ユーロピアン・ジャズ

2018年6月14日 (木)

(検証シリーズ) ステファノ・バターリア・トリオStefano Battaglia Trio検証  アルバム「In The Morning」

心を癒やし、深層に浸透していく神秘的世界を描く

<Jazz>
Stefano Battaglia Trio 「In The Morning」
ECM / GERM / ECM 2051 2768055 / 2015

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Stefano Battaglia(piano)
Salvatore Maiore(double bass)
Roberto Dani(drums)
Recorded April 28, 2014 Teatro Vittoria, Torino
Produced by Manfred Eicher
Engineer Stefano Amerio


Sb1w イタリアのステファノ・バターリア(バタグリア)Stefano Battaglia に関しては、ECMレーベル愛好家にて結構その筋での支持者がいるのだが、私としては、じっくり聴く機会も無かった為、ちょっと反省(笑)して、ここで聴き込こもうとしているのである。
 近作にピアノ・ソロ盤2枚組『Pelagos』(ECM/5768968/2017)がリリースされていてなかなかハイレベルの作品として評価されているが、ピアノ・トリオ好きの私としては、まずは彼のその筋の最新作はこの2015年のアルバムECM6作目の『In The Morning』であるので、そこから2011年のアルバム『The River of Anyder 』と共に聴いている。

(「In The Morning」Tracklist)
1.  In the Morning
2.  River Run
3.  Moon And Sand
4.  When I am Dead My Dearest
5.  The Lake Isle of Innisfree
6.  Where Do You Go?
7.  Chick Lorimer
(Music by Alec Wilder,  arranged by Stefano Battaglia)

 ステファノ・バターリアは、2003年に自身が尊敬しているというBill EvansやPaul Bleyなどに焦点を当ててのアルバム『Raccolto』(ECM/051117-02)でECMデビューを果たした。
 この6作目は、米国のコンポーザーであるアレック・ワイルダーAlec Wilder(1907-1980)を取りあげている。このワイルダーは、ペギー・リーとかフランク・シナトラなどが歌っていたポピュラー・ソングやクラシックの室内楽、オペラなどの作曲家として知られる人だと言うが、私は知らなかったに等しい。彼はこの作曲家の音楽世界の深い部分に引きつけられていて、ここに挑戦しているのだという。ライブ録音盤である。録音は今や注目のステファノ・アメリオであり素晴らしい。

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 曲はやっぱりイタリア的なしっとりねちこいと言うタイプでない。その分だけイタリアものとしてはちょと別モノのスッキリした抒情性である。私はこのワイルダーの曲に詳しくないので、どれもオリジナルな新曲に聴ける。そしてそれを優しく描くバターリアのピアノは美しい。なにかジャズものを聴いているとは思わない別の世界にいるような気分にもなる。

 M5. " The Lake Isle of Innisfree" は、極めてECM的世界である。トリオそれぞれが一つ一つの音を大切に余韻を味わうべく展開する。15分以上の長曲であるが、途中から明解なピアノのリズムが心を癒やす如く流れ、今度はベースが心の奥に浸透して行く。そして中盤になって、シンバルとピアノによる深層の世界に・・・・と、とにかくアメリオの録音がよく静寂の中に響く音に集中してしまう神秘的世界。これは一人で静かに聴くに最高の曲で、この会場ではどんな雰囲気だったんだろうと想像してしまう。最終章では聴きやすい心地よいピアノを主体としてのリズムが流れトリオの音で満たされて、安堵の中に終わる。

 とにかく全曲きわどいパターンはなく、心に響く優しさと深遠なる響きで貫いていて、曲の合間に入る拍手の会場の音が、聴いている私にとって、ふと我に返るというところである。強いて言えば、最後の曲 M7. " Chick Lorimer" のみ異色で有り、トリオそれぞれの自由度が高い中に乱れの無いハイセンスな技巧を聴かせ、彼らのトリオとしての存在を示している。ただ優しさだけで無く、テクニシャンぶりを訴えてこれで締めくくりたかった気持ちが解るところだ。

(評価)
□ 演奏 ★★★★★☆
□ 録音  ★★★★★☆

■参考としてもう一枚のトリオ・アルバム■
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Stefano Battaglia Trio 「The River of Anyder」

ECM / GER / ECM 2151 8055 / 2011

Stefano Battaglia (p)
Salvatore Maiore (double-b)
Roberto Dani (ds)


  こちらのアルバムは、ECM的世界そのもの。私にはよく解らないが、イギリスの思想家サー・トマス・モアの著書『ユートピア』に出てくるAnyder川に流れる透き通った水をテーマにとの事。この川をはじめ他にも神話や伝説で知られる場所を彼の世界で描いたという作品。全曲Battagliaのオリジナル曲。これこそ彼らの自然から受ける時代を超えた情景を描いている叙情詩。自然と人間の高尚なる存在に目を向けさせる世界感を持ったトリオなのだ。

(視聴)

*     *

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2018年5月12日 (土)

ヨーナス・ハーヴィスト・トリオJoonas Haavisto Trioのニュー・アルバム「Gradation」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (我が家の庭から・・・・「モッコウバラ」   NikonD800/90mm/PL/May,2018)


北欧の世界を感じさせるコンテンポラリー・ジャズ

<Jazz>
Joonas Haavisto Trio「Gradation」
BLUE GLEAM / JPN / BG009 / 2018

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Joonas Haavisto : Piano
Antti Lötjönen : double bass
Joonas Riippa : Drums
Recorded December 17-19,2017 at Kallio-Kuninkala Studio, Järvenpää, Finland


 ヨーナス・ハーヴィスト(フィンランド)は北欧気鋭のピアニストだ。その4枚目のトリオ作が日本のBlue GLEAMレーベルからリリースされた。
 前作は日本でも好評の『Okuオク』(BLUE GLEAM/BG007)で、あれから2年ぶりとなる。日本の「奥」の世界をイメージしてのあの深遠なる演奏に再び触れたいと今作にも自ずから期待してしまう。今作は、ヨーナスのトリオ結成12年目の作品となるようだ。
 彼はなんと世界からの好評を受ける中、2017年には、あの名門ピアノ・メーカーのSteinway & Sonsの専属アーティストにもなったようだ。
 今作、収録全8曲(ハーヴィストのオリジナル7曲、トラディショナル1曲)で構成されたアルバムで、今回も何とも北欧の世界を感じさせるアルバムである。


Joonas001trw(Tracklist)
1.  Surge
2.  Moriens
3.  Sitka*
4.  Flight Mode
5.  Sigh
6.  Emigrantvisa
7.  Polar Night (Bonus Track )
8.  At The Dock

All compositions by Joonas Haavisto exept "6"(traditional)
Teemu Viinikainen : guitar (*印)

 過去の様式から一歩前進しての現代感覚で作り上げるジャズ芸術も多様化しているが、彼らのピアノ・トリオのジャンルはコンテンポラリー・ジャズというところに納まるのかも知れない。
 しかし美旋律ものというものではないが、北欧の自然からの美しい印象が流れてくる。新しいセンスのジャズを構築するのだが、所謂アヴァンギャルドという印象も無く、むしろ郷愁を誘うクラシックな深い世界を感じることが出来る。

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 M3. " Sitka"は、アラスカにある都市だそうだが、この曲のみ美しく優しいギターが加わってイメージを変える。それがこのアルバム・・トータルからみて、一つのアクセント効果をもたらしている。
 M4. " Flight Mode"のようにピアノのエネルギーを展開する曲もあるが、スウェーデンのトラッドというM6. " Emigrantvisa"は、なんとなく郷愁を誘うところがあって北欧の自然豊かな世界を想像させるに十分な曲だ。

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  相変わらずこのトリオは、過去に捕らわれない世界に挑戦しつつも、人の心をつかむ技に長けていて、なんとなく引き込まれていってしまう。そんなところが持ち味で、日本的な感覚にもマッチするところがポイントだ。

(評価)
□ 曲・ 演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴) Joonas Haavisto Trio

 

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2018年5月 4日 (金)

アレッサンドロ・ガラティ・トリオALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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(Nikon D800/90mm/PL/Apr.2018)


ガラティの「メロディー信仰の世界」で描ききった作品
    ~寺島レコード、気合いでリリース~

<Jazz>
ALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1062 / 2018

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Alessandro Galati  : piano
Gabriele Evangelista  : bass
Stefano Tamborrino :  drums

Recorded in Nov. 2017 at Artesuono Studio (Italy)
Recorded, Mixed & Mastered by Stefano Amerio
Producer : 寺島靖国Yasukuni Terashima

 先日このアルバムが到着して、「今年の目玉の一つは遂に手に」と私は感じ取った。1994年のアルバム『TRACTION AVANT』(VVJ007)以来、アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリア・フィレンツェ生まれ)に虜になってしまっている私が、ここに来て今年は彼のアルバムを近年リリースしてきた「澤野工房盤( 『OUTER GOLD, INNER LORD』(AS161) )」と、それに加えてあの寺島靖国が名エンジニアであるステファノ・アメリオの手による録音に興味を持って企画されたこの「寺島レコード盤」と、立て続けに2枚手に入ると言う事になったのである。そんな訳で、この春は私にとっては大変な感動の時となってしまった。
 もともとガラティはイタリアVia Veneto Jazzレーベルからのリリースだが、日本盤としてBLUE GLEAM盤が頑張っていたのだ。ところが、ここに来て澤野工房そして寺島レコードと、今や人気のこの両レーベルが競ってリリースしてくれることは、何に付けても頼もしい話である。

Image_triow そしてアレッサンドロ・ガラティ・トリオは、この現メンバーで落ち着いてますね。ガラティ自身もベースのGabriele Evangelistaには絶対の信頼を置いているし、Stefano Tamborrinoのドラムスの演奏についても”空気をプレイする”と絶賛している。
 それがこのところの『Seals』VVJ090/2014)『On a Sunny Day』(VVJ105/2015)『Cold Sand』 (AS155/2017)などの成功アルバムをリリースしている原点なのかもしれない。

 さて、このアルバムの音に関しては、ステファノ・アメリオの技量を十分に堪能できる。しかもそれには寺島靖国の介入がどこまで具体的にあったかは不明だが、私の聴くところによると見事寺島サウンドの味付けをも感ずることが出来た。そしてそれを聴き分けるには格好のアルバムがある。それは、つい先日リリースされた澤野工房の『OUTER GOLD, INNER LORD』である。こちらも同じガラティ・トリオでアメリオの同じスタジオにおける録音・ミックスであるが、これが若干違うところが面白い。私の気のせいかも知れないが、ドラムスの取り入れが異なっている。この寺島盤ではかなり効果を上げているのだ。
 もう一つ言うならば、さすがガラティのピアノ演奏とアメリオによる録音だ。ピアノの音色が出色の出来だ。寺島靖国の昨年の自慢のアルバム『BALLADS』(TYR-1058/2017)と比較しても、明らかにこちらは格段上の艶のある美しさだ(ピアノは名機Fazioli)。これは、演奏技術、録音技術、ピアノの質による相違であろう・・・この音こそピアノ・トリオの真髄と言いたくなる。

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1. After You Left
2. Stella By Starlight / Victor Young
3. You'll Walk In The Field
4. Blue In Green / Bill Evans
5. Coracao Vagabundo / Caetano Veioso
6. Andre / Alessandro Galati
7. The Two Lonely People / Bill.Evans
8. Nobody Else But Me / J.Kern , O.Hammerstein
9. Moments Notice / John Coltrane

 収録曲は9曲で、彼のオリジナル曲はM6のみ。Bill Evans、 Victor Young、John Coltraneなど登場するが、
M1とM3は、なんとイスラエルのトラッドということだ。この2曲は当然我々には聴いたことがない曲で、まさに新曲なのである。実は私が思うには、これがこのアルバムの一つのポイントにもなっていると思っている。
  それはまずM1. "After You Left" の抒情性溢れたメロディーとガラティの手によるピアノの哀感の響きはもはや究極のイタリア情感そのものである。これを冒頭に持ってきた寺島靖国のしたたかなこのアルバムの狙いが見えてくる。そしてM3. "You'll Walk In The Field"に置いても、ベースの語りやシンバルの響きが全くこのピアノの哀感を更に盛り上げての描いていて、そこにみる世界は歴史的に流れているイタリアの抒情性の奥深さを感じて聴き入ってしまう。
 M2. "Stella By Starlight"も、この抒情性の流れに完全に同化させ、スローにして哀感をも助長する。
 M4. "Blue In Green"はエヴァンスの色がイタリアのやや湿度のある色に描かれる。ここにもガラティの所以たるところが聴ける。
M6. "Andre"は、ガラティの唯一の曲だが、私をしてかって虜にしたこの曲。これはかなり日本を意識しての彼の美学を再現してくれたのではないだろうか。今回の演奏と録音は、かってのものと比較して、かなりドラムスの効果を上げる録音となって、如何にも三位一体のトリオ作品として聴き取れる。
 リズム感たっぷりのM8. "Nobody Else But Me"M9. "Moments Notice" にしても、やや押さえられた演奏で、ピアノの美しい音が生きていて”優美な印象の世界”に導かれる。

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 とにかくこのアルバムは全体を通して流れはバラード調に仕上げられていて、抒情的、耽美的な流れをしみじみと感じさせる心の奥深いところに響くものになっている。ガラティの繊細な感覚による美旋律家たるところの面目躍如、これはおそらく寺島靖国の目指したアルバムに仕上がったモノと言えると思う。当然私は万歳である。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★★
□ 録音    : ★★★★★

(視聴) このニュー・アルバムに関する映像は未だ見当たりませんので・・・

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2018年4月30日 (月)

ポーランドのマテウス・パルゼクMateusz Pałka Trio「SANSA」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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(Nikon D800 / 90mm / 22,Apr.2018)

ポーランドの若きトリオによる現代感覚の思索的世界

<Jazz>
Mateusz Pałka Trio「SANSA」
EMME RECORDS / POL / ERL1704 / 2017

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Mateusz Pałka(p)
Piotr Południak(b)
Patryk Dobosz (ds)
Recorded at RecPublica Studios Lubrza, Feb 24-25, 2017

 このアルバム、つい昨年末にリリースされたものだが、どうも思い出せないのが、このポーランドの若きトリオ・アルバムをどうして購入したか?って事なんです。私の一つの興味はポーランドの音楽事情なだが、ジャズばかりでなくロック畑でもなかなかのものに逢える。そんな中でこのアルバムの接点が何であったのか・・・・?、いずれにしても味のある価値あるアルバムにお目にかかったものだ。
 このトリオは、ポーランド南部にある歴史情緒ある町クラクフ出身の新世代ピアニスト、マテウス・パルゼクMateusz Pałka(1993年生まれ)率いるトリオで、これは記念すべきデビュー作だ。若き彼らにしては、なんか意外にも円熟感すら感ずる思索的で叙情性をもったピアノトリオ作品なのである。
 (参考)このクラクフKrakówの町はポーランド王国の首都、中央ヨーロッパの文化の中心地であったところ。ポーランドは第二次世界大戦では壊滅的な打撃を受けたのだが、ここにドイツ軍の司令部が置かれていたため、戦災を逃れた都市。ポーランドの京都みたいなところ。欧州では私の好きな町の一つ。

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(Tracklist)
1.  Godbye Truth And Consequences *
2.  This Is Not A Time For A Barber *
3.  Sansa *
4.  Maia *
5.  I Love You (C.Porter)
6.  Hungry Young Rabbit *
7.  Mantra (P.Poludniak)
8.  Little Gold Man *
9.  Eleven *
      ( *印 Written by Mateusz Pałka)

 主たる曲群はマテウス・パルゼクのオリジナル曲であるが、ただ抒情的メロディーに流れるので無く、現代的なセンスに溢れたアグレッシブな因子に支えられた中での如何にも思索的な世界を築いている。
 聴いていると、あっと言う間に収録51分が流れてしまう。それは展開の変化が複雑なので飽きないのだ。そしてピアノ・トリオといえどもドラムスは奥に引っ込んでいるのでなく、見事に対等に演じている。M6."Hungry Young Rabbit"は展開も早くドラムスの威勢も良いのだが、不思議に聴きやすい。そしていつの間にかピアノがリズムを築く展開へという変化がうまいのだ。
 イタリア的なしっとり感の抒情性と異なって、やや乾いた味の旋律やリズムが抒情的なのである。そしてそこが新鮮なのだ。
 過去のものに捕らわれない自己の道を突き進んでいるようで、そこが若さなのであろうが、曲の出来は見事で新鮮にして革新的であるも、なんとそこには円熟感すら感じてしまう。
 M9.  "Eleven"は、最も静寂感あるところからスタートするが、ピアノの音が美しく響き、三者の音の間のとり方もそれぞれが 築くところがうまく融合して快感の出来。アルバム・タイトル曲のM3. " Sansa"が思索的で出色。
 これからも注目株のトリオである。

(評価)
□ 曲・・演奏:  ★★★★☆
□ 録音    : ★★★★☆

(視聴)

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2018年4月22日 (日)

エンリコ・ピエラヌンッィEnrico Pieranunziのドビュッシーへの想い 「Monsieur Claude - A Travel with Claude Debussy」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (Nikon D800/ 90mm/19,Apr,2018)



しかし、これはどこか変なアルバムと言ってしまいたい代物

<Jazz>
Enrico Pieranunzi 「Monsieur Claude - A Travel with Claude Debussy」
BONSAI / France / BON180301/2018

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Enrico Pieranunzi(p),
Diego Imbert(b), Andre Ceccarelli(ds)
Featuring: David El Malek(sax-M1,3,6,9), Simona Severini(vo-M4,5,8,11)
Mixed and Mastered by Stefano Amerio

Claude_debussyw あのフランスの作曲家トビュッシーClaude Achille Debussy(1862.8.22-1918.3.25)(←)も今年没後100年なんですね。それにちなんで、なんと注目度も100%のエンリコ・ピエラヌンツィが、ドビュッシーに捧げた作品だ。
  トビュッシーといえば「海」というのがありましたねぇ~、それはそれとして彼の作曲群はクラシック・ファンの中でもそれなりに支持者が多いと思うのだが、私的にはイマイチ夢中になるという感動はなかった。「月の光」とか「亜麻色の髪の乙女」とか聴いたこともあるが、まあ知らない方が多いので、現代ジャズ・ピアノの美旋律最右翼のピエラヌンツィがトリオを中心にして演ずるといことの訳で、興味津々で聴くことになったのである。

(Tracklist)
1.  Bluemantique (d'après Valse Romantique de Claude Debussy) (5:30)
2.  Passepied nouveau (d'après Passepied de Claude Debussy) (4:51)
3.  L'autre ballade (d'après Ballade de Claude Debussy) (5:36)
4.  Romance (Paul Bourget / Claude Debussy) (5:02)
5.  Rêverie (Claude Debussy / arrangement Enrico Pieranunzi) (7:45)
6.  Cheveux (d'après La fille aux cheveux de lin de Claude Debussy) (5:11)
7.  Blues for Claude (Enrico Pieranunzi) (4:28)
8.  Nuit d'étoiles (Théodore de Banville / Claude Debussy) (8:11)
9.  Mr. Golliwogg (d'après Golliwogg's Cake-Walk de Claude Debussy) (5:35)
10.  My Travel with Claude (Enrico Pieranunzi) (2:04)
11.  L'adieu (Guillaume Apollinaire / Enrico Pieranunzi) (6:38)

Ep1w まずは聴いての印象だが・・・・ウーンこれはあまりジャズ・ファンには勧めるものではないなぁ~~。ピアノ・トリオの美しさを前面にと言ったものではないし、そういう中でもM1,3,6,9には、SAXが登場してジャズっぽくなってくれるのだが、どこかしっくりしない。
 M2."Passepied nouveau" は、エンリコ・ピエラヌンツィ(→)らしいピアノが、如何にもクラシック調をベースに聴かせてくれるところは聴きどころと思う。この流れで全編通してくれると、一つの世界を描けたのではと思いつつ、次なる変化に欲求不満になる。
 又、更にM4,5,8,11の4曲は、シモーナ・セヴェリーニの歌をフィーチャーしていますが、ちょっとクラシック・ベースにポップ、フォーク感覚もあったりとして、M8."Nuit d'étoiles"や最後の締めくくりの曲M11. " L'adieu " なんかは発声も充実してなかなか良い出来だと思うのだが、どこか印象がちぐはぐ。一つの曲として聴くにはなかなか完成度も高く魅力もあるのだが、このアルバムとしてどこか不釣り合いと言ったところで終わってしまうところが空しい。
  私がそれでもちょっと注意して聴いたのは、M7. "Blues for Claude"や、M9. "Mr. Golliwogg" のようなピアノ・トリオのやや前進的展開に見るところもあるが、感動というところとはほど遠い。
 M10. "My Travel with Claude" は短い曲だが、ここにみるような、何かを思わせるピアノの響きの世界は嬉しくもなった。このパターンで仕上げて欲しかった思うのである。

 結論的には、私のような中途半端者にとっては、このアルバムの評価は難しく、演奏のレベルは高そうだが、多分これからも聴き込みたいと言うものではなかったというところ。高評価の方が居られれば、その聴きどころとアルバムとしての評価の話を聞かせて頂きたいと思っている。録音は、さすがStefano Amerioで良いです。

(評価)
曲・演奏: ★★★★☆
録音     : ★★★★★

(視聴)

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2018年4月15日 (日)

ポーランド・ジャズ・コンピレーション盤「POLISH LYRICISM」

[My Photo Album (瞬光残像)]  四月の高原

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「融雪の時」・・・・・ No4

ポーランドのリリシズムを追って・・・・・・

<Jazz,  Contemporary Classical>
「POLISH LYRICISM」
CORE PORT/ JPN / RPOZ-10040 / 2018

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Tomasz Mrenca 、 Adam Kowalewski feat.Piotr Wylezol 、 Babooshki 、 Slawek Jaskulke Trio 、 Early Birds 、 Sebastian Zawadzki、 Krzysztof Herdzin、 Paweł Kaczmarczyk

 ポーランド・ジャズといえば、その道を極めんと奮戦しているのは、オラシオ(白尾嘉規)氏ですね。ポーランド・ジャズ界から彼の選曲により先般コンピレーション・アルバム『ポーランド・ピアニズム』(RPOZ-10037)がリリースされ喜んだのだが、ここに来て続いて第2弾の登場だ。
 今回はリリシズム・抒情美が味わえるトラッドやクラシックをベースとしたポーランド・ジャズ音楽を特集している。ポーランド独特の魅力をリリシズムというテーマで一歩深めた作品とみて良いだろう。ジャケ(↑)もなかなか印象深い代物。

(Tracklist)

1 トマシュ・ムレニツァ/ランドスケイプ
Tomasz Mreńca / Landscape
(Tomasz Mreńca) from "Land" album PC 2016 For Tune
*Tomasz Mreńca (vln, synth)

2 アダム・コヴァレフスキ feat.ピョトル・ヴィレジョウ/ララバイ・フォー・ユー
Adam Kowalewski feat.Piotr Wyleżoł / Lullaby For You
(Adam Kowalewski) from "For You" album PC2013 Hevhetia
*Adam Kowalewski (b), Piotr Wyleżoł (p)

3 バブーシュキ/ジャリ・モイ、ジャリ
Babooshki / Żali Moji, Żali
(Trad; Karolina Beimcik, Dana Vynnytska, Michał Jaros) from "VESNA" album PC2013 Multikulti Project
*Karolina Beimcik (vo, vln), Dana Vynnytska (vo), Jam Smoczyński (p), Michał Jaros (b), Dima Gorelik (g), Bogusz Wekka (perc)

4 ヤスクウケ・トリヨ/チリ・スピリット
Jaskułke 3yo / Chili Spirit
(Sławek Jaskułke) from "SUGARFREE" album PC 2003 Sławek Jaskułke
*Sławek Jaskułke (p), Krzysztof Pacan (b), Krzysztof Dziedzic (b)

5 アーリー・バーズ/ニェ・モジュナ・ザビチ・ミウォシチ
Early Birds / Nie Można Zabić Miłości
(Martyna Kwolek / fragment wiersza Odłamałam gałaź miłości Haliny Poświatowskiej) from "Świt" album PC 2017 Hevhetia
*Martyna Kwolek (vo), Marcin Pater (vib), Mateusz Szewczyk (b), Patryk Zakrzewski (perc), Piotr Budniak (ds), Marta Fedyniszyn i Gabriela Szymańska (back vo)

6 セバスティアン・ザヴァツキ/エクリプス・オブ・シャドウズ
Sebastian Zawadzki / Eclipse Of Shadows
(Sebastian Zawadzki) from "Luminescence" album PC2014 For Tune
*Sebastian Zawadzki (p)

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7 クシシュトフ・ヘルヂン/07ズグウォシ・シェン
Krzysztof Herdzin / 07 Zgłoś Się
(Włodzimierz Korcz) from "Seriale Seriale" album PC1998 Krzysztof Herdzin
*Krzysztof Herdzin (p, arr), Mariusz Bogdanowicz (b), Piotr Biskupski (ds), Krzysztof Bzówka (vln), Józef Kolinek (vln), Andrzej Staniewicz (vln), Robert Dąbrowski (vln), Piotr Reichert (viola), Jan Kuta (cello)
 (Krzysztof Herdzin →)

8 パヴェウ・カチュマルチク・オーディオフィーリング・トリオ&ミスター・クライム/インヴィテイション
Paweł Kaczmarczyk Audiofeeling Trio & Mr. Krime / Invitation
(Bronislaw Kaper) from " VARS & KAPER deconstructiON " album PC2016 Hevhetia
*Paweł Kaczmarczyk (p), Maciej Adamczak (b), Dawid Fortuna (ds), Mr.Krime – Wojciech Długosz – (turntablism & electronics)

9 スタニスワフ・スウォヴィンスキ・セクステット/ライフタイム
Stanisław Słowiński Sextet / Lifetime
(Stanisław Słowiński) from "Visions / Between Love and Death" album PC2017 Hevhetia
*Stanisław Słowiński (vln), Zbyszek Szwajdych (tp), Szymon Mika (g), Kuba Płużek (p), Justin Małodoby (b), Dawid Fortuna (perc)

10 スフェア/ブルゴーニュ
Sphere / Burgundy
(Ania Rybacka) from "Synesthesia" album PC 2014 Hevhetia
*Ania Rybacka (vo), Marek Kadziela (g), Kuba Dybżyński (cl)

             - - - - - - - - - -

▶▶
 上記のように全10曲、なかなか中身はジャズの色づけはあるのだが、ピアノ・トリオ、女性ヴォーカル、トラッド、クラシック・ベースの演奏、弦楽6重奏の味付けなどと多岐に渡って多彩だ。ポーランドの民族的な感覚を大事にしているといった選曲。

 M1.Tomasz Mreńca ."Landscape"はアンビエントもの、ちょっとピンと来ないのだが・・・、まあアルバムとしては、次に来たるモノを期待させるには面白いオープニング。
 M2.Adam Kowalewski feat.Piotr Wyleżoł "Lullaby For You"は、ベーシストのコヴァレフスキのピアニスト・ヴィレジョウとのデュオ作品。ベースが結構重く響いてくるが、ピアノがリリカルだ。
 M3.Babooshki "Żali Moji, Żali" 女性ヴォーカルによる民謡ベースのローカル・ムード。
 M5.Early Birds "Nie Można Zabić Miłości" 女性ヴォーカルものでファンタジックな世界。
 M6.Sebastian Zawadzki "Eclipse Of Shadows" クラシック・ピアノ・ソロの世界
 M7.Krzysztof Herdzin"07 Zgłoś Się" 美しさと優しさでは出色。なんとピアノ・トリオと弦楽6重奏の合体。まさにピアノは抒情的そのもの。
Pawel_kaczmarczykw  M8.Paweł Kaczmarczyk Audiofeeling Trio & Mr. Krime " Invitation" これは驚きのピアノ・トリオ+エレクトロニクスといった前衛的なユニットの作品。(Paweł Kaczmarczyk →)

 やっぱりなぁ~~と思わせるのはポーランド命のオラシオ氏の選曲。それはリリカルな世界を描こうとしているのは解るが、ジャズ・ファンとしてはその凝り過ぎにむしろ不満も少々というところ。
 前作の『POLISH PIANISM』もそうだつたが、ポーランドを描こうとしてどうしても”トラッドをリリカルに”に焦点を当てすぎである。その為ジャズの面白さがむしろ後退しては居ないだろうか?、そんな疑問を持ちながらも、まあこのようなアルバムをリリースしてくれたことには喜びもある。なんと言っても一聴には値する。私的にはM7.クリシュトフ・ヘルヂン(Anna Maria Jopekのヴォーカルのバックも務めている)、M8.パヴェウ・カチュマルチクが大推薦。

(評価)
□ 演奏 ★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆

(参考視聴)  ① Krzysztof Herdzin Trio

               *          *

         ② Paweł Kaczmarczyk Audiofeeling Trio

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2018年4月 7日 (土)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio 「OUTER GOLD, INNER LOAD.」

[My Photo Album (瞬光残像)]   四月の高原

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「融雪の時・・・」-2-

優しく美しくそして深遠に・・・・スタンダードもガラティの世界

<Jazz>
Alessandro Galati Trio 「OUTER GOLD, INNER LOAD.」
ATELIER SAWANO / JPN / AS 161 / 2018

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Alessandro Galati: piano
Gabriele Evangelista: bass
Stefano Tamborrino: drums
Recorded on 21,22/08/2017 at Artesuono Recording Studios UDINE, ITALY.
Recorded, Mixed & Mastered STEFANO AMERIO

  いやはや、優しいアレッサンドロ・ガラティ・トリオのアルバムが登場しました。かっては、日本では彼の作品はBLUE GLEAMがリリースしてきたんですが、近年は澤野工房ATELIER SAWANOが担当していますね。昨年の『Cold Sand』(AS 155)を筆頭に、かってのガラティの哀愁の美旋律を呼び込んでくれてます。そして今回はなんと「澤野工房が作品を企画・制作するにあたって常に拘ってきたポイントが二つある。フォーマットとしてピアノ・トリオであることと、素材がスタンダード・ナンバーであること。ジャズという音楽を多くの方に届けたい、それもでき得ることなら生活の一部となるような心地よさと共に・・・」ということの事で誕生した一枚。
 メンバーはこのところ固定したトリオで、とにかく優しく優しく包んでくれるようで美しく深遠なピアノ・トリオでのスタンダード集が誕生したのだ。
  そして録音、ミックスは今時の注目株ステファノ・アメリオだ。

Agtrentinoinjazz(Tracklist)
01. Alone Together (A. Schwartz)
02. Blue Monk (T.Monk)
03. Caravan (D. Ellington)
04. Falling in Love with Love (R. Rogers)
05. Django (J. Luis)
06. Sunny  (B. Hebb)
07. Garota de Ipanema (a.c. Jobin)
08. How Deep Is the Ocean (I. Berlin)

 演奏は、有名なスタンダード曲を、とにかくガラティ流の編曲で優しさに溢れている。そして録音もそれに準じて刺激の無い優しさを出して、聴くに非常に快感である。ピアノはそれほど前面に出ず、ドラムスはやや奥に位置するがシンバル音は繊細に美しく伸びている。これがアメリオ流だ。
 実はこれに平行して、あの寺島靖国がなんとアレッサンドロ・ガラティに、このアメリオと共に挑戦していて、そのアルバムもTERASHIMA RECORDSから近々リリースされる。アルバム『Shades of Sounds』(TYR1062/2018.4)だ。とにかく楽しみなのである。 まあ1994年のアルバム『TRACTION AVANT』(VVJ 007)以来ガラティ・ファンの私にとっては、当に嬉しさいっぱいのこの春である。

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 このアルバムで驚いたのは、私が子供の頃から好きなM03." Caravan" (D. Ellington)が、あの疾走するリズムと打って変わってスロー・ナンバーでしっとり聴かせるのである。ガラティは自己のオリジナル曲によるアルバムに拘りがあるというだけあって、こうしてスタンダード取りあげさせると、それは素材でしかなくやはり彼自身の世界に溶け込ませるのである。
 又、そうは言ってもM02." Blue Monk" (T.Monk)M04. "Falling in Love with Love" (R. Rogers)では、スウィング感をしっかり描いて、決してジャズの楽しさも忘れては居ない。
 M07. "Garota de Ipanema"  (a.c. Jobin)のブラジルからユーロへの変容がこれまた聴いての楽しみというところだ。
 
 まあとにかくこのガラティの世界はスタンダードものにしても、究極は彼自身の世界そのものであって、自分のオリジナルと大きな変わりは無い。つい数年前にはやや実験色の強いスリリングな世界を”アヴァンギャルドavant-gardeな”と思わせる革新的なところをかなり試みていたが、このところ彼の本質的なユーロの美旋律に原点回帰していて私にとっては至福の世界である。
 ここで下手な評論は止めて、是非とも聴いて頂くことをお勧めして、もうすぐに出る寺島レコードにも期待しつつ一締めとする。

(評価)
□ 演奏 ★★★★★
□ 録音 ★★★★★

(参照) アレッサンドロ・ガラティ(灰とダイアモンドと月の裏側の世界)

(参考視聴) 

  *   *   *

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2018年4月 4日 (水)

フロネシスPHRONESIS 「A LIVE」

[My Photo Album (瞬光残像)]   四月の高原

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「融雪の時」-1-


欧州情緒を秘めての緊迫感に圧倒される・・・・
現代感覚のモダン・ジャズ

<Jazz>
PHRONESIS 「A LIVE」
AGATE/Inpartmaint Inc./ JPN / AGIP-3608 / 2017

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Jasper Høiby (bass)
Ivo Neame (piano)
Mark Guiliana (drums)

 デンマーク出身のベーシスト・ジャスパー・ホイビー Jasper Høiby を中心にロンドンで活動するピアノトリオPHRONESISの2010年のUKツアーを収録したもので2枚組。
 これは2010年にリリースされた3rdアルバムだが、隠れた名作とされており、ここに国内にてCDリリースとなったらしい。ちなみにこのトリオは今日までに7枚のアルバムをリリースしている。

Jasperhoiby_dsc01w ジャスパー・ホイビー(→)は77年生まれで40歳、コペンハーゲンのベーシストであるが、メンバーは彼自身の活躍の場である英国におけるミュージシャンでの構成であるが、このアルバムはドラムスには、アヴィシャイ・コーエン・トリオの注目株の米国のマーク・ジュリアーナMark Guiliana が参加している。本来このトリオのメンバー構成はドラムスは、2007年の1stアルバム『Organe Warfare』からアントン・イガーAnton Egerとなっているが、この時は替わっている。又ピアノは、私はマークしていなかったのだが、英国の1981年生まれの若きサキソフォン奏者でもあるという現代ジャズ天才肌のマルチ奏者のアイヴォ・ニーム  Ivo Neame が担当している。
 近年はJasper Høiby、Ivo Neame、Anton Egerに落ち着いたトリオで、彼ららしい三者のバトルを繰り返している。(最近作『Parallax』(EDN1070))

(Tracklist)
▶Disc 1
1. Untitles #1
2. Blue Inspiration
3. French
4. Eight Hours
5. Abraham’s New Gift
6. Rue Cinq Diamants
7. Happy Notes
8. Love Songs
▶Disc 2
1. Untitled #2
2. Smoking the Camel
    (all music by Jasper Høiby)


Giuliana_markimage1w_2 とにかく優しいピアノ・トリオではない。ここではジャスパー・ホイビーの重低音ベースが響き渡るが、マーク・ジュリアーナ(→)のドラムスも決して奥に引っ込んでいないで明解にリズムを刻む。ピアノ・トリオではあるが、ピアノ主役にしてドラムス、ベースがバックのリズム隊として支えていくというパターンではない。見事な三者対等のインター・プレイだ。録音もピアノだけがいやに前に出ているのでなく、三者が対等にその位置を確保され明解にそのプレイが聴く事が出来る。ライブ録音であるため時折会場のオーディエンスの音が入るがそれ程気になるほどでなくうまく仕上げている。

 しかしライブだけあって、長曲が多い。10分以上が5曲ある(Disc1-M2, M5, M7, M8, Disc2-M2 )。それだけ三者それぞれが納得の演奏で仕上げにもっていってのトリオ作品とみる。
 
  全曲リーダーのジャスパー・ホイビーの作曲。ユーロ独特のピアノの哀愁ある美旋律でうっとりというタイプでなく、ピアノの響きはやはりどこか哀感を含んだ響きを繰り返す中に、ベースは独自の低音を響かせるのだが、なんとそれはしっかり融合して聴くものに快感を味合わせてくれる。そしてこれに又ドラムス、シンバルの響きが的確に誘導していくパターンはスリリングで緊迫感あってにくいところだ。

 特にハイテンポで疾走感あるベースに平行してドラムスのステック音が共鳴し、そこにピアノが乗ってくるM5."Abraham’s New Gift"では、10分の中に、ベース、ピアノ、ドラムスの順にそれぞれの締める位置が明確に演じきり、聴く者にとっての緊張感と共に、十二分にトリオのインター・プレイが次第に天空に昇華する気分を楽しませてくれる。

Ivo2 M6."Rue Cinq Diamants"は、静かに美しいアイヴォ・ニーム(→)のピアノ・プレイから始まって、ドラムスの響きが緊張感を高めて行く。そして中盤にはベースがやはり深遠な世界を描いて次第に三者の交錯は格調高く展開。
 とかく全曲無駄なしのトリオ・アンサンブルが光り、つい引き込まれてしまう。
 最後の締めくくりDisc2-M2."Smoking the Camel"は、どことなく哀感あるピアノ旋律、響くベース音、シンバル音がメリハリを付ける・・・・といったなかなか深遠な流れから始まって、中盤のドラムス・ソロが次に来る三者のアンサンブルの妙を暗示する。後半もスティックが軽快な流れを聴かせてのドラムスのソロが説得力をみせ、そして三者の競演に展開。これぞジャズと思わせる。

 成る程このアルバムは、ユーロのロマンとスリリングな現代ジャズを演ずるピアノ・トリオの隠れた名作と言うのが解るところ、お勧めだ。

(評価)
□ 曲・演奏    ★★★★★
□ 録音    ★★★★☆


(視聴)

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2018年3月31日 (土)

エドガー・クネヒトEdgar Knecht 「DANCE ON DEEP WATERS」

<My Photo Album (瞬光残像)> 2018-No9

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「瞬光・・・・」  (Feb. 2018 撮影)

とにかくピアノの美旋律に酔う

<Jazz>
Edgar Knecht 「DANCE ON DEEP WATERS」

Ozella Music / Germ. / OZ 047 CD /2013

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Edgar Knecht(p), Rolf Denecke(B)、Tobias Schulte(Dr)、Stephan Emig(Perc)

2017jazzbar 昨年の寺島靖国の人気コンピレーション・アルバム『Jazz Bar 2017』(TERASHIMA RECORDS/TYR-1061)(→)の冒頭を飾ったEdgar Knecht による"Lilofee"という曲がある。これが又何とも言えないピアノの美旋律、色々と好きでこの道は聴いてきたとはいえ、とにかく私の知らなかったピアニストである。そんなことで探ってみたのがこのアルバム。
 これは2013年リリースものであって(その後のニュー・アルバムは無し)、遅まきながら寺島靖国は、2017年盤の「Jazz Bar」に選んでいるのだが、それは多分これを落としておいてはいけないと言うことだったのかも知れない。

 このエドガー・クネヒトEdgar Knecht はドイツのジャズ・ピアニストだ。1964年生まれというから、既に円熟期。
 これはピアノ、ベース、ドラムスのトリオに、曲によりパーカッションを加えてのカルテット作品で、1stアルバムは2010年の『GOOD MORNING LILOFEE』(OZ 032CD)で、それに続いてのこれは同メンバーによる2ndアルバムだ(Dr, Perc は若者)。それからすると彼名義のアルバム・デビューは、経過はわからないが遅咲きといえば遅咲きである。

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(Tracklist)
1.  Lilofee
2.  Gedankenfreiheit
3.  Tiefe Wasser
4.  Nachttraum
5.  Fenjas Lullaby
6.  Schwesterlein
7.  Frhling
8.  Wiegenlied

 全曲、エドガー・クネヒトのオリジナル曲構成だが、彼の自国ドイツのトラッド、フォークをベースにしての作品が主力のようだ。その為か、なんとも郷愁を呼ぶ優しさとメローなムードそのものの曲が出てくるのだ。彼のピアノの美旋律もこれでもかとふんだんに散りばめられている。
 特にM1. " Lilofee" 、M3. " Tiefe Wasser"、 M5. " Fenjas Lullaby" とそこにある美的世界は、ユーロ独特のクラシック調のすがすがしさも感じられる。
 M6. " Schwesterlein"を聴いてみて解るが、ピアノ以外にもベースにもどこか美の味付けのあるところが感じられ、その活躍も快感である。この曲は後半のアップテンポに於いてみられるパーカッションの活躍と、カルテット4者の息が合っている様は極めて印象は良い。
  M7. " Frhlig"この曲のように、いかにも民族フォークの流れからの曲もある。
 最後のM8. "Wiegenlied" は、ゆったりと静かな中にこのアルバムの価値感を高めるべく郷愁と思索の心の安まる世界を演出していて、クネヒトの心が滲んでいるようにも聴けた。

 オーソドックスなピアノ・トリオにパーカッションを加えたこのカルテット構成は、クネヒトにとっては納得してのパターンとして演じてきているようだ。とくに長めの曲はスタートはピアノの美しく優雅な調べからスタートして、次第に後半にアップ・テンポに変化して締めくくるパターン。そのアップ・テンポにおいてパーカッションが生きてくる(M2, M4, M6)。
 どこかクラシック調の流れもあって品行方正(笑)にしてオーソドックスなアルバムといったところで、あらゆるミュージック・ファンに愛されそうだ。

(評価)
□ 曲・演奏: ★★★★★ (ジャズの芸術性を極めるというので無く、あらゆるジャンルに適応する世界を描ききったところを評価)
□ 録音    : ★★★★☆

(視聴)

**

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2018年3月27日 (火)

ヘルゲ・リエン&クヌート・ヘムHelge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No8

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「春到来」        

ドブロ好きにはたまらないのかも・・・・しかし私にとっては欲求不満

<Jazz>
Helge Lien, Knut Hem  「Hummingbird」
Ozella Music / Germ. / OZ079CD / 2018

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Knut Hem - Dobro / Weissenborn
Helge Lien - Piano


  このアルバムは、今年に入って早々にお目見えしたものだが、私の狙いはノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・プレイなのである。このところの彼は、昨年の前作であるヴァイオリニストのAdam Bałdychとの共作 『Brothers』(ACT9817-2)もそうだったが、今作も主役から降りて支え役のピアノ・プレイを披露している。おそらく・・・そうだろうと想像して、今まで聴かなかったのだが、少々暇になっての結果、ここに聴くに至ったというところなのである。

 中身はリエンと同国ノルウェーのクヌート・ヘムKnut Hem(1963年-) とのアコースティック・デュオ作品と言っているが、全く対等の両者のインタープレイの作品という印象は無い。それは相い対する楽器との性質が大いに関係するところなのであろうが、今回はリエンのピアノの相手は、ギターの発展形のようなドブロそしてワイゼンボーン(ラップスライドギター)という楽器であり、その結果がこの作品だ。このギター系の持つやや強烈なサウンドを前面においての演奏であるので、ピアノはサポート役に甘んじ、主役的メロディーを奏でるのはドプロということになっている。それもおそらくこのアルバムの目的としたるところであったのだろうと推察され、まあ不思議は無いとしておこう。

Hlkhw

(Tracklist)
1. Dis (03:58) *
2. Take Another Five (4:31)  *
3. Winterland (7:20) *
4. Moster (3:27) #
5. Music Box (2:57) *
6. Rafferty (5:41) *
7. We Hide and Seek (4:39)
8. Hummingbird (6:42) #
      (*印:Knut Hem  #印:Helge Lien)


Formhall112017holnsteiner049web 上のTracklistに見るように、曲はオリジナル曲が主体だが、クヌート・ヘムが5曲、ヘルゲ・リエンが2曲と、やはりこのアルバムの主役はヘムのドブロ/ワイゼンボーン(→)演奏とみてよいのだろう。やはり曲の展開はドブロが主役で、リエンのピアノはそれを支えるが如く、曲を優美に流している。
 とにかくドブロは高く強く響く。これが好きな人にはたまらないかも知れないが、私自身は好みからは外れるといったところ。(それって不思議なのだが、ロックとなれば、エレキ・ギターが泣いて、キー・ボードはそれを支えるパターンで納得するんですが)

 M4.". Moster"
と M.6" Rafferty" では、ようやく彼のピアノ・メロディが少々聴けるので、なんとなくホッとする。
 タイトル曲のM8." Hummingbird" はリエンの曲で、冒頭ピアノから入るが、彼のピアノの調べもドブロに打ち消される。いずれにしてもこの曲も穏やかに奏でられる美しい旋律が印象的なところだが、私としてはリエンのピアノの調べで聴きたいと思うのである。だが、なかなかそれも許されない。ここでも結局間奏程度に終わってしまう。

 このアルバムは、ゆったりとした優しくほのぼのとしたメロディーの美しい曲集である。にも関わらず、結局何だったんだろう?と、若干欲求不満に終わったアルバムでもあった。

 もともと私はよっぽどでないと、このようなギター系の楽器とピアノのデュオってあまり納得していない。それはピアノというものは、ギターやヴァイオリンとの関係では、その果たす役割が私の期待するところから薄れてしまう為かも知れない。
 ここに見るが如く、ピアノの音とドブロのアンプを通しての音との関係とは、ピアノの調べが優位と言うことには録音による工夫というか操作がない限りはやはりあり得ないと思う。そしてその結果はドブロの世界に落ち着くのである。それがどうも空しいというのは、つまるところ"私の個人的好み"から来るモノといって良いのだろうが、それを如実に示されたアルバムであった。
 お笑いであるが参考までに、・・・・ピアノにはやっぱりベースとドラムス(勿論、シンバルの音を含めて)が合いますね。だからその構成のピアノ・トリオが盛んなのでしょう。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(参考視聴) Knut Hem のDobro演奏

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