ピアノ・トリオ

2017年11月 9日 (木)

大橋祐子トリオ「ワルツNo.4」

(今年聴いて印象に残ったアルバムを-1)
 もう11月、これからあっという間に年末になってしまうんですね。となれば、今年聴いたアルバムを整理しておくことにする。

スタジオとホール録音、「迫真の疲労」と「快感」の違い

<Jazz>
YUKO OHASHI TRIO 「WALTZ No.4」
TERASHIMA Records / JPN / TGCS-9672/9673 / 2017

No4w

大橋 祐子(piano)
佐藤 忍(bass)
守 新治(drums)
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)

 寺島レコード10周年特別企画として昨年末にリリースされたアルバム。ジャズ・ピアニスト大橋祐子の4作目としてピアノ・トリオ作品を録音に凝って作成されたもの。もともと寺島靖国はオーディオ的にジャズ・アルバムを聴いてきた人であるし、こんなスタジオ録音(寺島サウンド)vsホール録音(大間知サウンド)の2枚組CDとして我々に聴かせてくれたのである。
 大橋祐子(東京都八王子市出身)は、もともとクラシック・ピアノを学び、2010年に寺島レコードより『PRELUDE TO A KISS』(TYR1018)でデビュー。その後の諸作に好評を得てきた女性ピアニスト。現在、佐藤 忍(bass)、守 新治(drums)とトリオを結成している。

★ このアルバムの注目点は、オーディオ的に楽しめると言うところだ。先ずは寺島靖国の納得のスタジオ録音、これには寺島靖国プロデューサーとランドマークスタジオ佐藤宏章によるもの。最近は「哀愁とガッツ」というタイトルが有名になった録音。そして今回は、なんとエソテリック社顧問にして、数々の高音質録音に携わる大間知基彰が、アコースティック録音でのオーディオ・マニアに絶大な信頼を得るオクタヴィア・レコード江崎友淑エンジニアと組んだ稲城市立iプラザホールにおける録音の2本立てのCD2枚組。

20170325014811_deco_2【DISC.1】 ホール録音盤
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
サウンド・プロデュース:大間知基彰 (エソテリック株式会社)
2016年10月5日稲城市立iプラザホール録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. ホーム (Michel Petruccani)
05. ラヴ・ミー・テンダー (Traditional / Elvis Presley)
06. アイ・シンク・アイ・クッド・ビー・ハッピー (Magne Furuholmen)
07. ソー・イン・ラヴ (Cole Porter)
08. プルメリア (Yuko Ohashi)
09. ワルツ #4 (Yuko Ohashi)
10. セント・ジェームズ病院 (別テイク) (Traditional)


【DISC.2】 スタジオ録音盤
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)
サウンド・プロデュース:寺島靖国 (寺島レコード)
2016年9月30日横浜ランドマーク・スタジオ録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. 哀しみのダンス (Leonard Cohen)
05. ダニー・ボーイ (Traditional)
06. アンカー (Yuko Ohashi)
07. アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング (Charlie Haden)
08. アインダ・ベム (Marisa Monte)
09. ニュー・デイズ (Yuko Ohashi)
10. オヴァート (King Fleming)



 約一週間の間隔を開けての同メンバーによる演奏の2タイプ録音であるが、最初の3曲は若干演奏が違うが同一曲。やはり"セント・ジェームズ病院"が聴きどころ。
 まずはなんと言っても寺島サウンドのスタジオ盤の迫力。とにかく生々しいリアルな迫真のサウンド。 切れ味とソリッド感が抜群で有り、低音の重さと迫力も十分。まあドラマチックというところです。
 一方ホール録音は残響も含めてホール感はしっかりとあり、同一のピアノ(Steinway & Sons D274 Concert Grand Piano)とは思えない音色だ。まあこうゆうのをエレガンスな音と言うのだろう。バックのベース、ドラムスは、これは明らかにそのもののバックでの支えに録音されていてトリオ三つ巴というよりは、ピアノ中心主義だ。

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                                                (寺島靖国)
 これ程異なる音となると、いやはや録音が如何に重要か思い知らされる。
 さてそこで結論を言ってしまおう。とにかく「スタジオ録音」寺島サウンドは凄い。聴いてみればもう文句は言えない迫力である。聴き始めのM01. "セント・ジェームズ病院 "を聴いた瞬間ゾクっとする迫真の迫力音。さてそこは凄いのだが、このCDを聴いていって解るが、ピアノ、ベース、ドラムスが同一の迫力で迫ってきて、そしてこの音ですから、数曲聴くとまず「疲労」に陥る。
 一方、このCDの後に「ホール録音盤」を聴くとベース、ドラムスの音が少々空しくなる。・・・・が、数曲聴き込んでいくと、その繊細にして優しさの音に快感の世界に流れ込むのである。
 さあ、この違いにどちらに軍配を挙げるのだろうか?、それはもう好みの世界であってということになる。さてそこで私の場合であるが、まず聴く時の状態でどちらかを選ぶことになるだろう。ガンガン聴きたい高揚した気分の時は、「スタジオ盤」。夜などに一人でゆったりと安らぎを求めて聴きたいときは「ホール盤」ということになるだろう。つまり両方欲張りだが欲しくなるのであるが、ミュージックを聴き込むとなればホール盤なんでしょうかね。

Photo ★ 最後に大橋祐子のピアノ演奏は?、と言うところだが・・・・目下過渡期ですね。 "セント・ジェームズ病院"はそれなりにジャズ色も感じられ意志がみられるが(10曲目の別テイクが良い)、しかし"エストレリータ"はどこでも聴かれる単なる演奏であって聴く人の心を呼び起こすところは無い。 " ソー・イン・ラヴ"は余韻の使い方に一歩前進あり。 "ワルツNo.4"そして"アンカー"は自己の曲だけあって聴き応えあり。 "哀しみのダンス"は、中盤以降の編曲部になってようやくそれらしくなる。 "アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング"は、こうした美旋律をどう熟すかがポイントだが、味付けはもう一歩。
  (余談)大橋祐子って鼻から口の辺りがダイアナ・クラールに似てますね(特に横顔)。ヴォーカルはどうなんでしょうか?。まさか親父声では?。

(視聴)   「ワルツNo.4」に関する映像が見当たりませんでした・・・・取り敢えず↓

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2017年11月 5日 (日)

ルイージ・マルティナーレLUIGI MARTINALE TRIO「face the music」

音楽的センスが漂っている粋なトリオ

<Jazz>

LUIGI MARTINALE TRIO「face the music」
ABEAT Records / ITA / AB JZ 549 / 2015


61jpjmedv9lw

Luigi Martinale (p)
Reuben Rogers (b)
Paolo Franciscone (ds)
Recorded by Alberto Macerata at Play Studio, Bricherasio, (CN) Italy
on January 15th, 16th, 2014

 寺島靖国選曲シリーズ『for Jazz Audio Fans Only Vol.10』(TYR-1060)で知ったアルバムだ。実はこのルイージ・マルティナーレ・トリオLuigi Martinale Trioに関しては、私は白紙状態。このシリーズに選ばれた事から興味を持せていただいた。まだまだ私の守備範囲の狭さを実感させられた。

Rmtrio このアルバム、ここに選ばれたと言うだけあって録音も秀悦。リアルな音と曲としての配置と残響が見事にバランス良く再生される。なんと寺島靖国自身のアルバムは、ちょっとリアルなところを追求するが為に、曲としてのバランスをどうしても欠いてしまうのだが、そんな意味でもこれはさすがに音楽のイタリアというところである(昨年末リリースされて評判だった大橋祐子の『ワルツNo.4』(TYR-1054/1055)の”スタジオ盤”と比較してみると面白い)。
  ピアニストのルイージ・マルティナーレは1963年生まれと言うことだから今年で54歳、円熟期ですね。彼はトリノ音楽院でクラシック音楽を学んで、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院ではエンリコ・ピエラヌンツィにジャズを学んでいる。
 このアルバムもベースにリューベン・ロジャースReuben Rogers を迎えての音楽的センスの満ちあふれたアルバムに作り上げている。

(Tracklist)

List

  収録曲は10曲中6曲はルイージ・マルティナーレ自身のオリジナル曲。スタートのThelonoous Monkの曲"Ask me now"を聴くと、三者のバランスも良くなかなか粋なトリオだと言うことが解る。
 M2."Caress" 、マルティナーレの曲が登場すると、成る程ユーロ・ジャズのメロディーの美しさが迫ってくる。明らかにこの曲を挟むM1.M3.のモンクの曲とは本質的に異なるところが見えてくる。それでかえって私の求める魅力度が高まってくる。
 M4.Coots/Lewisの"For all we Know"はしっとりと演奏され、ピアノが美しく流れちょっと想いに耽ることが出来る。後半にベース・ソロも気持ちを落ち着かせてくれる。
 M5からM9までマルティナーレの曲が続くが、寺島靖国にも選ばれたM7."Breath"が良いですね。ピアノが高音で流す部分のメロディーはエレガントで美しく魅力たっぷり。展開もふと題名のように"囁(ささ)き"が感じられる。
 M9."Indian Trick"のリズム展開は、異色的で面白い。

 このアルバムは好録音も後押ししていると思うが、なかなか達人のトリオ・ミュージックとして捉えることになったもの。彼の他のアルバムも聴いてみたいと思っているところだ。

(視聴)
(Solo)      Luigi Martinale

 
                             *            *

(Trio)     Luigi Martinale Trio

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2017年11月 1日 (水)

寺島靖国選曲シリーズ「For Jazz Audio Fans Only Vol.10」

(ミュージック鑑賞の秋)

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      (このところLP復活で、古き名機のDENON DP-80が頑張ってます)

オーディオ・ファンを楽しませてくれるジャズ・アルバム10巻目
~好録音のピアノ・トリオを満喫~

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Audio Fans Only Vol.10」

Terashima Records / JPN / TYR-1060 / 2017

Forjazzaudiofansonly10

 2001年スタートの寺島靖国選曲のコンピレーション・シリーズの『Jazz Bar』も既に16年となり、年1枚での16巻をなんとなく聴いて来た。そしてここに取りあげるそれに継ぐシリーズとして、これも既にいつの間にか10年となる『For Jazz Audio Fans Only 』、今年で10巻目となった。これも私は取り敢えず楽しみにしているシリーズで、既に聴いたアルバムからの曲も収録されているのだが、やっぱり聴いてしまうのである。
 寺島靖国の選曲は録音にも拘りがあってのことで、『Jazz Bar』に登場する曲群もオーディオ・ファン向けでもあるが、この『For Jazz Audio Fans Only 』シリーズは更にその点が強調されている。又曲もどちらかというとピアノ・トリオが主力であるため、その点は私好みとも一致していて、既にこれによって知ったマイナーなトリオも過去にあって、結構楽しませて頂いているのである。そして10年目の「Volume 10」を、ここで少々紹介する事とする。

(Tracklist)
1. Estate [The Kirk Lightsey Trio]
2. Les Rails enchevetres [Georges Paczynski Trio]
3. Spring Lingers [Alf Haggkvist Trio]
4. Laberinto [Sergio Gruz Trio]
5. St. James Infirmary [大橋祐子トリオ]
6. Elm [Roberto Olzer Quartet]
7. Pap [Carsten Daerr Trio]
8. Drum Afterlude [Carsten Daerr Trio]
9. Breath [Luigi Martinale Trio]
10. Noble One [Scott Earl Holman Trio]
11. When My Anger Starts To Cry [RGG]
12. Then Goodbye [Michael Salling Trio]
13. Fit To Fly [Guido Santoni Trio]

 2曲目は、あのシンバルの響きを代表に驚きのサウンドであったGeorges Paczynski Trioのアルバムだが、ここでは既に紹介した『LE VOYAGEUR SANS BAGAGE』(ASCD161101)から"Les Rails enchevetres"が取りあげられている。これはフランスのヴァンサン・ブルレVincent Bruleyによる録音・ミックスもので、数年前の作品からそのリアルなサウンドで話題になってきており、そのメンバーによる今年のリリースもの。

Walz4w M5. "St. James Infirmary" は、大橋祐子トリオだ。寺島レコード・アルバム『WALZ 4』(TYR-1054)(→)から。スタジオ録音の他、大間知基彰氏が、オーディオ・マニアに評価の高いオクタヴィア・レコード江崎友淑エンジニアと組んだホール録音などが別にCD一枚あって話題になったもの。オーディオ・マニアに喜ばれた。

 M6."Elm"これもここで既に取りあげた Roberto Olzer Quartetのアルバム『FLOATIN' IN』(ABJZ168)からの、Richie Beirachの曲だ。私の愛する曲では最右翼のもので、これはトリオにトランペットが加わった良演奏、録音はこれも名手イタリアのStefano Amerioだ。

61jpjmedv9lw M9. "Breath" この曲は知らなかったが、イタリアのLuigi Martinale Trioによるもので、なかなか情緒のあるピアノ・トリオ演奏と好録音で気持ちが良い。アルバム『face the music』(ABJZ549)(→)からで、ピアニストのルイジ・マルティナーレのオリジナル曲が6曲収録されていて、この曲はその内の1曲。彼はエンリコ・ピエラヌンツィに多々指導を受けてきたようであるが、今年で50歳代半ばになり円熟期。

5169yse82l M12. "Then Goodbye"も良いですね。デンマークの Michael Salling Trioですが、アルバム『Nice Vibrations』(CALI087)(→)からだ。スウィングするジャズ心とヨーロッパ的リリシズムが合体した感のあるこれも愛すべきアルバム。
 

 今回の選曲もなかなか味なもので、ナイスなコンピレーション・アルバムが出来上がった。本来オムニバスものは余り好まないのだが、これは選ばれ採用されるモノが、ピアノ・トリオが主力であってその為私は大歓迎ということになるのであった。又今時の名技術陣による好録音合戦を目の当たりに体験できる。そんなところも注目点。

(試聴)

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2017年10月 5日 (木)

シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli 「Emanation」

ジャズの真髄を心得ているかと思わせる展開
~民族性をしっかり確保しつつ~

<Jazz>

Shahin Novrasli 「Emanation」
Jazz Village / AUS / JV570141 / 2017


Novrasli

Shahin Novrasli(p, vo 6), James Cammack(b), Andre Ceccarelli(ds),
Erekle Kolava(perc), Didier Lockwood(vln 3,6)

 Audio Mixers: Shahin Novrasli; Vincent Mahey. Liner Note Authors: Shahin Novrasli; Didier Lockwood. Recording information: Studio Sextan, Malakoff, France (04/2016)

 シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli は、1977年生まれのアゼルバイジャンの首都バクー出身のピアニスト。これがなかなか若さを越えた技量と民族的センスをしっかり持った曲を展開する。アゼルバイジャンとはどうも馴染みがないが、南コーカサスに位置する共和制国家だという。北はロシア、北西はグルジア、西はアルメニア、南はイランと国境を接する国で、東はカスピ海に面している。こう説明を聞くとなんとなくイメージが湧いてくる。
 昔ヨーロッパから日本に帰ってくる航空機のルートに「南回り」といって、この上空を通って、インド、タイ経由で日本に帰ってきたが、この辺りは上空から見るとまさに日本とは全く違った広大な黄色の大地の世界だ。しかしアゼルバイシャンは山岳と緑に恵まれている。そしてこうみると何となくその曲のタイプが想像されるところだが、”コーカサスの文化とヨーロッパの古典音楽とジャズを融合したユニークな独自の音楽を切り拓いている”と紹介されている。
 このアルバムは基本的にはピアノ・トリオだ。ただそれに曲によってパーカッション、そしてヴァイオリン(M.3, M.6)が加わったりしている。

Shahinnweb(Tracklist)
1.  Emanation
2.  Song of Ashug
3.  Saga
4.  Jungle
5.  Misri Blues
6.  Ancient Parallel
7.  Tittle Tattle
8.  Yellow Nightingale
9.  Land

  •  全曲ノヴラスリのオリジナル曲。なんとなくクラシック・ムードを漂わせるのだが、やっぱりコンテンポラリーの範疇か。
      M6."Ancient Parallel"を聴けば、突然ヴォーカルが登場してビックリ、いやはやこれは中近東方面だと実感する。そんな民族性の強い曲も登場するが、この曲の終盤にはなんと前衛的なジャズに突入する。
     M4. "Jungle"のベースの唸るリフも凄いがピアノのインプロヴィゼーションは見事。
     M8."Yellow Nightingale"などは、同様にベースの唸りでスタートして、完全にフリー・ジャズに突入、ここでもインプロヴィゼーションの掛け合い風な展開もお見事だ。そしてその流れは快感で、次第に引き込まれて言ってしまう。

     シャヒン・ノヴラスリは”5歳からクラシック・ピアノの専門教育を受け、若くして高い評価を受けていた彼だが、アゼルバイジャンの民族音楽"ムガーム"とジャズの融合を成し遂げた音楽家ヴァギフ・ムスタファ・ザデの影響のもと、ジャズの世界へ。96年に自国のコンサヴァトリーに入学以降、キース・ジャレット、チック・コリア、ビル・エヴァンスを研究”と紹介されている。そう思って聴くと、成る程と思わせるところがないではない。これだけスリリングな曲展開をするのだが、どことなく哀愁が漂っているところが私をして魅了させられてしまうのである。更に、M9." Land"などのパーカッション、ドラムス、ベースそしてピアノのそれぞれの音の間の置き方など、とても若さの範疇で無く円熟したミュージシャンの世界と思わせる。

     いやはやなかなかジャズ心と、民族の味の深さと、ピアノという楽器の曲に於いての占める位置を達観した世界とのミックスされたミュージックを作り上げたこのアルバムには脱帽の敬意を表したい。お見事。
  •  
  • (視聴)

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    2017年10月 1日 (日)

    マティヤ・デディクMatija Dedićのピアノ・トリオ作品        「From The Beginning」

    華麗なタッチの流麗なピアノが魅力

    <Jazz>
    Matija Dedić 「From The Beginning」
    Dallas Records / EU / DALLAS 570 / 2009

    Fromthebeginning

    Matija Dedić : piano
    Jeff Ballard : drums
    Larry Grenadier : bass

     このアルバムに至ったのは、これもまた寺島靖国の『FOR JAZZ DRUMS FANS ONLY Vol.1』(Terashima Records/TYR1057)に取りあげられたこのトリオの曲"From The Beginning"を聴いたためだ。とにかく洗練された演奏ぶりと、そしてトリオ・メンバーに興味を持ったからである。

    7075dfe95d07bd88145f 実はこの肝心のクロアチア出身のピアニストのマティヤ・デディクMatija Dedić(1973年ザグレブ生まれ)を私は知らなかった 。このアルバムは、2009年リリースのピアノ・トリオ作品だ。 むしろリズム隊のブラッド・メルドー・トリオのドラマーのあるジェフ・バラードJeff Ballard 、ブラッド・メルドーやパット・メセニーとの関係で知られるベーシスト、ラリー・グレナディアLarry Grenadier が参加していることが興味を持った要因でもある。

    Jeffballardw メンバーからみると、その筋ではかなりの評価を得ていると推測するところだが、このマティヤについては、思いのほか情報は少ない。日本では知る人ぞ知ると言った所なのだろうか。いやはや私の世間の狭さを痛感させられた。
     CD2枚組の全12曲、マティヤMatija Dedićのピアノ・ソロも4曲登場し、彼のオリジナル曲が半分の6曲を占めている。こうして見ると、これは完全に彼の作品ということになるのだが、メジャー・デビュー作だったのか?。

    List_2

    Larrygrenadierw スタートの(CD1)M1."Rrom the beginning"が寺島靖国に選ばれてた訳だが、ジェフ・バラードJeff Ballardのドラムスから入って、ピアノがおもむろに登場する。そのピアノは極めて華麗で、無理に主役に踊り出ず、続いてベースがピアノに変わって流れの主役になり、中盤以降は三者のトリオ・プレイが楽しめる。なかなか洒落た演奏だ。
     そして(CD1)M4."W.A.M."は、おもっいっきり三者のジャズの乗りを展開する快感の曲。 (CD1)M6."You are Too beautiful"では、スローナンバーで流麗なピアノの華麗さ、繊細さは当に”ビューティフル”そのもの。 (CD1)M5."Angela"及び(CD2)M3."Marina's dilemma",M6."Dr.A"は、ピアノ・ソロで完全にクラシック世界をベースにした美しいジャズを聴かせる。
     (CD2)M2."Nardis"、(CD2)M5."Bye,bye blackbird"の三者のインタープレイは、その華麗さに圧倒される曲。 (CD2)M4."Lush life"もその洒落た美しさは卓越している。

     このトリオは、流麗なピアノが魅力と同時に、ジャズの醍醐味と味を知り尽くしたかのようなリズム隊によって、お互いが出しゃばること無く華麗なタッチで仕上げているところが魅力。それにしてもピアニストのマティヤ・デディクMatija Dedićはこれからも相当に期待してよいプレイヤーにしてコンポーザーと思う。日本では、このアルバムより後の2015年のアルバム『Sentina』 (BLUE BAMBO/US/PWBBM021)で支持を得たようだが、近作に『DEDICATED』(ears&eyes Records/2017)があり、是非ともアプローチしたいところだ。

    (試聴)

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    2017年9月27日 (水)

    ビル・キャロザーズBill Carrothersの名盤「after hours Volume 4」

    都会の夜を描くジャズを演ずる

    <Jazz>
    Bill Carrothers 「after hours Volume 4」
    Go Jazz Records / Germany / GO 6037 2 / 20002

    Afterhours

    Bill Carrothers(p)
    Billy Peterson(b)
    Kenny Horst(ds)

    Recording : Steve Wiese at Creation Audio (1998)

      ビル・キャロザーズBill Carrothers(1964年、米国ミネソタ州生まれ) の90年代末期の名盤『after hours Vol.4』をあらためて聴くことになった。それも前回紹介の寺島靖国によるアルバム『FOR JAZZ DRUMS FANS ONLY vol.1』に、近年リイシューされたこのアルバムからの聴き慣れたC.Porterの曲”My Heart Belong To Daddy”が納められていて、なかなかの名演奏、そして名録音、うーんこれは是非この曲を納めたアルバムを聴いてみたいと言うことになったのだ。(この曲はBill Carrothers Trio (Gary Peacock & Bill Stewart)として全く別の演奏もあるが、私の好みからは断然こちらに軍配を挙げる)

     これは夜中から明け方にかけて録音するというちょっと珍しいシリーズものであって、これは4作目。それもリリースされた1999年当時はなかなかの評価を勝ち取っている。時間が時間のためか、とにかくキャロザーズの力みなのないそして都会の夜を見事に演じた一枚である。
     実はこのアルバムは3回のリリースを経てきている(1999,  2002,  2014)人気盤。私が今回手に入れたのは2回目の2002年リリースものだ。

    Bc1
    Setlist
    1 In The Wee Small Hours 3:40 
    2 On Green Dolphin St. 7:15 
    3 On Green Dolphin St. (Reprise) 2:58 
    4 For Heaven's Sake 6:20 
    5 Chelsea Bridge 5:38 
    6 It's Easy To Remember 3:56 
    7 My Heart Belongs To Daddy 7:15 
    8 Lost In The Stars 4:12 
    9 A Flower Is A Lovesome Thing 5:45 
    10 P.S. I Love You 5:47 
    11 Young And Foolish 4:29 
    12 For All We Know 4:46 

     やはり全編After Hoursのムードがたっぷりで私好み。とにかく洗練されたピアノ・トリオ・ジャズを都会の夜の世界に身を置くがごとく、しっとりと聴くことが出来る。
     そして録音が又良いのだ。ただクリアーにしてリアルな音のみを追求するというのでなく、曲としての仕上げを十分意識した適度なリアル感と音の余韻、更に楽器の配置と音の広がりなどが優れているため、実に気分良く聴ける。これはまさにミュージックを考えての録音である。

     演奏面の技術的な高さとセンスの良さも素晴らしい。M1." In The Wee Small Hours" は、スタートに相応しく流れるが如くのピアノの調べ、これが余韻のあるクリアー・サウンドで迫ってくる。その響きは優しさに満ちあふれている。そしてベース、ドラムスがバックから見事に支える演奏とサウンドで曲の厚みを作り上げる。そしてこの流れは続く曲群に置いても見事な抑揚を持って迫り、シンバル音の配置、ドラムスの適度なリズム構成、ベースの語りと楽しませて入れる。
     M.2, M,3 の2曲の"On Green Dolphin St."そしてM.4 "For Heaven's Sake"
     では、三者の音の夜を描く余韻に魅了される。M.6 "It's Easy To Remember"は思索の世界。 
     お目当ての特にM.7 "My Heart Belongs To Daddy"M. 
    8 "Lost In The Stars"  等のピアノのタッチの優しさは絶妙そのもの。M.11 "Young And Foolish "のベースの語りと、ドラムスの攻めも一つの聴きどころ。

     こうしてアルバム12曲を通して聴くと、このトリオのセンスの良さがしみじみと感じられるのである。いやはやこうした名盤は再発を繰り返すのはよく解るところだ。

    (試聴)

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    2017年9月23日 (土)

    寺島靖国プレゼント「FOR JAZZ DRUMS FANS ONLY Vol.1」

    ジャズにおけるドラムスの役割の再認識を!

    <Jazz>

    Yasukuni Terashima Presents
    「FOR JAZZ DRUMS FANS ONLY Vol.1」

    Terashima Records / JPN / TYR1057 / 2017

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      ドラムスが生き生きと活躍するジャズ演奏シリーズの開幕だ。この寺島靖国によるシリーズでは、「Jazz Bar」、「FOR JAZZ AUDIO FANS ONLY」、「For Jazz Vocal Fans Only」など楽しませてもらっているが、中でも時にちょっと馴染みの無い演奏家にお目にかかる事があって、しかもそれがなかなか納得の世界であることを教えて頂いたと言う経過もある。そんな事で、楽しみにしている一つです。そこに今度はドラムスに焦点を当ててのシリーズで、いやはやこれも当然聴いてみたくなったというところなのである。

     宣伝では、「ガッツと哀愁のサウンド」というところがテーマであるようで、それはそれ重要点であることは納得である。レーベル創立10周年ということもあって新たなコンピレーション・シリーズをスタートさせたという意味は、「ジャズは音で聴け」と言うところにも関わってくるようで、案外録音された音にもポイントを置かれていて、私にとっては、それも楽しみと言えば楽しみなシリーズでもある。

     さて登場は、以下の通り13のグループのアルバムからの選曲だ。

    1. It's All Right With Me (Cole Porter) by Emmet Cohen
    2. Fragile (Sting) by Hans Esbjerg
    3. Alone Together (Arthur Schwartz) by Joe Mulholland Trio
    4. My Heart Belong To Daddy (Cole Porter) by Bill Carrothers
    5. Wise (Alex Mercado) by Alex Mercado Trio
    6. Tres Palabras (Oswaldo Farres) by Christof Sanger
    7. The Fruit (Bud Powell) by David Hazeltine
    8. From The Beginning (Matija Dedić) by Matija Dedić
    9. The Intimacy Of The Blues (Billy Strayhorn) by Albert Heath
    10. Rockin' Chair (Horgy Carmichael) by Allison Miller
    11. Marie's Delight (Red Garland) by Kris Bowers
    12. Omnibus (Ernst Glerum) by Ernst Glerum
    13. Eastern Elegy (Daniel Freedman) by Daniel Freedman

    Allisonmillerw
                                                            (Allison Miller)
     成る程聴いてみるとピアノ・トリオ曲が中心であるでが、ドラムスの活動が華々しい曲が連なって流れる。シンバルの音にハッと思わせるリアルな録音モノが連続して登場。成る程これはよく集めたモノである。

     3. Alone Together (Arthur Schwartz) by Joe Mulholland Trio:トリオによる生き生きとしたスウィング演奏、ドラム・ソロ(Bob Tamagni)の占める位置も有り、又ベースとドラムスの掛け合いが面白い(アルバム「Runaway Train」より)。
    After_hoursw 4. My Heart Belong To Daddy (Cole Porter) by Bill Carrothers:シンバル音(Kenny Horst)で圧倒してピアノに入るスタイル。ピアニストの熟練したパッサージ・ワークが見事で最終的には抒情的ピアノ・トリオ曲に仕上げている(アルバム「After Hours」(→)より)。
     5. Wise (Alex Mercado) by Alex Mercado Trio:なかなか派手な録音もの。メキシコの実力派ピアニストAlex Mercadoによる、Antonio Sanchez(ds)、Scott Colley(b)参加のピアノトリオ作品(アルバム「Symbiosis」より)。
    Matijadedicw 8. From The Beginning (Matija Dedić) by Matija Dedić:ドラムス(Jeff Ballard)から入るピアノ・トリオもの。Matija Dedićのピアノの芸達者ぶりが聴ける(アルバム「From The Bebinning」(→)より)。
     10. Rockin' Chair (Horgy Carmichael) by Allison Miller:名女性ドラマーAllison Millerの登場だ。なかなか聴かせる曲仕上げ。前半ベース主導で流れ、そして美しいシンバル、控えめなピアノによって流れるメロディーが美しい世界を築き上げる。聴き惚れます(アルバム「Boom Tic Boom」より)。
     13. Eastern Elegy (Daniel Freedman) by Daniel Freedman :ドラマーのFreedmanによる抒情性豊かな曲で、次作への期待に繋げる(彼の初リーダー・アルバム「Imagine That」より)。

     ジャズもいろいろな聴き方があるが、ここに見るようなピアノ・トリオものでは、どちらかというとドラムスはリズム隊として、バックで支えるところに位置することが多い。しかしこの企画物でドラムスの位置の重要性も認識させてくれていて、ちょっと”でかした企画”であったと思う。

    (試聴)

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    2017年9月19日 (火)

    ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」

    恐れ多い・・・80歳を越えたベーシストの心境の世界に足を入れる

    <Jazz>
    Gary Peacock Trio 「Tangents」
    ECM / GERM / 5741910 / 2017

    Tangentsw

    Gary Peacock (double-bass)
    Marc Copland (piano)
    Joey Baron (drums)
    Rec. May 2016, Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano, Switzerland

    Mi0003861169 ゲーリー・ピーコックGary Peacock(1935年-) とくれば、私にとってはキース・ジャレットということになるのだが、ビル・エヴァンスとのお付き合いなどと言う歴戦の経過から、もう現在のジャズ界のピアノ・トリオと比較してみると、一時代前の人ってことなんですね、しかしなんとそれが現在なんです。チャリー・ヘイデン亡き後、うーん、この人でしょうね頑張っているのは。なにせ驚くなかれ、80歳の誕生日を記念して制作されたピーコックのNew Trioの演奏盤、昨年の演奏だ。そしてECMからのリリースである。
     彼はなんとECMでの初デビューは1977年の『Tales of Another』ということで、恐れ多くも40年前なんですね。最近は2年前にECMからこのメンバーで、アルバム『Now This』(ECM/4715388/2015)をリリースして絶賛を浴びたのだった。これもピーコックとしては長い歴史に於いては、New Trioと言われるところだが、主として10年以上前から既にこのトリオは、ピアニスト・マーク・コープランドMarc Coplandとドラマー・ジョーイ・バロンJoey Baronとなっていたという結構長い経過とも言える。

     全体に明るいとは言えないムードだが、とにかく深みと言うか、彼の心からの響きというか、詩的な世界というか、やっぱり枯れた味わいというところなのだろうか、じっと聴き入る思索瞑想に浸る世界なのである。いずれにしてもピーコックは、昔来日して禅の思想などを学ぶ為ということで、京都で2年間の隠遁生活を送ったこともあるという精神的な深みを目指すタイプであって、彼のこのアルバムもそんなところが見え隠れする。

    Garyjoey(Tracklist)
    1. Contact
    2. December Greenwings
    3. Tempei Tempo
    4. Cauldron
    5. Spartacus
    6. Empty Forest
    7. Blue In Green
    8. Rumblin'
    9. Talkin' Blues
    10. In And Out
    11. Tangents


      上のような収録11曲であるが、ピーコックの曲が5曲とほぼ半分、コープランドの曲が1曲、バロンの曲が2曲、3人の共作が1曲、 Northの”Spartacus”、Milesの”Blue In Green”で全11曲。

     まずはスタートのM1."Contact"これぞ人間が巨匠と言われるようになっての面目躍如のベースから始まる瞑想と言うか思索というか、そんな世界感。すぐ追従するピアノ、バックでサポートするシンバルが何とも言えない微妙な空間を持ってサポートする。こんな展開をされると、即参ってしまう私なのだ。
     M5. "Spartacus" は、美意識では筆頭格のコープランドのピアノが切々と物語と旋律を流すところに力強いベースでお見事な抒情世界。それは同様にM7."Blue In Green" でも味わえる。若干バロンは遠慮気味ですね。
     しかしM6. Empty Forest の3者のインプロヴィゼーションと思われる音の交錯と余韻の世界はお見事で、これぞトリオだ。。
     M8. "Rumblin'", M9."Talkin' Blues"で見せる軽快な世界は年齢を超えたミュージシャンの描くところですね。
     締めのM11."Tangents" では、ピーコックのベースが自分の心境を曲にしたような深い世界を演じる。そこにピアノが流れをアクティブにして暗さの無いところに導いてくれる。

     なかなか期待を裏切らない深い世界のベースを聴かせてくれたピーコック、そしてコープランドのピアノとバロンのドラムスが絶妙にトリオを形作って、彼らのオリジナル9曲+αでトリオ健在なりを示してくれた味わい深い作品だ。年齢を感じさせない素晴らしい演奏と言わずに、むしろ年齢だからこそ出来たいぶし銀の作品と評価したい。

    (視聴)  Gary Peacock Trio

     

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    2017年9月15日 (金)

    松尾明AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」

    録音の質のリアリティーはハイレベルに確保しているが・・・・
      ~ミュージックとしての熟成度が低く、演奏は並~

    <Jazz>
    AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」
    TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1058 / 2017

    51vbio05l

    松尾明 Akira Matsuo (ds)
    寺村容子 Yoko Teramura (p)
    嶌田憲二 Kenji Shimada (b)


    【録音】2017年3月27日
    横浜ランドマークスタジオにて録音


     近年、素晴らしい録音モノが増えてきて、そこに感動もあって嬉しいことであるが、そんな意味で注目したアルバムがこれだ。
     以前にもそんな評判で手にしてガッカリしたものでYOKO TERAMURA TRIO『TERAMURA TOKOMOODS』(TERASIMA RECORDS/TYR-1026)があったのを思い出した。基本的にはあのアルバムと大きな差は無いと言っておく、それはその録音サウンドだが、いかにもベースはブンブンと唸って響き、ピアノはキンキンと確かにクリアに鳴る。しかし何か空しいのですね。それはミュージックとしての仕上げに貧しいのである。是非とも比べて欲しいのはつい先頃のリリース盤で言えば、GEORGES PACZYNSKI TRIO『LE VOYAGEUR SANS BAGAGE』(ASCD-161101)がある。これと比較してみると明解だが、そこにはピアノ、ベースのバランス、そしてそこに加わるドラムス、シンバルの鮮烈な響き、それが全て曲としてのバランスの中で、クリアにリアルな音で迫ってくる。つまり曲としての仕上げに明らかな差があるのだ。更に前回紹介のALESSANDRO GALATI『WHEELER VARIATION』SCOL-4024)のそれぞれの楽器とヴォーカルの配置の絶妙さを知るべきである。
     又演奏技術や音に対してのセンスというものが濃縮して快感のミジュージックが出来上がるのだが、その意味に於いてもこのアルバムには感動は無かった。
     はっきり言うと5曲ぐらい聴くと飽きる。

    P_matsuoakira 実は宣伝文句は・・・・
    「松尾明トリオ4年ぶりとなる作品は、寺島レコード第1弾アルバム『アローン・トゥゲザー』のトリオが再集結!寺島レコードの原点"哀愁"のメロディ、ジャズの名曲、そして長い付き合いのメンバーによる名演、すべてを凝縮した、レーベル10周年にして松尾明トリオの10年間の集大成ともいえる記念すべき作品に仕上がった。」
    ・・と言うのだが、残念ながら哀愁もあまり感じられない。ただ曲をとにかく一生懸命演奏したモノとして評価するに止まるのである。一番はピアノ・トリオとしての大切なピアニストの演奏に味が感じられないと言うところも大きいでしょうね。

     追記しておかねばならないのは、どうも寺島靖国は録音の技法のそのあたりをやっぱり気にしているらしいことが、ライナー・ノーツを読んで解った。そして録音されたマスターから続いて「Another Mastering Edition」を追加したんですね。しかしそれも録音された音源は同一であることからやはり無理は無理な作業によって何とかしたと思っているようだが、本質的にはそれほど大きな効果は上げていない。

     それには録音時からの方法論にはかなりの工夫が必要であって、そう簡単に脚色出来るものでない。このアルバムを聴くと、狭い部屋での三人の演奏を、一番前で聴いたという感じなのだ。やはりもっと広がり、奥行き、三人のバランスが重要に思う。音の強さを下げたから後方に位置するというのでなく、録音によっては同じ強さの音でも後方に位置して聞こえるという技量があるのだ。

    Yoko_t2 今や再生ミュージック・ソースの出来不出来は、半分は技術陣の腕にかかっているというのが一般的な見解だ。これは決して極端な話でないと思う。それにつけてもこのアルバムの寺村容子(→)のピアノにはもう少し思想と繊細さが欲しい演奏でした。

     ちょっと辛辣に書きすぎたが、実は宣伝文句が立派すぎて、聴いてみての反動が大きかったというところなのである。

    (Tracklist)
    1.  Lupus Walk (Akira Matsuo)
    2.  Estate (Bruno Martino)
    3.  I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
    4.  Moonlight Becomes You (Jimmy Van Heusen)
    5.  How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
    6.  Do You Know What It Means Miss New Orleans (Eddie DeLange, Louis Alter)
    7.  Sway To Fro (Kenji Shimada)
    8.  Violet For Your Furs (Matt Dennis)
    9.  Just A Mood (George Shearing)
    10.  Steaway To The Moon (Yoko Teramura)

    (参考視聴)TERASIMA RECORDSのサウンド  (Yoko Teramura Trio)

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    2017年9月 3日 (日)

    マリオ・ラジーニャの作品Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」

    ポルトガル音楽の民族性をジャズ的発展へ

    <Jazz>
    Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」
    ONC Prodçóes / POR / NRTI017 / 2017

    10073035812

    Mario Laginha - piano
    Miguel Amaral - portuguese guitar
    Bernardo Moreira - contrabass

     ジャズへのアプローチは多種多様ではあるが、民族性を生かしたものも最近よくお目にかかる。ポーランドのアンナ・マリア・ヨペクの3部作の小曽根真、福原友裕との「HAIKU俳句」の”Yoake”、”Pandora”、”Do Jo Ji”なんかは驚きだった。

    Guiter これもポルトガルのジャズ・ピアニストの大御所と言われるマリオ・ラジーニャMario Laginha(1960年、リスボン生まれ)の試みる変則ピアノ・トリオ・アルバム。つまり彼のピアノにベース、ギターというドラムレス構成。彼には一般的なベース・ドラムスとのトリオも結成しているが、これは特にミゲル・アマラルMiguel Amaral演ずるポルトガル・ギターportuguese guitarが大きな特徴だ(→)。ポルトガルというとあの民謡”ファド”が重要だが、あの国を旅行した時に聴いたのを思い出す音色であって、これはあちらでは一般的に使われているギターだと思う(実際には、一般的クラシック・ギターとは異なる流れにあるようだが)。

     さて、このアルバムの中身は、ジャズとポルトガル音楽をかけあわせたような作品。サウンドはそれぞれの持ち味を発揮したところだが、やはり“ファド”のような叙情性を感じさせるギターの音が散りばめられている。
     そしてやっぱりクラシック的ムードが全体に流れているのである。まあ真剣に向き合って聴くという難しいことは避けて、むしろバック・グラウンド・ミュージック的気持ちで流しているとポルトガル・ムードに浸れて、ちょっと変わった気分にさせてくれるのである。
     この作品は、1曲以外は全てオリジナルだというので、それにしてもジャズにポルトガルの素朴なムードは確実にあって、彼の意気込みが感じられる。彼はThe most Creative Contemprary Portuguese Jazz Musiciansと言われている存在だ。

    Mario1

    (Tracklist)
    1. Terra Seca
    2. Dança
    3. Quando as Mãos se Abrem
    4. Tão Longe e Ainda Perto
    5. Fuga para um Dia de Sol
    6. Há Correria no Bairro
    7. Enquanto Precisares - para o Pedro
    8. Pela Noite Fora
    9. O Recreio do João
    10. Chão que se Move

    500_laginha2 リーダーのマリオ・ラジーニャは、私は今までに聴き込んだ記憶が無いのだが、ジャズ・ピアニストとしての数十カ国に渡る演奏歴と、数々のオーケストラやビッグバンドに委嘱作品を提供する作曲家としてのキャリアを20年以上に渡って展開する、まさにポルトガルを代表する音楽家のひとりと言うところのようだ。そして紹介など見ると、リーダー作品としては、バッハの作曲技法に影響を受けた自作曲集『Canções & Fugas』(2006年)、ショパンへのオマージュ作品『Mongrel』(2010年)、建築にインスパイアされたピアノ・トリオ編成による『Espaço』(2007年)など、多様かつ個性的な作品を発表し続けていると言うのである。更に、世界の民族性を尊重した音楽作りに貢献しているようで、いやいや今後取り敢えずは少しは注目しておかねばならないと言ったところ。

    (視聴)

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