ピアノ・トリオ

2019年10月 7日 (月)

マット・スローカムMatt Slocum 「 sanctuary」

ハイセンスのどこか格調の高いフリージャズ

<Jazz>
Matt Slocum 「sanctuary」
SUNNYSIDE / US / SSC1547 / 2019

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Gerald Clayton(p)
Larry Grenadier(b)
Matt Slocum(ds)

 私にとっては初物のマット・スローカムMatt Slocumというニューヨークを拠点としているドラマーのピアノ・トリオ・アルバム。これはSunnyside からの第一弾で、これまでは自主制作盤を中心にリリースしていたようで、これで5作目となるらしい。と、言うことはそれなりにキャリアーがあるようだ。

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 このトリオ・メンバーを見て気がつくのが、あの名ベーシストのジョン・クレイトンの息子で、いわゆる本道をゆくジャズを継承していながらも近代的なセンスと才能で現代的なジャズを追求しているといわれるピアニストのジェラルド・クレイトン(下左)がおり、又ブラッド・メルドーとの共演でも知るラリー・グレナディア(下右)というなかなか話題性のあるところにある。

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(Tracklist)

1. Romulus 5:01
2. Consolation Prize 5:10
3. Aspen Island 6:07
4. Star Prairie 4:22
5. A Dissolving Alliance 4:30
6. Days of Peace 4:56
7. Sanctuary 5:35
8. Anselmo 6:28

All compositions by Matt Slocum
except "Romulus" by Sufjan Stevens, arranged by Matt Slocum

 オープニングのM1." Romulus"で、なんとグレナディアのベース・ソロといった感じでスタート。リーダーのスローカムのドラムスは特に全面には出ず淡々と曲を進める。
 M2."Consolation Prize "はテンポをハイにした演奏だが、これでもスローカムは静かにリズムカルにスティックを主体に演ずる。クレイトンのピアノはかなりアヴァンギャルドにコンテンポラリーなフリージャズを演じ、ベースもしっかり応対する。しかし決して激しさといものを感じさせないハイセンスの格調あるとでも言えるようなインター・プレイだ。後半にドラムス・ソロが入ってむしろほっとする。
 M5."A Dissolving Alliance",  M6."Days of Peace",  M7."Sanctuary"と、所謂アメリカ的な派手さは全くなく、知的とも言える思索的な展開をみせて、心にむしろ安定感を与えてくれるような技巧のレベルの高いトリオ演奏を聴かせてくれるのだ。
 
 これはドラマーのリーダー作と言うことで、それなりに意識はしていたが、全く聴く前の予想と反してハイセンスな展開とハイレベルの演奏能力により、派手さの無いところにむしろ心を引き寄せられる世界を描いている。むしろそれがインパクトがあった。
 クレイトンのピアノはフリーな世界に入りながらも、決して暴れること無く人間の深層に迫るようなところがあって、私は彼をいままでよく知らなかったのであるが、このアルバムを聴いて興味を持った。
 全体の印象は静かに淡々としていて、なんとバッククラウンド・ミュージック的に流していても、一向に抵抗はない。なかなか得られない世界に導いてくれた好盤であった。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★☆

(試聴)  このメンバーのトリオものは見つかりませんので・・・SlocumとClaytonを
  (参考1) Matt slocum Trio

 

  (参考2) Gerald Clayton Trio

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2019年9月18日 (水)

なんとなく好きな曲 (2)  「 ESTATE (夏) 」・・夏の恨み節

どこか哀感のある美旋律が・・・・・

Thfvyj925bw  イタリアのブルーノ・マルティーノの曲「ESTATE」を取り上げたい。

 この曲は現在ジャズ界では、多くの演奏家やヴォーカリストによって歌われ演奏されている曲だ。イタリアのピアニストであり作曲家・歌手であったブルーノ・マルティーノBruno Martino(1925-2000)(右)が作曲した曲であり、彼自身が歌って1950年代にヒットしたもの。
 しかし、現在は女性ヴォーカリストに好まれて歌われているし、一方歌なしのピアノ・トリオとして演奏されている場合も多い。そんなところから、私の所持しているアルバムを紐解いてみると、取り敢えずは下のように11の演奏家、歌手のものが出てきた。
 最もポピュラーなのはピアニスト・ヴォーカリストのEliane Elias(右下)ですかね。演奏としては美しいピアノを聴かせてくれるMichele Di ToroとかLynne Arriale、Steve Rudolphなどが気になりますね。そんなわけでこの11ミュージシャンの演ずるものを取り出して、聴いて楽しんでいるのである。

 

<ESTATE を演ずる11ミュージシャン>

Elianeeliasw 1. Akira Matsuo Trio
2. Clara Vuust
3. Andreas Mayerhofer Trio
4. Mette Juul
5. Michele Di Toro
6. Sara Lancman
7. Lynne Arriale Trio
8. Francesca Tandoi Trio
9.Steve Rudolph Trio
10. Eliane Elias
11. The Kirk Lightsey Trio

 こんな演奏・歌などが出てきたので取り敢えず聴きやすいようにCD一枚にまとめてみた。
 もともと歌詞は下の通りで、ブログで日本語訳も載せているものがあったのでここに紹介する。

[ ESTATE  イタリア語歌詞 ]
Estate sei calda come i baci che ho perduto,
sei piena di un amore che è passato
che il cuore mio vorrebbe cancellar.
estate il sole che ogni giorno ci scaldava
che splendidi tramonti dipingeva adesso brucia solo con furor
Verrà un altro inverno cadranno mille di petali di rose
la neve coprirà tutte le cose e forse un po di pace tornerà.
Odio l'estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore,
l'estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolore.

Tornerà un altro inverno cadranno mille petali di rose la neve coprirà tutte le cose e forse un pò di pace tornerà.
odio estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore
estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolor.
odio estate.
odio l'estate.

Clara_vuust1wMettejuul1wLynne72145ew_20190915212101Francescatandoi1w

(Clara Vuust,  Mette Juul,  Lynne Arriale,  Francesca Tandoi)

[ Estate (夏 ) 日本語訳 ]

山本のりこ訳 (http://noriko-yamamoto.cocolog-nifty.com/memo/2011/07/estate-0e4b.html )
Cdw
それは失ったキスのように熱く
心から消してしまいたいと私が願う
ある過ぎ去った愛に満ちている

私たちを毎日温めた太陽
絵のように美しい夕暮れ
いまは怒り狂うように照りつける
また冬になれば
幾千の薔薇の花びらが落ち
雪がすべてをおおうだろう
そうすれば しばらくの平和が戻ってくる

それぞれの花に香りを与えて
夏は二人の愛をつくった
私を苦しみで殺すほどに
夏を憎む

 これはがマルティーノが「夏の恨み節」を歌ったようだが、女心なのか自分の経験の男の歌なのかそれは良く解らないが、現在は殆どが女性に歌われていて、私としては女心ではないかと。推測している
 ヴォーカルでは、Clara Vuustが素直な歌、Mette Juulはしっとりと、Sara Lancman、Francesca Tandoiは恨み節、Eliane Eliasは大人の回顧といった感じですね。
 演奏ではMichele Di Toroは静かに回顧する、Lyne Arrale Trioは思い出をかみしめて、Steve Rudolph Trioは思い出を軽く美しく、The Kirk Lightsey Trioは人生の新たな出発点として・・・と、いった異なったムードの演奏だ。

 ヴォーカルもそれぞれ違うし、演奏も全く異なる世界に・・と、十分聴き応えがあった。これぞミュージシャンってとこですね。

 

(試聴)

①   Clara Vuust

②  Eliane Elias

 

③ Lynne Arriale Trio

 

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2019年9月10日 (火)

アイヴィン・オースタ・トリオ Eivind Austad Trio 「Northbound」

ノルウェーからの詩的で牧歌的にしてロマンティックなピアノ・トリオ・アルバム

<Jazz>
Eivind Austad Trio 「Northbound」
LOSEN RECORDS / EU / LOS211 / 2019

Northbound

Eivind Austad (piano)
Magne Thormodsater (bass)
Hakon Mjaset Johansen (drums)

Recorded April 26-27, 2018 by Devide Bertolini at Gunnar Saevins sal, The Grieg Academy, Bergen

  北欧らしいと言われるピアノ・トリオ・ジャズ。2016年リリースの「Moving」に続くトリオ作品第2弾。 アルバム・タイトルは"北に向かって"と言ったところか。
 演ずる曲は彼らが感動しているデビッド・ボウイの名曲"SPACE ODDITY"を取り上げているが、その他の7曲はトリオ・リーダーのピアニスト・アイヴィン・オースタEivind Austad(1973-)によるオリジナル曲により占められている。

Eivindaustadtrio

(Tracklist)

1. 7 Souls 8:52
2. Space Oddity 5:05
3. Northbound 6:05
4. Open Minded 6:59
5. Beyond The 7th Ward 6:58
6. Folk 6:51
7. Down That Road 6:29
8. Faith 6:46
Total Time 54:05

 確かに北欧らしいと言ってよいのか、ピアノが美しく響き、展開は微妙に深遠な世界に導くピアノ・トリオ・ジャズだ。2曲目に登場するデビッド・ボウイの"SPACE ODDITY"を聴いても、耽美な世界に彼なりきの独自世界に染め上げた曲の仕上げである。
 他は全てオリジナル曲であり、M5."Beyond The 7th Ward"にみるように、特徴的なスローなテンポでピアノの音を一つ一つ響かせて、どこか非都会的牧歌的な大自然のイメージを感じさせる。
 いわゆるジャズらしい展開はM6."Folk "ぐらいで、オースタのピアノ・プレイが速テンポをみせるのもこの曲ぐらいだ。
 アルバム・タイトルのM3." Northbound"を聴くと彼らのしたいことが見えてくる。静かにどこかノルウェーの民族的なメロディーに聴こえてくる展開を見せつつも、次第にピアノの旋律も近代的即興に変化して、三者の交錯展開が面白く聴かせてくれる。そして最後は再び静かな世界に沈んでゆくという形をとっている。
   そしてM7." Down That Road"では、彼らのロマンティックな流れが結実していて、展開も面白い。
 M8."Faith"は冒頭から深く沈んで、これぞ北欧ノルウェーといった感じだ。
 ベース、ドラムスはそれ程特徴的な演奏展開は無い。曲が全てピアニストのものであり、更にこのトリオは録音のために集まると言ったグループのようで、曲の進行を補佐するといったところに終始している。

   トリオ・リーダーのアイヴィン・オースタは、1973年ヘルゲン生まれ、トロンハイム科学技術大学(NTNU)でジャズ研究を学び学士号。現在ベルゲン在住で、ベルゲン大学グリーグ・アカデミーのジャズ学科准教授と、演奏家としてのキャリアを組み合わせて活動しているようだ。ピアニストとして結構引き手あまたで、この自身のグループの他、幅広いプロジェクトに参加。

 全体に北欧ジャズの世界に特化して、静にして凛としたピアノの響きにまつわる曲展開を目指したものと見るが、同じノルウェーのトルド・グスタフセンほど哲学的で無く、その点は若干私は不満だったが、ソウル、ゴスペルを加味した牧歌的な世界を描くとなると、こうなるのかもしれない。とにかく彼らは目下諸々探究中にあることを述べているので、これからの展開に興味も持たれる。しかしノルウェーはこうした多くのピアノ・トリオが健闘していますね。

(評価)
□ 演奏・曲 ★★★★☆
□ 録音   ★★★★★☆

(試聴)

 

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2019年8月30日 (金)

[ 近作名盤検証 ] リン・エリエイル・トリオ Lynne Arriale Trio 三部作

繊細にして情感に満ちた世界

 リン・エリエイル・トリオの三部作は1994年から1996年にリリースされた3枚のアルバムである。今日も愛されているので遅まきながら今になって聴いての私の感想だ。①「THE EYES HAVE IT」(DMPC CD 502 / 1994)、②「WHEN YOU LISTEN」(CD 511 / 1995)、③「WITH WORDS UNSPOKEN」(CD518 / 1996)
 全てアルバムのタイトルは、収録した彼女のオリジナル曲のタイトルであるという拘りがあるところが注目。

<Jazz>

    Lynne Arriale Trio 「THE EYES HAVE IT」
    Digital Music Prod / US / DMO CD502 / 1994(2015再発)

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Lynne Arriale (p)
Jay Anderson (b)
Steve Davis (ds)

(Tracklist)

1. My Funny Valentine
2. Witchcraft
3. My Man's Gone Now
4. Heartsong *
5. Yesterdays
6. Elegy *
7. Alone Together
8. The Eyes Have It *
9. Blues for TJ *
10. My One and Only Love

*印 彼女のオリジナル曲

Dyfzntgwoaaw  しかしリン・エリエイルの演奏は繊細にして情感がしっかり描かれていいですね。このアルバムも冒頭のM1." My Funny Valentine "からもうどっぷりその世界に浸かれます。
   M3."My Man's Gone Now" これは Gershwinの曲、繊細なシンバルの響きから、ベースが流れを作り、ピアノが美しく流れ、後半に盛り上がりのアクセントがくる。このあたりのタッチにハイセンスを感ずるのだ。
 M4.、M5.と明るく活発な曲。特にM5.ではジャズ独特のハイスピード・プレイを聴かせ、中盤にドラムス・ソロ。
 M6." Elegy " エリエイルのオリジナル曲、ピアノの調べがしっとりと情感たっぷり。それに伴ってベースも心に響く世界。 
 M7."Alone Together " ぐっと印象を変えての強いタッチ。ジャズの楽しさたっぷりにスウィングしてのこうしたアクセントがインパクトあり。
 M8."The Eyes Have It " これも彼女のオリジナル曲で、アルバム・タイトルに。独特な心の感情を呼び起こす演奏は特筆もの。
 M10."My One and Only Love" 気品ある優雅なバラード曲で締めくくる。

 深みのある感情表現がうまく繊細なピアノ・プレイで、なんか物語を聞かせてもらっているようなアルバムで堪能させてくれます。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★☆

    - - - - - - -

<Jazz>

 The Lynne Arriale Trio 「WHEN YOU LISTEN」
   Digital Music Prod / US / CD511 / 1995 

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ynne Arriale (p)
Drew Gress (b)
Steve Davis (ds)

(Tracklist)

1. How Deep Is the Ocean?
2. My Shining Hour
3. Waiting & Watching *
4. Bess, You Is My Woman Now
5. You and the Night and the Music
6. Slinky *
7. Lonely Woman
8. Seven Steps to Heaven
9. When You Listen *
10. I Love a Calypso *
11. In the Wee Small Hours of the Morning

*印 彼女のオリジナル曲

 これはリン・エリエイルの三部作の二作目で、翌年にリリースされた。上の第一作目はかなり考えて作り上げた印象あるが、好評であったことから、この二作目はもう少しフリーに広い分野にアプローチした感ありだ。

 このアルバムは冒頭の曲M1.、M2. は、ややジャズ・トリオのパワーを見せつけてのスタート。しかし彼女独特の詩的なピアノと早引きのジャスの味はしっかり出ている。
 M3."Waiting & Watching" 彼女のオリジナル曲の登場。ミッド・テンポの楽しい曲。
   M4." Bess, You Is My Woman Now" ここに来て、このアルバムでは初めて詩情豊かなバラードの登場、Gershwineの曲だ。この気品は彼女独特のものだ。
   M5."You and the Night and the Music" ホピュラーなスタンダードを編曲の妙とアドリブが冴える。
   M7." Lonely Woman" この繊細にして哀感のピアノは彼女独特、やはりしっとりと聴かせるのだ。
   M9."When You Listen" 彼女のアルバム・タイトルとなっているオリジナル曲。ゆったりとした演奏の中にメロディの美しさで思索への世界に誘う。
   M.11."In the Wee Small Hours of the Morning" も彼女らしい丁寧に繊細に気品豊かにピアノを聴かせてアルバムを締める。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★☆

       - - - - - -

<Jazz>

The Lynne Arriale Trio「WITH WORDS UNSPOKEN」
Degital Music Prod / US / CD518 / 1996 (2016年再発)

Withwordsunspoken_20190827200001 一年間隔でリリースされた三部作の三作目。このアルバムは先日ここで取り上げたので、そちらに譲る。
                         ↓
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/08/post-250f63.html

 

(Lynne Arriale : Discography)

1994 「The Eyes Have It」* DMP Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums)
1995 「When You Listen」* DMP Trio, with Drew Gress (bass), Steve Davis (drums)
1996 「With Words Unspoken」 * DMP Trio, with Drew Gress (bass), Steve Davis (drums)
1997 「A Long Road Home」 TCB Trio, with John Patitucci (bass), Steve Davis (drums)
1998 「Melody」 TCB Trio, with Scott Colley (bass), Steve Davis (drums)
1999 「Live at Montreux」 * TCB Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums); in concert
2000 「Inspiration」 TCB Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums)
2002 「Arise」 Motéma Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums)
2004 「Come Together」 Motéma Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums)
2005 「Live」 Motéma Trio, with Jay Anderson (bass), Steve Davis (drums); in concert
2008 「Nuance」 Motéma Quartet, with Randy Brecker (trumpet, flugelhorn), George Mraz (bass), Anthony Pinciotti (drums)
2011 「Convergence」 Motéma Some tracks trio, with Omer Avital (bass), Anthony Pinciotti (drums); some tracks quartet, with Bill McHenry (tenor sax) added
2011 「Solo」 Motéma Solo piano
2018 「Give Us These Days」 * Challenge Trio, with Jasper Somsen (bass), Jasper van Hulten (drums); some tracks quartet, with Kate McGarry added

*印 ここで取り上げたアルバム

(参考試聴)  16:30-29:00 の"ESTATÈ" が聴きどころ

 

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2019年8月26日 (月)

[近年名盤探求] ステヴ・ルドルフ Steve Rudolph 「EVERYTHING I LOVE」

ジャズとはこれだと主張しているようなアルバム、脱帽。

<Jazz>

Steve Rudolph 「EVERYTHING I LOVE」
R&L Records / US / RLCD41049 / 2010

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Steve Rudolph : p
Roger Humphries : d
Dwayne Dolphin : b
Steve Varner : b (M5)

  これは1995年リリースされたアルバムの2010年再発もの。なんと20年以上前のものだ。先日紹介した「day dream」(PA-CT1014)が好評で再発となった経過にあるらしい。そんなことから今回初めて聴いてみたアルバムである。

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  それはさておき収録10曲のうち、ステヴ・ルドルフ自身の曲が上のように5曲の半分を占めていて、残るはビル・エバンスの曲などスタンダード曲となっている。ざっと聴いたところやはり彼のピアノは、流麗にして美しい音、美しいメロディを聴かせてくれる。彼のオリジナル曲は初めて聴くということもあって、即諸手を挙げて素晴らしい感動だというわけではないが、やはりスタンダードからの選曲は美旋律を主体に聴かせてくれて素晴らしい。
Sr201009hbgmag  まず、彼のオリジナル曲M1."This One's Fpr You. Bud"は、スゥイング・ジャズでスタート。
   アルバム・タイトル曲のCole PorterのM2."Everthing I Love" は、更に華麗にして流麗な彼のピアノ・プレイ。
 M3."Zebra #1"でガラッと変わって、深淵に。
   そしてこのアルバムを手にしようというきっかけはM4."Estate"で、これは私の好きな曲でどう演奏してくれるか楽しみであったと言うこともあるが、この料理法は単なるバラードには至らず、彼の流麗なピアノの響きと叙情的ムードを交錯させた響きはやはり並では無い。これぞジャズと感服。
 M5."Two Lonely Peaple" 、Bill Evans のこの曲も美しいの一言。
   M6."Back Home Again in Indiana" 後半の早弾きは聴きどころ、そしてM7."Wendy"は、やはり彼の持ち味の美しく流れるようなピアノの響きはバラード調で情緒豊かで納得ものである。
 M8.から最後のM9.は、彼のオリジナル曲。ベース・ドムスも弾んで楽しい。
 M10."The Last Lullaby "は締めの曲らしく情緒あるピアノでルドルフの世界観の凝縮したような曲で静かに幕を閉じる。
 
 いずれにしても、M4."Estate"は私にとっては多くのこれまでの演奏から一歩枠を超えた最高のジャズでした。アルバムのスタートから締めまで計算された曲展開となっていて、なるほど名盤だ !!。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★
□ 録音   ★★★★☆

(参考試聴)    このアルバム関係が見つかりませんので・・・"Day Dream"を

 

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2019年8月22日 (木)

ブラッド・メルドー2019年ライブ Brad Mehldau Trio 「HYOGO 2019」「LIVE IN UTRECHT 190510」

[2アルバム鑑賞] 
相変わらずのハイテクニック・プレイに満ち満ちて

<Jazz>

(日本ライブ) 
BRAD MEHLDAU TRIO  「HYOGO 2019」

MBFADISC / 2019
 
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Brad Mehldau (p)
Latty Grenadier (b)
Jeff Ballard (d)
Live at Kobelco Grand Hall, Nishinimiya, Hyogo, Japan May30,2019

(Tracklist)
(Disc-1)
1.For David Crosby
2.Spiral
3.De-Dah
4.Backyard
5.From This Moment On 

(Disc-2)
1.Where Do You Start
2.Tenderly
3.Count Down
4.Cry Me A River
5.Monk's Dream

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 7年ぶりにトリオで来日したブラッド・メルドーのライブより、その初日となった5月30日の兵庫県立芸術文化センターでのライブをアンコールの3曲をも含んだ全曲収録盤。オーディエンス録音と思われるが三者の音はややホール感が大きいとはいえ、それなりにクリアに収録されている。スティックやシンバル音もきちんと入っていて聴き応えは悪くない。

 東京国際フォーラム公演とは演じた曲は異なっている。エルモ・ホープのM1-3."De-Dah"やコール・ポーターのM1-5"From This Moment On"、コルトレーンのM2-3"Count Down"などスタンダード名曲がメルドー流の解釈でトリオ演奏。なお若干難解だった近作アルバム「Seymour Reads The Constitution!」(2018)からは"Spiral", "De-Dah"の2曲と言うことになる。
 収録は当日の全曲。私にとってはむしろDisc-2が大歓迎。なじみ深いM2-1"Where Do You Start"が素晴らしいバラードにて迫ってくる(11:45)。
 M2-2"Tenderly"は、やはりメルドーの手にかかると一味も二味も違う、思いのほかハイテンポで中盤から後半は"Tendery"のメロディのニュアンスは残しつつも、アドリブをたっぷり楽しませてくれて、ム-ドをしっかり味合わせてくれる(9:25)。
 M2-4"Cry Me A River"がいいですね。この曲は好きで多くのミュージシャンの演奏を聴いているが、やっぱりメルドーは凄いですね。彼の手にかかると、今まで聴いてきた曲から彼独特のジャズに大変身(4:40)。
 この日のラスト・ナンバーはセロニアス・モンクの代表作であるM2-5."Monk's Dream"が披露され幕を閉めている。

(評価)

□   曲・演奏 ★★★★★☆ 
□ 録音        ★★★★☆☆  

                               - - - - - - - - - - - - - -

<Jazz>

BRAD MEHLDAU TRIO 「LIVE IN UTRECHT 190510」
HEADLESS HAWK / HHCD-19589 / 2019

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Brad Mehldau (p)
Latty Grenadier (b)
Jeff Ballard (d)
Live at Hertz Zaal,Tivoli,Utrecht,Netherlands May.10.2019 EX-AUD 2019 Original Remaster 90 min

(Tracklist)
(Disc-1) 
1. Twiggy
2. Hormer Hope
3. Ode
4. Unknown
5. Countdown

(Disc-2) 
1. When I Fall in Love
2. Unknown / encore
3. Unknown
4. Cry Me A River

Bradmehldautrio702x336

 ニュー・アルバムを発表した直後ののブラッド・メルドー、待望のトリオでの来日直前であったオランダ・ユトレヒト・チボリ・ハーツ・サドルに於ける2019年5月10日のライヴ盤
 このレーベル独自のマスタリングを施したものと言うことだが、まあこのタイプとしては高音質といえるステレオ・サウンド(上の日本ライブものと音質は似ているがやや劣るか)にて、アンコール2曲まで1時間半に渡り完全収録した2枚組である。同じ5月であるが演奏曲目はかなり違いがある。

 昨年リリースしたニュー・アルバムからのメルドーのオリジナル作品を演じ、カヴァーなど多数の楽曲を演奏している。メルドーの自他共に許す卓越したテクニックで、長年に渡り活動を共にしてきたグレナディアとバラードとのトリオで呼吸はピタリと合っている。とにかく繊細な流れるようなピアノの音から、三者のアンサンブルも見事である。こうしたハイレベル・トリオを堪能するにはDisc-1全曲が聴きどころ。
  しかし、こちらのライブ盤も私的にはDisc-2の方が好みなんですが・・・とにかくM2-1."When I Fall In Love"は、しっとり演奏の極みですね。M2-2.は曲名不明なるも攻撃的なバラードのドラムスが聴きどころで、スリリングな展開。そしてやはりメルドー世界化したM2-4."Cry me River"は感服の世界。

 ブラット・メルドーの今年の2ライブ・アルバムを聴いてみた。やはりライブのトリオは、それなりに演ずるところ気合いが入っていて頼もしい。こうした盤もライブ参加できなかった私にとっては貴重である。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★☆☆

(試聴)

 

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2019年8月18日 (日)

[ 近年名盤検証 ] リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「Live at The Montreux」「With words unspoken」

女流ジャズ・ピアニストの究極のバラード演奏に降参

61iybx1eoxlw  米国の女流ジャズ・ピアニストのリン・エリエイル(アリエール)Lynne Arriale の近作と言えば「Give Us These Days」(XATW-00145677)だが、それは今年の一月にここで取り上げた。(→)
(http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/lynne-arriale-t.html)。

  しかし最近リリースされた寺島靖国の「For Jazz Ballads Fans Only Vol.1に彼女の名演奏"ESTATE"が取り上げられ、この曲はアルバム「Live in Montreux」(再発2000年)に収録されているもので、たまたまこのアルバムは私は所持していたので改めて・・・かっての手持ちの他の1枚を含めて検証してみたいのだ。

 とにかく私にとってはこの彼女に関してはこれらの3枚のアルバムが知る全てであって、最近実はもう少し過去のアルバムをしっかりそろえてみたいと密かに思っているのだ ( 実はこれを書いているうちに、「WHEN YOU LISTEN」(1995) , 「INSPIRATION」(2001)の2アルバムが到着した )。

 

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「Live at the Montreux Jazz Festival」
TOB / EU / 20252 / 2000

Montreux

Lynne Arriale(p),Jay Anderson(b),Steve Davis(ds)
Recorded Live at Montreux Jazz Festival,July 4,1999

 彼女のトリオの1999年のモントルー・ジャズ・フェスに於けるライブ盤である。

(Tracklist)
1.Alone Together
2.Evidence
3.With Words Unspoken *
4.Seven Steps To Heaven
5.Think Of One
6.Estate
7.Calypso *
8.An Affair To Remember

*印 Arrialeのオリジナル

  彼女のオリジナル曲のM3."With Words Unspoken"が素晴らしい。これはエレガントにしてロマンティシズムいっぱいのバラードで、これで彼女のプレイを知らしめられる。とにかく注目のM6."Estate"は、私の好きなイタリアのMartinoの曲だが、暑い夏の出来事をしみじみと歌い上げるピアノには完全に降参です。
 そして最後のM8."An affair to remember"の演奏はこれ又素晴らしく、最後に司会者 Beautiful ! の言葉が収録されているが、正にBeautiful。過去をしっとり振り返えさせられる。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★☆

   *     *     *     *     *

<Jazz>

Lynne Arriale Trio「With words unspoken」
Digital Music PROD / US / CD158 / 2016

Withwordsunspoken

Lynne Arriale(p)
Drew Gress(b)
Steve Davis(ds)

  リン・エリエイルがDMP に残したピアノトリオ盤。「The Eyes Have It」(94 年作品) に続き1年ごとにリリースされ、3部作としても人気のあるアルバムである。これがそのうちの一枚(1996年、三作目)。モンクやジミー・ロウルズ、ジョビンやコール・ポーターなどの名曲を彼女の素晴らしいエレガントにしてリリカルなセンスあふるる演奏で、名盤と言ってよい好盤。

Lynne72145ew (Tracklist)

1. Think of you
2. Woody n' You
3. With Words Unspoken *
4. Windswept *
5. The Peacocks
6. A Promse Broken *
7. Zingaro
8. I Loves You Porgy
9. Where or When

 *印 Lynne Arriale のオリジナル曲

 彼女の美しいピアノ・サウンドとエレガントな流麗さ、そして哀感等の演奏に痺れるのは、まずは彼女自身の曲M3."With Words Unspoken "、そしてM5."The Peacocks"(J.Rowles)、さらにはM8."I Loves You Porgy"(G.Gershwin)、M9."Where or When"(R.Rogers)等の曲ですね。そして叙情的なものだけで無く、その他スウィングするジャズ・プレイにもどこか気品があるんですね。このアルバムもお勧めの名盤だ。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★☆

(試聴)

    "With Words Unspoken"

*

   " Alone Together "

 

 

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2019年8月 6日 (火)

[今知る名盤] ステヴ・ルドルフ・トリオ Steve Rudolph, Phil Haynes, Drew Gress 「day dream」

スタンダード・ナンバーを流麗にして繊細、美メロのピアノ・トリオ

<Jazz>
Steve Rudolph,Phil Haynes, Drew Gress 「day dream」
PA-CT Records / US / PAKT1014 / 2010

Daydream1

Steve Rudolph(p)
Drew Gress(b)
Phil Haynes(ds)

 先日リリースされた寺島靖国の「For Jazz Ballad Fans Only Vol.1」で知ったこのピアノ・トリオ。アルバムを仕入れて聴いてみると何とこれは名盤そのもの。改めて9年前のリリースだが、ここに取り上げることとした。
  プロデュサーは、ドラマーのピル・ハイネスPil Haynesだが、曲のアレンジは米国のピアニストのステヴ・ルドルフSteve Rudolph(↓)、そして名ベーシストのドリュー・グレスDrew Gressというピアノ・トリオである。

Screenshot201503300133 (Tracklist) 
01. Some Other Time /L.Bernstein
02. Beautiful Love / V.Young
03. Viola  / S.Mendes
04. Turn Out The Stars / B.Evans 
05. Lover Man  / Ramirez、Davis, Sherman
06. I Get Along Without You Very Well /H.Carmichael
07. Theme For Maxine / W.Shaw
08. Day Dream / Strayhorn, Ellington
09. A Weaver of Dreams / V.Young

 "スタンダード・ナンバーで構成された甘くてほろ苦い流麗なピアノ・トリオ・サウンド"とのインフォメーションのあるこのアルバム。見事にその線をいっている。特にステヴ・ルドルフのピアノは華麗にして繊細、流麗な流れは出色である。
  そしてM5."Laver Man"の11分を超える曲にみるように、ピアノの余韻のある響きを持ったメロディーが流れ、プロデューサーを務めるピル・ハイネスのシンバルが繊細に響き、トリュー・グレスのベースが、これまたピアノに負けない繊細さと重厚感の味付けがあって、三者によりピアノ・トリオの王道を演じている。
 Pict0449 M1."Some Other Time"はBernsteinの曲で、美しく繊細なピアノの音と流れるようなメロディでスタート。ベースの響き、シンバルの響きが共にこれ又美しく、このアルバムの期待度が高まる。
 M4."Turn Out The Stars" B.Evansの曲も登場する。彼らの演奏も物思いにふける世界を描く。
 M6."I Get Along Without You Very Well "もゆったりとした流れが深遠だ。
 M7."Theme For Maxine"のベースのゆったりした語り口と早い流麗なピアノ流れが対照的で、次第にドラムスのリズムに乗ってゆくところが聴き所。
   M9."A Weaver of Dreams"は、このアルバムの中でも3者が楽しそうに演じている姿が目に見えるようなリズムカルな曲。 

 とにかくベテランの酸いも甘いも経験してきた人生からの曲の解釈は、見事にここに結実している。
 ステヴ・ルドルフはプロ・ミュージシャン50年以上となるベテラン・ピアノ・プレイヤーだが、意外に日本で多くは聴かれ語られていない。寺島靖国が取り上げたことにより私は初めてアルバムを鑑賞できた。彼は2000年のセブンスプリングスジャズフェスティバルでのJazziz Magazineピアノコンクールの優勝者として、彼は2つのJazz Composition Fellowshipsを受賞しているとか。 エバンスビルで生まれ、インディアナ州ブーンビル近郊で育ち、インディアナポリスのバトラー大学で奨学金を受けてトランペットと作曲を学んだ。彼は22歳で彼の主な楽器をピアノに切り替え、1977年にトミードーシーオーケストラと共演するようになったという経歴だ。彼の活動は範囲は広く、芸術と地域奉仕への貢献に対して2002年のハリスバーグ芸術賞というものも受賞している。

 このアルバムのさりげないトリオ演奏の中に、繊細な美と流麗なジャズ流れを十分に昇華したプレイに引き込まれる。名盤と言っていいと思う。もう一枚のアルバム「Everything I Love」(RLCD41049/2010=1995年盤の再発)も手にすることが出来たので、又近々取り上げたい。

(評価)
□ 選曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(試聴)   "Some Other Time"

 

 

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2019年7月 8日 (月)

ステファン・オリヴァのニュー・アルバム Stephan Oliva「Orbit」

久々のオリジナル曲によるインテリジェンス溢るるピアノ・トリオ盤


<Jazz>
Stephan Oliva, Sebastien Boisseau, Tom Rainey 「Orbit」
YOLK MUSIC / j2075 / 2019

Orbit

Stephan Oliva (p)
Sebastien Boisseau (b)
Tom Rainey (ds)

Recorded and mixed by Gerard De Haro
Mastering by Nicolas Baillard at Studio La Buissonne in 2018

 フランスのピアニスト、ステファン・オリヴァの久しぶりのピアノ・トリオ・アルバム。マイナー・レーベルからのリリースで取りあえず手に入れた。まずは注目点はアルバム・ジャケにもトリオ3人の名前が列記されていて、いわゆるピアニストの為のトリオというスタイルでなく、三者が三位一体型のトリオでの演奏型。そうは言ってもステファン・オリヴァが全11曲7曲を、そしてベースのセバスチャン・ボイソウが3曲を提供している。まあ彼らがジャズを極めんとする一つのパターンであるオリジナル曲アルバムだ。
  アルバム・タイトル「Orbit」の意味は、所謂人工衛星などの"周回軌道"のことのようだが、"人生の流れる環境"などの意味もあるようで、そんなところからも哲学的世界を感ずる。

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(Tracklist)

1. Split Screen (Stephan Oliva)
2. Wavin (Sébastien Boisseau)
3. Gene Tierney (Stephan Oliva)
4. Processione (Stephan Oliva)
5. Le Tourniquet (Sébastien Boisseau)
6. Cercles (Stephan Oliva)
7. Inflammable (Marc Ducret)
8. Polar Blanc (Stephan Oliva)
9. Around Ornette (Stephan Oliva)
10. Spirales (Stephan Oliva)
11. Lonyay Utça (Sébastien Boisseau)

  このアルバムは、所謂オーソドックスなピアノ・トリオ・ジャズを期待してはいけない。"フランスらしい気品に溢れ、冷気漂うインテレクチュアルな美的ピアノ・トリオ作品"と評されているが、まさにそんな作品だ。そしてこのトリオの三位一体型の演奏も群を抜いている。これぞこの3人が互いに目指すものを融合させたといったパターンは随所に感じられる。
 とにかく所謂叙情的優しさ美しさというものではない。しかしその気品あるインテリジェンスの高く、フィロソフィカルな世界は、ある意味での前衛性も加味して響き渡る。いっやーーなかなかスパイスの効いた刺激と深遠さとで、あっという間にアルバム一枚を聴いてしまう。

 とにかく、スタートのM1."Spilit Screen"から三者の絶妙なスリリングな連携に驚きながらも、この先の展開に不安をかき立てられながら聴くことになるが・・・。M2."Wavin"の静寂にして深遠な世界によって、なる程このアルバムの思索的世界を知らしめられる。
 中盤は、M7."Inframmable"にみるように、ピアノの高音と低音で深遠な世界にリズムを刻み、一変して途中から変調し三者のメロディーというよりはリズムの妙が前衛的にインタープレイし展開する曲だ。そしてそのながれからM8."Around Ornette"のスリリングな演奏と深遠な世界の三者の交錯への世界と流れる。
 M9."Spirales"はベースのソロが低音で響き、そしてピアノ、ドラムスが、独自の世界を作りながら次第に合流する流れに入ってゆく。
 こうしたトリオ展開は、次世代ピアノ・トリオの一角を築き上げているという印象である。
   そして終曲M11."Lonyay Utca"は、静かな永遠の世界に導きつつアルバムを納める。

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 このアルバムは一曲一曲よりは、全曲をトータルに構成されたアヴァンギャルド・トリオ作品として聴くと良い。それはこのトリオ三人のインテリジェントにしてアグレッシブな姿勢によって作り上げられたものとして知ることが出来る。そこにポイントをもって聴くと、ちょっとした多くのピアノ・トリオ作品の中で、この作品のある意味での重要性に接することが出来る。しかしそれにつけてもステファン・オリヴァ(↑)の繊細なプレイとフィロソフィカルな世界は凄い。

(評価)
□ 曲・演奏 :  ★★★★★☆
□   録音   :  ★★★★★☆

(視聴)

 

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2019年6月26日 (水)

アヴィシャイ・コーエンのニュー・アルバム Avishai Cohen 「Arvoles」

異空間のみ感じられて・・・

<Jazz>
Avishai Cohen 「Arvoles」
RAZDAZ /  EU / RD4619 / 2019

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Avishai Cohen (bass)
Elchin Shirinov (piano)
Noam David (drums)
Bjorn Samuelsson (trombone #1,4,6,9,10)
Anders Hagberg (flute #1,4,6,9,10)
2019年2月18日-3月15日 Nilento Studio,Sweden 録音

Recorded mixed and mastered by Lars Nilsson

 
注目のイスラエルのベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのニュー・アルバムの登場。アルバム・タイトル「Arvoles」は、トラッド曲で「木」を意味するのだというのだが、ジャケも彼のアルバムでは一風変わった絵画での「木」が描かれている(彼の母親が描いたものらしい)。とにかく彼の今までのアルバムには、どこか郷愁を誘う美しさがあって、今回も期待のアルバムだった。
 基本はピアノ・トリオ編成。ピアノはエルチン・シリノフ(アゼルバイジャン出身)、ドラマーはイスラエル出身のノーム・ダウであり、アルバムとしては初編成トリオ。

Avishaicohentriow2

(Tracklist)

1.Simonero
2.Arvoles (Traditional)
3.Face Me
4.Gesture #2
5.Elchinov
6.Childhood (for Carmel)
7.Gesture #1
8.Nostalgia
9.New York 90's
10.Wings
*#1,3-10 Composed by Avishai Cohen
*All Tracks Arranged by Avishai Cohen

 

Avishai_cohenw_20190626181601  曲はのアルバム・タイトル曲M2.以外は全てアヴィシャイ自身のオリジナル曲で占められている。又今回は5曲ではホーンセクションが加わっているという試みもみられる。
 スタートM1."Simonero"はちょっと今までのイメージと違ってベースのソロから始まって展開が異様、おとなしいピアノ・トリオではない。何か新展開を試みているムード。グルービーな世界を狙ってのことか。
 M2."Alvoles"はトラッドらしいのだが、がらっと変わって軽いリズムのピアノ旋律が流れる優しい曲で、中盤彼のベースが物語るという曲だ。どこか母親に対する優しい心を描いているのだろうと思わせる。
 そしてM3"Face Met"はイスラエルっぽいムード。彼のベースが低音のアルコ奏法で響き、ピアノ、ドラムスはアフリカンぽく、ラテンぽくといったハイテク展開。
 なんかファンキーっぽくもあったり、まあピアノ・トリオの抒情的世界とは異なる。
 M6."Childhood"もホーンセクションによるメロディーを流して郷愁感はあるも、どうも馴染めない。
 M8."Nostalgia"はピアノトリオらしい展開で、ややほっとして聴くも私の期待ではなかった。

 結論的に、アヴィシャイ・コーエンの新展開と技術的な高度さもうかがえる筋は解るが、ホーンセクションが加わったり私の期待し好む世界とは別物であった。こうゆうのにのめりこむ人がいるなら話を聞いてみたいところだ。

(評価)
▢ 曲・演奏 :   ★★★★☆
▢ 録音         : ★★★★☆

(視聴)

 

 

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