コリン・バロン

2017年2月 4日 (土)

コリン・バロンColin Vallon ニュー・アルバム 「Dance」

リリカルにしてアンビエントな世界を構築してはいるが・・・・

<Jazz>

Colin Vallon Patrice Moret  Julian Sartorius 「Dance」
ECM / GERM / ECM 2510 / 2017

Danse

Colin Vallon: piano 
Patrice Moret: double bass 
Julian Sartorius: drums 
Recorded February 28-March 1, 2016 at Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano.
Produced by Manfred Eicher

 既に何度か取りあげたローザンヌ(スイス)生まれ(1980年)の新進気鋭ピアニスト、コリン・バロンのピアノ・トリオ・アルバム。2006年の『Les Ombres』以来の5作目、話題のECMからは3作目のアルバム。今作も前作と同じトリオ・メンバーによるもの。

 これは完全に前作『Le Vent』(2014年)の流れからのアルバムだ。オープニングは落ち着いた低音によるやや暗めの印象のピアノとベースで深くリズムを刻む曲M1." Sisyphe"で 、これは意外に私の好奇心をくすぐる。
 そして期待の曲M2. "Tsunami"は、これは"うねり"と訳した方が良いのか?、アルバムタイトルが「Dance」(躍動?)であるから、多分そうかも知れない。ピアノそしてベースで刻むリズムでやや不安感のある世界を築きながら、その雰囲気を盛り上げつつ、中盤からはピアノの旋律も美しく響く。
 相変わらすバロンのピアノ・プレイが中心ではあるが、そのピアノを主として聴かせるというパターンとは少々異なる。トリオとしてパトリス・モレのベースは、多彩な手法で効果をあげてくる。そしてこれは録音によるところもあると思うが、左右のスピーカー両範囲に広がって位置しているジュリアン・サルトリウスのドラムス・シンバルの音は、常に繊細で好感が持てる響きである。その3者の交錯によって、これは一つのアートであるという形をとっている。そんなところでM9. "Tinguely"等にみるように次第に盛り上げていくところは一つの意志を感ずるところだ。

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 しかしピアノ・トリオはどうしてもピアノのウエイトが高い。従ってそこが曲では多くを左右するのだが、M7. "Kid" 、M10. "Morn "のようにピアノの音は一音一音響かせてその余韻によって一つの世界を描くパターンは私は好きだ。
 しかしM2. "Tsunami"から始まって、前半の多くの曲のように、同音の鍵盤を左手で何度か叩きながらバックのリズム作りをしたり、又は一方右手でのメロディーをも同様に反復演ずるところ、つまり彼らも所謂”ミニマル・ミュージック”を探っているのか?、その辺り、ちょっと私個人的には諄(くど)くて頂けない。
 
 全体に静かで陰性のリリカルな流れを構築しているアルバムだが、今回はミニマル奏法が邪魔して、あまり私好みの「絵」に填まってくれなかった。しかし決して否定するアルバムではない。彼らの以前にも紹介した2ndアルバム『Ailleurs』を聴いてみると解るが、今回のこのアルバムは、前作同様「ECM世界」を意識しての構築されたものとみて良いのだろう(実は前作との違いを殆ど感じない)。そこでもう一つこの世界の縛りから一歩脱してフリーなところに身を置くと、実は面白いトリオであると思って期待しているのだが、どうだろうか。

(Tracklist)
1. Sisyphe
2. Tsunami
3. Smile
4. Danse
5. L'Onde
6. Oort
7. Kid
8. Reste
9. Tinguely
10. Morn
11. Reste (var.)

(視聴) ”Tsunami” from 「Dance」

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2014年8月 1日 (金)

コリン・バロン・トリオColin Vallon Trio のECM第2弾「Le Vent」

良きにつけ悪しきにつけECM世界を行く

<Jazz>

  Colin Vallon  Patrice Moret  Julian Sartorius
     「Le Vent」
    ECM Records   ECM 2347,   2014

Levent
 コリン・バロン・トリオの4thアルバム~ECM の第2弾だ。
 私は、このアルバム・ジャケもお気に入りなのだが、前作「Rruga」のジャケもなかなか味があって、そんな意味でも着目している。
 さて今作「Le Vent」は、トリオを見ると前作までのドラムスのSamuel Rohrer が Julian Sartoriusに変わっている。このあたりの事情は解らないが、Rohrer は作曲もして貢献していたと思っていたが、今作で変化があるのだろうか・・・・と、そんなところも気になるところ。

Leventlist

 このスイスのコリン・バロンについては2年前に初めて聴いて、既に紹介しているので(参照:Colin Vallon ECM第一弾「Rruga」 http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/colin-vallon-64.html )、早速このアルバムの感想である。
 上のように12曲の収録。9曲はバロン自身の曲で、モレットがトップの曲1曲を、そして最後の2曲が3人の曲となっている。従って、バロンが中心であったが、3人のそれぞれの曲による構成という前作とは若干変わって、バロン自身のウェイトが増している。
 そしてこのアルバムは明らかにECM化は更に進んだものになった。ECMは、マンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher)が創設したレコードレーベル。1969年から活動をスタートし、彼のプロデュースする音楽哲学は「The Most Beautiful Sound Next To Silence (沈黙の次に美しい音)」というところにあるところはご存じのとおり。ジャケットデザインにおいても一つの世界を貫いている。まあこれに反抗した我が愛するRichie Beirachもいるが、それだけジャズ音楽の世界には個性に充ち満ちていると言うことであろう。
 そんな事情か、このアルバムは一口で言うと、”静かに自己を抑制して、そして安らぎの心への道とその風景を描いたもの”と言う感じである。まさに彼等はアイヒャーの期待に応えているのである。そしてそれは我々のECMへの期待を裏切らずに納得の世界で受け入れるのである。

Ailleurs ただ彼等は単なる抑制のみの世界に終わらぬような工夫として、ピアノの音をパーカッションのように演じたり、規則性を外してのドラムス、更にボウイング奏法も聴かせるベースなど、彼等の秘めた本質もチラホラみせるのである。
 私はなんとなく彼等に迫ってみたくなり、右のECM前の2ndアルバム・・・
 Colin Vallon Trio
「Ailleurs」
 (HatOLOGY,  636 , 2007)
        
1.  Le Paradis Perdu     7:10 
        2.  Babylone     6:56 
        3.  Swing Low     4:31 
        4.  Souris     1:25 
        5.  Trenke, Todorke     4:20 
        6.  Sous-Marin     1:08 
        7.  Je Ne Sais Pas     7:45 
        8.  Robots     1:24 
        9.  Zombie     6:02 
       10.  Mardi     5:48 
       11.  Quand Méme     5:29 
       12.  Elle     4:41 


     ・・・・・・を実は聴いてみたのだが、・・・・・それによって彼等の本質が見えてきたのだ。実は彼等はECMの3rdアルバムによって、世界的にもそして我々にも知ることが出来たのだが、この2ndにこそ彼等のジャズに求める現代感覚の挑戦が見て取れる。・・・はっきり言うと、このECMの「Rruga」「Le Vent」2枚のアルバムのように繊細にしてメロディーが美しく、そして落ち着いた世界感を描くのは、これはこれ実に聴き応えあり私は納得するのだが、それにも増して2nd「Ailleurs」に見るものは、静なるものの美と一歩前進を試みているフリーでプログレッシブでアグレッシブな面のあるジャズであり、これ又実に楽しいのだ。彼等はECMから離れたアルバム作りも是非とも行うべきであろう。そんな意味で、こちらにも手を伸ばして欲しいところである。

(視聴) 3rd「Le Vent」より”Juuichi”

(視聴2)-参考- 2nd「Ailleus」より”Zombie”

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2012年5月23日 (水)

コリン・バロンColin Vallon のジャズ・トリオ活動は期待株「Rruga」~ジャケ党を泣かせるアルバム(8)

ECMレーベルのコンセプトを担って・・・・

Colin Vallon, Patrice Moret, Samuel Rohrer 「Rruga」
  ECM Records,  2011,  ECM 2185 B0015433-02
      (Recorded May 2010 )

Rruga

 アルバム・タイトル「Rruga」は、英語では”jouney”に近い意味のようであるが、左の自転車に焦点を持って行き周辺を流した撮影写真のジャケットはなかなか頂ける。

  Colin Vallon : piano
  Patrice Moret : double-bass
  Samuel Rohrer : drums


 ECMレーベルでは、キース・ジャレットを中心に私は聴いてきたが、先頃取り上げたトルド・グスタフセンも私のお気に入り。もともとこのレーベルの音作りのコンセプトは、”The Beautiful Sound Next To Silence”(沈黙の次に美しい音)”というところにあるということのようだが、この若きコリン・バロンのピアノを中心としたトリオも、2011年にリリースしたこの彼らのECM第一号(彼らの3rdアルバム)は、そんな世界を見事に演奏している。
 
Colinvallon  Colin Vallon は、1980年にスイスのローザンヌで生まれで、10代にクラシックを学び、その後早くにジャズに傾倒、18歳でジャズ学校に登録している。19歳(1999年)にはスイスや周辺国でピアノ・ジャス・プレイに専念して、コリン・バロン・トリオを結成。
 2004年デビュー・アルバム「Les Ombres」
  2007年2ndアルバム「Ailleurs」

 トリオ・メンバーは、2004年から現在の1972年生まれのベーシストのPatrise Moret と、1977年生まれのドラマーSamuel Rohrerと結成して、曲は3人それぞれが書いてアルバム作りをしている。そして各地での活動で、多くの賞を獲得した。
 2011年、ECMデビューが、この3rdアルバム「Rruga」である。

 スイスを中心に活動しているようだが、なによりも彼らのオリジナル曲を中心にしていることと、繊細にしてメロディアス、そして静なる世界の構築は見事と言える。

  1. telepathy (Moret)
  2. rruga (Vallon)
  3. home (Vallon)
  4. polygonia (Rohrer)
  5. eyjafjallajokull (Vallon)
  6. meral (Vallon)
  7. iskar
  8. noreia (Rohrer)
  9. rruga,var. (Vallon)
10. ejord (Moret)
11. epilog (Rohrer)   

                      ( )内:作曲者

Memers2tr_2 収録曲11曲であるが、作曲はCollin Vallon が5曲、Samuel Rohrer が3曲、Patrice Moret が2曲と、メンバーが協力し合っている。確かに曲はピアノ・トリオとしてのピアノの占める位置が大きいが、ベース、ドラムスそれぞれが結構前面に出てリードする場面もあり、三者の位置関係はかなり対等にある。
 メロディーの美しさはトルコとコーカサスの音楽を反映しているというが、そのあたりは私には解らない。演奏の展開もフリー・ジャズ、クラシック調と多彩で、静かな世界を構築するが、三者のアンサンブルによる盛り上がりの波も押し寄せて聴き応えある。
 アルバム・タイトル曲”Rruga”のピアノの旋律は非常に美しく流れ、中盤のシンパルの音を中心としたドラムスの盛り上がりもいい、そして最後はピアノで静かに幕を閉じる。そしてその流れで続く”home”は、安堵の世界に導く。このように曲の繋がりもアルバム・トータルに抑揚を付けて編集されていて説得力ある。
 ”polygonia”は、何か物語りを感ずる世界に導いてくれる。”eyjafjallajokull”のフリーな展開と間の取り方はなかなか見事で、彼らのトリオ・ジャズの一つの方向性が見える。
 トルド・グスタフセンのピアノ主流と比べると、トリオ三者が対等に近い役割を果たしているバンドである。

 ECMからのリリースでレーベルのコンセプトを担っている若きバンドだ。、更にこれから大きく羽ばたいて欲しいトリオである。

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