ピアノ・トリオ

2020年9月26日 (土)

寺島靖国プレゼント「For Jazz Audio Fans Only Vol.13」

「ジャズは音で聴け」の世界は今年はどう変わってきたか・・・・

<Jazz>

 Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Audio Fans Only Vol.13」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1092 / 2020

71cxdsmcyl_ac_sl850

  今年も、無事寺島靖国氏の企画によるこのアルバムがリリースされた、13卷目だ。注目される好演奏、好録音盤を取上げ年に一回のリリースであるので、なんと今年でもう13年と言うことですね。オーディオ・ファンでもある私は、おかげで過去の全アルバムを聴いて楽しんでいる。
 恐らく今年のこのアルバムには、私の聴いているのは何か必ず取上げられるだろうと高を踏んでいましたが、なんと全13曲今年までに聴いてきたアルバムが無く完全に肩すかしでした。このあたりが、一般的な世界で無く、オーソドックスでない、にもかかわらず納得の好演奏を紹介してくれるのでありがたいと言う処なんです。

Terashima

 「ジャズは音で聴け」と豪語している彼の世界、中心は私の好きなピアノ・トリオだ。ところがこのところステファノ・アメリオの影響もあってか、低音とシンバルの強力エネルギー溢れるサウンドから、曲の質とその描く内容によっての音場型サウンドへと好みがシフトしつつあることを訴えている寺島靖国。 どんな選曲をしてくるか、ちょっと楽しみというか、期待というか、そんなところでこのアルバムを聴くのである。

(Tracklist)

1. The Song Is You 〔Christoph Spendel Trio〕
2. I Love You So Much It Hurts 〔Han Bennink / Michiel Borstlap / Ernst Glerum〕
3. Cancer 〔Allan Browne Trio〕
4. New Life And Other Beginnings 〔Aki Rissanen〕
5. Sailing With No Wind 〔Carsten Dahl Trinity〕
6. Counter 〔Floris Kappeyne Trio〕
7. Ammedea 〔Pablo Held Trio〕
8. Flight of the Humble 3 〔Robert Rook Trio〕
9. 928 〔Michael Beck Trio〕
10.Mistral 〔Peter James Trio〕
11.Get Out Of Town 〔Stevens, Siegel And Ferguson Trio〕
12.The Day You Said Goodbye 〔Larry Willis Trio〕
13.Don't Let The Sun Catch You Crying 〔Lafayette Harris Jr.〕
()内は演奏者

 こうしてみると、いやはやここに登場するは日本におけるポピュラーな演奏者は少ないというか、私はあまり知らないのであって、探求心、研究心のなさを思い知らされた。
 従って今回のアルバムは私にとっては非常に貴重だ。取上げた曲の全てのアルバムを聴きたい衝動に駆られる。

819mcjlauil_ac_sl90071ucac3tnrl_ac_sl9005157u3mvtil_ac_

 中でもやっぱり曲の良さからは、M1."The Song Is You "、M5."Sailing With No Wind "は興味ありますね。M1は、ポーランド生れのピアニストで、この曲を聴く限りでは、ジャズの中では刺激の無いむしろメロディー重視にも聴こえるが、エレクトロベースが面白い味付けで是非この曲を収録したアルバム『Harlem Nocturne』(BLUE FLAME)(上左)を聴きたいと思った。又M5.はジャズ名演といったタイプで、なかなか叙情もあって素晴らしい。このピアニストのカーステン・ダールはデンマーク生れのベテランで、私は唯一このピアニストは知ってはいるが、未熟にも彼のこのアルバムにはアプローチしてなかったので、美しいピアノの調べのこの曲を収録しているアルバム『Painting Music』(ACT Music)(上中央)は早速聴くことにする。
   そしてM9."928"(Michael Beck Trio)のベースとドラムスの迫力録音が聴きどころ。このマイケル・ベックも名前は聞いたことがある程度で今まで白紙状態であったため興味がある。更にM12."The Day You said Goodbye"がジャズの真髄を演ずるが如きのベースとブラッシが前面に出てきて、そこにピアノを中心とした流れがゆったりとしていて素晴らしい。このアルバム『The Big Push』(HighNote Records)(上右)を是非入手したいと思ったところだ。

 この寺島靖国のシリーズは、演奏は勿論無視しているわけでは無いが、所謂オーディオ・サウンドを重視し、その録音スタイルに深くアプローチしていてライナー・ノーツもその点の話が主体だ。それを見ても如何にサウンド重視がこのアルバムの目的であることが解るが、昔からシンバルの音の重要性の語りが彼の独壇場だ。そしてベース、ピアノの音質と配置などに、かなり興味と重要性を主張している。そんな点も私もこのアルバムに関しては、やはり興味深く聴いたのだった。

  今回は、先ずこのリリースされたアルバムの紹介程度にしておいて、ここに登場したアルバムを入手し聴いて、次回からそのアルバムの感想をここに紹介したいと思っている。

(評価)
選曲  90/100
録音  90/100

(参考視聴)  Carsten Dahl Trinityの演奏

 

 

| | コメント (1)

2020年9月18日 (金)

レイス・デムス・ウィルトゲン REIS DEMUTH WILTGEN  「sly」

若きトリオが、ヨーロッパ・ジャズの一つの最新形を目指して・・・
ステファノ・アメリオの録音とミキシングも聴きどころ


<Jazz>

REIS DEMUTH WILTGEN  「sly」
CamJazz /  /  MOCLD-1037 /  2020

Xat1245729120

Michel Reis (p)
Marc Demuth (b)
Paul Wiltgen (ds)

Recording and Mixing engineer Stefano Amerio 

  ルクセンブルグの若きピアニストのミシェル・レイスは日本での活動は活発で、石若駿をレギュラーメンバーにした彼の他は日本人ミュージシャンのみからなる「ミシェル・レイス・ジャパン・カルテット」で知られる。  この5月に彼のソロ・アルバム『SHORT STORIES』をここで取上げたのだが、あのリリカルな世界が印象的である。
 さて、そのレイスは自国においては、高校時代の同窓のメンバーとトリオ「レイス・デムス・ウィルトゲン」を組んで、既に2013年にデビュー作品をリリースしているのだが、そのトリオが現在までがっちり続いていて、今年第4作を発表したのである。それがこの『sly』である。
 このアルバムはかなり彼らのレクセンブルグを意識したもので、ルクセンブルグの詩人の風物詩「ルナール」というものをテーマにしていて、その「ルナール」というのは狐を指すらしい。それがこのアルバム・タイトル「スライsly」ということになり、その意味は"ずる賢い"と言うことのようだ。
 とにかく、この若きトリオが描く新世代ジャズにアプローチしてみたのであるが、こうしたものがヨーロッパ・ジャズの一つの最新形なのかと聴いた次第だ。

Unnamed_20200916172401 (Tracklist)

1. Snowdrop #
2. No Storm Lasts Forever *
3. If You Remember Me *
4. Fantastic Mr. Fox #
5. Silhouettes On The Kuranda *
6. Viral #
7. Diary Of An Unfettered Mind *
8. Let Me Sing For You *
9. Venerdì Al Bacio *
10. Nanaimo *
11. The Last We Spoke #
12. The Rebellion 
13. Home Is Nearby #

(*印:Michel Reis 、#印:Paul Wiltgen)

 どちらかというと、そう長くない、短い曲も含めて上のように13曲。レイスReisの曲が7曲、ドラマーのWiltgenの曲が5曲、ベーシストのDemuthの曲が1曲という彼らのオリジナル曲だ。

Jb09756_20200916172801Jbm0007Jb09806


 いっやーしかし、この若きトリオの演ずるところはリアル・ジャズとヨーロッパ美学の結合なんですね。
 私は前半6曲は取り付くところが無いくらい異様なアヴァンギャルドな世界だ。印象はドラムスのパンチ力で録音も前面に出てきてバンバンアタックしてくるリアル・ジャズの印象。これらの曲はルクセンブルグの世界観とフリー・ジャズでの叙情詩と行ったところか、私がついて行くには少々厳しい。
 ようやく、心を引かれてのめり込めるのは、主としてミシェル・レイスの曲M7."Diary Of An Unfettered Mind"からで、M.11"The Last We Spoke"までの4曲で、あくまでも私の感覚としての素晴らしさだ。近代感覚あふるる中に美旋律そして叙情を漂よらせて非常に魅力的。
 このアルバムケの前半に評価を持って行く人もいるのではと思うが、私の場合はついて行くのが難儀だった。
 彼らは、彼ら自身のオリジナル曲に固執しているようで、その作曲演奏に自己の世界観を描こうとしている。
 若きトリオが、ヨーロッパの叙情を加味しつつ、リアル・ジャズ、フリー・ジャズ、そしてアヴァンギャルドな世界への挑戦として演ずるところは、注目すべき作品だ。

 そして録音がイタリアの名手ステファノ・アメリオということで注目してみたが、彼は曲を十分意識しての世界観のある音と音場を作り上げるのだが、このアルバムは過去のよく聴いた叙情的美しさを描き挙げるものと異なって、ちょっと驚きのリアル・サウンドを追求している。彼のこのような仕上げは珍しく貴重。そんなところからも、このトリオの演ずるところが窺えるところだ。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)  このトリオのライブ模様

| | コメント (2)

2020年8月29日 (土)

エリチン・シリノフ Elchin Shirinov Trio 「Waiting」

民族性の高いエキゾチックな中のスピリチャルなプレイ

<Jazz>

Elchin Shirinov Trio 「Waiting」
SOMETHIN'COOL / JPN /  SCOL-1040 / 2020

71osqxfkffl_acw

Elchin Shirinov (piano)
Andrea Di Biase (double bass)
Dave Hamblett (drums)

 

  ベースのリーダであるアヴィシャイ・コーエン・トリオの近作アルバム『Arvoles』(RAZDAZ Records / RD4619/2019)のピアニストとして注目さたアゼルバイジャン出身のピアニスト:エルチン・シリノフ(1982年生れ)の彼名義のトリオ作品の日本盤の登場。
 アヴィシャイ・コーエンはイスラエルのミュージシャンで私はどちらかというとファンである。それはイスラエル由来の哀愁漂う美旋律が魅力。そのムードに惹かれてトリオ演奏が好きなのだが、実は彼のこの近作『Arvoles』は、ちょっと民族色が強くなって、それ以前の作品と少々異質になったもので、あまり諸手を挙げて歓迎出来なかったアルバムだった。それでもこのアルバムのピアニストが、自己名義ではどのような世界を構築していたのかというところは興味津々であった。

Es1w

 本盤は、トリオによる配信オンリーだった2018年作品で、CD版はエルチン・シリノフ本人の自主製作によるライヴ会場での手売りのみであったという。そんな一般流通はしていなかったものの日本国内盤CD化したもの。アゼルバイシャンというのは、旧ソ連に属していた国であるが、ソ連解体後アルメニアとの民族紛争を経て現在共和国として独立していて、カスピ海に接して居入るが、東ヨーッパとしても存在している。天然資源の油田が産業の核で、日本も経済協力をしており親日国。

Azerbaijan_kigi001_04
 
(Tracklist)

1. Sara Gellin
2. Waiting*
3. Durna
4. Missing*
5. Waltz From Seven Beauties Ballet
6. Muse*
7. O Olmasin Bu Olsun

(*印: シリノフのオリジナル曲)

0014933727_100w

 トリオのベース、ドラムスはロンドンからの迎えてのメンバー。彼は英国との関係が深く、おそらく現在もロンドン在住と思われる。このアルバムはシリノフの過去の活動からの集大成として作られたモノとみてよい。そんなところからも彼を知るにはよいアルバムだ。

 先ずの特色は、M1."Sara Gellin" 、M3."Durna"のように、アゼルヴァイジャンの民謡を取上げていて、民族音楽の性質が濃い。この点はアヴィシャイ・コーエンの『Alvores』と似ている。なかなかそこにはエキゾティックなトラディッショナルのフォーキーな民族舞踏と云うべき趣を醸し出す。そしてリズムは非常にバライティーに富んでの複雑な面を持っている。そのあたりは聴いていてちょっと目(耳)を離せない。
 しかしこのアルバムでは彼のオリジナルが三曲あるが、M4."Missing"が最も民族的世界から離れての、美旋律が顔が出すしっとりムードの曲で、私にとっては一番聴くに気持ちの良い曲であった。

 Elchinhometrw 彼のこのようなアゼルヴァイジャンのジャズをムガームジャズと言うらしいが、このエキゾチックさが新鮮で、しかもそこに聴き慣れないテクニックが異国情緒たっぷりの中のアドリブとして攻めてくるところがスリリングであり、それと同時に民族的哀感が同席していて、如何にも聴く方にとっては新鮮なんですね。

 しかし私個人的には、ちょっとこの方向には馴染めないところがあって、若干複雑な気持ちである。あまり無理して聴くこともないので、M4あたりで納得しておこうと思うのである。

(参考) ムガームジャズ(Mugham Jazz, Azerbaijani Jazz)とは、ペルシャの古典音楽をルーツとする独特の旋法が特徴的なアゼルバイジャンの民俗音楽であるムガームと、アメリカ生まれの即興音楽ジャズが、1960年代頃より東欧一のジャズの都として栄えたバクーにて融合し生まれた音楽のジャンル。

 

(評価)
□ 曲・演奏   80/100
□ 録音     75/100

(視聴)

| | コメント (0)

2020年8月24日 (月)

マッシモ・ファラオ・トリオ Massimo Faraò Trio 「Like An Elegant Wine」

ストリングス・オーケストラをバックに、あくまでも優雅に美しく


<Jazz>

Massimo Faraò Trio, Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
「Like An Elegant Wine エレガントなワインのように」
VENUS RECORDS / JPN / VHCD-1278 / 2020

Like-an-elegant-wine_20200822203901

マッシモ・ファラオ MASSIMO FARAO (piano)
ニコラ・バルボン NICOLA BARBON (bass)
ボボ・ファッキネネィック BOBO FACCHINETTI (drums)

with Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
Conducted by Bill Cunliffe

2020年2月15日,16日 Magister Recording Area Studios,Preganziol,Italy 録音
Sound Engineers Andrea Valfre’ and Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Produced by Tetsuo Hara

  このところ Venus Records の看板になりつつあるあのイタリアのピアニスト・マッシモ・ファラオ( 1965- )が、とにかく美しく優美にと、繊細にしてメロデックな演奏を、ストリングス・オーケストラをバックに優しく演ずるアルバムの登場。

O0595039614486503717

(Tracklist)

1.ラブ・ケイム・オン・スティールシー・フィンガース
2.Io Che Amo Solo Te 君だけを愛して
3.オールダー・マン・イズ・ライク・アン・エレガント・ワイン
4.Days Of Wine And Roses 酒とバラの日々
5.ホエン・サマー・カムズ
6.ニアネス・オブ・ユー
7.ティズ・オータム
8.イージー・リビング
9.スプリング・ウィル・ビー・ア・リトル・レイト・ディス・イヤー

 とにかく全編優美なストリングス・オーケストラとマッシモ・ファラオ・トリオが輪をかけて優美に演奏するアルバム。そんな訳でジャズ感覚は少なく、ポピュラー・ミュージック感覚で聴いてゆくアルバムだ。
 とにかく、あのジャズの'50-'60年代の典型的なハード・バッブ・スタイルを継承するがごとくのマッシモ・ファラオのピアノ演奏も、ここではただただメロディーの美しさに絞っての演奏である。そんなために曲M1、M2、M3と、私には殆ど同じ曲の流れかと思うぐらいに変化は無くただただ美しいのである。
 M4."酒とバラの日々" になってヘンリー・マンシーニーの耳慣れた曲が現れて、成る程こんな具合に仕上げるのかと、その優美さの引き出しに納得してしまうのだ。続くM5."When Summer Comes" なんかは、オスカー・ピータンソンの美的ピアノを更に美しくといった世界に溺れてしまう。
 その後も、全く変化無しに映画音楽などを取上げて、全編ピアノの音も美しく、ベース、ドラムス陣もこれといっての特徴も出すところもなくストリナグスに押されて流れて言ってしまう。
 時には、こうした疲れないバックグラウンド・ミュージック的な世界も良いのかなぁーと思いながら聴いてしまったアルバムだった。それにしても途中で一つぐらいは暴れて欲しかったが、いやいやそれをしないで通したマッシモに取り敢えず敬意を表しておく。

(評価)
□ 演奏 :    85/100
□   録音 :    85/100

(視聴)    関連映像がないので・・・参考までにトリオ演奏を

 

| | コメント (0)

2020年8月15日 (土)

ダーリオ・カルノヴァーレDario Carnovale 「I Remember You」

絶妙のスウィング感でバランスのとれた緩急メリハリある抒情派作品

<Jazz>

Dario Carnovale / Alfred Kramer / Lorenzo Conte 
「I Remember You」
FONE / EU / SACD173 / 2019

711pyugu9bl_acw

Dario Carnovale ダーリオ・カルノヴァーレ (piano)
Lorenzo Conte ロレンツォ・コンテ (bass except 4)
Alfred Kramer アルフレッド・クラーマー (drums except 4)

2016年10月イタリア-イル・カステッロ、セミフォンテ・スコト宮殿(の地下)録音

  イタリアはシチリアの州都パレルモは数年前に訪れたことのある懐かしい美しい街だが、ここはシチリア島の玄関口と交通の要所ということで、なかなかの大都市。しかも教会や宮殿が立派で、ギリシャ、アラブ、フランス、スペインなどが混じりあっての独特の文化が生まれている。更に余談だが、ここのマッシモ劇場は、映画「ゴッド・ファーザー」で有名になったところ。
Dc3    このパレルモ出身の俊英ピアニストに、ダーリオ・カルノヴァーレ (→) がいて、彼のピアノ・トリオ作品を一度しっかり聴きたいと思っていた時に、このSACD盤が目に留まり早速聴いてみたというところだ。高音質に定評のあるイタリア「foneレーベル」のセミフォンテ・スコト宮殿地下録音プロジェクトの一つとして2016年10月に吹き込まれ、2019年にリリースされたアルバムである。
 このカルノヴァーレは、2年ほど前にイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に活動の拠点を移しているそうだが、そんな彼が、高音質レーベルで知られるFone Jazzに、アルフレッド・クラマー(ds)、ロレンツォ・コンテ(b)というトリオでスタンダード中心に録音したスペシャル・セッション版である。

33599w

(Tracklist)

1. I Remember You (Victor Schertzinger) 5:41
2. Madrigale (Carnovale) 4:00
3. I'll Close My Eyes (Reid - Kaie) 7:38
4. Alone (Carnovale) 2:25 (solo piano)
5. What Is This Thing Called Love (Cole Porter) 5:55
6. Emersion (Carnovale) 8:19
7. Ckc (Carnovale - Conte - Kramer) 6:27

Lc1_20200814212401  しかし、メロディアスにしてスインギーな展開にアドリブの効いた流れ、そして時々適度にイタリア独特の美旋律が流れ、しかし時にハードなダイナミックな展開と多彩多芸。特にM4."Alone"のカルノヴァーレのピアノ・ソロでは、やや前衛がかったオルタナティブな世界も見せる。
 私にとっては、なんと言ってもM3."I'll Close My Eyes" いわゆる美旋律のピアノを中心に描くピアノトリオの世界が、何と言えない心地よさだ。ベースそしてシンバルも手頃の余韻を持って響きそれは快適。落ち着いた夜にぴったり。
 しかし、その他の曲で、特にスタートのアルバム・タイトル曲M1."I Remember You"での、ここまで小気味のいい軽やかなスイング感を大切にしたリリカルなプレイを展開してみせるトリオも珍しい。これも彼らのキャリアの蓄積がそうさせるのであろうと思うが、力みの無い洗練された技巧派ジャズなのである。この軽妙さはジャズ心の極致である。
Ak2  M5."What Is This Thing Called Love"、これはドラムスの疾走から始まって迫真のインタープレイの展開、とにかく息詰まるスリル感たっぷりの生々しい演奏は凄絶で圧巻。この三人はこれをやらずには納まらないと言ったところか。
 M6."Emersion"のそれぞれの世界をそれぞれがアクロバティックに流れてゆき、そして演じてゆくうちにトリオとしての交錯そして統一感への世界は面白い。美的という処からは別物だが、これが又このトリオの味なのかも知れない。
 そして続く終曲 M7."CKC"は三者による作品。この"CKC"とは何かと思ったら、どうやら三人の頭文字だ。この曲には三者がクレジットされている。それは緻密に静とその世界の神秘性にも迫る情景に納得。そして次第に現実の世界に目覚めさせる。

 又、音質も極めて自然な録音で、さすがはFONE JAZZだけあってその心意気はSACD盤としてリリースされている。これは派手さで無く自然体を追った録音と行って良い。むしろかってのアナログのLP時代を思い起こさせる。
 とにかくトリオ・ジャズの楽しさ満載のアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)

 

| | コメント (0)

2020年8月 3日 (月)

ジャン・ポール・ブロードベック・トリオ Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」

洗練されたジャズ心とテクニックでジャズの美学を演ずる・・・

<Jazz>

Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」
Solid/Enja / JPN / CDSOL-46459 / 2020

Extratimew

Jean-Paul Brodbeck : p
Lukas Traxel : b
Claudio Strüby : ds

Adapted By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 5)
Recorded By, Mixed By, Mastered By – Daniel Dettwiler
Written-By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 2-4,6-9), Brahms* (tracks: 5), Schumann* (tracks: 1)

 スイスの若手ピアニストでチャイコフスキーのカヴァーなどをして来たジャン・ポール・ブロードベックJean-Paul Brodbeck がルーカス・トラクセルLukas Traxel(b)とクラウディオ・ストルビーClaudio Strüby (ds)とで結成したスイス産トリオによるアルバム。
 これは2017年にドイツのヨーロッパ良質なジャズ・レーベルと言われるENJA(European New Jazz)からリリースされたもので、メインストリーム・ジャズの名盤を復刻する注目の新シリーズ ”ENJA REAL JAZZ CLASSICS"として今年7月に日本でお目見えしたモノ。
 ブロードベックは、クラシック楽曲を耽美的にジャズ化するなど美にこだわったスタジオ作品をリリースして注目されてきた。

 

Avatars000271845735jfsfjgt500x500 (Tracklist)

1 Ich Will Meine Seele 心を潜めよう 8:51
2 Im Strom Der 潮の流れに 9:33
3 The Night Comes Soon 6:18
4 Song For The Ancestors 7:11
5 Brahms Ballad 3:16
6 Juno Is Touching Down 8:01
7 Return/No Return 6:25
8 Rocka-Roas 4:58
9 Requiem Of A Song 6:28

 曲はクラシックからはシューマンのM1.とブラームスのM5の二曲のみで、その他はピアニスト・ブロードベックのオリジナル7曲によって構成されている。
 スタートのシューマンのM1."Ich Will Meine Seele"で、これは並に迫れないトリオだと、単なるクラシックのカヴァーと言うので無いそのジャズ演奏の意味付けの重さがヒシヒシと実感する。
 M2."Im Strom Der"はオリジナル曲、押し寄せるドラムスの流れに、ピアノ、ベースのテーマが始まり、これは耽美派ということではかたづけられない一歩ジャズを進化すべく試みる世界だ。ピアノ主導で無く三者の描く世界が美しさと共に伝わってくる9分を超える長曲、面白い。
 M3."The Night Comes Soon" ピアニストが浮遊する世界。 
 M4."Song For The Ancestors " ピアノのイントロが美しく、ベース、ドラムスの効果がそれを後押ししてのジャズ美学。
 ブラームスのM5." Brahms Ballad "はしっとりと。
 M6."Juno Is Touching Down " ベースの深層心理に迫ろうとするソロから始まって、トリオ演奏が高まりを造り、ベース主体の中にピアノの美しさが交えて聴き応え十分。コンテンポラリー感が結実して見事。
 M7."Return/No Return" 彼らの本領発揮のピアノの流れのバラードで耽美なトリオ演奏にうっとりといったところ、ちょっと思索的世界に導くところがお気に入りだ。
 締めのM9."Requiem Of A Song " は、ゆったりとしたピアノの旋律が美しい曲。

Jeanpaul_brodbeck223  三年前のこのアルバムを今年ここに復活させた意味は十分感じられるハイレベル・ジャズ・アルバム。しばらく聴いていたくなるのは、その技術的な洗練されたところと、ジャズ心の充実だと思う。

  参考までに、リーダーのJean-Paul Brodbeck は ( →)、1974年スイス・バーゼル生まれ、10歳でピアノに接し、12歳でバンドを組んだとか。11歳から15歳まで正式なピアノ・レッスンを受ける。その後音楽院に進んでクラシック専攻という経歴。28歳でトリオ初リーダー作を発表。チャイコフスキーのカヴァー曲集「Song of Tschaikowsky」等のアルバムをリリースしている。

(評価)

□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   85/100

 

(視聴)

 

| | コメント (0)

2020年6月19日 (金)

大石 学 OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」 

Dsc08024tr2w

(今日の一枚)   「初夏の高原にて」
             Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL
                                  - - - - - - - - - - - - - - - -

貫禄の美旋律・叙情派を軸にトリオ・アンサンプルの妙も展開

<Jazz>

OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」
月下草舎 / JPN / GEKKA 0006 / 2019

1w_20200619203301

大石 学(p)
米木康志(b)
則武 諒(ds)
Recorded September 29/2018
Live at GEKKASOSHA
All Manabu Ohishi Composition

  先日、今年リリースされた大石学ピアノ・トリオのニュー・アルバム『ONE NIGHT AT GEKKA』(GEKKA0007)をここで取上げたので、それに至る昨年リリースし好評であった同メンバーによるこのアルバム『飛翔 Hisyou』を、前後するがここに検証し記録しておく。
 こちらは2015年に久々にトリオでリリースしたアルバム『JUST TRIO』(GEKKA0004)に続いて、4年の間をおいて当時からのメンバーによるトリオものである。このところの大石学のCD盤リリースに熱心な月下草舎よりお目見えし、非常に評価高く売れ行きも好調で、一般に手に入れがたい時もあったほどのもの。この月下草舎は山梨県小淵沢町にあるペンションだが、そこでのライブ録音盤である。

Trio3w

(Tracklist)

1.CRESCENT(大阪北新地)
2.Gemini
3.0607
4.CONTINUOUS RAIN 
5.雨音
6.飛翔
7.Vanguard(気仙沼)

Mo3w  大石学の持ち味である詩情と優しさとが溢るる美旋律がやはり十二分に堪能出来るアルバムに仕上がっている。そんな叙情性がいっぱいであるが、それに止まらずジャズの歴史的に流れてきた醍醐味としてのトリオのアンサンブルの妙と躍動感という意味での曲は、このアルバム・タイトルにもなっているM6."飛翔"にて、ハイレベル技巧を駆使してジャズの楽しさも味合わせてくれる。
 スタートのM1."CRESCENT(大阪北新地)"は、 静かなピアノとべースの音にブラシの音が流れ、優しさの大石トリオがまずお目見え。
 M2."Gemini "  物思いにふける夜に・・・といった落ち着いたピアノ・ムードでスタート。バックは優しいシンバルとベース音。そして次第にピアノの流れは密度のある流れるような旋律を演じテンポを上げて盛り上がり、そして再び静かな世界に、最後は消えるように終わるところが洒落ている。
 M3."0607" やや異色で、強打のドラムス・ソロからスタートし、変調してピアノがおもむろに登場し旋律を流し、ベースの水を得たような展開と相まって、ジャズをトリオで楽しむスタイル。
 M4."CONTINUOUS RAIN "中盤の注目曲。しっとりの世界の最高峰だ。9分以上に演ずる世界はピアノとベースとの協調が聴きどころ。私の好きな世界。そして更に雨をテーマにM5."雨音"が続くが、こちらはリズムカルに流れるようなピアノで美意識を構築。
 最後にM7."Vanguard(気仙沼)"が日本的なメロディーでしっとりと終わる。

 トリオ・メンバーが固定して、おそらく三者による実質中身の充実も図られ、満を持しての2枚目のアルバムのリリースだ。登場する7曲中3曲は10分前後の長曲となり、アルバムを通して、大石の描く世界が十分堪能出来る素晴らしいアルバムとして聴いた。

(評価)
□  曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(参考視聴)  "Continuous Rain" 別バージョン


 

(参考) 大石学のピアノ・ソロ・アルバムがリリース

24p1 Ohisi Manabu 「FAZIOLI F278 AGAIN」
北千住プロジェクト 

(Tracklist)
1. Les Jardins 
2. HANAUTA
3. Pleasure
4. Change
5. 令和の詩
6. ひまわり
7. 雨音
8. Peace
9. TOSCA
 
大石 学(p)
2020年1月12日 豊洲シビックセンターホール収録

  かって澤野工房の録音で、イタリアのピアノ Fazioli(ファッチオリ)F278を弾いた大石学。そしてそのアンコール企画を「北千住プロジェクト」が企画し、10年後となる今年2020年1月12日に同じピアノがある豊洲シビックセンターホールで、ソロコンサートを開催した。演奏は、新曲2曲と" 雨音", " Peace",  "TOSCA" などの代表曲と"ひまわり"など。その模様を収録したアルバムである。

 

| | コメント (2)

2020年6月 9日 (火)

大石学 manabu ohishiトリオ 「ONE NIGHT AT GEKKA」

Dsc03006trw_20200612201001                            

                                                                                      (クリック拡大)

(今日の一枚)  「初夏の高原」- 赤外線撮影 -
 Sony α6000(full specrrum), Zeiss Vario-Tessar FE 4/16-35,  IR760

                                  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -         

詩情と優しさ溢るる美旋律が・・・・

<Jazz>

Manabu Ohishi Trio 「ONE NIGHT AT GEKKA 月下の一夜」
月下草舎 / JPN / GEKKA0007 / 2020

Onenight

Manabu Ohishi(piano)
Yasushi Yoneki (bass)
Ryo Noritake (drums)

September28 2019
Recorded at pension GEKKASOSHA

  このところ月下草舎からリリースが続くピアニスト大石学のトリオによる最新アルバム。これも取り上げようと思っている昨年リリースされたアルバム『飛翔』(GEKKA0006 / 2019)と同一の米木康志(bass)と則武諒(Drums)との月光草舎にてのライブ・トリオ演奏だ。
 大石学は私としてはAtelier Sawanoからのトリオ・アルバム『Gift』(AS-122, 2012)や『WATER MIRROR』(AS-108, 2011)が過去に素晴らしかったモノとしてあるのだが、『WATER MIRROR』では名器FAZIOLIを演ずるところが印象深いのだ。そんなところから最近リリースされた『FAZIOLI F278 AGAIN』(北千住プロジェクト/2020 ↓)というソロ・アルバムも貴重。

93860132_2906671436067916_4

Profiletrw  さてこのアルバムは大石学にとって1stアルバムから25年経過してのアルバムとなるようだ。この間確かに彼に関してはソロ・アルバムも我々には印象深い。まあどちらかというと、そのソロは近年のヨーロッパ・ジャズ系に近い印象で私には好評なのだが、彼にはジャズのよってきたるところのビ・バップ系も得意と言うこともあって、やはりベース、ドラムスといったオーソドックスなトリオとして演ずることは極めて妥当なところであると思われる。

 このGEKKAレーベルではこのアルバムで6枚目と言うことになる。2018年録音の昨年リリースしたトリオ・アルバム『飛翔』が好評で、ここにこの『月下の一夜』を見ることになった。そしてこのアルバムは彼とこのレーベル立ち上げのきっかけとなったという曲"Peace"が納められている。これは過去にソロとデュオ版があって、ここではトリオ版として新しいイメージを造ってくれている。

(Tracklist)
1.Lonesome
2.GEZELLIG
3.うたたね
4.FORELSKET
5.I've Never Been in Love Before
6.Change
7.Peace

Triow_20200609211201

 5曲目以外は大石学のオリジナル曲で構成されているが、そこには詩情と優しさとが溢るる美旋律が惜しげも無く出てきて、月下の一夜に身を寄せる聴くモノを幸せにしてゆく叙情性がいっぱいだ。ベースの米木、ドラムスの則武はそのあたりは既にこのトリオとしての実績も多く、演ずる世界は見事に一致している。

   F1."Lonesome" から透明感のあるピアノの音に詩情豊かな旋律が流れ、そして曲の後半はトリオのジャズ・スピリットがあふれた演奏が楽しめる。
 F4."FORELSKET" の聴きやすく詩情溢れた曲もいいですね。
 これらの曲の中では若干異色なのがF6."Change "だ。ここでは意外に楽天的にして明快な展開の楽しさが演じられている。
 このアルバムでは、重要な変化のあるところとしては、唯一カヴァー曲のF5."I've Never Been in Love Before "だ。これこそ大石が単なる叙情派だけでなく、スウィング・ジャズの発展系としてのホットであるアドリブの楽しさを加味してのビ・パップの流れを聴かせてくれる。スピード感も抜群で、ここでのベース・ソロそしてドラムス・ソロも聴きどころ。
 最後は恐らくこの夜のアンコール曲だろうと思われる彼の代名詞的曲M7."Peace"が登場する。このアルバムではソロでなくトリオ版だ。これだけしんみりとした曲だけに、シンバルの弱音、ベースは合わせての語り調によってサポート。後半はいつも通りの盛り上がりも美しく説得力ある。トリオもやはり良いですね。

 このところ、月下草舎から立て続けにリリースされている大石学のトリオ・ライブ版の最新盤を取上げた。いずれ昨年の『飛翔』や北千住プロジェクトからのソロ版も取上げたいと思っている。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100
□ 録音     80/100

(視聴)

 

| | コメント (2)

2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

Dsc07703trw

(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - - -

ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

Arfw

Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

_dsc0693w

 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

Joelovano_byjimmykatz (Tracklist)

01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

Mwt_kurkiewiczwMwt_miskiewiczw

 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

| | コメント (6)

2020年5月19日 (火)

リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」

Dsc07138trw

(今日の一枚) 薔薇の開花 (我が家の庭から)
       Sony α7RⅣ,  FE4/24-105 G OSS , PL
 
       
           --------------------------------

リン・エリエイルの強い意志の情熱的芸術的表明
・・・深刻さのあるコンセプト・アルバム

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」
Challenge Records / AUSTRIA / CR73494 / 2020

Chimesoffreedomw

Pianist : Lynne Arriale (USA)
bassist/co-producer : Jasper Somsen (NL)
drummer : E.J. Strickland (USA) 
guest vocalist : K.J. Denhert (USA)

  所謂「コンテンポラリー・ジャズ」の注目女流ピアニストのリン・エリエイルのニュー・アルバム。前作『GIVE US THESE DAYS』に続いて、オランダのChallenge Recordsから(2作目)、自身のリーダー作全体としてはもう15枚目となるベテランの作品。
 しかし今作は彼女の作品群からみても異色である。ボブ・ディランの初期の名曲「自由の鐘(Chimes of Freedom)」を中心に、自身のオリジナル7曲とポール・サイモンを取り上げ、その精神を通して、現在の社会現象に自由と高邁な思想の文化を取り上げて訴えるアルバムとして作り上げている。そこには所謂メロディーの美しさといったところから一歩厳しさに打って出ていて、彼女の一つの世界を思い知らされる。

Lynnearrialetriofeatjaspersomsenejstrick

 メンバーは、オランダの名ベーシストであり副プロデューサーのイェスパー・サムセンとニューヨーク・ジャズ・シーンで活躍するE.J.ストリックランドとの強力トリオで、ややアグレッシブなテクニックを展開している。
 なんと、ボブ・ディランの「自由の鐘」、ポール・サイモンの「アメリカン・チューン」では、アーバン・フォーク&ジャズ・シンガーのK.J.デンハートがゲスト参加でのヴォーカルが入ってくる。 

 

Imageasset (Tracklist)

1.Sometimes I Feel Like A Motherless Child (Harry Burleigh)
2.Journey *
3.The Dreamers *
4.3 Million Steps *
5.Hope *
6.The Whole Truth* 
7.Lady Liberty *
8.Reunion *
9.Chimes Of Freedom (Bob Dylan)
10.American Tune (Paul Simon)

*印 compositions by Lynne Arriale

 アルバム・タイトルからしてボブ・ディランの「自由の鐘」が中心であることが解る。そこには自由という基本的な流れが見て取れるが、このアルバムでの彼女のオリジナル曲のM2-M8までの7曲が、如何にも今までのアルバムと変わって意志の強さが聴き取れるし、彼女の個人的な人生からの感覚的でありながら、社会にも向いている姿が現れている。それはM1."Sometimes I Feel Like A Motherless Child"を取り上げ、彼女自身の感覚「ときどき母のいない子供のように感じる」というところからの人生の過去も振り返りつつ、この曲を重低音で始めて、このアルバムで語る物語の重要性を意識させ、ピアノで語る哀しい旋律にはどこか人間性を語っているように聴ける。
 M2."Journey"から始まるリンの刺激的な人生の旅の物語からの7曲によって、自由と文化、そして世界に見る難民への心、それは彼らが民主的な国家によって安全に迎えられることを祈ると言うことに通じてゆく彼女の世界を演じているようだ。従って甘い演奏はこのアルバムでは見られない。強いて言えばM7."Lady Liberty"に、どこか広く包容力のある愛情の感じられる曲が救いでもあった。
Safe_image_20200518201501  最後のM9"Chimes Of Freedom",M10"American Tune "は、デンハート(→)のヴォーカルが入る。彼女はジャズ、フォーク、レゲエなどを身につけている。そしてそのスピリチュアルな歌唱力によって、ボブ・ディランとポール・サイモンのアメリカンチューンを歌い上げ、そこにかってのアメリカに見た精神を訴えているのかも知れない。

 前作もそうだったが、ベーシストのイェスパー・サムセンの力は、あまり目立たないがトリオとしての土台の役割を果たしつつ、曲仕上げにも大きく貢献している。又ストリックランドのドラムスもアグレッシブなところがテーマの意志と決意を表すに十分だ。
 
 このアルバムはリン・エリエイルとしては異色の範疇に入る。ここに来て世界的にも戦後の真摯な姿勢からやや異常な世界に変動しているところに、自己の歴史と重ね合わせ、このような深刻なコンセプト・アルバムを作り上げ、一つのけじめを付けようと試みているように感じた。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100
 
(視聴)

| | コメント (2)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

Audio CLASSIC Progressive ROCK アイオナ アガ・ザリヤン アデル アヤ アレクシス・コール アレッサンドロ・ガラティ アンジェイ・ワイダ アンナ・マリア・ヨペク アンヌ・デュクロ アヴィシャイ・コーエン アーロン・パークス イエス イタリアン・プログレッシブ・ロック イメルダ・メイ イモージェン・ヒープ イリアーヌ・イリアス イーデン・アトウッド ウィズイン・テンプテーション ウォルター・ラング エスビョルン・スヴェンソン エスペン・バルグ エミリー・クレア・バーロウ エミール・ブランドックヴィスト エンリコ・ピエラヌンツィ エヴァ・キャシディ カレン・ソウサ ガブレリア・アンダース キアラ・パンカルディ キャメル キャロル・ウェルスマン キング・クリムゾン キース・ジャレット クィダム クレア・マーティン ケイテイ・メルア ケイト・リード ケティル・ビヨルンスタ コニー・フランシス コリン・バロン ゴンザロ・ルバルカバ サスキア・ブルーイン サラ・ブライトマン サラ・マクラクラン サラ・マッケンジー サンタナ サン・ビービー・トリオ ザーズ シェリル・ベンティーン シゼル・ストーム シネイド・オコナー シモーネ・コップマイヤー ショスタコーヴィチ シーネ・エイ ジェフ・ベック ジャック・ルーシェ ジョバンニ・グイディ ジョバンニ・ミラバッシ ジョルジュ・パッチンスキー スザンヌ・アビュール スティーヴン・ウィルソン スティーヴ・ドブロゴス ステイシー・ケント ステファン・オリヴァ スノーウィ・ホワイト スーザン・トボックマン セリア セルジオ・メンデス ターヤ・トゥルネン ダイアナ・クラール ダイアナ・パントン ダイアン・ハブカ チャンピアン・フルトン チャーリー・ヘイデン ティエリー・ラング ティングヴァル・トリオ ディナ・ディローズ デニース・ドナテッリ デヴィット・ギルモア デヴィル・ドール トルド・グスタフセン ドリーム・シアター ナイトウィッシュ ニコレッタ・セーケ ニッキ・パロット ノーサウンド ハービー・ハンコック パスカル・ラボーレ パトリシア・バーバー ヒラリー・コール ビル・ギャロザース ピアノ・トリオ ピンク・フロイド フェイツ・ウォーニング フランチェスカ・タンドイ フレッド・ハーシュ ブッゲ・ヴェッセルトフト ブラッド・メルドー ヘイリー・ロレン ヘルゲ・リエン ペレス・プラード ホリー・コール ボボ・ステンソン ポーキュパイン・ツリー ポーランド・プログレッシブ・ロック ポール・コゾフ マティアス・アルゴットソン・トリオ マデリン・ペルー マリリオン マルチン・ボシレフスキ マーラー ミケーレ・ディ・トロ ミシェル・ビスチェリア メコン・デルタ メッテ・ジュール メラニー・デ・ビアシオ メロディ・ガルドー モニカ・ボーフォース ユーロピアン・ジャズ ヨアヒム・キューン ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ ヨーナ・トイヴァネン ラドカ・トネフ ラーシュ・ダニエルソン ラーシュ・ヤンソン リサ・ヒルトン リッチー・バイラーク リリ・ヘイデン リン・エリエイル リン・スタンリー リヴァーサイド リーヴズ・アイズ ルーマー レシェック・モジュジェル ロジャー・ウォーターズ ロバート・ラカトシュ ロベルト・オルサー ローズマリー・クルーニー ヴォルファート・ブレーデローデ 中西 繁 写真・カメラ 北欧ジャズ 問題書 回顧シリーズ(音楽編) 女性ヴォーカル 女性ヴォーカル(Senior) 女性ヴォーカル(ジャズ2) 女性ヴォーカル(ジャズ3) 寺島靖国 戦争映画の裏側の世界 手塚治虫 文化・芸術 映画・テレビ 時事問題 時代劇映画 波蘭(ポーランド)ジャズ 相原求一朗 私の愛する画家 私の映画史 索引(女性ジャズヴォーカル) 絵画 趣味 雑談 音楽 JAZZ POPULAR ROCK SONYα7