アロン・タラス Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」
なかなか親近感あるメロディアスな世界でなく抵抗があり難解
Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」
Bmc Records / IMPORT / BMCCD334 / 2023
Áron Tálas - piano
István Tóth - double bass
László Csízi - drums
All compositions by Áron Tálas
Recorded by Viktor Szabó at BMC Studio, Budapest on 1-2 November, 2022
Mixed and mastered by Viktor Szabó
Produced by László Gőz
ハンガリーのジャズシーンで評価の高い俊英ピアニストのアロン・タラスÁron Tálas(1990年ブタペスト生まれ33歳 右中央)のトリオでの2ndアルバム。前作『リトル・ベガー』は2017年にリリースされ、デビュー・アルバムでありながら国際的に高い認知を得た。
彼はピアニスト、ドラマー、そして必要に応じて歌手兼ベースギタリストだ。フランツ・リスト音楽アカデミーでジャズ・ピアノとジャズ・ドラムを学ぶ。2013年、ハンガリーの国内コンペでトリオで「最優秀ジャズ・コンボ賞」、同年、「ジュニア・プリマ」受賞。2015年、モントルー・ジャズ・ピアノ・コンペのファイナリストの一人。現在、フランツ・リスト音楽アカデミーの伴奏ピアニスト。コダーイ・ヤーノシュ大学ジャズ・ドラム科講師で、マルチプレイヤー的才能の持ち主だ。
今回のアルバムは彼自身の曲によるもので、「ヨーロッパならではのクラシカルな土壌の上に透明感溢れる抒情性があって、フォーク要素やロックの要素、クラシック音楽までに広く及び、フレージングは比較的軽やかで、伝統的なスイング感がうまく織り合わされ演奏を展開する」との解説があるが、果たしてそう感ずる世界かどうか。
(Tracklist)
1 New Questions, Old Answers
2 Hargrove
3 Old Soul
4 The Choice You Never Had
5 Elastico
6 Tevemenet
7 Rain
8 Cnile Kinlu
9 Afrosatie
10 The Visitor
11 To Be Continued
叙情性の因子があるも、曲展開は意外にダンサブルなところがある。メロディー展開も明るいというのではないが、そう深刻に哲学的な世界に入ってゆくというスタイルではなく、スウィンギーなところもあってやっぱりジャズの世界に自己の独創性を生かしてゆきたいという方向性が聴きとれる。
M1." New Questions, Old Answers"このアルバムのタイトル曲だ。"新しい質問、古い答え"このタイトルが振るっている。主張したい問題意識が感じられる。いわゆるスウィングして流れてゆくアメリカン・ジャズとは異なり、しかもユーロ系のイタリア、又一味違った北欧系の流れとも異なった世界だ。決して陽気な明るさはない。抒情性と言っても日本的な味わいとは全く別物でちょっと取り付くには難しい印象。
M3."Old Soul"決まったテーマが流れるが、次第に留まるところを知らずにピアノの流れが展開。ベース、ドラムスもそれぞそれが統一感ないように流れるも押さえるところはピシッと締まる。見事な技量を感ずるも私の好きな哀愁感は感じられない。
M4."The Choice You Never Had" ゆったりと抒情的に流れるも、所謂イタリア的美旋律の世界ではない。回顧的で未来の展望感は感ぜず。
M7."Rain" のピアノの響きは極めて美しいが・・・
M9."Afrosatie" このタイトル自身、なかなか理解が難しい。曲はそう難解ではないが、しっとり心を奪われるという世界ではない。私が期待している世界ではなさそうだ。
はっきり言って全体的に難解で、寄り付くところが微妙に抵抗的で親密感のレベルが低い。クラシック的因子が結構強く、又それぞれの曲が難解でこのアルバムは大衆的でない。評価は1.ジャズ理論か、2.音楽理論か、3.人の心を捉えるメロディーかと考えてしまうが、少なくとも3.ではない。私としては難物としての評価に至った代物。じっくり聴いていると味が出そうな感じではあるが。
(評価)
□ 曲・演奏 : 85/100
□ 録音 : 87/100
(試聴)
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