アヴィシャイ・コーエン

2024年11月15日 (金)

アヴィシャイ・コーエン Avishai Cohen 「Brightlight」

若き才能を取り入れての独自のジャズをスリリングに演ずる

<Jazz>

Avishai Cohen 「Brightlight」
NAIVE / Import / BLV8583 / 2024

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Avishai Cohen (bass & vocals)
Guy Moskovich (piano on 01, 02, 04, 05, 07, 09, 10, 11)
Eden Giat (piano on 03, 06, 08)
Roni Kaspi (drums)
Noam David (drums on 03)
Yuval Drabkin (tenor saxophone on 06, 08, 11)
Yosi Ben Tovim (guitar on 03)
Lars Nilsson (trumpet on 08, 10)
Hilel Salem (flugelhorn on 03)
Jakob Sollerman (trombone on 10)
Ilan Salem (flute on 03)
Jenny Nilsson (vocal on 10)

Recording at Nilento Studio, Goteborg, Sweden (1, 2, 4, 5, 7, 9, 10), Kicha Studios, Tel-Aviv, Israel (3, 6, 8, 11)

Dsc00804w   イスラエルを代表する既にお馴染みのベーシストのほうのアヴィシャイ・コーエンのニューアルバムの登場。過去のアルバムにては、独特なメロディーに引き付けられ、不思議な世界でのジャズに魅せられてきた。その不思議さは、ユダヤの民俗音楽、ジャズ、ワールドミュージック、クラシックの影響をミックスしたドラマチックなアコースティックベースサウンドを、独特で親しみやすいスタイルに織り込んだものと言われている。しかしこの2023・2024 年ツアーでは、更に世界中で熱狂の渦に巻き込んでいると言われる(日本でもブル-ノ-ト東京公演で2年連続登場)驚異の若き才能が注目で、イスラエル出身のロニ・カスピ(drums、2000年生まれ、下左) とガイ・モスコビッチ (piano、1996年生まれ、下右)とのトリオ+αの待望の録音アルバムということである。
 この二人、女流ドラマーのロニ・カスピはダイナミックなリズムでエネルギッシュにして、ライヴで迫力のソロを展開し、時折交える変拍子もセンス抜群と言われている。ピアニストのガイ・モスコビッチも、繊細なタッチで描くハーモニーの魅力と、技術力の高さで注目。
 そしてこのアルバムの収録曲は、11曲で8曲がアヴィシャイのオリジナル曲だ。

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 アヴィシャイ・コーエンは、1970年4月20日にイスラエルのKibbutz Kabriで生まれ、スペイン、ギリシャ、ポーランドにルーツを持つ多文化家族で育った。家の環境は常に音楽があり、母親の芸術的センスからクラシック音楽と伝統音楽の両方を聴いていたという。彼のの音楽人生は9歳のときのピアノを弾く事に始まり、14歳のときに家族と一緒にミズーリ州セントルイスに引っ越した後、ピアノの勉強を続け、一方ベースギターを弾き始めました。その後イスラエルに戻ってから、エルサレムのミュージック&アーツアカデミーに参加し、ベースの世界をさらに探求。22歳のとき、軍楽隊で2年間勤務した後、コーエンは大きな一歩を踏み出すことを決意し、ニューヨーク市に引っ越した。1990年代後半にチック・コリアのトリオで注目を集めた後、彼はユダヤ民俗音楽からジャズ、クラシックの特徴を、独特で親しみやすいスタイルに構築。それにより世界的な認知度と幅広い影響力を獲得、今やジャズ界のトップベーシストの一人としての地位を固めている。

(Tracklist)
1.Courage
2.Brightlight
3.Hope
4.The Ever And Ever Evolving Etude
5.Humility
6.Drabkin
7.Roni’s Swing
8.Hitragut
9.Liebestraum Nr 3
10.Summertime
11.Polka Dots And Moonbeams

 収録11曲のうち、ガイ・モスコビッチがアレンジしたリストのM9."Liebestraum Nr 3"、ジャズ・スタンダードM10."Summertime"M11."Polka Dots And Moonbeams"以外はアヴィシャイ・コーエンのオリジナルである。

 全体の印象として、過去のアルバム(『From Darkness』(2015)、『Gentry Disturbed』(2008)など)と少々ニュアンスが異なっている印象だ。このアルバムでは、過去のオリジナル曲におけるピアノ・トリオのピアノやベースによる美旋律の情緒ある演奏が後退している。それはいつも少々見え隠れはしていたのだか、挑戦的ジャズ因子への試みがここでは主体的に増大しているのだ。それは前作『Shifting Sands』(Naïve Records、2022年)においてもみられたところであるが、その評価はこのところむしろ高まっているところにある。しかし一方私自身の好みとなると、Shai Maestro(ピアノ)がトリオにいたころの曲の描く世界の方が親しみやすかった。

 このアルバムは、いわゆる躍動的ピアノ・トリオを基軸に、テナーサックスやトランペット、フリューゲル、トロンボーン、フルート、ギター、ヴォーカルらも加わって、曲による変動した体制で迫ってくる。このあたりは私の個人的好みとは別だが、むしろジャズのグルーブ感としては面白いと思うところにある。彼が結成している現在のこの基本にあるトリオ自身がその方向に向かってエネルギー感たっぷりの充実感を追求しているのかもしれない。
 そんな中で、いつものようにコーエンの肉太ベースのうねるような躍動もリズミカルにぐっと迫ってきて、なかなかパッションあるエネルギッシュなピアノ、そしてドラムはたたみ掛けるスリル感満点を演ずる。又テナーサックスは3曲に登場し、思いの他M11."Polka Dots And Moonbeams"のように、ソフトで中々味わい深さを感じさせてくれた。

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 オープニング曲M1."Courage"は、ドライブ感のあるベースサウンドで始まり、軽快なモスコヴィッチのメロディーに乗せて、常に活気に満ちたカスピのドラムが展開。このトリオの役割紹介のような演奏。
 M2."Brightlight"タイトル曲で、トリオ三者が技術力で楽しんでいるようなコンテンポラリー作品。
 M3."Hope"は、ちょっと今までにない世界だ。ゲストミュージシャンのギタリスト、ヨシ・ベン・トヴィムとフルート奏者のイラン・セーラムが描くところが魅力的。
   M7."Roni's Swing"は、カスピに捧げられているようで、ピアノがリズミカルなスウィングにて流れるようなソロをみせ、中盤のコーエンのベースソロに繋がる。それがカスピの鋭さを引き出している。M6."Drabkin"では、ドラブキン(イスラエル)の豊かなサックスのメロディにトリオが伴奏する形。『Shifting Sands』から取られたM8."Hitragut"は、サックスのパートに対応する編曲版。M4."The Ever and Ever Evolving Etude"は、『Gently Disturbed』(2018年)に収録されている曲の再演。

 最後に3曲のカバーがアルバムを締めくくる。ちょっと驚きは、M9."Liebestraum Nr 3"で、アルバムの頂点が過ぎたところで登場し、なんとフランツ・リストの夜想曲「愛の夢」で、モスコヴィッチの流れるような上質演奏作品で納得。ジョージ・ガーシュウィンのM10."Summertime"は、コーエンのヴォーカルが登場し、跳躍するリズムを奏でアルバムを高揚感で盛り上げようとしている。しかしあまり新鮮味無く、アルバム前半のイメージからは異質で意味が感じられなかった。その代わり、最後のM11."Polka Dots and Moonbeams"は、スロー・ベースとサックスの響きが心地よく、よりメロウな音色でアルバムをうまく締めくくっている。

 作曲と演奏スタイルは、コーエンの多方面の幅広い音楽世界を反映して、快調にこ展開する。カスピは全体を通して独自路線を崩さず攻撃的でパワフルなところが目立った。モスコヴィッチはシャイ・マエストロとは異なるが、Cohenの低音ドライブに適応してそれなりに素晴らしい。このアルバムは、コーエンの創造性は相変わらず進行形で、彼の描くトリオの多才さとダイナミズムは、やはり一流と言えるだろう。

(過去のアヴィシャイ・コーエンの記事) →http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/cat57629737/index.html

(評価)
□ 曲・演奏 :   88/100
□   録音   :    88/100

(試聴)

 

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2022年6月 3日 (金)

アヴィシャイ・コーエン  Avishai Cohen Trio 「Shifting Sands」

若きメンバーを加えてのニュー・トリオでの挑戦の始まり

<Jazz>

Avishai Cohen Trio「Shifting Sands」
Naive / France / M7594 / 2022

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Avishai Cohen (upright bass),
Elchin Shirinov (piano),
Roni Kaspi (drums)

Recorded at Nilento Studio , Goteborg, Sweden Augast 2021

  なんとなく引き付けられるアルバムを造るイスラエル出身の天才ベーシストと言われるアヴィシャイ・コーエンの前作より引き続き、アゼルバイジャン人ピアニスト、エルチン・シリノフと昨年夏からツアー・バンドに加わった21歳という若き女性ドラマー、ロニ・カスピを迎え新体制で臨んだトリオ作が登場した。
 前作『Two Roses』(Naive/M7369/2021)では、オーケストラとの共演で話題を提供してくれたコーエンだが、ここにトリオという原点に戻っての、収録されている曲は、パンデミック中にエルサレム近郊の自宅で彼がピアノで作曲したものという。

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1 Intertwined
2 The Window
3 Dvash
4 Joy
5 Below
6 Shifting Sands
7 Cha Cha Rom
8 Hitragut
9 Videogame
10 Kinderblock

 クラシックに通ずるジャズそしてイスラエルを中心としたルーツ音楽として評価と人気を勝ち取ってきたアヴィシャイ・コーエンだが、イスラエルというどこか異国感ただよう哀愁を帯びた曲に多様で洗練されたリズムが聴かれ、コーエン独特の現代的な音楽のエレガントさに魅力があって、なんとなく私自身も引きつけられここでも何度か取り上げてきたところにある。

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 今回のアルバム・タイトル曲のM6."Shifting Sands"は、このパンデミックの間、エルサレム近くの自宅に数か月間拘束された中での彼のピアノにより生まれた曲という。そしてこのトリオが昨年2021年の夏に、ようやくヨーロッパでいくつかのショーを演奏することが出来、その後スウェーデンに旅行してレコーディングを行ったもの。ここにはクラシック調の雰囲気あり、パーカッシブな音とピアノの導く世界には優美さが感じられ、後半にメロディ・ラインを演ずるベースが美しい。
 M1." Intertwined"は、ピアノの低音部にてミニマル・ミュージック・パターンで流れ、ベースが協和音で響き、なかなか若き女流ドラマーが自由奔放な演奏と表現されているが、若干空気が読めていないのか、そんな"絡み合い"が面白い。
 M3."Dvash"は、ピアノの旋律で静かにゆったりとした流れにより郷愁感を呼ぶ短調の曲。
 M5." Below"では美しい風景が見えてくる。
 M7."Cha Cha Rom" ここでも、ピアノの刻むリズムにドラマーの演ずるパーカッシブな音とベースが乗っての協和音が進行し、続いてベースのアルコ奏法が色を付け、トリオ3者の干渉がそれぞれの変化に沿って盛り上がって面白い。
 M8."Hitragut" ピアノの技を楽しませる。
 M10."Kinderblock"は、美しい優しさのピアノ・ソロが続き、後半に入ってベースが美しく旋律を奏で、それをブラッシ音がサポートする美世界。

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 コーエンが絶賛するエルチン・シリノフ(上左)の独特なタッチ・フレージングのピアノ、新加入のロニ・カスピ(上右)が若さのある伸び伸びとしたドラムを披露し、なかなかコンビネーションの良さが聴ける。
 これには彼のいうトリオのメンバーについて「最も難しいのは、自分らしくあり、他人にも自分らしくいられる自由を与えることです。そして、この新しいアルバムは、私がこれまでに到達した最高レベルです。私は作曲家であり、アイデアメーカーですが、ムードと雰囲気の両方を演じている」と言っているように、年齢差を超えてそれぞれを尊重してのバンド編成そして演奏を受け入れ、アルバムを作り上げていることを話している。

(評価)
□ 曲・演奏  85/100 
□ 録音    85/100

(視聴)

*

 

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2019年6月26日 (水)

アヴィシャイ・コーエンのニュー・アルバム Avishai Cohen 「Arvoles」

異空間のみ感じられて・・・

<Jazz>
Avishai Cohen 「Arvoles」
RAZDAZ /  EU / RD4619 / 2019

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Avishai Cohen (bass)
Elchin Shirinov (piano)
Noam David (drums)
Bjorn Samuelsson (trombone #1,4,6,9,10)
Anders Hagberg (flute #1,4,6,9,10)
2019年2月18日-3月15日 Nilento Studio,Sweden 録音

Recorded mixed and mastered by Lars Nilsson

 
注目のイスラエルのベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのニュー・アルバムの登場。アルバム・タイトル「Arvoles」は、トラッド曲で「木」を意味するのだというのだが、ジャケも彼のアルバムでは一風変わった絵画での「木」が描かれている(彼の母親が描いたものらしい)。とにかく彼の今までのアルバムには、どこか郷愁を誘う美しさがあって、今回も期待のアルバムだった。
 基本はピアノ・トリオ編成。ピアノはエルチン・シリノフ(アゼルバイジャン出身)、ドラマーはイスラエル出身のノーム・ダウであり、アルバムとしては初編成トリオ。

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(Tracklist)

1.Simonero
2.Arvoles (Traditional)
3.Face Me
4.Gesture #2
5.Elchinov
6.Childhood (for Carmel)
7.Gesture #1
8.Nostalgia
9.New York 90's
10.Wings
*#1,3-10 Composed by Avishai Cohen
*All Tracks Arranged by Avishai Cohen

 

Avishai_cohenw_20190626181601  曲はのアルバム・タイトル曲M2.以外は全てアヴィシャイ自身のオリジナル曲で占められている。又今回は5曲ではホーンセクションが加わっているという試みもみられる。
 スタートM1."Simonero"はちょっと今までのイメージと違ってベースのソロから始まって展開が異様、おとなしいピアノ・トリオではない。何か新展開を試みているムード。グルービーな世界を狙ってのことか。
 M2."Alvoles"はトラッドらしいのだが、がらっと変わって軽いリズムのピアノ旋律が流れる優しい曲で、中盤彼のベースが物語るという曲だ。どこか母親に対する優しい心を描いているのだろうと思わせる。
 そしてM3"Face Met"はイスラエルっぽいムード。彼のベースが低音のアルコ奏法で響き、ピアノ、ドラムスはアフリカンぽく、ラテンぽくといったハイテク展開。
 なんかファンキーっぽくもあったり、まあピアノ・トリオの抒情的世界とは異なる。
 M6."Childhood"もホーンセクションによるメロディーを流して郷愁感はあるも、どうも馴染めない。
 M8."Nostalgia"はピアノトリオらしい展開で、ややほっとして聴くも私の期待ではなかった。

 結論的に、アヴィシャイ・コーエンの新展開と技術的な高度さもうかがえる筋は解るが、ホーンセクションが加わったり私の期待し好む世界とは別物であった。こうゆうのにのめりこむ人がいるなら話を聞いてみたいところだ。

(評価)
▢ 曲・演奏 :   ★★★★☆
▢ 録音         : ★★★★☆

(視聴)

 

 

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2015年4月13日 (月)

アヴィシャイ・コーエン・トリオAvishai Cohen Trio 「FROM DARKNESS」

エスニックな世界を持ったベーシストのトリオ作品

<Jazz>

         AVISHAI COHEN TRIO 「FROM DARKNESS」
          Razdaz Records / RD 4616 / 2015

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 イスラエル出身のベーシストででアメリカでジャズをしっかりと身につけた(チック・コリアのベーシストを務めたことでも実績を積み重ねている)アヴィシャイ・コーエン、これは彼のトリオ編成の近作。

Avishai_cohen571 私が彼のトリオ作品に接したのは2008年リリースのアルバム「Gently Disturbed」で、どちらかというとイスラエルという異国ムードが感じられるとはいえ、ヨーロピアン・ジャズ寄りの味付けが特徴というところを聴かせてくれ、それ以来何となく聴きたいミュージシャンとなっているのである。
 一年前には「ALMAH」というトリオ+ヴァイオリン、ヴィオラという編成で、ジャズとクラシックの融合を試みた作品もリリースしていて、その活動は盛ん。

(参照)
「Gently Disturbed」(2008)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/avishai-cohen-t.html
「SEVEN SEAS」(2011)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/seven-seas.html

Fromdarknesslist このアヴィシャイ・コーエン・トリオというと、やはり彼のベースの演奏と共に、彼の曲の美しさをに期待が大きい。今回のこのアルバムも11曲中10曲が彼のオリジナル曲で構成されている。(最後の”Smile”のみ誰もが知るチャプリンの曲)

 メンバーは
   Avishai Cohen : Bass
      Nitai Hershkovits : Piano
      Daniel Dor : Drums

                         ・・・・・・・と、重要なピアニストは、前作のベースとピアノのデュオ作品「Duende」(2012年)からのNitai Hershkovits がこの作品でも起用されている。
 2011年の「SEVEN SEAS」は、イスラエル関係からの多彩なプレイヤーとコーエンのヴォーカルと、とにかくイスラエル・ムードたっぷりのエスニックな背景を持ったアルバムだったが、今作のような彼のベースとピアノ、ドラムスとのトリオ作品は、以前からメンバー・チェンジはあるとは言えオーソドックスなジャズ・アルバムに仕上げている。

Dsc04946small このアルバムでは最も長い曲”Ballad for an Unborn”が良いですね。美しいピアノのメロディー、それにベースが響き、ドラムスが追って乗ってくる。やがてベースがピアノが交互に旋律を奏で、そしてここでは静寂と異空間のドラムスがその後に続く。絶妙の間をとって三者が叙情的な世界を構築している。
 全体的にベースとドラムスのリズム取りはパワーがある。そんなところはこのトリオの特徴だ。
 アルバム・タイトル曲”From Darkness”では、モダニスティックな世界が展開されるが、一方”Halelyah”、”Almah Sleeping”ではクラシック的なピアノが聴ける。
 最後は懐かしのメロディーで心を和らげて締めくくるのである。
 異色と言えば異色なのかもしれないが、非常に聴きやすいトリオ・アルバムである。

(視聴) "Beyond"

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2013年8月30日 (金)

アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohen : 「七つの海 SEVEN SEAS」

これはやっぱりユーロでなく、アメリカンでもなく・・・・不思議なジャズ

 アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のジャズ・ベーシスト。私が何でこの中東イスラエル系のジャズを聴くのかと言うと、先日取り上げたピアノ・トリオ("アビシャイ・コーエン・トリオ"参照)がなかなか異色作で魅力もあるところからちょっと気になっている為です。このアルバムも友人からの紹介なんですが、その友人がなんでこれにご執心なのかは実は聞いてないのです。

<Contemporary Jazz> AVISHAI COHEN 「SEVEN SEAS」
                               Blue Note   TOCJ 90070  ,  2011

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 このアルバムはベーシストのアヴィシャイ・コーエンの12作目のようだ。先日話題にした彼の名を冠したピアノ・トリオものとは異なって、これはかなり彼の拘りの世界。つまりイスラエルの臭いのするジャズ、民族色のあるコンテンポラリーなもので、彼の活躍の舞台であるアメリカン・ジャズそのものとは別物と言って良い。従ってそれだけ異色のメロディー、リズムが交錯しくると、私にとってお気に入りになると言うより、興味を持つと言う点においての注目もの。しかし彼のベースはしっかり楽しめるところは、ファンにとっては貴重なんでしょうね。この盤は録音も良く、ベースの音が厚く低音が充実していて良好~これも魅力。

(クレジット)
Avishai Cohen: Bass, Vocals. (Piano on 'Dreaming' and 'Tres Hermanicas Eran').
Shai Maestro: Piano.
Itamar Doari: Percussion, Vocals on 'Two Roses'
Karen Malka: Vocals.
Amos Hoffman: Oud and Electric Guitar.
Jenny Nilsson: Vocals on 'About a Tree'.
Jimmy Greene: Soprano and Tenor Saxophone.
Lars Nilsson: Flugelhorn.
Bjorn Samuelsson: Trombone.
Bjorn Bholin: English Horn.


Ak2Recorded, mixed and mastered by Lars Nilsson at Nilento Studios, Goteburg, Sweden in September and October 2010.

All songs written and composed by Avishai Cohen, except 2.9. and 10. (下記Tracklist参照)
All songs Arranged by Avishai Cohen except 1. and 3. by Avishai Cohen and Itamar Doari/ Horns arrangements on 6. by Shai Maestro.

 上のクレジットを見ても解るように多くの楽器、そしてアヴィシャイ自身とその他のヴォーカルも入る。特にあの中東の楽器ウード(日本の琵琶みたいな撥弦楽器)も入っての聴き慣れないアンサンブルを展開する。収録されている曲は彼自身の7曲を中心に、全て彼のアレンジで演奏されている。
 

Tracklist
1. Dreaming
2. About a Tree (oyfn weg shteyt a boym)
3. Seven Seas
4. Halah
5. Staav
6. Ani Aff
7. Worksong
8. Hayo Hayta
9. Two Roses (shnei shoshanim)
10. Tres Hermanic Eran

 第一曲目の” Dreaming”がピアノ・トリオ風の演奏で取っ付きやすく、なかなか旋律も魅力的、バックに女性のスキャト風なヴォーカルが入るが、途中のリズムはラテンもの風なところも入って面白い。
 続いての ” About a Tree”も自然に聴けるピアノによる親しみやすいメロディーが流れ、その後からアヴィシャイのヴォーカルが入りつつ、ベースがしっかりとそれを受け継いで旋律を奏でて、そうそうこれはベーシストのアルバムであるのだと自覚させる。このように全体を通してもイスラエルの若きシャイ・マエストロのピアノがメロディを聴かせる良い役割を果たしていて、無くてはならない世界を構築している。そして少なくともこの二人の描くところがイスラエル節なんでしょうね。
 アルバム・タイトル曲” Seven Seas”は、やはり奇妙なリズムが軽快に展開し、後半のピアノ・プレイはアメリカン・ジャズの臭いも出てくる。なるほどこのあたりが彼らの独特のジャズなんだろうなぁ~~。
 ” Halah”ではウードの音色がしっかり聴かれ、如何にも中東世界を頭に描かせてくれる。なかなかこの曲魅力あります。 
 そして” Ani Aff”となると、いやはや馴染みの無い旋律、リズムが展開してちょっとついて行くに大変。
 ”Hayo Hayta”は曲名の意味は解らないが、哀愁感を醸しだし中東社会を頭に描かせる。落ち着いた良い曲。

 とにかく、ちょっと聴いてみるには異色の世界で、ご馳走の味直しには最適なアルバムだ。しかしこれがインターナショナルにジャズ・ファンに広く受け入れられて行くとはちょっと考えにくい。まああのトリオ・アルバムぐらいが私にとっても良いところといった感じだった。

(参考)"Avishai Cohen Trio" http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/avishai-cohen-t.html

(試聴) http://www.youtube.com/watch?v=2p6nlhe9jy8

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2013年8月26日 (月)

アヴィシャイ・コーエン・トリオAvishai Cohen Trio:「覚醒 Gently Disturbed」

独特なリズムが襲ってくるコンテンポラリー・ジャズ

 ジャズ・ベーシストであり、トリオもの等で素晴らしいアルバムを作成しているスウェーデンのラーシュ・ダニエルソンは私が一押しのベーシストであり、ちょっと友人に紹介したら喜んでくれて、そのお返しが来た。それがこのアヴィシャイ・コーエン。なるほど、ここにも異色(”簡単には語れない”の意味)のベーシスト作品があるのだなぁ~~と、感心しながら聴いているところ(感謝)。久々にジャズ・トリオを取り上げる。

<Jazz> Avishai Cohen Trio 「Gently Disturbed 」
            Sunnyside    4607 ,  2008

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 アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohenはイスラエル出身のベーシスト、このトリオのピアニストShai Maestroも21歳のイスラエル人である。さてこのジャズ・アルバム とにかく不思議なリズムと意外に優しいメロディーが漂うのである。
 コーエンはイスラエルで幼少の頃からピアノを弾き、14歳にアメリカ・セントルイスへ父親の仕事の関係で移住。そこでジャズを知り15歳からベースを奏するようになる。その後イスラエルに帰るも、ジャス音楽の道に志しを持って、十代にして今度は単身アメリカ・ニューヨークに渡ったという経歴。そして彼の活動の場は地下鉄、公園など所謂ストリート・ミュージシャンとしての人間最低限の生活から這い上がってきたという。
 ジャズ・クラブに出ることが出来るようになって(1993年)、チック・コリアに認められたことが彼の開花の発端だったらしい。その後2003年まではチック・コリアと活動を共にしている。

560858Avishai Cohen - Bass
Mark Guiliana -  Drums
Shai Maestro -   Piano

Avishai Cohen uses Aguilar Amplifiers.
Mark Guiliana uses Sabian Cymbals and Vic Firth Drumsticks.

Nilento Studios AB. Algvagen 1 428 34
Kallered. Gothenburg. Sweden
www.nilento.se


演奏曲は、以下の通りtraditionalが2曲(*印)入って、他はコーエン中心ののオリジナル。
  1 Seattle
  2 Chutzpan
  3 Baiom Velo Balyla *
  4 Pinzin Kinzin
  5 Puncha  Puncha *
  6 Eleven Wives
  7 Gently Disturbed
  8 Ever Evolving Etude
  9  Variations in G Minor
10 Umray
11 Structure In Emotion
  ~All compositions written and arranged by Avishai Cohen GADU MUSIC/BMI
  ~Tracks 4 and 6 Co-written with Shai Maestro and Mark Guiliana (HEERNT Music/BMI)


 このアルバムは・アヴィシャイ・コーエンにとっては9作目とのこと。かっては中近東色を打ち出しての作品作りをしていたようだが、ここに来てトリオ・アルバム制作に着手。アルバムの醸し出す雰囲気がイスラエルであると言うことではないと思うが一種独特な世界がある。彼は全曲ウッドベースを使用していて、そして前面に出ると言うことでなく、トリオとしてのバランスは保ちつつ、どちらかと言うとオーソドックスなベースを聴かせる。と言っても、やはりあまり聴くことのない変拍子手法が出現する。このあたりは特徴と言えばそうなるところ。
 曲ではイスラエルのトラディッショナルという”Baiom Velo Balyra”、”Punca Punca”の2曲も登場するが、ピアノが美しい世界を展開してゆく中で、それにに続いてベースのサウンドもリズムを刻みつつその上になんとなく哀愁感があるメロディを奏していて気に入ってしまった。
 ピアノのシャイ・マエストロShai Maestroはなかなか良い役をこなしており、結構クラシックっぽいところにある(特に”Variation in G Minor”など)のが特徴。彼は1987年生まれで新鋭そのもの。テルアビブ郊外のギバタイムというところにあるテルマ・イェリン国立芸術高等学校でジャズ、クラシックを学んだという。いずれにしてもなかなかの注目株。
 このアルバムにみるコーエンの曲は、多分イスラエルということとは関係なしに彼の築いた世界なのであろうが、何か不思議なリズムを持っていて、そしてトリオで次第に盛り上げていく手法がなかなか魅力的。特に”Eleven Wives”はアメリカン・ジャズとの違いを十二分に感ずるのだが・・・・どちらかというとヨーロッパ的な方向だ。これが彼のコンテンポラリー・ジャズなのであろう。

(試聴)

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