcupine Treeはスティーヴンのソロ・プロジェクトであったが、93年以降はバンド形態となり、3rdアルバム『The Sky Moves Sideways』からは完全なバンドとなった。そして計10枚のスタジオ・アルバムをリリースしてくれて(下記)、プログレッシブ・ロックの再興を企ててくれた。それはサイケデリックと言われたり、プログレ・メタルとも言われたが、フロイド、イエス、クリムゾンの英国御三家では、私にとっては嬉しいことに、ピンク・フロイドに最も近い世界を構築した。このあたりはこのブロクでも何回と取りあげてきたので見て欲しい。
(参照:当ブログ・カテゴリー「ポーキュパイン・トゥリー」)
 彼は2008年にソロ名義のバンドでアルバムをリリースするようになり、このバンドPorcupine Treeは、2010年に活動休止状態至っているが、15年の経過の中でいくつもの傑作を世に送り出した。

<Porcupine Tree~Studio albums>
71afpvclmkl__sl1286_①On the Sunday of Life... (1992)
②Up the Downstair (1993)
③The Sky Moves Sideways (1995)
④Signify (1996)
⑤Stupid Dream (1999)
⑥Lightbulb Sun (2000)
⑦In Absentia (2002)
⑧Deadwing (2005)
⑨Fear of a Blank Planet (2007)
⑩The Incident (2009)

          
  *          *          *

■目下のソロ活動
 2008年には、ミュージシャンとしての一つの転機であったのか、初のソロ名義作品『インサージェンス』を発表。その後既に5枚のスタジオ・アルバムをリリースし、キング・クリムゾンばりのハードにしてメタリックな世界も作り上げている。
 (参照:当ブログ・カテゴリー「スティーヴン・ウィルソン」 )

 一方、彼のエンジニアとしての手腕も高く買われているところが興味ある重要なポイント。
 プログレ系の大御所King CrimsonやEmerson, Lake & Palmerの過去の名盤の再発に当たっては、彼による最新リミックスが施され、高評価を得ている。
 彼のサウンドへの拘りはPorcupine Treeのアルバムでも生きていて、2007年発表の『フィアー・オブ・ア・ブランク・プラネット』や、2009年の『ジ・インシデント』、それに加えソロ第2弾の2011年『グレイス・フォー・ドロウニング』などでは、米グラミー賞の”ベスト・サラウンド・サウンド・アルバム”としてノミネートされるに至っている。

<スティーヴン・ウィルソン-ソロ・スタジオ・アルバム>
51fdoxdhm6l①Insurgentes (2008年)
②Grace for Drowning (2011年)
③The Raven that Refused to Sing (And Other Stories) (2013年)
④Cover Version (2014年)
⑤Hand. Cannot. Erase (2015年)
⑥4 1/2  (2016年)


(直近ソロ・バンド・メンバー)
Steven Wilson(ボーカル、ギター、キーボード、メロトロン、ベース・ギター、バンジョ)
Guthrie Govan(ギター)、
Nick Beggs(ベース・ギター)、
Adam Holzman(キーボード、ハモンド、ムーグ・シンセ)、
Marco Minnemann(ドラム)


(試聴)

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2016年3月21日 (月)

スティーヴン・ウィルソンSTEVEN WILSON ニュー・アルバム 「4 1/2」

これぞプログレッシブ・ロックの道だ!!

   <Progressive Rock, Progre Metal>
       STEVEN WILSON  「4 1/2」
       KSCOPE / UK / KSCOPE529 / 2016 (Blu-ray Audio)

45

Steven Wilson(vocal, g, mellotron, perc ), Adam Holzman(key), Nick Beggs(b), Guthrie Govan(g), Dave Kilminster(g), Craig Blundell(dr), Marco Minnemann(dr), Chad Wackerman(dr), and Theo Travis(sax) 

 まずこのアルバムは、とにかく今やプログレッシブ・ロックの屋台骨となっているスティーヴン・ウィルソンのポーキュパイン・ツリーを離れてのソロ作品だ。アルバム・タイトルが示す通り、好評のソロ4枚目だった前作『HAND. CANNOT, ERACE.』とこれからの次作5枚目を結ぶ作品と言う位置づけにあるようだ。従って前作から1年という短期間をおいてのリリース。
(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/hand-cannot-era.html

45list しかし、繋ぎものとは言え、これもなかなかインパクトのあるアルバムに仕上がっている。私の仕入れたのはBlu-ray Audio盤。これには、DTS HD Master Audio 5.1の他、96/24 5.1 LPCM 及び96/24 stereo LPCM の三通りが収録されている(さすがミュージック・エンジニアですね)。

 [Tracklist]は左の如くだが、前作のレコーディング・セッションで作られた未発表音源がメインで4曲、それと『The Ravin that refused to sing』時のレコーディングを1曲を収録している。更に最後の”Don't hate me”は、ポーキュパイン・ツリーの『STUPID DREAM』に収録されている曲で、2015年ツアーのライブ音源をベースにスタジオ録音を加えたセルフ・リメイクもの。

Sw2
 とにかく全て聴きどころがしっかりとした曲で、特にやや陰影のあるM4.”Sunday rain sets in”から、続くM5.”Vermillioncore”のヘビーにして軽快なる前衛的アプローチも見事、これぞロックの醍醐味というところ。この両曲の繋がりが私には好感度100%である。

Sw1b_2 又オープニング曲M1.”My book of regrets”のロックの多要素の組み込んだ曲展開は、やっぱりプログレですね。
 M1、M6では、なんとなくピンク・フロイド風のギター・サウンドが聴こえてくるが、あのロジャー・ウォーターズの「The Wall Tour」のリード・ギターを務めたDave Kilminsterが参加していまる。彼は好評だった昨年の「HAND. CANNOT, ERACE.」ツアーにも参加していた。
  M6.”Don't hate me”は、イスラエル出身のシンガーNinet Tayebをフィーチャーしており、哀愁感あるヴォーカルが聴けて、9分を超える曲に仕上げて説得力十分。スペーシーなプログレ因子の入ったところも聴きどころの1つ。

 さて御本家の「PORCUPINE TREE」はどうなるのか?と、何時も心配しているのだが、とにかく今やプログレ界は彼の肩にかかっていると言っても過言ではない。次のソロ作品にも期待が大きくなるのである。

(試聴) ”Don't hate me”

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2015年3月 9日 (月)

スティーヴン・ウィルソンSteven Wilsonニュー・アルバム「HAND. CANNOT. ERASE」

            <My Photo Album 瞬光残像 = 南イタリア編>

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クリスマスを迎えるアルベロベッロの夜(8)        (photo  2014.12)

             *    *    *    *

<Rock (Progressive)>

            STEVEN WILSON 「HAND. CANNOT. ERASE.」
      Kscope / Blu-ray Audio KSCOPE523 / 2014

Hand
Steven Wilson - Vocals, Mellotron, Keyboards, Guitar, Bass, Banjo
Guthrie Govan - Lead Guitar
Nick Beggs - Bass, Chapman Stick
Adam Holzman - Piano, Hammond Organ, Moog Synthesizer
Marco Minnemann - Drums

Steven1 ポーキュパイン・ツリーPorcupine Treeから離れてのエンジニアでありコンポーザーにしてミュージシャンであるスティーヴン・ウィルソンのソロ第四弾。メンバーは上のようなところで前作と同じである(参考:前作「レイヴンは歌わない」http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/steven-wilson-t.html )。
  彼は今までどちらかというとこのソロ・ユニットでは、クリムゾン・タイプを構築してきた。一方本来の2009年が目下の最終スタジオ・アルバム(「Incident」)となっているポーキュパイン・ツリーでは、ピンク・フロイド・タイプ(勿論現在のギルモアものでなく、1970年代のロジャー・ウォーターズ在籍時のもの)の演奏スタイルと、両者に変化を見せていたが、果たして今作は?。

 
Handlist Tracklistは左のような11曲。私には目下情報がそれほど多くなく、若干不安であるが、どうも2006年にロンドンのアパートで3年間誰にも発見されずに孤独死した38才の女性を描いているという。これを聞いてイメージとしては、即マリリオンMarillionの「brave」(参照:http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/marillion-0859.html)を思い出した。まさにコンセプト・アルバム。

 ウィルソン自身、過去の集大成と位置付けたアルバムだというが、このソロ・ユニットの総決算か?。
 所謂現在やや少数派であるところのプログレ・アルバム本格派と言って良い出来だ。

P3061775 先ずは01曲のオープニングの静寂を経て、02曲”3 years older”でシンフォニックな演奏を展開する。このアンサンブルは往年のイエスを彷彿とさせる。そして物語を展開して、06曲”Home invasion”、07曲”Regret”でこのアルバムの頂点に至る。これぞスリリングなクリムゾン・タイプ。
 そして09曲”Ancestral”では、まさに絶頂期の1970年代のピンク・フロイドを呼び起こし、その流れの最後はクリムゾンの重厚さで閉める。今やプログレは、スティーヴン・ウィルソン様々である。
P3061777 その後、終焉の10曲目”Happy returns”では、アコギと落ち着いたヴォーカルで纏めあげるは、ロジャー・ウォーターズ流。
 最後は、女性コーラス、静かなピアノで幕を閉じる。ドラマティックな構成は凄い。やはり今や英国ではNo1のプログレ派だ。

 私が入手したのは、Blu-ray Audio盤、5.1サラウンドだ。彼はミュージック・エンジニアであるので、この線まで掘り下げて聴くべきだろう。映像はモノ・クロ写真を中心にイメージを盛り上げる。
 久々にロック界に私を戻してくれるプログレの登場。もう少し聴きこんでゆくと更に何かが見えそうな予感がする。

(試聴)

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2013年12月27日 (金)

プログレッシブ・ロック=「2013年ベスト5」はこれだ!!

   プログレProgressive Rock 健在なり・・・・・・・

Pb051854blog          葡萄牙(ポルトガル)-瞬光残像4 
                    (Mosteiro dos Jerónimos / Lisboa / Portugal     2013.11)

 2013年プログレProgressive Rock=ベスト5

 なんだかんだと言いつつも、今年もプログレ界はそれなりに賑わせて頂きました。これは偏見に満ちた全くの私の私的評価によるベスト5です。あしからず。(新作を対象として、クリムゾンなどのリマスター盤等は除いてあります)

① STEVEN WILSON
  「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING レイヴィンは歌わない
  「DRIVE HOME」

     Swsolotheraven_2

(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/steven-wilson-t.html
            http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/steven-wilson-d.html

         
        

  Riverside 「Shrine of New Generation Slaves」
      Songs
(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-044e.html

③ Dream Theater 「Dream Theater」
   Dreamt


(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/dream-theater-d.html

④ NOSOUND 「afterthought」
   Afterthoughts


(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/nosound-afterth.html

 Millenium 「ego」
   Milleniumego


(参照) http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/millenium-ego-3.html

 

               

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2013年12月24日 (火)

2013 Progressive Rock No1=スティーヴン・ウィルソンSTEVEN WILSON : 「DRIVE HOME」

「レイヴンは歌わない」のフランクフルト・ライブ映像+PV

~2013年 Best5 シリーズ = Progressive Rock 部門~

 2013年の総決算もしてみたい。まずは「Progressive Rock」ではやはりNo1は、このスティーヴン・ウィルソンに落ち着きますね。彼のポーキュパイン・ツリーのバンド活動から離れてのソロ・ユニット作品第三弾「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING レイヴンは歌わない」です。抒情性豊かな曲とアグレッシブな曲のバランス良い曲の仕上げ、演奏技術、録音等において最も素晴らしかった。

 そしてそのプロモ・ビデオ及びライブ映像盤がリリースされているのでここに取り上げる。

    <Progressive Rock>
 STEVEN WILSON 「DRIVE HOME」
        (Blu-ray) Kscope  KSCOPE520,  2013

Drivehome_2

<Musicians>
Steven Wilson — vocals, keyboards, guitars, bass guitar on "The Holy Drinker"
Nick Beggs — bass guitar, backing vocals, Chapman Stick on "The Holy Drinker"
Guthrie Govan — lead guitar
Adam Holzman — keyboards
Marco Minnemann — drums
Theo Travi — flutes, saxophones, clarinet

  これが今年2月リリースされたスティーヴン・ウィルソンの最新作ソロ・アルバム「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING レイヴンは歌わない」のそのPV及びフランクフルトにおけるライブ映像盤(Blu-ray盤+CD盤)である。
  彼の描く世界は抒情性と攻撃性のバランスが見事で、単純にプログレッシブ・ロックと言い切れないところにある。それはミュージック・エンジニアとしての活動がそうさせるところでもあろうか。特にキング・クリムゾンのアルバムの再生には評価も高く、それ自身が彼の演奏活動にも大きく生きているのだろう。まさに技能集団のなせる技がここにある。
 

TRACKLIST
<Blu-ray>
-Video Content-
『Drive Home』PV
『The Raven That Refused To Sing』PV
『The Holy Drinker』Live in Frankfurt
『Insurgents』Live in Frankfurt
『The Watchmaker』Live in Frankfurt
『The Raven That Refused To Sing』Live in Frankfurt
-Audio Content-
『The Birthday Party』
『The Raven that Refused to Sing』orchestral ver.

<CD>
『Drive Home』edit ver.
『The Birthday Party』
『The Raven That Refused To Sing』orchestral ver.
『The Holy Drinker』Live in Frankfurt
『Insurgents』Live in Frankfurt
『The Watchmaker』Live in Frankfurt
『The Raven That Refused To Sing』Live in Frankfurt

Steven_wilsonx フランクフルトに於けるライブ映像は4曲だが、ステージであるにも関わらず、アルバムの出來に負けない演奏で充実度が高く納得モノ。映像もBlu-ray盤にふさわしく良好。サウンドは5.1surround DTS-HD Master Audio。
 そしてAudio Content の2曲のうち『The Birthday Party』は初登場曲。これは彼等の一つの特徴であるプログレ系の抒情的で深遠な曲とは対照的な曲で、メンバーそれぞれのテクニックのぶつかり合いで迫力有りというところ。これらも96/24 surround Audio である。

 更に注目点は、それにも増して2曲のPromo.Video作品の映像が何とも言えず印象深い。これはこのアルバムの一つの目玉であろうが、物語と詩情性が高く傑作である。いやはや驚きました。今回のこの映像アルバムは、DVD盤もあるが、それにもこのVideo作品は収められていると思う。いずれにせよこれは一見の価値ありだ。

 つまるところ、これはアルバム「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING 」の派生盤ではあるが、今やサウンドそして映像の求められる時代にマッチしたこうした盤のリリースは、やはりスティーヴンの世界がこの時代に発展的に生きていることが良く解るのである。

(試聴)

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2013年8月11日 (日)

スティーヴン・ウィルソンのライブ映像盤(BD)2枚:「Anesthetize」「Get All You Deserve」

まさに70年代から現代、そして未来へのプログレッシブな総集編
    ~ロックは、やはりステージ・ライブだ!~

 スティーヴン・ウィルソンの音楽エンジニアの活動はさておき、演奏家としての活動は目下「ポーキュパイン・ツリー」から「ソロ・ユニット」への2面に遭遇するが、その両者の映像盤である。

<Progressive ROCK> Stoeven Wilson 「get all you deserve」
                           Blu-ray   Kscope     Ksope514 ,   2012

Bdgetall

 スティーヴン・ウィルソンのソロ・ユニット・ライブ映像。主として近年「Porcupain Tree」から離れての2011年の彼の2ndソロアルバム「Grace for Drowing」リリース直後の2012年4月のメキシコ・ツアー映像。
 従ってメンバーはアルバム制作群:Steve Wilson(Vocals,guitar,keybords), Marco Minnemann (drums), Nick Beggs (bass), Theo Travis (flute and sax), Adam Holzman (keys) and Niko Tsonev (guitars)。

 List は下記、明らかにクリムゾン・タイプのウィルソン世界。6人バンドとしてそれぞれの楽器の繊細さとダイナミックさを見事に取り混ぜての迫力と説得力は素晴らしい。各メンバーの演奏力も高く、ウィルソンにとっては納得ユニットと思われる。はっきり言って全体的には暗い、しかしその暗さが深遠さを増して素晴らしい。”Veneo Para Las Hadas”のようにスローな説得力がある曲、”raidderII”の各演奏陣との連携プレイの妙と静粛な音の間の取り方、一転しての激しさの展開、この大会場の聴衆を彼等に惹きつけてしまう。なかなかプログレッシブなステージは感動もの。彼はこの世界で次のアルバム作りにも進むわけだ(「The Raven That refused to sing 」(2003) 参照①)

Bdgetallstage

1. Intro ('Citadel')
2. No Twilight Within the Courts of the Sun
3. Index
4. Deform to Form a Star
5. Sectarian
6. Postcard
7. Remainder the Black Dog
8. Harmony Korine
9. Abandoner
10. Like Dust I Have Cleared From My Eye
11. Luminol
12. Veneno Para Las Hadas
13. No Part of Me
14. Raider II
15. Get All You Deserve
16. Outro ('Litany')

<progressive ROCK> Porcupine Tree 「anesthetize」
                        DVD+Blu-ray   Kscope     Kscope506  , 2010

Anesthetize

 こちらは2008年のスティーヴン・ウィルソン率いる「Porcupine Tree」 の”Fear of a Blank Planet-Tour”のNetherlandsのステージ模様だ。4人のメンバー(Steven Wilson(v, g,key)、Richard Barbieri(key)、Colin Edwin(bass)、Gavin Harrison(dr.))にお馴染みJohn Wesleyが、Guitarとbacking Vocalsで加わっての5人バンド。
 この後の2009年に彼等のスタジオ・アルバム「The Incident」、ライブ・アルバム「Octane Twisted」(2012年)がリリースされたが、目下活動はそれ止まり、映像はこれが近作。

Anesthetizetracklist
 ステージ演奏はアルバム「Fear of a Blank Planet」全曲+αで135分に及ぶ。彼等のベースにはヘヴィ・ロックのビートをもっていることが解るが、元ジャパンのリチャード・バルビエリのキーボードが重要な役割を果たしている結果、クリムゾン的要素を持っているスティーヴン・ウィルソンでありながら、このバンドはどちらかというとピンク・フロイド、マリリオン流の曲展開をする(参照②)。曲の印象も内省的であるが、意外にウィルソンのギター音はエコーを効かせた方向に行かずやや乾燥感のあるデジタル・ロック傾向にある。しかしJohn Wesleyがなかなか泣きとヘヴィ・メタル両面のギターを効かせて貢献度大(18分に及ぼうとする物語を感ずる”Anesthetize”がたっぷり堪能できる)。
 多分、ウィルソンは、もう少しヘヴィーで攻撃的、クリムゾン的アプローチを期していたのであろう。この後のアルバム「The Incident」にはその方向が見えたし、その後の彼のソロ・ユニットの流れをみるとそんな点が明瞭だ。ウィルソンはこのバンドの20年の歴史をこれからどう生かして行くのであろうか?。

(参照) ① http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/steven-wilson-t.html
           ② http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/porcupine-tree-.html

(試聴)"Luminol"http://www.youtube.com/watch?v=E3MpGBwGdVk
         "Anestthetize"http://www.youtube.com/watch?v=AKeTD8E8Nkg

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2013年8月 2日 (金)

プログレの求道者=スティーヴン・ウィルソンSTEVEN WILSON :ソロ・アルバム 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING」

何故ソロ・アルバムが必要か?~プログレの道を究める手段?

<Progressive Rock> STEVEN WILSON 「THE RAVEN THAT REFUSED TO SING and other stories レイヴンは歌わない
                           (Blu-ray Disc)    Kscope     KSOPE516  ,   2013

Swsolotheraven

 ポーキュパイン・ツリーPorcupine Treeのリーダー"スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson"がソロ・アルバムを今年もリリースしている。ポーキュパイン・ツリーとしては、目下近作のスタジオ・アルバムは2009年の「The Incident」であり、そろそろニュー・アルバムが当然リリースされてよさそうであるが、昨年(2012年)ライブ盤「Octane Twisted」が出たのみで目下休息状態。そんなところに今年彼のこのソロ・アルバム3作目がリリースされたわけだ。

 とにかく、目下ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック界きっての重要人物、彼の作り出すミュージック世界は単純にこれだと言い切れない。サイケデリック、プログレッシブというところは当然としても、ややヘビー・メタルっぽい音をだしたり、アンビエントの世界がみえたり、インダストリアルと言われたり、エクスペリメンタル・ロックとしての評価もある。又彼自身がミュージック・エンジニアとしてアルバム作りに関わっている(KING CRIMSON、E.L.Pなどのリマスター)など、その才能はずば抜けている。

Steven Wilson (vocals, guitar, keyboards, bass)
Marco Minnemann (drums)
Guthrie Govan (lead guitar)

Nick Beggs (bass)
Theo Travis (flute, sax)
Adam Holzman ( Fender Rhodes, organ, piano)

Stevenwilson27_2
 このウィルソンのソロ・ユニットは、ツアー・メンバーが主力(既にオフィシャル映像がある「Gett All You Deserve」)。面白いことにアラン・パーソンズが関わっていることだ。さて作り出された世界は?・・・・と言うと、これぞ70年代から40年経ての”今時のプログレ”だ。このメンバーは聴いてゆくとそれぞれ恐ろしい強者集団だということが解る。ロバート・フリップが彼を支えてきた因子がここに結実していると言えばそんなところだ。つまりクリムゾンの派生系であって、あのポーキュパイン・ツリーが描く世界よりは、スリリングにしてエネルギッシュで、ジャズィでアヴァンギャルドで、フルートが美しく、一方ベースはロジャー・ウォーターズ風の柔らかく太い音でなく金属音でリズムを叩き刻んでくる。
 私が何時も言うところの「現代プログレ」の中では、ミュージックとサウンドの探求派のプログレだ。キング・クリムゾンの歩んだ道のウィルソン的世界。かなり暴力的な面を持つ、しかしそこはウィルソン、決してそれに終わらず心憎い叙情サウンドもみせるのである。しかし過去のピンク・フロイドを始めとしてのあの時代の音を回顧させてくれる泣きギターを伴っての心に哀愁を引き起こすというパターンの範疇のものでは無い。

Swsolotracklist Track-Listは左。とにかく6曲立て続けに流れる実験的サウンドを織り交ぜての流れは圧巻である。”Luminol”はその代表格。そして最後の”The Raven that refused to sing”は美しさ故の暗さで(Ravenとは、わたり烏(カラス)で不吉の兆とか)一度聴くと忘れられない名曲、最後の数秒のピアノの音が救い。

 これによって、もともとポーキュパイン・ツリーも彼の実験ユニットから始まったのであるが、バンドとして一つの形が出来上がって来ている現在、彼は更に一歩殻を破って一つのプログレッシブな道を探求している結果がこのソロ・ユニットで仕上げたアルバムだと言うことが理解できる。

 しかし彼にとってポーキュパイン・ツリーは、やはり大切な一つの世界、時にソロ・ユニットで実験を繰り返しつつも、あの世界はおそらく続けてゆくものと思う。私のような70年代の歴史的サウンドに染まってきているものにとっては、ポーキュパイン・ツリーにその世界を感ずることが出來、しかも現在のロック・サウンドも聴けるという欲張りバンドなのだ。それゆえに、このソロ・ユニットとは別の意味でやはり期待をしているのである。

 
 さてこのアルバム、私はBlu-ray盤で買ったのだが、それはまさに正解であった。まずサウンドにうるさいウィルソンだけあって、ここにはCD盤の音を遙かに超えるLPCM 24bit/96kHz のステレオと5.1サラウンド 及び5.1DTS HD MASTER AUDIO で収録されている(残念ながら最近のブルーレイ・オーディオ2.0 LPCM 24bit/192kHzのハイレゾ音源ではないが)。又ボーナス・トラックとして、2012年9月15-21日にロスのEast West Studio にての録音風景がみれる。これはなかなかリアルである。
 又なんとその最後にキング・クリムゾンが、1969年に「In The Court of the Crimson King」を録音した際に使われたOriginal King Crimson MK2 Mellotronをウイルソンが弾いてみせる映像があるのである。これは感動ものだ。
 

(試聴) ①アルバム http://www.youtube.com/watch?v=9XmhD15azO0
           ②ライブ映像 http://www.youtube.com/watch?v=E3MpGBwGdVk

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2013年7月28日 (日)

ポーキュパイン・ツリーPorcupine Tree(2):日本盤初登場のネオ・プログレ・アルバム「DEADWING」

日本盤として初登場のヘビー・メタル色とサイケと叙情とネオ・プログレの世界

<progressive Rock> PORCUPINE TREE 「DEADWING」
                         LAVA Records  93812-2  ,  2005

Deadwing 

 ポーキュパイン・ツリーPorcupine Tree についてはここに連続登場である。それは日本に於けるポイントはこのアルバムであるからだ。彼等の過去のアルバムのリリース活動とは裏腹に、日本盤の登場がなく、考えてみれば日本盤初登場は2006年でこのアルバムだった。つまりバンドとしての活動から10年以上の経過でようやく日本でお目見えしたわけだ。しかしここまでのスティーヴン・ウィルソン自身もバンドと共に変化を遂げてきたわけで、このアルバムになると、どちらかというとヘビー・メタルよりのサウンドで迫ってきたところから、むしろそれは一般ロック・ファンにはうまく入り込めたのではなかったかと思う。
 まあそんなことからこのアルバムは印象深いものであるし、この年には彼等の姿がみれるライブ映像も出現して、それまでの10年の積み重ねは嘘のごとく、あっという間に日本でもファンを獲得した。

Deadwinglist
 このアルバムは左のように9曲収録されているが、隠しトラックがある。1曲目がアルバム・タイトル曲の”Deadwing”で、最初から叩きつけるメタリックなサウンドに驚いたものだ。この曲にはキング・クリムゾンのAdrian Belewがゲスト参加している。しかし後半には例の如く彼等の静の部分も見えて、相変わらずの起伏豊かな曲作りに圧倒されるのだ。
 いずれにしてもこのアルバムにおいても多彩そのもの。ウィルソンは完全にアルバム一枚をトータルに一つの世界と考えており、3曲目”Lazarus”優しいヴォーカルに美しさも聴かせ、中盤からは古典的ハード・ロック・スタイルから、アンビエントなサウンドも、そして”Arriving somewere but not here”では前半プログレ、後半ヘビー・メタルそして又そのあと美しいギターの調べと圧巻。
 ”The start of something beautiful”は、このバンドの重要メンバー元Japanのリチャード・バルビエリのキー・ボード、シンセサイザーも効果をあげ、泣きのギターとフロイド流のプログレ色の濃い曲も登場させる。とにかくウィルソンのサウンドを重視してのアルバム構成は見事で完成度が高く飽きるところを知らない。(メンバーなどは「The Sky Moves Sideways」紹介記事参照)

<DVD> PORCUPINE TREE 「Arriving somewhere...」
   ~Filmed at The Park West, Chicago, USA, 11-12.Oct.2005~
               WHD Entertainment  IEBP-10007/8  ,   2005

Dvdarrivingsomewhere
 これはポーキュパイン・ツリーのライブ映像盤。丁度上のアルバム「DEADWING」リリース時のステージが観れる2005年シカゴのライブ。演奏内容も、このアルバムから5曲が登場する。

 ライブではこのバンドの4人のメンバーに加えてその後も起用される第2リード・ギターのJohn Wesley が加わってツイン・ギター体制。スティーヴン・ウィルソンはアルバムを仕上げる技術師だから、自己のマルチ・プレイヤーの能力発揮にも、オーバー・ダビング等も当然行っており、そんな意味でもステージではサポート・ギタリストは必要である事は想像に難くない。
 このライブ映像盤も、彼等のものだけあって、映像はかなり凝っている。モノクロや疑似フィルムもののタイプを交錯させて仕上げて、単なるステージ撮影というものでなく、これは映像世界としての彼のこだわりも見て取れる。このあたりは彼等の演奏をしっかり見たいという面からは賛否両論あろうが、これはこれ一つの作品として成り立っている。(参考までに、2010年の映像盤「anesthetize」はブルー・レイでじっくり彼等を美しい画像とサウンドで観れる)

Dvdarrivingsomewherelist
左にこの映像盤の収録曲を示す。

 なおDisc2もあり、そこにはメンバーの諸々の映像、Photoなどや、プロモフィルムも登場させ、サービスたっぷり。

Porcupinephoto4b

(試聴) "Arriving Somewhere but not here" http://www.youtube.com/watch?v=ug8CWIasWi8   
           "Deadwing"  http://www.youtube.com/watch?v=GMEwM3YHiME

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2013年7月25日 (木)

ポーキュパイン・ツリーPorcupine Tree 「The Sky Moves Sideways」~ご本家ブリティッシュ・プログレの迫力

クリムゾンからピンク・フロイドまでを凌駕する

 久々にご本家ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックに目を向けたい。嬉しいことに70年代プログレの波は世界各地でそれなりに現代においても、脈々と流れ繋がっていることで、特に東欧・北欧に注目することが多いというところ。そんな中で意外にご本家ブリティッシュ・プログレの重要なところをご粗末にしていて叱られそうであるので、ちょっと恰好付けに「ポーキュパイン・ツリー」でお茶を濁すという始末であります。

<Prigressive Rock> PORCUPINE TREE 「The Sky Moves Sideways」
              KSCOPE   KSCOPE124  ,     (originai  1995)

Theskymovessideways

 ご存じスティーヴン・ウィルソンSteven Wilson 率いるブリティッシュ・プログレの今や重鎮バンドのポーキュパイン・ツリーpocupine tree。ここで登場させるは、彼等の20年の歴史の多くのアルバムの中から、バンド結成2年後1995年リリースの3rdアルバムである。もう18年前にならんとしているこのアルバムをここで取り上げるのは、彼等の近作(2009年)の「THE INCIDENT」がそれほど評判良くなかったといことでなく(私は結構気に入ってますけど)、これは当時ギルモア・ピンク・フロイドが進歩なしの「対 DIVISION BELL」をリリースした翌年のリリースであり(実は私はこの3rdは、リリース当時は日本盤のリリースはなく、まだ知らずに少々遅れて知ったのであるが)、なんと言ってもプログレの暗黒時代にユーロ・ロックの発掘で欲求不満を解消し、それも種尽きの頃に、なんと英国にこんなプログレッシブな現代版ピンク・フロイドと言って良いアルバムがある事を知って歓喜したものだった。当時、ネオ・サイケデリック・プログレッシブ・ロックなんて言ったりして感激し万歳したのである。そんなところから彼等の話になると、どうしても先ずはこのアルバムを登場させたいわけである。
 そしてここに紹介したアルバムは後に再発した2枚組豪華盤。若干曲の配列が変わり、又alternate version とbonus track が加わっておりお勧め盤。

Wilson
 ピンク・フロイド系サウンドであるのだが、皮肉にもリーダーのスティーヴン・ウィルソンにはクリムゾン系が支えているから面白い。彼は多彩なギターのサウンドを聴かせてくれるが、時にギターのゲストを加えツイン・ギターにしてサウンドを現代風にも変化させる。又この作品には、Gavin Harrisonが参加して、攻撃的なサウンドを展開しているし、この後のアルバムにはRobert Frippがゲストで登場したり、更にAdrian Belewもギターで参加したアルバムもある。そして後にウィルソン自身エンジニアとして、クリムゾンの作品のリマスターに手を付けている。
 面白いのは、このバンドによるアルバムは一枚一枚性格を異にするのでプログレッシブと言えばプログレッシブであり、フロイド系好みならまずはこのアルバムでしょうね。しかし最近のメタル色のあるアルバムもドリーム・シアターとは一味違う”フロイドのメタル版”みたいで楽しいのだ。
 とにかく多芸な彼だが、2010年にはスウェーデンのプログレ・バンドOpethとStorm Corrosionを結成したりしている。

さて話はもどってこのアルバム・・・・・
members
   *Steve Wilson : guitars, key, vocals
   *Richard Barbieri : synthesizers, key
   *Gavin Harrison : drums
   *Cris Maitland : percussion
   *Colin Edwin : bass
    Suzanne Barbieli : vocals
    Rick Edwards : percussion
    Theo Travis : flute            

  (*印 中心メンバー)

Theskylist
 こちらの再発豪華盤は左のようなCD2枚組、とくにアルバム・タイトル曲”The Sky Moves Sideways”は組曲になっていて、当初6曲より成り立っていた。従って35分の長曲。かってのピンク・フロイドの”Shine On You Crazy Diamond”のように二分割してスタートと締めくくりに分けている。この曲は山あり谷あり、深遠な海有り水平線有りで満足のピンク・フロイド世界を知らされる。
 ”The Moon Touches Your Shoulder”はアコギと静かなヴォーカルで始まり、そしてエレキ・サウンドを堪能させまさにピンク・フロイド。
 バンドになっての2作目であるが、曲によってメンバーが異なるのもまだまだウィルソンのユニット色が強いところ。特に”Dislocated Day”は彼のマルチ・プレイにGavin Harrisontが効果をあげているのか?攻撃的で刺激的で面白い。いずれにしても、フロイドとクリムゾンを聴く感じで欲張り向きだ。この曲の効果によりアルバムの味付けが素晴らしい。

Porcupinetreemembersb

 いまでも、このポーキュパイン・ツリーはプログレッシブな変化を遂げつつある。曲も攻撃性と抒情性の織り交ぜが巧み、ギターもヘヴィーであったりアコギの美しさがあったり、そして不思議とフロイド色が必ず見えるところが私を泣かせるのである。まずはこの私にとっての感動の3rdアルバムを紹介したのだが、この後の彼等の多彩な変化も注目度が高い。当然そのあたりにも機会をみて焦点を当てるつもりだ。

(試聴 ) http://www.youtube.com/watch?v=yGc66wTvmVE

 

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