ピアノ・トリオ

2018年1月18日 (木)

Trio X of Sweden  「Atonement」

( 2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-9 )

美メロによる快感と安心感・安堵感のアルバム
      ~良識ジャズの典型 ~

<Jazz>
Trio X of Sweden 「Atonement」
Prophone / SWE / PCD171 / 2017

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レナート・シモンソンLennart Simonsson(p)
パー・ヨハンソンPer V Johansson(b)
ヨアキム・エクバーグJoakim Ekberg(ds)

 レナート・シモンソン、パー・ヨハンソン、ヨアキム・エクバーグの3人によって2002年に結成されたピアノ・トリオ「Trio X of Sweden 」のニュー・アルバム。
 調べてみると、この「Trio X of Sweden」はスウェーデン中部のウプサラ県が地域の音楽文化を支える目的で主宰する「ウプランドの音楽(Musik i Uppland)」のアンサンブルのひとつと言うことだ。1987年に「Trio con X」として発足、2002年から現在の名称で活動しているとのこと。
 2012年に発表されたアルバム『Traumerei』は、クラシックをジャズアレンジした作品で好評を博したらしいが、私は未聴。ちょっと聴いてみたい気持ちになっている。
 今回のこの最新アルバムは、映画音楽やポピュラーミュージックをカヴァーして、シモンソンはじめ彼等のオリジナル曲をも適度に配して、とにかく優しく優雅に聴かせてくれる。アルバム・タイトルの『Atonement』とは”償い”という意味で、これには結構深い意味を込めているのかも知れない。美しくメロディアスでエレガントな作品である。

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(Tracklist)
1.  I skymningen (Wilhelm Peterson-Berger) たそがれに
2.  Somaoh (Lennart Simonsson)*
3.  Atonement (Lennart Simonsson)*
4.  Nå skrufva fiolen, Fredmans Epistel No 2 (Carl-Michael Bellman)
5.  Wedding March (Felix Mendelssohn) 結婚行進曲
6.  Urban Reconnection (Lennart Simonsson)*
7.  Vallflickans Dans (Hugo Alfvén) 羊飼いの娘の踊り
8.  Naomi (Per V Johansson)*
9.  Utskärgård (Bobbie Ericson)
10.  I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325 (Trad. Hymn)
11.  Liksom en herdinna, Fredmans Epistel No 80 (Carl-Michael Bellman) フレードマンの手紙
12.  Theme from Schindler’s List (John Williams) シンドラーのリストのテーマ
13.  Raindrops Keep Fallin’ on My Head (Burt Bacharach) 雨にぬれても
14.  The Mulberry Tree (Lennart Simonsson)*
15.  Send in the Clowns (Stephen Sondheim)
                   
 (*印:オリジナル曲)

  このトリオの演奏は、まずは癖が無いといったところをまず感じますね。対象の曲も確かにジャズ、クラシック、トラッド、ソウル、ポップ、ロックとオールラウンドにこなします。もちろんピアニストLennart Simonssonを中心としての彼らのオリジナル曲も5曲登場している。ポピュラーに知られた曲も、勿論彼らなりきの編曲やインプロヴィゼーションの導入などが成されているが極めてオーソドックスなものに感じるし、なにかジャズの教科書的演奏に聴こえてくるんです。

 オリジナル曲も非常に優しいし、聴く方には快感です。特にベーシストのヨハンソンの曲M8.  "Naomi" は、なにか懐かしいメロディーで、郷愁におそわれる。そんな思いに連れて行ってくれる良い曲ですね。ベースによるメロディー、それに続くピアノに取って代わるメロディー両者の美しさにホッとするところです。
 更にシモンソンのM14. " The Mulberry Tree "(Lennart Simonsson)は、そのピアノの奏でるやや不安げな美メロによるなかなかの名曲。
 又なんとM5. " Wedding March" (Felix Mendelssohn)結婚行進曲まで登場するが、これが又結構静かな思索的ジャズに変身なんですね、これはちょっと驚き。
 スウェーデンの賛美歌M10. " I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325"などにも心安まります。
 その他私にとってはジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリストのテーマ」M12.  "Theme from Schindler’s List" (John Williams)には美しさと懐かしさで参ったと言ったところです。

 こんな良識と快い響きと安心感の漂ったアルバムも珍しい。誰にでも勧められるアルバムです。

(視聴) 

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2018年1月14日 (日)

寺島靖国選曲シリーズ「Jazz Bar 2017」 * ミケーレ・ディ・トロ Michele Di Toro Trio 

これで17巻目、今回もやはり・・・ピアノ・トリオが中心で
  注目:ミケーレ・ディ・トロ・トリオMichele Di Toro Trio

<Jazz>
Y.Terashima Presents 「Jazz Bar 2017」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1061 / 2017

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(Tracklist)
1. Lilofee [Edgar Knecht]
2. Un Sogno d'estate [Lello Petrarca]
3. Se non avessi piu' te [Jesper Bodilsen]
4. On The Horizon [Jacob Christoffersen]
5. Kasztany [L.A. Trio]
6. Machismo Mouse [Darin Clendenin]
7. A Bruxa [Abe Rábade]
8. Pinocchio [Tingvall Trio]
9. Esperanza [Michel Bisceglia]
10. Purple Quarry [J.S. Trio]
11. Distances [Michele Di Toro]
12. My Love And I [Frank Harrison]
13. Paris 2002 [Stephan Becker]

 2001年から始まったこのシリーズ、もう17年ですね。当初寺島靖国はこのオムニバスはレコード会社の選曲したものとは違う、だから売れても売れなくてもいい、だから個人色は出す、とにかく好きなものをかき集める・・・とスタートしたもの。結果は売れたと言うことですね、17年も続いているんですから。
 さて、今回の2017年盤は、上のように13曲選曲収録されている。ここで私は何時も取りあげているTingvall Trio(M8. "Pinocchio" ) そしてMichel Bisceglia(m9. "Esperanza" ) は当然と思っているが、M1. "Lilofee" [Edgar Knecht] そしてM3. "Se non avessi piu' te" [Jesper Bodilsen] 、M5. "Kasztany" [L.A. Trio]もなかなか素晴らしい。

 そして今回私の注目は、Michele Di Toro Trio(M11. "Distances" )とFrank Harrison Trio(M12. "My Love And I" )だった。そこでまずミケーレ・ディ・トロMichele Di Toro Trioについてここで焦点を当ててみたい。↓↓

 ① Michele Di Toro Trio 「PLAY」
     abeat for JAZZ / Italy / ABJZ134 / 2014

Play

  「ジャズ批評2015 年3 月号」”ジャズオーディオ・ディスク大賞2014” の8 位に選ばれた注目盤であるが(この時のNo.1は、Alessandro Galati「Seals」だった)、ピアニストのミケーレ・ディ・トロの評判は聞いていながらも、実は彼のこのアルバムには手を付けてこなかったので、ここで敢えてよいチャンスと挑戦してみたわけである。

Michele Di Toro (p)
Yuri Goloubev (b)
Marco Zanoli (ds)
Recorded on January, 30th and 31th 2014 at Protosound Polyproject, Chieti, Italy

(Tracklist)
1.Lutetia *
2.Ninna Nanna *
3.Daunted Dance %
4.Corale *
5.Distances
6.Remembering Chopin *
7.Joni... %
8.Change Of Scene *9.Touch Her Soft Lips And Part %
10.Chorale VIII - Ascension %
       
  (*印:Michele Di Tro  、 %印:Yuri Goloubev)

 このトリオ・メンバーからもその内容は押して知るべしと言うところ。1曲を除いてその他全曲彼らのオリジナル曲。このアルバムのリーダーであるミケーレ・ディ・トロは4曲。そしてなんとベースのユーリ・ゴロウベフYuri Goloubevは頼もしいことに4曲も提供していて、彼はロシアのクラシック・ベーシストで今やユーロ・ジャズには無くてはならないベーシスト(私の好みのロベルト・オルサー・トリオのベーシストだ)。
 過去にマーシャル・ソラール賞やフリードリッヒ・グルダ賞を受賞したという名ピアニスト、ミケーレ・ディ・トロとユーリ・ゴロウベフのピアノトリオとなればやはり注目。とにかく上品で流麗なタッチで耽美な世界が展開して感動もの。繊細なメロディを奏でて、それに見合ったテクニックを披露するリズム陣の黄金トリオのアルバムだ。
 このアルバムのM5."Distances"が、今回の『Jazz Bar2017』に取りあげられたのだった。

 ② Michele Di Toro 「PLAYING WITH MUSIC」
      MUSIC CENTER / IMP / BA 161 CD / 2017

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  イタリア・ジャズ界でも、ナンバー1の美男子と言われるこのミケーレ・ディ・トロ。1974年生まれ。これは2003-2004年の彼の30歳を迎える時の録音もの。もともとクラシック・ピアノを身につけ、ショパンを愛し、あのエンリコ・ピエラヌンツィの流れにある。
 そしてこのアルバムは廃盤状態にあり”幻のイタリア・ジャズ・ピアノ盤”と言われ中古市場を賑わせていたもの。そして昨年再販盤がリリース。そんな訳で注目し、手に入れたのだが、ミケーレ・ディ・トロのピアノ・ソロ、デュオ、トリオ演奏で、ライブとスタジオ録音版。いかにもヨーロピアン・ジャズのピアニストと言った印象で、クラシックの影響も受けており、上品で流麗なタッチで耽美な世界が繰り広げられている。しかしここにみる彼のアレンジやインプロヴィゼーションは驚きの凄さで圧倒する。成る程名盤と言われるのも解る。聴いていてふと数歳年上のGiovanni Mirabassiが頭に浮かんだ。

DitorowMichele Di Toro (p)
Franco Cerri (g)
Marcello Sebastiani (b)
Marco (b)
Alberto Biondi (ds)
Tony Arco (ds)

(Tracklist)
1.  Sabrina *
2.  Sensual Thought *
3.  Honeysuckle Rose
4.  How Insensitive
5.  L'Importante E Finire
6.  My Funny Valentine
7.  In A Sentimental Mood
8.  Playing "A La Turque" *
9.  Farmer's Trust
10.  See You! *
11.  Marrakech * 
         (*印:Michele Di Toro)

 かって私は、プログレッシブ・ロツクの世界でイタリアのメロディアスな曲仕上げとロマンティズムは群を抜いていることに圧倒されたわけだが、これは長い歴史の中から国民的に培われて来たものであろうと思っている。そしてジャズ界においても全くその道はしっかりと息づいていて、彼の作品もその流れを十二分に演じきっている。

(視聴) Michele Di Toro Trio

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2018年1月11日 (木)

エスペン・バルグ・トリオEspen Berg Trio「Bølge」

(2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-8

美意識が支配する中にモダニズムを追求する静と動の交錯

<Jazz>
Espen Berg Trio「Bølge」
BLUE GLEAM / JAPAN / BG008/ 2017


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Espen Berg (p)
Barour Reinert Poulsen (b)
Simon Olderskog Albertsen (ds)

Recorded at  Rainbow Studio, Oslo, Norway

 2016年にここでアルバム『モンステルmønster』(BlueGleam/JPN/BG-006/2015)を紹介したノルウェーの気鋭ピアニストの第2弾だ。彼らは2016年ジャパン・ツアーを行って、高評価を得ている。
 相変わらず憂いを湛えたリリシズムと静謐な美意識が支配する中にモダニズムを追求する静と動の交錯する3者のインタープレイが楽しめるアルバムである。ブラッド・メルドーエスビョルン・スベンソンの影響を受けていると言われておりその先進性を追求する姿勢も諾(うべな)るかなと言うところだ。

1004670(Tracklist)
1. Hounds of Winter
2. Maetrix 
3. XIII
4. Bølge
5. Tredje
6. Cadae
7. For Now
8. Bridges
9. Skoddefall
10. Climbing
11. Vandringsmann (Bonus Track)
12. Scarborough Fair (Bonus Track)


 オープニングのM1. "Hounds of Winter"は、スタートから美しさと静かさとそして安定感をもって安堵感を醸し出してくれる。しかし中盤からはテンポを早めての変調して流麗なピアノの流れとアンサンブルの妙を見せる演奏、これが"Hounds"の姿なのか。そしてハイテンポのM2. "Maetrix"へと流れる。
 さてこのアルバム・タイトルの「Bølge」というのは、ノルウェー語で「波」を意味しているとか、なるほど寄せては返すという曲の流れを表現しているものと思われるがそんな世界を堪能できる。
  とにかくそのM4. "Bølge"の約7分の曲は彼らの真骨頂の美しさだ。「波」と言っても高い荒々しい波でなく、静かに広がりをもって寄せてくる人の心に精神的安定感と幸福感に満たしてくれる情景だ。この曲でこのアルバムは私のお気に入りとなるんです。
 しかし一方M6. "Cadae"に見るようなトリッキーにして荒々しくポリリズムの描くところ、彼らの尋常ならぬインタープレイの境地を示している。
 そして続くM7. "For Now"の反転しての美しい落ち着きの世界へと繋がり、自然と人間との交わりの中から描く情景に心を奪われる。
 M8. "Bridges"、M9. "Skoddefall"を聴くと、なるほど彼らのジャズ心はこんな複雑なアンサンブルのある先進性のあるところに目指していることが知ることが出来る。
 Bonus Trackとして聴き慣れたM12. "Scarborough Fair" が登場するが、流麗なピアノ・プレイを聴かせ編曲の妙を見せる。

 とにかく美しい旋律や哀感のある情景のみに浸ろうとすると、複雑な変拍子やポリリズムがパンチを浴びせてくる。しかしそれはあくまでも美しい世界を構築する彼らの目指す方法論としての重要な役割の一つとして果たしていることなのだろう。こうしたハイレベルな現代主義的トリオ・ジャズはこれからも注目のところにあると言える。

(視聴)

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2018年1月 5日 (金)

 (新年第2弾) ヨーナ・トイヴァネン・トリオJoona Toivanen Trio 「XX」

音の余韻を生かし透明感と共に深遠なる世界を描く

<Jazz>

JOONA TOIVANEN TRIO 「XX」
CAM JAZZ / ITA / CAMJ7920-2 / 2017

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Joona Toivanen (p)
Tapani Toivanen (b)
Olavi Louhivuori (ds)
Recorded and mixed Cavalico on 31 May,1-2 June 2017 at Artesuono Recording Studio
Recording & Miixing engineer Stefano Amerio

Numurkah 澤野工房からの『Numurkah』(ATELIER SAWANO022 / 2000 (→))がリリースされて、我々も知ることになった若きメンバーのヨーナ・トイヴァネン・ピアノ・トリオ。全てを自らのオリジナル曲で網羅し、美しいピアノの流れに圧倒されたのだが、フィンランド生まれでスウェーデンで活躍中のトリオだ。今は嬉しいことにCAM JAZZから確実にニュー・アルバムをリリースしている。
  ここでも過去に取りあげた如く、このトリオの前作は2014年の『NOVEMBER』(CAMJ7878)で、更に最近は、ヨーナ・トイヴァネン自身のピアノ・ヒロ・アルバム『LONE ROOM』(CAMJ7904/2016)のリリースもあった。

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 トリオ・リーダーのヨーナ・トイヴァネンは1981年フィンランド生まれで、今年は30歳代後半に入ったところ。トリオは、弟であるタパニ(b)と、同級生だったオラヴィ・ルーヒヴオリ(ds)と共に1997年にフィンランドで10代に結成。過去に拘らない若さで、コンテンポラリーな雰囲気のある中に北欧独特のアンビエントな世界を描くジャズを持ち味として私もお気に入りのトリオだ。これはその不変のトリオのCAM JAZZからの3年ぶりのアルバムで、エンジニアとして今売り出しのステファノ・アメリオが担当している。
 そう言えば、ドラマーのオラヴィ・ルーヒヴオリは、ベテランの「トーマス・スタンコ・カルテット」にも加わっていて、今やスウェーデンでは名ドラマーの仲間入りか。

Joonatoivanentriow(Tracklist)
1. Polaroid (J. Toivanen)
2. Robots (O. Louhivuori)
3. Grayscape I (J. Toivanen)
4. Grayscape II (J. Toivanen)
5. Lament (J. Toivanen)
6. The Owl (O. Louhivuori)
7. Gemini (T. Toivanen)
8. Seconds Before (J. Toivanen)
9. Orion (J. Toivanen)
10. Trails (T. Toivanen)
11. Mt. Juliet (O. Louhivuori)

 収録リストを見ても、全11曲全て彼らのオリジナルに徹している。
 このアルバムもそうなのだが、北欧独特の叙情性を感じさせるプレイは、ピアノも打音が少なく、余韻を味わうべく透明感の高いどちらかというと「静」を描いている。このスタイルは、若さとは裏腹という感じで、つまるところ深遠なる世界を描くのである。
 又、時にピアノの弦も操作(ミュート)によってメロディーを流すことも有り、コンテンポラリーな世界も構築したりする。そんな中での北欧の都会とは離れた大自然の雰囲気すらも醸し出すところはお見事。ベースもアルコ奏法も交えて広がりと深みを構築する。更にドラマーのルーヒヴオリの曲M6."The Owl "にみるように、ドラムスによる描くところも如何にも北欧の自然を脳裏に浮かばせる一打一打の音に魂を込めているところは感動だ。とにかく曲作りの根本は、3者の演ずる音一つ一つをしっかりと聴かせる手法で構築する。聴く方もそんな流れに自然に集中してしまうのである。
 ところどころこのアルバムではミニマル奏法的なところが見受けられるが、曲の流れを次第に盛り上げていく手法としての一つだろうが、あまり拘るところがなく、アンビエントな世界に流して行くとこにおいては適量で納めている。このようなところも若さを感じさせないテクニシャンぶりには驚かされるのだ。

 こんな若き彼らの描く深遠なる世界で新年を迎えて心を新たにしているのである。

(視聴)  "Polaroid"

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2017年12月12日 (火)

リサ・ヒルトンLisa Hiltonの2作「NOCTURAL」、「HORIZONS」

(今年聴いて印象に残ったアルバムを-5)

ピアノ・トリオをベースにトランペットとサックスのクインテットも展開

Lisahilton2 現代思想の漲っていると言われるピアノ・トリオ演奏を展開する人気の女流ピアニストのリサ・ヒルトンLisa Hiltonのアルバム2作を今年はそれなりに納得して聴いたのだった。
 ピアニストがオーソドックスなベース、ドラムスとのトリオを演じていると、誰もが試みたいのがトランペットやサックスとの共演のようだ。この2枚はそんなアルバムで、彼女のピアノ・プレイが挑戦しているのがよく解る。ここで取りあげる2アルバムは、トリオと曲によってのトリオ+αのクインテット作品。

①<Jazz>
Lisa Hilton「NOCTURNAL」
Ruby Slippers Productions / US / 1020 / 2016


Nocturnal

Lisa Hilton (p), Gregg August (b), Antonio Sanchez (ds), J.D. Allen (tsax), Terell Stafford(tp)
(Tracklist)
1. Nocturnal
2. A spark in the night
3. Seduction
4. Whirlwind
5. Willow weep for me
6. Where is my mind
MIDNIGHT SONATA
7. I.Symphony of blues
8. II.Desire
9. III.Midnight stars
10. Twilight
11. An augast remembered

 何故か、前作『HORIZONS』 (2015年↓)に登場した彼女のオリジナル曲"Nocturnal"からスタートする。これはこのアルバム・タイトル曲でもある。そこには彼女の思い入れがあってのことだろう。クインテットの軽快なアンサンブルに彼女の発展的ジャズ心をみなければいけないのかも知れない。

②<Jazz>
Lisa Hilton「HORIZONS」
Ruby Slippers Productions / US / RSP1018 / 2015

Horizons

Lisa Hilton (p), Sean Jones (tp), J.D. Allen(tsax), Rudy Royston (ds), Gregg August (b)

(Tracklist)
1. Vapors and Shadows
2. Nocturnal
3. Sunset and the Mocking Bird
4. The Sky and the Ocean
5. Gold on The Ceiling
6. Surfer Blues
7. Moon River
8. Lazy Moon
9. Perfect Day
10. When It Rains
11. Dolphins
12. Curents

Lisa_hilton1(2作の感想)
 本場アメリカですから、こんなプレイヤーが健闘しているのはよく解るところである。とにかく彼女のピアノ・プレイは、展開が流麗なメロディを描きつつしかもダイナミックな面を持っていて、Jazzそのもののからの発展形を探究しているとも感じられるセンスに漲っている。このあたりは所謂ジャズ・ファンにはどう捉えられるだろうか。
  この2枚のアルバムは、一つのテーマで作られた連作のように思う。それはピアノ・トリオにサックス、トランペットをクインテット版ではあるが、主体はトリオ作品、曲によってサックス、トランペットが入るパターン。一方又彼女のピアノ・ソロ曲も登場する。

 しかし私は元々ピアノ・トリオ好きですから、このアルバムでもやっぱりピアノ・トリオが良いですね。
 『HORIZONS』では彼女自身のオリジナル曲"Vapors and Shadows"やDuke Ellingtonの"Sunset and the Mocking Bird"が聴きどころだし、『NOCTURNAL』では、3曲目の人気曲"Seduction"が情緒たっぷりでうっとりとする。”MIDNIGHT SONATA”とした組曲3曲M7-M9(I~III)は更にうっとりもので素晴らしい。と、言ったところで聴きどころはたっぷりとある。

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 そしてサックスやトランペットが入るとガラッとイメージが変わるのだが、これも私好みとは異なるも決して悪くない。 『NOCTURNAL』の彼女の曲"A spark in the night"、The Pixiesの"Where is my mind"が出色。押さえられたサックスとピアノが美しい。しかしサックスやトランペットのファンからすると若干欲求不満になりかねないかも。
 トランペットとの相性の良い曲は"Willow weep for me"ですね。
 ヨーロッパの哀愁とは異なった米国の情緒の魅力と言ったところか。

 彼女はカルフォルニア州出身、ジャズ・ピアニスト、作曲家、バンド・リーダーである。ちょっと年齢は解らないがミュージシャンとしては円熟期で、1997年より活躍している。アルバムも既に20枚以上有り業績的にはもうベテラン。
 今回取りあげたこの2枚のアルバムでは、やっぱり私的には『NOCTURNAL』の方が推薦盤です。

(視聴)

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2017年12月 1日 (金)

アリエル・ポカックAriel Pocock「LIVING IN TWILIGHT」

若き女性ピアニストのジャズ心での挑戦作

<Jazz>
Ariel Pocock「LIVING IN TWILIGHT」
Justin Time Records / CAN / 6894402612 / 2017


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Ariel Pocock アリエル・ポカック (piano, Rhodes piano, vocals)
Adrian Vedady アドリアン・ヴェダディ(bass)
Jim Doxas ジム・ダクサス (drums)
Chico Pinheiro シコ・ピニェイロ (guitar #2,5-7,10)


 私の初聴き女性ヴォーカルものだが、1992年生まれ(25歳)の若き女性のピアノ弾き語りジャズ・アーティストが立派に作り上げたアルバムだ。彼女は北米中心に多くのジャズ・フェスティバルに出演しての注目株。あのヘイリー・ロレンをサポートするピアニストとしての業績もあるようだ。これは単に美人というだけでなく、なかなかの実力派とみて良いのだろう。
 なんと驚きは、YouTubeに彼女の14歳時のジャズ・ピアノ・プレイがアップされている。
 このアルバムも我が美女狩りを得意とする友人の手にかかったものの一枚だ(笑)。

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(Tracklist)
1. The Very Thought of You
2. 500 Miles High
3. Living in Twilight
4. So in Love
5. Someone Like You
6. Saudações
7. So Long
8. I Love You
9. To Be Alone With You
10. Gonzalo's Melody
11. When You Wish Upon a Star
12. Hymn
13. Go Leave

 とにかく聴きやすい疲労感なしの曲作りが第一印象。そして彼女の声質はその発音からいって、なんとあどけなさたっぷりというパターン。ふとダイアナ・パントンを連想してしまった。唄い方がよく似ている。そして若いだけあって、これはいやにポップぽいと思う曲も登場するのだが、なんとそれはアデルの"Someone Like You"(M5)であった。いやはや驚かされたのだが、歌声はやっぱりアデルのパワーには及ばない。しかしまあ彼女らしい若い女性のムードはしっかり描いている。
 しかしどうも彼女の唄は、ただ下手というところではないのだが、そうかと言って上手いとは言えない。単調で抑揚も少なく、多分ピアニストから弾き語りへと発展させたのであろうが、まだまだその道は半ばと言ったところだ。しかし独特の雰囲気を持っていて、面白いと言えば面白い。特に締めの曲"Go Leave"(M13)は、ジャズとは言えないのだろうが、興味深い仕上げである。

Ariel20pocockp600 それはそれとして一方立派に演ずるピアノは見事にジャズなんですね。 "So in Love"(M4)はじめ"I Love You"(M8)などのスタンダード曲演奏の大半は、中盤から演奏中心になるパターンが多いが、基本的にはピアノ・トリオの演奏で、その方がギターを加味してのバックによるヴォーカル中心曲より明らかに仕上げは良い。ダイアナ・クラールとかいろいろと彼女から見れば弾き語りへの魅力があるのだろうが、ピアノ・トリオでもっともっと極めてゆくことが良いのではとふと思うのである(余計なお世話か?)。
 アルバム後半の"To Be Alone With You"(M9) 、"Gonzalo's Melody"(M10)、 "When You Wish Upon a Star"(M11)、Hymn(M12)はヴォーカル抜きのインスト演奏。特に"星に願いを"あたりを演ずるところは若い女性っぽいところだが、結構編曲はそれなりに面白く良かったです。

(視聴)

○ "Go Leave"

○ 14歳時のArielのジャズ・ピアノ・プレイ

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2017年11月 9日 (木)

大橋祐子トリオ「ワルツNo.4」

(今年聴いて印象に残ったアルバムを-1)
 もう11月、これからあっという間に年末になってしまうんですね。となれば、今年聴いたアルバムを整理しておくことにする。

スタジオとホール録音、「迫真の疲労」と「快感」の違い

<Jazz>
YUKO OHASHI TRIO 「WALTZ No.4」
TERASHIMA Records / JPN / TGCS-9672/9673 / 2017

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大橋 祐子(piano)
佐藤 忍(bass)
守 新治(drums)
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)

 寺島レコード10周年特別企画として昨年末にリリースされたアルバム。ジャズ・ピアニスト大橋祐子の4作目としてピアノ・トリオ作品を録音に凝って作成されたもの。もともと寺島靖国はオーディオ的にジャズ・アルバムを聴いてきた人であるし、こんなスタジオ録音(寺島サウンド)vsホール録音(大間知サウンド)の2枚組CDとして我々に聴かせてくれたのである。
 大橋祐子(東京都八王子市出身)は、もともとクラシック・ピアノを学び、2010年に寺島レコードより『PRELUDE TO A KISS』(TYR1018)でデビュー。その後の諸作に好評を得てきた女性ピアニスト。現在、佐藤 忍(bass)、守 新治(drums)とトリオを結成している。

★ このアルバムの注目点は、オーディオ的に楽しめると言うところだ。先ずは寺島靖国の納得のスタジオ録音、これには寺島靖国プロデューサーとランドマークスタジオ佐藤宏章によるもの。最近は「哀愁とガッツ」というタイトルが有名になった録音。そして今回は、なんとエソテリック社顧問にして、数々の高音質録音に携わる大間知基彰が、アコースティック録音でのオーディオ・マニアに絶大な信頼を得るオクタヴィア・レコード江崎友淑エンジニアと組んだ稲城市立iプラザホールにおける録音の2本立てのCD2枚組。

20170325014811_deco_2【DISC.1】 ホール録音盤
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
サウンド・プロデュース:大間知基彰 (エソテリック株式会社)
2016年10月5日稲城市立iプラザホール録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. ホーム (Michel Petruccani)
05. ラヴ・ミー・テンダー (Traditional / Elvis Presley)
06. アイ・シンク・アイ・クッド・ビー・ハッピー (Magne Furuholmen)
07. ソー・イン・ラヴ (Cole Porter)
08. プルメリア (Yuko Ohashi)
09. ワルツ #4 (Yuko Ohashi)
10. セント・ジェームズ病院 (別テイク) (Traditional)


【DISC.2】 スタジオ録音盤
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)
サウンド・プロデュース:寺島靖国 (寺島レコード)
2016年9月30日横浜ランドマーク・スタジオ録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. 哀しみのダンス (Leonard Cohen)
05. ダニー・ボーイ (Traditional)
06. アンカー (Yuko Ohashi)
07. アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング (Charlie Haden)
08. アインダ・ベム (Marisa Monte)
09. ニュー・デイズ (Yuko Ohashi)
10. オヴァート (King Fleming)



 約一週間の間隔を開けての同メンバーによる演奏の2タイプ録音であるが、最初の3曲は若干演奏が違うが同一曲。やはり"セント・ジェームズ病院"が聴きどころ。
 まずはなんと言っても寺島サウンドのスタジオ盤の迫力。とにかく生々しいリアルな迫真のサウンド。 切れ味とソリッド感が抜群で有り、低音の重さと迫力も十分。まあドラマチックというところです。
 一方ホール録音は残響も含めてホール感はしっかりとあり、同一のピアノ(Steinway & Sons D274 Concert Grand Piano)とは思えない音色だ。まあこうゆうのをエレガンスな音と言うのだろう。バックのベース、ドラムスは、これは明らかにそのもののバックでの支えに録音されていてトリオ三つ巴というよりは、ピアノ中心主義だ。

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                                                (寺島靖国)
 これ程異なる音となると、いやはや録音が如何に重要か思い知らされる。
 さてそこで結論を言ってしまおう。とにかく「スタジオ録音」寺島サウンドは凄い。聴いてみればもう文句は言えない迫力である。聴き始めのM01. "セント・ジェームズ病院 "を聴いた瞬間ゾクっとする迫真の迫力音。さてそこは凄いのだが、このCDを聴いていって解るが、ピアノ、ベース、ドラムスが同一の迫力で迫ってきて、そしてこの音ですから、数曲聴くとまず「疲労」に陥る。
 一方、このCDの後に「ホール録音盤」を聴くとベース、ドラムスの音が少々空しくなる。・・・・が、数曲聴き込んでいくと、その繊細にして優しさの音に快感の世界に流れ込むのである。
 さあ、この違いにどちらに軍配を挙げるのだろうか?、それはもう好みの世界であってということになる。さてそこで私の場合であるが、まず聴く時の状態でどちらかを選ぶことになるだろう。ガンガン聴きたい高揚した気分の時は、「スタジオ盤」。夜などに一人でゆったりと安らぎを求めて聴きたいときは「ホール盤」ということになるだろう。つまり両方欲張りだが欲しくなるのであるが、ミュージックを聴き込むとなればホール盤なんでしょうかね。

Photo ★ 最後に大橋祐子のピアノ演奏は?、と言うところだが・・・・目下過渡期ですね。 "セント・ジェームズ病院"はそれなりにジャズ色も感じられ意志がみられるが(10曲目の別テイクが良い)、しかし"エストレリータ"はどこでも聴かれる単なる演奏であって聴く人の心を呼び起こすところは無い。 " ソー・イン・ラヴ"は余韻の使い方に一歩前進あり。 "ワルツNo.4"そして"アンカー"は自己の曲だけあって聴き応えあり。 "哀しみのダンス"は、中盤以降の編曲部になってようやくそれらしくなる。 "アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング"は、こうした美旋律をどう熟すかがポイントだが、味付けはもう一歩。
  (余談)大橋祐子って鼻から口の辺りがダイアナ・クラールに似てますね(特に横顔)。ヴォーカルはどうなんでしょうか?。まさか親父声では?。

(視聴)   「ワルツNo.4」に関する映像が見当たりませんでした・・・・取り敢えず↓

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2017年11月 5日 (日)

ルイージ・マルティナーレLUIGI MARTINALE TRIO「face the music」

音楽的センスが漂っている粋なトリオ

<Jazz>

LUIGI MARTINALE TRIO「face the music」
ABEAT Records / ITA / AB JZ 549 / 2015


61jpjmedv9lw

Luigi Martinale (p)
Reuben Rogers (b)
Paolo Franciscone (ds)
Recorded by Alberto Macerata at Play Studio, Bricherasio, (CN) Italy
on January 15th, 16th, 2014

 寺島靖国選曲シリーズ『for Jazz Audio Fans Only Vol.10』(TYR-1060)で知ったアルバムだ。実はこのルイージ・マルティナーレ・トリオLuigi Martinale Trioに関しては、私は白紙状態。このシリーズに選ばれた事から興味を持せていただいた。まだまだ私の守備範囲の狭さを実感させられた。

Rmtrio このアルバム、ここに選ばれたと言うだけあって録音も秀悦。リアルな音と曲としての配置と残響が見事にバランス良く再生される。なんと寺島靖国自身のアルバムは、ちょっとリアルなところを追求するが為に、曲としてのバランスをどうしても欠いてしまうのだが、そんな意味でもこれはさすがに音楽のイタリアというところである(昨年末リリースされて評判だった大橋祐子の『ワルツNo.4』(TYR-1054/1055)の”スタジオ盤”と比較してみると面白い)。
  ピアニストのルイージ・マルティナーレは1963年生まれと言うことだから今年で54歳、円熟期ですね。彼はトリノ音楽院でクラシック音楽を学んで、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院ではエンリコ・ピエラヌンツィにジャズを学んでいる。
 このアルバムもベースにリューベン・ロジャースReuben Rogers を迎えての音楽的センスの満ちあふれたアルバムに作り上げている。

(Tracklist)

List

  収録曲は10曲中6曲はルイージ・マルティナーレ自身のオリジナル曲。スタートのThelonoous Monkの曲"Ask me now"を聴くと、三者のバランスも良くなかなか粋なトリオだと言うことが解る。
 M2."Caress" 、マルティナーレの曲が登場すると、成る程ユーロ・ジャズのメロディーの美しさが迫ってくる。明らかにこの曲を挟むM1.M3.のモンクの曲とは本質的に異なるところが見えてくる。それでかえって私の求める魅力度が高まってくる。
 M4.Coots/Lewisの"For all we Know"はしっとりと演奏され、ピアノが美しく流れちょっと想いに耽ることが出来る。後半にベース・ソロも気持ちを落ち着かせてくれる。
 M5からM9までマルティナーレの曲が続くが、寺島靖国にも選ばれたM7."Breath"が良いですね。ピアノが高音で流す部分のメロディーはエレガントで美しく魅力たっぷり。展開もふと題名のように"囁(ささ)き"が感じられる。
 M9."Indian Trick"のリズム展開は、異色的で面白い。

 このアルバムは好録音も後押ししていると思うが、なかなか達人のトリオ・ミュージックとして捉えることになったもの。彼の他のアルバムも聴いてみたいと思っているところだ。

(視聴)
(Solo)      Luigi Martinale

 
                             *            *

(Trio)     Luigi Martinale Trio

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2017年11月 1日 (水)

寺島靖国選曲シリーズ「For Jazz Audio Fans Only Vol.10」

(ミュージック鑑賞の秋)

Tt2
      (このところLP復活で、古き名機のDENON DP-80が頑張ってます)

オーディオ・ファンを楽しませてくれるジャズ・アルバム10巻目
~好録音のピアノ・トリオを満喫~

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Audio Fans Only Vol.10」

Terashima Records / JPN / TYR-1060 / 2017

Forjazzaudiofansonly10

 2001年スタートの寺島靖国選曲のコンピレーション・シリーズの『Jazz Bar』も既に16年となり、年1枚での16巻をなんとなく聴いて来た。そしてここに取りあげるそれに継ぐシリーズとして、これも既にいつの間にか10年となる『For Jazz Audio Fans Only 』、今年で10巻目となった。これも私は取り敢えず楽しみにしているシリーズで、既に聴いたアルバムからの曲も収録されているのだが、やっぱり聴いてしまうのである。
 寺島靖国の選曲は録音にも拘りがあってのことで、『Jazz Bar』に登場する曲群もオーディオ・ファン向けでもあるが、この『For Jazz Audio Fans Only 』シリーズは更にその点が強調されている。又曲もどちらかというとピアノ・トリオが主力であるため、その点は私好みとも一致していて、既にこれによって知ったマイナーなトリオも過去にあって、結構楽しませて頂いているのである。そして10年目の「Volume 10」を、ここで少々紹介する事とする。

(Tracklist)
1. Estate [The Kirk Lightsey Trio]
2. Les Rails enchevetres [Georges Paczynski Trio]
3. Spring Lingers [Alf Haggkvist Trio]
4. Laberinto [Sergio Gruz Trio]
5. St. James Infirmary [大橋祐子トリオ]
6. Elm [Roberto Olzer Quartet]
7. Pap [Carsten Daerr Trio]
8. Drum Afterlude [Carsten Daerr Trio]
9. Breath [Luigi Martinale Trio]
10. Noble One [Scott Earl Holman Trio]
11. When My Anger Starts To Cry [RGG]
12. Then Goodbye [Michael Salling Trio]
13. Fit To Fly [Guido Santoni Trio]

 2曲目は、あのシンバルの響きを代表に驚きのサウンドであったGeorges Paczynski Trioのアルバムだが、ここでは既に紹介した『LE VOYAGEUR SANS BAGAGE』(ASCD161101)から"Les Rails enchevetres"が取りあげられている。これはフランスのヴァンサン・ブルレVincent Bruleyによる録音・ミックスもので、数年前の作品からそのリアルなサウンドで話題になってきており、そのメンバーによる今年のリリースもの。

Walz4w M5. "St. James Infirmary" は、大橋祐子トリオだ。寺島レコード・アルバム『WALZ 4』(TYR-1054)(→)から。スタジオ録音の他、大間知基彰氏が、オーディオ・マニアに評価の高いオクタヴィア・レコード江崎友淑エンジニアと組んだホール録音などが別にCD一枚あって話題になったもの。オーディオ・マニアに喜ばれた。

 M6."Elm"これもここで既に取りあげた Roberto Olzer Quartetのアルバム『FLOATIN' IN』(ABJZ168)からの、Richie Beirachの曲だ。私の愛する曲では最右翼のもので、これはトリオにトランペットが加わった良演奏、録音はこれも名手イタリアのStefano Amerioだ。

61jpjmedv9lw M9. "Breath" この曲は知らなかったが、イタリアのLuigi Martinale Trioによるもので、なかなか情緒のあるピアノ・トリオ演奏と好録音で気持ちが良い。アルバム『face the music』(ABJZ549)(→)からで、ピアニストのルイジ・マルティナーレのオリジナル曲が6曲収録されていて、この曲はその内の1曲。彼はエンリコ・ピエラヌンツィに多々指導を受けてきたようであるが、今年で50歳代半ばになり円熟期。

5169yse82l M12. "Then Goodbye"も良いですね。デンマークの Michael Salling Trioですが、アルバム『Nice Vibrations』(CALI087)(→)からだ。スウィングするジャズ心とヨーロッパ的リリシズムが合体した感のあるこれも愛すべきアルバム。
 

 今回の選曲もなかなか味なもので、ナイスなコンピレーション・アルバムが出来上がった。本来オムニバスものは余り好まないのだが、これは選ばれ採用されるモノが、ピアノ・トリオが主力であってその為私は大歓迎ということになるのであった。又今時の名技術陣による好録音合戦を目の当たりに体験できる。そんなところも注目点。

(試聴)

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2017年10月 5日 (木)

シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli 「Emanation」

ジャズの真髄を心得ているかと思わせる展開
~民族性をしっかり確保しつつ~

<Jazz>

Shahin Novrasli 「Emanation」
Jazz Village / AUS / JV570141 / 2017


Novrasli

Shahin Novrasli(p, vo 6), James Cammack(b), Andre Ceccarelli(ds),
Erekle Kolava(perc), Didier Lockwood(vln 3,6)

 Audio Mixers: Shahin Novrasli; Vincent Mahey. Liner Note Authors: Shahin Novrasli; Didier Lockwood. Recording information: Studio Sextan, Malakoff, France (04/2016)

 シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli は、1977年生まれのアゼルバイジャンの首都バクー出身のピアニスト。これがなかなか若さを越えた技量と民族的センスをしっかり持った曲を展開する。アゼルバイジャンとはどうも馴染みがないが、南コーカサスに位置する共和制国家だという。北はロシア、北西はグルジア、西はアルメニア、南はイランと国境を接する国で、東はカスピ海に面している。こう説明を聞くとなんとなくイメージが湧いてくる。
 昔ヨーロッパから日本に帰ってくる航空機のルートに「南回り」といって、この上空を通って、インド、タイ経由で日本に帰ってきたが、この辺りは上空から見るとまさに日本とは全く違った広大な黄色の大地の世界だ。しかしアゼルバイシャンは山岳と緑に恵まれている。そしてこうみると何となくその曲のタイプが想像されるところだが、”コーカサスの文化とヨーロッパの古典音楽とジャズを融合したユニークな独自の音楽を切り拓いている”と紹介されている。
 このアルバムは基本的にはピアノ・トリオだ。ただそれに曲によってパーカッション、そしてヴァイオリン(M.3, M.6)が加わったりしている。

Shahinnweb(Tracklist)
1.  Emanation
2.  Song of Ashug
3.  Saga
4.  Jungle
5.  Misri Blues
6.  Ancient Parallel
7.  Tittle Tattle
8.  Yellow Nightingale
9.  Land

  •  全曲ノヴラスリのオリジナル曲。なんとなくクラシック・ムードを漂わせるのだが、やっぱりコンテンポラリーの範疇か。
      M6."Ancient Parallel"を聴けば、突然ヴォーカルが登場してビックリ、いやはやこれは中近東方面だと実感する。そんな民族性の強い曲も登場するが、この曲の終盤にはなんと前衛的なジャズに突入する。
     M4. "Jungle"のベースの唸るリフも凄いがピアノのインプロヴィゼーションは見事。
     M8."Yellow Nightingale"などは、同様にベースの唸りでスタートして、完全にフリー・ジャズに突入、ここでもインプロヴィゼーションの掛け合い風な展開もお見事だ。そしてその流れは快感で、次第に引き込まれて言ってしまう。

     シャヒン・ノヴラスリは”5歳からクラシック・ピアノの専門教育を受け、若くして高い評価を受けていた彼だが、アゼルバイジャンの民族音楽"ムガーム"とジャズの融合を成し遂げた音楽家ヴァギフ・ムスタファ・ザデの影響のもと、ジャズの世界へ。96年に自国のコンサヴァトリーに入学以降、キース・ジャレット、チック・コリア、ビル・エヴァンスを研究”と紹介されている。そう思って聴くと、成る程と思わせるところがないではない。これだけスリリングな曲展開をするのだが、どことなく哀愁が漂っているところが私をして魅了させられてしまうのである。更に、M9." Land"などのパーカッション、ドラムス、ベースそしてピアノのそれぞれの音の間の置き方など、とても若さの範疇で無く円熟したミュージシャンの世界と思わせる。

     いやはやなかなかジャズ心と、民族の味の深さと、ピアノという楽器の曲に於いての占める位置を達観した世界とのミックスされたミュージックを作り上げたこのアルバムには脱帽の敬意を表したい。お見事。
  •  
  • (視聴)

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