エンリコ・ピエラヌンツィ

2021年3月21日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi 「THE REAL YOU」

ピアノとベースのデュオでエヴァンス・トリビュート・アルバム

<Jazz>

Pieranunzi , Fonnesbaek 「THE REAL YOU」
Stunt Records / Denmark / STUCD 20132 / 2021

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Enrico Pieranunzi (piano)
Thomas Fonnesbæk (bass)

  イタリアのベテラン・ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィが三年前にベースのトーマス・フォネスベック(1977デンマーク生まれ)とのデュオ『Blue Waltz』作品を発表したが、それ以来のこのコンビでの二作目の登場。それもなんと今や伝説のビル・エヴァンス(1929-1980)のトリビュート・アルバムとして気合いが入っている。
 このところエンリコも多作で又々の登場となるが、意外に脇役的アルバムも多かったところに、おそらくこの企画は彼自身の意欲から産まれたものであろうと期待していたものである。
 まあエンリコと言えば、私としてはソロやトリオものにおいても、美旋律叙情派演奏が期待面の大きいところだが、近年は若干その様相を変えインタープレイの妙に傾いているのかと思わせるところがある。そんな点がどうかと興味を持って手にしたアルバム。

Pieranunzifonnesbaek1_c_ (Tracklist)

01. Hindsight *
02. Only Child (B.Evans)
03. The Real You *
04. Passing Shadows *
05. Our Foolish Hearts %
06. Sno' Peas 
07. Il Giardino Di Anne *
08. I Will Look After You # 
09. Dreams And The Morning *
10. Interplay (B.Evans)
11. More Stars %
12. People Change #
13. Bill And Bach %

 *印 Enrio Pieranunzi  ,  #印 Tomas Fonnesbæk ,  %印 Enrico & Thomas

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  M01."Hindsight" 案の定、美旋律というよりはインタープレイ美学。
  M02."Only child" で、ビル・エヴァンスとの対峙を演ずる。テンポ・アップで演奏しており、エヴァンスの演奏にみるところの何となく物思いの回顧に誘導される世界は、残念ながら感じない。
 M03 "The Real You"は、エンリコのオリジナル曲で、アルバム・タイトル曲、聴きやすいメロディーが流れるが感動はない。
 M04 "Passing Shadows "は、やや哀愁のあるピアノ旋律から入って、中盤のベース演奏も印象深い。次第にアクティブな演奏に転じて、ここでは"ビル・エヴァンス奏法"の雰囲気は、それなりにイメージさせられる。M03、M04の二曲はクラシック寄りの美的演奏。
 M05."Our Foolish Hearts "ピアノが流すオリジナル旋律に、ベースが流す"My foolish heart"曲で作り上げる技に驚かされる。奇抜な手法での美しさに脱帽。見事な老獪な技の世界。
 M07."Il Giardino Di Anne"は、M3に似た技法だが刺激は少ない。
 M08."I Will Look After You"はフォネスベックの曲となっているが、エンリコの世界そのもの。
 M10." Interplay" 再びエヴァンス曲の登場、新しさは感じなかったが、M11." More Stars "の歯切れの良い高速インタープレイが圧巻。
 M12."People Change" ラスマエのゆったり美学。
 M13." Bill And Bach"のエヴァンスとバッハのテクニックを凝らしての対比が面白い発想。中盤のバッハに痺れる。

 エンリコのピアノは、相変わらず端正にして歯切れの良いピアノ・プレイだ。ドラムス・レスでベースとのデュオとしたところにインタープレイを描くにはとりやすかった手法か。所謂、"哀愁抒情性の美学"のアルバムではなく、"インタープレイ美学"であったと結論づける。まあ、彼らの満足度が大きいかも知れない。それがビル・エヴァンス世界のトリビュートとすればうなずけないことも無い。

(評価)
□ 曲・演奏 : 85/100
□   録音   : 88/100

(試聴)   "Our Foolish Hearts"

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2021年3月13日 (土)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi & Bert Joris 「AFTERGLOW」

なかなかトランペットものは、私的には敷居が高い

<Jazz>
Enrico Pieranunzi & Bert Joris 「AFTERGLOW」
CHALLENGE Records / Austria / CR73460 / 2020

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Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Bert Joris バート・ヨリス (trumpet, flugelhorn)

Recording Studio : MotorMusic, Mechelen(Belgium)
Recording dates : September 7&8, 2018

  このところ矢継ぎ早にお目見えするエンリコ・ピエラヌンツィ(1949-)のアルバム。殆ど企画ものが多いのだが、このアルバムも2018年録音モノでベルギーの名トランぺッター、バート・ヨリス(1957-)とのデュオ。もともと私はトランペッターものは、ほんの限られた演奏者のものしか聴かないのだが、取り得合えず叙情派といってよいエンリコとのデュオものであるというところと、オリジナル曲によるものであることから、アプローチしてみた。

(Tracklist)

01. Siren's Lounge (4:24) *
02. Afterglow (3:31) *
03. Millie (3:18)  #
04. Cradle Song For Mattia (2:51) *
05. Five Plus Five (5:10) *
06. Anne April Sang (5:20) *
07. Freelude (2:24) %
08. What's What (2:38) *
09. How Could We Forget (5:22) #
10. Not Found (3:33) %
11. The Real You (3:03) *

*印 composed by E.Pieranunzi
#     composed by B.Joris
%    composed by E.Pieranunzi & B.Joris

Eb

 案の定、予想通りのエンリコのむしろ黒子役のデュオだ。ヨリスは心得たりと演じているが、これもファンにとってはたまらないと言えるのか、私にとってはどうもイマイチというよりは、心に迫る良い音として聴けないところは、自分自身でもナサケナイ。

 アルバム・タイトルの「Afterglow」は、エンリコのオリジナル曲M2."Afterglow"からきていると思うが、一日でも美しい夕映えや残光を意味する言葉で、"こまでも美しく、きらめくピアノと柔らかいラッパの音色"と言うことのようだが、どうもその世界はこの曲とその他の2-3の曲で聴ける以外では、理解できなかった。
   敢えて言うならば、収録の11曲の中では、それなりの美的世界は感じられたというのが、M2.以外では、M4."Cradle Song For Mattia ", M6."Anne April Sang", M7."Freelude "位で、M4.はメロディーが親しみやすく、M6.は静かな中に味わい深いトランペットの響きが美しい。M7.はスローな展開で、ちょっとした異世界に誘われる。
 M8."What's what"は、ハイレベルな演奏での掛け合いのインタープレイが面白いが、M10."Not found"と共に、アクロバティックで演ずる二人の楽しみのようで、殆ど聴く方としての私個人の興味は湧かなかった。

71wdfxpss3l_ac850  実はこのところリリースされたエンリコ・ピエラヌンツィのアルバムに、もう一枚『THE REAL YOU』(STUCD 20132/2021)(→)というのがあって、こちらはピアノ+ベースのデュオで、実はそれに期待していました(紹介はいずれ)。従ってこちらのこのアルバムに関してはこんな紹介程度にして納めておく。トランペットものの愛好者には是非聴いていただいて評価を聞いてみたいと思うのである。

(評価)
□ 曲・演奏  75/100
□ 録音    80/100

(試聴)

 

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2021年1月15日 (金)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」

欲張りのヴォーカル入りのクインテット・ジヤズ

<Jazz>

Enrico Pieranunzi JAZZ ENSEMBLE 「TIME'S PASSAGE 」
Abeat For Jazz / IMPORT / ABJZ 219 / 2020

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Enrico Pieranunzi (piano, arrangement) (electric piano on 1, 9)
Luca Bulgarelli (bass except 7)
Dede Ceccarelli (drums except 7)

*special guests:
Simona Severini (vocal except 3, 5)
Andrea Dulbecco (vibraphone except 7)

  日本で圧倒的人気の エンリコ ・ピエラヌンツィ(1949年ローマ生まれ)のピアノトリオを基軸とし、しかも彼のオリジナル曲を中心としたアルバムだが、ヴィブラフォン&女性ヴォーカルのゲスト二人を迎えてのやや異色のアンサンブル編。
 実はエンリコと言うとあのクラシック・ムードのある情緒あるメロディーのピアノの美旋律トリオを私はどうしても期待してしまうので、その世界とは明らかに異なる彼の近年のアグレッシブな姿勢がやはり前面に出てのアルバム。その為少々評価が難しい為に年を越してここに取上げたという次第。

Vvj106_hqf_extralarge  9曲中7曲に登場する女性ヴォーカルのシモーナ・セヴェリーニの歌声が、先ずは重要な役割を果たしている上に、近年ややジヤズ界から後退気味のヴィブラフォンが登場してのピアノの取り合わせが又微妙で、ちょっと意外な世界に流れていくのである。
  そしてもう一つピエラヌンツィとこの女性セヴェリーニのコンビというと、2012年からの関係で、2016年にはアルバム『My Songbook』(VVJ106/2016)(→)だ。これはピエラヌンツィが彼女を全面的にフューチャーしアレンジ、プロデュースを担当した本格ヴォーカル・アルバムだった。その後あのドビュッシーへの想いというちょっと中途半端だったアルバム『Moisieur Claude』(BON180301/2018)にも登場している。そんな流れの中での今回のアルバムなのである。

(Tracklist)
1. Time's passage (Enrico Pieranunzi) 5,40
2. Valse pour Apollinaire (Enrico Pieranunzi) 4,13
3. Biff (Enrico Pieranunzi) 4,33
4. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard)*Quartet version 4,58
5. Perspectives (Enrico Pieranunzi) 5,15
6. A nameless gate (Enrico Pieranunzi) 5,04
7. In the wee small hours of the morning (David Mann & Bob Hilliard) **Voice&piano version 3,56
8. The flower (Enrico Pieranunzi) 7,10
9. Vacation from the blues (Arthur Hamilton/Johnny Mandel) 5,53

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 上のように、8曲中6曲はピエラヌンツィのオリジナルと言うことで、さてさてどんな美旋律ピアノの世界かと興味津々といったところ。しかし驚くなかれ、ここは期待に反してと言ったところでもあるが、今回のピエラヌンツィ(p)は、主役の座をヴォーカルのセヴェリーニやパーカッシブにメロディーを演ずるデュルベッコのヴィブラフォンに多くは譲っていて、むしろ引き立て役やリード役に徹した感がある。従って控えめに節度を保ちつつ、ゲスト陣の演ずるところに、端麗な味わい深いピアノを添えて演ずる。ただし時にアクセント聴かせてのリズムカルなプレイも披露もしている。そんなところで所謂ピアノ・トリオものとは全く別のアンサンブルな音作りのアルバムになっているところが特徴だ。

Simonaseverinijbw_20210114205401  そして重要なシモーナ・セヴェリーニのヴォーカルは、なかなかテクニックのある上クラスではあるが、中・低音に質量があるハスキー・ヴォイスでのその発声と声の質にはおそらく好みが分かれそう。

 M1."Time's passage "は、アルバム・タイトル曲で、ピアノ・トリオとゲストのヴォーカルとヴィブラフォンの演奏だが、美しさという世界でも無く、ヴォーカル曲というのでも無く、アンサンブル尊重なのか、意味のあまり理解できない曲。
 まあ、彼女のヴォーカルを主体に聴くならM2., M4.といったところか。M2."Valse pour Apollinaire"は、リズムカルにして、メロディーがよく、彼女は生き生きとしていてパリ・ムード、演奏も躍動感あって良い曲に仕上がっている。一方M4., M7. " In the wee small hours of the morning"はフランク・シナトラが歌った名曲で、しっとり歌い上げて聴き応えあるし、ヴィブラフォンとピアノとの相性が良い美しいヴォーカル曲として上出来。
 ところがM6."A nameless gate"あたりは、ヴォーカルと演奏におけるピアノの美しさが中途半端。何に感動して良いのか考えてしまうという状態。
 とにかく聴くにポイントはそれぞれ多々あるのだが、例えばM7.のヴォーカルと続くM8." The flower"で盛り上げた何か訴えてくるムードはかなり良い線をいっているにもかかわらず、M9."Vacation from the blues "のアンサンブルで全く別世界に連れてゆかれ、描いた世界が台無しになってしまう。描く世界の主体がハッキリしない変わったアルバムであった。

 結論的には、それぞれの曲には聴き所があるにもかかわらず、ヴォーカル・アルバムか演奏のアルバムなのかの聴いた後の感想がまとまらない作品だ。まあヴォーカル込みのクインテット・アルバムとしておこう。


(評価)

□ 曲・演奏・ヴォーカル    80/100
□ 録音            85/100

(視聴)

 

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2020年12月21日 (月)

年末恒例の寺島靖国プレゼンツ「Jazz Bar 2020」

ピアノ・トリオ一点張りから、今年はサックスものも登場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2020」
Terashima Records / JPN / TYR-1094 / 2020

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 しかし驚きですね、なんとこのコンピレーション・アルバムは20年の経過で20巻目のリリースとなったことだ。今こうしてみると過去のアルバム全てが棚に並んでいて、私にとっては好きなシリーズであったことを物語っている。

 プロデューサー寺島靖国(右下)は常々「歳と共に変化を楽しみ、常に新鮮な気持ちと興味を維持すべし」と口にしているとか。ピアノトリオへのこだわりは相変わらずだが、オーディオ的好みはその録音やミキシングのタイプにも確かに変化は出てきている彼だ。近年は前へ前へと出てくるリアル・サウンドから、音楽としての臨場感、奥行きの感覚に磨きがかかってきた感がある。
 そして「哀愁の名曲」探しは相変わらずで、我々日本人の心に沁みるメロディーを追求くれている。その為私も好きな欧州系をかなり探ってくれたという印象がある。新世代のミュージシャンの発見にも寄与してきてくれているし、私にも大いに影響を与えてくれたこのコンピレーション・アルバム・シリーズはやはり楽しみなのである。

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01. Night Waltz / Enrico Pieranunzi Trio
02. Elizete / The Chad Lawson Trio
03. Morgenstemning / Dag Arnesen
04. C'est Clair / Yes Trio
05. Tangorrus Field / Jan Harbeck Quartet
06. Danzon del Invierno / Nicki Denner
07. Bossa Nova Do Marilla / Larry Fuller
08. Contigo en la distancia / Harold Lopez-Nussa
09. La explicacion / Trio Oriental
10. Soft as Silk / David Friesen Circle 3 Trio
11. Vertigo / Opus 3 Jazz Trio
12. The Miracle of You / Niels Lan Doky
13. New York State of Mind / Harry Allen

 冒頭のM1."Night Waltz"は、昨年ここでレビューしたエンリコ・ピエラヌンツィのアルバム『NEW VOSION』(2019)(下左)からの曲。そしてM3."Morgenstemning "が北欧ノルウェーのダグ・アネルセンのかなり前の三部作のアルバム『NORWEGIAN SONG 2』(LOS 108-2/2011)(下中央)からであり、この2枚のアルバムが私の所持しているものであった。その他11曲は、幸運にも私にとっては未聴のアルバムからの選曲であり、初聴きで期待度が高い。
 そもそもこのアルバムを愛してきたのは、結構日本にいる者にとって一般的に知られていないモノを紹介してくれていること、又私のジャズ界では最も愛するピアノ・トリオものが圧倒的に多い、更にどことなく哀愁のある美メロディーを取上げてくれていることなどによる。そして初めて知ったものを私なりに深入りしてみようという気持ちになるモノが結構あることだ。更になんとなく欧州系のアルバムも多いと言うことが私の好みに一致しているのである。

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   M1."Night Waltz"と続くM2." Elizete "は、哀愁というよりはどちらかというと優美という世界。
 M3."Morgenstemning" 聴きなれたグリークのクラシックからの曲。ノルウェーのミュージクですね。美しい朝の光を浴びて・・・と言う世界。とにかく嫌みの全くないダグ・アネルセンの細工無しの美。
 M5."Tangorrus Field" (上右) 寺島にしては珍しくテナー・サックスの登場。デンマーク出身のヤン・ハルベック。私はうるさいサックスはちょっと苦手だが、彼の演ずるは豪放と言うが、この曲では何故か包容感のある優しさと幅の広さが感じられ、ピアノとの演じ合いに美しさすらある。今回のアルバムには、最後のM13."New York State og Mind"にはHarry Allenのサックスがやはり登場する。
 M7."Bossa Nova Do Marilla" は、ボサノバと言いながらも、驚きのLarry Fullerのピアノの旋律を演ずる流れはクラシックを思わせる。
 M8." Contigo en la distancia"(下左)、キューバのHarold Lopez-Nussaにしては、信じれないほど哀愁の演奏。いっやーー驚きました。
 M10."Soft as Silk" (下中央)、ベーシストのDavid Friesenの曲。どこか共演のGreg Goebelのピアノの調べが心の奧に響くところがあって、この人の造る曲にちょっと興味を持ちました。ベーシストって意外に美旋律の曲を書く人が多い気がしますが・・。
 M12."The Miracle og You" (下右)、このピアニストの Niels Lan Dokyって、実は名は知れているにもかかわらず過去に聴いて来なかった一人で、今回ちょっと興味をそそる技巧派ピアノに聴き惚れて、興味を持たせて頂きました。

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 今回は大きな獲物に飛びつけたという衝撃は無かったが、やはり寺島靖国の選曲にはやはり優美さ、美しさ、哀愁などはそれぞれにどこかに感ずる処があって、やはり年末恒例でこうして聴くことはベターなコンピレーション・アルバムと言うことことが出来る。
 とにかく20周年の成人となったこのシリーズにお祝いしたいところであった。

(評価)
□ 選曲、演奏           88/100
□ 録音(全体的に)      85/100

(参考試聴)

jan Harbeck Quartet "TANGORRUS FIELD"

*
Dag Amesen  " MORGENSTEMNING"

 

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2020年3月 1日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「COMMON VIEW」

オリジナル曲による創意の結晶といった流れ

<Jazz>

Enrico Pieranunzi  Jesper Somsen  Jorge Rossy
「COMMON VIEW」
CHALLENGE RECORDS / AUSTRIA / CR73459 / 2020

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Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Jasper Somsen イェスパー・サムセン (double bass)
Jorge Rossy ホルヘ・ロッシー (drums)
Recorded at MotorMusic, Mechelen(Belgium)
Recording dates : September 10 & 11,2018

 はっきり言ってこのアルバムも難物です。これは2018年の録音モノだが、エンリコ・ピェラヌンツィは近年この傾向にあることは解っての上でのアプローチであった。とにかくヨーロッパ叙情派ピアノの代名詞的彼であるが(1949年、ローマ生まれ)、このアルバムは極めて端麗なピアノ・タッチが聴かれるもハードにして軽快な転回をみせたり、美旋律を奏でるので無くトリオのそれぞれのアクセントを許容し協調してゆく妙を描く世界に専念していての曲作り。安易な叙情的美を求めるとしっぺ返しが来る。

 

Enricopieranunzi2w (Tracklist)

01. Falling From The Sky (JS)
02. Silk Threads  (JS)
03. Sofa  (JR)
04. Turn In The Path  (EP)
05. Love Waiting Endlessly (JS) 
06. Perspectives  (EP)
07. Instant Reveal I *
08. Who Knows About Tomorrow  (JR)
09. Instant Reveal II * 
10. Recuerdo  (JR)
11. Song For An August Evening (EP)

(JS):Jasper Somsen、(JR):Jorge Rossy 、(EP):Enrico Pieranunzi 、*印:三者

 それにしてもこのトリオのそれぞれの演奏の切れ味は見事と言いたい。けっしてピアノを前面に出してのベース、ドラムスが単なるリズム隊としてのサポートという単純なトリオ演奏では無い。収録曲は彼らがそれぞれ3曲づつ提供し、そして三者による2曲のオリジナル計11曲である。単なるカヴァーという世界で無いので、それは彼らの意志の見せ処としての曲構成展開が演じられているところにある。

 とにかく私にとってようやくゆったり許容できたのは、M2."Silk Threads "、M11."Song For An August Evening "の2曲くらいであった。多分こうゆうアルバムは聴いたことのある旋律が顔を出してホッとさせてくれるというものでないので、恐らく何回と聴いていく内に何かが見えてくるのであろうという世界なのだ。
 冒頭のM1." Falling From The Sky "は三者のお披露目、コラボレーションの妙。M2."Silk Threads "はがらっと変わってゆったりした世界。M3.Sofa""、M4."Turn In The Path"はコンテンポラリーにして実験音楽的ニュアンス。
 M7."Instant Reveal I"はピアノの音の美しさが演じられるも、曲の展開が異様で緊張感を誘う。そしてM9."Instant Reveal II"に繋かがり、三者の交錯が興味をひく。

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 近年のエンリコ・ピエラヌンツィの単なる耽美性から一歩も二歩も歩んだ彼の創意の意欲から生まれる世界だ。それはトリオのコラボレーションを楽しむ瞑想感覚のあるミステリアスにしてスリリングな一つの世界なのである。
 私からすると、とくにM11."Song For An August Evening "が往年のエンリコ・ピエラヌンティの演奏を思い起こさせて、救われた感じを持ったエンリコ・ワールドであった。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★☆  80/100
□ 録音   ★★★★☆  80/100

(試聴) 

 

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2019年12月25日 (水)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi Trio 「NEW VISIONS」

ロマンティックな哀愁とスリリングなダイナミックな演奏と
・・・・トータル・アルバムとして聴くに意味がある

<Jazz>

Enrico Pieranunzi Trio 「NEW VISIONS」
Storyville / IMPORT / 1018483 / 2019

Newvisionsw

Recorded March 10,2019 at The Village Recording,  Copenhagen

Enrico Pieranunzi(p)
Thomas Fonnesbaek(b)
Ulysses Owens Jr.(ds)

Recorded March 10, 2019 at The Village Recording, Copenhagen
Produced by Enrico Pieranunzi and Thomas Fonnesbæk
Executive producer: Christian Brorsen
Mastering: David Elberling
Recorded and Mixed by Thomas Vang
Design: FinnNygaard.com
Photos: Gorm Valentin
Liner notes: Christian Brorsen
Thanslation: Steve Schein
Financial support: MPO & Kjeld Büllow
(Storyville 1018483)

  イタリアのもうピアノの巨匠とも言えるエンリコ・ピエラヌンツイ(1949年ローマ生まれ)のメンバーを一新してのピアノ・トリオ作品。本作はデンマークのStoryvilleレーベルからのリリースだ。今年の録音である。場所はコペンハーゲン、そんなことから実質的なリーダーはベースのトーマス・フォネスベックだったのかもしれないという説もあるが、いずれにしてもピエラヌンツィのピアノとの相性も良いようで、このアルバムは両者がそれぞれの曲を提供しつつ、又トリオとしての3人によるオリジナル曲がアルバムの骨格を造っている。

 とにかくピエラヌンティのややおとなしめの曲と対比的にフォネスベックの曲がダイナミックなところもあって、なかなか飽きさせないアルバムとして仕上がっている。

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(Tracklist)

1. Free Visions 1 (Pieranunzi-Fonnesbæk-Owens Jr.) 3:25
2. Night Waltz (Enrico Pieranunzi) 3:20
3. Anne Blomster Sang (Enrico Pieranunzi) 6:47
4. You Know (Enrico Pieranunzi) 6:35
5. Free Visions 2 (Pieranunzi-Fonnesbæk-Owens Jr.) 2:03
6. Free Visions 3 (Pieranunzi-Fonnesbæk-Owens Jr.) 4:06
7. Alt Kan ske (more Valentines) (Pieranunzi-Fonnesbæk-Owens Jr.) 6:46
8. Free Visions 4 (Pieranunzi-Fonnesbæk-Owens Jr.) 4:08
9. Brown Fields (Thomas Fonnesbæk) 5:07
10. Dreams and the morning (Enrico Pieranunzi) 4:13
11. One for Ulysses (Enrico Pieranunzi) 4:40
12. Orphanes (Thomas Fonnesbæk) 5:10

  上のように、収録12曲の内、ピエラヌンティの曲が5曲。フォネスベックの曲が2曲。3人による曲が5曲という構成だ。やはりピアニストとしてのピエラヌンティの曲は多くなるのは解るが、特徴はトリオ三者による"Free Vision"(自由構想 ?)と銘打った曲が4曲と多いと言うことだろう。
 アルバム・タイトルの「NEW VISIONS」と言うのが意味深で、"新しい構想"、"新しい展望"、"新しい幻影・光景"と言ったところなのだろうか。
 ドラマーのオウエンスJrも、ピエラヌンティの静かな曲では繊細に、三者の共作曲に於いては即興入りの結構ダイナミックに演ずるところがありなかなか聴くに飽きない。又フェネスベックのベース・ソロもそれなりに取り入れられていて聴かせどころが盛り込まれ、ピエラヌンティ・ワンマン・トリオというところにはなく、三者バランスのとれた意欲的なトリオ演奏である。

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 M1."Free Visions 1" は、リズム隊が活発でテンションの高い演奏からスタートしてピアノが同調してゆく形をとっている。これは所謂ピエラヌンティの叙情的世界とは違って新鮮なところを狙っているところが見える。まさに"新しい幻影"といったところか。
 そしてそれに続いてM2."Night Waltz"一転してのピエラヌンティの夜の華やかさを描くワルツ、そして彼の曲らしいM3." Anne Blomster Sang"に流れ、M4."You Know"で、静かに説得力のあるやや暗めの沈静的な世界をピアノの美で描く。
 そうかとしていると再びM5."Free Visions 2"M6."Free Visions 3"はこのアルバムの大切な骨格の三者の前衛的なメロディ・レスの硬質アクションが展開。 
 このように美メロディーのロマンティックな哀愁感をしっとり聴かせ、今回のテーマである4曲の"Free Visions"では、圧倒的ダイナミズムとスリリングな即興を交えた硬質アクションを展開して、とにかく緩急メリハリの効かせた躍動的世界を形作っている。ドラムス一つとっても繊細なタッチと迫力ある重量級の音が、時に現れ時に変化して面白い。
 ここまで来ると、このトリオがアルバム・タイトルを「NEW VISIONS」とした意味が十分理解できるアルバムとなっているのだ。従ってピアノの主役性は失ってはいないが、ベース、ドラムスがかなりその持ち味を心置きなく発揮している様が、曲の重きに貢献している。
 さらにサービス精神も旺盛で、M11."One for Ulysses"では所謂近年のヨーロッパ的でないスウィンギーな展開まで見せてくれている。このあたりは芸達者というところか。

 「静」「動」、「暗」「明」、「沈着」「躍動」、「軽」「重」が交錯するなかなかレベルの高いところでのトリオ演奏を目指していて見事と言いたい。
 音質も録音法によるものか、ピアノ、ベース、ドラムスがそれぞれくっきり見えていてこの点も評価に値する。ちょっと前進のあるアルバム作りで、トータル・アルバムとして聴くところに意味がある。90点の高評価としたい。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★★☆

 

(試聴)

*

 

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2019年2月10日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィのニュー・アルバム Enrico Pieranunzi 「PLAY GERSHWIN」

ジャズでもなくクラシックでもなく・・・これは何なんでしょう
<Jazz, Classic>
Enrico Pieranunzi  Gabriele Mirabassi  Gabriele Pieranunzi
「PLAY GERSHWIN」
CAM JAZZ / IMPORT / CAMJ7939 / 2018
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Enrico Pieranunzi (piano)

Gabriele Mirabassi (clarinet)
Gabriele Pieranunzi(violin)

 ジョージ・ガーシュインと言えば、シンフォニック・ジャズと言われるクラシックとしてもジャズとしても通ずるアメリカの20世紀の作曲家だが、それを題材にしたイタリアのピアノの詩人と言われるエンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziのニュー・アルバムの登場。
 これが案の定、クラシックともジャズとも、なんとも正体の不明なアルバムの登場となった。それも彼のピアノにクラリネット、ヴァイオリンの加わったトリオ演奏によると言う不思議な世界を演じきったもの。もともとクラシックがベースと言うエンリコの事、まぁ聴いてみるとクラシック・スタイルと言ったほうが良いのかも知れない。
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もともとガーシュインの曲は、管弦楽曲、オーケストラとしての演奏が主体だが、それを3人の演奏となると室内楽的スタイルで、ちょっとイメージも変わる。更にそこにはそれなりのジャズ世界を演じてきた彼のアレンジが登場するわけで、そこが味噌と言えば味噌なのだが、如何にも正体不明なアルバムなのである
 まあこのところハイドンやバッハとか、さらにドビュッシーの曲を取りあげての彼の世界を演じてきたと言う事もあるのだが、ちょっと私の期待の世界とは別方向に流れているエンリコで、その極めつきがここに登場したとも言えると思う。
(Tracklist)
01. An Americab in Paris
02. Prelude 1

03. Prelude 2 (Blue Lullaby)
04. Prelude 3 (Spanish Prelude)
05. Prelude (Melody No.17)
06. Varaazioni Un Tema Di Gershwin

07. Rhapsody In Blue

V4w  今回のトリオは、彼の兄弟のGabriele Pieranunzi(→)のViolinと、何年かとお付き合いのあるGabriele Mirabassi (右下)のClarinetと言う構成で有り、気心知れた仲間での挑戦と言うことだと思う。まあしかしヴァイオリン、クラリネットと来れば、所謂ジャズのオーソドックスなトリオであるドラムスのようなリズム隊が居ないので、それが一つジャズ離れしたところだろう、もともとジャズ的世界とか何とかとには拘った話でも無いのかも知れない。

C3w そこでむしろ"Prelude"の4曲のように、美しく演ずるのであるが、ピアノがリズム役を担っていて、いわゆるジャズのオーソドックスなピアノ・トリオを期待してはいけない。まあメロディーを奏でる3者のトリオであるのだが、むしろピアノより、クラリネツトとヴァイオリンの美しさがここでは前面に出でいる。
 とにかく懐かしのガーシュインのメロディーが流れてくる。それはピアノの音であったり、クラリネットであったり、ヴァイオリンだったり美しくは演じられている。当初私はヴァイオリンがもう少しスリリングな展開をしてくれるのではと期待したが、そんなところにはなくむしろ一般的な旋律隊であった。
 そしてメインは、M01. "An Americab in Paris"M07. "Rhapsody In Blue"の2曲と言うところだ。特にM01の方は全体の流れが実に起承転結がしっかり築かれ中間部の美しさなど見事と言えば見事な仕上げであった。一方M07は、むしろこの編曲であるならオーソドックスなピアノトリオで演じてみると面白いのかもしれないと思って聴いた。
 M06."Variazioni Un Tema Di Gershwin"のみエンリコによる曲と思われるが、即興的ニュアンスも感じられるも、特に引きつける魅力はあまり感じられなかった。

  ガーシュインのポピュラーな曲は、結構ジャスで演奏されてきているので、そんなところかと最初は思ったが、なにせこの構成のトリオであって、まぁ~ジャズ的ムードは期待しない方が良い。ところが一方クラシックとして聴けば、結構美しく演奏してくれているのだが、ちょっと変なアレンジもあって意外性も顔を出してすんなり行かない。はっきり言うと中途半端なんですね。こうゆうのを好んで聴くのはどうゆう人なのかとむしろそっちに興味を持つところである。まぁ私の愛聴盤にはなりそうもないものであった。
(評価)
□曲・演奏 : ★★★★☆
□録音:   ★★★★☆

(視聴)

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2018年7月18日 (水)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「WINE & WALTZES Live at Bastianich Winery」

エンリコのワイナリーでのピアノ・ソロ・ライブ

<Jazz>
Enrico Pieranunzi 「WINE & WALTZES  Live at Bastianich Winery」
Cam Jazz / Euro / CAMJ7934 / 2018

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Enrico Pieranunzi (piano) played on Fazioli F278
All music by Enrico Pieranunzi

Recorded & mixing engineer Stefano Amerio
Recorded Live at Bastianich Winery (Cividale del Friuli, Italy) on 6 June 2017

  つい最近エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi のトリオのアルバム(『Monsieur Claude - A Travel with Claude Debussy』(BON180301))がリリースされたばかりだが、ブログ友エンリコ命の爵士さんお勧めのピアノ・ソロ盤が今度はリリースされた(実際には欧州ではこちらが先のリリースのようだが)。
 イタリアからスロヴェニアとの国境に近いところにあるバスティアニッヒ・ワイナリーで昨年行われたエンリコのピアノ・ソロ・パフォーマンスだ。ヨーロッパに行くと、とにかく立派なワイナリーが各地にあるのだが、あの静かなワインの眠る大空間で行われた演奏と、いやはや洒落ている。そしてピアノはイタリアの誇る「FazioliF278」である。

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(Tracklist)
1. Wine & Waltzes (3:47)
2. Blue Waltz (7:11)
3. Twoliness (4:12)
4. Waltz Today (3:47)
5. Fellini’s Waltz (6:03)
6. B.Y.O.H. (8:29)
7. Waltz Tomorrow (4:21)
8. Flowering Stones (8:51)

  さてその中身は、Tracklistにみるとおりの、欧州クラシック音楽の歴史的なものであるワルツを基調としたエンリコのオリジナル曲群だ。つまり3拍子の円舞曲で、そこにはテンポの良さからの明るさがある。それはこうしたワイナリーにおける曲としては、彼の選曲の世界だろうと想像しているのだが。私としてはもう少し深遠なる世界を実は期待してしまうのであるが。
 ただエンリコは、M2. "Blue Waltz", M5. "Fellini’s Waltz"あたりは既に何回かと演奏してきているもので、どこか憂いがあるところが聴きどころなのかも知れない。
 とにかくクラシック音楽的上品さとその軽い明るさのワルツとくれば、どうも私好みとは別世界なのだが、そんなところからも、M1、M4、M7あたりの意義については私には理解不能。しかしそんな私自身の偏見的世界からしても、M2、M3、M5、M6などには、品格を持ったプレイに宿る哀愁感が描かれて、そのメロディラインの美しさと共に私自身は大いにその価値を感じている。

 究極は、このようなアルバムはジャズ・ピアノという範疇にはいるのか、むしろクラシックの派生と聴いた方が良いのか、私のように音楽学問の無い人間には難しいところだが、エンリコ・ピエラヌンツィの近年の一つの姿であることは間違いない。なかなか彼の演奏能力の技術的高さと同時に品格のあるアルバムであった。

 又、アメリオのピアノの音を知り尽くしての録音に感動だ。このワイナリーは、拍手の余韻を聞いても解るが、かなり研究された音響効果の良好な場として選ばれた可能性が高い。
 ただ、演奏と聴く者の拍手の音の重なる部分はないのであるから、こうゆうアルバム作りに於いて、敢えて拍手を入れる必要があるのかとふと疑問に思ったところであった。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★★☆

(試聴) Fellini’s Waltz

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2018年4月22日 (日)

エンリコ・ピエラヌンッィEnrico Pieranunziのドビュッシーへの想い 「Monsieur Claude - A Travel with Claude Debussy」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (Nikon D800/ 90mm/19,Apr,2018)



しかし、これはどこか変なアルバムと言ってしまいたい代物

<Jazz>
Enrico Pieranunzi 「Monsieur Claude - A Travel with Claude Debussy」
BONSAI / France / BON180301/2018

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Enrico Pieranunzi(p),
Diego Imbert(b), Andre Ceccarelli(ds)
Featuring: David El Malek(sax-M1,3,6,9), Simona Severini(vo-M4,5,8,11)
Mixed and Mastered by Stefano Amerio

Claude_debussyw あのフランスの作曲家トビュッシーClaude Achille Debussy(1862.8.22-1918.3.25)(←)も今年没後100年なんですね。それにちなんで、なんと注目度も100%のエンリコ・ピエラヌンツィが、ドビュッシーに捧げた作品だ。
  トビュッシーといえば「海」というのがありましたねぇ~、それはそれとして彼の作曲群はクラシック・ファンの中でもそれなりに支持者が多いと思うのだが、私的にはイマイチ夢中になるという感動はなかった。「月の光」とか「亜麻色の髪の乙女」とか聴いたこともあるが、まあ知らない方が多いので、現代ジャズ・ピアノの美旋律最右翼のピエラヌンツィがトリオを中心にして演ずるといことの訳で、興味津々で聴くことになったのである。

(Tracklist)
1.  Bluemantique (d'après Valse Romantique de Claude Debussy) (5:30)
2.  Passepied nouveau (d'après Passepied de Claude Debussy) (4:51)
3.  L'autre ballade (d'après Ballade de Claude Debussy) (5:36)
4.  Romance (Paul Bourget / Claude Debussy) (5:02)
5.  Rêverie (Claude Debussy / arrangement Enrico Pieranunzi) (7:45)
6.  Cheveux (d'après La fille aux cheveux de lin de Claude Debussy) (5:11)
7.  Blues for Claude (Enrico Pieranunzi) (4:28)
8.  Nuit d'étoiles (Théodore de Banville / Claude Debussy) (8:11)
9.  Mr. Golliwogg (d'après Golliwogg's Cake-Walk de Claude Debussy) (5:35)
10.  My Travel with Claude (Enrico Pieranunzi) (2:04)
11.  L'adieu (Guillaume Apollinaire / Enrico Pieranunzi) (6:38)

Ep1w まずは聴いての印象だが・・・・ウーンこれはあまりジャズ・ファンには勧めるものではないなぁ~~。ピアノ・トリオの美しさを前面にと言ったものではないし、そういう中でもM1,3,6,9には、SAXが登場してジャズっぽくなってくれるのだが、どこかしっくりしない。
 M2."Passepied nouveau" は、エンリコ・ピエラヌンツィ(→)らしいピアノが、如何にもクラシック調をベースに聴かせてくれるところは聴きどころと思う。この流れで全編通してくれると、一つの世界を描けたのではと思いつつ、次なる変化に欲求不満になる。
 又、更にM4,5,8,11の4曲は、シモーナ・セヴェリーニの歌をフィーチャーしていますが、ちょっとクラシック・ベースにポップ、フォーク感覚もあったりとして、M8."Nuit d'étoiles"や最後の締めくくりの曲M11. " L'adieu " なんかは発声も充実してなかなか良い出来だと思うのだが、どこか印象がちぐはぐ。一つの曲として聴くにはなかなか完成度も高く魅力もあるのだが、このアルバムとしてどこか不釣り合いと言ったところで終わってしまうところが空しい。
  私がそれでもちょっと注意して聴いたのは、M7. "Blues for Claude"や、M9. "Mr. Golliwogg" のようなピアノ・トリオのやや前進的展開に見るところもあるが、感動というところとはほど遠い。
 M10. "My Travel with Claude" は短い曲だが、ここにみるような、何かを思わせるピアノの響きの世界は嬉しくもなった。このパターンで仕上げて欲しかった思うのである。

 結論的には、私のような中途半端者にとっては、このアルバムの評価は難しく、演奏のレベルは高そうだが、多分これからも聴き込みたいと言うものではなかったというところ。高評価の方が居られれば、その聴きどころとアルバムとしての評価の話を聞かせて頂きたいと思っている。録音は、さすがStefano Amerioで良いです。

(評価)
曲・演奏: ★★★★☆
録音     : ★★★★★

(視聴)

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2017年5月23日 (火)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「MÉNAGE À TROIS」

やっぱりエンリコのピアノは流麗にして美しかった

<Jazz>
Enrico Pieranunzi・André Ceccarelli・Diego Imbert 「MÉNAGE À TROIS」
BONSAI / IMP / BON160901 / 2016

Ebrico

Enrico Pieranunzi (piano)
Diego Imbert (double bass)
André Ceccarelli (drums)
Recorded on Studio de Meudon, Meudon, Frabce  at 12-15, Nov, 2015

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 CAM Jazzとの独占契約の解除があって以来、ちょっとこのところエンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziはその活動も多方面に広がって、そのピアノ作品は若干難しい面もあったりして少々構えている私で、そんな事から今回このニュー・アルバムにはすぐに飛びつかず様子を見ていた私でありました。ところがブログ友爵士さんは昔からのファンだけあってやっぱり静かにしている私に薦めているので、結局のところ聴くことになったという次第。

 今作はフランスのBonsai Musicにて録音した注目のトリオ新作だ。それもクラシックとの融合を図った演奏と言うことで、やっぱり気になる作品でもある。

1797bigpmgrandw1  大体アルバム・タイトルの「MÉNAGE À TROIS」が凄い。これってフランス語で”三人婚”の事ですね、一般には男1+女2で平和な暮らしを営むという私には信じがたい状態。それはこの場合、イタリア人のエンリコ+フランス人二人のトリオってことでしょうか?、それともドラムスはエンリコの長年の朋友アンドレ・チェカレッリ(→)で、それが「2」で、それにベースのフランスのジャズ界のディエゴ・アンベールを加えた「2+1」なのか、とにかく洒落ていて難しいです。私はエンリコのフランスでの遊び心を何処かに秘めたのではと想像もするのだが・・・・。

(Tracklist)
1. Mr. Gollywogg (d'après Gollywogg's Cake - Walk de C. Debussy) 03:57 (Enrico Pieranunzi)
2. 1 ère Gymnopédie 03:47 (Erik Satie)
3. Sicilyan Dream (d'après Siciliano, BWV.1031 de J.S. Bach) 04:42 (Enrico Pieranunzi)
4. Medley: La plus que lente / La moins que lente 07:15 La plus que lente 02:07 (Claude Debussy) La moins que lente 05:08 (Enrico Pieranunzi)
5. Hommage à Edith Piaf (XVème Improvisation, Hommage à Edith Piaf) 04:44 (Francis Poulenc)
6. Le crépuscule 04:00 (Darius Millhaud)
7. Mein Lieber Schumann I (d'après Davidsbündlertänze Op.6 (No.2) de R. Schumann) 07:06 (Enrico Pieranunzi)
8. Medley: Romance / Hommage à Milhaud 05:00 Romance 01:25 (Darius Millhaud) Hommage à Millhaud 03:35 (Enrico Pieranunzi)
9. Mein Lieber Schumann II (d'après Carnaval de Vienne Op.26, Allegro, de R. Schumann) 07:05 (Enrico Pieranunzi)
10. Hommage à Fauré (d'après Improvisation, 5ème des « Pièces Brèves » Op.84 de G. Fauré) 04:38 (Enrico Pieranunzi)
11. Liebestraum pour tous (d'après Liebestraum No. 2 de F. Liszt) 04:18 (Enrico Pieranunzi)

 いっや~~なかなか百戦錬磨のエンリコだけあって、単なるクラシックものとは全くの別物です。やっぱりジャズですね。原曲の面影は無いでは無いが、やっぱり一筋縄ではゆかない(良い意味ですが)彼の色彩濃いジャズ化の世界。エンリコの編曲と彼の作曲をドッキングしたりしての快作。つまりクラシックの名曲はあくまでも彼のジャズの誘導の素材でしか無いと言っても良いくらいだ。

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 さて登場する曲は、ドビュッシー、サティ、バッハ、シューマン、クープラン、リストといった作曲家だ。
 バッハと言えば懐かしのジャック・ルーシェを思い出すが、M3.”Sicilyan Dream ”に登場。バッハのイメージはあるが、ルーシェのようにその曲を生かしてジャズにしたというのでなく、全くの別物。つまりエンリコのジャズにその味を効かしたというパターン。編曲の凄さが出ている。
 しかし彼にはバッハよりはドビュッシーのほうが合いますね。それはM4.”La plus que lente / La moins que lente ”で味わえる。静かな世界をリリカル路線で聴かせるせるが、後半は彼の曲をドッキングさせて、それはなんとスウィングさせてのジャズ世界。いやはや遊び心も持ち合わせたピアノ達人だ。
 M5.” Hommage à Edith Piaf ”これは哀歌ですね。フランスの誇るシャンソン歌手エディット・ピアフへのオマージュだ。
 M7.”Mein Lieber Schumann I”シューマンを演ずるエンリコは、彼のベースに流れるクラシックの味そのものを生かしつつ演ずるジャズの流れる美しさに堪能する。
 M8.”Romance / Hommage à Milhaud ”これは彼の得意のクラシック流世界。そして気持ちを安らげる1曲に仕上がっている。
 まあこのように多彩な世界を演じてくれるエンリコのドラマティックで情熱込めたピアノ・プレイでありながら、彼の持つリリカルなところがしっかり織り込まれた快作だ。

 エンリコのクラシック楽曲を知り尽くしての演奏に、どちらかというとジャズ・ピアニストとしてのアレンジの妙にウェイトが置かれていて、それに更にインプロヴィゼーションが加わって、その融合の名演奏のアルバムと言って良いのでは思う。

(視聴)

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