ピアノ・トリオ

2021年4月20日 (火)

エスペン・エリクセン espen eriksen trio 「end of summer」

複雑性を避けた聴きやすい自然と人間界の叙情的世界

<Jazz>

espen eriksen trio 「end of summer」
rune grammofon / Import / RCD2216 / 2020

Endofsummerw

Espen Eriksen (p)
Lars Tormod Jenset (b)
Andreas Bye (ds)

all selections by Espen Eriksen

 ノルウェーのピアニストEspen Eriksen、ドラマーAndreas Bye、ベーシストLars Tormod Jensetによるピアノ・トリオの5作目となる最新作。本作はロックダウン中のオスロで2020年4月に録音されたものという。
 ほぼ10年前にアルバム『you had me at goodbye』(RCD2096/2010)とうアルバムに接したのが私はこのトリオを知った初めなのだが、当時の記憶としてかなりメロディーを前面に出した接しやすい演奏のトリオという印象であった。そんなことから今回も聴いてみようとしたものだ。

Espeneriksenw (Tracklist)

1 Where The River Runs
2 Back To Base
3 Dancing Demons
4 End Of Summer
5 Transparent Darkness
6 A Long Way From Home
7 Reminiscence

 北欧のピアノ・トリオは、やはりどこか情景的に自然界の不思議さに通ずる演奏モノが多いように感じているが、そこが私にとっては魅力となっている。そこでこの久々に聴いたトリオはどうかというと、まず冒頭の曲M1." Where The River Runs"が、なんと自然界の深遠さを描くが如く曲として登場する。複雑さを避けた非常に聴きやすい美しいピアノの旋律と、ベース、ドラムスは控えめで演じ、やはりそれ程深くなく、又暗くない叙情的曲として迫ってきた。

Espeneriksentriokoncert

 そしてM2."Back To Base"、 M5."Transparent Darkness"など難しさという感覚は全くなく、淡々と演じていていやらしさが無い。ちよっとその点はある意味では物足りないということにもなるかも知れない。
 M3."Dancing Demons"は踊る魔神(守護神)というのだろうか、リズムカルな中にもちょっと伝統的な北欧の地を思わせる。
 アルバム・タイトル曲M4." End Of Summer"は、なかなか美しいピアノの旋律が軽快なリズムにのって心地よく演じられ、やっぱり今回の看板曲なんだろうなぁと感ずるところ。これをやりたかったんですね、ジャズというところを超越している。
 M6."A Long Way From Home"は、タイトルのせいもあるが、何となく物語的世界。それも派手さは無く、しかし暗くもなくて北欧の物語なんだと想像する。
   M7."Reminiscence"は回想と言って良いのか、どこか懐かしさのある抒情性もある世界で、人間性と自然の調和が感じせられる静かでなんとなく哀愁の雰囲気も。

 いずれにせよ、真摯な物語性のある世界で、非常に聴きやすい難しさの無いところに奥ゆかしさのあるアルバムだ。ジャズとしてトリオとしての三者のバトル的世界の印象は薄く、むしろ協調の世界。余計なものをそぎ落とす、というコンセプトがあるとか、所謂アンサンブルの面白さというところでは無いが、音を静かに大切にしての演奏というところを築いている。

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)

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2021年4月11日 (日)

Yuko Ohashi Trio 「KISS from a ROSE」

ピアノ・ソロに近い演奏、トリオの味に欠ける
・・・録音が頼りのアルバム作成
今回のボーナスディスクは前代未聞の「ラフミックス」

<Jazz>

Yuko Ohashi Trio 「KISS from a ROSE」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1096 / 2021

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大橋 祐子 (piano)
鉄井 孝司 (bass)
高橋 延吉 (drums)

2020年12月1日 ランドマークスタジオ録音

  寺島レコードよりの作品群にて、何かと注目を集めてきたピアノの大橋祐子(東京都八王子市出身)の5作目のリーダー・アルバム。とにかく寺島靖国の期待を担っての、メンバーを一新したニュー・トリオによる第1弾となっている。
 前作『WALTZ NO.4』(TGCS-9672/73)は、なんとスタジオ録音とホール録音をペアにしての対比を楽しませて頂いたが、今回は又々驚きの完成ミックス版と、録音時そのままのラフミックス版をペアにしての発売で、これまたおそらくオーディオ好きにはたまらない規格ものになっている。
 更にピアノ・トリオ好きにとっても、これもなかなかの企画で嬉しいのだが、恐らく・・・・と想像しながら聴いたのであったが、少々ここに登場は遅れました。つまりそれにはそれなりの理由があって、その他の傑作の後回しになってしまった。それも以下の感想でお解りになるだろう。

(Tracklist)

01. I Fall In Love Too Easily
02. Pithecanthropus Erectus
03. Englishman In New York
04. Cielito Lindo
05. I'll Be Seeing You
06. Brave Bull
07. After You Left
08. Strode Rode
09. Linna
10. Kiss From A Rose
11. No Rain, No Rainbow
12. Tennessee Waltz Part-I
13. Tennessee Waltz Part-II

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 私の個人的期待はバラード調のM01., M03.,M05., M07.に尽きるのだが、M01." I Fall In Love Too Easily"はオープニング曲で、冒頭からバラード演奏で期待度は高めるに十分。思いのほか情感があってピアノの音にも十分と言える良質の澄んだところにあり、録音はミックス効果というところか、良い線をいっている。
 M03." Englishman In New York"にきて、いよいよと期待したのだが、この曲にはニューヨークの異国人としての哀感があるのだが、どうもそれが残念ながら十分伝わってこない。演奏する音の中にふと優しさが感ずるところが欲しいような。
 M05." I'll Be Seeing You"この曲には期待した。流れに思いやりが感ずるも、もう一歩深入りして欲しい。ドラムスのブラシの音が聞こえてくるが、彼女のピアノばかりが前に出てソロ演奏のように聴こえ、やっぱりトリオとして描き切れていないのでは。
   M06." Brave Bull"彼女のオリジナル曲。一生懸命演奏しているのは解るが、トリオの楽しさと味がやっぱり見えてこない。
 M07."After You Left" これが問題曲。なんとアレッサンドロ・ガラティのアルバム『Shades Of Sounds』の冒頭の曲。なんと比較するには相手がまずかった。冒頭ベースから入って面白いかなぁと思ったが、ガラティの哀愁が滲み出て心情に触れる世界までには一歩至らずだ。メロディーのジャズ編曲された流れ、打鍵音の強弱に音の間という繊細な世界、更にガラティの中盤のベースと築くジャズ世界に対しては、やはり比較は無理があった。
 決定的なのはM12.M13"Tennessee Waltz"で解るのだが、彼女はまだまだ人間の哀愁バラードの世界というのは少々厳しく、M13のようなピアノを思いっきり弾きまくってのトリオとしての構築が好きなんですね。こちらの方が生き生きしていて、そこに魅力を感じたアルバム作りのほうが良いのかも知れない。

 とにかく寺島靖国の期待に応えるべく一生懸命演じていることが解る・・・その解るところが寧ろ残念なアルバムだったのである。どうも諸手を挙げて素晴らしかったと言うには、少々難ありといった平凡作であった。 

(評価)
□ 編曲・演奏  78/100
□ 録音     85/100

(視聴)

 

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2021年4月 7日 (水)

アルボラン・トリオ ALBORAN TRIO 「ISLANDS」

ジャズオーディオ・ディスク大賞2020に輝いたアルバム
・・・トリオ演奏の素晴らしさ満載

<Jazz>

ALBORAN TRIO 「ISLANDS」
自主製作 / IMPORT / ALB001 / 2020

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Paolo Paliaga (piano : Fazioli F 278 Grand Piano MkⅢ)
Dino Contenti (Double Bass, Percussion)
Ferdinando Farao (Drums)

Recorded, Mixed and Mastered by Stefano Amerio

 過去のアルバムが名門Act Music からリリースされ、既に話題になっていたアルボラン・トリオの新作(自主製作盤)である。
 このトリオはリーダーのイタリアのパオロ・パリアーガ(ピアノ)を中心に2005年に結成された。現在のメンバーはミラノ出身のフェルディナンド・ファラオ(ドラムとパーカッション)とディノ・コンティティ(ベース)からなる。このトリオの名前のアルボランは、スペイン・アンダルシア沿岸と北アフリカ・モロッコの間にある地中海の無人アルボラン島に由来しているという。音楽の神秘性を重視し、ヨーロッパ音楽の伝統とアフリカのリズムの魅力に影響された世界を構築するを目指し、彼ら自身のオリジナリティを重視した世界を構築している。
 そして今回の注目は、何と言っても今や人気のエンジニア=ステファノ・アメリオが録音担当していて、マスターからミックス全ての行程に関わっての彼のセンスで作り上げたという代物である、よってその音世界も注目のポイント。そしてそれが功を奏して、「ジャズ批評」誌の「ジャズオーディオ・ディスク大賞2020」のインストゥルメンタル部門のトップ賞(金賞)に輝いている(2021年3月号)。まあとにかく、後藤誠一氏、藤田嘉明氏らがベタ褒めであった。

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1. Les Voix S’En Vont
2. Human
3. Canto Quantico
4. Earth Breath
5. Puerto Natales
6. Multiple Frames
7. In Un Altrove
8. Frug
9. Origine E’La Meta
10. Due Passi Nel Mare
11. Triodiversity
12. Essential Is No Longer Visible
13. Willywaw
14. Arriva Entre Los Picos

 聴いてみてのお楽しみであるが、哀愁を帯びた叙情性と旋律美の香りが襲ってきて、それに加えアフリカの伝統のリズムのニュアンスまでも感じさせるという、さまざまな伝統の音とリズム、そして旋律までも新しい世界観を持った、ジャズ・サウンドが迫ってくる。
 ジャズオーディオ賞ということで、録音の良さがアッピールされてくるが、なになに演奏もトップ・クラス。トリオのスタイルは、各コンポーネントのハイレベルな相互作用が見事で、ソロとなるとこれまた出色の演奏。いずれにしてもバルカン音楽に基礎があって、アフリカの伝統のリズムが何となく響いてきて、それもそれに傾いてしまうのでなく、あくまでもユーロ・ジヤズの色彩に色づけしたニュー・サウンドといった感じである。

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 M3."Canto Quantico"は、神秘的美的広大な世界が見えてくる。
 M4."Earth Breath" の疾走するパーカッション・プレイが聴きどころだが、それに唸るベース、異空間にさそうゆったりとしたピアノと圧巻。
 M5."Puerto Natales" ピアノのその一つ一つの音の余韻ある透明感ある響きは素晴らしい。これがFazioliをもって演奏する心意気なんだろうと聴いてしまう。この曲のドラムスの味付けも素晴らしい。
   M7."In Un Altrove" の前衛性も頼もしい。しかし新メンバーのファラオはいいですね、その軽快ドラムスと重低音のピアノとベースとの対比と融合は聴きどころ十分。
 M2."Human", M8."Frug"のベースのアルコ奏法も特徴的。
 M9."Origine E’La Meta",  M10."Due Passi Nel Mare",M14."Arriva Entre Los Picos"に聴くピアノの旋律も心に響く。
   

   このアルバムの素晴らしさは、トリオ演奏にある。三者がそれぞれ独特な味を持ちながら交錯し融合してゆくところが聴き処だ。それもドラムス、べース、ピアノがそれぞれしっかり定位を持って影にならず聴き取れる録音技法の素晴らしさも加担している為だろう。シンバルの繊細な響き、ベースの深い低音の響き、そしてピアノの硬質にして透明感のある響き、出色である。
 結論的には、オーディオディスク大賞は大賛成のアルバムであった。

 

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     95/100

(視聴)

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2021年3月29日 (月)

マッシモ・ファラオ Massimo Faraò 「Nuovo Cinema Paradiso」

ジャジィーな演奏に期待しないで、ポピュラー的演奏で
・・・エンニオ・モリコーネをトリビュート

<Jazz>

Massimo Faraò 「Nuovo Cinema Paradiso」
~ tribute to Ennio Morricone
Venus Records / JPN / VHCD1286 / 2021

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MASSIMO FARAO マッシモ・ファラオ (PIANO)
DAVIDE PALLADIN ダヴィデ・パラディン (GUITAR #1-6,8,9,12)
NICOLA BARBON ニコラ・バルボン (BASS)
BOBO FACCHINETTI ボボ・ファッキネネィック (DRUMS)
CESARE MECCA (TRUMPET #12)

Recorded at Riverside Studio in Torino on July 21&22,2020

Engineered by Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Produced by Tetsuo Hara

Enniomorriconew  イタリアのジャズ・ピアニスト、マッシモ・ファラオが、マカロニ・ウェスタンで人気を上げたイタリア映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネ(1928-2020)(→)の名曲を、シネマ・ジャズに仕立て上げたアルバム。もともとあまり欧州独特の味というのは無く、又Venusレコードというところで、興味もそれ程無かったピアニストだが、今回のこのエンニオ・モリコーネを取上げたと言うことで、なかなか興味をそそるのも上手というか、商業的にもうまいというか、そんなところに操られて手にしたアルバムである。

(Tracklist)

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  やはり思った通りの一通り演奏しましたという感じの出来だ。いつも思うのだが、彼の演奏にユーロ・ジャズの味がどうも感じない。Venus Records との連携の結果であろうか、今回のように一人の作曲者に絞っているので、その対象が何を描きたかったかというところにほんとに踏み込んで演奏しているのかと、ちょっと疑いぽくなってしまう。作品という感じがしないのだ。

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 ここで前回取上げたマッシモ・ファラオ・トリオのアルバムは、ストリングス・オーケストラとの共演の『Like An Elegant Wine』(VHCD1278/2020)であったが、あれも変化というモノが無く、ポピュラー演奏版といった感じであった。今回もとにかく一通り演奏しました聴いてくださいというアルバムで、ジヤズの面白さというところがあまり感じないアルバムなのである。

 そしてこのアルバムの特徴は、トリオにギターを加えたところだが、それもピアノと交互に旋律を奏でるという手法であまり面白くない。ジャズ・ミュージシャンとしてのアドリブや展開の色づけというところでは、ちょっとそのあたりが見えたのがM2."Il Buono Il Brutto Il Cattivo 続・夕陽のガンマン"であった。
 まあ、ポピュラー音楽的に、多くの誰にも聴けるというところを狙っての刺激の無い演奏というところではこれで良いのかも知れない。
 私が期待したM3."Gabriel's Oboe"、M5."C'era Una Vilta Il West"では、単に旋律をたどった演奏。そしてM10."Playing Love"の「海の上のピアニスト」のテーマ曲、これもあの哀感がもっとあって欲しかった。
  いずれにしても映画音楽であるので、もう少し遊び心の展開と、叙情的なジャズ・アレンジが欲しかったと思うのである。しかしこれは単なる私の希望であって、これはこれで"聴きやすさで良し"とするところもあるのだろうと、取り敢えずVenusレコードの希望に添ったものだったのかもと思うのであった。

(評価)
□ 編曲・演奏   75/100
□ 録音      83/100

(試聴)   このアルバム関係が見当たらないので、参考までに・・・

 

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2021年3月17日 (水)

ステファニア・タッリーニ Stefania Tallini Trio「UNEVEN」

クラシック/ジャズ界で活躍の女流ピアニストのジャズ・ピアノ・トリオ作品

<Jazz>

Stefania Tallini & M.Bortone, G.Hutchinson「UNEVEN」
ALFA MUSIC / Import / AFMC226 / 2020

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Stefania Tallini ステファニア・タッリーニ (piano except 02, 11) (electric piano on 02, 11)
Matteo Bortone マッテオ・ボルトーネ (double bass except 12)
Gregory Hutchinson グレゴリー・ハッチンソン (drums except 12)

Recrded at Forward Studios ,Grottaferrata(Rome) ,2020

  イタリアのステファニア・タリーニ(1966年生まれ)はジャズ/クラシック界双方で輝かしいキャリアと高い評価を得ている20年以上の円熟ピアニストだ。ジャズでは8枚のリーダー作を残してきた。ピアニストであり作曲家としても評価が高い。一方クラシックでは多くのクラシック国際的評価を勝ち取ってきている。演奏のみならず、作曲、演劇曲やサウンドトラックの制作等と活躍の幅は広い。本作は久々のジャズ・ピアノ・トリオ作品。参加メンバーは、ベースにマッテオ・ボルトン(イタリア)、ドラムスは米国より招聘したグレゴリー・ハッチンソン。
 かってのアルバムからみても、このアルバムは彼女のオリジナル曲が主体であり、エレピの登場もあり多彩なタイプの演奏に期待が持てる。

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1.A Twin Thought
2.Uneven
3.Il Sogno
4.Le isole Dei ciclopi
5.In The Night
6.Bluesme
7.Nell'Intramente
8.Inútil Paisagem
9.Triotango
10.Anna
11.In a Cave
12.The Nearness of You

All composed by Stefania Tallini except M8 and M12

  やはり多彩なタイプの演奏がこのアルバムには納められていて、聴く方は単調にならない。端麗にして耽美派な演奏に、ロマンチックな曲もあり、そうかというと自由奔放なアクション攻勢の見られる硬質な三者のインタープレイがあったり、更に瞑想性の曲や、エレピによるファンク調な展開、はたまた牧歌的な世界の色もみせる。

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M2."Uneven" 何故かアルバム・タイトル曲がエレクトリック・ピアノでのファンキーっぽい演奏。
M3."Il Sogno" 優雅な夢か、メロディアスなピアノのトリオ演奏。
M4."Le isole Dei ciclopi" パーカッションを生かしたラテン・ムード展開。
M5."In The Night" 瞑想性のあるピアノとゆったりとしたトリオ演奏。
M6."Bluesme" スピード感たっぷりの攻撃性、破壊性の展開、変調とインプロの展開が入り乱れて面白い。
M7."Nell'Intramente" 物語様のメディアム・テンポ曲。刺激が無く美しく暖かい。
M8."Inútil Paisagem" ゆったりした中に、不思議に刺激性の躍動感。ジャズ特有の世界がシンバルの響きに、そしてピアノの流れが秀悦。
M9."Triotango" タンゴ風とは言うが、典型的なところには至らず。
M.12."The Nearness of You" 最後は真摯に安定感をゆったりとソロ・ピアノで聴かせる。

 しかし、飽きさせないアルバム展開が秀悦。録音も一流で聴き応えある。そう叙情的というところにはない世界。いわゆるパターンは決めがたいが、全編品格があるところが聴かせ処か。M5.M6,M8あたりの曲に注目した、特にM6、M7あたりの関係が見事。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□  録音   :  88/100

(視聴)

*

 

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2021年2月27日 (土)

須川崇志 Banksia Trio 「Ancient Blue」

思索瞑想性とダイナミックな現実性の混在
・・前作より美的詩情性は後退しミステリアスに

<Jazz>

Takashi Sugawa Banksia Trio 「Ancient Blue」
DAYS OF DELIGHT / JPN / DOD-013 / 2021

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須川 崇志 (contrabass except 04, 07, 11) (cello on 04) (electric bass, mbira, bell on 07)
林 正樹 (piano)
石若 駿 (drums, percussion except 11)

  昨年彼らの第1作アルバム『Time Remembered』(DOD-005/2020)をここで取上げたのだが、早、2ndアルバムの登場となった。あの1stを聴いて、「三者の対等にしてスリリングなバトル、美しき詩情性と緊張感ある静かな奥深い心象風景にも迫るという演奏」と実は絶賛したのだが、さてこの2ndではどのような世界に進化しているのか、いずれにしても興味津々。ベーシストの率いる日本ピアノ・トリオということで、期待度も高い。又、彼らについて紹介は既に記したので、そちらを参考にして欲しい。

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(Tracklist)

Txw 01.Blue in Green
02. Nowheresville
03. Ancient Blue
04. Uncompleted Waltz
05. Armeria
06. Jomon Dance
07. Kothbiro
08. Mimoza
09. Trapezoidal Dance
10. Song For Nenna
11. Anemos (solo piano)

 やはりまたしてもジャズの新展開とも言える世界で楽しませてくれる。このアルバムもオリジナル曲を主力に構成されており、3人の高い技術と創造力が生み出すスリリングな演奏が随所に展開し、"主役は3人"というところを地で行った展開は、聴き応えあるアンサンブルを構築している。

 オープニングのM1."Blue in Green"はM.Davisの曲( 前作はB.Evansの"Time Remembered"でスタート)で、ここでこのアルバムのイメージを印象付ける。この手法は前作と同じであるが、M.DavisとB.Evansの違いを印象づけたいのか、この彼らの手法はなかなか面白い。ところがこれを聴いて、どうしても"M.Davis/Blue in Green"(B.Evans作とも言われているが)が頭に浮かばない、それはあの『Kind of Blue』における"Blue in Green"はバラードだが、この彼らの演奏はドラムスとベースのリズム隊が演ずる快テンポ曲、そこにピアノ演奏が主役にならずに対等なアンサンブルと化す。最初から驚かされて次に流れてゆく。
 そしてM2.からM3のアルバム・タイトル曲"Ancient Blue"に進むに、次第に思索世界に沈み込んで行くも、そこに林正樹のピアノがゆったりとしたテンポで、歴史を探ってゆくかのような世界に導いて、彼らの独特の瞑想性を演じてみせる。
 なるほど、このトリオはやっぱり一筋縄では行かない。"心して聴け"と前半は終わる。

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 中盤M4."uncompleted Waltz"は、須川崇志のアルコ奏法か(どうもCelloらしい)、やや優しさを醸し出すも甘さはない。
 私の求める美しい詩情性ある抒情的な世界は、なかなか簡単には現れない。成る程、"Blue"というと、これはどうも重い深い陰鬱な状況の"Blue"なのかも知れない。
 しかし、中盤以降は緊迫のスリリングなアンサンブルを織り交ぜ、時には現れるアクション演奏から、次第に趣を変える。 
 M10."Song for Nenna"に至ると、繊細にして美旋律との世界が林正樹のピアノの音にみられ、その余韻のある世界が哲学的世界に誘い、そして須川崇志のベースがアルコにてにてその流れを支え、次第に遠大な世界に盛り上がる。
 M11."Anemos"はピアノ・ソロで、一音一音が静かに余韻の世界で演じられ、思索的心象風景の世界で幕を閉じる。

 やはり、この今回のアルバムにおいては、いわゆる"美的にさそう抒情性"といった世界は主目的とはならず、アルバム全体としては甘い世界はさておいて、むしろダークな印象につつみながらも、そこに神秘性やミステリアスな世界への構築をしているように思われた。
 彼らの緊張感ある甘さを許さない硬質の世界は、更に磨きがかかっている。もう次に更なる期待を持たせるトリオだ。

(評価)
□ 曲・演奏    88/100
□ 録音      85/100

(視聴)

 

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2021年2月17日 (水)

シャイ・マエストロ Shai Maestro 「Human」

イスラエル風民族音楽的なムードを生かしつつ・・・
実は「彼の思い」が込められたアルバムだ
・・コンテンポラリー度、リリカル度、スリリング度が適度で素晴らしい

<Jazz>

Shai Maestro 「Human」
ECM / Germ. / ECM 2688 089 0670 / 2021

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Shai Maestro シャイ・マエストロ (piano)
Jorge Roeder ホルヘ・ローダー (double bass except 04, 07)
Ofri Nehemya オフリ・ネヘミヤ (drums except 04, 07)

Philip Dizack フィリップ・ディザック (trumpet except 06, 07, 08, 11)

Recorded Feb. 2020, Sudio Studios La Buissonne, Pernes-Les-Fontaines

  ECMの前作『The Dream Thief』(ECM 2616 6771112/2018)にてその素晴らしさを味わったNYシーンで活躍するイスラエル出身の人気急上昇ピアニスト:シャイ・マエストロShai Maestro(1987年イスラエル生まれ)の、ECMでの2作目、前作と同じ彼のトリオに、新たにトランペットが加わってのカルテット作品となっている。

Shaimaestrow  彼のピアノの素晴らしさは、実はAvishai Cohen Trio で気に入ってから注目はしているところだが、ここに来てECMからのリリース2枚目で、私にとっては尚更興味津々と言うところなのである。
  
  彼は、なんと8歳の時にオスカー・ピーターソンのアルバムを聴いてジャズに開眼したとか。そして19歳の若さででベース奏者アヴィシャイ・コーエンのバンドに抜擢されたのだった。2010年に自身のユニットを結成。以来活動を共にし、これまでリリースした4枚のリーダー・アルバム全てに参加するホルヘ・ローダー(b)と、同郷イスラエルのドラマー、オフリ・ネヘミヤ(ds)に、本作では、米国人トランぺッター、フィリップ・ディザックを加えている。

(Tracklist)

01. Time
02. Mystery And Illusions
03. Human
04. GG (tp & p duo)
05. The Thief's Dream
06. Hank And Charlie (p-b-ds trio)
07. Compassion (solo piano)
08. Prayer (p-b-ds trio)
09. They Went To War
10. In A Sentimental Mood *
11. Ima (For Talma Maestro) (p-b-ds trio)

*印以外Shai Maestroのオリジナル曲

 手頃にエスニック風の味付けがある独自のフォーク・ジャズ的と言うかイスラエル民族音楽的トラッド風と言うか、そんなムードが滲み出ているが、なんとなく引きつけられる世界を持っている。
 しっとりとした潤いと透明感溢れるピアノの音が、流れるように演じられ、又一方余韻をもって耽美的・哀愁的情景を描いてくれる。そして独特の異国情緒は今回はトランペツトの響きによって描いているのが特徴。カルテット演奏はドラマティックな展開も織り込んでいてジャズとしての味付けはちゃんとみせる。アルバムを通して聴いてじっくり感動が沸いてくる。

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 もともと私の好みからは、ビアノ・トリオ+トランペットというのは恐らく否定的な方向に感ずる処だ。確かにM4." GG", M5."The Thief's Dream"あたりは、ピアノの美しさがトランペットによって消されてしまう感覚になる。しかし救いは、ECM盤ということで想像していたことだが、全体に寧ろ優しく歌うトランペットであったことだ。
 M2."Mystery And Illusions", M3." Human"で意外だったのは、イスラエル的エスニック風の味付けがやはりあるが、それはなんとトランペットの響きから一番感じられるところなのだ。そこがこのカルテットとした味噌なのかも知れない。
 しかし中盤に入って、M6."Hank And Charlie " M7."Compassion ", M8."Prayer "はピアノ・トリオのみの演奏で、ようやく美しいピアノ、ベースの休まる音、余韻を大切にしたピアノの音から沈着な世界に美しさが漲る(M7はピアノ・ソロで情緒豊か)。又M6.は故ハンク・ジョーンズとチャーリー・ヘイデンの音楽にトリオが敬意を表している。このピアノ・トリオ・スタイルが私好みの世界のだ。
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 ところが、M9."They Went To War" が注目曲、ここでトランペットの素晴らしさに浸れる。"彼らは戦争に行った"・・その苦しさ、哀しさが、静かに演じられるトランペットの音に哀しく訴える心が感じられ感動。これがマエストロの描きたい一つの世界とみた。
 そしてM11." Ima"でこのアルバムは納められるが、そこには、心のよりどころとなる世界を見事にペットなしのマエストロ・トリオが描くのである。ここには民族的ムードは無く、世界に普遍的に未来志向のムードで響く。

 なかなか、したたかなアルバムである。中盤から後半で完全に虜にされた。やはり前作と同様、このシャイ・マエストロとは、ただ者で無い。とにかくスリリングなところも魅せながらコンテンポラリーな味付けがあったり、リリカルな世界があったり、哀愁度と、それが手頃に納める技はお見事と言いたい。そして彼の思いが込められていることに感動した。推薦盤だ。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□ 録音   :  85/100


(視聴)

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2021年1月25日 (月)

ニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Doky 「Improvisation On Life」

ジャズ・ピアニストにしてコンポーザーとしての一つの集大成か


<Jazz>

Niels Lan Doky 「Improvisation On Life」
Rambling Records / JPN / RBCP3188 / 2017

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Niels Lan Doky : piano
Niclas Bardeleben : Drums
Tobias Dall :  Bass

with Debbie Sledge (of Sister Sledge) on Vocals for “Kiss” and Amanda Thomsen on Vocals for “Kærlighed og Krig” (Love and War)

Nielslandokyb   北欧のJAZZシーンでは中堅的存在であるデンマークのピアニスト、ニルス・ラン・ドーキーNiels Lan Doky (→)。ヨーロピアン・ジャズ・ピアノの知名度の高い群に入ってはいるが、どうも私にとっては今ひとつインパクトに欠けていたせいか、過去に於いてそのちょっと変わった名前をどこかで時に見る程度で来てしまっていた。

 昨年末の寺島靖国の人気コンピレーション・アルバムの『JAZZ BAR 2020』に、久々に登場した彼の曲"The Miracle of You"を聴いて、やっぱり少々ピアノの音が軽いが、流麗な演奏には魅力があり、この際一度アプローチしたくなったと言うところだ。
 そこで一気に5枚のアルバムを聴いてみたというところで、ここに最も最新のアルバムを取上げることにした。

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 彼の名義となるピアノ・トリオはメンバーは変わってきているが、かっての"Trio Montmartre" の2001年からの三作『Cafe En Plein Air (カフェ・モンマルトルからの眺め)』(上左)、『Casa Dolce Casa (ローマの想い出)』(上中央)、『SPAIN』(上右) (このトリオはパリのジャズ・ミュージシャンによる日本製作の為のレコーディング・プロジェクトで、ベーシストは、フランソワ・ムータンそして後二枚はラース・ダニエルソンが担当している。ドラムスはジェフ・ボードロー)は、かなり聴きやすいアルバム。

588  そして2011年のアルバム『HUMAN BEHAVIOUR』(BRO 011)(→)、そしてここに取上げた2017年の『Improvisation On Life』と聴いてくると、やはりそこには美旋律を愛するピアニストの心は常に宿っていて、トリオとしてのジャズの醍醐味を追求しつつ、我々の心に響くところは十分の存在だ。特にTrio Montmartreは、トリオ・ジヤズを極めると言うことより、日本向けにヨーロツパの地名に馴染んだ名曲を取上げての優しい演奏になっている。

 さて今作は彼の故郷のデンマークに拘り、更にジャズ・トリオとしての味にも拘ったという代物で、そこに聴きどころが結構あったので喜んでいるのだ。

(Tracklist)
1.Forever Frank (Niels Lan Doky)
2.Man In The Mirror (Michael Jackson)
3.The Miracle Of You (Niels Lan Doky and Lisa Freeman)
4.Kiss (Prince) feat. Debbie Sledge
5.Langt Højt Mod Nord (High Up North) (Niels Lan Doky)
6.Alone In Kyoto (from a movie “Lost in Translation”)
7.Toots Waltz (Niels Lan Doky)
8.Lady Marmelade (from a movie “Moulin Rouge”)
9.Kærlighed og Krig (Love and War) (Burhan Genç) feat. Amanda Thomsen
10.Don't Know Why (Nora Jones)
11.That's It (Niels Lan Doky)
12.Piano Interlude (Niels Lan Doky)
13.How Deep Is Your Love (Bee Gees)

   とにかくインプロヴィゼーション即興演奏が、アルバム・タイトルに出てくるぐらいに、彼らのピアノ・トリオに気合いが入っている。そして冒頭M1."Forever Frank"に自己の早弾きのオリジナル曲をぶつけてきた。しかし相変わらずピアノは名機Bösendorfer 225だと言うが、軽い音である。やっぱりこれは録音法なんでしょうかね、ドラムスの音もバタバタしていてリアル感も少ない。そして気合いが入っている割には、M1.、M2.に感動と言う世界は感じない。
 しかしM3."The Miracle Of You"になってガラっと変わってゆったりとメロディーの生きた叙情性たっぷりの美しいピアノ演奏となる。この曲は聴き覚えのある曲だ。この線でいってほしい。
 ちょっと意外だが、M4."Kiss"はDebbie Sledgeの女性ヴォーカルが入る。ベースの伴奏と相性が良い中低音を主体としたリズム感たっぷりでの歌声、なかなかジャズ心の芸達者なところを聴ける。後半ニルスのピアノはインプロヴィゼーションの展開となる。成る程ジャズを彩りもって楽しもうというところが見える、なかなかの出来。

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 M5."Langt Højt Mod Nord" 原曲のメロディーは意外に素直に演奏されるも、ここでもニルスのピアノは即興を織り交ぜて味付けが楽しい。
 M6."Alone in Kyoto"  異国の地をゆくをイメージさせるピアノの展開からスタートして、落ち着いた世界に。中盤ベースが深く心を静めるいい役割を演ずる。ピアノの美しさも味がある。
 M7."Toots Waltz" ニルスのオリジナル。大半を占めるピアノ・ソロが美しく展開。
 M8."Lady Marmelad" 珍しくピアノの低音から始まって、後半の三者によるインプロの醍醐味に進む。このアルバムの一つの主役曲か。
 M9."Kærlighed og Krig" 女性ヴォーカルの入る二曲目。澄んだピアノの音、そしてAmanda Thomsenの高音のヴォーカルが入ってトラッドっぽく訴えるように広がる。
 M10."Don't Know Why" と M11."That's It " は、ニルスのインプロの世界の緩と急を描く。M11ではドラムスのソロがステックを生かした展開でセンス抜群。
   M12."Piano interlude" ピアノ間奏曲を彼のインストで綴り、M13."How Deep Is Your Love"へと流れる。まさにインプロの楽しさを演じて締めくくる。

 ジャズのアレンジとインプロヴィゼーションの妙を描くアルバムとして作成された印象は十分伝わってきた。彼の長年の携わってきたジャズ・ピアノもこうして多くの要素から成り立っていることも聴きとれた。しかし先に触れたように録音が不満足だ。それでも彼のピアノ・ジャズのこの後への新展開の足がかりになりそうなアルバムとして評価する。

Niels_lan_doky2ネツトに見る・・「ニルス・ラン・ドーキーの略歴」
 1963年、デンマーク、コペンハーゲン生まれ。幼少のころからピアノに親しみ、バークリー音楽院卒業後、1986年にデビュー作を発表して以来、これまでに30枚を超えるアルバムを発表している。デンマークのみならず、アメリカ、イギリス、日本など世界中で演奏経歴があり、パット・メセニーやビル・エヴァンスらとの共演も果たした。演奏技術はもとより、アレンジや作曲能力の高さも評価されており、ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世の前で演奏を披露したり、2010年にはデンマーク国よりナイトの称号も授与されるなど、卓越したキャリアを持つピアニストでもある。ジャズだけに留まらずクラシックやポップスのセンスも兼ね備え、世界中の注目を浴び続ける音楽家である。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100 
□ 録音     78/100

(視聴)

 

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2020年12月29日 (火)

ウォルター・ラング Walter Lang Trio「TENS」

コロナ渦における欧州活動のみの制限から生まれた名曲再演盤

<Jazz>

Walter Lang Trio「TENS」
ENJA Yellowbird / Germ / ENJA9785 / 2020

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Walter Lang : piano
Thomas Markusson : bass
Magnus Öström : drums]

   今年もあとわずかになりました。とにかく今年はCovid-19の世界的流行の年、全てが人類原点に戻っての対応が強いられたような年でした。今だに第三派の波が襲ってきて、本来の活動が取り戻せない環境に甘んじなければならない状態である。これが今年の締めくくりとは情けない現実だ。

 さてそこで今年最後は、そんな事情であるからこそは出来たアルバムを取上げる。それはあの過去の名曲が新しいアレンジで収録で登場した一枚。Covid-19の流行の中、ミュージシャンは活動をいやが上でも制限された。日本でのライブもキャンセル。そこで新生ウォルター・ラング・トリオのセカンド・アルバムとも言えるものの登場なのだ。実はこのウォルター・ラングはなんとドイツ人でありながら、欧州より日本の方に圧倒的に知名度が高い。従って、現在彼は欧州圏内にての活動に制限されたため、まずは今となってドイツにてのプロモーション活動を行わざるを得なかった。そんな事情から、過去の名曲に目を付けここに再出発のような展開をしたわけだ。

 そしてこの2月にドイツにての録音となり、ドイツのジャズ・レーベル enja / Yellowbird Recordsと澤野工房のコラボレーションによるものという結果になったのである。
 又、これもいろいろと私の場合不手際があって、このアルバムの到着が遅れた。従って今になってレビューということになった。
 このメンバーでの前作『PURE』(2019)が良かったため、前作からのドラムスの元E.S.T.のMagnus Ostom もこの刺激の少ない美旋律にどう対応するかも聴きどころだ。

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1. The Beginning And The End
2. Soon
3. Little Brother
4. Meditation in F mi
5. Snow Castle
6. Branduardi
7. Misty Mountains
8. No Moon Night
9. Kansas Skies
10. I Wonder Prelude
11. I Wonder
12. When the day is done

 M1."The Beginning And The End"はアルバム『The Sound of a Rainbow』からだが、タイトルからして何やらこの現状の彼らを物語っている雰囲気ですね。そしてこのアルバムを聴いてみて、アレっこんな曲があったのかと思うのは、彼のトリオ・アルバムというのは刺激の無い優美にして安心感の強い曲だけあって、意外に覚えていないことに気がついた。

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 M2."Soon "のバラッド曲は、アルバム『Translucent Red』からで、私の好きな曲。落ち着いた心の流れを感じ取れる。
 アルバム『PURE』からの2曲、M3."Little Brother "は、7分以上の長曲で、愛情の感じられる曲であり、終盤に高揚してゆくところが聴きどころ。さらにM4."Meditation in F mi"も良いですね。スローな流れの中に、やや不安げな心の描写。
 M5、M6は、いつものラング流の軽い展開。
 アルバム『Starlight Reflections』からは、M7."Misty Mountains "M8."No Moon Night"で、M7.は広大な山岳風景をイメージさせる。M8.は、ちょっと現実離れの不思議な世界に、そして深遠な美しいメロディー。
 M9."Kansas Skies" カントリー・ロックの登場、『FULL CIRCLE』から。
   M10."I Wonder Prelude" ベースの物語からら始まる。なんと不思議な世界へ導かれることか。アルバム『Moonlight Echoes』の締めの曲。

 相変わらず、メロディーとピアノの音からウォルター・ラングと解る優しく何か整った安心感のある世界が展開している。トーマス・マークソンのベースも歌心を展開しているし、マグナス・オストロムもラングの世界にブラシ、スティックなど多彩な音で盛り上げている。特にオストロムはBugge Wesseltoft Trioとの関係もあるので、何かいろいろと微妙なところがありそうだ。かえってラングのもう一つの顔であるTRIO ELFの世界に意外にマッチングが良さそうにも思える、これからラングのトリオもいろいろと変化があるかも知れない。 

 みなさん、良いお年をお迎えください。

(評価)
□ 曲・演奏     85/100
□ 録音       85/100

(視聴)  "Meditation in F MI"

 

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2020年12月21日 (月)

年末恒例の寺島靖国プレゼンツ「Jazz Bar 2020」

ピアノ・トリオ一点張りから、今年はサックスものも登場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2020」
Terashima Records / JPN / TYR-1094 / 2020

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 しかし驚きですね、なんとこのコンピレーション・アルバムは20年の経過で20巻目のリリースとなったことだ。今こうしてみると過去のアルバム全てが棚に並んでいて、私にとっては好きなシリーズであったことを物語っている。

 プロデューサー寺島靖国(右下)は常々「歳と共に変化を楽しみ、常に新鮮な気持ちと興味を維持すべし」と口にしているとか。ピアノトリオへのこだわりは相変わらずだが、オーディオ的好みはその録音やミキシングのタイプにも確かに変化は出てきている彼だ。近年は前へ前へと出てくるリアル・サウンドから、音楽としての臨場感、奥行きの感覚に磨きがかかってきた感がある。
 そして「哀愁の名曲」探しは相変わらずで、我々日本人の心に沁みるメロディーを追求くれている。その為私も好きな欧州系をかなり探ってくれたという印象がある。新世代のミュージシャンの発見にも寄与してきてくれているし、私にも大いに影響を与えてくれたこのコンピレーション・アルバム・シリーズはやはり楽しみなのである。

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01. Night Waltz / Enrico Pieranunzi Trio
02. Elizete / The Chad Lawson Trio
03. Morgenstemning / Dag Arnesen
04. C'est Clair / Yes Trio
05. Tangorrus Field / Jan Harbeck Quartet
06. Danzon del Invierno / Nicki Denner
07. Bossa Nova Do Marilla / Larry Fuller
08. Contigo en la distancia / Harold Lopez-Nussa
09. La explicacion / Trio Oriental
10. Soft as Silk / David Friesen Circle 3 Trio
11. Vertigo / Opus 3 Jazz Trio
12. The Miracle of You / Niels Lan Doky
13. New York State of Mind / Harry Allen

 冒頭のM1."Night Waltz"は、昨年ここでレビューしたエンリコ・ピエラヌンツィのアルバム『NEW VOSION』(2019)(下左)からの曲。そしてM3."Morgenstemning "が北欧ノルウェーのダグ・アネルセンのかなり前の三部作のアルバム『NORWEGIAN SONG 2』(LOS 108-2/2011)(下中央)からであり、この2枚のアルバムが私の所持しているものであった。その他11曲は、幸運にも私にとっては未聴のアルバムからの選曲であり、初聴きで期待度が高い。
 そもそもこのアルバムを愛してきたのは、結構日本にいる者にとって一般的に知られていないモノを紹介してくれていること、又私のジャズ界では最も愛するピアノ・トリオものが圧倒的に多い、更にどことなく哀愁のある美メロディーを取上げてくれていることなどによる。そして初めて知ったものを私なりに深入りしてみようという気持ちになるモノが結構あることだ。更になんとなく欧州系のアルバムも多いと言うことが私の好みに一致しているのである。

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   M1."Night Waltz"と続くM2." Elizete "は、哀愁というよりはどちらかというと優美という世界。
 M3."Morgenstemning" 聴きなれたグリークのクラシックからの曲。ノルウェーのミュージクですね。美しい朝の光を浴びて・・・と言う世界。とにかく嫌みの全くないダグ・アネルセンの細工無しの美。
 M5."Tangorrus Field" (上右) 寺島にしては珍しくテナー・サックスの登場。デンマーク出身のヤン・ハルベック。私はうるさいサックスはちょっと苦手だが、彼の演ずるは豪放と言うが、この曲では何故か包容感のある優しさと幅の広さが感じられ、ピアノとの演じ合いに美しさすらある。今回のアルバムには、最後のM13."New York State og Mind"にはHarry Allenのサックスがやはり登場する。
 M7."Bossa Nova Do Marilla" は、ボサノバと言いながらも、驚きのLarry Fullerのピアノの旋律を演ずる流れはクラシックを思わせる。
 M8." Contigo en la distancia"(下左)、キューバのHarold Lopez-Nussaにしては、信じれないほど哀愁の演奏。いっやーー驚きました。
 M10."Soft as Silk" (下中央)、ベーシストのDavid Friesenの曲。どこか共演のGreg Goebelのピアノの調べが心の奧に響くところがあって、この人の造る曲にちょっと興味を持ちました。ベーシストって意外に美旋律の曲を書く人が多い気がしますが・・。
 M12."The Miracle og You" (下右)、このピアニストの Niels Lan Dokyって、実は名は知れているにもかかわらず過去に聴いて来なかった一人で、今回ちょっと興味をそそる技巧派ピアノに聴き惚れて、興味を持たせて頂きました。

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 今回は大きな獲物に飛びつけたという衝撃は無かったが、やはり寺島靖国の選曲にはやはり優美さ、美しさ、哀愁などはそれぞれにどこかに感ずる処があって、やはり年末恒例でこうして聴くことはベターなコンピレーション・アルバムと言うことことが出来る。
 とにかく20周年の成人となったこのシリーズにお祝いしたいところであった。

(評価)
□ 選曲、演奏           88/100
□ 録音(全体的に)      85/100

(参考試聴)

jan Harbeck Quartet "TANGORRUS FIELD"

*
Dag Amesen  " MORGENSTEMNING"

 

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