ユーロピアン・ジャズ

2020年9月18日 (金)

レイス・デムス・ウィルトゲン REIS DEMUTH WILTGEN  「sly」

若きトリオが、ヨーロッパ・ジャズの一つの最新形を目指して・・・
ステファノ・アメリオの録音とミキシングも聴きどころ


<Jazz>

REIS DEMUTH WILTGEN  「sly」
CamJazz /  /  MOCLD-1037 /  2020

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Michel Reis (p)
Marc Demuth (b)
Paul Wiltgen (ds)

Recording and Mixing engineer Stefano Amerio 

  ルクセンブルグの若きピアニストのミシェル・レイスは日本での活動は活発で、石若駿をレギュラーメンバーにした彼の他は日本人ミュージシャンのみからなる「ミシェル・レイス・ジャパン・カルテット」で知られる。  この5月に彼のソロ・アルバム『SHORT STORIES』をここで取上げたのだが、あのリリカルな世界が印象的である。
 さて、そのレイスは自国においては、高校時代の同窓のメンバーとトリオ「レイス・デムス・ウィルトゲン」を組んで、既に2013年にデビュー作品をリリースしているのだが、そのトリオが現在までがっちり続いていて、今年第4作を発表したのである。それがこの『sly』である。
 このアルバムはかなり彼らのレクセンブルグを意識したもので、ルクセンブルグの詩人の風物詩「ルナール」というものをテーマにしていて、その「ルナール」というのは狐を指すらしい。それがこのアルバム・タイトル「スライsly」ということになり、その意味は"ずる賢い"と言うことのようだ。
 とにかく、この若きトリオが描く新世代ジャズにアプローチしてみたのであるが、こうしたものがヨーロッパ・ジャズの一つの最新形なのかと聴いた次第だ。

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1. Snowdrop #
2. No Storm Lasts Forever *
3. If You Remember Me *
4. Fantastic Mr. Fox #
5. Silhouettes On The Kuranda *
6. Viral #
7. Diary Of An Unfettered Mind *
8. Let Me Sing For You *
9. Venerdì Al Bacio *
10. Nanaimo *
11. The Last We Spoke #
12. The Rebellion 
13. Home Is Nearby #

(*印:Michel Reis 、#印:Paul Wiltgen)

 どちらかというと、そう長くない、短い曲も含めて上のように13曲。レイスReisの曲が7曲、ドラマーのWiltgenの曲が5曲、ベーシストのDemuthの曲が1曲という彼らのオリジナル曲だ。

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 いっやーしかし、この若きトリオの演ずるところはリアル・ジャズとヨーロッパ美学の結合なんですね。
 私は前半6曲は取り付くところが無いくらい異様なアヴァンギャルドな世界だ。印象はドラムスのパンチ力で録音も前面に出てきてバンバンアタックしてくるリアル・ジャズの印象。これらの曲はルクセンブルグの世界観とフリー・ジャズでの叙情詩と行ったところか、私がついて行くには少々厳しい。
 ようやく、心を引かれてのめり込めるのは、主としてミシェル・レイスの曲M7."Diary Of An Unfettered Mind"からで、M.11"The Last We Spoke"までの4曲で、あくまでも私の感覚としての素晴らしさだ。近代感覚あふるる中に美旋律そして叙情を漂よらせて非常に魅力的。
 このアルバムケの前半に評価を持って行く人もいるのではと思うが、私の場合はついて行くのが難儀だった。
 彼らは、彼ら自身のオリジナル曲に固執しているようで、その作曲演奏に自己の世界観を描こうとしている。
 若きトリオが、ヨーロッパの叙情を加味しつつ、リアル・ジャズ、フリー・ジャズ、そしてアヴァンギャルドな世界への挑戦として演ずるところは、注目すべき作品だ。

 そして録音がイタリアの名手ステファノ・アメリオということで注目してみたが、彼は曲を十分意識しての世界観のある音と音場を作り上げるのだが、このアルバムは過去のよく聴いた叙情的美しさを描き挙げるものと異なって、ちょっと驚きのリアル・サウンドを追求している。彼のこのような仕上げは珍しく貴重。そんなところからも、このトリオの演ずるところが窺えるところだ。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)  このトリオのライブ模様

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2020年9月 8日 (火)

シモーネ・コップマイヤーSimone Kopmajer 「My Wonderland」

懐かしい曲を思いがけなく取上げていて、ホッとして聴ける

<Jazz>

Simone Kopmajer 「My Wonderland」
Lucky Mojo Records /  EU  / LMR201 / 2020

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Simone Kopmajer (vo)
Terry Myers (sax)
Paul Urbanek (p)
Martin Spitzer (g)
Karl Sayer (b)
Reinhardt Winkler (ds)

 オーストリア出身の歌姫、シモーネ・コップマイヤー新作。彼女を取上げるのは2年ぶりだが、なかなか充実度が上がっている。
 彼女は1981年生れで、アルバムは2003年以来、『Romance』『Moonlight Serende』などがあって、2018年に『SPOTLIGHT ON JAZZ』とリリースしてきている。
 今回のアルバムでは、彼女のオリジナル新曲、4曲が聴ける。そしてとジャズとボッサのスタンダーズ、更に驚きはサンタナの懐かしのヒット曲やバート・バカラックの曲などが取上げられている。
 難しく凝っていなくて、あのプリティーなヴォーカルを生かして、円熟した歳となって充実度が増した曲作りが、安心して聴けて好感度は高い。

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1 My Wonderland *
2 Voce E Eu (You And I)
3 Something New *
4 A Man And A Woman
5 Why Don't You Do Right
6 Caravan
7 A Tinge Of Yellow *
8 In A Mellow Tone
9 Europa (Manana)
10 So Danco Samba
11 Raindrops Keep Falling On My Head
12 A Trembling Moon (Clair De Lune) *
(*印 オリジナル曲)

 歳相応に円熟した大人の味が加わって来た中で、もともとのプリティーな彼女の持ち味がどの程度残っているのかと思いながら聴いたわけだが、やはりその特徴は失われてはいない。しかし究極は大人のジャズに仕上げていて、しかもポップス様の味付けがあって、非常に聴きやすい。 
 あまり力が入っていなく、ちよっと洒落た味を加えた歌というところで、いわゆる和みのボーカル・アルバムというところだ。

 彼女のオリジナル曲も、変な癖も無く聴きやすいが、なんと言ってもM4."A Man And A Woman 男と女" が、久しぶりに聴けて良かったですね。これもあまりジャズっぽくなくてこんなところでいいと思ったところだ。
 なんと言っても驚きはM9." Europa (Manana) 哀愁のヨーロッパ"のサンタナのヒット曲が登場したところですね、あのギターの音色が日本中で受けた曲が、これがジャズ・ヴォーカルに、と言うだけで驚きですが、挑戦したところに評価しましょう。
 M6."Caravan"も驚きました。ヴォーカルものとしては珍しいでしょう。なかなかこのアルバムでは一弐を争う出来で、お見事と言っておく。
 とにかくポピュラーなバカラックのM11." Raindrops Keep Falling On My Head"なども登場して、肩の凝らないアルバムであり、ジャズ世界としてハイレベルと言うモノでは無いが、嫌みが無く聴きやすいヴォーカル・アルバムとして歓迎したところだ。

(評価)
曲・歌  85/100
録音   80/100

(視聴)

 

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2020年8月29日 (土)

エリチン・シリノフ Elchin Shirinov Trio 「Waiting」

民族性の高いエキゾチックな中のスピリチャルなプレイ

<Jazz>

Elchin Shirinov Trio 「Waiting」
SOMETHIN'COOL / JPN /  SCOL-1040 / 2020

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Elchin Shirinov (piano)
Andrea Di Biase (double bass)
Dave Hamblett (drums)

 

  ベースのリーダであるアヴィシャイ・コーエン・トリオの近作アルバム『Arvoles』(RAZDAZ Records / RD4619/2019)のピアニストとして注目さたアゼルバイジャン出身のピアニスト:エルチン・シリノフ(1982年生れ)の彼名義のトリオ作品の日本盤の登場。
 アヴィシャイ・コーエンはイスラエルのミュージシャンで私はどちらかというとファンである。それはイスラエル由来の哀愁漂う美旋律が魅力。そのムードに惹かれてトリオ演奏が好きなのだが、実は彼のこの近作『Arvoles』は、ちょっと民族色が強くなって、それ以前の作品と少々異質になったもので、あまり諸手を挙げて歓迎出来なかったアルバムだった。それでもこのアルバムのピアニストが、自己名義ではどのような世界を構築していたのかというところは興味津々であった。

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 本盤は、トリオによる配信オンリーだった2018年作品で、CD版はエルチン・シリノフ本人の自主製作によるライヴ会場での手売りのみであったという。そんな一般流通はしていなかったものの日本国内盤CD化したもの。アゼルバイシャンというのは、旧ソ連に属していた国であるが、ソ連解体後アルメニアとの民族紛争を経て現在共和国として独立していて、カスピ海に接して居入るが、東ヨーッパとしても存在している。天然資源の油田が産業の核で、日本も経済協力をしており親日国。

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(Tracklist)

1. Sara Gellin
2. Waiting*
3. Durna
4. Missing*
5. Waltz From Seven Beauties Ballet
6. Muse*
7. O Olmasin Bu Olsun

(*印: シリノフのオリジナル曲)

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 トリオのベース、ドラムスはロンドンからの迎えてのメンバー。彼は英国との関係が深く、おそらく現在もロンドン在住と思われる。このアルバムはシリノフの過去の活動からの集大成として作られたモノとみてよい。そんなところからも彼を知るにはよいアルバムだ。

 先ずの特色は、M1."Sara Gellin" 、M3."Durna"のように、アゼルヴァイジャンの民謡を取上げていて、民族音楽の性質が濃い。この点はアヴィシャイ・コーエンの『Alvores』と似ている。なかなかそこにはエキゾティックなトラディッショナルのフォーキーな民族舞踏と云うべき趣を醸し出す。そしてリズムは非常にバライティーに富んでの複雑な面を持っている。そのあたりは聴いていてちょっと目(耳)を離せない。
 しかしこのアルバムでは彼のオリジナルが三曲あるが、M4."Missing"が最も民族的世界から離れての、美旋律が顔が出すしっとりムードの曲で、私にとっては一番聴くに気持ちの良い曲であった。

 Elchinhometrw 彼のこのようなアゼルヴァイジャンのジャズをムガームジャズと言うらしいが、このエキゾチックさが新鮮で、しかもそこに聴き慣れないテクニックが異国情緒たっぷりの中のアドリブとして攻めてくるところがスリリングであり、それと同時に民族的哀感が同席していて、如何にも聴く方にとっては新鮮なんですね。

 しかし私個人的には、ちょっとこの方向には馴染めないところがあって、若干複雑な気持ちである。あまり無理して聴くこともないので、M4あたりで納得しておこうと思うのである。

(参考) ムガームジャズ(Mugham Jazz, Azerbaijani Jazz)とは、ペルシャの古典音楽をルーツとする独特の旋法が特徴的なアゼルバイジャンの民俗音楽であるムガームと、アメリカ生まれの即興音楽ジャズが、1960年代頃より東欧一のジャズの都として栄えたバクーにて融合し生まれた音楽のジャンル。

 

(評価)
□ 曲・演奏   80/100
□ 録音     75/100

(視聴)

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2020年8月24日 (月)

マッシモ・ファラオ・トリオ Massimo Faraò Trio 「Like An Elegant Wine」

ストリングス・オーケストラをバックに、あくまでも優雅に美しく


<Jazz>

Massimo Faraò Trio, Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
「Like An Elegant Wine エレガントなワインのように」
VENUS RECORDS / JPN / VHCD-1278 / 2020

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マッシモ・ファラオ MASSIMO FARAO (piano)
ニコラ・バルボン NICOLA BARBON (bass)
ボボ・ファッキネネィック BOBO FACCHINETTI (drums)

with Accademia Arrigoni's Strings Orchestra
Conducted by Bill Cunliffe

2020年2月15日,16日 Magister Recording Area Studios,Preganziol,Italy 録音
Sound Engineers Andrea Valfre’ and Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Produced by Tetsuo Hara

  このところ Venus Records の看板になりつつあるあのイタリアのピアニスト・マッシモ・ファラオ( 1965- )が、とにかく美しく優美にと、繊細にしてメロデックな演奏を、ストリングス・オーケストラをバックに優しく演ずるアルバムの登場。

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(Tracklist)

1.ラブ・ケイム・オン・スティールシー・フィンガース
2.Io Che Amo Solo Te 君だけを愛して
3.オールダー・マン・イズ・ライク・アン・エレガント・ワイン
4.Days Of Wine And Roses 酒とバラの日々
5.ホエン・サマー・カムズ
6.ニアネス・オブ・ユー
7.ティズ・オータム
8.イージー・リビング
9.スプリング・ウィル・ビー・ア・リトル・レイト・ディス・イヤー

 とにかく全編優美なストリングス・オーケストラとマッシモ・ファラオ・トリオが輪をかけて優美に演奏するアルバム。そんな訳でジャズ感覚は少なく、ポピュラー・ミュージック感覚で聴いてゆくアルバムだ。
 とにかく、あのジャズの'50-'60年代の典型的なハード・バッブ・スタイルを継承するがごとくのマッシモ・ファラオのピアノ演奏も、ここではただただメロディーの美しさに絞っての演奏である。そんなために曲M1、M2、M3と、私には殆ど同じ曲の流れかと思うぐらいに変化は無くただただ美しいのである。
 M4."酒とバラの日々" になってヘンリー・マンシーニーの耳慣れた曲が現れて、成る程こんな具合に仕上げるのかと、その優美さの引き出しに納得してしまうのだ。続くM5."When Summer Comes" なんかは、オスカー・ピータンソンの美的ピアノを更に美しくといった世界に溺れてしまう。
 その後も、全く変化無しに映画音楽などを取上げて、全編ピアノの音も美しく、ベース、ドラムス陣もこれといっての特徴も出すところもなくストリナグスに押されて流れて言ってしまう。
 時には、こうした疲れないバックグラウンド・ミュージック的な世界も良いのかなぁーと思いながら聴いてしまったアルバムだった。それにしても途中で一つぐらいは暴れて欲しかったが、いやいやそれをしないで通したマッシモに取り敢えず敬意を表しておく。

(評価)
□ 演奏 :    85/100
□   録音 :    85/100

(視聴)    関連映像がないので・・・参考までにトリオ演奏を

 

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2020年8月15日 (土)

ダーリオ・カルノヴァーレDario Carnovale 「I Remember You」

絶妙のスウィング感でバランスのとれた緩急メリハリある抒情派作品

<Jazz>

Dario Carnovale / Alfred Kramer / Lorenzo Conte 
「I Remember You」
FONE / EU / SACD173 / 2019

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Dario Carnovale ダーリオ・カルノヴァーレ (piano)
Lorenzo Conte ロレンツォ・コンテ (bass except 4)
Alfred Kramer アルフレッド・クラーマー (drums except 4)

2016年10月イタリア-イル・カステッロ、セミフォンテ・スコト宮殿(の地下)録音

  イタリアはシチリアの州都パレルモは数年前に訪れたことのある懐かしい美しい街だが、ここはシチリア島の玄関口と交通の要所ということで、なかなかの大都市。しかも教会や宮殿が立派で、ギリシャ、アラブ、フランス、スペインなどが混じりあっての独特の文化が生まれている。更に余談だが、ここのマッシモ劇場は、映画「ゴッド・ファーザー」で有名になったところ。
Dc3    このパレルモ出身の俊英ピアニストに、ダーリオ・カルノヴァーレ (→) がいて、彼のピアノ・トリオ作品を一度しっかり聴きたいと思っていた時に、このSACD盤が目に留まり早速聴いてみたというところだ。高音質に定評のあるイタリア「foneレーベル」のセミフォンテ・スコト宮殿地下録音プロジェクトの一つとして2016年10月に吹き込まれ、2019年にリリースされたアルバムである。
 このカルノヴァーレは、2年ほど前にイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に活動の拠点を移しているそうだが、そんな彼が、高音質レーベルで知られるFone Jazzに、アルフレッド・クラマー(ds)、ロレンツォ・コンテ(b)というトリオでスタンダード中心に録音したスペシャル・セッション版である。

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(Tracklist)

1. I Remember You (Victor Schertzinger) 5:41
2. Madrigale (Carnovale) 4:00
3. I'll Close My Eyes (Reid - Kaie) 7:38
4. Alone (Carnovale) 2:25 (solo piano)
5. What Is This Thing Called Love (Cole Porter) 5:55
6. Emersion (Carnovale) 8:19
7. Ckc (Carnovale - Conte - Kramer) 6:27

Lc1_20200814212401  しかし、メロディアスにしてスインギーな展開にアドリブの効いた流れ、そして時々適度にイタリア独特の美旋律が流れ、しかし時にハードなダイナミックな展開と多彩多芸。特にM4."Alone"のカルノヴァーレのピアノ・ソロでは、やや前衛がかったオルタナティブな世界も見せる。
 私にとっては、なんと言ってもM3."I'll Close My Eyes" いわゆる美旋律のピアノを中心に描くピアノトリオの世界が、何と言えない心地よさだ。ベースそしてシンバルも手頃の余韻を持って響きそれは快適。落ち着いた夜にぴったり。
 しかし、その他の曲で、特にスタートのアルバム・タイトル曲M1."I Remember You"での、ここまで小気味のいい軽やかなスイング感を大切にしたリリカルなプレイを展開してみせるトリオも珍しい。これも彼らのキャリアの蓄積がそうさせるのであろうと思うが、力みの無い洗練された技巧派ジャズなのである。この軽妙さはジャズ心の極致である。
Ak2  M5."What Is This Thing Called Love"、これはドラムスの疾走から始まって迫真のインタープレイの展開、とにかく息詰まるスリル感たっぷりの生々しい演奏は凄絶で圧巻。この三人はこれをやらずには納まらないと言ったところか。
 M6."Emersion"のそれぞれの世界をそれぞれがアクロバティックに流れてゆき、そして演じてゆくうちにトリオとしての交錯そして統一感への世界は面白い。美的という処からは別物だが、これが又このトリオの味なのかも知れない。
 そして続く終曲 M7."CKC"は三者による作品。この"CKC"とは何かと思ったら、どうやら三人の頭文字だ。この曲には三者がクレジットされている。それは緻密に静とその世界の神秘性にも迫る情景に納得。そして次第に現実の世界に目覚めさせる。

 又、音質も極めて自然な録音で、さすがはFONE JAZZだけあってその心意気はSACD盤としてリリースされている。これは派手さで無く自然体を追った録音と行って良い。むしろかってのアナログのLP時代を思い起こさせる。
 とにかくトリオ・ジャズの楽しさ満載のアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     90/100

(参考視聴)

 

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2020年8月 3日 (月)

ジャン・ポール・ブロードベック・トリオ Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」

洗練されたジャズ心とテクニックでジャズの美学を演ずる・・・

<Jazz>

Jean-Paul Brodbeck Trio 「EXTRA TIME」
Solid/Enja / JPN / CDSOL-46459 / 2020

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Jean-Paul Brodbeck : p
Lukas Traxel : b
Claudio Strüby : ds

Adapted By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 5)
Recorded By, Mixed By, Mastered By – Daniel Dettwiler
Written-By – Jean-Paul Brodbeck (tracks: 2-4,6-9), Brahms* (tracks: 5), Schumann* (tracks: 1)

 スイスの若手ピアニストでチャイコフスキーのカヴァーなどをして来たジャン・ポール・ブロードベックJean-Paul Brodbeck がルーカス・トラクセルLukas Traxel(b)とクラウディオ・ストルビーClaudio Strüby (ds)とで結成したスイス産トリオによるアルバム。
 これは2017年にドイツのヨーロッパ良質なジャズ・レーベルと言われるENJA(European New Jazz)からリリースされたもので、メインストリーム・ジャズの名盤を復刻する注目の新シリーズ ”ENJA REAL JAZZ CLASSICS"として今年7月に日本でお目見えしたモノ。
 ブロードベックは、クラシック楽曲を耽美的にジャズ化するなど美にこだわったスタジオ作品をリリースして注目されてきた。

 

Avatars000271845735jfsfjgt500x500 (Tracklist)

1 Ich Will Meine Seele 心を潜めよう 8:51
2 Im Strom Der 潮の流れに 9:33
3 The Night Comes Soon 6:18
4 Song For The Ancestors 7:11
5 Brahms Ballad 3:16
6 Juno Is Touching Down 8:01
7 Return/No Return 6:25
8 Rocka-Roas 4:58
9 Requiem Of A Song 6:28

 曲はクラシックからはシューマンのM1.とブラームスのM5の二曲のみで、その他はピアニスト・ブロードベックのオリジナル7曲によって構成されている。
 スタートのシューマンのM1."Ich Will Meine Seele"で、これは並に迫れないトリオだと、単なるクラシックのカヴァーと言うので無いそのジャズ演奏の意味付けの重さがヒシヒシと実感する。
 M2."Im Strom Der"はオリジナル曲、押し寄せるドラムスの流れに、ピアノ、ベースのテーマが始まり、これは耽美派ということではかたづけられない一歩ジャズを進化すべく試みる世界だ。ピアノ主導で無く三者の描く世界が美しさと共に伝わってくる9分を超える長曲、面白い。
 M3."The Night Comes Soon" ピアニストが浮遊する世界。 
 M4."Song For The Ancestors " ピアノのイントロが美しく、ベース、ドラムスの効果がそれを後押ししてのジャズ美学。
 ブラームスのM5." Brahms Ballad "はしっとりと。
 M6."Juno Is Touching Down " ベースの深層心理に迫ろうとするソロから始まって、トリオ演奏が高まりを造り、ベース主体の中にピアノの美しさが交えて聴き応え十分。コンテンポラリー感が結実して見事。
 M7."Return/No Return" 彼らの本領発揮のピアノの流れのバラードで耽美なトリオ演奏にうっとりといったところ、ちょっと思索的世界に導くところがお気に入りだ。
 締めのM9."Requiem Of A Song " は、ゆったりとしたピアノの旋律が美しい曲。

Jeanpaul_brodbeck223  三年前のこのアルバムを今年ここに復活させた意味は十分感じられるハイレベル・ジャズ・アルバム。しばらく聴いていたくなるのは、その技術的な洗練されたところと、ジャズ心の充実だと思う。

  参考までに、リーダーのJean-Paul Brodbeck は ( →)、1974年スイス・バーゼル生まれ、10歳でピアノに接し、12歳でバンドを組んだとか。11歳から15歳まで正式なピアノ・レッスンを受ける。その後音楽院に進んでクラシック専攻という経歴。28歳でトリオ初リーダー作を発表。チャイコフスキーのカヴァー曲集「Song of Tschaikowsky」等のアルバムをリリースしている。

(評価)

□ 曲・演奏 :   90/100
□   録音   :   85/100

 

(視聴)

 

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2020年7月18日 (土)

ロレンツォ・コミノーリ、ロベルト・オルサー Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」

ヨーロッパの伝統の中から生まれた叙情的な耽美な世界はここにあり

<Jazz>

Lorenzo Cominoli, Roberto Olzer 「Timeline」
abeat for Jazz / Italy / ABJZ 218 / 2020

Timeline

Lorenzo Cominoli (guitar)
Roberto Olzer (piano)

Recorded at Artesuono Recording Studio, Cavalicco , Itaria , Sept. 30, 2019
engineered by Stefano Amerio

 イタリアの今や油の乗った日本で人気のピアニスト・ロベルト・オルサー(Roberto Olzer下左)は、ここでも既に何回か登場してきたわけだが、今回は、ギターのロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli下右)とのデュオと言うことで注目のアルバムがリリースされた。これはイタリアの中堅叙情派という世界であって私としては見逃せない。更にそこにステファノ・アメリオのレコーディンク・エンジニアとくるからたまりませんね。又、ロベルト・オルサーが弾くピアノはイタリアの誇るFAZIOLI GRAND PIANO F278 MKⅢ と、音にうるさい人にも注目されるところである。
・・・と、言うことで早速聴いたという処です。

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 (Tracklist)

1. Bibo No Aozora (Ryuichi Sakamoto)
2. Blue Whale (Lorenzo Cominoli)
3. Dance Of Moroccan Veil (Garrison Fewell)
4. Atlantis (Roberto Olzer)
5. Timeless Part I (John Abercrombie)
6. Timeless Part II (John Abercrombie)
7. The Dolphin Jump (Lorenzo Cominoli)
8. Novembre (Roberto Olzer)
9. Blott En Dag (Oscar Ahnfelt)


  聴いたことのあるメロディー、坂本龍一のM1.”Bibo No Aozora 美貌の青空”からスタートする。ここにはしっとりと抑制の効いたエレガントなギターとピアノの調べが流れてくる。
 それは、コミノーリの曲M2."Blue Whale"になって更に瑞々しく流麗なメランコリックな美しいメロディーが情緒豊かな世界を築く。ピアノとギターが交互に旋律部を担当し、お互いがバックも担当してデュオの味の魅力を放つ。それはM3."Dance Of Moroccan Veil"、M4." Atlantis "になって、旋律の性質が変わるも基本的には静謐な雰囲気を作り耽美な世界を演ずるところは変わりは無い。


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  しかしこのまま進行するのかと思いきや、M5."Timeless Part I " になって、彼らの若き世代からの積み重ねの世界が顔を出す。ちょっとダークさのある妖しく不穏なミステリアスな音をギターが響かせ、ピアノが後押ししてちょっとした異世界を浮遊するメロディーを流す。
ある意ではスリリングな世界で、インタープレイの妙も演ずる。ここに彼らの単なる美旋律に終わらないところが聴きどころ。
 そしてM6."Timeless Part II"に流れ、コンテンポラリーな世界は落ち着きのある世界に復帰。
 M7."The Dolphin Jump "では珍しく明るい世界を演じ、M8."Novembre "で、再び繊細にして優雅な中に、どこかオルサーの哀感のあるピアノの調べで叙情的美世界に導くのである。

 まあ若干の変化は見せたとはいえ、メロディアスな叙情的世界をエレガントな感覚で描いたアルバムであり、もう少しダイナミックな面もあっても良かったかとも思うが、まさに伝統あるヨーロッパの耽美な世界はここにありと言ったアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100

(視聴)

*

 

 

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2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

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(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - - -

ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

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Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

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 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

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01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

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 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

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2020年5月28日 (木)

ミシェル・レイスのソロ・ピアノ Michel Reis 「SHORT STORIES」

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(今日の一枚) 「我が家の庭に咲く花 - オオムラツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

                                      - - - - - - - - - - - - - 

クラシック色のあるオリジナル曲によるジャズ・ソロ・ピアノ作品集

<Jazz>

Michel Reis 「SHORT STORIES」
CAM Jazz / IMPORT / CAMJ7953 / 2019

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Michel Reis  : piano
Recording and mixed in Cavalicco(UD) in Feb.2019 at Artesuono Recording Studio
Recrding and mixing engineer Stefano Amerio

 ジャズ界もヨーロッパにおいては若きピアニストが続々誕生している。このミシェル・レイスもその一人だ。彼は美しい小国ルクセンブルグの出身で、日本でのジャパン・カルテット形成が、やはり日本に浸透するに至る大きな一つの道であったろうと思う。
 このアルバムは昨年Cam Jazzからリリースされた彼のソロ・ピアノ集である。基本的に彼のオリジナル曲による構成でその意欲が伝わってくるのだが、録音はステファノ・アメリオとくるからその出来映えに期待も大きい。
 日本で結成のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」では、YouTube等で見る限りスリリングな演奏をも披露していたのだが、ソロとなると彼の重要な一面が出てくる。それは2017年に水戸で録音したアルバム『MITO』(CSJ0006)に聴けるのだが、これは彼の初の即興曲・ソロ・ピアノ・アルバムであり、内省的な中に美しさが見える。従って当然、今回のこのアルバムにも期待が持てるのである。

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01. Sunae II
02. From The Eyes Of Old
03. How It All Began (The Story Of Mr. Potes)
04. Monologue
05. Could I See You Again
06. Gratitude
07. Road To Dilijan
08. Gravity And Lightness
09. Tales Of Oleander
10. Eugene And Valentina Main Theme
11. Awakening
12. Eleni (For Eleni Karaindrou)
13. Bells
14. Goodnight

  全曲、彼のオリジナル曲である。14曲と多い収録だが、2分少々の曲から始まり短編が多く、最も長いのがM5."Could I See You Again"の6分58秒だ。聴いていると短い曲が多いという印象。
  ジャズ・ピアニストという世界にて活躍しているが、彼は幼少からクラシック・ピアノを学び、なんと14歳でプロ活動を開始。バークリー音楽大学、ニューイングランド・コンサヴァトリー・オブ・ミュージックを経て来ているのだという。そして2005年に第1回モスクワ・ジャズ・パフォーマー・コンペティションの最終選考に残って注目を集め、同年『A Young Mind』でアルバム・デビュー。2006年にモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで2位。そして自国ルクセンブルクでは大きな評価を得ている。2014年1月、ピアノ・トリオ・アルバム『レイス|デムス|ウィルトゲン』を発表。

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 やはり印象はまずクラシック・タッチの美しい曲集という感じだ。聴いていると確かに詩情が豊かな世界に浸かっていくことになる。ピアノ・ソロであるせいか冒頭のM1." Sunae II" から静かな余韻のある演奏で、どこか懐かしい過去の世界に想いを馳せる気分に導かれる。
 M2."From The Eyes Of Old " は、やや早い展開の曲であるが、やはりどこかクラシック的なところにあって、スリリングという印象は全くない。
 M4." Monologue" は、高音が透き通っていて、はっとして聴き入る美しさが秀でている。曲もジャズ的即興の流れがあって、こうしたところはやはりヨーロッパ系のメロディーとハーモニーの美しさが引き立ったジャズ・ピアノ世界だ。実は私としてはその他の殆どの曲のクラシックの延長という感じよりこの線に期待したいところだ。 
 しかし、M7."Road To Dilijan"、M9."Tales Of Oleander" にみるピアノの響きとメロディはやっぱり非凡な美しさを持っていて楽しめる。そしてジャズ的面白さはM11."Awakening" にも見いだすことも出来た。
 
 とにかく新進気鋭のピアニストとして期待は大きいが、私の愛するノルウェーのトルド・グスタフセンのような、哲学的深遠さという処においては、今一歩届いてはいない。日本における彼のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」は、注目の須川崇志 (bass)、石若駿 (drums)、西口明宏 (sax)という構成(↓)で、そこには良い刺激があってのことか、ややアヴァンギャルドなスリリングな展開も見せていて、そんな世界との関係も含めてこれからどのように発展していくかは、確かに楽しみな存在である。

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 参考までの話だが、2018年の彼の日本の水戸のコルテスで録音されたソロでの即興ピアノ曲集『MITO』もなかなかのもの、内省的美の世界が素晴らしい。彼はこのアルバムを第2の故郷のような水戸の街に捧げますと言うぐらいこの地での活動に感動していたようである。そして内容的には、むしろジャズ的に見るとこちらの方が、楽しめるところもあるので紹介しておく。

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『MITO - Solo Piano Improvisations』
(Cortez Sound/ JPN / CSJ-0006 / 2018)
(Tracklist)
1. ライジング 10'50
2. スナエ 3'20
3. フォレスト・エッジ 6'35
4. ロスト・テンプル 6'51
5. ルッキング・グラス 4'19
6. エコーズ 2'54
7. フォーク・ソング 5'39
8. ラビリンス 2'31
9. リポーズ 3'12
Recorded 21st July 2017
Mixed Ken Tadokoro
Masterd Ken Tadokoro
Recorded at Jazz Room Cortez

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)
"Sunae Ⅱ"

 

"How it all began"

,

"Looking Glass" from 「MITO」

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2020年5月10日 (日)

[記録に残したいアルバム]ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロJulian Oliver Mazzariello 「DEBUT」

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(今日の一枚)  我が家に咲く花 ハナミヅキ
      (Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL)

なかなか味なグルーヴィー感たっぷりのムードとリズム感の両翼をこなす演奏

<Jazz>

Julian Oliver Mazzariello , André Ceccarelli, Rémi Vignolo「DEBUT」
Via Veneto Jazz / ITA / VVJ125 / 2018

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Julian Oliver Mazzariello (P)
André Ceccarelli (Ds)
Rémi Vignolo (Ac-B)

Recorded at the Recording Studio of Joel Fajerman
Sound Engineer: Manu Guiot
Mastered by Eugenio Vatta

 昨年の寺島靖国「Jazz Bar 2019」(2019年12月リリース)に取り上げられたこのピアニスト=ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロのピアノ・トリオ・アルバムである。実はそれまで知らなかったトリオで、そのムードの良さにアルバムを購入してみたもの。
 このアルバムの曲は、下のリストにみるように、殆どこのピアニストのオリジナル曲で占められている。従って彼の意志によるところのアルバムであろうが、ドラムスには重鎮アンドレ・チェカレリがいてこのあたりも聴きどころでもある。
 このピアニストのマッツァリエーロはイタリアの俊英といわれる存在であるが、1978年ロンドン生まれであり、その後1996年1月にイタリアに移り、現在Cava de 'Tirreniに在住。多くのミュージシャンとの共演を経て現地では広く知られている存在と。彼の流麗でグルーヴィーなそして一方躍動感に富んだピアノプレイが魅力。

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(Tracklist)

1. Accarezzame (Calvi - Nisa) 4:27
2. Funky Chunks (Mazzariello) 4:02
3. Dream Cycling (Mazzariello) 6:18
4. Battement Fondu (Mazzariello) 2:55
5. Monk in Paris (Mazzariello) 6:12
6. Modal Blues (Mazzariello) 4:05
7. Que Reste-t-il de nos Amours (Trenet - Chauliac) 4:32
8. Five for Troc (Mazzariello) 4:33
9. J's Ballad (Mazzariello) 6:37

 イタリアのトランペッターFabrizio Bossoとのデュオで何となく名前が出てきたピアニスト・マッツァリエーロの初のリーダー・アルバムとのことで、タイトルも「DEBUT」であるのだが、冒頭のM1." Accarezzame"がなかなかグルーヴィーでいいのですね。これを聴くとジャズ・ピアニストのセンスの良さが滲み出ていてジャズ・ムードの良さを知らしめられる。確か寺島靖国もこの曲を取り上げていたはずである。

Andrececcarellipaiste1_20200510174501  そしておもむろに、自己のオリジナル曲が5曲連続して出てくるのだが、まずM2." Funky Chunks "はちょっとムードが変わってなかなか軽快なジャズを展開し、M3."Dream Cycling"になると、なるほどユーロ・ジャズの匂いがしてくる。そしてバックのアンドレ・チェカレリ(右)のベテランの味のあるシンバルやブラッシ、そしてビグノーロ(右下)のベースが適度に響いて、リズムを大事にしたトリオの楽しさが伝わってくる。
 M4."Battement Fondu "などは、イタリアの伊達男の洒落たセンスというルンバ調のムードが出てきて、こうして聴いているとマッツァリエーロの流れは、M1のようなバラード調でなく、むしろ近代的流れに味付けされたリズムカルな世界なのだと知らしめられる。

Dsc_0312  更にM6."Modal Blues"の早弾きと展開するリズムなどは、アメリカ・ジャズの面白さをちゃんと身につけている。
 ただ、私好みからすると、バラード調のM1や、M7."Que Reste-t-il de nos Amours"のソロで演ずるようなこの2曲のムードたっぷりに演ずるカヴァー曲が良いのですね。こんなジャズの魅力の両者をなんとなく軽く演じてみせるというところが、ニクイニクイ魅力ですね。

 さてこれから如何様にも発展する要素をしっかり持っているマッツァリエーロは、このアルバムをベースに今後楽しみなのである。

(評価)
◇ 曲・演奏 :  ★★★★☆  85/100
◇   録音   :  ★★★★☆  85/100

(視聴)
 " Accarezzame"

*
  参考 :  Bossoとのデュオ

 

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