ピアノ・トリオ

2017年9月19日 (火)

ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」

恐れ多い・・・80歳を越えたベーシストの心境の世界に足を入れる

<Jazz>
Gary Peacock Trio 「Tangents」
ECM / GERM / 5741910 / 2017

Tangentsw

Gary Peacock (double-bass)
Marc Copland (piano)
Joey Baron (drums)
Rec. May 2016, Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano, Switzerland

Mi0003861169 ゲーリー・ピーコックGary Peacock(1935年-) とくれば、私にとってはキース・ジャレットということになるのだが、ビル・エヴァンスとのお付き合いなどと言う歴戦の経過から、もう現在のジャズ界のピアノ・トリオと比較してみると、一時代前の人ってことなんですね、しかしなんとそれが現在なんです。チャリー・ヘイデン亡き後、うーん、この人でしょうね頑張っているのは。なにせ驚くなかれ、80歳の誕生日を記念して制作されたピーコックのNew Trioの演奏盤、昨年の演奏だ。そしてECMからのリリースである。
 彼はなんとECMでの初デビューは1977年の『Tales of Another』ということで、恐れ多くも40年前なんですね。最近は2年前にECMからこのメンバーで、アルバム『Now This』(ECM/4715388/2015)をリリースして絶賛を浴びたのだった。これもピーコックとしては長い歴史に於いては、New Trioと言われるところだが、主として10年以上前から既にこのトリオは、ピアニスト・マーク・コープランドMarc Coplandとドラマー・ジョーイ・バロンJoey Baronとなっていたという結構長い経過とも言える。

 全体に明るいとは言えないムードだが、とにかく深みと言うか、彼の心からの響きというか、詩的な世界というか、やっぱり枯れた味わいというところなのだろうか、じっと聴き入る思索瞑想に浸る世界なのである。いずれにしてもピーコックは、昔来日して禅の思想などを学ぶ為ということで、京都で2年間の隠遁生活を送ったこともあるという精神的な深みを目指すタイプであって、彼のこのアルバムもそんなところが見え隠れする。

Garyjoey(Tracklist)
1. Contact
2. December Greenwings
3. Tempei Tempo
4. Cauldron
5. Spartacus
6. Empty Forest
7. Blue In Green
8. Rumblin'
9. Talkin' Blues
10. In And Out
11. Tangents


  上のような収録11曲であるが、ピーコックの曲が5曲とほぼ半分、コープランドの曲が1曲、バロンの曲が2曲、3人の共作が1曲、 Northの”Spartacus”、Milesの”Blue In Green”で全11曲。

 まずはスタートのM1."Contact"これぞ人間が巨匠と言われるようになっての面目躍如のベースから始まる瞑想と言うか思索というか、そんな世界感。すぐ追従するピアノ、バックでサポートするシンバルが何とも言えない微妙な空間を持ってサポートする。こんな展開をされると、即参ってしまう私なのだ。
 M5. "Spartacus" は、美意識では筆頭格のコープランドのピアノが切々と物語と旋律を流すところに力強いベースでお見事な抒情世界。それは同様にM7."Blue In Green" でも味わえる。若干バロンは遠慮気味ですね。
 しかしM6. Empty Forest の3者のインプロヴィゼーションと思われる音の交錯と余韻の世界はお見事で、これぞトリオだ。。
 M8. "Rumblin'", M9."Talkin' Blues"で見せる軽快な世界は年齢を超えたミュージシャンの描くところですね。
 締めのM11."Tangents" では、ピーコックのベースが自分の心境を曲にしたような深い世界を演じる。そこにピアノが流れをアクティブにして暗さの無いところに導いてくれる。

 なかなか期待を裏切らない深い世界のベースを聴かせてくれたピーコック、そしてコープランドのピアノとバロンのドラムスが絶妙にトリオを形作って、彼らのオリジナル9曲+αでトリオ健在なりを示してくれた味わい深い作品だ。年齢を感じさせない素晴らしい演奏と言わずに、むしろ年齢だからこそ出来たいぶし銀の作品と評価したい。

(視聴)  Gary Peacock Trio

 

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2017年9月15日 (金)

松尾明AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」

録音の質のリアリティーはハイレベルに確保しているが・・・・
  ~ミュージックとしての熟成度が低く、演奏は並~

<Jazz>
AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1058 / 2017

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松尾明 Akira Matsuo (ds)
寺村容子 Yoko Teramura (p)
嶌田憲二 Kenji Shimada (b)


【録音】2017年3月27日
横浜ランドマークスタジオにて録音


 近年、素晴らしい録音モノが増えてきて、そこに感動もあって嬉しいことであるが、そんな意味で注目したアルバムがこれだ。
 以前にもそんな評判で手にしてガッカリしたものでYOKO TERAMURA TRIO『TERAMURA TOKOMOODS』(TERASIMA RECORDS/TYR-1026)があったのを思い出した。基本的にはあのアルバムと大きな差は無いと言っておく、それはその録音サウンドだが、いかにもベースはブンブンと唸って響き、ピアノはキンキンと確かにクリアに鳴る。しかし何か空しいのですね。それはミュージックとしての仕上げに貧しいのである。是非とも比べて欲しいのはつい先頃のリリース盤で言えば、GEORGES PACZYNSKI TRIO『LE VOYAGEUR SANS BAGAGE』(ASCD-161101)がある。これと比較してみると明解だが、そこにはピアノ、ベースのバランス、そしてそこに加わるドラムス、シンバルの鮮烈な響き、それが全て曲としてのバランスの中で、クリアにリアルな音で迫ってくる。つまり曲としての仕上げに明らかな差があるのだ。更に前回紹介のALESSANDRO GALATI『WHEELER VARIATION』SCOL-4024)のそれぞれの楽器とヴォーカルの配置の絶妙さを知るべきである。
 又演奏技術や音に対してのセンスというものが濃縮して快感のミジュージックが出来上がるのだが、その意味に於いてもこのアルバムには感動は無かった。
 はっきり言うと5曲ぐらい聴くと飽きる。

P_matsuoakira 実は宣伝文句は・・・・
「松尾明トリオ4年ぶりとなる作品は、寺島レコード第1弾アルバム『アローン・トゥゲザー』のトリオが再集結!寺島レコードの原点"哀愁"のメロディ、ジャズの名曲、そして長い付き合いのメンバーによる名演、すべてを凝縮した、レーベル10周年にして松尾明トリオの10年間の集大成ともいえる記念すべき作品に仕上がった。」
・・と言うのだが、残念ながら哀愁もあまり感じられない。ただ曲をとにかく一生懸命演奏したモノとして評価するに止まるのである。一番はピアノ・トリオとしての大切なピアニストの演奏に味が感じられないと言うところも大きいでしょうね。

 追記しておかねばならないのは、どうも寺島靖国は録音の技法のそのあたりをやっぱり気にしているらしいことが、ライナー・ノーツを読んで解った。そして録音されたマスターから続いて「Another Mastering Edition」を追加したんですね。しかしそれも録音された音源は同一であることからやはり無理は無理な作業によって何とかしたと思っているようだが、本質的にはそれほど大きな効果は上げていない。

 それには録音時からの方法論にはかなりの工夫が必要であって、そう簡単に脚色出来るものでない。このアルバムを聴くと、狭い部屋での三人の演奏を、一番前で聴いたという感じなのだ。やはりもっと広がり、奥行き、三人のバランスが重要に思う。音の強さを下げたから後方に位置するというのでなく、録音によっては同じ強さの音でも後方に位置して聞こえるという技量があるのだ。

Yoko_t2 今や再生ミュージック・ソースの出来不出来は、半分は技術陣の腕にかかっているというのが一般的な見解だ。これは決して極端な話でないと思う。それにつけてもこのアルバムの寺村容子(→)のピアノにはもう少し思想と繊細さが欲しい演奏でした。

 ちょっと辛辣に書きすぎたが、実は宣伝文句が立派すぎて、聴いてみての反動が大きかったというところなのである。

(Tracklist)
1.  Lupus Walk (Akira Matsuo)
2.  Estate (Bruno Martino)
3.  I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
4.  Moonlight Becomes You (Jimmy Van Heusen)
5.  How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
6.  Do You Know What It Means Miss New Orleans (Eddie DeLange, Louis Alter)
7.  Sway To Fro (Kenji Shimada)
8.  Violet For Your Furs (Matt Dennis)
9.  Just A Mood (George Shearing)
10.  Steaway To The Moon (Yoko Teramura)

(参考視聴)TERASIMA RECORDSのサウンド  (Yoko Teramura Trio)

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2017年9月 3日 (日)

マリオ・ラジーニャの作品Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」

ポルトガル音楽の民族性をジャズ的発展へ

<Jazz>
Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」
ONC Prodçóes / POR / NRTI017 / 2017

10073035812

Mario Laginha - piano
Miguel Amaral - portuguese guitar
Bernardo Moreira - contrabass

 ジャズへのアプローチは多種多様ではあるが、民族性を生かしたものも最近よくお目にかかる。ポーランドのアンナ・マリア・ヨペクの3部作の小曽根真、福原友裕との「HAIKU俳句」の”Yoake”、”Pandora”、”Do Jo Ji”なんかは驚きだった。

Guiter これもポルトガルのジャズ・ピアニストの大御所と言われるマリオ・ラジーニャMario Laginha(1960年、リスボン生まれ)の試みる変則ピアノ・トリオ・アルバム。つまり彼のピアノにベース、ギターというドラムレス構成。彼には一般的なベース・ドラムスとのトリオも結成しているが、これは特にミゲル・アマラルMiguel Amaral演ずるポルトガル・ギターportuguese guitarが大きな特徴だ(→)。ポルトガルというとあの民謡”ファド”が重要だが、あの国を旅行した時に聴いたのを思い出す音色であって、これはあちらでは一般的に使われているギターだと思う(実際には、一般的クラシック・ギターとは異なる流れにあるようだが)。

 さて、このアルバムの中身は、ジャズとポルトガル音楽をかけあわせたような作品。サウンドはそれぞれの持ち味を発揮したところだが、やはり“ファド”のような叙情性を感じさせるギターの音が散りばめられている。
 そしてやっぱりクラシック的ムードが全体に流れているのである。まあ真剣に向き合って聴くという難しいことは避けて、むしろバック・グラウンド・ミュージック的気持ちで流しているとポルトガル・ムードに浸れて、ちょっと変わった気分にさせてくれるのである。
 この作品は、1曲以外は全てオリジナルだというので、それにしてもジャズにポルトガルの素朴なムードは確実にあって、彼の意気込みが感じられる。彼はThe most Creative Contemprary Portuguese Jazz Musiciansと言われている存在だ。

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(Tracklist)
1. Terra Seca
2. Dança
3. Quando as Mãos se Abrem
4. Tão Longe e Ainda Perto
5. Fuga para um Dia de Sol
6. Há Correria no Bairro
7. Enquanto Precisares - para o Pedro
8. Pela Noite Fora
9. O Recreio do João
10. Chão que se Move

500_laginha2 リーダーのマリオ・ラジーニャは、私は今までに聴き込んだ記憶が無いのだが、ジャズ・ピアニストとしての数十カ国に渡る演奏歴と、数々のオーケストラやビッグバンドに委嘱作品を提供する作曲家としてのキャリアを20年以上に渡って展開する、まさにポルトガルを代表する音楽家のひとりと言うところのようだ。そして紹介など見ると、リーダー作品としては、バッハの作曲技法に影響を受けた自作曲集『Canções & Fugas』(2006年)、ショパンへのオマージュ作品『Mongrel』(2010年)、建築にインスパイアされたピアノ・トリオ編成による『Espaço』(2007年)など、多様かつ個性的な作品を発表し続けていると言うのである。更に、世界の民族性を尊重した音楽作りに貢献しているようで、いやいや今後取り敢えずは少しは注目しておかねばならないと言ったところ。

(視聴)

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2017年8月22日 (火)

ウォルター・ラング・トリオWalter Lang Trio 「FULL CIRCLE」

どこか定まらないムードに若干不満足だが・・・

<Jazz>
Walter Lang Trio 「FULL CIRCLE」
Atelier Sawano / JPN / AS-151 / 2016


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Walter Lang : piano
Thomas Markusson : bass
Sebastian Merk : drums


 ジャズ・ピアニスト=ウォルター・ラングWalter Lang は、1999年から既にピアノ・トリオとして10枚以上のアルバムをリリースしているが、日本では"Swing Journal"を代表に、かなりの高評価を勝ち取って来ている。彼のもう一つのトリオである今年紹介したTRIO ELFは別にすると、ウォルター・ラング・トリオによる近作は、ここでも取りあげてきたが、このアルバムと同メンバーによるStarlight Reflection』2013)そしてMoonlight Echoes』2015)であった。そしてこの2作はいずれも夜の世界を描いてきた。それがなかなか心にしみいる世界でお気に入りだったんだが、今作は少々異なっている。そんな訳でここでの私の感想を書くにもなんとなく少々後回しになって、今、遅くればせながらの登場である。

 登場する曲は、何故か日本の名曲2曲、それとパット・メセニーの曲を代表にその他というところだが、オリジナル曲が多くを占めている。そしてテーマは小島万奈によるライナー・ノーツにあるところの”今回は全編を通して世界の土地や音楽への心を綴った、回想と現実を漂うようなアルバムだ”と言うところなのかも知れない。

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(Tracklist)
1. Minuano
2. Bokka(牧歌:宮澤賢治)
3. Play that Fiddle
4. Mathias
5. Oborozukiyo(おぼろ月夜:岡本禎一)
6. Season of Lent
7. Full Blast
8. Old Folks
9. Bali
10. Full Circle
11. Gipsies in Byzantium
12. Taksim Meydani
13. Kansas Skies

M1. Minuano パット・メセニーの曲。この明るさ、どうも期待したムードでない。
M2. Bokka やはり日本の曲は良いですね。哀感があって思索的な世界に導いてくれて私好み。
M3. Play that Fiddle オリジナル曲だが、この曲に見るような明るいというか軽い旋律がどうもあまり納得しない。
M4. Mathias この曲もあまり意味を感じない曲
M5. Oborozukiyo なんと文部省唱歌ですね。ベースによる旋律が主役をなす曲作りであるが、後半にピアノによる主旋律が演じられる。このような日本の曲が良い仕上げだ。
M8. Old Folks 物思いにふけれる味のある曲。
M10. Full Circle オリジナルとしてはやはりアルバム・タイトルにもなっているこの曲が良い。手頃に美しい中に深遠さのある世界に没頭できる。
M11. Gipsies in Byzantium ドラムスから始まって、美しいピアノ、なかなか宇宙感覚のある聴き応えがあり、こうした世界が私はラングに求めたい。
M13. Kansas Skies これはなんと懐かしくなるフォーク・ロック調で、どこかで聴いたような安堵感のある”カンサスの空”であるが、これはオリジナル曲。

 どうも結論的には、それぞれ曲が独立して聴き所も勿論あるのだが、あまり全編通してどうも充実感ある意味が持てなかった。それは特にオリジナル曲の軽いタッチはあまり私の好むところで無かった為かも知れない(これは前作でも少し覗いて見られる疑問点でもあったのだが)。彼はTRIO ELFのような実験的トリオも試みているので、こちらのトリオではやっぱり抒情的な美しさ、そして思索的世界を深く推し進めて描いて欲しいと思うのだが、それは単なる私の期待なのかも知れない。

Walterl1wウォルター・ラングをちょっと回顧しておこう・・・・・
   
 1961年ドイツ生まれ ボストンのBerklee School of MusicそしてAmsterdam School of Artsを卒業している。1999年Walter Lang Trio結成。主なアルバム(↓)

初期トリオ
    "Walter Lang Trio plays Charles Chaplin" (1999)
    "Across The Universe" (2002)
    "Softly as in a morning Sunrise" (2005)
    "The Sound Of A Rainbow"(2005)

現トリオ Walter Lang (piano),  Thomas Markusson (bass),  Sebastian Merk (drums)
     "Starlight Reflection"  (2013)
     "Moonlight Echoes" (2015)
     "FULL CIRCLE" (2016)

TRIO ELF
     "Music Box Music" (2016)

(視聴)

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2017年8月11日 (金)

ジョルジュ・パッチンスキー・トリオGeorges Paczynski Trio ニュー・アルバム「LE VOYAGEUR SANS BAGAGE~荷物なしの旅」

静の思索的美と動のスリリングさ・・・好録音も聴きどころ

<Jazz>
Georges Paczynski Trio 「LE VOYAGEUR SANS BAGAGE」
Arts & Spectacles / FRA / ASCD 161101 / 2017

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Georges Paczynski (ds, p 15)
Stéphane Tsapis (p)
Marc Buronfosse (b)

Recorded mixed and mastered by Vincent Bruley
Studio Piccolo Paris
All compositions by Georges Paczynski

 とにかく好録音(エンジニアはヴァンサン・ブルレVincent Bruley)は知られたところのドラマー=パッチンスキーGeorges Paczynski のピアノ・トリオ・アルバムの最新盤。
  このジョルジュ・パッチンスキー・トリオは2013年の『LE CARNET INACHEVÉ』以来お気に入りなんですが、今作も、勿論彼のオリジナル曲で埋められており、その哲学的世界は我々を唸らせたピアノ・トリオ作品の前作『LE BUT, C'EST LE CHEMIN』Art & Spectacles / ASCD140901)からの流れの中にある。そして期待度100%で迎い入れるのである。今回も当然同メンバーでのアルバムだ。

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 どうもテーマは一人駅に立つ旅人を神秘的に描いての全16曲と言うことらしい。、1-2分という短い曲から、長くとも5分という曲により構成されている。そこは前作も同じでこれもパッチンスキーの意志とみて良さそうだ。

(Tracklist)
1. La vieille valise (4:43)
2. Le réveil démonté (3:13)
3. La cymbale Fatiguée (2:34)
4. La baguette déformée (5:02)
5. La partition déchirée (4:27)
6. Le pupitre rouillé (3:56)
7. Le disque sans titre (3:02)
8. Le livre sans auteur (2:38)
9. Le miroir lézardé (2:56)
10. La statuette d'un sage (2:50)
11. Sur le quai désert (2:20)
12. En marche arrière (3:56)
13. Le violoncelle de lady L (1:59)
14. Les rails enchevêtrés (1:04)
15. Deux vers d'un poètes (4:07)
16. L'ascension sans fin (2:16)

 しかしヴァンサン・ブルレの録音は素晴らしい。ドラマーのリーダー作と言うことだけではないだろうが、パッチンスキーのシンバル音の素晴らしさは出色だ。しかしピアノ・トリオとしての曲作りは決して崩れていない。Stéphane Tsapis のピアノの旋律は、ピアノ・トリオとしての重要なポジションにあって、思索的な世界に導くのだ。

 今回もどことなく陰があり、しかも美しい。前作の”ある冬の夜に見た夢”という世界同様に思索的な感覚にも陥るし、”旅人の孤独感と期待感との交錯”を描いているようにも思う。パッチンスキーの年齢とは考えられないロマンが存在している。

11g_paczynskipresencesw  M1. ”La vieille valise” スタートのピアノの音にゾクっとする。ピアノからベースに、そしてシンバルの音と思索の世界が始まる。
 M3.”La cymbale Fatiguée” ピアノによるメリハリをシンバルの音が繋いでゆく
 M4..” La baguette déformée” この曲の5分が、このアルバムでは最も長い曲。深夜の落ち着きを描いているが如く流れる。ピアノの繊細さが堪らない。4分あたりでシンバルが響く抑揚が見事で、単調さを感じさせない。
 M5.. ”La partition déchirée”ジャズのスウィング感の心地よさも忘れていない曲。
 M10. ”La statuette d'un sage” 、M12. ”En marche arrière”15. Deux vers d'un poètes  にみる Stéphane Tsapis の緩急のメリハリ、澄んだ音の旋律の美のピアノ・プレイにも注目だ。このアルバムの価値観を高める見事な役を果たしている。
 M14. Les rails enchevêtrés では、トリオ・プレイで見事な前衛性を披露。

 「静の思索的美」と「動のスリリングなところ」を見事に操るプレイに圧倒される。それはリーダーがドラマーであることによるのか、はたまた彼らの目指すところがそこにあるのか、前作に続いて聴き惚れるアルバムであった。

(参考視聴)  (現トリオものが見当たらないので・・・参考まで)

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2017年8月 6日 (日)

ティングヴァル・トリオTINGVALL TRIOのニュー・アルバム 「CIRKLAR」

新世代ピアノ・トリオと言われる中の美旋律が堪らない

<Jazz>
TINGVALL TRIO 「CIRKLAR」
SKIP Records / Germ / SKIP 9157-2 / 2017

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Martin Tingvall  マーティン・ティングヴァル   -  piano and compositions
Omar Rodriguez Calvo
オマール・ロドリゲズ・カルヴォ - double bass
Jürgen Spiegel
ユルゲン・シュピーゲル   - drums and percussion

 私の期待度の高いティングヴァル国際トリオの前作『BEAT』(SKIP Records/SKP9137-2)から3年ぶりの7作目が登場。
 リーダーのティングヴァルMartin Tingvallは、近作はソロ・アルバム(『distance』 SKIP Records / SKP9147-2)が登場していたが、やっぱりこのドイツ、ハンブルグを拠点としたこのトリオは健在でした。国際トリオと言うのは、Martin Tingvallはスウェーデン、Omar Rodriguez Calvoはキューバ、Jürgen Spiegelはドイツ生まれと言うところによる。
 今回も全曲ティングヴァルによるところから、ダイナミックな曲展開である中に、北欧の世界感がにじみ出ているところであるが、それが今までの魅力の一つでもあった。一部にはあのE.S.Tと比較されるものとして、新世代ジャズのピアノ・トリオと言われ注目されているが、意外に聴きやすい安堵感もある。
  ドイツのEcho Jazz (今や世界的な権威ある賞となっている)は、前作までにジャズ部門でゴールド・ディスクを与えている。

Tingt2_2

(Tracklist)
01. Evighetsmaskinen 
02. Bumerang 
03. Vulkanen 
04. Bland Molnen 
05. Skansk Blues 
06. Cirklar 
07. Sjuan 
08. Det Grona Hotellet 
09. Tidlos 
10. Psalm 
11. Karusellen 
12. Elis Visa

Tingt4 さて、このアルバムだが、スタートからの三曲は、親しみやすいリズム・旋律と共に、アグレッシブでダイナミックな展開を示し、ピアノの重低音も交えて結構威勢の良いところを聴かせ、三者の意気込みが感じられる曲から始まる。続くM04.”Bland Molnen”  になって深遠なベースのアルコ奏法と期待のピアノの美旋律の登場だ。とにかく彼らの一見するところの出で立ちからは、信じがたいほどの北欧の大地を崇めるが如くの美旋律を聴かせてくれるのだ。こうした新しいピアノ・トリオの姿を試みる代表的トリオとして、今作も聴く者をして感動に導く。
 私はM.06.” Cirklar ” なども好きな曲だが、物語的展開、安堵感、暗さの無い世界でリズミカルな流れに乗ってのピアノとベースの美旋律に注目だ。
  ピアノの静かに流れる美しさは更にM.08.” Det Grona Hotellet”  にも聴くことが出来、10.”Psalm ” にも繊細なシンバルの音の中に堪能できる。
 M 07.”Sjuan” 、 M 09.”Tidlos”  は、彼らの面目躍如の"動"の曲。
 M.12. ”Elis Visa” は、締めくくりに相応しい大地からの声が感じ取れる曲。

 近代的なダイナミックなセンスを持ちながら、そこにはクラシック的表情も見せつつ北欧的優しい美旋律を聴かせるという愛着の感じられるピアノ・トリオである。

(参考) ~Tingvall Trio Discography
   Skagerrak (2006)
   Norr       (2008)
   Vattensaga (2009)
   Vägen        (2011)
   In Concert (2013)
   Beat         (2014)
   CIRKLAR   (2017)


(視聴)

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2017年8月 3日 (木)

グレゴリー・プリヴァ・トリオGrégory Privat Trio 「Family Tree」

フランスで熟成したピアニスト

<Jazz>
Grégory Privat Trio 「Family Tree」
ACT Music / Germ / ACT9834-2 / 2016

Familytree


Gregory Privat (p), Linley Marthe (b),  Tilo Bertholo (ds)

 先般紹介したLars Danielssonの「Liberetto シリーズ」を聴くにつけ、ニュー・メンバー・ピアニストのグレゴリー・プリヴァGrégory Privat にちょっと興味が沸いたのである。そこで彼のリリースしている近作アルバムを聴いてみたもの。
 彼は仏領マルティニーク島(知らなかったので調べてみると、カリブ海に浮かぶ西インド諸島のなかの一島。海を隔てて北にドミニカ国が、南にセントルシアがある。こんなところに、現在もフランス領があるんですね)出身、1984年生まれで今年33歳という若さ。父親がピアニストでその影響を受け、6 歳からピアノを始め、16歳の時には作曲をし、即興に彼なりきのものを既に持つようになったという経過。その後、フランスのトゥルーズで数々のセッションを重ね、そして中心都市パリに移住しての活動となる。その時は 27 歳だったという。

  • Gregory10w(Tracklist)
    1. Le Bonheur 4:13
    2. Riddim 6:25
    3. Family Tree 6:19
    4. Zig Zagriyen 5:00
    5. Le Parfum 5:39
    6. Sizé 5:26
    7. Filao 7:04
    8. Ladja 5:27
    9. Seducing The Sun 6:19
    10. Happy Invasion 7:54
    11. La Maga 4:29
    12. Galactica 8:27
  •  このアルバムの収録曲は上のとおり。全て彼のオリジナル曲である。
     冒頭(M1.”Le Bonheur” )から、不思議な世界に連れられて行くように、彼の流れるようなピアノの音の洪水に誘われる。ACTのトリオ録音も快調だ。
      なんと言ってもアルバム・タイトル曲であるM3.”Family Tree”、これぞカリブ海に浮かぶ島の情景なのか、なぜか哀愁がにじみ出す情感豊かにピアノの描くメロディが流れる。これがプリヴァだからこそ描く世界なのかと聴き入ってしまう。ドラムスも襲ってくる波のような抑揚を演じ、トリオの相性も良い。
     M5. ”Le Parfum”ではオーソドックスなトリオ演奏、そしてM6. ”Sizé” は、美しさから次第に彼らのめくりめくるインプロの交錯の盛り上がりに進む難解さも披露し、一転してM7.”Filao”は、ゆったりしたメロディアスな流れにに、ベースが厚く響き、最後にはピアノの美しさに快い世界を築く。M9.”Seducing The Sun”のピアノの美しさと澄んだシンバルの響きは、やはりこれも快感。

    Photoducw

     彼らの演奏はなかなか技巧的にもハイレベル、私には若さの弱点なんかは全く感じられなかった。こうした逸材であればLars Danielssonに引っ張り込まれるのがよく解ったのである。やはり私にとっては今後も注目的存在。

    (視聴)

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    2017年7月26日 (水)

    ダン・テファー・トリオDan Tepfer Trio 「 ELEVEN CAGES 」

    並では納まらないフランス気質のニューヨーク流ピアノ・トリオ作品

    <Jazz>
    Dan Tepfer Trio 「 ELEVEN CAGES 」
    SUNNYSIDE / US / SSC1442 / 2017


    Elvencages

    Dan Tepfer (p)
    Thomas Morgan (b)
    Nate Wood (ds)

     ユーロ・ジャズ界の活躍も近年華々しいが、その中でのピアノ・トリオ作品は、なんとなくECM系が一つの有力な世界を造りつつあるような感がある。しかし、ここに取りあげたのは、フランス気質のニューヨーク流作品である。パリ生まれニューヨークで活躍中の新進気鋭ピアニスト=ダン・テファーDan Tepfer(1982年~、両親は米国人)の最新作で、なかなか技巧派をイメージさせる作品に仕上がっている。そして自身のピアノ・トリオ作品としては7年ぶりらしい。
     彼は、ピアノとの接触はクラシックから始めたが、しかし若くしてジャズに開眼し、フランス・ジャズ・ピアニストの巨匠マーシャル・ソラルの指導を受け、その後渡米しフレッド・ハーシュに師事した。既にリリースした作品は様々な賞を獲得し注目されている。最も注目を浴びたのは、2011年にバッハのゴールド・ベルグ変奏曲に挑戦したことだろう(アルバム 『Goldberg Variations/Variations』 (Sunnyside, 2011))。古くはフランスのジャックルーシェが試みたのが懐かしいが、しかしそれとは又異なったジャズ的解釈が評価されている。

    1532022w(Tracklist)
    1. Roadrunner (Dan Tepfer)
    2. Minor Fall (Dan Tepfer)
    3. 547 (Dan Tepfer)
    4. Cage Free I (Tepfer/Morgan/Wood)
    5. Converge (Dan Tepfer)
    6. Hindi Hex (Dan Tepfer)
    7. Little Princess (Dan Tepfer)
    8. Cage Free II (Tepfer/Morgan)
    9. Single Ladies (Stewart/Nash/Harrell/Knowles)
    10. For It (Dan Tepfer)
    11. I Loves You, Porgy (G. Gershwin/I. Gershwin)

      さて、このアルバムの収録曲は上のようで、ほゞダン・テファー自身のオリジナル曲による構成だが、M9.はビヨンセ、最後にガーシュウィンの曲が登場する。
      スタートM1.“Roadrunner”からのハイピッチな展開は圧巻。精密なドラマーの展開にリードされ、押さえた音量で演ずるピアノ、ベースの繊細にして流麗に演ずるセンスに驚かされる。
     M2.“Minor Fall”は、一転して静かに物思いに耽るバラード曲。トーマスのベースが曲の抑揚に魅力をつけ、テファーのピアノは美しいメロディー・ラインを聴かせる。この2曲でただ者で無いぞと思わせるに十分。
     M6.“Hindi Hex”は、いやはやこれぞと複雑なリズム・パターンを乱れなく演じ切る。まさにテクニシャン集団。
     とにかくしっとりとした甘いメロディーと美しい旋律と静謐な世界というところを期待するとしっぺ返しが来る(しかし彼らはその持ち味も持ち合わせていることは、M12.”I Loves You, Porgy”で知れるのだ。つまり十分その味付けをして聴かせるつつ、そしてこの曲でアルバムを終わらせるところがニクイ)。
     しかし彼らの演ずるところ、即興性を加味したコンテンポラリー・ジャズとして聴くと、その魅力を十分に発揮していることが解る。ECM的世界から時にこの世界に塡まるとなかなか新鮮で魅力たっぷりの世界である。これからも期待するに十分な逸材。

    (視聴)

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    2017年6月20日 (火)

    アナト・フォート・トリオAnat Fort Trio 「Birdwatching」

    自然界から人間を知らしめるアルバム

    <Jazz>
    Anat Fort Trio   Gianluigi Trovesi  「Birdwatching」
    ECM / JER. / 4732357 / 2016

    Birdwatchingw

    Anat Fort: piano
    Gary Wang: double bass
    Roland Schneider: drums
    Gianluigi Trovesi: alto clarinet

    Recorded November 5-7, 2013 at Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano
    Produced by Manfred Eicher.

    Af3trw  これはイスラエル出身の女流ピアニスト、アナト・フォートAnat FortのECM3作目で、昨年にリリースされたアルバム。
     実はこのピアニストに関しては白紙であって、ここに来て2007年のカルテット作品『A Long Story』から、トリオもの『And If』(2010)、そしてこの近作『Birdwatching』と、一気に彼女のECMアルバム3作を聴いてみたということになった。

     さてこの近作アルバムだが、トリオ・メンバーのGary Wang(b)とRoland Schneider(ds)は、長年一緒の仲と言うことであり、スペシャル・ゲストにイタリアのリード奏者Gianluigi Trovesiをフィーチャーしたカルテット作品。

    (Tracklist)
    1 First Rays 2 Earth Talks 3 Not The Perfect Storm 4 It's Your Song 5 Jumpin' In 6 Milarepa Part 1 7 Song Of The Phoenix I 8 Song Of The Phoenix II 9 Murmuration 10 Meditation For A New Year 11 Inner Voices 12 Sun

      収録12曲の11曲がFortのオリジナル、他の1曲(M11)はメンバー4人の共作。録音は、2013年11月、スイスにて行われている。

     静かにして、穏やかなピアノ・ソロM1.”First Rays ”からスタート、”最初の光、輝き”ということで、朝の光景だろうか?既に真摯な気持ちにさせる。
     そして続くM2.”Earth Talks ”から Gianluigi Trovesiのalto clarinetが登場。クラリネットの音色から優しさの満ちた世界に。
     しかし、M3.”Not The Perfect Storm ”は意外に荒々しさを感じさせる曲に変わる。
     M4.”It's Your Song ”はクラリネットなしのピアノ・トリオで描く希望に満ちた世界に。
     M5.”Jumpin' In ”は又々印象は変わって不安感が・・・・これは自然界の一つの厳しさを表現か。演奏も極めて現代音楽的で、彼らの内包しているアグレッシブな部分を見る思いだ。
     M6.”Milarepa Part 1”は、再び一荒らし去っての安堵が漲る。
     M7.M8.”Song Of The Phoenix”不死鳥の如く自然の静かにして力強い姿を感ずる
     M9.”Murmuration ”クラリネットが響き、彼女のピアノが追従して不思議な広がりが。
      M10.”Meditation For A New Year ”自然界の姿か、ピアノは躍動と美しさを演じている。
     M11.”Inner Voices ”かなりフリーな演奏で有りながら、4者の思が結ばれる自然への不思議感。
     M12.”Sun”明るい未来感のある静かなピアノ・ソロの響きで終わる。

     予想外のフリーでダイナミックな曲にも驚くのだが、その感情に自然に対応しつつ、やはり静謐にして抒情的、自然の持つ深遠さなどを見事に描ききった作品に思う。今回のアルバム・タイトルを『野鳥観察』にしての”自然の厳しさと美しさとの対話”にしたのは、過去の作品からもごく自然な流れと感じた。

    Anathateiva2trw

    R1632410w_2 アナト・フォートは、テルアビブ近郊にて1970年3月8日生まれ。ニュージャージー州のウィリアムパターソン大学で音楽を学び、ジャズの即興の探究や彼女のスキルを開発するために1996年にはニューヨークに移動もしている。こうした経過で最初のアルバム『Peel』(Orchard, 1999)を製作した。その後2007年、37歳の時に、Poul Motianのドラムスでアルバム『A Long Story』(→)にてECMデビューをした。
     今回三アルバムを聴くことになって、その結果、これからの彼女の次作も私にとっては気になる存在となった。

    (視聴)

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    2017年6月16日 (金)

    アーロン・パークスAaron Parksピアノ・トリオ作品「Find The Way」

    メリハリある抒情派美旋律が聴けるトリオ・アルバム

    <Jazz>
    Aaron Parks 「Find The Way」
    ECM / GER / ECM2489 / 2017

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    Aaron Parks (piano)
    Ben Street (double bass)
    Billy Hart (drums)

    Recorded Oct. 10-12, 2015 at Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines

    Ap1w_3

    51d09vewdvlw アーロン・パークスは、なんと10歳代の1999年からアルバム・デビューしているが、30歳になって(2013年)ピアノ・ソロ・アルバム『Aborescence』ECM/GER/3744401/2013 →)でECMデビューを果した。そして既にここで取りあげたことのあるピアニストだ。あの作品は静かな森、樹木の情景の中の一つの空想、瞑想といった世界を描いたのであろうかと思わせた神秘的情景の作品で注目したのだった。そして今回はピアノ・トリオ作品、ECM2作目である。

     彼は今やアメリカの人気ピアニストで、1983年ワシントン州シアトル生まれで、まだ30歳代の新進気鋭である。
    81qjz1hm4hl__sl1400_w_2 私は出逢ったアルバムの古いものと言っても、2008年のBlueNoteレーベルのアルバム『INVISIBLE CINEMA』(with  Mike Moreno, Matt Penman, Eric Harland  Universal.M.C./JPN/UCCQ9018/2014→)であり、近年の話である。。しかしそれ以前から、女性ヴォーカル・アルバム(Monika Borzym , Rebecka Larsdotterなど)のバックでのピアノを演ずることも多く、そんな活躍して来ている。
     今回は、ECMという流れの中でのトリオ作品であって、十分堪能出来るアルバムを仕上げてくれた。

    (Tracklist)
    1. Adrift
    2. Song For Sashou
    3. Unravel
    4. Hold Music
    5. The Storyteller
    6. Alice
    7. First Glance
    8. Melquiades
    9. Find The Way

    Aptrio1w
    (Billy Hart,    Aaron Parks,   Ben Street )

     さてこのアルバムは、冒頭の曲M1.”Adrift ”のピアノの流れは、私のあまり好きはでないミニマル・ミュージックに通ずるような奏法から始まって、オヤッと思ったがそれがそのまま続くわけでなく、期待通り美しい戦慄が流れる。この曲ドラムスの叩き込みのアクセントはかなり攻めてくるが、ピアノの美旋律とのバランスが面白い。全編ピアノの音は澄んで美しく、旋律もヨーロッパ的なニュアンスも感じられ、抒情派のムードも悪くない。
     面白いのは、トリオ・メンバーのベーシストはBen Streetと、そしてドラマーBilly Hartの力強さを感ずるダイナミックなリズム隊で、曲によっては快調でメリハリがあってなんとも言えないスリリングな流れを作り上げ、美旋律ピアノとのインター・プレイがなかなか味なもの。特にM4.” Hold Music” は、アルバムの中間部に登場する曲だが、Billy Hart のドラムス主導で異色な仕上げ。そしてそれがM5.”The Storyteller ”、M6.”Alice”に流れて、単なる抒情派ではないトリオによるやや前衛的な響きもあって、現代的なセンスのインター・プレイを聴き取れる。そこにはパークスのピアノも単なる甘いロマンティックというところに止まっていないところが見事である。

     アーロン・パークスのピアノは、全体に不思議に力みというところは感じない。それは感じられる情景を、意外に冷静な中での対応をしていて、それをハイレベルな技法によって生み出される流麗なピアノの響きでもってして表現している事のためか。
     アルバム全体に起伏もあり、抒情的な美しいメロディーも流れて来るので、私にとっては納得のアルバムだ。以前聴いたBlue Note盤の『INVISIBLE CINEMA』と比べると、むしろ取っつきやすいアルバムである。これはECM効果の結果だろうか。

    (参考)  Aaron Parks  :  Discography
             The Promse  1999
             First Romance  2000
             The Wizard  2001
             Shadows  2002
             Invisible Cinema  2008  Blue Note
             Alive in Japan   2013
             Arborescence   2013  ECM
        Find The Way  2017   ECM

    (試聴)

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