音楽

2019年8月18日 (日)

[ 近年名盤検証 ] リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「Live at The Montreux」「With words unspoken」

女流ジャズ・ピアニストの究極のバラード演奏に降参

61iybx1eoxlw  米国の女流ジャズ・ピアニストのリン・エリエイル(アリエール)Lynne Arriale の近作と言えば「Give Us These Days」(XATW-00145677)だが、それは今年の一月にここで取り上げた。(→)
(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/lynne-arriale-t.html)。

  しかし最近リリースされた寺島靖国の「For Jazz Ballads Fans Only Vol.1に彼女の名演奏"ESTATE"が取り上げられ、この曲はアルバム「Live in Montreux」(再発2000年)に収録されているもので、たまたまこのアルバムは私は所持していたので改めて・・・かっての手持ちの他の1枚を含めて検証してみたいのだ。

 とにかく私にとってはこの彼女に関してはこれらの3枚のアルバムが知る全てであって、最近実はもう少し過去のアルバムをしっかりそろえてみたいと密かに思っているのだ ( 実はこれを書いているうちに、「WHEN YOU LISTEN」(1995) , 「INSPIRATION」(2001)の2アルバムが到着した )。

 

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「Live at the Montreux Jazz Festival」
TOB / EU / 20252 / 2000

Montreux

Lynne Arriale(p),Jay Anderson(b),Steve Davis(ds)
Recorded Live at Montreux Jazz Festival,July 4,1999

 彼女のトリオの1999年のモントルー・ジャズ・フェスに於けるライブ盤である。

(Tracklist)
1.Alone Together
2.Evidence
3.With Words Unspoken *
4.Seven Steps To Heaven
5.Think Of One
6.Estate
7.Calypso *
8.An Affair To Remember

*印 Arrialeのオリジナル

  彼女のオリジナル曲のM3."With Words Unspoken"が素晴らしい。これはエレガントにしてロマンティシズムいっぱいのバラードで、これで彼女のプレイを知らしめられる。とにかく注目のM6."Estate"は、私の好きなイタリアのMartinoの曲だが、暑い夏の出来事をしみじみと歌い上げるピアノには完全に降参です。
 そして最後のM8."An affair to remember"の演奏はこれ又素晴らしく、最後に司会者 Beautiful ! の言葉が収録されているが、正にBeautiful。過去をしっとり振り返えさせられる。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★☆

   *     *     *     *     *

<Jazz>

Lynne Arriale Trio「With words unspoken」
Digital Music PROD / US / CD158 / 2016

Withwordsunspoken

Lynne Arriale(p)
Drew Gress(b)
Steve Davis(ds)

  リン・エリエイルがDMP に残したピアノトリオ盤。「The Eyes Have It」(94 年作品) に続き1年ごとにリリースされ、3部作としても人気のあるアルバムである。これがそのうちの一枚(1996年、三作目)。モンクやジミー・ロウルズ、ジョビンやコール・ポーターなどの名曲を彼女の素晴らしいエレガントにしてリリカルなセンスあふるる演奏で、名盤と言ってよい好盤。

Lynne72145ew (Tracklist)

1. Think of you
2. Woody n' You
3. With Words Unspoken *
4. Windswept *
5. The Peacocks
6. A Promse Broken *
7. Zingaro
8. I Loves You Porgy
9. Where or When

 *印 Lynne Arriale のオリジナル曲

 彼女の美しいピアノ・サウンドとエレガントな流麗さ、そして哀感等の演奏に痺れるのは、まずは彼女自身の曲M3."With Words Unspoken "、そしてM5."The Peacocks"(J.Rowles)、さらにはM8."I Loves You Porgy"(G.Gershwin)、M9."Where or When"(R.Rogers)等の曲ですね。そして叙情的なものだけで無く、その他スウィングするジャズ・プレイにもどこか気品があるんですね。このアルバムもお勧めの名盤だ。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★☆

(試聴)

    "With Words Unspoken"

*

   " Alone Together "

 

 

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2019年8月14日 (水)

[名盤検証] ミーナ・クライアル MEENA CRYLE & THE CHRIS FILLMORE BAND 「in concert -Live on Tour 」

女性ギタリストのブルース・ヴォーカル・・哀愁と熱唱と

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<Blues, Rock>

MEENA CRYLE & THE CHRIS FILLMORE BAND 「in concert -Live on Tour」
Continental Record / Holland / CBHCD2028 / 2017

Inconcert

Meena Cryle :Vocals,Rhysm Guitar
Chris Fillmore : Lead Guitar
Roland Guggenbichler : Organ
Carl Kaye : Pedal Steel Guitar
Jojo Lackner : Bass
frank Cortez : Drums

   なんとオーストリア出身の1977年生れの女性シンガー・ギタリストのミーナ・クライアルのブルース・ロック・アルバム。リード・ギタリストはクリス・フィルモアが共演しての充実演奏をバックに、ブルース、ソウル、ロックのヴォーカル・アルバムだ。
 なんとなく、時にブルースが無性に聴きたくなるのだが、元祖黒人のブルースは当然としても、白人系でもブルースをこよなく愛して演ずるミュージシャンも多い。あのエリック・クラプトンもそんな一人であり、又ここで取り上げたピーター・フランプトン、スノーウィ・ホワイト等の英国陣もなかなかそれなりのブルースを演じてくれる。

Meenabyjohanneswahlw  さてこのミーナ・クライアル(→)だが、注目は女性シンガー・ギタリストと言うところだ。ブルースの女性版はやはり注目したくなる。彼女は、アルバム・デビユーして既に20年近くになっている。最近と言っても彼女が40歳にならんとしていた2017年に、リリースされたのがこのアルバム。当初はミーナ独自の名義でのアルバムとして2001年に「twilight zone」がリリースされているが、やはりギタリストとしてクリス・フィルモアがサポートしている。そしてこのアルバムはライブ盤であるが、The Chris Fillmore Band と彼女と対等な名義でのアルバムとなっている。この形は前作「TELL ME」からで、こうしたブルースは如何にギターの味が重要かと言うことも示していることである。
  彼女はこのフィルモアとの共演で、ギター演奏はリズム・ギターに寄っているが、ここではヴォーカルに大きなウェイトをおいていて、独特のややハスキーなパンチのある熱唱の面と、時にブルース独特の哀愁のある訴えるところを巧みにこなすのである。

 

Songlist

1448998707_comp_20151128_w   ソング・リストは上のようだが、冒頭1曲目はロックで展開するが、M2."Since I Met You Baby"には堂々のブルースを展開して、彼女の歌と共に、やや後半にはフィルモアの泣きギターが訴えて、これぞブルースだと展開する。
 M3."Rather go blind"はこんどはしっとりとミーナが歌い上げ、後半は熱唱に。こうして聴いてくるとさすが暦年のブルース女子が円熟期を迎えて充実した歌唱力発揮である。
 M4.M6.はロックそのもの。
   M5."It makes Me Scream" なにせ人気曲。これは語り調の哀愁あるギター・プレイからスタートして、おもむろにミーナのブルース節が切々と迫ってくる。このアルバムでもトップ・クラスの出来。いやはやフィルモア(→)のギターに惚れ惚れしてしまう、約9分30秒の曲。
  M7."Load have Mercy"ここでもブルースを展開。
  M8."Tell Me"これが懐かしの演歌調スロー・バラード調ロック、ギターも歌い上げて久々に懐かしい気持ちになる。
 そしてM9.はロック、M10.は再びスロー・バラードととにかく変化を持たせて飽きさせない。彼女は歌が旨くて曲による歌い回しに情感が行き届いていて納得。多分これはこのステージのお別れの曲。そして以下のM11.M12はアンコールのようだ。

  いやはや久しぶりにブルース、ブルース・ロック、ロックン・ロール、泣きギター、そしてしっとりの哀愁のヴォーカル、さらにはジャニス・ジョプリンなみの熱唱と、諸々100%の満足感アルバムであった。
   
 ( Meena : Discopraphy )
2010: Try Me, Ruf Records
2012: Feel Me, Ruf Records
2013: Tell Me, Ruf Records (Meena Cryle & The Chris Fillmore Band)
2017: In Concert: Live On Tour, Continental Blue Heaven (Meena Cryle & The Chris Fillmore Band)

(評価)
□ 曲・歌・演奏 :  ★★★★★
□   録音     : ★★★★★☆

(試聴)     "It Makes Me Scream "

 

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2019年8月10日 (土)

エマ・フランク EMMA FRANK 「COME BACK」

SSWのフォーキーにしてエレガントなヴォーカル

<Jazz , Rock, Pops, Folk>

EMMA FRANK 「 COME BACK 」
JUSTIN TIME RECORDS / Canada  /  RCIP-0289 / 2019

41amlojohvl

Emma Frank (vo)
Aaron Parks (p , syn)
Tommy Crane (ds)
Zack Lober (b)
Franky Rousseau (g , syn)
Simon Millerd (tp) #6
Chi eh-Fan (vla , vn) #1, 3
Pedro Baraquinha ( g , b , perc , syn) #9

 この歌手は私の場合初物である。ちよつと巷ではそれなりの評価が出ている様子であり聴いてみたモノである。
 この作曲家・歌手のエマ・フランクEmma Frankはアメリカ生れで、カナダ・モントリオールの大学へ文学を専攻するために住んだ。そこでミュージシャンとしての道に進み、現在カナダ、アメリカでの音楽活動の道にいて、どちらかというとニューヨークが中心の活動になっているようだ。
 このアルバムはプロデュサーのフランキー・ルソーの力が大きいようだが、エマ・フランク自身も作曲家としての力を十二分に注いだものであり、又注目されるのはジャズ・ピアニトストとして今や私も関心の高いアーロン・パークスのピアノがバックに控えているところだ。この関係でのアルバム2作目となるものとか。

Emmafrank2 (Tracklist)
1. I Thought
2. Either Way *
3. Two Hours
4. Sometimes
5. Promises
6. Dream Team *
7. See You
8. Lilac *
9. Before You Go Away

*印以外はEmmaのオリジナル曲

 冒頭のM1."I Thought" は、シンガー・ソング・ライターでヴォーカリストの彼女の曲からスタート。成る程これはフォークぽい流れの中にエレガントな世界が展開し牧歌的世界というのが当たっている。彼女の歌声もソフトにして美しく包み込むような魅力がある。バックにはアーロン・パークスのピアノ・トリオに加えてViola, violin も加わっての曲作りだが、これはジャズというよりは、Folk, Pops, Rock の世界である。そしてその流れはM2.においても同様で、これがアルバム全編に及んでいるのだ。
 私はジャズの愛好者ではあるが、もともとロックの愛好者でもあり60年代から延々と続いているのだが、実はその流れからしてこの曲作りをみると、メンバーがジャズ・メンということでジャズと思われるかもしれないが、明らかにジャズというよりはPopsに近いFolkの世界であって、そのためジャズ愛好者からは異色で関心がもたれるのかもしれない。
 M3."Two Hours"は彼女自身の曲だが、支えるピアノにもまして高音の流れるような歌声、そしてハーモニー、ストリングスの流れが美しい曲。
 M5."Promises"、ここでは、ヴォーカルとピアノが対等に歌い上げるが、やはりパークスのピアノは魅力的。
 ここまで聴いてくるとM7あたりは添え物程度の曲で、M8."Lilac"になって、何か展望を感ずる世界を訴える。パークスのピアノもここでは弾んでいる。
 最後のM9."Before You Go Away" になってギターが登場してフォーク・ムードを静かに支えるも、パーカッション、シンセが参加して展望的に広がって終わる。

 確かに全編ノスタルジックで情緒豊かであり、暗くはないが、ただ明るいわけでもない。そこには歌詞の意味を十分理解してみないと簡単には評価してはいけないムードも感ずる。とにかくソフトにして美しくエレガントで、自然の中での人間の存在の価値観にも通ずるところも感じられて良いアルバムである。ただしやはりこれはジャズ分野で取り扱われているが、ジャズとは言いがたいですね、技法だけでなく世界観が違うとみる。

(評価)
□ 曲・演奏・歌 ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(試聴)    " I Thought "

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2019年8月 6日 (火)

[今知る名盤] ステヴ・ルドルフ・トリオ Steve Rudolph, Phil Haynes, Drew Gress 「day dream」

スタンダード・ナンバーを流麗にして繊細、美メロのピアノ・トリオ

<Jazz>
Steve Rudolph,Phil Haynes, Drew Gress 「day dream」
PA-CT Records / US / PAKT1014 / 2010

Daydream1

Steve Rudolph(p)
Drew Gress(b)
Phil Haynes(ds)

 先日リリースされた寺島靖国の「For Jazz Ballad Fans Only Vol.1」で知ったこのピアノ・トリオ。アルバムを仕入れて聴いてみると何とこれは名盤そのもの。改めて9年前のリリースだが、ここに取り上げることとした。
  プロデュサーは、ドラマーのピル・ハイネスPil Haynesだが、曲のアレンジは米国のピアニストのステヴ・ルドルフSteve Rudolph(↓)、そして名ベーシストのドリュー・グレスDrew Gressというピアノ・トリオである。

Screenshot201503300133 (Tracklist) 
01. Some Other Time /L.Bernstein
02. Beautiful Love / V.Young
03. Viola  / S.Mendes
04. Turn Out The Stars / B.Evans 
05. Lover Man  / Ramirez、Davis, Sherman
06. I Get Along Without You Very Well /H.Carmichael
07. Theme For Maxine / W.Shaw
08. Day Dream / Strayhorn, Ellington
09. A Weaver of Dreams / V.Young

 "スタンダード・ナンバーで構成された甘くてほろ苦い流麗なピアノ・トリオ・サウンド"とのインフォメーションのあるこのアルバム。見事にその線をいっている。特にステヴ・ルドルフのピアノは華麗にして繊細、流麗な流れは出色である。
  そしてM5."Laver Man"の11分を超える曲にみるように、ピアノの余韻のある響きを持ったメロディーが流れ、プロデューサーを務めるピル・ハイネスのシンバルが繊細に響き、トリュー・グレスのベースが、これまたピアノに負けない繊細さと重厚感の味付けがあって、三者によりピアノ・トリオの王道を演じている。
 Pict0449 M1."Some Other Time"はBernsteinの曲で、美しく繊細なピアノの音と流れるようなメロディでスタート。ベースの響き、シンバルの響きが共にこれ又美しく、このアルバムの期待度が高まる。
 M4."Turn Out The Stars" B.Evansの曲も登場する。彼らの演奏も物思いにふける世界を描く。
 M6."I Get Along Without You Very Well "もゆったりとした流れが深遠だ。
 M7."Theme For Maxine"のベースのゆったりした語り口と早い流麗なピアノ流れが対照的で、次第にドラムスのリズムに乗ってゆくところが聴き所。
   M9."A Weaver of Dreams"は、このアルバムの中でも3者が楽しそうに演じている姿が目に見えるようなリズムカルな曲。 

 とにかくベテランの酸いも甘いも経験してきた人生からの曲の解釈は、見事にここに結実している。
 ステヴ・ルドルフはプロ・ミュージシャン50年以上となるベテラン・ピアノ・プレイヤーだが、意外に日本で多くは聴かれ語られていない。寺島靖国が取り上げたことにより私は初めてアルバムを鑑賞できた。彼は2000年のセブンスプリングスジャズフェスティバルでのJazziz Magazineピアノコンクールの優勝者として、彼は2つのJazz Composition Fellowshipsを受賞しているとか。 エバンスビルで生まれ、インディアナ州ブーンビル近郊で育ち、インディアナポリスのバトラー大学で奨学金を受けてトランペットと作曲を学んだ。彼は22歳で彼の主な楽器をピアノに切り替え、1977年にトミードーシーオーケストラと共演するようになったという経歴だ。彼の活動は範囲は広く、芸術と地域奉仕への貢献に対して2002年のハリスバーグ芸術賞というものも受賞している。

 このアルバムのさりげないトリオ演奏の中に、繊細な美と流麗なジャズ流れを十分に昇華したプレイに引き込まれる。名盤と言っていいと思う。もう一枚のアルバム「Everything I Love」(RLCD41049/2010=1995年盤の再発)も手にすることが出来たので、又近々取り上げたい。

(評価)
□ 選曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(試聴)   "Some Other Time"

 

 

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2019年8月 2日 (金)

スーザン・トボックマン Susan Tobocman のニュー・アルバム「LOVE FROM DETROIT」

独特の発声と歌い回しで・・・・オールマイティーに

<Jazz>

SUSAN TOBOCMAN 「LOVE FROM DETROIT」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1079 / 2019

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Susan Tobocman スーザン・トボックマン (vocal except 12)
Cliff Monear クリフ・モネア (piano)
Paul Keller ポール・ケラー (bass)
David Taylor デヴィッド・テイラー (drums)

Recorded Live at The Steinway Gallery on Nov. 7th, 2018

  過去に2アルバムが手元にあるニューヨークやデトロイトで活躍する女性歌手のスーザン・トボックマンの、5年ぶりのリリースとなるニュー・アルバム。
 ここで彼女を最初に取り上げたのは2013年に寺島レコードからアルバム「WATERCOLOR DREAM」がリリースされたときだった。彼女のヴォーカルは、所謂都会派ジャズ・クラブにぴったりスタイルで評判だった。
 過去の2アルバムは、2013年「WATERCOLOR DREAM」(TYR-1036)、翌年「Live in Detroit」(TYR-1040)がリリースされていて、今回はその2作目の続編といってもよいものである。 
 前作に引き続いてバックはクリフ・モネア(p)率いるピアノ・トリオだ。今回もデトロイト(場所も前作と同じスタインウェイ・ギャラリー)でのライヴ録音盤。

Susant3 (Tracklist)

1. Let's Face The Music And Dance (Irving Berlin)
2. The Way To You (Susan Tobocman)
3. I Should Care (Paul Weston, Alex Stordahl / Sammy Cahn)
4. Jim (Caesar Petrillo, Milton Samuels / Nelson Shawn)
5. I Could Have Danced All Night (Frederick Loewe / Alan Jay Lerner)
6. Too Late Now (Burton Lane / Alan Jay Lerner)
7. Fragile (Sting)
8. Frim Fram Sauce (Joe Ricardel / Redd Evans)
9. Every Time We Say Goodbye (Cole Porter)
10. Isn't It A Pity? (George Gershwin / Ira Gershwin)
11. I Wish I Knew (Harry Warren / Mack Gordon)
12. Touch And Go (Susan Tobocman) (instrumental)
13. I'll Be Seeing You (Sammy Fain / Irving Kahal)

 収録以上13曲。ますますジャズ・クラブ・ムードたっぷりの彼女のヴォーカルは円熟味を増しての感がある。ただし、ライブ録音の技術的問題の為かもしれないが、声量は以前より落ちているような印象がする。

 軽快にM1."Let's Face The Music And Dance"がスタートする。そうそうこの歌い方は彼女独特の世界だ。しぶいしゃがれ声と彼女独特のアクセント、それは彼女のオリジナル曲M2."The Way To You"のようにじっくり歌い上げる曲だとなおさら強調される。これは声の出し方に一息溜めて出す手法で実感は深い。ライナーの後藤誠一はこの技法に旨さの深みを強調していたが、私は少々気になる。これは1stアルバムでも見られたが、このアルバムに来てなお強調されている。
 M4."Jim"となると、クリフ・モネアのピアノ・トリオの味付けが如何に生きているのが解る。
 M5."踊り明かそうI Could Have Danced All Night "誰もが聴き慣れたこの曲の軽快な展開に、やはりこのトリオの生きの良い演奏と彼女の気合いの入ったヴォーカルが会場を喜ばせる。そして一転してじっくり歌い込みのM6."Too Late Now "、しかしこの曲途中からの転調してのスウィング・リズムを混ぜての旨い編曲が見事。
 M7." Fragile "は、スティングの代表曲。これも結構トボックマン節に化けている。こうして聴いているとやっぱり彼女の歌は旨いのが実感出来る。このアルバムでも出色の出来だが・・・・。
 M8."Frim Fram Sauce"は陽気そのもの。コール・ポーターのM9."Every Time We Say Goodbye"の歌い込みは情緒たっぷり。M11." I Wish I Knew"の情感はやっぱり並ではない。こうゆうバラッドはお手の物なんでしょうね。
   M12."Touch And Go"トボックマンのオリジナルでしかもインスト曲。トリオの溌剌とした演奏。   M13. "I'll Be Seeing You "最後にふさわしいお別れの曲。ここでも情感が溢れている。

Sttrio

 とにかく彼女の全てを感じ取れるライブ録音盤だ。ドスの効かした低音、しっとりと聴かせる説得力、パンチの聴いた熱唱と、スカっとした晴れやかさと、歌い込み・テクニック・情感全てトップクラス、ただ後は聴く者の好みにあるかどうかでしょうね。先に触れた彼女の独特の節回しとアクセント、これはハートフルと言えばそうだけど、私は若干というかかなり抵抗がある。アルバム全編これで攻められると、途中で参ったと降参してしまう。最後の挨拶なんかを聞くと良い声をしているので、このままで素直に歌っているのも織り込んだらどうなんでしょうかね、それは無理な相談か。

(評価)
□ 選曲・歌・演奏 ★★★★☆
□ 録音      ★★★★☆

(試聴)

 

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2019年7月29日 (月)

寺島靖国プレゼンツ 「For Jazz Ballad Fans Only vol.1」

この新シリーズはジャズ・バラッドに焦点を当てて・・・

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Ballad Fans Only vol.1」
Terashima Records / JPN / TYR-1082 / 2019

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 寺島靖国のシリーズものも十数年前からの「Jazz Bar」から始まって、まさにここに来て増えている最中だが、又しても新シリーズのスタートだ。とにかく"難解にして疲れるジャズはもう聴かない"と宣言した彼だが、あのジャズ・オーディオ喫茶を閉じてから怒濤の寺島レコードの新譜をリリースしている。その中で、とにかくジャズ・バラードを聴こうと、又しても新企画に着手、出来上がったのがこのシリーズということになる。
 コンピレーション・アルバムですから、まあとにかく面倒なことは抜きにして聴くことにしましょう。中身はトリオ、カルテット、女性ヴォーカルなど広くカヴァーしている。

(Tracklist)

1. My Foolish Heart/Harry Allen Quintet
2. Estate/The Lynne Arriale Trio
3. Polka Dots and Moonbeams/Claire Martin & Jim Mullen
4. I'll Be Seeing You/The Fred Hersch Trio
5. Deep In A Dream/Don Lanphere
6. Smile/Melissa Stylianou
7. Trane's Mood/Andreas Mayerhofer Trio
8. California Dreamin'/Tomomi Fukui Mt. Nonet
9. I Fall In Love Too Easily/Emil Viklicky Trio
10. 'Round Midnight/Miriam Bayle
11. Petite Fleur/Jan Harbeck Quartet
12. I Get Along Without You Very Well/Steve Rudolph - Drew Gress - Phil Haynes

  ざっと見て、この中で私の手持ちのアルバムは3枚であった。収録全12曲であるから、そのうち1/4は持っていることになる。これがもっと多いとこのシリーズの意味は半減してしまうので、さすが寺島靖国、うまくポピュラーなアルバム以外からも上手に盛り込んでいる。

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 M1."My Foolish Heart" (上左)これが驚きのライブ録音、Harry Allenのテナー・サックス・バラッド。とにかくスタート時右のスピーカーからしか音が出ない。オヤオーディオ装置がおかしくなったのかと思いきや、バリバリ音の混じったテナーが次第に左によって中央に来る。音質と演奏はかなり迫力がある。これは面白そうだと思わせるに十分のスタート。
 M2."Eatate"、(上左から2番目)このLynne Arrale Trioの演奏がいいんですね。と・・聴いていると私の持っているアルバム「Live at Montreux」からだった。アリエールのピアノ演奏の強弱・流れは一級品。このアルバムでも一・二を争う出来。
 M3."Polka Dots and Moonbeams"の円熟のクレア・マーチンのヴォーカル。M4."I'll Be Seeing You"ハーシュの美しいピアノに降参。M5."Deep In A Dream" 美しいピアノ、ソプラノ・サックスの歌。M6."Smile" (上左から3番目)メリーサのソフトな美しいヴォーカル 。
 M7."Trane's Mood" は、2015年に気に入ったアルバム「DEDICATIONS」のピアニスト・マイヤーホファーの名オリジナル曲・トリオ名演。
   M9."I Fall In Love Too Easily"、(上右)ピアノ・トリオの本質をゆく名演、ビクリッキーのピアノに注目。
 M10."'Round Midnight" やや投げやり風の味なヴォーカルとミュートを効かせたトランペットの印象的な演奏。
 M11."Petite Fleur" 極めて標準的テナーに満足。
 M12."I Get Along Without You Very Well" これぞ本格的ピアノ・トリオのトリオとしての醍醐味。 

 もともとバラード好きな私ですので、このアルバムの出現は嬉しいですね。寺島靖国の選曲はもともと若干癖があって、それが結構楽しめるところが魅力。そんなところからも又知らなかったミュージシャンにお目にかかれて楽しみました。

(評価)
□ 選曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(試聴)

Lynne Arriale Trio / ESTATE

 


  Melissa Stylianou / SMILE

 

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2019年7月25日 (木)

エルELLEのファースト・アルバム「SO TENDERLY」

美しいガラティのピアノをバックにウィスパー・ヴォイスで

<Jazz>

ELLE 「SO TENDERLY」
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1081 / 2019

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Elle (vocal)
Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Lucrezio De Seta (drums)

Ag1   初お目見えのエルElle本人が期待していたとおりの、日本盤としてはビックリのデビュー・アルバムですね。これは寺島レコードとイタリアのピアニストのアレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati(→)とのプロジェクト、その結果の産物なんですね。ガラティはジャズ畑での私の最も愛するピアニストであり、その彼に見いだされたというエルであるが、彼女がイタリアのジャズ・クラブで歌っているのを見つけたようだ。
 そんな結果生まれたアルバムであるので、ガラティの優しい美旋律の生きたピアノ・トリオの演奏で、彼女のヴォーカルがしっとりと聴ける。それはまあウィスパー・ヴォイスという世界ですね。寺島靖国もお気に入りとか・・・そうなれば聴かねばならない一枚となってます。

(Tracklist)

1. How Insensitive
2. Tenderly
3. Time After Time
4. These Foolish Things (Remind Me Of You)
5. Moon River
6. The Nearness Of You
7. Body And Soul
8. Over The Rainbow
9. I Wish You Love

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 やはり日本向け仕上げか、ポピュラーなスタンダード曲を中心に収録されている。
  そして成る程M1."How Insensive"での冒頭からソフトにしてマイルド、やや物憂いエルのウィスパー・ヴォイスが迫ってくる。続くM2."Tenderly"でもその流れは続き、中盤にガラティのソロに近いピアノ、そしてGuido Zornのベースが聴かれ、成る程ガラティの優しく美しくといった演奏もテーマになっていることが解る。
 とにかくエルはもともとはオペラ歌手も務めたとはいうが、極力抑えた発声で夜のジャズ・ムードを盛り上げている。
   しかし、その点はアルバム作りにも有能なガラティのこと、M3.,M4ではメディアム・テンポ曲を配して、そして再びM5."Moon River"、M6."The Nearness Of You"はスロー・テンポに仕上げている。そして彼女のややハスキーで語りかけるような歌声が相変わらず続く。それならむしろM3.,M4.ではもう少し明るく歌い上げたほうがアクセントがあって良かったのではとも思ったところである。まあ私にしてみれば、肩の力を抜いたガラティの美しい旋律のピアノを聴けるのであまり文句はないのだが、とくにそれはM6.M8."Over The Rainbow"の中盤にも顔を出して、しっとりとした中に美しさがあるピアノは出色である。まあこれが目当てでこのアルバムを手に入れているというところもあって、取りあえず満足のアルバムであった。

Trentinoinjazz

 エルに関しての情報は少ないのだが、ボサノバ曲を自作自演していたふしもあり、かなりの実力派か。年齢も30歳代 ?。又こうして聴いていると彼女の押さえられたややハスキーなウィスパリング型の声はむしろ作られたもので、かなり透明感のある声を持っている様子も窺える。そしてかなりチャーミングな面も持っていそうだ。又これからのガラっと変わった発展もありそうな予感がする。

(評価)

□ 選曲・歌・演奏  ★★★★☆
□ 録音       ★★★★☆

( 試聴 目下、この関係の映像等は見当たらないので・・・ちょっとお預け)

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2019年7月20日 (土)

スノウィー・ホワイトのニュー・アルバム Snowy White and The White Flames 「THE SITUATION」

枯れた味が魅力のロックとブルース

<Rock, Blues>

SNOWY WHITE AND THE WHITE FLAMES 「THE SITUATION」
Soulfood / IMPORT / SWWF2019  / 2019

71r3c8ygfdlw_20190718140001
 
SNOWY WHITE & THE WHITE FLAMES
Snowy White : Guitor & Vocals
Walter Latupeirissa : Bass & Vocals
Max Meddleton : Keyboards & Percussion
Juan Van Emmerioot : Drums & Percussion
Kuma Harada : Bass
etc.
  
 スノーウィー・ホワイトの"THE WHITE FLAMES"バンドのアルバムだ。このバンドの前作は久々に一昨年「Reunited...」(2017)がリリースされた。それはスタジオ・ニュー・アルバムとして2011年の「Realistics」以来で久しぶりであった。バンド名は彼の1983年の初のアルバム・デビューの「White Flames」の名前をつけている。そしてメンバーも変わらずに今回それに続いて順調にお目見えした訳である。
 実は私は、彼らの総集編のような映像とCDのライブを納めた「Live at Rockpalast」(2014年)がリリースされて、これでこのバンドは一応納めたのかと思ったのだが、こうして2017年再結成アルバム、続いてこの2019年のニュー・アルバムと順調にアルバムがお目見えすることは、何につけても結構なことだ。
 一方つい一昨年彼は個人名義でアルバム「RELEASED」(2017)をもリリースしていて、これは彼としては例外的多作である。それはロジャー・ウォーターズとの長い「世界THE WALLツアー」などを終えてからの、経済的余裕と時間の確保と両方が実ってのアルバム制作だったのだろう。

 先日ここで英国ロックからのブルース・ギタリストPeter Frampton を取り上げたとなると、私はこのスノーウィ・ホワイトがどうしても気になる。彼は、主としてこの"The White Flames"と"The Snowy White Blues Project"の2つのバンドで、ロックからブルースを展開していて、なにせ極めて紳士プレイヤーで派手な動きがない。しっかり注意していないとニュー・アルバムにも気がつかずにいることになってしまう。もう彼もいい歳になって枯れた味が滲んできた。実はそれを聴きたいのである。
 これは完全にアルバム制作のスタジオ録音盤。このバンドの11作目か。

Snowy_white1w (Tracklist)

1.The Situation
2.This Feeling
3.L.A. Skip
4.Can't Seem To Do Much About It
5.Crazy Situation Blues
6.Blues In My Reflection
7.Why Do I Still Have The Blues?
8.You Can't Take It With You
9.Migration
10.The Lying Game
11.Hard Blu
12.I Can't Imagine

  とにかく前編スノーウィ・ホワイトらしく優しいムードに包まれている。このバンドのメンバーも、もう結構いい歳になっいるので、荒々しさはない。日本人で英国で活躍してきたベーシストのKuma Haradaも名を連ねていて、これも私にとっては久しぶりだ。
 やはり主体はブルースだが、全体的にしっとりとしたムードだ。相変わらずのホワイトのはヴォーカルは、歌というよりは語っているといったニュアンスである。

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(若き日のTHE WHITE FLAMES ↑)

 タイトル曲のM1."Situation"はパーカッションが響いて、珍しく軽快なラテン・ロック調。
   M2."This Feeling"は、今度はホワイトのシンセが、そしてギターが静かに神妙に流れるちょっと物思いに誘う曲。
 M5."Crazy Situation Blues" ここに来てブルースが全開。この曲は非常にゆったりとした静かなブルース。ホワイトの独特のヴォーカル、そしてギターも美しく流れる。
 M7."Why Do I Still Have The Blues" は、なんと8分以上の長曲仕上げ。静かな美しいゆったりしたギターでスタートして変調しての後半のロックとしての盛り上がりをみせるなど聴き応え十分。
   M9."Migration"は、珍しくキーボードも加わってヴォーカルなしのインスト曲。

 全体に聴きやすく、ホワイトの美しいギターが聴けるアルバム。このバンドとしては、やはり年齢的充実感といったところだろうか。前作に続いて初期のメンバーが再結集して人生を描いている風情を感じたところだ。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★☆ 
□ 録音       : ★★★★☆

(試聴)  "Crazy Situation Blues"

 

 

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2019年7月15日 (月)

カラブリア・フォーティCalabria Foti のニュー・アルバム 「prelude to a kiss」

バラードをロマンティックに・・・抵抗感のない聴きやすさ

<Jazz>

CALABRIA FOTI「prelude to a kiss」
MOCO RECORDS / IMPORT / KKJ139 / 2019

Preludetoakiss

Calabria Foti (vocal, violin solos Track 1,10) with Strings Orchestra
Roger Kellaway (piano)
Trey Henry (bass)
Peter Erskin (drums)
Larry Koons (guitar Tracks 2,4,10),
Bob McChesney (trombone Tracks 1,5,7),
George Doering (guitar Track 6),
Luis Conte (percussion Track 2, 6),
John Pizzarelli (vocal,guitar Track10)

  ちょっとヨーロッパ的雰囲気のある米国(ニューヨーク)のカラブリア・フォーティの2年ぶりのニュー・アルバム登場。"魅惑のシルキー・ヴォイス"という看板の彼女、ジャケに見られる容貌は、過去のアルバムを含めて美人である。
 今回はロジャー・ケラウェイ(p)、ピーター・アースキン(ds)、トレイ・ヘンリー(bass)のピアノ・トリオとストリングス・オーケストラをバックにヴォーカルをしっとり聴かせ、2曲では自身の得意技ヴァイオリンも演ずる内容となっている。そして更に曲により、プロデューサーであり夫でもあるボフ・マックチェスニーのトロンボーンやゲストミュージシャンのギターなどが入る。
  彼女が我々の前に登場したのはもうずいぶん前になる。それはアルバム「A Lovely Way To Spend An Evening 恋に過ごせし宵」で2007年である。そしてこのアルバムは、それから10年経っての前作「In The Still of the Night」に続いてのおそらく第3作目だ。

Cf1tr (Tracklist)

1. Prelude To A Kiss 6:34
2. I Had To Fall In Love With You 4:37
3. On The Street Where You Live 2:26
4. Waltz For Debby 5:13
5. When I Look In Your Eyes 7:04
6. Goodbye 3:31
7. The Man With The Horn 5:48
8. Backyard Medley 3:59
9. The Folks Who Live On The Hill 6:34
10. It's The Mood That I'm In 4:27
11. I'm Home 5:21

 

 これはまさにラブ・ソング集ですね。スタート曲 M1."Prelude To A Kiss"は、ストリングス・オーケストラの効果も抜群で、そこに彼女のヴァイオリンが入り、Duke Ellintonのどちらかというと難解な曲をムードたっぷりにジャズというところを超えての、かってのダイアナ・クラールのアルバムに似た曲づくり、しかも旦那様のBob McChesney のトロンボーンも入って、かなり健闘してのバラード曲。まあこれも一手法なんでしょうね、決して悪くはない、むしろ納得仕上げ。
 なにせ M4."Waltz For Debby" は、Bill Evans ですね。こうゆう曲を歌おうとするのはやはり、ジャズ・マンの亭主の影響でしょう。どうしたって女性ヴォーカルものとしては聴いてみたくなる。やはりこの曲、ピアノのバックを重要視していて、そこに彼女はやっぱりバラード調で歌い上げる。中盤にギター・ソロを挿入しての演奏もかなり重要視しているところは印象も良い。
 M5."When I Look In Your Eyes"では、彼女の低音を効かしたヴォーカルで、単なるセクシー・アッピールの仕上げでなく、ジャズを歌い込もうというところがあってストリングスをバックにして好印象。ここでもトロンボーンのソロが歌い上げるところもあって、こうしたポピュラーなスタンダード曲では独自のジャズを深めようというところも感じられる。 
 M6."Goodbye"は、彼女の曲で、意外にこのアルバムでは軽快な曲。どっかで聴いたような気のするメロディーだが、なかなか面白い。
 M7."The Man With The Horn"もご亭主のトロンボーンが活躍します。これが結構プロ的曲選択で、女性ヴォーカル主役のアルバムではおそらくこうした曲の取り上げ方はしないだろうと思われ、このアルバムに風格をつけている。
 何故か、こうして聴いているとM9."The Folks Who Love On The Hill" でも聴かれるストリングスの入ったゆったりした仕上げが、このアルバムの主役曲に聞こえてくる。
   M10."It's The Mood That I'm In"はやはり彼女のヴァイオリン・ソロが入り、デュエット・ヴォーカルも面白く注目曲。

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 結論的には、ご亭主のジャズ演奏センスが功を奏した女性ヴォーカル・アルバムで、彼女の歌や声も癖がなく誰もが抵抗なく聴かれる曲づくりアルバムと言うところだった。
 ニューヨークで生まれ、父親はトロンボーン奏者、母親はピアニストという音楽一家の中で育ったカラブリア・フォーテイ、シンガーであると同時に10 代からヴァイオリンニストとしても頑張ってきたようだ。2曲で彼女のヴァイオリンソロを聴くことができるが、これからどのような曲づくりに向かうのか、意外にこのアルバムの売れ行きが方向性を決めるような気がする。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌 :  ★★★★☆
□ 録音               :  ★★★★☆

(試聴)

 

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2019年7月 8日 (月)

ステファン・オリヴァのニュー・アルバム Stephan Oliva「Orbit」

久々のオリジナル曲によるインテリジェンス溢るるピアノ・トリオ盤


<Jazz>
Stephan Oliva, Sebastien Boisseau, Tom Rainey 「Orbit」
YOLK MUSIC / j2075 / 2019

Orbit

Stephan Oliva (p)
Sebastien Boisseau (b)
Tom Rainey (ds)

Recorded and mixed by Gerard De Haro
Mastering by Nicolas Baillard at Studio La Buissonne in 2018

 フランスのピアニスト、ステファン・オリヴァの久しぶりのピアノ・トリオ・アルバム。マイナー・レーベルからのリリースで取りあえず手に入れた。まずは注目点はアルバム・ジャケにもトリオ3人の名前が列記されていて、いわゆるピアニストの為のトリオというスタイルでなく、三者が三位一体型のトリオでの演奏型。そうは言ってもステファン・オリヴァが全11曲7曲を、そしてベースのセバスチャン・ボイソウが3曲を提供している。まあ彼らがジャズを極めんとする一つのパターンであるオリジナル曲アルバムだ。
  アルバム・タイトル「Orbit」の意味は、所謂人工衛星などの"周回軌道"のことのようだが、"人生の流れる環境"などの意味もあるようで、そんなところからも哲学的世界を感ずる。

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(Tracklist)

1. Split Screen (Stephan Oliva)
2. Wavin (Sébastien Boisseau)
3. Gene Tierney (Stephan Oliva)
4. Processione (Stephan Oliva)
5. Le Tourniquet (Sébastien Boisseau)
6. Cercles (Stephan Oliva)
7. Inflammable (Marc Ducret)
8. Polar Blanc (Stephan Oliva)
9. Around Ornette (Stephan Oliva)
10. Spirales (Stephan Oliva)
11. Lonyay Utça (Sébastien Boisseau)

  このアルバムは、所謂オーソドックスなピアノ・トリオ・ジャズを期待してはいけない。"フランスらしい気品に溢れ、冷気漂うインテレクチュアルな美的ピアノ・トリオ作品"と評されているが、まさにそんな作品だ。そしてこのトリオの三位一体型の演奏も群を抜いている。これぞこの3人が互いに目指すものを融合させたといったパターンは随所に感じられる。
 とにかく所謂叙情的優しさ美しさというものではない。しかしその気品あるインテリジェンスの高く、フィロソフィカルな世界は、ある意味での前衛性も加味して響き渡る。いっやーーなかなかスパイスの効いた刺激と深遠さとで、あっという間にアルバム一枚を聴いてしまう。

 とにかく、スタートのM1."Spilit Screen"から三者の絶妙なスリリングな連携に驚きながらも、この先の展開に不安をかき立てられながら聴くことになるが・・・。M2."Wavin"の静寂にして深遠な世界によって、なる程このアルバムの思索的世界を知らしめられる。
 中盤は、M7."Inframmable"にみるように、ピアノの高音と低音で深遠な世界にリズムを刻み、一変して途中から変調し三者のメロディーというよりはリズムの妙が前衛的にインタープレイし展開する曲だ。そしてそのながれからM8."Around Ornette"のスリリングな演奏と深遠な世界の三者の交錯への世界と流れる。
 M9."Spirales"はベースのソロが低音で響き、そしてピアノ、ドラムスが、独自の世界を作りながら次第に合流する流れに入ってゆく。
 こうしたトリオ展開は、次世代ピアノ・トリオの一角を築き上げているという印象である。
   そして終曲M11."Lonyay Utca"は、静かな永遠の世界に導きつつアルバムを納める。

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 このアルバムは一曲一曲よりは、全曲をトータルに構成されたアヴァンギャルド・トリオ作品として聴くと良い。それはこのトリオ三人のインテリジェントにしてアグレッシブな姿勢によって作り上げられたものとして知ることが出来る。そこにポイントをもって聴くと、ちょっとした多くのピアノ・トリオ作品の中で、この作品のある意味での重要性に接することが出来る。しかしそれにつけてもステファン・オリヴァ(↑)の繊細なプレイとフィロソフィカルな世界は凄い。

(評価)
□ 曲・演奏 :  ★★★★★☆
□   録音   :  ★★★★★☆

(視聴)

 

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