寺島レコード:コンピレーション・アルバム「Jazz Bar 2022」
今年の最後を飾るは、なんと22年続いてのアルバムだ
<Jazz>
Yasukuni Terashima presents 「Jazz Bar 2022」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1108 / 2022
寺島靖国プレゼンツとしてのオムニバス(コンピレーション)・アルバム・シリーズは、目下5種が継続中だ。その最も長く根源的なアルバムが「Jazz Bar」シリーズだが、2001年にスタートして(→)、この12月に22年目を迎え第22巻がリリースされた。
こうした彼の名を冠してのシリーズは、1巻を1年以上空けてのリリース・スタイルで、今年は私の好きな「For Jazz Audio Fans Only」(Vol.15)、そして「For Jazz Vocal Fans Only」(Vol.5)、「For Jazz Ballad Fans Only」(Vol.3)が既にリリースされていて4巻が登場したわけだ。(今年リリースしなかったのが、「For Jazz Drums Fans Only」) いずれにしても、既に47巻がリリースされていて、考えてみるとほぼ600曲は紹介してきていることになる。これもかなりの偉業ですね。もともとオーディオ的興味とジャズ分野ではピアノ・トリオもの、女性ヴォーカルものなどが好む私は、丁度お手頃の世界であって、特に寺島氏の好みともやや似通ったところがあって、私的には満足してきた。又彼の選曲は、その年のヒット曲ということでなく、彼自身が出会って評価に値するとしたものを選んでいるので、マイナーなものあり、更に彼のあまり形にこだわらないライナー・ノーツも楽しく、その点も私にとっては興味深いところがある。
この最も基本的な「Jazz Bar」シリーズは、ジャズのジャンルを問わず、彼自身がその年何らかの意味で評価したものを集めている。従って意外に古いものを敢えて取り上げることもあるが、基本的には近年のリリースもので、注目点は何びとにもという普遍的なところを狙うのでなく、彼自身の世界からの選定で、しかもリリース・レーベル・会社などが許可してくれるものに限られている。この彼の意志というのが面白いところでもある。
さて今年の最後のこの「Jazz Bar 2022」は、以下の内容であった。
(Tracklist)
01. In Memory / Tingvall Trio
02. Rendezvous / Roy Powell
03. Ojos Carinosos / Joe Farnsworth
04. O Que Sera / The Hans Ulrik, Steve Swallow, Jonas Johansen Trio
05. Aniram / Andrea Beneventano Trio
06. Arrolo de Toques / Nani Garcia Trio
07. Anastasia / Al Foster
08. Returning / Jeff Johnston Trio
09. Don't Give Up / Philippe Lemm Trio
10. Brother Can You Spare a Dime / Dylan Cramer
11. Ballada na Wschod / Jana Bezek Trio
12. My Old Flame / Domenic Landolf
13. Mi Sono Innamorato Di Te / Enrico Pieranunzi, Marc Johnson, Joey Baron
今年の22巻は、私から見ての特徴は、既に聴いているものが少なかったところで、これも私としては嬉しいところ。初めてのものが多いほど私には収穫があるという事でして・・・。 冒頭のTingvall Trio の名を見て・・やや、これは私の結構好みのドイツのトリオ(ピアニストはスウェーデン出身)であるが、このアルバムは知らなかった。・・と、言うより彼らの事を忘れていて、このところマークしてなかった。この曲M1."In Memory"が収められているアルバムは『Dance』(Skip Records / SKP9177/2020 →)は聴いてなかったのだ。2年前のアルバムだったが、その13曲(スタート曲は"Tokyo Dance")の最後を飾る曲である。さっそくそのアルバムを聴いてみることとなったのだが、ほゞ全体的にはこの曲とはイメージが違う世界である。リズムカルな曲集だ。そしてこの曲のみ悲しみを描きアルバムを纏め上げるという不思議なアルバム。とにかくこの曲がいいですね。この悲しいメロデイーとシンバルの音の響きがピッタリ、ベースのアルコも有効、ユーロ・ジャズの極み。これだけで聴く価値あり。
M3." Ojos Carinosos"は、持ってましたね、ドラマーのピアノ・トリオ。ピアノはケニー・バロン。ここでも紹介しました。私も評価は良かった。
M4." O Que Sera" ちょつと面白いギターとサックスの取り合わせ。
M8."Returning" ジャズ世界には珍しい色気のない淡々とした静かな世界を描くピアノ。
M10."Brother Can You Spare a Dime"は、アルト・サックスの魅力と、M.12" My Old Flame "ちょっと変わったサックスで、好きな人向き。
M11." Ballada na Wschod"は、正座して聴いた方がいいようなピアノ・トリオ。
M13." Mi Sono Innamorato Di Te"は、これは又古いものをここに持ってきましたね、10年前のピエラヌンツィのアルバム『Ballads』(CAM77852/2012)。再聴の為、私は手持ちのアルバムを引っ張り出すに苦労しました。これが締めくくりに来た意味はちょっと解らないが、まあ良いでしょう、お手本を示したかったのか。
今年のこのシリーズは、知らなかったものが多く興味深かった。そんな意味で購入して良かったと思うのでお勧め盤としよう、なんと言ってもM1.が最高でしたね。
(評価)
□ 選曲 88/100
□ 録音 88/100
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参考までに、今年2022年にリリースしたその他の「Yasukuni Terashima presents シリーズ」は以下のようだった。
■ 4月『For Jazz Vocal Fans Only Vol.5』(TYR-1103)
女性ヴォーカルが中心のアルバム。美女狩りの範囲が広がります。しかし、今作は知っているものが多すぎて残念でした。
■ 8月『For Jazz Ballad Fans Only Vol.3』(TYR-1106)
今回は、寺島氏も反省したのか管ものが多くなって、私にとってはイマイチでした。
参照: http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-a75acb.html
■ 10月『For Jazz Audio Fans Only Vol.15』(TYR-1107)
これはかなり私の期待度の高いシリーズ、もう15年経過。前作のVol.14が良かったので、今年は若干空しいところもあったが、75点としておこう。
(参考試聴)
"In Memory"
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