ピアノ・トリオ

2017年3月14日 (火)

ヘルゲ・リエン・トリオHelge Lien Trio「GUZUGUZU」

ノルウェーから極東日本との更なる深まりが・・・・・・

<Jazz>

Helge Lien Trio「GUZUGUZU」
ozella music / GERM / OZ070CD / 2017


Guzuguzu

Helge Lien(p)
Frode Berg(b)
Per Oddvar Johansen(ds)

All music composed by Helge Lien
Recorded and Mixed on Raimbow Studio , Oslo, Sept.2-4 2016

 ノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・トリオによるニャー・アルバム。彼のカメラ好きによる写真ジャケのアルバム『Natsukasii』はインパクトがあったが、あれは2012年だったんですね。あのアルバムの抒情性に惹かれてから彼のファンになってしまった。それも私のカメラ好きと、なんとピンク・フロイド好きが彼と一致していることもあって、なお共感してしまったと言うことなんです。
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 その後このトリオのドラマーは、ペル・オッドヴァ―ル・ヨハンセンに2013年に代わった。そしてアルバム『Badgers & Other Being』発表して2014年に来日。その際には新潟県のライブ会場での一コマで、屋外で彼と一緒に皆既月食を観たり撮影したのを思い出しますが(8, Oct, 2014)、あのアルバム以来3年ぶりの新生ヘルゲ・リエン・トリオ第2弾(通算5作目)だ(今回のカヴァー・デザインは替わって、リエン作ではないですね)。
 そしてこの4月は、またまた来日公演のスケジュールとなっている。

Trio2

 日本好きのヘルゲ・リエンとは言え、アルバム・タイトル”Natsukasii懐かしい”で驚かされたが、今回アルバムは下のTracklistを見てのとおり、なんと日本語の擬音言葉を曲名として創作されたオリジナル曲によって構成されたものとして登場となった。

(Tracklist)
1.Gorogoro (thundering)
2.Guzuguzu (moving slowly)
3.Nikoniko (smilling
4.Garari (completely)
5.Jasmine
6.Chokichoki (cutting)
7.Kurukuru (spinning around)
8.Shitoshito (raining quietly)


Hl1w M1.”Gorogoro”って"thundering"って言うのですから雷鳴ですかね?。転がるようなピアノ演奏、ベースのアルコ奏法による黒い雲の襲うイメージ、そんなところで聴くと面白いのだが・・・・それにしては美しすぎるか。
 M2.”Guzuguzu” ("moving slowly"の意味というのもちょっと"?"だが) これはピアノとドラムスの掛け合いが面白い。

  彼は、ミュージックというものに関わることになったのは、ピンク・フロイドがその大きな因子であると何時も語っている。
  彼のオリジナル曲、そして演奏は、ある時は郷愁的優しさのあるメロディーを聴かせ、またある時はやや前衛的なスリリングな味つけをしてインパクトの効いたドラマティック展開を聴かせる。伝統的ジャズ手法による美に加えインプロヴィゼーションによる革新性(何方かが言っていた言葉ですが私は納得)を追求するタイプだ。今回のアルバムもそんな因子を持って迫ってくる。写真で言えばややスモーキーな柔らかい像とコントラストの効いた堅めの像との絶妙な交錯といった感覚でその点が上手い。

 M3.”Nikoniko” (smilling) は、なかなかピアノ表現が難しいと思うが、優しいピアノの音が響く印象の曲に仕上がっている。
 M5.”Jasmine”は、この中でも趣向が変わって異国情緒。
 M6.”Chokichoki” (cutting)や M7.”Kurukuru” (spinning around)の躍動感と陰影とがドラマチックで、叙情性とは別物。彼らのこれからの一つの方向性を感じさせる演奏だ。
 M8.”Shitoshito” (raining quietly) しっとりとした雰囲気でアルバムを納めるのである。

      *          *

 とにかく、今回のアルバムはテーマがユニークそのもので(ウォーターズのピンク・フロイドの頃の手法も感ずる)、何か一歩脱皮というか、壁を破りたい試みというか、前作もそうだったがヘルゲ・リエン・トリオとしての挑戦も感じられる。それは平坦な叙情にのみ収まりきれない何かエネルギーの発露を求めたような印象を持つのである。

(参考視聴) このニュー・アルバム関係は見つからなかったので・・・・参考までに前作から

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2017年2月28日 (火)

アレッサンドロ・ガラティAlessandro Galatiのニュー・アルバム「COLD SAND」

 アレッサンドロ・ガラティ・トリオが澤野から登場

 澤野工房であるから、北見柊のライナーが付いている。そして・・・・

Listen to the silence -静謐を聴け
彼方なる天より滴る美音の雫
イタリアが生んだピアノの魔術師
Alessandro Galati が創造する「音時空」

 ・・・・と、言う発売前の宣伝文句に圧倒されますね。これがほんとなら絶対に買いです(笑)。

<Jazz>
Alessandro Galati Trio 「Cold Sand」
ATELIER SAWANO / JPN / AS 155 / 2017

Coldsand

Alessandro Galati: piano
Gabriele Evangelista: bass
Stefano Tamborrino: drums

Recorded on 13,14 September at Artesawano, Cavalicco, Udine, Italy

(Tracklist)
01. Cold Sand
02. Mob Sick
03. Lucy's Eyes
04. Nina
05. Nothing Much to Say
06. Schosty
07. Here, There & Everywhere
08. Here
09. There
10. Everywhere
11. Nowhere
12. Uptown

 前回のイエローのアルバム・ジャケから今回は薄ブルーですね。アルバム・タイトルの「Cold Sand」そのものです。
 とにかく今回のアルバム、個々の曲は勿論それぞれ素晴らしいが、とにかくアルバム・トータルに私は絶賛してしまう。”澤野工房よくやってくれました”というところ。
 私はアレッサンドロ・ガラティは、あの1994年に録音したクラシック・カーのジャケ・アルバム『Traction Avant』に痺れてからのお付き合いだ。今作はあの作品は私の場合勿論リアルタイムではないのですが、20年経ってのものなんですね。私にとってはいよいよ彼のトリオの最高峰に到達した感があります。ここに来るまでには彼のアグレッシブな実験作もあって、それを乗り越えてこのアルバムに到達した嬉しさは格別である。
  ライナーの北見柊の表現する「透明感のある音色、空間の広がりを感じさせる演奏、そして何より、我々の琴線に触れるオリジナルのメロディ・ライン」という当にその世界である。

Trio

 収録曲12曲、M07”Here, There & Everywhere ”はLennon-McCartneyの曲で、それ以外10曲ガラティのオリジナルである。
  とにかく全編哀愁に溢れたピアノの音とメロディが、なんと言えない空間を持ちながら心の奥に滲みこんでくる。
 M8.” Here ”、M09. ”There” などが典型的だが、ベ-スとドラムスがピアノの響きを浸透させてワンテンポ遅れて畳み込んでくる。この絶妙なタイミングもたまらなく快感だ。いっやーー、そして確かにこの深遠な世界は久々の感覚になる。
 又M01. ”Cold Sand”、M05. ”Nothing Much to Say”のメロディー・ラインはもうたまらなくその流れに浸りきれる。

 これはおそらく日本のガラティ・トリオ・ファンを意識してのサービス作品集ではないだろうか?、それ程日本人である我が心に響くのである。
 そして今年はまだ早いのに、今年度のナンバー1に取りあげられることになるだろうと思う快作である。 ユーロ・ジャズに傾倒していて、こんな一枚に出会えることはほんとに幸せを感ずる。

(参考視聴)

(試聴)

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2017年2月25日 (土)

チャンピアン・フルトンChampian Fulton 「After Dark」

アメリカン・ジャズの楽しめる道に浸る・・・・

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(Champian Fulton)

<Jazz>
Champian Fulton 「After Dark」
Gut String Records / U.S / GSR022 / 2016

Afterdark

Champian Fulton (piano and vocals)
David Williams (bass)
Lewis Nash (drums)
Stephen Fulton (trumpet & flugelhorn) tracks:1,4,6,7

 オクラホマ州出身のまだまだ若い(1985年生まれ)女流ジャズ・ピアニストにしてヴォーカリストのチャンピアン・フルトンの純アメリカ的ジャズ・アルバム。最初の1曲目からミュートを効かせたトランペットがムードを盛り上げる。ニューヨーク・タイムズでも彼女のことを「メインストリーム・ジャズ・シーンにおいて、魅力溢れる若きディーバ」と評されたとか。
(ただしこのアルバム・ジャケ、洗練されたところの感じないちょっとダサいところが少々難ですが・・・・・)

 これは彼女のピアノ・トリオ作品でも有り、それにStephen Fultonの trumpet と flugelhornが4曲に加わっているが、このトランペッターは多分父親なんですね。そんな微笑ましいアルバムだ。そしてそこに彼女のヴォーカルを乗せていて、NYのナイトクラブの雰囲気を味わえる作品といったところ。それはもともと彼女はSarah Vaughan、 Billie Holiday、 Helen Humes を聴いて育ったという話からも押して知るべしであろう。

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 ブルースの女王Dinah Washington によってポピュラーになった歌を集めたアルバムということだが、チャンピアンは、ピアノを弾き語りで主としてピアノ・トリオ・ジャズとして聴かせてくれる。Dinah Washington はブルースと言ってもジャズ畑での活動であったわけで、その流れを十分汲み取って、これは完全なジャズ・アルバムとして仕上がっている。

 しかしどうもチャンピアンの声の質とその独特なやや粘度の高い発声テクニックは、私好みのところとちょっと違っているんですが、しかしむしろ演奏面でしっかりアメリカ感じ取れるところに楽しませてもらう因子がある。だいたい曲の中盤はトリオ演奏を楽しむパターンで、ピアノ演奏も気分良く聴けて解りやすいので、これでジヤズの原点的良さも知ることが出来るのだ。特にM10.”Baby Won't You Please Come Home”あたりはその典型ですね。又M11.”Midnight Stroll”は、これはインスト曲で、よき時代のジャズの雰囲気をたっぷりとピアノ演奏を中心に聴かせてくれる。

(Tracklist)
1. Ain't Misbenhavin'
2. That Old Feeling
3. What a Defference a Day Made
4. Blue Skies
5. Keepin' Out of Mischief Now
6. A Bad Case of the Blues
7. Travelin' Light
8. Mad About the Boy
9. All of Me
10. Baby Won't You Please Come Home
11. Midnight Stroll

 彼女のアルバムは既に何枚かあって、ヴィーナス・レコードが扱っていたんですが、これは彼女名義のレーベル作品であるところをみると、ヴィーナスとの関係は打ち止められたのか、日本離れ?ちょっとそのあたりは確かな情報はない。

(試聴)

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2017年2月 4日 (土)

コリン・バロンColin Vallon ニュー・アルバム 「Dance」

リリカルにしてアンビエントな世界を構築してはいるが・・・・

<Jazz>

Colin Vallon Patrice Moret  Julian Sartorius 「Dance」
ECM / GERM / ECM 2510 / 2017

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Colin Vallon: piano 
Patrice Moret: double bass 
Julian Sartorius: drums 
Recorded February 28-March 1, 2016 at Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano.
Produced by Manfred Eicher

 既に何度か取りあげたローザンヌ(スイス)生まれ(1980年)の新進気鋭ピアニスト、コリン・バロンのピアノ・トリオ・アルバム。2006年の『Les Ombres』以来の5作目、話題のECMからは3作目のアルバム。今作も前作と同じトリオ・メンバーによるもの。

 これは完全に前作『Le Vent』(2014年)の流れからのアルバムだ。オープニングは落ち着いた低音によるやや暗めの印象のピアノとベースで深くリズムを刻む曲M1." Sisyphe"で 、これは意外に私の好奇心をくすぐる。
 そして期待の曲M2. "Tsunami"は、これは"うねり"と訳した方が良いのか?、アルバムタイトルが「Dance」(躍動?)であるから、多分そうかも知れない。ピアノそしてベースで刻むリズムでやや不安感のある世界を築きながら、その雰囲気を盛り上げつつ、中盤からはピアノの旋律も美しく響く。
 相変わらすバロンのピアノ・プレイが中心ではあるが、そのピアノを主として聴かせるというパターンとは少々異なる。トリオとしてパトリス・モレのベースは、多彩な手法で効果をあげてくる。そしてこれは録音によるところもあると思うが、左右のスピーカー両範囲に広がって位置しているジュリアン・サルトリウスのドラムス・シンバルの音は、常に繊細で好感が持てる響きである。その3者の交錯によって、これは一つのアートであるという形をとっている。そんなところでM9. "Tinguely"等にみるように次第に盛り上げていくところは一つの意志を感ずるところだ。

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 しかしピアノ・トリオはどうしてもピアノのウエイトが高い。従ってそこが曲では多くを左右するのだが、M7. "Kid" 、M10. "Morn "のようにピアノの音は一音一音響かせてその余韻によって一つの世界を描くパターンは私は好きだ。
 しかしM2. "Tsunami"から始まって、前半の多くの曲のように、同音の鍵盤を左手で何度か叩きながらバックのリズム作りをしたり、又は一方右手でのメロディーをも同様に反復演ずるところ、つまり彼らも所謂”ミニマル・ミュージック”を探っているのか?、その辺り、ちょっと私個人的には諄(くど)くて頂けない。
 
 全体に静かで陰性のリリカルな流れを構築しているアルバムだが、今回はミニマル奏法が邪魔して、あまり私好みの「絵」に填まってくれなかった。しかし決して否定するアルバムではない。彼らの以前にも紹介した2ndアルバム『Ailleurs』を聴いてみると解るが、今回のこのアルバムは、前作同様「ECM世界」を意識しての構築されたものとみて良いのだろう(実は前作との違いを殆ど感じない)。そこでもう一つこの世界の縛りから一歩脱してフリーなところに身を置くと、実は面白いトリオであると思って期待しているのだが、どうだろうか。

(Tracklist)
1. Sisyphe
2. Tsunami
3. Smile
4. Danse
5. L'Onde
6. Oort
7. Kid
8. Reste
9. Tinguely
10. Morn
11. Reste (var.)

(視聴) ”Tsunami” from 「Dance」

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2017年1月31日 (火)

ティエリー・マイヤールTHIERRY MAILLARD「 Il Canto Delle Montagne 」

抒情派でなく、小気味よい跳躍する端麗タッチのピアノ・トリオ

<Jazz>

THIERRY MAILLARD「 Il Canto Delle Montagne 」
ILONA RECORDS / FRA / AD3689C / 2016

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Thierry Maillard (piano)
Dominique Di Piazza (electric bass)
Andre Ceccarelli (drums)

Recorded at Studio de Meudon - April 2016

 いっやー、しかし美しい山容の写真のジャケですね。見入ってしまいます。これぞLPのジャケでじっくり見たいと言ったところです。

Thirry_m それはさておきこのアルバムは、16曲中14曲、ピアニストのティエリー・マイヤールThierry Maillard (1966年フランスのPuteaux生まれ。→)のオリジナル曲で占められたアルバム。
 そして各曲それぞれにメロディーが明瞭で非常に聴きやすいところがある。彼はフランスの正統派ピアニストとしての名声を博している人物だ。しかし私はこれまでにその恩恵に与ってきておらず、今にして縁あって聴いているといったところ。

 さてこのアルバム、一見優しそうな曲仕上げかと思いきや、なかなか技法を凝らしてのトリオ演奏が難解に迫ってくるところもある。特にピアノ・トリオとしては、まずは歯切れよく跳躍的にしてメロディアスなタッチのピアノが、どちらかというとダイナミック・パターンでイキイキと旋律を歌いあげるのだが、それにディ・ピッツアDominique Di Piazza のelectric bassも華を形成して健闘し、そしてチェカレリAndre Ceccarelliのdrumsも洗練されたリズム取りをみせての貢献度大で、トリオとしての形に風格すら感ずるところに仕上げている。

 一部、現代ジャズ的なハードなところで迫ってくると思いきや、M11. "Mamallapuram "は流麗にして快いところを見せ、更にM6." Irish Ghost"そして M7. "Le Chateau Des Sirenes"や M8. "Plus Jamais Pareil"、M13. "Lullaby" と中盤は非常に聴きやすくロマンティックにして美しいメロディーを聴かせるピアノで納得の世界。
  最後のM16. "A Paris"は、かなり3者のアクティブな面を聴かせてこのアルバムを占めるのだが、彼らの本質はここにあるのかも知れない。
 4-5分ぐらいの比較的短い曲で占められ16曲と多く、それぞれ変幻自在な変化も示すので、聴きようによってはちょっと振り回されるところもある。
 
(Tracklist)
1. Il Canto Delle Montagne
2. Le Temps Qui Passe
3. Sultan
4. Valse Sentimentale
5. Hymne
6. Irish Ghost
7. Le Chateau Des Sirenes
8. Plus Jamais Pareil
9. US Folk
10. My Own Jazz
11. Mamallapuram
12. Reunion
13. Lullaby
14. Viking Song
15. Le Lac De Come
16. A Paris


(視聴)

 

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2017年1月27日 (金)

イヴァン・パドゥアIvan Paduart Trio 「Enivrance」

洗練されたジャズ・ピアノの美しさと安定感の世界

<Jazz>
Ivan Paduart 「Enivrance」
Mons / GER / MR874578 / 2015

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Recorded on Decem.20 & 21, 2014
Ivan Paduart(p)
Phillippe Aerts(b)
Hans van Oosterhout(ds)

Ivanpaduart300x300 日本でもなかなか惚れ込んだファンも結構多いと聞くベルギーが誇る名ピアニスト、イヴァン・パドゥアIvan Paduart(1966年ブリュッセル生まれ。→)の近作。
 これは常連のベースとのトリオ作品で2015年リリース。昨年取りあげる予定が諸々後回しになって年を越して今回登場。それも結論的に非常に癖の無いアルバムで、そんなところから後回しになってしまっていた。

 このトリオのリーダーのパドゥアは、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、フレッド・ハーシュを尊敬しているというところで、80年代から本格的な活動を開始している。既に何枚かのアルバムがリリースされているが、尊敬者の流れを感ずるアメリカン・ジャズのエッセンスを持って、ユーロ系の味付けジャズという感じである。現在では流麗なピアノ・プレイでフレッド・ハーシュに近い感じを受けるのだが。

 非常に美しい即興演奏をかなり得意としているようなパターンで、ムード、技法的にクラシックとの関わり合いも感じさせる音楽性である。

 スタートのM1."Eruption"で、如何にも嫌みとか、特異な刺激性というもののない洗練された世界を感じ取れる品のある流麗なトリオの流れに好感を持って対峙できる。
 M3."Paresse Infinie"も何か人生を説得されたところに置かれたような不思議な感覚になるという演奏。
 アルバム・タイトル曲のM7."Enivrance"は、ゆったりと物語調の旋律をピアノで流しつつ、これぞ心に安定感・安堵感を持たせる世界を構築してみせる。

 全体には、それほどのめり込んで聴き込むというので無く、部屋に流れていると何となく落ち着いたところに抵抗なく居られる。・・・・というそのあたりの洗練された味わいが何とも言えないところだ。これもジャズの一つの道と言いたい。

(Tracklist) 
1.Eruption
2.Boyhood
3.Paresse Infinie
4.Molo Molo
5.Dreams Ago
6.Archipels
7.Enivrance
8.Sabayon
9.Lambertinade

(視聴)

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2017年1月12日 (木)

ウォルター・ラングのもう一つの顔=TRIO ELF 「MusicBoxMusic 」


新世代感覚のテクノ・サウンドをベースにしたピアノ・トリオ作品

<Jazz>
TRIO ELF 「MusicBoxMusic」

Yellowbird / GER / YEB77652 / 2016

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(TRIO ELF)
Walter Lang : piano
Gerwin Eisenhauer : drums
Peter Cudek : bass

 あの優しく美しく伝統的ピアノ・トリオを演じてくれるドイツのウォルター・ラングWalter Lang 、彼の奏でるピアノの透き通った音色はロマンチシズムに満ちた世界を感じさせてくれる。それは何とも言えない心地よさだ。
 その彼の結成しているウォルター・ラング・トリオ(近作↓参照)とは別に、彼にはもう一つの顔がある。それがTRIO ELFである。

  (参照)ウォルター・ラング・トリオWalter Lang Trio 「Moonlight Echoes」(2015)

Trioelfw_2  このTRIO ELFは、ピアノ・トリオをベースに、ドラムンベースやテクノ的なエレクトロ・サウンドを操るとう超現代的トリオ演奏を展開する意欲作を演ずる(10年前に結成)。

 とにかくあのウォールター・ラングが優しく端正な美的な世界から、一歩発想を変えての一つの創造的挑戦的世界なのである。
 しかしこのアルバムを聴いてみると、ラングの透明性にしてロマンチシズムに溢れた演奏はところどころに顔を出し、何故か聴く者をほっとさせるのではあるが・・・・・?。
 しかしその美しさと対比してのやや緊迫感のある展開を示すM7.” Usain”などは、そのこうする二面性の存在の意味とその目的に簡単には納得するのは難しい。
 M8.”Lullaby for a weaking child”では、そこに聴けるラングのピアノは何時もの彼の特徴の粘質で無いさっぱりとした美的抒情性をもって聴かせてくれる。このあたりは納得だが。
 しかしM10.”Stadium”のピアノの重低音でのスタートで、続く展開はテクノ的リズムでの進行、この意味はあまり解らない。
 M11.” Suq”今度は Bassの重低音でスタートするが、その後の軽い展開が不可思議。あまり魅力が感じられるという曲でない。

 やっぱりおおよそその展開が奇妙で、なんだか目的がよく解らない。この異種の共存があまり彼の演ずるところとの意味づけにどんな位置づけになるのか疑問を感ずるのだ。挑戦は解るがちょっと中途半端と言わざるを得ない。

 結論的には、そんな中にもやっぱりトリオとしての味を追求している事の意義を持っていることは事実だ。そうしたところに興味のある者は聴いてみても価値はある。ただしほんとにこれが、参照として挙げたWalter Lang Trioの「Moonlight Echoesに惚れ込んで聴く人を魅了するのだろうか?ちょっと疑問の世界であった。

(Tracllist)
1. Emptiness
2. Krumm
3. Prléude to ELF Police
4. The ELF Police
5. Tripolis
6. Salutation to the Sun
7. Usain
8. Lullaby for a weaking child
9. Dance da Fita
10. Stadium
11. Suq

(視聴)

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2017年1月 8日 (日)

ロベルト・ボナティROBERTO BONATI TRIO 「BIANCO IL VESTITO NEL BUIO」

圧巻!トリオのスリリングな抽象音の展開

<Jazz,  Free jazz>
ROBERTO BONATI TRIO 「BIANCO IL VESTITO NEL BUIO」
Parma Fronntiere / Italy / PF CD001 / 2012

Bianco_2

Recorded Live at the Festival Verdi/ParmaJazz Frontiere festival in Teatro Regio, Parma(Italy) on Oct. 21, 2011

Alberto Tacchini (piano)
Roberto Bonati (acoustic bass)
Roberto Dani (drums, percussion)

Rb これも寺島靖国のアルバム「for Jazz Audio Fans Only Vol.9」(2016)から知ったアルバム。

  リーダーはイタリア・ジャズ界のベーシストであり作曲家にして音楽の研究家といったほうがよいロベルト・ボナティRoberto Bonati(→)だが、どうも2011年にイタリアにおける二つのジャズ・フェスティヴァルのコラボによって結成を為しえたピアノ・トリオのようだ。
 しかしこれがフリー・ジャズ世界のインプロヴィゼイション指向のトリオによるスリリングにして、しかもECM的世界を描く圧巻のアルバム。凄いところはそれが叙情性すら感じさせるところだ。既に5年前のアルバムなのだが、今にして納得している私である。

Albertotacchini ライブものであるが、録音が又素晴らしく良い。トリオのそれぞれの楽器の響きが手に取るように迫ってくる。そして三者それぞれに優劣無く一つ一つの音を重要視して曲仕上げをしている。こうした様は3人の演奏の技術的レベルの高さがなければ成り立たないところで、更にその上に音楽というものに研究家としての造詣が深いと言うことが解るのだ。

Robertobonatitrio スタートのM1.”Tacea La Notte Placida ”からあっという間にこの世界にのめり込まされる。それは5曲目にやってくるアルバム・タイトル曲” Bianco Il Vestito Nel Buio ”(暗闇に揺れる白いワンピース)という異様な空間に、余韻を生かした音によって導かれるのだ。
  M4.”Settembre ”は、多分”九月”の意味だろうが、ふと淋しさを感じさせる演奏に陶酔するのは私だけの感覚だろうか。
 M7.” Lacrymosa”のピアノの描く哀れにして悲壮な美しい叙情性にも感動だ。
 こんなムードは、このようなライブものであると、拍手が意外に気分を壊すのだが、なんと全曲終わった時のみ拍手は収録されていて、このあたりのアルバム造りにもセンスが感じられた。

(Tracklist)
1.  Tacea La Notte Placida
2.  MiserereII
3.  End Of March
4.  Settembre
5.  Bianco Il Vestito Nel Buio
6.  Early Morning
7.  Lacrymosa

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15895280(参照) Roberto Bonati の近作

Roberto Bonati, Bjergstred Jazz Ensemble
「Nor Sea  Nor Land  Nor Salty Waves :  a Nordic Story」
(PARMA FRONTIERE / ITA / PFCD003 / 2016)
 ノルウェーのビックバンドとコラボし、実験色の強いシンフォニックな色合いを付けたジャズイなアルバム。私にとっては難解のフリージャズから現代ミュージック調のもので、トラッド風の曲も感じられるが、安易な気持ちでは寄りつけない。
1. Prophecy of the Völva
2. Nor Sea, nor Land, nor Salty Waves - Part I
3. Nor Sea, nor Land, nor Salty Waves - Part II
4. Wolves’ howling and Swans’ Song
5. Fimbulvetr
6. Wolf Age and Bloody End
7. Nocturnal
8. Eagle

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(視聴)

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2017年1月 4日 (水)

今年の酉年にちなんで・・・ブッゲ・ヴェッセルトフトBugge Wesseltoft 「TRIALOGUE」

その道の達人による未来志向のジャズとは・・・・

<Future Jazz>
Wesseltoft Schwarz Berglund 「TRIALOGUE」
Jazzland / nor / 060253786601 / 2014

Trialogue1

Recorded at Schloss Elmau Feb 2014
Bugge Wesseltoft(p), Henrik Shwarz(computer), Dan Berglund(b) 



 酉(とり)年にちなんで・・・・十二支の「とり」は、「鶏(ニワトリ)」の事になるようだが、まあ拡大して「鳥」ということでは、なんと言ってもこのジャケのアルバムだ。
 もともと「酉」の意味は、”果実などが極限まで熟した状態”を言うようで、従って”物事が頂点にまで極まった状態”を言っていることになる。しかしそんな意味でもこのアルバムの価値を見いだせるのである。

Trialogue2 これは2014年リリースだが・・・・今年新年早々に頭に浮かんだ。とにかく強烈なインパクトのあったものであり、今になったが是非とも記録しておきたい。
 しかしこのタイプのジャズは何と言えばよいのろうか?、フューチャー・ジャズと言う言葉があるが、これも漠然としている。とにかくエレクトロ・アコースティックでアンビエントな世界に、それに止まらずスリリングな味付けの中に抒情性すら感ずるという演奏が見事なアルバムだ。

 とにかくドイツ・ベルリンの奇才エレクトロ・ジャズのヘンリク・シュワルツHenrik Shwarzに、ノルウェー・オスロのジャズ・ピアニストのブッゲ・ヴェッセルトフトBugge Wesseltoftが合体、そこにスウェーデンのあのE.S.T.で知られたベーシストのダン ・ ベルグルンド Dan Berglundが合流したんですから、それはやっぱり単なるトリオでなく未来志向の快作になるのは推して知るべしであった。
 又ブッゲ・ヴェッセルトフトは、昨年秋に来日、それも5人の女性を引き連れての再興プロジェクト「ニュー・コンセプションズ・オブ・ジャズ(NCOJ)」2016年版として話題をさらった。しかし彼は私好みとしては、クラシックのイメージすら感じさせる『it's snowing on my piano』(1997, 2013再発)『Songs』(2012)のようなソロ・ピアノのアルバムもあり、更に、同郷のシゼル・アンドレセンとのコラボレーションも印象深く、非常に不思議な人だ。

Wsbjoach

 そしてこのアルバムは非常に録音もリアルで良好。スタートM1.”Interlude”は、我がオーディオ装置が壊れたかと思わせる不思議な雑音様のコンピューター・サウンドを交えて、ピアノが深遠な世界に導く。しかしこうしたテクノ系にしてはベースはアルコ奏法を交え不思議な世界に導き、ピアノの調べは極めて叙情的で美しい。このテクノ感覚の斬新さにクラシック調の演奏がかみ合って聴くものを引き込んでいくのだ。曲はインプロヴィゼイションの流れを取り込んでの彼らのオリジナルもので効果を上げている。又曲によってヴァイオリン、ビオラ、チェロなどが加わって一層クラシック・ムードを盛り上げる。
 ピアノ・トリオを愛する者にはテクノ指向は実は受け入れないところと思うのだが、何故かこのアルバムはおそらく抵抗なく入ってしまうのではと、私自身がそうであったことから想像してしまうのだ。それ程異色快作であった。

(視聴)

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2016年12月25日 (日)

ラーシュ・ヤンソンのニュー・アルバム=Lars Jansson Trio 「MORE HUMAN」

何か達観した人生から聴こえてくるようなピアノ・トリオの世界

<Jazz>
Lars Jansson Trio 「MORE HUMAN」
Spice Of Life/Savvy / JPN / SOLSV-00371 / 2016

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All tracks composed and arranged by Lars Jansson
Recorded on March 26, 27 2016 at Sweden

ラーシュ・ヤンソン/ Lars Jansson: Piano
トーマス・フォネスベック/ Thomas Fonnesbeak: Bass
ポール・スヴァンベリー/ Paul Svanberg: Drums

Lj1 北欧スウェーデンの今や大御所ジャズ・ピアニスト、ラーシュ・ヤンソンLars Jansson(1951年~)は、このところ何度となく日本を訪れ、ピアノ・トリオ・ファンを魅了し、そして多くの日本ファンを獲得してきている。(私にとって強烈なインパクトがあるというタイプではないのだが)
 そんな時についにサービス満点のセルフ・カヴァーと言うか(自己の作品の中から選曲してのベスト盤というのでなく)新録音盤つまり現在の気持ちでの演奏版集がここにお目見えした。それもなんとどうもこれは日本側での企画のようであるところが味噌。

 彼の演奏はもともと美旋律にして拘りのない曲展開で、大いに聴きやすい演奏が特徴であるが、今回のアルバムは、自分の取り巻きの近親者への愛情を心から描ききったものらしく、一段と語りかけるような愛情の感じられる作品の印象が強い。
 しかもジャケ・デザインは孫娘のヒルダの描いたもので、そのあどけない可愛い彼女のPhotoもカヴァーに登場させており、又このアルバムの中には、彼女へ捧げた曲も収録という心のいれようだ。

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 スタートM1.”A Beautiful Smile ”の親しみやすいメロディーと澄んだピアノの音でまず喜ぶ。
 M3.”Too Good To Me”いっやー、この優しさ溢れた美しい曲にはうっとりですね。
 M4.”More Human”はヤンソン節と言える名曲。
 愛孫娘へのM6.”Hilda Smiles”、M12.” Hilda Plays”などの人間愛の曲。
 その他、M5.”There Is A Butterfly In My Room ”は若干印象が違って、軽快中に演者3人が楽しんでいる様が目に見えるような曲。
 M11.”Mothers In Brazil”も美しさそのものを演じきっている。
 とにかく心を解(ほぐ)してくれるムードに充ち満ちた優しさ溢るるアルバムであると同時に、その中にはちらっと熟練されたピアノ・プレイの味があってうなづいて聴いてしまう。

 シャズ・ピアノ・トリオに期待の寄せ方はいろいろとあって、スリリングとか異次元世界への誘導とか、心をえぐるような鋭さとか、夜の深遠なムードなどと、期待するところも多種でそんな世界も私は好きなのだが、それとは全く別物でこのようにさらっとした清々しい優しさの美しさというところも良いものだ。私にとっては年末には気持ちの整理には相応しいニュー・アルバムであった。

(Tracklist)
1. A Beautiful Smile *
2. I am That 
3. Too Good To Me 
4. More Human
5. There Is A Butterfly In My Room 
6. Hilda Smiles 
7. Summer Song *
8. The Wounded Healer Can Heal 
9. Simple Song Simple Life 
10. Marionette 
11.Mothers In Brazil 
12. Hilda Plays 
13. The Inner Room 
14. Freedom of Heart *
15. Hope
      (*印 new number)

(視聴)

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