ピアノ・トリオ

2017年4月24日 (月)

ジョエル・レンメル・トリオJoel Remmel Trio 「SOME THINGS NEVER CHANGE」

美旋律ジャズでありながらフリー・インプロヴィゼーション展開重視

<Jazz>
Joel Remmel Trio「SOME THINGS NEVER CHANGE」
Atelier Sawano / JPN / JRT003 / 2016

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Joel ‐ Rasmus Remmel : piano
Heikko ‐ Joseph Remmel : bass
Aleksandra Kremenetski : drums

  取りあえず2013年の1stアルバム『LumeKristall』から注目してきた東欧はエストニアの若きピアノ・トリオの昨年リリースされた3rdアルバム。
 今回のアルバムは過去の2作よりは一歩前進というか発展というか進化を示していると思う。聴きやすいメロディーを取り入れた曲を主とするところから脱却して、おそらく即興を重視したややスタイルを複雑にした曲のため、ちょっと評価に躊躇するところがあって、しばらく横に置きっ放しになっていた。しかし彼らの流れは注目価値ありというところで、そのため遅まきながら今になってここ登場することになった。

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(Tracklist)
1. Kolmekesi Paadis
2. Stepping Into The Basement
3. Some Things Never Change
4. Taevatahed Laulvad
5. By The Book
6. Vaikse Aja Ilu
7. Mul On Hea Jeesuses
8. Turn Out The Stars

 殆どが、ピアニストのJoel Remmelの曲だが、女流ドラマーのAleksandra Kremenetskiの曲も1曲(M4)登場。

 オープニングから、メロディ中心と言うよりは、演奏のスリリングな交錯がみられるフリー・インプロヴィゼーションの展開となる。メロディの美しい欧州のピアノ中心のトリオ曲というところから完全に脱却を図っている。もともとフリージャズ世界に足を入れていたところがあるようで、過去の2作品にもそんな因子が顔を出していたが、若いといえども結成して7年経過したこの3rdでは、思い切ってその世界に展開を広げた感がある。
 アルバム・タイトルとなっているM3.”Some Things Never Change”は、ベースの低音からスタートとして次第にメロディーの美しさを交えつつも、やや前衛的ジャズ印象を貫いて展開するため、聴く方はこれらの多様なスタイルについて行けるかがポイントだろう。
 M6.”Vaikse Aja Ilu”では彼らの特徴であるピアノ・メロディの美しさと、変調する中にも優しい展開が支配し、ここにきて彼らの過去のアルバムの美しさを思い出した。それもそのはずこの曲1stアルバムにも登場していたもの。後半に入ってのインプロヴィゼーションに手を加えている。そして最後の1分間は安堵の流れを聴かせてくれて、なにかほっとする響きで終える。
 そしてM7.”Mul On Hea Jeesuses”では、この曲の前半はクラシック流の美ピアノの音で支配して、後半は一転してやや荒々しい古典的ピアノ・ジャズと化すという変化のアレンジを見せる。
 M8.”Turn Out The Stars”は最終トラックにふさわしいこのアルバムの締めくくりである。ビル・エヴァンスの曲のアレンジだ。それは美しいメロディのみに止まらない彼らの姿勢を変調ジャズにて示すのだ。

  進化する若きトリオの1シーンを感じさせるアルバムであった。

(視聴)

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2017年4月16日 (日)

ベネディクト・ヤーネル・トリオBenedikt Jahnel Trio 「THE INVARIANT」

流麗なピアノと風格あるクラシック調な哲学的ジャズ世界

<Jazz>

Benedikt Jahnel Trio 「THE INVARIANT」
ECM / JERM / ECM2523 5712837 / 2017

Theinvariant

Benedikt Jahnel: piano
Antonio Miguel: double bass
Owen Howard: drums

Recorded March 2016 at Rainbow Studio, Oslo
produced by Manfred Eicher.

 ECM盤が続きます。前回、Julia Hülsmann Trio の『Sooner and Later』を取りあげたが、あのアルバムのジャケからふと思い出したアルバム。私はジャケに結構拘っているのですが、訴えてくる印象が似ているのでこのアルバム『THE INVARIANT』を再考するに至った。
 ところがなんとジャケ(Cover photo)の作成者をみると、『Sooner and Later』のLiner photosを担当したArne Reimerという人の写真によるものだった。
 まあそれはそれとしてこれもドイツですね、ベルリンを拠点にして活躍中のピアニストのベネディクト・ヤーネルBenedikt Jahnel によるトリオ作品。5年ぶりのECM第2作目となるもの。
 このアルバムのタイトルは「不変」と訳せば良いのか、いずれにしてもこのトリオ結成して10年と不変で来たようで契りは深い。そのトリオ・メンバーはスペイン人ベーシスト、アントニオ・ミゲルと、カナダ人ドラマー、オーウェン・ハワードと国際的。

(Tracklist)
1. Further Consequences
2. The Circuit
3. Mirrors
4. Mono Lake
5. Part Of The Game
6. For The Encore
7. Interpolation One
8. En Passant

 曲は全てベネディクト・ヤーネルによるもの。彼は1980年生まれのドイツ人、2000年にベルリン芸術大にて学位取得し、2005年米国N.Y.に渡り、2007年にベルリンに戻っている。

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 とにかくオープニングM1.” Further Consequences ”から聴かれる彼のピアノはクラシック調にして流麗そのもの。その曲名も哲学的であり描くところも深い。それがECM流に流れて、M2.”The Circuit ”に繋がって行く。
 そして9分以上のM3.” Mirrors ”には、その深遠な世界にはまってしまう。
 M4.” Mono Lake ”は、やや安堵感が漂ってほっとする。
 M5.”For The Encore ”は欧州的美の広がる静謐さが感じ取れる優しい曲。
 M7.”Interpolation One ”のベースとピアノの音で描く暗さは凄いが、M8.”En Passant ”で一転して明るい陽光の差す様な世界に、そして流麗なピアノの調べを経て静かに幕を閉じる。
 はっきり言って、曲の流れは聴きやすく難解では無い、しかし描く世界の哲学的世界は深い。しばらく解釈に時間がかかって横に置いておいたが、今こうして聴き直してみると、これはなかなかハイレベルな格調高い名盤です。

(視聴)

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2017年4月12日 (水)

ジュリア・ハルスマン・トリオJulia Hülsmann Trio 「Sooner and Later」

ECM流のピアノ・トリオ・アルバムだが・・・・高尚の一言

<Jazz>
Julia Hülsmann Trio 「Sooner and Later」
ECM / JERM / ECM 2547 / 2017

Soonerandlater

Julia Hülsmann(p)
Marc Muellbauer(double bass)
Heinrich Köbberling(ds)

Produced by Manfred Eicher
Recorded Sep. 2016, Rainbow Studio, Oslo

(Tracklist)
1. From Afar *
2. Thatpujai *
3. You & You +
4. Biz Joluktuk 
5. All I Need
6. The Poet (For Ali) -
7. Offen -
8. J.J. *
9. Soon *
10. Later +
11. Der Mond *
(Composer : "*印"Julia Hülsmann、  "+印"Heinrich Köbberling"、  "-印"Marc Muellbauer)

Julia_huelsmannw 1968年生まれのドイツの女流ジャズ・ピアニストにしてコンポーザーのジュリア・ハルスマンのピアノ・トリオ作品。
  彼女はベルリンを拠点にしてのベテラン・ジャズ・ピアニストだ。このところはクインテット、カルテットという作品が続いていたが、久々の6年ぶりのトリオ作品と言うことだ。

 まずECMと言えどもジャケの印象は更に地味で、そしてそこには日常の姿をしっかり見つめようとする想(こころ)を感じ取れる。
 そして演奏は明らかに”ECMサウンド”で、物静かに哲学的に流れて行く。演奏の特徴は彼女の名前を冠したアルバムだが、ピアノが決して前面に出て振る舞うと言うところがないところだ。三者の対等なるトリオ演奏が聴きどころ。

  とにかく、M1、M2と冒頭から詩的な世界が広がる。そしてその流れはM3, M4ても同様だ。刺激性の無い演奏が彼らの持ち味として安定性の感覚を聴く者に及ぼしてくる。
 これはどこかで見たが「文学性の演奏」と言わしめる世界なのである。全編、静かに流れるが、これは単なる抒情性とか美旋律といったところとは異なるのだ。ただし静かな流れと言っても、快調なリズムをも展開する。とにかく高尚という言葉に尽きる演奏なのだ。
 あまりにも整然とした演奏に、はっとするような山が無いと言えばそうなのだが、従ってなんとなく始まって、快く聴いてなんとなく終わるというアルバムなのである。そんなところは北欧ものの大自然をイメージするとか、逆に南のイタリアにおける演歌調を味うとは違っている。これが・・・ドイツなのか?。
 なにせ、花粉症の季節、抗アレルギー剤を内服しているせいか、聴き入っているとすぐ寝てしまうのである。

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  収録11曲中の殆どの9曲が彼らのオリジナル曲(ジュリアが5曲)であるが、作品紹介をみると・・・・、"ツアーでヨーロッパ、アメリカ、ペルー、中央アジア、中国も一緒に廻ったとのことでアジアでの演奏は「自分たちの世界を広げてくれた」という。M-4”Biz Joluktuk ”はその中央アジアでのツアー時にキルギスで12歳のヴァイオリニストが弾くのを聴いた曲に インプロヴィゼーションを施したものと言うのだ。
 M-2”Thatpujai ”ドイツのピアニスト、ユタ・ヒップのソロで聴かれるフレーズをテーマにしているとか"・・・・など、彼らの印象を受けたものにインプロヴィゼーションを繰り広げた曲群のようだ。
 結論、こうした真摯な高尚なアルバムも好感が持てるし私にとっては価値あるアルバム。

(視聴)

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2017年3月14日 (火)

ヘルゲ・リエン・トリオHelge Lien Trio「GUZUGUZU」

ノルウェーから極東日本との更なる深まりが・・・・・・

<Jazz>

Helge Lien Trio「GUZUGUZU」
ozella music / GERM / OZ070CD / 2017


Guzuguzu

Helge Lien(p)
Frode Berg(b)
Per Oddvar Johansen(ds)

All music composed by Helge Lien
Recorded and Mixed on Raimbow Studio , Oslo, Sept.2-4 2016

 ノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・トリオによるニャー・アルバム。彼のカメラ好きによる写真ジャケのアルバム『Natsukasii』はインパクトがあったが、あれは2012年だったんですね。あのアルバムの抒情性に惹かれてから彼のファンになってしまった。それも私のカメラ好きと、なんとピンク・フロイド好きが彼と一致していることもあって、なお共感してしまったと言うことなんです。
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 その後このトリオのドラマーは、ペル・オッドヴァ―ル・ヨハンセンに2013年に代わった。そしてアルバム『Badgers & Other Being』発表して2014年に来日。その際には新潟県のライブ会場での一コマで、屋外で彼と一緒に皆既月食を観たり撮影したのを思い出しますが(8, Oct, 2014)、あのアルバム以来3年ぶりの新生ヘルゲ・リエン・トリオ第2弾(通算5作目)だ(今回のカヴァー・デザインは替わって、リエン作ではないですね)。
 そしてこの4月は、またまた来日公演のスケジュールとなっている。

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 日本好きのヘルゲ・リエンとは言え、アルバム・タイトル”Natsukasii懐かしい”で驚かされたが、今回アルバムは下のTracklistを見てのとおり、なんと日本語の擬音言葉を曲名として創作されたオリジナル曲によって構成されたものとして登場となった。

(Tracklist)
1.Gorogoro (thundering)
2.Guzuguzu (moving slowly)
3.Nikoniko (smilling
4.Garari (completely)
5.Jasmine
6.Chokichoki (cutting)
7.Kurukuru (spinning around)
8.Shitoshito (raining quietly)


Hl1w M1.”Gorogoro”って"thundering"って言うのですから雷鳴ですかね?。転がるようなピアノ演奏、ベースのアルコ奏法による黒い雲の襲うイメージ、そんなところで聴くと面白いのだが・・・・それにしては美しすぎるか。
 M2.”Guzuguzu” ("moving slowly"の意味というのもちょっと"?"だが) これはピアノとドラムスの掛け合いが面白い。

  彼は、ミュージックというものに関わることになったのは、ピンク・フロイドがその大きな因子であると何時も語っている。
  彼のオリジナル曲、そして演奏は、ある時は郷愁的優しさのあるメロディーを聴かせ、またある時はやや前衛的なスリリングな味つけをしてインパクトの効いたドラマティック展開を聴かせる。伝統的ジャズ手法による美に加えインプロヴィゼーションによる革新性(何方かが言っていた言葉ですが私は納得)を追求するタイプだ。今回のアルバムもそんな因子を持って迫ってくる。写真で言えばややスモーキーな柔らかい像とコントラストの効いた堅めの像との絶妙な交錯といった感覚でその点が上手い。

 M3.”Nikoniko” (smilling) は、なかなかピアノ表現が難しいと思うが、優しいピアノの音が響く印象の曲に仕上がっている。
 M5.”Jasmine”は、この中でも趣向が変わって異国情緒。
 M6.”Chokichoki” (cutting)や M7.”Kurukuru” (spinning around)の躍動感と陰影とがドラマチックで、叙情性とは別物。彼らのこれからの一つの方向性を感じさせる演奏だ。
 M8.”Shitoshito” (raining quietly) しっとりとした雰囲気でアルバムを納めるのである。

      *          *

 とにかく、今回のアルバムはテーマがユニークそのもので(ウォーターズのピンク・フロイドの頃の手法も感ずる)、何か一歩脱皮というか、壁を破りたい試みというか、前作もそうだったがヘルゲ・リエン・トリオとしての挑戦も感じられる。それは平坦な叙情にのみ収まりきれない何かエネルギーの発露を求めたような印象を持つのである。

(参考視聴) 映像はニュー・アルバム関係は見つからず・・・・参考までに前作から

  *   *

(試聴) ニュー・アルバムから”Jasmine”

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2017年2月28日 (火)

アレッサンドロ・ガラティAlessandro Galatiのニュー・アルバム「COLD SAND」

 アレッサンドロ・ガラティ・トリオが澤野から登場

 澤野工房であるから、北見柊のライナーが付いている。そして・・・・

Listen to the silence -静謐を聴け
彼方なる天より滴る美音の雫
イタリアが生んだピアノの魔術師
Alessandro Galati が創造する「音時空」

 ・・・・と、言う発売前の宣伝文句に圧倒されますね。これがほんとなら絶対に買いです(笑)。

<Jazz>
Alessandro Galati Trio 「Cold Sand」
ATELIER SAWANO / JPN / AS 155 / 2017

Coldsand

Alessandro Galati: piano
Gabriele Evangelista: bass
Stefano Tamborrino: drums

Recorded on 13,14 September at Artesawano, Cavalicco, Udine, Italy

(Tracklist)
01. Cold Sand
02. Mob Sick
03. Lucy's Eyes
04. Nina
05. Nothing Much to Say
06. Schosty
07. Here, There & Everywhere
08. Here
09. There
10. Everywhere
11. Nowhere
12. Uptown

 前回のイエローのアルバム・ジャケから今回は薄ブルーですね。アルバム・タイトルの「Cold Sand」そのものです。
 とにかく今回のアルバム、個々の曲は勿論それぞれ素晴らしいが、とにかくアルバム・トータルに私は絶賛してしまう。”澤野工房よくやってくれました”というところ。
 私はアレッサンドロ・ガラティは、あの1994年に録音したクラシック・カーのジャケ・アルバム『Traction Avant』に痺れてからのお付き合いだ。今作はあの作品は私の場合勿論リアルタイムではないのですが、20年経ってのものなんですね。私にとってはいよいよ彼のトリオの最高峰に到達した感があります。ここに来るまでには彼のアグレッシブな実験作もあって、それを乗り越えてこのアルバムに到達した嬉しさは格別である。
  ライナーの北見柊の表現する「透明感のある音色、空間の広がりを感じさせる演奏、そして何より、我々の琴線に触れるオリジナルのメロディ・ライン」という当にその世界である。

Trio

 収録曲12曲、M07”Here, There & Everywhere ”はLennon-McCartneyの曲で、それ以外10曲ガラティのオリジナルである。
  とにかく全編哀愁に溢れたピアノの音とメロディが、なんと言えない空間を持ちながら心の奥に滲みこんでくる。
 M8.” Here ”、M09. ”There” などが典型的だが、ベ-スとドラムスがピアノの響きを浸透させてワンテンポ遅れて畳み込んでくる。この絶妙なタイミングもたまらなく快感だ。いっやーー、そして確かにこの深遠な世界は久々の感覚になる。
 又M01. ”Cold Sand”、M05. ”Nothing Much to Say”のメロディー・ラインはもうたまらなくその流れに浸りきれる。

 これはおそらく日本のガラティ・トリオ・ファンを意識してのサービス作品集ではないだろうか?、それ程日本人である我が心に響くのである。
 そして今年はまだ早いのに、今年度のナンバー1に取りあげられることになるだろうと思う快作である。 ユーロ・ジャズに傾倒していて、こんな一枚に出会えることはほんとに幸せを感ずる。

(参考視聴)

(試聴)

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2017年2月25日 (土)

チャンピアン・フルトンChampian Fulton 「After Dark」

アメリカン・ジャズの楽しめる道に浸る・・・・

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(Champian Fulton)

<Jazz>
Champian Fulton 「After Dark」
Gut String Records / U.S / GSR022 / 2016

Afterdark

Champian Fulton (piano and vocals)
David Williams (bass)
Lewis Nash (drums)
Stephen Fulton (trumpet & flugelhorn) tracks:1,4,6,7

 オクラホマ州出身のまだまだ若い(1985年生まれ)女流ジャズ・ピアニストにしてヴォーカリストのチャンピアン・フルトンの純アメリカ的ジャズ・アルバム。最初の1曲目からミュートを効かせたトランペットがムードを盛り上げる。ニューヨーク・タイムズでも彼女のことを「メインストリーム・ジャズ・シーンにおいて、魅力溢れる若きディーバ」と評されたとか。
(ただしこのアルバム・ジャケ、洗練されたところの感じないちょっとダサいところが少々難ですが・・・・・)

 これは彼女のピアノ・トリオ作品でも有り、それにStephen Fultonの trumpet と flugelhornが4曲に加わっているが、このトランペッターは多分父親なんですね。そんな微笑ましいアルバムだ。そしてそこに彼女のヴォーカルを乗せていて、NYのナイトクラブの雰囲気を味わえる作品といったところ。それはもともと彼女はSarah Vaughan、 Billie Holiday、 Helen Humes を聴いて育ったという話からも押して知るべしであろう。

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 ブルースの女王Dinah Washington によってポピュラーになった歌を集めたアルバムということだが、チャンピアンは、ピアノを弾き語りで主としてピアノ・トリオ・ジャズとして聴かせてくれる。Dinah Washington はブルースと言ってもジャズ畑での活動であったわけで、その流れを十分汲み取って、これは完全なジャズ・アルバムとして仕上がっている。

 しかしどうもチャンピアンの声の質とその独特なやや粘度の高い発声テクニックは、私好みのところとちょっと違っているんですが、しかしむしろ演奏面でしっかりアメリカ感じ取れるところに楽しませてもらう因子がある。だいたい曲の中盤はトリオ演奏を楽しむパターンで、ピアノ演奏も気分良く聴けて解りやすいので、これでジヤズの原点的良さも知ることが出来るのだ。特にM10.”Baby Won't You Please Come Home”あたりはその典型ですね。又M11.”Midnight Stroll”は、これはインスト曲で、よき時代のジャズの雰囲気をたっぷりとピアノ演奏を中心に聴かせてくれる。

(Tracklist)
1. Ain't Misbenhavin'
2. That Old Feeling
3. What a Defference a Day Made
4. Blue Skies
5. Keepin' Out of Mischief Now
6. A Bad Case of the Blues
7. Travelin' Light
8. Mad About the Boy
9. All of Me
10. Baby Won't You Please Come Home
11. Midnight Stroll

 彼女のアルバムは既に何枚かあって、ヴィーナス・レコードが扱っていたんですが、これは彼女名義のレーベル作品であるところをみると、ヴィーナスとの関係は打ち止められたのか、日本離れ?ちょっとそのあたりは確かな情報はない。

(試聴)

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2017年2月 4日 (土)

コリン・バロンColin Vallon ニュー・アルバム 「Dance」

リリカルにしてアンビエントな世界を構築してはいるが・・・・

<Jazz>

Colin Vallon Patrice Moret  Julian Sartorius 「Dance」
ECM / GERM / ECM 2510 / 2017

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Colin Vallon: piano 
Patrice Moret: double bass 
Julian Sartorius: drums 
Recorded February 28-March 1, 2016 at Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano.
Produced by Manfred Eicher

 既に何度か取りあげたローザンヌ(スイス)生まれ(1980年)の新進気鋭ピアニスト、コリン・バロンのピアノ・トリオ・アルバム。2006年の『Les Ombres』以来の5作目、話題のECMからは3作目のアルバム。今作も前作と同じトリオ・メンバーによるもの。

 これは完全に前作『Le Vent』(2014年)の流れからのアルバムだ。オープニングは落ち着いた低音によるやや暗めの印象のピアノとベースで深くリズムを刻む曲M1." Sisyphe"で 、これは意外に私の好奇心をくすぐる。
 そして期待の曲M2. "Tsunami"は、これは"うねり"と訳した方が良いのか?、アルバムタイトルが「Dance」(躍動?)であるから、多分そうかも知れない。ピアノそしてベースで刻むリズムでやや不安感のある世界を築きながら、その雰囲気を盛り上げつつ、中盤からはピアノの旋律も美しく響く。
 相変わらすバロンのピアノ・プレイが中心ではあるが、そのピアノを主として聴かせるというパターンとは少々異なる。トリオとしてパトリス・モレのベースは、多彩な手法で効果をあげてくる。そしてこれは録音によるところもあると思うが、左右のスピーカー両範囲に広がって位置しているジュリアン・サルトリウスのドラムス・シンバルの音は、常に繊細で好感が持てる響きである。その3者の交錯によって、これは一つのアートであるという形をとっている。そんなところでM9. "Tinguely"等にみるように次第に盛り上げていくところは一つの意志を感ずるところだ。

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 しかしピアノ・トリオはどうしてもピアノのウエイトが高い。従ってそこが曲では多くを左右するのだが、M7. "Kid" 、M10. "Morn "のようにピアノの音は一音一音響かせてその余韻によって一つの世界を描くパターンは私は好きだ。
 しかしM2. "Tsunami"から始まって、前半の多くの曲のように、同音の鍵盤を左手で何度か叩きながらバックのリズム作りをしたり、又は一方右手でのメロディーをも同様に反復演ずるところ、つまり彼らも所謂”ミニマル・ミュージック”を探っているのか?、その辺り、ちょっと私個人的には諄(くど)くて頂けない。
 
 全体に静かで陰性のリリカルな流れを構築しているアルバムだが、今回はミニマル奏法が邪魔して、あまり私好みの「絵」に填まってくれなかった。しかし決して否定するアルバムではない。彼らの以前にも紹介した2ndアルバム『Ailleurs』を聴いてみると解るが、今回のこのアルバムは、前作同様「ECM世界」を意識しての構築されたものとみて良いのだろう(実は前作との違いを殆ど感じない)。そこでもう一つこの世界の縛りから一歩脱してフリーなところに身を置くと、実は面白いトリオであると思って期待しているのだが、どうだろうか。

(Tracklist)
1. Sisyphe
2. Tsunami
3. Smile
4. Danse
5. L'Onde
6. Oort
7. Kid
8. Reste
9. Tinguely
10. Morn
11. Reste (var.)

(視聴) ”Tsunami” from 「Dance」

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2017年1月31日 (火)

ティエリー・マイヤールTHIERRY MAILLARD「 Il Canto Delle Montagne 」

抒情派でなく、小気味よい跳躍する端麗タッチのピアノ・トリオ

<Jazz>

THIERRY MAILLARD「 Il Canto Delle Montagne 」
ILONA RECORDS / FRA / AD3689C / 2016

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Thierry Maillard (piano)
Dominique Di Piazza (electric bass)
Andre Ceccarelli (drums)

Recorded at Studio de Meudon - April 2016

 いっやー、しかし美しい山容の写真のジャケですね。見入ってしまいます。これぞLPのジャケでじっくり見たいと言ったところです。

Thirry_m それはさておきこのアルバムは、16曲中14曲、ピアニストのティエリー・マイヤールThierry Maillard (1966年フランスのPuteaux生まれ。→)のオリジナル曲で占められたアルバム。
 そして各曲それぞれにメロディーが明瞭で非常に聴きやすいところがある。彼はフランスの正統派ピアニストとしての名声を博している人物だ。しかし私はこれまでにその恩恵に与ってきておらず、今にして縁あって聴いているといったところ。

 さてこのアルバム、一見優しそうな曲仕上げかと思いきや、なかなか技法を凝らしてのトリオ演奏が難解に迫ってくるところもある。特にピアノ・トリオとしては、まずは歯切れよく跳躍的にしてメロディアスなタッチのピアノが、どちらかというとダイナミック・パターンでイキイキと旋律を歌いあげるのだが、それにディ・ピッツアDominique Di Piazza のelectric bassも華を形成して健闘し、そしてチェカレリAndre Ceccarelliのdrumsも洗練されたリズム取りをみせての貢献度大で、トリオとしての形に風格すら感ずるところに仕上げている。

 一部、現代ジャズ的なハードなところで迫ってくると思いきや、M11. "Mamallapuram "は流麗にして快いところを見せ、更にM6." Irish Ghost"そして M7. "Le Chateau Des Sirenes"や M8. "Plus Jamais Pareil"、M13. "Lullaby" と中盤は非常に聴きやすくロマンティックにして美しいメロディーを聴かせるピアノで納得の世界。
  最後のM16. "A Paris"は、かなり3者のアクティブな面を聴かせてこのアルバムを占めるのだが、彼らの本質はここにあるのかも知れない。
 4-5分ぐらいの比較的短い曲で占められ16曲と多く、それぞれ変幻自在な変化も示すので、聴きようによってはちょっと振り回されるところもある。
 
(Tracklist)
1. Il Canto Delle Montagne
2. Le Temps Qui Passe
3. Sultan
4. Valse Sentimentale
5. Hymne
6. Irish Ghost
7. Le Chateau Des Sirenes
8. Plus Jamais Pareil
9. US Folk
10. My Own Jazz
11. Mamallapuram
12. Reunion
13. Lullaby
14. Viking Song
15. Le Lac De Come
16. A Paris


(視聴)

 

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2017年1月27日 (金)

イヴァン・パドゥアIvan Paduart Trio 「Enivrance」

洗練されたジャズ・ピアノの美しさと安定感の世界

<Jazz>
Ivan Paduart 「Enivrance」
Mons / GER / MR874578 / 2015

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Recorded on Decem.20 & 21, 2014
Ivan Paduart(p)
Phillippe Aerts(b)
Hans van Oosterhout(ds)

Ivanpaduart300x300 日本でもなかなか惚れ込んだファンも結構多いと聞くベルギーが誇る名ピアニスト、イヴァン・パドゥアIvan Paduart(1966年ブリュッセル生まれ。→)の近作。
 これは常連のベースとのトリオ作品で2015年リリース。昨年取りあげる予定が諸々後回しになって年を越して今回登場。それも結論的に非常に癖の無いアルバムで、そんなところから後回しになってしまっていた。

 このトリオのリーダーのパドゥアは、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、フレッド・ハーシュを尊敬しているというところで、80年代から本格的な活動を開始している。既に何枚かのアルバムがリリースされているが、尊敬者の流れを感ずるアメリカン・ジャズのエッセンスを持って、ユーロ系の味付けジャズという感じである。現在では流麗なピアノ・プレイでフレッド・ハーシュに近い感じを受けるのだが。

 非常に美しい即興演奏をかなり得意としているようなパターンで、ムード、技法的にクラシックとの関わり合いも感じさせる音楽性である。

 スタートのM1."Eruption"で、如何にも嫌みとか、特異な刺激性というもののない洗練された世界を感じ取れる品のある流麗なトリオの流れに好感を持って対峙できる。
 M3."Paresse Infinie"も何か人生を説得されたところに置かれたような不思議な感覚になるという演奏。
 アルバム・タイトル曲のM7."Enivrance"は、ゆったりと物語調の旋律をピアノで流しつつ、これぞ心に安定感・安堵感を持たせる世界を構築してみせる。

 全体には、それほどのめり込んで聴き込むというので無く、部屋に流れていると何となく落ち着いたところに抵抗なく居られる。・・・・というそのあたりの洗練された味わいが何とも言えないところだ。これもジャズの一つの道と言いたい。

(Tracklist) 
1.Eruption
2.Boyhood
3.Paresse Infinie
4.Molo Molo
5.Dreams Ago
6.Archipels
7.Enivrance
8.Sabayon
9.Lambertinade

(視聴)

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2017年1月12日 (木)

ウォルター・ラングのもう一つの顔=TRIO ELF 「MusicBoxMusic 」


新世代感覚のテクノ・サウンドをベースにしたピアノ・トリオ作品

<Jazz>
TRIO ELF 「MusicBoxMusic」

Yellowbird / GER / YEB77652 / 2016

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(TRIO ELF)
Walter Lang : piano
Gerwin Eisenhauer : drums
Peter Cudek : bass

 あの優しく美しく伝統的ピアノ・トリオを演じてくれるドイツのウォルター・ラングWalter Lang 、彼の奏でるピアノの透き通った音色はロマンチシズムに満ちた世界を感じさせてくれる。それは何とも言えない心地よさだ。
 その彼の結成しているウォルター・ラング・トリオ(近作↓参照)とは別に、彼にはもう一つの顔がある。それがTRIO ELFである。

  (参照)ウォルター・ラング・トリオWalter Lang Trio 「Moonlight Echoes」(2015)

Trioelfw_2  このTRIO ELFは、ピアノ・トリオをベースに、ドラムンベースやテクノ的なエレクトロ・サウンドを操るとう超現代的トリオ演奏を展開する意欲作を演ずる(10年前に結成)。

 とにかくあのウォールター・ラングが優しく端正な美的な世界から、一歩発想を変えての一つの創造的挑戦的世界なのである。
 しかしこのアルバムを聴いてみると、ラングの透明性にしてロマンチシズムに溢れた演奏はところどころに顔を出し、何故か聴く者をほっとさせるのではあるが・・・・・?。
 しかしその美しさと対比してのやや緊迫感のある展開を示すM7.” Usain”などは、そのこうする二面性の存在の意味とその目的に簡単には納得するのは難しい。
 M8.”Lullaby for a weaking child”では、そこに聴けるラングのピアノは何時もの彼の特徴の粘質で無いさっぱりとした美的抒情性をもって聴かせてくれる。このあたりは納得だが。
 しかしM10.”Stadium”のピアノの重低音でのスタートで、続く展開はテクノ的リズムでの進行、この意味はあまり解らない。
 M11.” Suq”今度は Bassの重低音でスタートするが、その後の軽い展開が不可思議。あまり魅力が感じられるという曲でない。

 やっぱりおおよそその展開が奇妙で、なんだか目的がよく解らない。この異種の共存があまり彼の演ずるところとの意味づけにどんな位置づけになるのか疑問を感ずるのだ。挑戦は解るがちょっと中途半端と言わざるを得ない。

 結論的には、そんな中にもやっぱりトリオとしての味を追求している事の意義を持っていることは事実だ。そうしたところに興味のある者は聴いてみても価値はある。ただしほんとにこれが、参照として挙げたWalter Lang Trioの「Moonlight Echoesに惚れ込んで聴く人を魅了するのだろうか?ちょっと疑問の世界であった。

(Tracllist)
1. Emptiness
2. Krumm
3. Prléude to ELF Police
4. The ELF Police
5. Tripolis
6. Salutation to the Sun
7. Usain
8. Lullaby for a weaking child
9. Dance da Fita
10. Stadium
11. Suq

(視聴)

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