ケティル・ビヨルンスタKetil Bjørnstad の傑作(回顧2):「The Sea」
「静」にしてスリリングな危機意識と美
<Contemporary music, Jazz>
Ketil Bjrnstad David Darling Terje Rypdal John Christensen
「The Sea」
ECM Records ECM 1545 521718-2 , 1995
さてさて、ノルウェーの作家で有り、作曲者であり、そしてジャズ系ピアニストのケティル・ビヨルンスタの話が続いているのだが、彼の傑作と言われるアルバム「The Sea」だ。先日ここで取り上げた「the River」(1997)の2年前の1995年作品であるが、私自身は先に「The River」を聴いて驚いて、その為に彼の傑作としてさかのぼってこれを聴いたという経過であって、その為「The River」を知ったほどは驚かなかったのだが・・・・・・。
ここに取り上げた順番はそんな訳で、リリース順でなく私の聴いた順に従ったモノ。それでもこちらは彼のピアノに加え、Cello の他にGuitar と Drums とのカルテット作品と言うだけあって、「静」の中にも結構イメージが違うのである。
Ketil Bjørnstad : piano
David Darling : cello
Terje Rypdal : guitars
John Christensen : drums
(tracklist)
Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅶ,Ⅷ,Ⅸ,Ⅹ,ⅩⅠ,ⅩⅡ
このアルバムも12曲より構成されているが、上のように数字のみ。
この作品は、私の聴いた限りに於いては、冒頭はビヨルンスタの得意とする思索的なメロディーを流してくれるが、次第に静の中に結構スリリングな演奏による音の展開がチェロにしろギターにしろ聴かせてくれるので(”Ⅱ”の後半などから)、こちらは私の愛するミュージックの歴史でもあるかってのプログレッシブ・ロックの世界と同じ気分にもなれたものだ。特に”Ⅳ”にその色合いが濃い。このアルバムのイメージは哀愁、抒情、美しさという後期ビヨルンスタの得意分野だけに収まる世界ではなく、そこには何か不安のある緊張感を持たせてくれる。そのあたりが傑作と言われる一つの世界なのであろう。
しかし”Ⅴ”にはビヨルンスタの美しく抒情性のあるピアノの流れがあるし、それに次いでのギターの泣きは、若き頃のロックで歩んできた私にとってはお気に入りの展開なのであった。
”Ⅹ”、”ⅩⅠ”に於けるそれぞれの楽器が異様に盛り上がるところはまさにContemporary Music と言っても良いのだろう。ギターの異音とピアノの大きな波のうねりを連想させる演奏には圧倒される。
最後の”ⅩⅡ”は静かなピアノが再び静かさを取り戻した海の如く響くのである。
まあ、このアルバムは全曲ビヨルンスタの作曲だが、あくまでもカルテットとしての色彩が濃い。従って彼の美しいピアノを主体に期待するわけにはゆかないというところ。
このようなビヨルンスタの構築するContemporaryな世界に一度は足を踏み込んで、そうしたミュージックの流れを体感するのは悪くないと思う。そんなことで私のビヨルンスタの多くの作品の中のわずかな経験したアルバムを取り上げているわけだが、ロック派からの流れはこの「The Sea」(1995)、そしてクラシック系からは「Preludes」(1984)、「The River」(1997)、映画音楽系からは「La notte」(2013)と入って行くと面白いのでは?、なんてふと思ったりしているのです。
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