音楽

2024年2月26日 (月)

アンドレア・モティス Andrea Motis 「Febrero」

中南米曲を中心にアンサンブル演奏をバックに歌うアルバム

<Jazz>

Andrea Motis 「Febrero」
AUTO EDITED / Import / JJAMCD00302 / 2024

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Andrea Motis(vocals & trumpet)
Camerata Papageno(young Chilean classical chamber orchestra)
Christoph Mallinger(violin & mandolin)
Federico Dannemann(guitar & direction)

20190423fbw   スペインはバルセロナ出身の人気歌手でトランペッターのアンドレア・モティス(1995年生まれ、→)の2022年の『Loop Holes』(JJAMLP00101)及び『Colors & Shadows』(kkJ187)に続くニューアルバムということで、さっそく聴いてみた。  チリのクラシック・アンサンブルであるカメラータ・パパゲーノと共演だ。レパートリーは、アンドレア・モティスが、ギタリストでアレンジャーのフェデリコ・ダンネマンとともに選曲。チリ、ペルー、アルゼンチンに由来する中南米の音楽、及び、ブロードウェイのナンバーを、親交のあるクリストフ・マリンガー(vln,mandrin)、フェデリコ・ダンネマン(g)のサポートを得て完成させたと。彼女のパートナーであるオーストリアのヴァイオリニスト、クリストフ・マリンガーとパパゲーノ文化財団とのつながりから生まれたという経過の様だ。

 モティスの言うには「繊細なアレンジと録音の響きを通して録音された曲は、チリでの夏の日々に私たちみんなが一緒に過ごした穏やかさと深い喜びの感覚を思い出させてくれる」と、いうことのようだ。そして彼女は具体的には、「ガーシュウィン兄弟の2つの作品、ピクシングイーニャとジョビンの作曲、2つのメキシコのボレロ、そしてオラシオ・サリナスによるインティ・イリマニのヴァージョンを収録したこのアルバムは、作者、演奏者、未来のリスナーなど、さまざまな世代の時代を超越した瞬間の記録である」と説明している。

(Tracklist)

1.La Pajita (Horacio Salinas / Gabriel Mistral)
2.The Man I Love (George & Ira Gershwin)
3.Carinhoso (Alfredo da Rocha Viana Filho Pixinguinha / João de Barro Braguinha)
4.Noche de ronda (George and Ira Gershwin)
5.Garota de Ipanema (Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Morales)
6.Someone to Watch Over Me (Agustín Lara)
7.Sensemayá (Horacio Salinas / Nicolàs Guillén)
8.Perfidia (Alberto Domìnguez Borrás)
9.El Carnaval (Horacio Salinas)

 ちょっと心配したのは、フェデリコ・ダンネマン指揮のカメラータ・パパゲーノの音世界だ。このあたりは私の好みの問題で、おそらくソロ楽器などでしっとり落ち着いた世界というのとは全く別物であろうと踏んでいたが、まさにその通り、ストリングスの美しさもあるが、どちらかというと中南米の独特なホットな世界だ。彼女の前作『Colors & Shadows』もビック・バンドがバックであって、ヴォーカルを聴くには若干期待に反していたのだが・・・・。
 今回のこのアルバムも、アンサンブル主体のカメラータの音とジャズやラテンアメリカのリズムをミックスした作品として聴くのがいいといったところ。彼女のトランペットも勿論入ってくるが、その演奏を聴くのか、ヴォーカルを聴くのか、その役割も気にしているのだが、どうも私の期待とは別の世界に仕上がっている。

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M1."La Pajita " チリでは子供から大人まで広く知られた曲とか、マンドリンと共に相変わらずのちょっと可愛らしさのある歌声で優しく歌って聴かせる、このあたりは期待の世界。
M2."The Man I Love" ストリングスから始まって、更に美しくしっとりと歌いあげる
ここまでは、トランペットの登場もなくファンタジーな物語の始まりのムード。
M3."Carinhoso" ブラジルの愛の有名曲。モティスの優しい歌声。どうもバックのストリングスが私のラテン印象に合わない。
M4."Noche de ronda" これも古いメキシコの歌、彼女の巻き舌の歌は初めて聴いた感じ。
M5."Garota de Ipanema" ここでは、リズムカルな誰もが知っている曲の登場、やっぱりぐっと落ち着いた歌だ。彼女のトランペットもようやく歌い上げる。最後に変わった編曲。
M6."Someone to Watch Over Me" ガーシュウィンの昔の曲、フランク・シナトラとかエラ・フィッツジェラルドの歌、ちょっと時代ものを感ずる歌だが聴き惚れるところもある。
M7."Sensemayá" これは快調のテンポの難しい曲、メキシコの曲でこのカラメータのような多楽器編成向きの曲の様だ。モティスのトランペツトも生き生きと。
M8."Perfidia" メキシコのアルベルト・ドミンゲスの曲。ちょっと変わった編曲でスタート。テンポは快調だが・・・・とにかく超有名曲を楽しくといつたところか。
M9."El Carnaval"民族ダンス・ミュージツクの仕上げ。モティスのトランペットも加わってのお祭り的世界。

 このアルバムは、勿論モティスのヴォーカルものであるが、どうもカラメータ・パパゲーノというアンサンブル演奏集団(チリの非営利団体で、クリスチャン・ボエシュが設立・会長を務めており、この財団は、地方の78の学校に通う6歳から10歳までの約2,000人の子どもたちの才能を音楽を通じて育成することを目指しているもの) の明るい演奏に大きなウエイトがあって、それ自身が私の好むジャズとしての感覚とのズレでどうも手放しに楽しめない。このようなところは聴く者の好みであるから、喝采を浴びせる人もいるのかもしれないが。
 私としてはギター、ピアノなどとのデュオぐらいのほうがかえって彼女の歌を楽しめるような気がするのだ。そんなところで今回も期待とは別世界であった。しかし、トランペッターとしての期待度もあろうから、なかなか難しい、ペットといえどもチェット・ベイカーのような世界も有るし、まだまだ彼女にはヴォーカルの質が好きなので期待はしている。従って演奏と歌をどのように聴かせてゆくかは今後の課題だろう。いずれにしても私としては次回は小編成ものに期待したいところだ。

(評価)

□ 編曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       85/100

(視聴)

"Someone to watch over me "

*
"El Carnaval"

 

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2024年2月21日 (水)

ユン・サン・ナ Youn Sun Nah『ELLES』

唯では終わらせないユンの世界が詰まっている

<Jazz>

Youn Sun Nah『ELLES』
VM Germany / Import / 5419781215 / 2024

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Youn Sun Nah: vocal, kalimba, music box
Jon Cowherd: piano, fender Rhodes, wurlitzer

Lachanteusedejazzyounsunnahw   韓国出身、現在はフランスを拠点に活躍するジャズ・シンガー、YOUN SUN NAH(ユン・サン・ナ)の4年ぶりの最新アルバム。これは彼女自身が好み、インスピレーションを受けてきたという女性アーティストの楽曲を取り上げて、あの彼女の独特のヴォーカルと、アメリカ人のジャズ・ポップス、ロックと広い分野で活躍中のジョン・カウハードJon Cowherd(ピアノやフンンダー等)とのデュオによって作り上げた作品。

 彼女は1994年からACT JAZZレーベルで多くの作品をリリースし、2014年のソチ冬季オリンピックの閉会式には、朝鮮民謡「アリラン」を歌い上げ絶賛を浴びた。そしてなんと2019年にはフランス文化省・芸術文化勲章を受章している。

 又2019年にワーナーミュージック・グループのArts Musicへと移籍し、そこからの第1作となる『IMMERSION』(ATSM5873132)をリリースしたが、試みの斬新さもあって評価は高い作品だった。そして4年の経過でここに新アルバムを完成させた。アルバム・タイトルは"彼女たち“ということのようだが、ビヨークからサラ・ヴォーン、グレース・ジョーンズやロバータ・フラック、エディット・ピアフなどなど、時代もジャンルも異なる女性アーティストたちの名曲を取り上げ歌い込んでいる。

(Tracklist)
1.Feeling Good
2.Cocoon
3.I've Seen That Face Before (Libertango)
4.My Funny Valentine
5.White Rabbit
6.Sometimes I Feel Like A Motherless Child
7.Baltimore Oriole
8.Coisas Da Terra
9.La Foule
10.Killing Me Softly With His Song

 彼女のヴォーカルのサウンドスケープは音域の広さを駆使した独特の解釈・編曲に基づいた異色の世界だが、その為か不思議に引き付ける魅力がある。一般的なジャズ・ヴォーカルとは一線を画していて、特に前作『IMMERSION』の出来が新しさを追求する姿勢に満ちた評価を獲得している為、今作は?と思ったところもあるが、多くはかなり標準的仕上げにもってゆき、時として2オクターブも上げる高音部とかアカペラ・スキャット手法などとやはりそれなりに尋常でない気配も感じさせる。それをカウハード(↓)の曲の表現が見事でこのデュオは成功していると感じた。

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M1."Feeling Good"はニーナ・シナモンに迫ってのものだが、常識的な聴きやすい歌に仕上げている。
M3."I've Seen That Face Before "は、異様なスタートだが、歌は極めて軽快なタンゴの世界。しかし後半の高音の世界は聴く方がひびる。
M4."My Funny Valentine" そしてM10."Killing Me Softly With His Song"のポピュラーな原曲以上に、彼女の世界のしっとりムードで訴えてくる、聴き応え十分。
M5."White Rabbit" こうしたロックも、ユン・サン・ナ節で落ち着くところが不思議。
M6."Sometimes I Feel Like A Motherless Child" こうしたソウルフルな世界もなかなか心を込めての歌が見事。
M7."Baltimore Oriole" クリス・コナーの味もそこなわず、彼女の歌に。
M8."Coisas Da Terra" スキャットの凄い処を聴かせる。芸術性は高そうだが、私には向かない。
M9."La Foule" シャンソンの大人っぽさもこなしきっている。

 究極はレベルの高さを感ずるヴォーカル・アルバムだ。バラード好きの私にとっても納得のヴォーカルもあり十分楽しめる。前作のように彼女らしい新世界への試みの革新的・独創的テーマが、今作は古きを回顧するところにとの違いがあって、常に期待度が大きいのでその相違に不満足というところもあるかもしれないが、このアルバムも現ジャズ・ヴォーカル界における異色面が出ていて、ただでは終わらないスタイルは見えていた。面白いアルバムだ。

(評価)
□ 編曲・歌  88/100
□ 録音    87/100
(試聴)
"Killing Me Softly With His Song"

*
"I've Seen That Face Before "

 

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2024年2月16日 (金)

セバスチャン・ザワツキ Sebastian Zawadzki 「standards vol.1」

クラシックのベースから発展したピアノ・ソロ・ジャズ

<Jazz>

Sebastian Zawadzki 「standards vol.1」

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Sebastian Zawadzki : piano

158894035_155trw  前回に続いてセバスチャン・ザワツキ(Sebastian Zawadzki、1991年10月14日 - )です。こちらはソロ・ピアノによるジャズ・スタンダート演奏集(経歴等は、前回記事参照)。
 彼の近年の活動の多彩さから・・・ちょっと不思議なアルバムの登場だ。ジャズを演ずるところが彼の主力であるという事を我々に知らしめているのか、ここでは意外にもオリジナル曲でないジャズのスタンダード曲、しかもかなり古いものを取り上げているのだ。



 取り敢えず近年の活動の概略をみると、2019年、ザワツキ自身のディスコグラフィーでも重要となる『Piano Works Vol.2』をリリース。この曲は、コペンハーゲンのロイヤル・アカデミーにある古いアップライト・ピアノとグランド・ピアノで録音され、Spotifyで最も人気のあるセバスチャンの作品の1つで、1曲目"Unstoppable Changes"は300万回近くストリーミングされた静かな不思議な世界に誘われる曲だ。
 続いてのアルバム『Songs about Time』(2020)は、ピアノに弦楽四重奏を重ね美しく平和な世界を描き、新しい音楽の道を模索した。一方Youtubeで最も人気曲の1つである"Entropy"(ピアノの押し寄せる波の美しさは秀悦)をもリリースした。
 2021年には、ジャズトリオのために制作されたシングル「Far Away」(静かな自然の美を堪能)をリリースし、ストリーミングサービスで約300万回のストリーミングを獲得しました。

 更に最新作『Viridian』(2022年)と『Altair』(2022年)を登場させ、これらも彼の新展開を示すもので、『Viridian』は、ポーランドのコルブディにあるTall Pine Recordsで録音されたメロディックな即興ソロ・ピアノ曲のシリーズで、『Altair』は交響楽団、マレット、ピアノのためのロング・プレイ・アルバムである。
 そしてそんな経過から、昨年2023年には、エネルギッシュにも『Pax Elysium』、前回紹介の『Vibrations』をリリースし、この今作をも登場させたのだ。

(Tracklist)

1. A Child Is Born (Cover)05:36
2. My Favorite Things #1 (Cover) 04:43
3. All of Me (Cover) 05:05
4. Estate (Cover) 05:02
5. I Didn't Know What Time It Was (Cover) 06:38
6. Interlude 01:43
7. Darn That Dream (Cover) 05:25
8. I Fall in Love Too Easily (Cover) 06:45
9. Ask Me Now (Cover) 06:44
10. My Favorite Things #2 (Cover) 03:27
11. Time Remembered (Cover) 03:09

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 とにかく、静と美と安らぎの感ずる演奏が良いです。
 M1."A Child Is Born" 静かなピアノの優しく美しい調べでスタート。ビル・エヴァンスも演じたトランペッターのサド・ジョーンズの曲。とにかく過去の多くのいずれのミュージシャンの演奏よりも美しさが光っている。ひそかな希望と展望の感ずるところが良い。
 M2."My Favorite Things" '59年のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のリチャード・ドジャースの曲。メロディはちゃんと演じてのクラシック・アレンジにビックリ。
 M3."All of Me " とにかく古い時代のヒットものですね。
   M4."Estate " 私の好きな曲ですが、これが登場とは驚いた。テーマをさらっと流してイタリアのねちこさが見事に美しさに変身
 M5." I Didn't Know What Time It Was"  "時さえ忘れていて"これもリチャード・ロジャースですね。とにかく古い世界に足を入れています。
 M6."Interlude" ぐっと落ち着いた静の空間の間奏曲が入って・・・
 M7."Darn That Dream"  女性の片思いの夢の歌ですかね。アメリカの古き良き時代を連想します。ぐっと音の余韻が生きた演奏。
 M8."I Fall in Love Too Easily"  "すぐ恋に落ちてしまう私"というところでしょうか、シナトラとかチェット・ベイカーの世界ですね。
 M9."Ask Me Now " セロニアス・モンクの曲、ぐっとしんみりと迫る演奏
   M11."Time Remembered " ビル・エヴァンスに迫って収めるところがいいですね。

  スタンダードといっても、我々の生まれる前の1930-40年という古き良きアメリカ社会のヒット曲のスタンダード化した曲などを多く取り上げて、彼なりの世界を構築したピアノ・ソロが生きたアルバムだ。時にエヴァンスを想わせるところが彼の一面なんだろうと思って聴いている。
 しかし、かってのスタンダードが益々高潔になってくるところが"セヴァスチャン・ザワツキの世界"なんだということが解るところだ。今後も彼には期待の高まるところである。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏   90/100
□ 録音         88/100

(試聴) "" Estate"

"Time Remembered"

 

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2024年2月11日 (日)

セバスチャン・ザワツキ Sebastian Zawadzki trio 「Vibrations」

クラシックから発展させた北欧ジャズのポーランド俊英のピアノ・トリオ

<Jazz>

Sebastian Zawadzki 「Vibrations」
Self Produced / Import / ZAWA2023 / 2023

Vibrations

Sebastian Zawadzki - piano
Maciej Kitajewski - doublebass
Kacper Skolik - drums

 ポーランド出身で現在はコペンハーゲン(デンマーク)に拠点を置くセバスチャン・ザワツキ(1991-)のピアノトリオ新作。彼は19歳でオーデンセ(デンマーク第3の都市)のシダンスク音楽院に入学し、ピアノを学ぶ。また、クラクフ音楽院(ポーランド)やコペンハーゲンのリトミスク音楽院でも学ぶ。また、ロサンゼルスで行われたリチャード・ベリスとのASCAPフィルム・スコアリング・ワークショップに参加した後、オーデンセのシダンスク音楽院にソリストとして戻ったという経歴。

Avatarsiap9xe2e3s8fl0ysw  彼は、活気あるコペンハーゲンのジャズシーンで現在引っ張りだこのサイドマンで、多くの国でツアーやレコーディングを行って来ている。ピアノ・トリオ作品は2014年以来という。とにかく20歳代前半からのジャズピアニストとして音楽のキャリアをスタートさせていて、彼のファースト・アルバムは『Luminescence』(2014)では、ミニマルな即興曲が収録されているという。セカンドアルバム(2015年)は弦楽四重奏とピアノのために書かれてたもの。幼い頃から即興音楽やクラシック音楽に強く影響を受けていて音楽を学んだ結果、クラシック作品を作曲し、そのうちの1つである「ファゴットと室内管弦楽のための協奏曲」(2016年)は、第9回ワルシャワ新市街音楽祭で初演されたという話だ。

  とにかく彼に関しては話題に尽きないので、少々ここで紹介しておくが、新しい演奏の模索にも力を注いでいて、2017年にはクラシックの楽器奏者と電子楽器(主にモジュラーシンセサイザー)を組み合わせたプロジェクトに取り組み、その実験的なスタイルの1stアルバムは、新古典主義の作品『Between the Dusk of a Summer Night』(2017年)で、ブダペスト交響楽団、ソリスト、アンビエント・エレクトロニクスとのコラボレーションでブダペストとコペンハーゲンで録音されたようだ。

 その後も彼の実験的試みは多岐にわたり、2018年には「ピアノ作品集」と呼ばれる一連のアルバムを制作し、第一弾「Piano Works vol.1」を、続いて、弦楽四重奏、シンセサイザー、ピアノのためのサウンドスケープ『Norn』(2018年)を発表した。第2弾「Piano Works vol.2」は2019年発表し彼の代表作となる。更に声、ピアノ、弦楽四重奏を美しく盛り込んだ次のアルバム『Songs about Time』で、新しい音楽の道を模索し続けました。2021年には、ジャズトリオのために制作されたシングル「Far Away」をリリースし、ストリーミングサービスで約300万回のストリーミングを獲得。最新作『Viridian』(2022年)と『Altair』(2022年)は、更なる新たな出発で、『Viridian』は、メロディックな即興ソロ・ピアノ曲のシリーズで、『Altair』は交響楽団、マレット、ピアノのためのロング・プレイ・アルバムである。

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 さてそんな話題の尽きないザワツキの経歴を知りつつ今アルバムを聴くと、いろいろと納得出来てくる。全曲彼のオリジナル曲が収録されているピアノ・トリオ作品だ。

 (Tracklist)

1. Two (5:06)
2. Underestimated (7:48)
3. Coquelicot (5:37)
4. Vibrations (6:49)
5. November (7:24)
6. Painite (7:13)
7. Melancholia (5:36)
8. Zdrowie (6:37)
9. Purple (5:49)

  いわゆるクラシック音楽の要素と北欧ジャズを実験的に組み合わせて、アンビエント、ミニマリズムなど様々な要素を取り込んだサウンドで、真摯な気持ちで聴き入ることが出来る。作曲されたパートと即興演奏の組み合わせがオリジナルだあるだけ全く不自然さが無く、メロディーは美しく、そしてふと自分だけの時間に物思いにふけったり見知らぬ北欧の自然世界を頭に描いて静かに過ごすにはまことに見事なサウンドが響いてくる。
 ザワツキのピアノのメロディックで美しく繊細なタッチ、マチェイ・キタジェフスキのベースラインとカチペル・スコリクの繊細なドラミングが交錯し、主体はピアノが優位な位置でのトリオ演奏が展開されるが、これぞユーロ・ピアノトリオの一つの逸品と言っていいだろう。

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 オープニング曲M1." Two "から、 静かな北欧の自然豊かな世界を連想するピアノの響きと支えるベースが美しい。
 M2."Underestimated" 及びM8."Zdrowie" は、ピアノのクラシックを思わせる音楽展開が支配するも、後半に顔をだす即興部が面白しい
 タイトル曲M4."Vibrations"は、ミニマリズム手法が演じられ、静とダイナミズムが描くところ単なる美というのでなく躍動感が支配している。
 M5." November"は、まさにクラシック・ピアノの美しさに支配されている。
 M7."Melancholia" このようなメランコリックな世界はお手の物といった演奏。ピアノの打鍵音も美しい。
 M9." Purple" ピアノのベースとのユニゾンが生きた曲

 このトリオの美的インスピレーションの支配する演奏と音楽的感性は優れていて、オリジナリティー溢れた独特のサウンドで生み出される曲群は聴く者を支配する。
 何年ぶりのオーソドックスな作曲家およびリーダーとしてのセバスチャン・ザワツキのピアノ・トリオ作品であり、クラシック音楽の要素と北欧ジャズの世界を見事に組み合わせた作品だ。久々のトリオもので、彼のこれからのジャズ経歴で重要な一つの作品になると思われ、今後への期待は大きい。

(評価)
□ 曲・演奏  92/100
□ 録音    90/100
(試聴) "Underestimated"

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2024年2月 6日 (火)

ヴィジェイ・アイヤー Vijay Iyer, Linda May Han Oh, Tyshawn Sorey 「Compassion」

アメリカ社会の暗部を背景に人間的に迫ろうとする意欲作

<Contemporary Jazz>

Vijay Iyer, Linda May Han Oh, Tyshawn Sorey 「 Compassion」
ECM Records / JPN /  UCCE-1204 / 2024

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Vijay Iyer(p)
Linda My Han Oh(double-b)
Tyshawn Sorey(ds)

Recorded May 2022, Oktaven Audio, Mount Vernon, NY

399423767_18403083w 「21世紀のECM」を代表するピアニストといわれるヴィジェイ・アイヤー(米、右、紹介は末尾に)の3年ぶりのECM通算8作目となるピアノ・トリオ・アルバムの登場。   前作『Uneasy』(ECM352696)に続いての彼は多くのインスピレーションを二人から受けているというベーシストのリンダ・メイ・ハン・オー(1884年マレーシア生まれ、中国系移民、オーストラリア育ち、下左)とドラマーのタイショーン・ソーリー(1980年米国生まれ、クラシック・ジャズ両面で評価を受けている、下右)をフィーチャーしたトリオの2作目。 "独特な創造性のある作品"と前評判のコンテンポラリー・ジャズ・アルバム『Compassion』だ。

 ニューヨークタイムズ紙は、「新たな領域を探求する意欲を持ち続けると同時に、レーベルに長く関わってきた先人たちにも言及している。このアルバムには、スティーヴィー・ワンダーの「Overjoyed」の力強い解釈が収録されており、故チック・コリアへの間接的なオマージュ。もうひとつの「Nonaah」は、ピアニストにとって重要なメンターである前衛の賢人ロスコー・ミッチェルの作品。オリジナル曲群は、メロディアスに魅惑的でリズミカルな爽快な曲、物思いにふけるようなタイトル曲、フックが絡み合ったハイライト曲「Tempest」や「Ghostrumental」まで、多岐にわたる」と評価し説明している。

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  収録曲は13曲で、新たな世界の展開を試みるヴィジェイ・アイヤーのオリジナル曲は9曲、それは社会に存在するレイシズム(人種主義)そしてアパルトヘイトなどの不安、一方コロナ禍のような社会不安などがテーマで、ここ数年で作られてきたものだ。そしてその上に、彼の尊敬する人たちの曲やそれにまつわるもの等の4曲である。

(Tracklist)

1. コンパッション Compassion (Vijay Iyer)
2. アーチ Arch (Vijay Iyer)
3. オーヴァージョイド Overjoyed (Stevie Wonder)
4. マエルストロム Maelstrom (Vijay Iyer)
5. プレリュード:オリソン Prelude: Orison (Vijay Iyer)
6. テンペスト Tempest (Vijay Iyer)
7. パネジリック Panegyric (Vijay Iyer)
8. ノナー Nonaah (Roscoe Mitchell)
9. ホエア・アイ・アム Where I Am (Vijay Iyer)
10. ゴーストゥルメンタル Ghostrumental (Vijay Iyer)
11. イット・ゴーズ It Goes (Vijay Iyer)
12. フリー・スピリッツ / ドラマーズ・ソング Free Spirits / Drummer’s Song (John Stubblefield / Geri Allen)

 アイヤーのECMからのデビューは、2007年のロスコー・ミッチェルのメンバーとして参加したアルバム『ファー・サイド』で、マンフレート・アイヒャーの支持を受けECMと契約し、2014年に室内楽との共演作品『ミューテイションズ』をリリース。その後、その都度異なるミュージシャンとの共演が展開され、2021年には新トリオ作品『Uneasy』をリリースし、絶賛を受け評価を勝ち取った。その為か今作はその同トリオによる待望の2ndとなる新作である。

 何といっても、その心結ばれるメンバー同士において、センスと技量においての認め合う関係があり、その上での自由な空間でのインタープレイがインパクトのある音世界を演じ見事である。 アメリカン・ジャズのエッセンスはしっかり持って、その上に築かれる創造性はこのアルバムで一層充実した。しかも、その根底にあるところの"アメリカ社会の暗部"に対しての訴えがにじみ出ているところにも注目すべきである。

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 スタートのM1."Compassion"から、アルバム・タイトル曲の登場。「思いやり」ということか、彼の話からもインストゥルメンタル曲に深い意味を持たせるがための試みである今作のスタートである。 静というか深層心理に迫りそうな静かなピアノの演奏から終盤への盛り上がりが素晴らしいのだが、ピアノとベースの絡み合いも聴きどころ。アメリカ社会におけるそれは苦しみや不安の表現から、襲ってくる得体のしれない波を表現しつつ、思いやりの心を描きたっかったのだろうか。このトリオは「有色人種の3人組」というところにも意味が見えてくる。
 M2." Arch" アパルトヘイト廃止へ尽力したDesmond Turu大主教に心を寄せた曲。
 M3." Overjoyed"は、ピアノ・ジャズの世界そのものの演奏。アメリカン・ジャズの匂いがプンプンとしている。亡きチック・コリアを脳裏に描きつつ彼の感謝・祝福の言葉なのだろうか。
 M5."Prelude: Orison" 静かな世界に響く祈りの心。哀感と美しさのピアノの世界にベースの響きも美しく。これは彼が尊敬し愛した南インド出身の薬学博士で平等主義者のY.Raghunathanに捧げた曲だ。
 M6." Tempest " 激動と動揺の社会現象を荒々しく表現し、M7."Panegyric"では、努力と尽力の礼賛の心の表現か、メイ・ハン・オーの低音ベースが光る。。
 M8."Nonaah" アイヤーの拠り所であるRoscoe Mitchellの曲で、前衛的攻めのトリオのインタープレイは圧巻。 ソーリーの巧みなアタックが印象的。
 M11." It Goes" 失った人(人種問題研究者でもあった作家・詩人Eve L. Ewing)への思慕と感謝、そして寂しさの複雑な世界を描く。優しさ溢れる曲。
 M12." Free Spirits / Drummer’s Song " 喜びの表現が感じられ、前途への意欲を感ずるところが救いか。

 この究極のアイヤー音楽は、人種問題を背景にした葛藤と不安とある意味での戦いが描かれている。そして一方歩んできた人生の経験の中で得られた感謝の心の世界の表現の曲も含めている。それは社会的に政治的に共感的な立場を取れる重要人物を賞賛する。又痛ましい出来事に対しては追悼の心を表すことを忘れていない。

 インストゥメンタル・ミュージックでの表現において、創造的な試みが彼の一つのテーマでもあったようで、このアルバムは、曲単位というよりはトータルに聴いて理解すべきものと思った。全体的に派手な華々しさの明るさはない、テーマからしてもちょっと重く暗い世界だ。しかし音楽的展開においては多彩で聴き応え十分。単なる暗さというのでなく、感謝の世界や、人間の生き様への敬愛の心の美しさのある音楽も演じてくれ心休まるところもある。これには特に息の合った三者のインタープレイが見事で、描くところ現代アメリカン・ジャズではやはり異色の世界を構築している。
 アイヤーの音楽スタイルは、アメリカの歴史的な偉大な作曲家・ピアニストの世界が基礎にあるのは間違いないが、60年代から70年代のアフリカ系アメリカ人の創造してきたジャス音楽の影響を受けての彼自身の独創的な世界を構築するに至ったものだろう。そしてそこには「社会的問題意識を表現してゆく作品としての意義」を、このようなコンテンポラリーなジャズ世界に求めているのかもしれない。

(参考)
<ヴィジェイ・アイヤー VIJAY IYER>  (SNSより引用)
 ニューヨーク、オルバニーで生まれた(1971年)。アメリカ合衆国へのインド系タミル人移民の息子である。3歳から15年間、西洋クラシックのヴァイオリンを習う。更にほとんど独学でピアノを習得。イェール大学で数学と物理学を学び、カリフォルニア大学バークレー校で音楽認知科学を学びながらジャズ・クラブに出演し音楽の道へと進んだという異才。
 マンハッタン音楽学校、ニューヨーク大学、ニュー・スクールで教鞭をとり、カナダ、アルバータ、バンフ・センターのジャズ・クリエイティブ・ミュージック国際ワークショップのディレクターをつとめている。2014年1月には、ハーバード大学の芸術科学学部初のフランクリン・D、フローレンス・ローゼンブラット教授に就任した。
 多くのレーベルで作品をリリース。2009年のACTデビュー作「Historicity」がグラミー賞にノミネートされ、一躍ニューヨーク・ジャズ・シーンをリードするピアニストとして注目を集めた。 又、イラク・アフガニスタン戦争に行った兵士たちの詩がフィーチャーされた『ホールディング・イット・ダウン』は注目された。
 ECMにおける初リリースは、2007年のノート・ファクトリーのメンバーとして参加したライヴ・アルバム『ファー・サイド』。そして2014年に室内楽との共演作品『ミューテイションズ』でECMリーダー・デビューを果たす。続く『Radhe radhe:ライツ・オブ・ホーリー』、そして2015年トリオ作品『ブレイク・スタッフ』など次々と異なるプロジェクトで活動し精力的に作品を発表。2021年リリースの新トリオ(今アルバム・メンバー)作品『Uneasy』は、各メディアで絶賛された。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    87/100

(視聴)

 

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2024年2月 1日 (木)

アダム・バウディヒ& レシェク・モジュジェル Adam Bałdych & Leszeck Możdżer 「Passacaglia」

究極のポーランド・ジャズのクラシックとの融合からの発展系の美

<Jazz>

Adam Bałdych & Leszeck Możdżer「Passacaglia」
ACT / Import / ACT9057 / 2024

Passacagliaw

Adam Bałdych (vln)
Leszeck Możdżer (p)

Recorded at Polish Radio S4 Jerzy Wasowski Studio in Warsaw on January 23rd – 25th 2023

 ポーランドを代表するジャズミュージシャンの「ヴァイオリンの天才」アダム・バウディヒと、ピアニスト、レシェク・モジュジェルによるデュオ作品の登場(ポーランドの名前は発音が難しい。日本語で書くといろいろとあります)。すでに両者はここで過去に紹介ずみだが、特にバウディヒはヘルゲ・リエンとの共演などや、2019年の来日の際には話をすることが出来たりと、たっぷり楽しませていただいており、ここにニュー・アルバムを喜んでいる。又ピアニストのレシェク・モジュジェルも私の好きなピアニストで、『Komeda』(ACT9516,2011)などのアルバムで過去にここで取り上げてきた。とにかく澄んだ硬質のピアノ打鍵音は素晴らしい世界を構築する。
 二人の共演は、2009年にヴロツワフ歌劇場が初めてで、マウリッツ・シュティラー監督の無声映画「アルネ家の宝物」の即興音楽を演奏した。好評でありながら彼らは10年以上も経って、ようやくここに、2023年1月にポーランドのスタジオに入りが出来て、この「パッサカリア」セッションを実施できたという経過だ。


Maxresdefaultw_20240130184501  アダム・バウディヒは、最新の紹介では、"1986 年ポーランド生まれのヴァイオリニスト/ 作曲家。カトヴィツェ音楽アカデミーを卒業し、ヘンリク・ゲンバルスキに師事。「ヴァイオリンの天才」と称され、14 歳でキャリアをスタートさせ、クラシック音楽の成果とヴァイオリンの現代言語を即興演奏家の才能と組み合わせた革新者としてすぐに認められた。ポーランド、ドイツ、日本、アメリカ、オーストリアなど、様々な国のジャズフェスティバルや一流のコンサートホールでツアーを敢行している。ラース・ダニエルソン、ニルス・ランドグレン、ビリー・コブハムなど、並外れたアーティストと共演し、ドイツの音楽業界賞である ECHO Jazz、ポーランドの金功労十字章、ポーランド文化功労勲章など、数々の賞を受賞している。"と書かれている。

417727778_8152939w   レシェク・モジュジェルも最新紹介は、"1971 年生まれのポーランド出身の音楽家 / ジャズ・ピアニスト/ 作曲家。5 歳の時に両親の勧めでピアノを始め、1996年にグダニスク音楽アカデミーを卒業。これまでクシシュトフ・コメダ賞、ポーランド外務大臣賞など、国内の主要音楽賞を多数受賞している。これまでに100以上の音楽作品に参加しており、パット・メセニー、デヴィッド・ギルモア、トーマス・スタンコなど多数のアーティストとコラボしている。映画音楽の作曲家ともコラボレーションしており、日本を舞台にした『HACHI 約束の犬』などの映画音楽で演奏している。世界各国で公演を行っており、ショパン生誕 200 年にあたる2010 年には、東京紀尾井ホールなどで来日公演を行った。"と、ある。


 さて今作『Passacaglia』は、バウディヒとモジュジェルが共同で書いた自由な即興演奏を多用したオリジナル曲4曲をメインに、バウディヒが6曲、モジュジェルが2曲のオリジナル曲を提供。そしてクラシック畑よりエリック・サティや、ジョスカン・デ・プレスなどの3曲の演奏が含まれている。
 また、このアルバムでは、私にはその内容や意義は知るべしも無しの「ルネッサンス様式のヴァイオリン、2台のピアノ(A+442 HzとA+432 Hzの調律)、プリペアドピアノという特別な楽器の組み合わせにより、その音色に驚くべき、高貴な音の組み合わせによる融合を巧みに作り上げた」と紹介されている。この組み合わせにより、確かに彼らの持つ複雑にして分類困難な独特のスタイル、そして多岐にわたるジャンル、さらには聴いてすぐ解る音色の変化に伴っての音楽表現の多様性を実現し、もともとの美しくエレガントなクラシック調の室内楽の世界を表現したり、両者の交錯による激しさのあるジャズ即興演奏が繰り広げられている。
 聴きようによっては、昔よく聴いたクラシック古典派のベートーベンなどのヴァイオリン・ソナタを愛していた私にとっては、むしろこのようなデュオは、音楽学者には笑われるかもしれないが、その発展形にも聴けて一層楽しいのである。

(Tracklist)

1: Passacaglia (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
2: Jadzia (Adam Bałdych)
3: Moon (Adam Bałdych)
4: December (Adam Bałdych)
5: Gymnopedie (Erik Satie)
6: Polydilemma (Leszek Możdżer)
7: Le Pearl (Leszek Możdżer)
8: January (Adam Bałdych)
9: Beyond Horizon (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
10: Saltare (Adam Bałdych)
11: Circumscriptions (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
12: Resonance (Adam Bałdych & Leszek Możdżer)
13: Aurora (Adam Bałdych)
14: O ignee Spiritus (Hildegard von Bingen)
15: La deploration sur la mort d’Ockeghem (Josquin des Prez)

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 とにかく、両者の卓越した作曲と演奏能力により、その上に楽器にも曲により組み合わせの配慮がされ、この組み合わせにより、確かに彼らの持つ複雑にして分類困難な独特のスタイル、そして多岐にわたるジャンル、さらには音色の変化に伴っての音楽表現の多様性を実現し、もともとの美しくエレガントな室内楽の世界を表現したり、両者の交錯による激しさのある即興演奏が繰り広げられている。このあたりは過去にも聴く度に驚かされていながら、引き込まれて行く世界であったが、このアルバムでも同様で、魅力が溢れていた。
 私自身はなれてきたのか、かっての作品より今作の方が、かなり身近に受け入れやすく感じたところである。

 M1." Passacaglia " 美しいヴァイオリンのピッチカートの音とクリアなピアノの音からスタートし、この両者の即興の交わりが見事。うっとりと聴いていると4分があっという間に終わってしまう。
 M3." Moon "M11." Circumscriptions"の両曲は、どこか民族的響きの曲。両者の跳ねるような音の展開が圧巻。
 M4."December" ヴァイオリンの美しい響き、非常に魅力的な曲。ピアノは支えるがごとく控えめな音。
 M5."Gymnopedie" サティの曲、ピアノとヴァイオリンの静の世界を描く美。
 M7."Le Pearl" モジュジェルの曲で美しいピアノ。M8."January"はバウディヒの曲で美しいヴァイオリン。両曲とも後半のコラボレーションも見事。
   M9."Beyond Horizon" 共作だけあって、美しさの溢れたインタープレイ。
   M12."Resonance" タイトルどうりの響きが美しい。 
   M13."Aurora " ヴァイオリン奏法の技量の高さ、ピアノの美的世界がみごとに展開され、即興と思われるところにおいても聴き応え十分。
 M14."O ignee Spiritus " 深遠な世界に導かれる。
 M15."La deploration sur la mort d’Ockeghem" 最後を飾る悲嘆から安堵の世界。

 
Img_1826trw2w いずれにしても、アダム・バウディヒとレシェク・モジュジェルは、持ち合わせている教養とミュージックにおけるジャズの意義の上に、その卓越したセンスと技法で高貴な室内楽における美的バランスの取れた情緒と美に満ちた世界を創り出し、ときに激しい感情を沸かせ、即興の対話と交錯をも演じている。彼らの音楽的な世界の高さはまさにハイレベル。聴く者の心を知りつつ訴えるところは、繊細さとダイナミックさとの組み合わせにより並みでない世界を構築し、そこには神秘的な魅力で迫ってくる。おそらく今年の最高傑作の一つであろう。 (写真→バウディヒと私 2019年)                                                                                                   

(評価)
□ 曲・演奏 95/100
□   録音   92/100

(試聴)

 

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2024年1月27日 (土)

マルチン・サッセ Schoenecker / Sasse / Schieferdecker 「Trio Tales」

ベテランのギター・ピアノ・ベースによるドラムレス・トリオで描く物語・・・

<Jazz>

Schoenecker / Sasse / Schieferdecker 「 Trio Tales」
JazzJazz / Import / JJ1037  / 2024

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Joachim Schoenecker (guitar)
Martin Sasse (piano except 7)
Markus Schieferdecker (bass except 7)

Recorded and mixed by Klaus Genuit at Hansahaus Studios Bonn on October 8th & 9th, 2021

  ドイツが誇る3アーティストが集結した。それはギターのヨアヒム・シェーネッカー(1966年旧西ドイツのザールブリュッケン生まれ 下左)を中心に、人気ピアノのマルチン・サッセ(1968年旧西ドイツのハム/ヴェストファーレン生まれ 下中央)、ベースのマルクス・シーファーデッカー(1972年旧西ドイツのニュルンベルク生まれ 下右)であり、いずれもキャリア豊富なドイツの精鋭陣が顔を揃えた連名ドラムレス・トリオのアルバムだ。

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 この作品はタイトルにもある通り"Tales 物語"をテーマにしており、敢えてリーダーを決めず、 メンバー3人による音楽的な会話を交わす、つまりインタープレイの楽しさを目指して作成されたようだ。この"Tale"には"むだ話"のような意味もあるので、とにかく3人がリラックスして楽しんでいるとみていいだろう。

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1.Blues For PB
2.Body & Soul
3.Groovy Waltz
4.Longing
5.Green And Blue
6.One For Jeanni-e
7.Autumn In NY
8.Pannonica
9.Song 42

 オープニングのM1."Blues For PB"のブルースから、なんとなく仲間意識で盛り上がって、一緒に演奏する純粋な喜びが感じられるようなゆとりのある演奏に聴こえる。それはメロディックでリズミカルでもあり快感。
 また意外な繊細さが彼らのオリジナル曲M4からM6には感じられ、自然にメロディー演奏が3者に転換されて行って対等感がにじみ出ている。お互いに敬意を払ってクールに流すところもみられ、それはまさにベテランの味である。

 近作マルチン・サッセのピアノトリオ新作アルバム『Longing』(JJ51035/2024 紹介下記)にも収録されているM4とM5が出色の出来を感ずる。特にM5."Green And Blue"では、ギターの味がピアノの音に先行して美しい旋律を流し、それを作曲者のサッセがほほ笑むようにピアノでホローする形で美しい音を聴かせ、その流れの微妙な繋がりが素晴らしい。それに更にベース・ソロに近い流れが加わって、この色付けが静かにしてちょっと物憂いところがジャズのムードを盛り上げていて楽しい。マイルス・ディヴィスの"Blue in Green"を大いに意識してのものであろうことは想像に難くないが、私はこのアルバムでは一押しだ。

 M7."Autumn In NY"はギター・ソロで、2分20秒と短いが、なかなか編曲とアドリブとインプロが生きて変化していて、ジャジーな充実感の中にちょっと寂しい秋が実感できる。そしてM8."pannonica"へ流れ3者の間を巡る演奏によってインプロによる静かな花が咲く。

 究極、彼らの演ずるストーリーは、メロディックでリズミカルな繊細さに満ちており、一方クールさでも自信の結果で安定感ばっちり。彼らの描くところ、エレガントに仕上げる年期の味が満ちていてこれも好感である。テーマやスタイル、和音やリズムを変化させる技術は経験の深さであろうと聴いた。なかなか味のあるアルバムであった。

(評価)
□ 曲・編曲・演奏  90/100
□ 録音       88/100
(試聴)  "Green And Blue"

            - - - - - - - - - - - - - - - 

 

(参照)  マルチン・サッセのピアノ・トリオ・アルバム

  エレガントで軽快にメロディックなピアノ・トリオ作品

<Jazz>
MARTIN SASSE TRIO 「LONGING」
JazzJazz / Import / JJ51035 / 2024

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Martin Sasse (piano)
Martin Gjakonovski (bass)
Joost van Schaik (drums)

Recorded and mixed by Reinhard Kobialka at Topaz Studio Köln.

 上記アルバムのピアニストのマルチン・サッセの、これはついこの間リリースされた自己名義トリオによるアルバムである。彼のオリジナル曲のM03."Longing"とM06."Green And Blue"が、こちらのアルバムにも登場する。同じトリオ・スタイルでも楽器編成が異なるので、その違いが楽しいところだ。

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01. How Little We Know
02. Groovy Waltz
03. Longing
04. Never To Return
05. The Soul Of Jazz
06. Green And Blue
07. Swing, Swing, Swing
08. Bennetts Blues
09. Lover Man
10. With You

 サッセのピアノはエレガントであり聴くに気持ちが良い。サウンドはメロディーに乗っての軽妙さが印象的だ。収録は8曲の彼のオリジナルに、スタンダード曲M01."How Little We Know"M09." Lover Man"が収録されているが、M03."Longing"、M06."Green And Blue"が、上記アルバム『Trio Tales』と共通であるところから聴き比べが注目点。こちらでは曲の展開はほゞ同じスタイルでありベースの演ずる役割も似ているが、純粋なアコースティック・ピアノ・トリオの良さとしてのメロディーの美しさがピアノによって描かれている為、上記のギター・ジャズ・ムードが加味されての世界とは印象が結構大きく異なる。どちらが良いかは好みというところ。
 なかなか情景豊かな演奏で、ピアノ派にとっては好まれる因子のあるアルバムである。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□ 録音    87/100
(試聴)     "Breen And Blue"

 

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2024年1月22日 (月)

アンニ・キヴィニエミ Anni Kiviniemi Trio 「Eir」

リアルなサウンドで独創的な世界を描くフリー・ジャズ

<Jazz>

Anni Kiviniemi Trio 「 Eir」
WeJazz/ Import / WJCD58 / 2024

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Anni Kiviniemi, piano
Eero Tikkanen, double bass
Hans Hulbaekmo, drums

Composed by Anni Kiviniemi
Recorded & mixed by Aksel Jensen at Newtone AS, Oslo
Mastered by Juho Luukkainen
Executive producer & design by Matti Nives

  米国ロサンジェルスを拠点とするフィンランド人女流ピアニスト、アンニ・キヴィニエミAnni Kiviniemi(下左)は、ベーシストのイーロ・ティカネンEero Tikkanen(1987-下中央)とドラマーのハンス・フルベクモHans Hulbaekmo(1989-下右)をフィーチャーしてのトリオ・デビュー作品。彼女は米国へ移住する前はノルウェーに住んで学んでいたようだ。
  このニュー アルバム「Eir」は、キヴィニエミのオリジナル8曲で構成され、このタイトルは、リリース前に生まれたキヴィニエミの娘にちなんで名付けられたということだ。

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 そしてこのトリオの演ずるところ、"現代クラシック音楽、ノルウェーの民俗音楽、北アフリカと中東の音楽の伝統、フリージャズに関するキヴィニエミの研究の影響を受けています"と表現されていて、"内省的でムーディーでありながらスウィングするピアノ・トリオ"と紹介されている。

 キヴィニエミの言葉(作曲プロセスについて次のように語ってる)
「音楽においても、おそらく人生においても、私は常に未知のものに引き寄せられます。すぐには認識できない珍しいメロディーや奇妙なコードを聴いたら、ピアノに飛び乗って、それが何であるかを理解する姿勢で来た。・・・・私は作曲家として常に自分自身に厳しい制限を設けていますが、仲間のミュージシャンには完全な自由を与えています。 私の音楽を自分なりの方法で解釈してください。彼らが何かを変えたいなら、自由に変えてください。私はバンドリーダーとして驚くのが大好きです。それは私に多くのことを教えてくれて、いつも楽しいです。アルバムは95%は即興ですが、ライブでプレイすると99%に近づいていきます。」

(Tracklist)

1.Tiu Dropar
2.Gwendolyn
3.Judy
4.Arguably
5.Atoms
6.Mére
7.Mengi
8.Choral
   
  スタートのM1."Tiu Dropar"を聴いた瞬間、曲よりもまずトリオのドラムスとベースの音がリアルで驚く。ステック音、シンバル音が響き、ピアノとシンクロするベースの低音も曲を見事に支える。まさに現代的録音だ。そしてそれに引けをとらずのピアノが美旋律という世界でなく即興の為か不思議な展開のメロディーがクリアな音でリアルに迫ってくる。これぞ、寺島靖国の「For Jazz Audio Fans Only」に取り上げられそうな世界である。

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 そして、私は何といっても注目したのはM4."Arguably"だ。このアルバムでは最も長く7分を超えた演奏だが、かなり即興の因子が強い。ぐっと静粛性の中に響くピアノの響き。なんとなく内省的な世界に導かれる。余韻が妙に印象的でドラマーの演ずる太鼓と金属音が深遠だ。ベースもアルコで異様な世界を演ずる。
 そして一転してM.5"Atoms"は、驚きの攻撃的演奏。ドラムス、ベースの演ずるところにピアノも同調。
 続くM6."Mére"はぐっと落ち着いて再び内省的である。
 M7."Mengi"ベースが訴えてくるリズムカルな面白い曲。
   最後M8."Choral"は、ソロに近いピアノ演奏で結論的なまとめを聴かせる。

 女流ピアニスト・コンポーザーと言うことで、ムーディーなのかとちょっと気楽に接したら、なかなかスリリングな演奏が中盤に現れて驚いた。フリー・ジャズを研究しているというだけのものがある。そして一方現代クラシックの世界が響いてきてなかなか聴き応えある。一曲づつというのでなく、アルバムを一つとして聴くと楽しい。
  トリオのコンサート・パフォーマンスは、「叙情的で爆発的」であると同時に、「堂々と独創的で、美しく時代を超越している」、そして「現代のピアノ・トリオ・ジャズの表面的な決まり文句に完全にさらされている」と評されているらしい。確かに美しさと驚きの瞬間が混在していてリアルな音を響かせるところは現代的。

(評価)

□ 曲・演奏  88/100
□ 録音    90/100

(試聴)

 

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2024年1月17日 (水)

アルネ・トールヴィーク Arne Torvik Trio 「Songs for Roman」

ウクライナ戦争勃発の衝撃から生まれた人間主張(?)のアルバム

<Jazz>

Arne Torvik Trio 「Songs for Roman」
Losen Records / Import / LOS2862 / 2024

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Arne Torvik アルネ・トールヴィーク (piano)
Bjørnar Kaldefoss Tveite ビョルナル・カルデフォス・トヴァイテ (double bass)
Øystein Aarnes Vik オイスタイン・オールネス・ヴィーク (drums)

Recorded june 2022 by Peer Espen Ursfjord at Newtone Studio, Oslo, Norway

  ノルウェー西岸のジャズ・フェスティバルでも有名なモルデを拠点とするピアニストのアルネ・トールヴィーク Arne Torvik(1981‒)、ヴォス出身のベーシスト、ビョルナル・カルデフォス・トヴァイテ Bjørnar Kaldefoss Tveite (1987‒)、そしてオスロ生まれのドラマー、オイスタイン・オールネス・ヴィーク Øystein Aarnes Vik(1990‒)の3人による(ピアノ・トリオ)新作2ndアルバムである(デビュー作は『Northwestern Songs』(2020/LOS240))

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 「ノルウェー・モダンジャズ」を「今」の感覚で発展させる活動を続けていると言われるトールヴィーク、この新作の『Songs for Roman』は、ウクライナがロシアの侵略を受けたという衝撃的な出来事によるショックを受けた2022年の春に作曲された曲を中心に作られたものであるという。タイトルの"Roman"というのは、彼がノルデで教えていた「ジャズ国際コース」でインプロヴィゼーションを学んでいたウクライナ出身のトランペッターの名前という事だ。

Aaspen_arnetorviktrw <アルネ・トールヴィークの言葉>
「私たちはニュースで見聞きしていることを当初あまり信じていませんでした。数年前、私はキエフを観光客として訪れ、この街を心から楽しみました。しかし突然、街は爆撃を受けて街路が破壊され、人々が命の危険に絶えず恐怖を感じながら暮らさなければならない場所となったのです。この間、私はモルデの「Landslinje for jazz」でローマンという若いトランペット奏者に即興演奏を教えていました。会話を通じて、彼にはウクライナに家族や親戚がいることが明らかになり、彼は混乱と悲しみを感じさました。
 このとこが、私に衝撃を与え、「For Roman」という曲を書くきっかけになりました。新作は、2022年3月にローマンと戦争について話したことからインスピレーションを受けて誕生しました。この作品をリリースすることが、何らかの形で意味のあるものになれば幸いです。(アルネ・トールヴィーク)」

(Tracklist)

1 Going Home
2 Cinematic
3 Longing For The Woods
4 Eastbound
5 Places To Write
6 Geert
7 For Roman

  クラシック・ピアノの雰囲気のある打鍵法の正確性は、聴く者に不快感を与えない。そんな中でのどちらかというとユッタリに寄った端正にして爽快なるピアノが主体性を持ってリードしてゆく。トータルの印象はエレガントで、昔のアメリカン・ジャズ世界は全く感じない。曲は全てオリジナルな為、このトリオの目指すところは何かと聴き込むが、そう抒情派の耽美主義というのでなく、むしろロマンテイックな世界に流れてゆく傾向を感じた。

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 バックに北欧の牧歌的なトラデッショナルな曲調も取り込んでいるように思えたが、そのあたりはあくまでも想像である。
 とにかく聴きやすい展開と、テーマからして真摯な印象を受ける。ベースはあまり主張しないで、ピアノを支える。ドラムスも基本に忠実な展開を見せる。
 私としては、特に印象に残った曲は、M4."Eastbound"は"東へ"と言う意味か、どこか静かな中に人間的な世界を感ずる詩的な真摯な曲。
 M3."Longing for The Woods"は自然へのオマージを感ずる世界で気持ちも洗われる。
 M7."For Roman"は主テーマの曲であろうが、優しく抒情的なピアノが美しく流れるが、終盤には意志の強さも感ずる展開に。

 ただ、ぐっーーと引き寄せられ心情を揺らすような哀愁メロディーに遭遇して痺れたというところはなかった。極めてヨーロッパ的詩的な世界である。テーマがテーマであるが、そう暗さが満ち満ちて沈んでゆくというパターンではない。むしろ人間的な美しさを礼賛して慰めの方向に流れて希望を抱く方向にあるような印象を受けた。

(評価)
□ 曲・演奏  87/100
□ 録音    88/100

(試聴)

 

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2024年1月12日 (金)

ジョージー・ブラウン Georgie Brown 「My Gramps Was A Jazzman」

初のお目見えアルバム、中身は多種・多芸なジャズ

<Jazz>

Georgie Brown 「My Gramps Was A Jazzman」
Bam Productions / Import / CD1299GEOMY / 2023

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Channels4_profile Georgina Brown (vo)
Oliver Oliver (p)
Jean-Hugues Billmann (b)
Eric Bourciquot (ds,per)

Geraldine Laurent (as)
Sebastian Munoz (ts)
Varery Bertrand (g)
Lionel Berthomes (congas)

  ジャズ・ヴォーカルは今や圧倒的に女性の世界ですね、これはフランス系英国人女性シンガーソングライター・ジョージー・ブラウンの初のジャズ・アルバムで、彼女自身はかなりの実績を積み上げてきたようで、両親からも音楽の影響を受け、13歳でスウィング・ジャズ・バンドのメンバーになり初めてジャズを歌い始めた。その後新しいジャンルを探求することに情熱を注ぎ、兄とEDMトラックに取り組み始め、2020年にはロンドン・グラマーのサウンドにインスパイアされた初のエレクトロニック・ポップ・ソング「Free」をリリースした。
 しかし現在、パリでジャズを学んでいる彼女は、初のジャズ作品アルバムをここにリリースにこぎつけ、単なる新人という感じではなく、これまでの彼女の人生から得たインスピレーションをもとに、書き上げられたオリジナル曲で独自の個性を発揮したアルバムとなっている。
 演奏陣はピアノ・トリオを中心に、曲によってサックス、ギター、コンガなどの数人のゲストアーティストが加わるスタイル。一貫したコンセプトのある作品というよりは、私はこんなジャズを歌いますといったてんこ盛り的アルバムだ。

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1.I Can Try
2.Entre deux
3.The River
4.My Gramps Was A Jazzman
5.Conmigo
6.Not In My Arms
7.Le temps est changeant
8.Rêve d'un inconnu
9.Valentine
10.Music To Me 

 彼女の歌声は、中低音部が深く充実したところにある。バック演奏はゲスト・ミュージシャンとしてはサックスの因子が大きいスタイルの印象が強い。曲は極めて多様、伝統ジャズの世界から、現代的しっとりムードのフィーリングを取り入れたり、ボサ・ノヴァの世界などと多様に楽しめる作品に仕上げている。又言語も英語、フランス語など曲により使い分けているところも多芸ぶりを発揮している。

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 M1."I Can Try"は、静かなピアノからスタートし、ゆったりと充実感たっぷりのややハスキーの低音で歌いはじめ、ジャズ・ミュージシャンの意気込みを力みなくサックスの間奏を挟んで歌い上げる。なかなかジャズ向きの感あり。
 M2."Entre deux" ぐっとリズムは軽快、言語もフランス語で軽く・・・、流れはオールド・ジャズ調。
 M3."The River" ピアノとサックスがしっとりと演じて、歌声もバラード調でぐっと迫ってくる、ここでは高音も優しくのびる。このあたりが本領発揮なのだろう。彼女は初お目見えと言っても場数は踏んでいると推測する。
 M4."My Gramps Was A Jazzman" オリジナルのアルバム・タイトル曲。全曲から一転して古き良き時代の速攻ジャズ。彼女は家系的にジャズとの付き合いのある事を訴えているのか、後半にスロー転調をみせるところは旨い。
   M5."Conmigo" ギター、コンガなどでボサノバ・スタイルでムードを一変。
 M6."Not In My Arms" 自分の世界をしっとりと訴える。切なさの心情を訴えているように。
 M7."Le temps est changeant" ここでもサンバ調。
   M8."Reve d'un inconnu" スローな展開も結構旨い。
   M9."Valentine" 憧れ的訴えを歌い上げているのか。
   M10."Music To Me" 最後は明るい軽快な曲で。

 まあ、彼女としては自己のキャリアの中で、これだけジャズを歌ってきましたという自己アッピールの作品で、Facebookを見てもアルバムが出来たことを喜んでいる姿が見れる。ヴォーカルとしては、ダイアナ・クラールなどが目標のようだが、さあ、どこまで迫れるかはこれからだろう。声の質は高音美声というよりは中低音で聴かせるところに魅力があるといったタイプ。
 陽気な軽快なジャズ歌唱もこなしているが、一方バラードものをしっとりとした歌いまわしで郷愁、思慕、切なさの心情を深く歌うというところも聴かせて、なかなか芸は広く期待株。

(評価)
□ 曲・歌  87/100
□ 録音   87/100

(試聴)

*

 

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