音楽

2019年1月19日 (土)

ザーズZAZの4thアルバム「EFFET MIROIR~心、重ねて~」

ちょっと大人の味も出ての新境地のアルバム登場
*
  ストリート・ミュージシャンからのスーパー・スター”タッシュ・スルタナ”登場で刺激を受けると、そうそう忘れてはいけないフランスの”ZAZ(Isabelle Geffroyイザベル・ジュフロワ 1980-)”がいる。しかもなんと久々のニュー・アルバムが登場しているので、当然ここに取り上げるのだ。
Zaz02w
 
<Chanson, Jazz, Rock, Pop>

ZAZ 「EFFET MIROIR~心、重ねて~」
Waner Music France / JPN / WPCR-18126 / 2018
51nfl79d3ul
*
 前作「PARIS "~私のパリ~"」(2014)以来、4年ぶりの4作目となる本作。今回は”日仏同時発売”されたということで、日本での彼女の”人気の高さ”が裏付けられている。
  2010年のデビュー・アルバム「ZAZ~モンマルトルからのラブレター」 (RESPECT RECORD/RES180)がフランスでは大ヒットして、日本にも伝わってきたわけだ(2010年、フランス・アルバム・チャートにて8週連続1位を記録した)。ストリート・ミュージシャンとして鍛えられたところに魅力をはらんでいて、曲自身の魅力としては、シャンソンはもちろん、フォーク、ブルース、アヌーシュ(ジプシー)・スウィング、ロックなどが加味して、ジャズ的アプローチが結実しているところにある。 更にそれに加えて、特にヒット曲”私のほしいもの”でも感じられるように、若いなりきの生き様に一つの”確固たる信念”とも思えるものが見えているところも魅力の一つだったように思う。
 そして時は流れフランスの大シャンソン歌手エディット・ピアフの再来と言われるまでに成長して、彼女のややハスキーな魅力の歌声で、しっかりフランスはじめ世界各地で確固たる地位を築いてきた。そんな中で久々のニュー・アルバムの登場をみたわけだ。

(Tracklist)
1.Demain c'est toi 明日はあなたのもの
2.Que vendra 何が起きようが我が道をゆく
3.On s'en remet jamais もう一度あなたの声を
4.J'aime j'aime 好き好き
5.Mes souvenirs de toi あなたの思い出
6.Toute ma vie 私の一生
7.Je parle 私は話す
8.Resigne-moi 私にかまわないで
9.Ma valse ワルツ
10.Si c'etait a refaire またやり直せたら
11.Pourquoi tu joues faux どうして調子はずれなの
12.Plume 羽根のように
13.Nos vies 私たちの人生
14.Saint Valentin ヴァレインタインデー
15.Laponie ラップランド
*
  このアルバムには15曲登場するが、今作の特徴はかってのヒット曲のカヴァーでなく、全てオリジナルだ。彼女自身の曲の外、フランスの新進気鋭の一連のミュージシャンが提供した曲であることだ(彼女がそれに詩を担当したものもある)。
  曲のタイプは、シャンソンをベースに南米音楽、ポップ、サルサ、ロックなど様々なジャンルをクロス・オーヴァーしたものでジャジーな雰囲気もある。まさに「ザーズの世界」が堪能できる。これらはパリ、ブリュッセル、そしてモントリオールで制作されたものだという。

Zaz1


 M1."明日はあなたのもの"で、おやっと思うほどの彼女の成長が感じられる。未だ見ぬ我が子に想いを馳せて、しっとりと歌いあげる。いっや~大人のムードだ。
 
M2."Que vendra何が起きようが我が道をゆく"から続く曲は、いつものザーズの流れで、リズムを刻み意志の強さを歌う。
 
M3、"On s'en remet jamaisもう一度あなたの声を"、M4."J'aime j'aime好き好き"は、シャンソンと言うよりは”ロックのザーズ節”の展開だ。
 M5 ".Mes souvenirs de toiあなたの思い出"は、ちょっぴり淋しさのシャンソン曲。こうした曲は彼女はうまくなりましたね~~。
 M8. "Resigne-moi私にかまわないで" この曲はこのアルバムではかなり重要な位置にある訴えも重い。彼女のミュージシュンとしてここまで進歩・発展した充実の曲。このアルバムの一つの頂点。
 M9、M10 は再び自分を取り戻していくシャンソンとロックの2曲。
 このように、彼女のこの数年間を振り返り、そしてこれからの人生に向かってゆく決意のような曲展開になっている。
 M13."Nos vies私たちの人生" 重なり合う不思議な人生を歌いあげる。そこには展望が描かれている。
 M14 ."Saint Valentinヴァレインタインデー"は、ちょっと印象的な歌。”私はいつもここにいる”と存在感を訴えているのか、それとも開き直り?
Guillaumeponcelettrw_2 M15."ラップランド"この最後の曲は印象的。殆ど彼女の唄というよりは語りでしめられているが、その美しさは抜群で、かってなかった彼女の別の世界が見えてくる。これは彼女の詩に注目のフランス若手ピアニストのギヨーム・ポンスレGuillaume Poncelet(1978-)(→)(おそらく彼のアルバム「Quatre Vingt Huit(88)」からの曲"Morning Roots"だと思う)が曲を付けたもので、「極北の地」に対する”憧れ”なのか、未来に自己を求める姿が見えてくる。
 印象深いのは”過去の息を吐き出し、新たに息を吸い込む”のくだりであり、おそらく自分をもう一度見つめ直して歩む決意を歌っているのではと想像するのだが・・・それにつけても美しい曲、往年のフランス映画のシーンのようだ。
 なかなか全編トータルに彼女が自己を見つめてこれから新しい道を進もうとする意志のようにも感ずるアルバムで、彼女の歌声と言い、曲の変化といい、なかなかの上出来アルバムの登場だ。進歩を感じた。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 : ★★★★★☆
□ 録音      : ★★★★★☆
(視聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月15日 (火)

[久々の衝撃]一人バンドのタッシュ・スルタナTASH SULTANA 「FLOW STATE」

パーフェクトなシンガー&マルチ・インストゥルメンタリスト"一人バンド"の初のフル・アルバム

 今のようなネット社会になる前(1980-1990年代)のパソコンが普及してきた頃、もう30年以上前の話だが、「パソコン通信」という電話回線を使ってのパソコンとホスト局とのサーバとの間での通信手段があって、そこで全国の諸々の愛好者と仲間を作って参加者のみのクローズドな会話をしてきたものだ。その当時の「PC-VAN~ Rock」のロック仲間から新年早々、最近ジャズに現(うつつ)を抜かしている私に、年賀状での推薦があった。それがこの”衝撃のタッシュ・スルタナ”だ。

49319465_w

<Psychedelic Rock,  Altanative Rock>

TASH SULTANA 「FLOW STATE」

Lonely land Records / EU / 19075870562 / 2018

81ldkmuljblw

Tash Sultana : Guitar, vocals, bass, piano, keyboards, trumpet, drums, pan flute, mandolin, saxophone, percussion

Produser : Tash Sultana
Engineered by Nikita Miltiadou、Dann Hume
Mastered Andrei Eremin

 
Ts2 オーストラリア・メルボルン出身のシンガーソングライター、マルチ・インストゥルメンタリストの23歳の才女タッシュ・スルタナTash Sultanaの初のフル・アルバム。
 なにせ、ギター、トランペット、サックス、パン・フルート、グランド・ピアノ等15種以上の楽器を自ら演奏。3歳から始めたというギターはジミ・ヘンドリックスに喩えられる程の腕の持ち主で聴く者を唸らせる。彼女はメルボルンの繁華街スワンストンで長年ストリートミュージシャンとしての活動してきた。
 2008年から2012年までは”Mindpilot”というバンドのボーカリスト、メルボルンでいくつかの賞を受賞。その後ソロで活動を開始、2016年頃よりYoutubeにてパフォーマンス映像を公開し評判を呼びSNSで大きな注目を集めた。公開曲「Jungle」がオーストラリアチャート39位を記録し、現在までに5,000万回以上のストリーミングを記録する。2017年にはオーストラリアの権威ある賞、ARIAミュージック・アワードにて4部門にノミネート。現在はアメリカ、イギリスを中心にドイツ、フランス、ニュージーランド、イタリア、カナダなどワールドツアーを敢行中、ソールドアウトが続出とか。今年のコーチェラにも初出演するなど勢いが止まらない。

  これまでは、インストを含む2枚のEP『Instrumentals』、『Notion』を発表しており、今回この初のフル・アルバムにはシングル「Free Mind」、「Salvation」、「Harvest Love」など全13曲を収録。

 とにかくステージ上には一人だけ。足元や手元に多くのペダルやエフェクター、サンプラー、キーボード、ギター等を置き、全てを操って音を重ねていくパフォーマンスで圧巻。


Ts1_2(Tracklist)
1. Seed (Intro)
2. Big Smoke
3. Cigarettes
4. Murder to the Mind (Album Mix)
5. Seven
6. Salvation
7. Pink Moon
8. Mellow Marmalade
9. Harvest Love
10. Mystik (Album Mix)
11. Free Mind
12. Blackbird
13. Outro
(All songs written by Tash Sultana)

 収録13曲、全てが彼女のオリジナル、そしてオール楽器も全て彼女が演奏。
 ストリート・ミュージシャンと言うと、フランスのZAZを思い出しますが、総じて技量が高いのが特徴だ。このタッシュは例外で無いどころか、それ以上の楽器の演奏能力が高いのとヴォーカルが見事というところは、近年見たことのないハイレベルだ。それは当に衝撃!。

Gettyimagesw

 M1." Seed (Intro)"澄んだギター・サウンドからスタート。そして美し響くヴォーカルが次第にレゲェ調に・・・・冒頭から魅力的。
  続くM2. "Big Smoke"から前半だけ聴いても衝撃が走る。
 曲展開は当に「タッシュ・スルタン節」だ。サイケデリックな展開の中に、R&Bであったり、レゲェ、ヒップポップが絡んだり、ポップな要素がたっぷり盛り込まれている。
 そしてギターは、エレキを中心に全ての要素が絡む奇っ怪さ。美しさ、リズムカル、泣き、早弾きと、恐ろしくなるギター・プレイだ。キーボードも説得力有り。
 ヴォーカルは、ソウルフルであり、時にクールに、又展開によりパワフルに、情熱的に、と多彩。
 M7. "Pink Moon"こうしっとりと歌われると、これが又たまりませんね。情感が伝わってくる。声域の広さも感心します。
 M9. "Harvest Love" このようなスローな曲の情感も半端じゃない。
 M12. "Blackbird"ギタリストの本領発揮。フラメンコ調を臭わせたりギター・テクニックはお見事。そしてギター・サウンドはM13. "Outro"へ続き美しく終わる。このあたりもニクイところだ。

 いやはや恐ろしいミュージシャンが現れました。これぞ何年に一人の逸材だ。なんとなく低調なミュージック界を奮起すべく背負って立つプレイヤーが登場したと言って間違いない。私にとってはアデルの出現時より圧倒的に衝撃は大きい。

 (評価)
□ 曲・演奏・歌 : ★★★★★
□ 録音      : ★★★★★☆
     
 (視聴)

*

*

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月12日 (土)

リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「GIVE US THESE DAYS」

硬派で爽快なプレイの女流ピアニスト作品

<Jazz>
Lynne Arriale Trio 「GIVE US THESE DAYS」
ChallengeRecords / AUSTRIA / CR73453 / 2018

61iybx1eoxlw

Lynne Arriale (piano)
Jasper Somsen (bass except 9)
Jasper van Hulten (drums except 9)
Kate McGarry (vocal on 9)
Recorded Decem, 18-19, 2017 at MotorMusic Studioa, Belgium

39051739w 米国ベテラン女性ピアニストのリン・エリエイルLynne Arrialeとオランダ出身のイェスパー・サムセン(b)とイェスパー・ファン・フルテン(ds)の二人と組んだトリオ作品(→)。ベルギーでの録音だ。

  リンは、知る人ぞ知るピアニストだが、長い経歴の中で幾つかの作品がある。しかし実は私は全く知らないということではないが、ちょっと片聴き程度のところだった。と言うとお解りでしょうが、所謂ユーロ系の叙情派とは全く異なって、むしろ今となればアメリカン・ジャズの古典的流れにある”現代ハード・パップ・ピアノの王道をゆく正統派”と表現されるタイプなのだ。しかし彼女の活動の広さを物語るように、今回のこのアルバムはユーロ製作である。

 しかし、彼女の演ずる曲(以前のアルバム『With Words Unspoken』(Digital Music Products/518/2016)に登場する"Where Or When")が、昨年末の寺島靖国の『For Jazz Audio Fans Only Vol.11』に登場して、おやっと、ちょっと関心を抱いたと言う事と、フォーク、ソウル、ジャズに通ずる女性シンガーのケイト・マクギャリーの名もスペシャル・ゲストとして見えた為、ここらで一度はしっかり彼女のアルバムも通して聴いておこうと、この最近作を手に入れた次第。

 彼女は1957年ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ、ピアニスト&作曲家として国際的に演奏活動を行うほか、ノースフロリダ大学でジャズを教え、各国でもワークショップなどを開催。又様々なコンクールで審査委員を務めるという既にもはや重鎮。


Lynne72145ew(Tracklist)
1. Woodstock
2. Appassionata
3. Finding Home
4. Give us These Days
5. Slightly Off-center
6. Another Sky
7. Let it be
8. Over and Out
9. Take it with Me


 これは本流のピアノ・トリオである。そして女流ピアニストということは感じさせない歯切れのよいメリハリのあるピアノ・タッチが特徴といってよいだろう。基本的にはスウィングする流れからの発展形。
 それはジョニ・ミッチェルの曲M1. "Woodstock"の冒頭から見事に展開する。しかもこの曲では、進行するにつれ昂揚のある流れから次第に徐々に盛り上がって、遂に見事なる華を全開する硬派の爽快にして豪快なプレイに驚かされる。
  一方M4. "Give us These Days"のアルバム・タイトル曲では、その心に染み入る抒情的な美しさを演じてくれる。この彼女のオリジナル曲を、アルバムタイトルに持ってきたと云ところからも、彼女はこのようなちょっと物思いにふけるロマンティックな線も大切にしていることと推測できる。
 
M7. "Let it be"は、お馴染みビートルズの曲だが、変にしつこさが無く意外にサラっとしていて原曲も生かしての編曲部もなかなか聴きごたえある。
 
M9. "Take it with Me"は、トリオものでなく、しっとりと聴かせるシンガーKate McGarry が登場する。ピアノとヴォーカルのデュオ作品だ。曲はトム・ウェイツのもので、これが私のもう一つの目当てであったもの。そのムードは抱擁感に包まれて味わい深く良いですね。実はもう一曲ぐらい聴きたいといったところ。

 結論的には、ジャズの先生の基本をクリアした充実作品として聴いた。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(視聴) "Give Us These Days"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 5日 (土)

エミール・ブランドックヴィスト・トリオEMIL BRANDQVIST TRIO 「WITHIN A DREAM」

全編通して・・・美しき詩的な叙情に包まれて

<Jazz, Contemporary Jazz>
EMIL BRANDQVIST TRIO 「WITHIN A DREAM」
Skip Records / Jermany / SKP9141-2 / 2018

413159stil

Emil Brandqvist : drums, percussie, klokkenspel, synthesizer
Tuomas Turunen : piano, celesta
Max Thornberg : contrabas. Gast

Martin Brandqvist : fluit, klarinet, basklarinet, percussie

Trio_2

 スウェーデン、イエテボリ出身のドラマーであるエミール・ブランドックヴィストEmil Brandqvist の結成したピアノ・トリオのアルバム。とにかく美しさと懐古的心情の美、抒情性などの語り尽くせない美しいアルバム。ドイツからのリリースである。
 その手法はジャズといってもクラシックに近いピアノ・プレイを主軸に、ドラマーのリーダー・アルバムとは思えない美旋律Contemporary Jazzだ。これには勿論ピアニストのTuomas Turunen の力も大きいと推測する。

List
Recorded and mixed at S.Grammofonstudion,Gothenburg,Sweden,Noveber 1-5 and December 2017 by Åke Linton

All Songs written by Emil Brandqvist - exept M4(Tuomas Turunen ) and M12(Tuomas Turunen and Max Thornberg  )

 

 14曲全曲オリジナル、10曲はリーダーのEmil Brandqvist により、残る2曲がTuomas Turunen と Max Thornberg によるもの。

 M1、M3 とクラシカルな響きの美しいTuomas Turunen のピアノの調べで、どこか懐かしさを思い起こさせるムードに包まれる。
 M5 田園の水の流れを描いたと想わせ、終わりの盛り上がりが面白い。
 M6."Dream"夢心地の美しさ。
  M7."星空の下で"と言うところか、静かな北欧の散りばめられた星空の下に美しい情景が浮かぶ演奏。
 M8. いかにも抒情的、哀愁の淋しさ
 M10, M11 ここでもピアノのメロディーを支えるが如くのベース、ドラムス。それは究極の美しさだ。

 ここまで、リーダーがドラマーで「詩的」「美」「牧歌的な静」「哀愁」「懐かしさ」を描くトリオ作品は珍しいのではないだろうか、しかもアルバム全編を貫いている。まさに希有なアルバムだ。
 ここまでの徹底ぶりに、驚きと感動で聴き入ってしまったアルバム。

(Emil Brandqvist : Diacography)
2013: Breathe Out
2015: Seascapes
2016: Falling Crystals
2018: Within a Dream

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(視聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 1日 (火)

謹賀新年 2019  ウォルター・ラング Walter Lang Trio 「Translucent Red」

Dsc05660trw
明けましておめでとうごさいます

今年もよろしくお願いします

             平成31年 元旦

*

*

*

*

*

*

           ◇          ◇          ◇

日本レーベルのリリースも板について・・・日本人好み盤だ

<Jazz>

Walter Lang Trio 「Translucent Red」
Atelier Sawano / JPN / AS164 / 2018

61imhi84eplw

Walter Lang (piano)
Thomas Markusson (bass)
Sebastian Merk (drums)

 前作に続いて、Atelier Sawanoからのドイツのウォルター・ラングのピアノ・トリオ・ニュー・アルバムの登場。しかしアルバム・ジャケが凄い赤ですね。これを見ると情熱的な激しい内容のアルバムかとしり込みをしていました。そもそもウォルター・ラングは二つの顔を持っていてリリカルなサウンドを持ち味とするこのメンバーのピアノ・トリオと、一方Trio ELFのようなテクノ・サウンドによる世界とがある。
 しかし私好みはこちらのメンバーのトリオであるが、Atelier Sawanoからの前作『Full Circle』(AS-151/2016)は、なんとなく若干不満足であったため、今作の”赤ジャケ”をみると、更に若干尻込みして居たのです。しかしブログ友爵士さんから私のようなタイプは”これを聴かなきゃダメよ”と言う意味と思うが、お薦めが有って聴くに言ったと言う話。
 
  しかしラングは日本との関係に積極的ですね。今や、CD販売流通も世界的には冬の時代。日本はそれでもまだまだ世界から見るとCD派もいて、ミュージシャンにとっては有り難い国であるのかも知れない。さらに曲1曲を聴くというのでなく、アルバム通して聴きたいというところにもあるのかもしれない。

Waltersololamber_josef14_med2

(Tracklist)
1. Nancy (with the Laughing Face)
2. Afterglow
3. I Wonder
4. Translucent Red
5. La Musa
6. Precious Love
7. Soon
8. I Loves You, Porgy
9. Still Gone
10. They Didn’t Believe Me
11. Any Old Days
12. Sevilla
13. Dawn Song

 M1. "Nancy" これは女の子の名前だろうか、冒頭から優しいピアノの響きが伝わってくる。優しく女の子を見守る姿だろうか。タイトルを見ずに聴いていると、決して夜のムードでなくむしろ新年の静かな朝に通ずる雰囲気。
 M2. "Afterglow" 残照だ。更に優しいピアノの調べからスタート、ベース、シンバルも同様に優しさの溢れた響き。
 M4. "Translucent Red" ”透き通った半透明の赤”ということだろうか、アルバム・タイトル曲だが、その意味すねところは解らないが、これが又メロディーも優しくノスタルジックな抒情性豊かで聴き惚れる。
 M6. "Precious Love" 尊い貴重な愛、こうした曲を聴くと人間の世界が美しく見えてくる。
 M7. "Soon"そしてM9. "Still Gone"、M11." Any Old Days"と、郷愁をさそう。
 M10They Didn’t Believe Me、M12." Sevilla"は珍しく優しさの軽快な曲
 最後はM13. "Dawn Song"夜明け、未来への展望で納めるところがニクイところ。

 いやはや全編通して「優しさ」「懐かしさ」「優美」「叙情」「希望」「愛」など溢れた曲群で一貫している。彼が日本をイメージしているのかその点は解らないが、レーベルAtelier Sawanoの面目躍如たるアルバム作りとなっている。更に技術陣としてイタリアのステファノ・アメリオを起用し、レコーディングから音質まで素晴らしくあのECMアルバムを連想する世界に至っている。
 意外にこのアルバムを評しているブログは少なく、ここに新年早々に是非とも聴いて頂きたいアルバムとして取りあげた。

(参考)ウォルター・ラングWalter Lang
1961年ドイツ・シュヴェービッシュ・グミュント 生まれ。 アコーデオンとピアノを演奏する父と祖父のもとで育った。ボストンのバークリー音楽院とアムステルダム芸術大学でピアノと作曲を学んでいる。トリオは世界中をツアーしており、なんと言っても特に日本のジャズファンから愛されていて、親日家。このところ澤野工房からアルバムをリリース。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(試聴)

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2018年12月29日 (土)

アントニオ・サンチェスANTONIO SANCHEZ & MIGRATION 「LINES IN THE SAND」

今年の締めくくりはこれに尽きる!!

<Jazz, fusion, crossover>
ANTONIO SANCHEZ & MIGRATION 「LINES IN THE SAND」
Cam Jazz / Import /CAMJ 7940-2 / 2018


Lineinthesand

Antonio  Sanchez(ds,  voice,  additional  keys), 
John  Escreet(p,  fender  rhodes,  prophet  synth), 
Matt  Brewer(b,  el-b), 
Thana  Alexa(voice,  effects), 
Chase  Baird(ts,  EWI)
Nathan  Shram(viola  on  Travesía  Part  II),
Elad  Kabilio(cello  on  Travesía  Part  II  and  Long  Road)

Migratio

 メキシコ人のアントニオ・サンチェスAntonio  Sanchez、彼は今や最も注目度の高いドラマーだ。その彼の結成するバンド「MIGRATION」が放つ問題作がこれだ。彼はメキシコ人であるが今は移住派のアメリカ人。
Trumpw 今、語るとしたらなんと言っても米国の現状についてであろう。容認できないメキシコとの関係についてサンチェスは訴えている。それは誰が何の為に引き起こしているのかと問うてみれば答えは一つ、トランプ大統領の誕生からの不幸な世情。そしてそれに対峙しているのである。
 彼は自ら書いたライナーノーツで言う「トランプが人々の不安に付け込んみ、デマや憎悪と頑迷に満ちた詭弁で彼らを利用したに違いないと思っている。この国に25年住む間、そんなことをする大統領は見たことがない」と・・・・。そしてここに大統領の政治姿勢に対する憤りと、それによって犠牲になっている人々に想いをよせた心の作品が誕生したのである。

35129204_003

 メキシコで大々的にトランプ・アンチ・テーゼを掲げたライブを演じたロジャー・ウォーターズは、2017年にトランプはじめ世界の第二次大戦後の反省を忘れた現状を嘆いた『is this the life we really want?』(SICP5425/2017)をリリースした。そして二年間の世界ツアー「Us+THEM」ライブを展開、圧倒的支持を得た。それから始まって足掛け二年、ここに来て、立ち位置は異なっているも、アントニオ・サンチェスはやはり2017年作品の『Bad Hombre』(CAM Jazz/ITA/CAM7919)に続いて、更にトランプ批判作品のこの『Lines in the Sand』を登場させた。両者の作品の充実度は群を抜いている。
 この年末に来て、今年はこのアントニオ・サンチェス作品をもってしてそれ以外に締めくくれる術が無い。こうした群を抜いた充実度の高いアルバムの出現は、憂うべき世情に彼らを奮い立たせた結果でなのある。

A3167011425651799w(Tracklist)
1. Travesía Intro (1:23)
2. Travesía (Part I - Part II - Part III) (20:08)
3. Long Road (6:57)
4. Bad Hombres Y Mujeres (8:43)
5. Home (6:17)
6. Lines In The Sand (Part I - Part II) (26:15)

▶ M1."Travesía Intro"イントロから不穏の雰囲気に包まれる。ここまでSEでやるかという冒頭からパトカーのサイレン、私の耳では聞き取れないが、紹介によると、大衆の“This is Wrong”“ Shame on You” といった人々の叫びが収録されている不穏な現場。サンチェスの危機感が表現されている。
▶ M2. "Travesía (Part I - Part II - Part III)"M6."Lines In The Sand (Part I - Part II)"の2曲はそれぞれ20分、26分という壮大な組曲。M2は静かに迫る不安な世界、M6は心に誓う決意の激しさと、悩める心の不安定感を感じさせる。
▶ M3. "Long Road" 怒り、憤りというよりは哀しみに満ちている。そして不安を抱きながらの長い道程を歩む姿、そこには意欲の表現が伺える。
▶ M4. "Bad Hombres Y Mujeres"強烈なアクセントとなる曲。彼らのパワーが全開する。圧巻のユニゾンとアンサンブル、そのスピード感あるスリリングと言うか緊迫感ある展開は見事。サンチェスのドラミングが炸裂。
▶ M5. "Home " アルバム「Bad Hombre」に登場した曲の再登場。静かに響くベースの調べから、Alexaのヴォーカルが哀しく美しい曲。シンバルとトラムスが危機感を描く。

 全編、静と動、哀愁と悲惨、ドラマチックにして深遠な世界、圧巻である。

Imin_kokkyouhen_2_2

  とにかく、ジャズ畑(このアルバムは、そのジャンルは明らかに越えているが)としては珍しい壮大にしてアルバム全編一貫してのコンセプト版。前アルバム『Bad Hombre』に飽き足らず、ここにその延長線上といってよい自作自演作品で迫ったサンチェスに敬意を表したい。

 アントニオ・サンチェスは1971年生まれ、47歳ということになる。彼のリ-ダ-・アルバムは7を数えるが(↓)、ドラマーとしてPat Methenyと多くのアルバムを残し、Enrico Pierannunziとのアルバムも多い。その他Chick CoreaやGary Burtonとも共演している。更にドラマーというだけでなくコンポーザーとしての能力も評価されているのだ。どちらかというとラテン系の影響を受けているjazzだとは思うが、Rockのニュアンスもあり、Fusionと言った方が良いのか、死語ではあるがCrossoverといったところだ。彼のドラミングは緊張と緩和の絶妙なバランスが評価され今やそれは現代最高峰と言われている。(彼を取りあげたのは初めてであるのでリーダー・アルバムを下に記す)

(Antonio Sanchez : Leader Albums)
Migration (CAM Jazz, 2007)
Live in New York at Jazz Standard (CAM Jazz, 2010)
New Life (CAM Jazz, 2013)
Three Times Three (CAM Jazz, 2015)
The Meridian Suite (CAM Jazz, 2015)
Bad Hombre (CAM Jazz, 2017)
Lines In The Sand (CAM Jazz, 2018)

 今年は「地球規模の不安定」、「人間社会構造の不安定」が現れた一年であった言える。このようなアルバムの出現をしっかりかみしめ一年の締めくくりとすべきである。
 来年こそ、我々に課せられた課題は大きい。
 皆さん、良いお年をお迎えください。

(評価)
□ 曲・演奏・コンセプト : ★★★★★ 
□ 録音          : ★★★★★☆

(視聴)

*

| | コメント (4) | トラックバック (2)

2018年12月25日 (火)

クラウディオ・フィリッピーニ Claudio Filippini Trio 「THE ENCHANTED GARDEN」 & 「BEFORE THE WIND」

ピアノの美しさにコンテンポラリーな味付けのトリオ

<Jazz>

Claudio Filippini Trio 「THE ENCHANTED GARDEN」
CAM Jazz / ITA / CAMJ7839 / 2011


51giyfvagqlw

Claudio Filippini (p,key)
Luca Bulgarelli (b)
Marcello Di Leonardo (ds)


  寺島靖国が『For Jazz Audio Fans Only Voll.11』(TYR-1074/2018)で取りあげた曲"Django"の納まっているアルバムである。当然これは聴いておかねばと注目したもの。
 あのエンリコ・ピエラヌンツィが、ライナーノーツを担当し、その才能を褒めたたえるイタリアのピアニスト、クラウディオ・フィリッピーニClaudio Filippini(1982年ペスカーラ生まれ) の2011年のリリースもの。当時30歳前後の新進気鋭の作品だった。これは日本でも評価が高くそれなりに売れたアルバムだったようだが、私は未聴だったもの。

(Tracklist)
List

Cf なるほど、ピエラヌンツィが目をつけるだけあって、まずはピアノの音が瑞々しく透明感のあるところで、M1."Il Fiore Purpureo"はそのピアノ・ソロからスタートして、シンバル音、ベースと入ってくるところがこれはなかなかと魅力を感じさせる。次第にペースを上げてジャズの世界に突入するも騒がしさが無い中にしっかりと主張はしている。
 M2."Verso Sera"は、所謂スウィング・ジャズとは一線を画して、フリー・ジャズに近い世界を展開。しかしそこにはふとピアノがクラシックを思わせる中に、シンバルの繊細な響き、ベースは曲の支柱になって支えるの音が十分対等に交錯して違和感の無いジャズにしてみせる。これが又録音エンジニアはStefano Amerioとくるから、なかなか快感の音であるのだ。
 寺島靖国はこのアルバムの最後の曲ジョン・ルイスのM13."Django"を選曲したのだが、これが静かにメロディアスな優しいピアノ、そしてベース、ブラシ・ドラムスの音がゆったりと繊細に響き、なんとも言えない魅惑の快感の世界に包まれる。ユーロの世界、イタリアの世界と華々しいアメリカン・ジャズとは別の感覚を楽しませてくれる。
 ミッシェル・ルグランの曲M8."You Must Belieave in Sprig"のピアノの美しさには惚れ惚れする。

  このアルバムは13曲盛り込まれているが、彼らのオリジナルが多く、曲によっては三者の責め合いもあって、単なる抒情性の世界では無く、既成の世界から一歩出て行くフリー・ジャズの色も見せてコンテンポラリーなところは将来楽しみなところである。

(評価)
□曲・演奏 : ★★★★☆
□録音   : ★★★★★☆

                              - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

(参考)

 Claudio Flippini Trio 『BEFORE THE WIND』 
                    (Cam
Jazz/CAMJ 7936-2/2018)

 彼らのトリオは不変で、今年はこのニュー・アルバムをリリースしている。このアルバムもついでにと手に入れてみたが、ここでもクラウディオ・フィリッピーニのややクラシックがかった美しいピアノが展開し、決して難解にならないコンテンポラリーさもやはり持っていて、結構快感で楽しめるところにある。なんとエレクトリック・サウンドも交えるという一幕もある。又ベースのLuca Bulgarelliは、ソロ演奏で聴かしたり、アルコ奏法を交えてうやはり美しいバックを構築するところもある。これもAmerioの録音で、サウンドにうるさい人には是非聴いて欲しい魅力的トリオ・バランスを構築している。

81rz6q5hbclw_2(Tracklist)
1. Maia (4:41)
2. Andromeda (5:50)
3. Don’t Elevarsi (6:19)
4. Bassever (1:09)
5. Forever (5:36)
6. Goa (6:21)
7. Mentre Dormi (4:59)
8. Haze (6:14)
9. Encore (4:06)

All music by Claudio Filippini except tracks #4 Luca Bulgarelli;
#6 Claudio Filippini, Luca Bulgarelli, Marcello Di Leonardo

Claudio Filippini(p, keys),
Luca Bulgarelli(b),
Marcello Di Leonardo(ds)

Recorded in Decem.2017 at ARTESUONO RECORDING STUDIO
Recording & Mixing engineer Stefano Amerio

(視聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月21日 (金)

寺島靖国プレゼンツ 第18巻 「Jazz Bar 2018」

18年目を迎えたシリーズは、やっぱり欧州ムード美旋律曲集

<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2018」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1075 / 2018

41zztd4xoelw

 このシリーズは、なんとなく毎年手に入れて一年を回顧する習慣になっているもの。そんなところから今年の18巻目は多分寺島レコードからリリースされたAlessndro Galati などを筆頭に、選曲はおそらくこんなところだろうと数曲予想していたのだが、なかなか一筋縄では行かない寺島靖国、完全に予想を翻されて、なんと私の購入アルバムはゼロ。それは予想に反してかなり古いモノを掘り起こしているためだ。そんなわけだか、皮肉にも極めて意外にフレッシュな感覚で聴く事の出来たコンピ・アルバムとなった。ただ予想したるところは、ユーロ系が多いというところにあって、これは私の期待に添っていたことになる。

(Tracklist)
1. SAD TO SAY [Vladimir Shafranov]
2. PIENSA EN MI [Marco Mezquida]
3. MISSION [Varga Gabor Jazz Trio]
4. GIORGIA MOOD [Giorgio Azzolini]
5. FENESTA CHE LUCIVI E MO NON LUCI [Alessandro D'Episcopo]
6. OLD FOLKS AT HOME [Moncef Genoud Trio]
7. MY LAMENT [Martin Terens Trio]
8. JUSTE AVANT [Jean-Pierre Mas]
9. LA CHANSON DES VIEUX AMANTS [Charles Loos Trio]
10. HIDDEN MESSAGE [Laszlo Gardony]
11. MARCIA FUNEBRE [John Taylor]
12. DUST IN THE WIND [Philippe Lemm Trio ]
13. TRES PALABRAS [Abe Rabade]

71dtr2ik0rlw2_371pawheehylw2_281husagvx7lw2_2412bssyls9l_4

*
  さて上の選曲をみても、意外にも売れ筋ではマイナーと言って良い布陣です。そこが味噌と言えば味噌なのだが、私にとってウ~ンそんなところもあるのかと、ニヤっとして紹介された曲の気にいったアルバムを押さえたくなるんですね。しかし今回少々調べてみると結構古いモノが多く、ここまで来るとちょっと寺島靖国もこのところは苦労しているのだなぁと想像もしてみるんです。そんなに無理しないで今年の人気モノも載せておけば良いのにと若干同情もしてしまう。
 それもそう近年は『For Jazz Audio Fans Only』、『For Jazz Vocal Fans Only』、『For Jazz Drums Fans Only』と、立て続けにコンピ・アルバム・シリーズをリリースしているわけで、どうも若干ネタ切れかと想像もしてしまう。

 それもなんと、M3. "MISSION" [Varga Gabor Jazz Trio]は、このシリーズの7年前の「2011年版」の2曲目にも同じモノが登場しているんです。これはやっぱりまずいでしょう。それでも許さなければいけないのかとなると、このアルバム結構値段もお高いので、その分まけて頂戴と言いいたくもなった次第。周りのスタッフも気がつかなきゃいかんでしょう。でも許しましょう、得るモノも大きいので・・・・。

M1. "SAD TO SAY" [Vladimir Shafranov]  は、ジャズという感覚無しで聴ける美旋律。(アルバム上左)
M5."FENESTA CHE LUCIVI E MO NON LUCI"は、まさにイタリアの歌心で心にしみ込んでくる。(アルバム上左から二番目)
MartinterensM7."MY LAMENT"これはちょっと注目もの。ドイツのMartin Terens Trio(→)、どこかアグレッシブな世界を求めている演奏で興味を持つ。録音がシリアスで、ドラムスのブラッシ奏法が効果的(アルバム上左から三番目)
M9."LA CHANSON DES VIEUX AMANTS"なんとなく泣かせる曲。余韻の捕り方がなかなか上手い演奏。(アルバム上右)
M10."HIDDEN MESSAGE"哀愁曲のまあ及第点モノ。

 選曲されたものに関しては、先日リリースの『For Jazz Audio Fans Only Vol.11』と刺激性はかなり低い。まあ優しいというムードといってよいのかとも思う。このシリーズはどちらかというとロマンチックな面や抒情性を重んじての選曲として、我々も受け入れてきたのであるから当然なのかもしれない。そんな世界に作り上げられているアルバムだ。そこが魅力の一つであると言っておこう。しかし少々残念なのは、今回は古いアルバムからの選曲が多く、「2018」と銘打っているにしては?・・・・と、疑問も無いわけではない。取り上げた曲の納められたアルバムにせまってみようという意欲は若干過去に比べると低かったことは否めない。

(試聴)

*

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年12月17日 (月)

シモーネ・コップマイヤーSimone Kopmajer 「SPOTLIGHT ON JAZZ」

キュートから円熟味の加味されたロマンチィック・スタイルへ

11667383_10153991571834829_15266126


<Jazz>
Simone Kopmajer 「SPOTLIGHT ON JAZZ」
Lucky Mojo / EU / LMR 1801 / 2018

61myzpkv1l__slw

Simone Kopmajer (Vocals)
Terry Myers (ts,cl)
Paul Urbanek (p)
Martin Spitzer (g)
Karl Sayer (Bass)
Reinhardt Winkler (Drums)

 オーストリア出身のジャズ・シンガーでヴィーナス・レコードからデビューしたシモーネ・コップマイヤーSimone Kopmajerのニュー・アルバム。ジャズ・スタンダードにスポットライトを当てたそのままのタイトルの付いたアルバムの登場だ。これはVenusでなくLucky Mojo Recordsからのリリース。彼女は最近は米国での活動も多い。

61qu5ysczl__w_2 私の知る限りだと、かっては"シモーネ"と言う名前でアルバムがリリースされていた。私が持っているのはデビュー当時のアルバムを二枚組にしたVenus Recordsの"The Best Coupling Series"のもので、『Moonlight Serenade 』+『 Romabce』(VHCD-1147/2013 →)である。この当時はキュートと言った表現に当たる可愛い声でのジャズを歌ったアルバムであった。これはもともと2003年に彼女のデビューした時のもので(彼女は1981年生まれであるから、当時22歳)、もう15年前になる。従って今回のアルバムはどんなムードか、若干彼女の変化に興味を持ちつつこれを聴いた訳だ。

319779_101509324183w_2(Tracklist)
1 Spotlights 3:56 *
2 Pennies From Heaven 5:10
3 You Don ́T Call Me 3:30
4 Mighty Tender Love 4:17 *
5 Poinciana 6:46
6 Dig That Riff 4:00
7 Remember Jeannie 6:58 *
8 Struttin ́ With Some Barbecue 4:08
9 Exactly Like You 4:44
10 A Gift From Buddy 4:40
11 Stompin ́ At The Savoy 4:25
12 We ́Re Goin ́ In 4:32
13 Mood Indigo 4:04
14 Dig That Riff 3:02

 (*印:Simoneのオリジナル曲)

  それでもあのキュートは残しつつ若干卒業して、適当に垢抜けた円熟味が加味され大人のジャズヴォーカル色が加わったロマンテイック・スタイルになった彼女をこのアルバムで聴ける。
 バックはピアノ・トリオにテナー・サックス、ギターが加わって、ジャズの条件はしっかりとそろえている。全体に標準的なサウンドで、荒れることの無い、コンテンポラリーな変化も無い大人しいバックで、やはり彼女のヴォーカルを主体とした演奏だ。
 実は彼女の前作『Good Old Times』は昨年リリースされたアルバムだが私は聴いてなかった。その中身はロック・ポップスに近いモノだったようだが、今回はしっかりジャズ・シンガーを表に出している。

  オープニングのM1,"Spotlights"から、やや陽気な展開で、その流れはアルバム全体の印象となっている。まあ声の質から言っても深刻さの無いお手軽ジャズ・ヴォーカル・アルバムとして聴くのがよいのだろうと思う。
 私的は M2、M3、M5あたりは落ち着いたムードで好感。
 M10 "A Gift From Buddy" M13 "Mood Indigo"の2曲は、大人のムード仕立てで、このアルバムでは出色。

(評価)
□ 歌・演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(視聴)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年12月13日 (木)

寺島靖国プレゼンツ「For Jazz Audio Fans Only~ Vol.11」

今回もサウンド・演奏に充実感に浸れる

<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Audio Fans Only~ Vol.11」

TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1074 / 2018

Forjazzfans

 オーディオ・ファンに向けたコンピレーション「For Jazz Audio Fans Only」の第11巻が登場した。ジャズを聴くにはまずそのサウンドが良くないと納得しないと言う寺島靖国の選曲シリーズだ。なにしろ「ジャズは音で聴け!」のコンセプトの下に集められたもので、なるほどと思わせるに十分だ。私もその傾向にあるといえば・・・・そうかも知れない。なんと言っても昔の録音の名演奏シリーズも音にがっかりしてしまうことは何度も経験している。そんな中でこのような企画はこれからのCD製作に良い刺激を与えていることは間違いないだろう。
 今回はそう有名で無いミュージシャンものが多いと思うが、それが私にとっては良い発掘の場ともなっていて楽しみなのである。

(Tracklist)
1 OLD CITY (LOUIS PERDOMO)
2 BALLAD FOR L (MARIO NAPPI TRIO)
3 INTERLUDE (FABIAN MEYER TRIO)
4 DJANGO (CLAUDIO FILIPPINI TRIO)
5 ULTIMO GIORNO IN VIA PALAZZI (MICHELE DI TORO TRIO)
6 AUTUMN LEAVES (SWEET BABY J'AI)
7 WHERE OR WHEN (THE LYNNE ARRIALE TRIO)
8 ILTER FABEL (MAKIKO HIRABAYASHI TRIO)
9 WHEN THE DAY IS YOUNG (STEPHAN BECKER TRIO)
10 SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE (SILVES TRIO)
11 LONGING (EMIL BRANDQVIST TRIO)
12 MISS (ALEXI TUOMARILA TRIO)
13 NO REGRETS (SIMON DENIZART TRIO)

51giyfvagql
814ylccyuylw_4
91dtqyb2kgl__sl1383w_6





**今回も圧倒的にトリオものが多い。まぁ私のようにビック・バンドを好まない人間にとっては、これ又歓迎である。

  そしてまずの注目株は2曲目の”BALLAD FOR L”のイタリアの若武者マリオ・ナッピ・トリオMARIO NAPPI TRIOだ。これがなかなかのくせ者。アルバム『Triology Vol.2』からの曲が取りあげられた。彼らはなかなか一筋縄では行かないアグレッシブな世界を築く。そしてそれに相応しいトリオ対等の録音位置にありシンバルも冴える。
 次の注目はM4 "DJANGO" (アルバム『THE ENCHANTED GARDEN』上左)のクラウディオ・フィリッピーニ・トリオCLAUDIO FILIPPINI TRIO、イタリアのトリオだ。このトリオを知っただけでも十分このアルバムを手に入れた成果はある。とにかくピアノが素晴らしい上にドラムスはどちらかというと繊細派、ベースは意外にリード派だ。エンリコ・ピエラヌンツィが才能を認知しているトリオである。そう言えば押して知るべしと言った所。
  M6 "AUTUMN LEAVES" ベースとSWEET BABY J'AIのヴォーカルが低音で迫ってくる。
 M9 "WHEN THE DAY IS YOUNG" (STEPHAN BECKER TRIO、アルバム『Solar Energy』上中央)が録音が素晴らしくピアノが冴える。演奏も思索的で素晴らしい。
 M11 "LONGING" (EMIL BRANDQVIST TRIO)あたりは優しく美しくで気持ちが良い。
 M12 "MISS"は、先日ここで取りあげたALEXI TUOMARILA TRIOで、絶妙なピアノ・プレイが聴き応え十分(アルバム『Seven Hills』より、上右)。

 こんな調子で、なかなか今回のこのコンピ・アルバムは充実感があります。まあ年に一回のリリース・ペースで、あまり第一線の注目盤は避けているようで、その為若干古いリリースものもありましたが、私にとっては意外に新鮮で面白かった。
 

(試聴)

① CLAUDIO FILIPPINI TRIO

           *

② STEPHAN BECKER TRIO

                     *

③  ALEXI TOUMARILA TRIO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

Audio | CLASSIC | Progressive ROCK | SONY α7 | アイオナ | アガ・ザリヤン | アデル | アヤ | アレクシス・コール | アレッサンドロ・ガラティ | アンジェイ・ワイダ | アンナ・マリア・ヨペク | アヴィシャイ・コーエン | アーロン・パークス | イエス | イタリアン・プログレッシブ・ロック | イメルダ・メイ | イモージェン・ヒープ | イリアーヌ・イリアス | イーデン・アトウッド | ウィズイン・テンプテーション | ウォルター・ラング | エスビョルン・スヴェンソン | エスペン・バルグ | エミリー・クレア・バーロウ | エミール・ブランドックヴィスト | エンリコ・ピエラヌンツィ | エヴァ・キャシディ | カレン・ソウサ | ガブレリア・アンダース | キャメル | キャロル・ウェルスマン | キング・クリムゾン | キース・ジャレット | クィダム | クレア・マーティン | ケイテイ・メルア | ケイト・リード | ケティル・ビヨルンスタ | コニー・フランシス | コリン・バロン | ゴンザロ・ルバルカバ | サスキア・ブルーイン | サラ・ブライトマン | サラ・マクラクラン | サラ・マッケンジー | サンタナ | サン・ビービー・トリオ | ザーズ | シェリル・ベンティーン | シゼル・ストーム | シネイド・オコナー | ショスタコーヴィチ | シーネ・エイ | ジェフ・ベック | ジャック・ルーシェ | ジョバンニ・グイディ | ジョバンニ・ミラバッシ | ジョルジュ・パッチンスキー | スザンヌ・アビュール | スティーヴン・ウィルソン | スティーヴ・ドブロゴス | ステイシー・ケント | ステファン・オリヴァ | スノーウィ・ホワイト | スーザン・トボックマン | セリア | セルジオ・メンデス | ターヤ・トゥルネン | ダイアナ・クラール | ダイアナ・パントン | ダイアン・ハブカ | チャーリー・ヘイデン | ティエリー・ラング | ティングヴァル・トリオ | ディナ・ディローズ | デニース・ドナテッリ | デヴィット・ギルモア | デヴィル・ドール | トルド・グスタフセン | ドリーム・シアター | ナイトウィッシュ | ニコレッタ・セーケ | ニッキ・パロット | ノーサウンド | ハービー・ハンコック | パスカル・ラボーレ | パトリシア・バーバー | ヒラリー・コール | ビル・ギャロザース | ピアノ・トリオ | ピンク・フロイド | フェイツ・ウォーニング | フランチェスカ・タンドイ | フレッド・ハーシュ | ブッゲ・ヴェッセルトフト | ブラッド・メルドー | ヘイリー・ロレン | ヘルゲ・リエン | ペレス・プラード | ホリー・コール | ボボ・ステンソン | ポーキュパイン・ツリー | ポーランド・プログレッシブ・ロック | ポール・コゾフ | マティアス・アルゴットソン・トリオ | マデリン・ペルー | マリリオン | マルチン・ボシレフスキ | マーラー | ミシェル・ビスチェリア | メコン・デルタ | メッテ・ジュール | メラニー・デ・ビアシオ | メロディ・ガルドー | モニカ・ボーフォース | ユーロピアン・ジャズ | ヨアヒム・キューン | ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ | ヨーナ・トイヴァネン | ラドカ・トネフ | ラーシュ・ダニエルソン | ラーシュ・ヤンソン | リサ・ヒルトン | リッチー・バイラーク | リリ・ヘイデン | リン・スタンリー | リヴァーサイド | リーヴズ・アイズ | ルーマー | レシェック・モジュジェル | ロジャー・ウォーターズ | ロバート・ラカトシュ | ロベルト・オルサー | ローズマリー・クルーニー | 中西 繁 | 写真・カメラ | 北欧ジャズ | 問題書 | 回顧シリーズ(音楽編) | 女性ヴォーカル | 女性ヴォーカル(Senior) | 女性ヴォーカル(ジャズ2) | 女性ヴォーカル(ジャズ3) | 寺島靖国 | 戦争映画の裏側の世界 | 手塚治虫 | 文化・芸術 | 映画・テレビ | 時事問題 | 時代劇映画 | 波蘭(ポーランド)ジャズ | 相原求一朗 | 私の愛する画家 | 私の映画史 | 索引(女性ジャズヴォーカル) | 絵画 | 趣味 | 雑談 | 音楽 | JAZZ | POPULAR | ROCK