ユーロピアン・ジャズ

2021年4月20日 (火)

エスペン・エリクセン espen eriksen trio 「end of summer」

複雑性を避けた聴きやすい自然と人間界の叙情的世界

<Jazz>

espen eriksen trio 「end of summer」
rune grammofon / Import / RCD2216 / 2020

Endofsummerw

Espen Eriksen (p)
Lars Tormod Jenset (b)
Andreas Bye (ds)

all selections by Espen Eriksen

 ノルウェーのピアニストEspen Eriksen、ドラマーAndreas Bye、ベーシストLars Tormod Jensetによるピアノ・トリオの5作目となる最新作。本作はロックダウン中のオスロで2020年4月に録音されたものという。
 ほぼ10年前にアルバム『you had me at goodbye』(RCD2096/2010)とうアルバムに接したのが私はこのトリオを知った初めなのだが、当時の記憶としてかなりメロディーを前面に出した接しやすい演奏のトリオという印象であった。そんなことから今回も聴いてみようとしたものだ。

Espeneriksenw (Tracklist)

1 Where The River Runs
2 Back To Base
3 Dancing Demons
4 End Of Summer
5 Transparent Darkness
6 A Long Way From Home
7 Reminiscence

 北欧のピアノ・トリオは、やはりどこか情景的に自然界の不思議さに通ずる演奏モノが多いように感じているが、そこが私にとっては魅力となっている。そこでこの久々に聴いたトリオはどうかというと、まず冒頭の曲M1." Where The River Runs"が、なんと自然界の深遠さを描くが如く曲として登場する。複雑さを避けた非常に聴きやすい美しいピアノの旋律と、ベース、ドラムスは控えめで演じ、やはりそれ程深くなく、又暗くない叙情的曲として迫ってきた。

Espeneriksentriokoncert

 そしてM2."Back To Base"、 M5."Transparent Darkness"など難しさという感覚は全くなく、淡々と演じていていやらしさが無い。ちよっとその点はある意味では物足りないということにもなるかも知れない。
 M3."Dancing Demons"は踊る魔神(守護神)というのだろうか、リズムカルな中にもちょっと伝統的な北欧の地を思わせる。
 アルバム・タイトル曲M4." End Of Summer"は、なかなか美しいピアノの旋律が軽快なリズムにのって心地よく演じられ、やっぱり今回の看板曲なんだろうなぁと感ずるところ。これをやりたかったんですね、ジャズというところを超越している。
 M6."A Long Way From Home"は、タイトルのせいもあるが、何となく物語的世界。それも派手さは無く、しかし暗くもなくて北欧の物語なんだと想像する。
   M7."Reminiscence"は回想と言って良いのか、どこか懐かしさのある抒情性もある世界で、人間性と自然の調和が感じせられる静かでなんとなく哀愁の雰囲気も。

 いずれにせよ、真摯な物語性のある世界で、非常に聴きやすい難しさの無いところに奥ゆかしさのあるアルバムだ。ジャズとしてトリオとしての三者のバトル的世界の印象は薄く、むしろ協調の世界。余計なものをそぎ落とす、というコンセプトがあるとか、所謂アンサンブルの面白さというところでは無いが、音を静かに大切にしての演奏というところを築いている。

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)

| | コメント (0)

2021年4月16日 (金)

ヤコブ・ブロ Jakob Bro 「UMA ELMO」

明らかに別世界を描く回顧曲の出来は芸術的

<Jazz>

Jakob Bro, Arve Henriksen, Jorge Rossy 「UMA ELMO」
ECM / Germ / ECM2702 / 2021

Umaelmo

Jakob Bro(guitar)
Arve Henriksen(trumpet,piccolo trumpet)
Jorge Rossy(drums)

Recorded August / September 2020
Enginneer : Stefano Amerio

  デンマークのギタリスト、ヤコブ・ブロがECMのリーダー作としては5枚目のアルバムをリリース。
 今回はノルウェーのトランペッターArve Enriksenと、スペインのドラマーJorge Rossyにより構成されたトリオによるもので、このメンバーは、初めての共演と言うところらしい。
 注目は、トランペッターArve Henriksenとの競演で、彼の演ずるところ特にECMのアルバムとくると、ささやくような優しく寄り添ってくるサウンドが、かってより注目されていたのであり、私のような張り上げるドンペットの調べはご遠慮するタイプにも十分耐えられるところにあるというところから聴いてみたいと思ったものだ。又Rossyは、あのBrad Mehldauが名を上げた初期のトリオでの活躍が注目されるところで、いろいろと興味が沸くところにある。
 ユーロ・ジャズとしては、ブロ自身が尊敬する故トーマス・スタンコへのトリビュート曲"To Stanko"などの収録もあり、どのような曲として演じられるか興味もあり期待を持たせる。

Jakob-bro (Tracklist)

1. RECONSTRUCTING A DREAM
2. TO STANKO
3. BEAUTIFUL DAY
4. MORNING SONG
5. HOUSEWORK
6. MUSIC FOR BLACK PIGEONS
7. SOUND FLOWER
8. SLARAFFENLAND
9. MORNING SONG (VAR.)

 全9曲と少なめだが、11分、9分、8分以上という比較的長い曲を演じており、十分聴き応えあるアルバムである。
 又ヤコブ・ブロの、大自然の姿を描くような不思議なエレクトリック・ギター世界、それにアルヴェ・ヘンリクセンのトランペットの演ずるところは"別世界を描く音色"と言っても過言でなく、非常に特徴的でまさに芸術的。ホセ・ロッシのドラムスは。この二者の音色を受けてのことか、かなり控えめに押さえた演奏といったところだが、曲M3.M5.においての如く、しっかりメリハリのあるところは、曲の特徴を模るによい色を添えて、ジャズ世界を構築している。

Jbtrio

 とにかくこの描く世界は、現実界から一つも二つも上層に普遍的に流れてゆくが如き感覚に陥り、現実界から離れて人間としての生命体に向かってゆくという感覚になって聴き入ったところだ。
 全曲、リーダーのギタリスト・ブロのオリジナル曲ということで、ギターが前面に出て弾きまくるのかと思いきや、全く予想に反してむしろトランペッターのエリクセンがメロディーを流し、どちらかというとギターはサポート役に感ずる立ち位置である印象だ。それもミニマル・ミュージック的展開もみせる。
 そしてそのトランペットが、こんな優しさと親しさに満ちた音色もあるのかと思わせる世界が主役となり、全編なにか静かに回想している状況を聴くモノに造らせるという不思議と言ってよいやや暗めの叙情的世界なのである。
 
 ECMの看板でもあるアンビエント世界と言うには、ちよっと違った世界で、これも聴くものの人生の歴史から築かれる"それぞれの持つ世界の回想の世界"でもあるといいたいところ。とにかく希有世界が漂って私的には評価の高いところにある。
 代表的なのはM1."Recintructing A Dream"ですね。

 又、エンジニアは、既に評価が高いStefano Amerioで、特にドラムスの配置と音質は見事で、トランペットとギターの流れにビシッと決めるところは決めて心地よい。

 ロンドン・ジャズ・ニュース紙によると「暗く叙情的な回想曲」で ”この音楽には大きな深みがある "と評しているようだが、成る程その世界と言ってもいいものだっだ。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100
□ 録音    88/100

(視聴)

*

 

| | コメント (0)

2021年4月 7日 (水)

アルボラン・トリオ ALBORAN TRIO 「ISLANDS」

ジャズオーディオ・ディスク大賞2020に輝いたアルバム
・・・トリオ演奏の素晴らしさ満載

<Jazz>

ALBORAN TRIO 「ISLANDS」
自主製作 / IMPORT / ALB001 / 2020

81ofy220jn850

Paolo Paliaga (piano : Fazioli F 278 Grand Piano MkⅢ)
Dino Contenti (Double Bass, Percussion)
Ferdinando Farao (Drums)

Recorded, Mixed and Mastered by Stefano Amerio

 過去のアルバムが名門Act Music からリリースされ、既に話題になっていたアルボラン・トリオの新作(自主製作盤)である。
 このトリオはリーダーのイタリアのパオロ・パリアーガ(ピアノ)を中心に2005年に結成された。現在のメンバーはミラノ出身のフェルディナンド・ファラオ(ドラムとパーカッション)とディノ・コンティティ(ベース)からなる。このトリオの名前のアルボランは、スペイン・アンダルシア沿岸と北アフリカ・モロッコの間にある地中海の無人アルボラン島に由来しているという。音楽の神秘性を重視し、ヨーロッパ音楽の伝統とアフリカのリズムの魅力に影響された世界を構築するを目指し、彼ら自身のオリジナリティを重視した世界を構築している。
 そして今回の注目は、何と言っても今や人気のエンジニア=ステファノ・アメリオが録音担当していて、マスターからミックス全ての行程に関わっての彼のセンスで作り上げたという代物である、よってその音世界も注目のポイント。そしてそれが功を奏して、「ジャズ批評」誌の「ジャズオーディオ・ディスク大賞2020」のインストゥルメンタル部門のトップ賞(金賞)に輝いている(2021年3月号)。まあとにかく、後藤誠一氏、藤田嘉明氏らがベタ褒めであった。

A70340613775293926912jpeg (Tracklist)

1. Les Voix S’En Vont
2. Human
3. Canto Quantico
4. Earth Breath
5. Puerto Natales
6. Multiple Frames
7. In Un Altrove
8. Frug
9. Origine E’La Meta
10. Due Passi Nel Mare
11. Triodiversity
12. Essential Is No Longer Visible
13. Willywaw
14. Arriva Entre Los Picos

 聴いてみてのお楽しみであるが、哀愁を帯びた叙情性と旋律美の香りが襲ってきて、それに加えアフリカの伝統のリズムのニュアンスまでも感じさせるという、さまざまな伝統の音とリズム、そして旋律までも新しい世界観を持った、ジャズ・サウンドが迫ってくる。
 ジャズオーディオ賞ということで、録音の良さがアッピールされてくるが、なになに演奏もトップ・クラス。トリオのスタイルは、各コンポーネントのハイレベルな相互作用が見事で、ソロとなるとこれまた出色の演奏。いずれにしてもバルカン音楽に基礎があって、アフリカの伝統のリズムが何となく響いてきて、それもそれに傾いてしまうのでなく、あくまでもユーロ・ジヤズの色彩に色づけしたニュー・サウンドといった感じである。

644bb5217b794d60aafda48478a7cb79


 M3."Canto Quantico"は、神秘的美的広大な世界が見えてくる。
 M4."Earth Breath" の疾走するパーカッション・プレイが聴きどころだが、それに唸るベース、異空間にさそうゆったりとしたピアノと圧巻。
 M5."Puerto Natales" ピアノのその一つ一つの音の余韻ある透明感ある響きは素晴らしい。これがFazioliをもって演奏する心意気なんだろうと聴いてしまう。この曲のドラムスの味付けも素晴らしい。
   M7."In Un Altrove" の前衛性も頼もしい。しかし新メンバーのファラオはいいですね、その軽快ドラムスと重低音のピアノとベースとの対比と融合は聴きどころ十分。
 M2."Human", M8."Frug"のベースのアルコ奏法も特徴的。
 M9."Origine E’La Meta",  M10."Due Passi Nel Mare",M14."Arriva Entre Los Picos"に聴くピアノの旋律も心に響く。
   

   このアルバムの素晴らしさは、トリオ演奏にある。三者がそれぞれ独特な味を持ちながら交錯し融合してゆくところが聴き処だ。それもドラムス、べース、ピアノがそれぞれしっかり定位を持って影にならず聴き取れる録音技法の素晴らしさも加担している為だろう。シンバルの繊細な響き、ベースの深い低音の響き、そしてピアノの硬質にして透明感のある響き、出色である。
 結論的には、オーディオディスク大賞は大賛成のアルバムであった。

 

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     95/100

(視聴)

| | コメント (0)

2021年3月29日 (月)

マッシモ・ファラオ Massimo Faraò 「Nuovo Cinema Paradiso」

ジャジィーな演奏に期待しないで、ポピュラー的演奏で
・・・エンニオ・モリコーネをトリビュート

<Jazz>

Massimo Faraò 「Nuovo Cinema Paradiso」
~ tribute to Ennio Morricone
Venus Records / JPN / VHCD1286 / 2021

81gvw

MASSIMO FARAO マッシモ・ファラオ (PIANO)
DAVIDE PALLADIN ダヴィデ・パラディン (GUITAR #1-6,8,9,12)
NICOLA BARBON ニコラ・バルボン (BASS)
BOBO FACCHINETTI ボボ・ファッキネネィック (DRUMS)
CESARE MECCA (TRUMPET #12)

Recorded at Riverside Studio in Torino on July 21&22,2020

Engineered by Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara
Produced by Tetsuo Hara

Enniomorriconew  イタリアのジャズ・ピアニスト、マッシモ・ファラオが、マカロニ・ウェスタンで人気を上げたイタリア映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネ(1928-2020)(→)の名曲を、シネマ・ジャズに仕立て上げたアルバム。もともとあまり欧州独特の味というのは無く、又Venusレコードというところで、興味もそれ程無かったピアニストだが、今回のこのエンニオ・モリコーネを取上げたと言うことで、なかなか興味をそそるのも上手というか、商業的にもうまいというか、そんなところに操られて手にしたアルバムである。

(Tracklist)

1_20210329081901

  やはり思った通りの一通り演奏しましたという感じの出来だ。いつも思うのだが、彼の演奏にユーロ・ジャズの味がどうも感じない。Venus Records との連携の結果であろうか、今回のように一人の作曲者に絞っているので、その対象が何を描きたかったかというところにほんとに踏み込んで演奏しているのかと、ちょっと疑いぽくなってしまう。作品という感じがしないのだ。

Xat1245697832x

 ここで前回取上げたマッシモ・ファラオ・トリオのアルバムは、ストリングス・オーケストラとの共演の『Like An Elegant Wine』(VHCD1278/2020)であったが、あれも変化というモノが無く、ポピュラー演奏版といった感じであった。今回もとにかく一通り演奏しました聴いてくださいというアルバムで、ジヤズの面白さというところがあまり感じないアルバムなのである。

 そしてこのアルバムの特徴は、トリオにギターを加えたところだが、それもピアノと交互に旋律を奏でるという手法であまり面白くない。ジャズ・ミュージシャンとしてのアドリブや展開の色づけというところでは、ちょっとそのあたりが見えたのがM2."Il Buono Il Brutto Il Cattivo 続・夕陽のガンマン"であった。
 まあ、ポピュラー音楽的に、多くの誰にも聴けるというところを狙っての刺激の無い演奏というところではこれで良いのかも知れない。
 私が期待したM3."Gabriel's Oboe"、M5."C'era Una Vilta Il West"では、単に旋律をたどった演奏。そしてM10."Playing Love"の「海の上のピアニスト」のテーマ曲、これもあの哀感がもっとあって欲しかった。
  いずれにしても映画音楽であるので、もう少し遊び心の展開と、叙情的なジャズ・アレンジが欲しかったと思うのである。しかしこれは単なる私の希望であって、これはこれで"聴きやすさで良し"とするところもあるのだろうと、取り敢えずVenusレコードの希望に添ったものだったのかもと思うのであった。

(評価)
□ 編曲・演奏   75/100
□ 録音      83/100

(試聴)   このアルバム関係が見当たらないので、参考までに・・・

 

| | コメント (0)

2021年3月21日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi 「THE REAL YOU」

ピアノとベースのデュオでエヴァンス・トリビュート・アルバム

<Jazz>

Pieranunzi , Fonnesbaek 「THE REAL YOU」
Stunt Records / Denmark / STUCD 20132 / 2021

71wdfxpss3l_ac850_20210317195801

Enrico Pieranunzi (piano)
Thomas Fonnesbæk (bass)

  イタリアのベテラン・ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィが三年前にベースのトーマス・フォネスベック(1977デンマーク生まれ)とのデュオ『Blue Waltz』作品を発表したが、それ以来のこのコンビでの二作目の登場。それもなんと今や伝説のビル・エヴァンス(1929-1980)のトリビュート・アルバムとして気合いが入っている。
 このところエンリコも多作で又々の登場となるが、意外に脇役的アルバムも多かったところに、おそらくこの企画は彼自身の意欲から産まれたものであろうと期待していたものである。
 まあエンリコと言えば、私としてはソロやトリオものにおいても、美旋律叙情派演奏が期待面の大きいところだが、近年は若干その様相を変えインタープレイの妙に傾いているのかと思わせるところがある。そんな点がどうかと興味を持って手にしたアルバム。

Pieranunzifonnesbaek1_c_ (Tracklist)

01. Hindsight *
02. Only Child (B.Evans)
03. The Real You *
04. Passing Shadows *
05. Our Foolish Hearts %
06. Sno' Peas 
07. Il Giardino Di Anne *
08. I Will Look After You # 
09. Dreams And The Morning *
10. Interplay (B.Evans)
11. More Stars %
12. People Change #
13. Bill And Bach %

 *印 Enrio Pieranunzi  ,  #印 Tomas Fonnesbæk ,  %印 Enrico & Thomas

Pieranunzifonnesbaek_c_annettahrends1500

  M01."Hindsight" 案の定、美旋律というよりはインタープレイ美学。
  M02."Only child" で、ビル・エヴァンスとの対峙を演ずる。テンポ・アップで演奏しており、エヴァンスの演奏にみるところの何となく物思いの回顧に誘導される世界は、残念ながら感じない。
 M03 "The Real You"は、エンリコのオリジナル曲で、アルバム・タイトル曲、聴きやすいメロディーが流れるが感動はない。
 M04 "Passing Shadows "は、やや哀愁のあるピアノ旋律から入って、中盤のベース演奏も印象深い。次第にアクティブな演奏に転じて、ここでは"ビル・エヴァンス奏法"の雰囲気は、それなりにイメージさせられる。M03、M04の二曲はクラシック寄りの美的演奏。
 M05."Our Foolish Hearts "ピアノが流すオリジナル旋律に、ベースが流す"My foolish heart"曲で作り上げる技に驚かされる。奇抜な手法での美しさに脱帽。見事な老獪な技の世界。
 M07."Il Giardino Di Anne"は、M3に似た技法だが刺激は少ない。
 M08."I Will Look After You"はフォネスベックの曲となっているが、エンリコの世界そのもの。
 M10." Interplay" 再びエヴァンス曲の登場、新しさは感じなかったが、M11." More Stars "の歯切れの良い高速インタープレイが圧巻。
 M12."People Change" ラスマエのゆったり美学。
 M13." Bill And Bach"のエヴァンスとバッハのテクニックを凝らしての対比が面白い発想。中盤のバッハに痺れる。

 エンリコのピアノは、相変わらず端正にして歯切れの良いピアノ・プレイだ。ドラムス・レスでベースとのデュオとしたところにインタープレイを描くにはとりやすかった手法か。所謂、"哀愁抒情性の美学"のアルバムではなく、"インタープレイ美学"であったと結論づける。まあ、彼らの満足度が大きいかも知れない。それがビル・エヴァンス世界のトリビュートとすればうなずけないことも無い。

(評価)
□ 曲・演奏 : 85/100
□   録音   : 88/100

(試聴)   "Our Foolish Hearts"

| | コメント (2)

2021年3月17日 (水)

ステファニア・タッリーニ Stefania Tallini Trio「UNEVEN」

クラシック/ジャズ界で活躍の女流ピアニストのジャズ・ピアノ・トリオ作品

<Jazz>

Stefania Tallini & M.Bortone, G.Hutchinson「UNEVEN」
ALFA MUSIC / Import / AFMC226 / 2020

Unevenw

Stefania Tallini ステファニア・タッリーニ (piano except 02, 11) (electric piano on 02, 11)
Matteo Bortone マッテオ・ボルトーネ (double bass except 12)
Gregory Hutchinson グレゴリー・ハッチンソン (drums except 12)

Recrded at Forward Studios ,Grottaferrata(Rome) ,2020

  イタリアのステファニア・タリーニ(1966年生まれ)はジャズ/クラシック界双方で輝かしいキャリアと高い評価を得ている20年以上の円熟ピアニストだ。ジャズでは8枚のリーダー作を残してきた。ピアニストであり作曲家としても評価が高い。一方クラシックでは多くのクラシック国際的評価を勝ち取ってきている。演奏のみならず、作曲、演劇曲やサウンドトラックの制作等と活躍の幅は広い。本作は久々のジャズ・ピアノ・トリオ作品。参加メンバーは、ベースにマッテオ・ボルトン(イタリア)、ドラムスは米国より招聘したグレゴリー・ハッチンソン。
 かってのアルバムからみても、このアルバムは彼女のオリジナル曲が主体であり、エレピの登場もあり多彩なタイプの演奏に期待が持てる。

60cc84c437c313826fae7b063fa3db15137dc545 (Tracklist)

1.A Twin Thought
2.Uneven
3.Il Sogno
4.Le isole Dei ciclopi
5.In The Night
6.Bluesme
7.Nell'Intramente
8.Inútil Paisagem
9.Triotango
10.Anna
11.In a Cave
12.The Nearness of You

All composed by Stefania Tallini except M8 and M12

  やはり多彩なタイプの演奏がこのアルバムには納められていて、聴く方は単調にならない。端麗にして耽美派な演奏に、ロマンチックな曲もあり、そうかというと自由奔放なアクション攻勢の見られる硬質な三者のインタープレイがあったり、更に瞑想性の曲や、エレピによるファンク調な展開、はたまた牧歌的な世界の色もみせる。

Uneventrioprojectw
M2."Uneven" 何故かアルバム・タイトル曲がエレクトリック・ピアノでのファンキーっぽい演奏。
M3."Il Sogno" 優雅な夢か、メロディアスなピアノのトリオ演奏。
M4."Le isole Dei ciclopi" パーカッションを生かしたラテン・ムード展開。
M5."In The Night" 瞑想性のあるピアノとゆったりとしたトリオ演奏。
M6."Bluesme" スピード感たっぷりの攻撃性、破壊性の展開、変調とインプロの展開が入り乱れて面白い。
M7."Nell'Intramente" 物語様のメディアム・テンポ曲。刺激が無く美しく暖かい。
M8."Inútil Paisagem" ゆったりした中に、不思議に刺激性の躍動感。ジャズ特有の世界がシンバルの響きに、そしてピアノの流れが秀悦。
M9."Triotango" タンゴ風とは言うが、典型的なところには至らず。
M.12."The Nearness of You" 最後は真摯に安定感をゆったりとソロ・ピアノで聴かせる。

 しかし、飽きさせないアルバム展開が秀悦。録音も一流で聴き応えある。そう叙情的というところにはない世界。いわゆるパターンは決めがたいが、全編品格があるところが聴かせ処か。M5.M6,M8あたりの曲に注目した、特にM6、M7あたりの関係が見事。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□  録音   :  88/100

(視聴)

*

 

| | コメント (0)

2021年3月13日 (土)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi & Bert Joris 「AFTERGLOW」

なかなかトランペットものは、私的には敷居が高い

<Jazz>
Enrico Pieranunzi & Bert Joris 「AFTERGLOW」
CHALLENGE Records / Austria / CR73460 / 2020

71qkqxymgwl_ac_sl900

Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Bert Joris バート・ヨリス (trumpet, flugelhorn)

Recording Studio : MotorMusic, Mechelen(Belgium)
Recording dates : September 7&8, 2018

  このところ矢継ぎ早にお目見えするエンリコ・ピエラヌンツィ(1949-)のアルバム。殆ど企画ものが多いのだが、このアルバムも2018年録音モノでベルギーの名トランぺッター、バート・ヨリス(1957-)とのデュオ。もともと私はトランペッターものは、ほんの限られた演奏者のものしか聴かないのだが、取り得合えず叙情派といってよいエンリコとのデュオものであるというところと、オリジナル曲によるものであることから、アプローチしてみた。

(Tracklist)

01. Siren's Lounge (4:24) *
02. Afterglow (3:31) *
03. Millie (3:18)  #
04. Cradle Song For Mattia (2:51) *
05. Five Plus Five (5:10) *
06. Anne April Sang (5:20) *
07. Freelude (2:24) %
08. What's What (2:38) *
09. How Could We Forget (5:22) #
10. Not Found (3:33) %
11. The Real You (3:03) *

*印 composed by E.Pieranunzi
#     composed by B.Joris
%    composed by E.Pieranunzi & B.Joris

Eb

 案の定、予想通りのエンリコのむしろ黒子役のデュオだ。ヨリスは心得たりと演じているが、これもファンにとってはたまらないと言えるのか、私にとってはどうもイマイチというよりは、心に迫る良い音として聴けないところは、自分自身でもナサケナイ。

 アルバム・タイトルの「Afterglow」は、エンリコのオリジナル曲M2."Afterglow"からきていると思うが、一日でも美しい夕映えや残光を意味する言葉で、"こまでも美しく、きらめくピアノと柔らかいラッパの音色"と言うことのようだが、どうもその世界はこの曲とその他の2-3の曲で聴ける以外では、理解できなかった。
   敢えて言うならば、収録の11曲の中では、それなりの美的世界は感じられたというのが、M2.以外では、M4."Cradle Song For Mattia ", M6."Anne April Sang", M7."Freelude "位で、M4.はメロディーが親しみやすく、M6.は静かな中に味わい深いトランペットの響きが美しい。M7.はスローな展開で、ちょっとした異世界に誘われる。
 M8."What's what"は、ハイレベルな演奏での掛け合いのインタープレイが面白いが、M10."Not found"と共に、アクロバティックで演ずる二人の楽しみのようで、殆ど聴く方としての私個人の興味は湧かなかった。

71wdfxpss3l_ac850  実はこのところリリースされたエンリコ・ピエラヌンツィのアルバムに、もう一枚『THE REAL YOU』(STUCD 20132/2021)(→)というのがあって、こちらはピアノ+ベースのデュオで、実はそれに期待していました(紹介はいずれ)。従ってこちらのこのアルバムに関してはこんな紹介程度にして納めておく。トランペットものの愛好者には是非聴いていただいて評価を聞いてみたいと思うのである。

(評価)
□ 曲・演奏  75/100
□ 録音    80/100

(試聴)

 

| | コメント (0)

2021年3月 8日 (月)

エル Elle 「Close Your Eyes」 

演奏展開がジャズらしさを増して

<Jazz>

Elle 「Close Your Eyes」 
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1095 / 2021

Closeyoureyesw

Elle  : Vocal
Alessandro Galati : piano
Guido Zorn : bass
Lucrezio Seta : drums

 我が愛するアレッサンドロ・ガラティに見出されてレコーディング・デビューに至ったというイタリアの若手歌姫:Elle=エルの新作。前第1作『So Tenderly』(TYR-1081)は、「ジャズ批評」誌で2019年ジャズ・オーディオ・ディスク大賞のヴォーカル部門でトップ(金賞)に輝いた注目株。実はあのトップに関しては私はちょっと納得しなかったんですが、まあアレサンドロ・ガラティの曲作りと演奏に魅力があるところで納めていた。
 寺島靖国に言わせると、女性ヴォーカルは巧さより声の質に魅力が無ければ・・・と、成る程その意味においては私も取り敢えず納得しておく。
 今回も前作と同じくガラティ率いるトリオをバックにしたニュー・アルバムだが、全曲ガラティが編曲したという構成であるが、ただ同じモノは造らないと言うことか、オープニングの曲から若干イメージは変わって来ている。

 

1_20210305105701 (tracklist)

01. Comes Love
02. If I Should Lose You
03. Autumn In New York
04. Close Your Eyes
05. My Old Flame
06. I Concentrate On You
07. Once In A While
08. I Fall In Love Too Easily
09. Besame Mucho
10. I'll Be Seeing You

 エルのヴォーカルは、あるところで「"大人の夜の小唄セッション"ぽい」と表現されていたが、確かにそうかなと言うところか。とにかく力を抜いたテンダーにしてアンニュイ、そしてセクシー度も適当というところが魅力か。歌の巧みさというところでは、クラシック歌手を経てきていると言うのだが高度というところにはイマイチだ。ただ声の質が女性としての魅力があるところが支持されるポイントであろう、ウィスパー・スタイルが売り処。

 今回もガラティの編曲演奏がやはり注目するところだ。ロマンティックな耽美性は相変わらずだが、彼の持ち味の嫌みの無い展開が時にスウィングし、時に刺激的なところを織り交ぜての過去の曲の演奏スタイルにとらわれない独自の世界がいい。選曲そのものは寺島靖国が行なったようだが、編曲にはガラティの独自的解釈が強化されて、バラードっぽくを期待した面を特にM1."Comes Love"のようにスウィングした軽快な出だしで、期待とは別展開させているところが面白い。アルバム・タイトル曲M4."Close Your Eyes"も同様でありピアノ、ベースの演奏も楽しめる。しかしどんな場面でも決して力んだ展開はみせず、あくまでもソフト・テンダリーに押さえている。曲の中で、ガラティのピアノ演奏の占めるところも多く、そんな意味では今回の方が、ある意味では変化が多くジャズっぽい。

Img_25e85d3805e717f52941723ff962c5091394

  いずれにしても、このエルのヴォーカル・スタイルは、やっぱりウィスパー系がぴったりで、M5."My Old Flame"の流れはいいし、中盤のガラティのピアノも美しい。そしてそのパターンは、M8."I Fall In Love Too Easily"の世界で頂点を迎える。ここではヴォーカルのイメージを大事に間をとりながらのピアノ演奏の世界が美しく、しかも進行して行くうちにスウィングしてみせたり、その流れは如何にもガラティの世界。

 このタイプの女性ジャズ・ヴォーカル世界は、"特にジャズならでは"というムードであって、それを寺島靖国は求めて企画した事がひしひしと伝わってくる。そんなアルバムとして評価したい。

(評価)
□ 編曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       85/100

(視聴)
Elle の映像が見当たらないのでA.Galati Trio ものを ↓

 

| | コメント (0)

2021年2月17日 (水)

シャイ・マエストロ Shai Maestro 「Human」

イスラエル風民族音楽的なムードを生かしつつ・・・
実は「彼の思い」が込められたアルバムだ
・・コンテンポラリー度、リリカル度、スリリング度が適度で素晴らしい

<Jazz>

Shai Maestro 「Human」
ECM / Germ. / ECM 2688 089 0670 / 2021

Humanw

Shai Maestro シャイ・マエストロ (piano)
Jorge Roeder ホルヘ・ローダー (double bass except 04, 07)
Ofri Nehemya オフリ・ネヘミヤ (drums except 04, 07)

Philip Dizack フィリップ・ディザック (trumpet except 06, 07, 08, 11)

Recorded Feb. 2020, Sudio Studios La Buissonne, Pernes-Les-Fontaines

  ECMの前作『The Dream Thief』(ECM 2616 6771112/2018)にてその素晴らしさを味わったNYシーンで活躍するイスラエル出身の人気急上昇ピアニスト:シャイ・マエストロShai Maestro(1987年イスラエル生まれ)の、ECMでの2作目、前作と同じ彼のトリオに、新たにトランペットが加わってのカルテット作品となっている。

Shaimaestrow  彼のピアノの素晴らしさは、実はAvishai Cohen Trio で気に入ってから注目はしているところだが、ここに来てECMからのリリース2枚目で、私にとっては尚更興味津々と言うところなのである。
  
  彼は、なんと8歳の時にオスカー・ピーターソンのアルバムを聴いてジャズに開眼したとか。そして19歳の若さででベース奏者アヴィシャイ・コーエンのバンドに抜擢されたのだった。2010年に自身のユニットを結成。以来活動を共にし、これまでリリースした4枚のリーダー・アルバム全てに参加するホルヘ・ローダー(b)と、同郷イスラエルのドラマー、オフリ・ネヘミヤ(ds)に、本作では、米国人トランぺッター、フィリップ・ディザックを加えている。

(Tracklist)

01. Time
02. Mystery And Illusions
03. Human
04. GG (tp & p duo)
05. The Thief's Dream
06. Hank And Charlie (p-b-ds trio)
07. Compassion (solo piano)
08. Prayer (p-b-ds trio)
09. They Went To War
10. In A Sentimental Mood *
11. Ima (For Talma Maestro) (p-b-ds trio)

*印以外Shai Maestroのオリジナル曲

 手頃にエスニック風の味付けがある独自のフォーク・ジャズ的と言うかイスラエル民族音楽的トラッド風と言うか、そんなムードが滲み出ているが、なんとなく引きつけられる世界を持っている。
 しっとりとした潤いと透明感溢れるピアノの音が、流れるように演じられ、又一方余韻をもって耽美的・哀愁的情景を描いてくれる。そして独特の異国情緒は今回はトランペツトの響きによって描いているのが特徴。カルテット演奏はドラマティックな展開も織り込んでいてジャズとしての味付けはちゃんとみせる。アルバムを通して聴いてじっくり感動が沸いてくる。

91ejmcqt5ll1000

 もともと私の好みからは、ビアノ・トリオ+トランペットというのは恐らく否定的な方向に感ずる処だ。確かにM4." GG", M5."The Thief's Dream"あたりは、ピアノの美しさがトランペットによって消されてしまう感覚になる。しかし救いは、ECM盤ということで想像していたことだが、全体に寧ろ優しく歌うトランペットであったことだ。
 M2."Mystery And Illusions", M3." Human"で意外だったのは、イスラエル的エスニック風の味付けがやはりあるが、それはなんとトランペットの響きから一番感じられるところなのだ。そこがこのカルテットとした味噌なのかも知れない。
 しかし中盤に入って、M6."Hank And Charlie " M7."Compassion ", M8."Prayer "はピアノ・トリオのみの演奏で、ようやく美しいピアノ、ベースの休まる音、余韻を大切にしたピアノの音から沈着な世界に美しさが漲る(M7はピアノ・ソロで情緒豊か)。又M6.は故ハンク・ジョーンズとチャーリー・ヘイデンの音楽にトリオが敬意を表している。このピアノ・トリオ・スタイルが私好みの世界のだ。
Idf_back_from_lebanon
 ところが、M9."They Went To War" が注目曲、ここでトランペットの素晴らしさに浸れる。"彼らは戦争に行った"・・その苦しさ、哀しさが、静かに演じられるトランペットの音に哀しく訴える心が感じられ感動。これがマエストロの描きたい一つの世界とみた。
 そしてM11." Ima"でこのアルバムは納められるが、そこには、心のよりどころとなる世界を見事にペットなしのマエストロ・トリオが描くのである。ここには民族的ムードは無く、世界に普遍的に未来志向のムードで響く。

 なかなか、したたかなアルバムである。中盤から後半で完全に虜にされた。やはり前作と同様、このシャイ・マエストロとは、ただ者で無い。とにかくスリリングなところも魅せながらコンテンポラリーな味付けがあったり、リリカルな世界があったり、哀愁度と、それが手頃に納める技はお見事と言いたい。そして彼の思いが込められていることに感動した。推薦盤だ。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□ 録音   :  85/100


(視聴)

*

| | コメント (4)

2021年1月30日 (土)

ヤン・ハルベック Jan Harbeck Quartet 「THE SOUND THE RHYTHM」

サブトーンで聴かす味付けとピアノ・トリオとのカルテットが聴きどころ


<Jazz>
Jan Harbeck Quartet 「THE SOUND THE RHYTHM」
stunt Records / IMPORT / STUCD 19022 / 2019

Thesoundtherhythmw

Jan Harbeck (tenor sax)
Henrik Gunde (piano)
Eske Nørrelykke (bass)
Anders Holm(drums/Tr.1.2.4.5.6.7.)
Morten Ærø (drums/Tr.3.5.7.8.9.)
+ Jan zum Vohrde (alto sax/Tr.8)

2018年11月7日-8日、ヴィレッジ・レコーディング(コペンハーゲン)録音

  私はどちらかというとうるさいトランペット、サックス等は敬遠派なんでして、何と言ってもピアノ派なんです。しかしジャズにおいてトランペット、サックス等は重要な役割を果たしている事実は知っている。特にトランペットはミュートを効かしたものなら愛するものも多いと思っているし、サックスはサブトーン奏法での味が欲しいと思っているのだ。
 ところが、先日我が友人が・・・・
   そんな私がHarry Allenの『DEAR OLD STOCKHORM』(VHCD-78308/ 2017)(下左)を聴いている事を知って、それならばこのデンマークのヤン・ハルベックJan Harbeck(1975年デンマーク生まれ。ベン・ウェブスター賞受賞) を聴いたらどうかと言うのである。そこでヤンのアルバム『IN THE STILL OF THE NIGHT』(STUCD 08202/2008)(下右)と、今日話題にするこの『THE SOUND THE RHYTHM』(2019)を共に目下聴いているのである。

71r2ximftlw 739ww
 
 ハリーもヤンも私が聴くのはピアノ・トリオとのカルテット・スタイルをとっていることが重要で、ピアノの描くトリオ世界を尊重しつつサブトーンによるサックスの味付けがあるというスタイルが寄りつける大きなポイントなのだ。
 ハリーの『DEAR OLD STOCKHOLM』はVENUS Recordsで若干録音がうるさいのだが、彼はピアニストのウラジミール・シャフラノフの演奏を尊重しつつ両者共存で哀感すら感ずる世界に誘導してくれるところで好きなんですね。それもストックホルムでの演奏というのが又効果を上げているのかも知れない。

 さてそこで、本題に入るが、このヤンの近作に焦点を当てて考察してみたい (これもコペンハーゲン録音)。

 (Tracklist)

1.Lighter Shades *
2.Johnny Come Lately
3.Tangorrus Field *
4.Poutin'
5.Woke Up Clipped
6.Blues Crescendo *
7.Shorty Gull
8.I'd Be There
9.Tail That Rhythm *
10.Circles *

*印 : Jan Harbeck のオリジナル曲

Janharbeckquartetw

 ヤンのTSの音は、やはりハリ-の手慣れた洗練さのある音に比べると、サブトーンの効果ある刺激の和らいだ広がりがあり、むしろ図太さがありますね。ここで演ずるは、ベン・ウェブスターの4曲と彼のオリシジナルが5曲。
 Henrik Gundeのピアノ、Eske Norrelykkeのベースはこのところ不変のカルテット。私はどうしてもこのようなカルテットは、TS+ピアノ・トリオとして聴いてしまうところがあるが、そうして聴いても十分味わえる美しいピアノ・トリオも魅力。

 M1."Lighter Shades"からバラード曲、そしてヤンのサブトーンでうるささは抑えられているが重量感のあるサックスが唸る。しかし全体に優しく旋律を奏でる。中盤からピアノに旋律に変わり、アドリブ役と変わりところも彼の味が出る。こうしたやや哀感のあるところは良いですね。
 M2."Johnny Come Lately"、M4."Poutin'"、M5."Woke Up Clipped"のスウィングに優しく相づちを打ちながらの展開。ピアノ・トリオの良さも生かしてこれも優しい。
Janharbeckw  M3."Tangorrus Field "の彼のオリジナル曲のバラード演奏がなかなか聴き所、いいですね。優しく状況を支える演奏がピアノの響きを又美しくしている。
   M6."Blues Crescendo " イタリア語にブルースを付けた奇妙な取り合わせ、リズムに乗ってのジャージーな盛り上がり、このタイプはお任せだ。
   M8."I'd Be There"  ASのドラムスそしてピアノとの掛け合い、ジャズの面白さだろうが、私は特に興味を持たない。
   M9."Tail That Rhythm"  淡々としたリズム隊にTSの味付けが聴きどころ。ベースの軽快なリズムにソフトに乗ってゆく軽快なサックス。続いてピアノの旋律展開がジャズ・インプロを誘導してドラムスが健闘し、カルテットとしての総決算的曲。
 M10."Circles " 最後の締めくくりはバラード演奏、ピアノと共にサックスのブツブツ音混じりの美しさがしっとりと襲ってくる。

 やっぱりジャズ愛好家でも好みはいろいろだが、私にとっての彼の魅力はサブトーンにての独特の重量感をバラードで、哀感もって流れるところですね。このアルバムでも十分聴きとれて納得。
 そして追加だが、2008年のアルバム『IN THE STILL OF THE NIGHT』の方は、スタンダード曲集だが、あの誰もが知る"Ptite Fleur"を代表にバラードの美しさがたっぷり聴けて、これもなかなかのものだった。

(評価)
□ 曲・演奏    90/100
□ 録音      85/100

(視聴)

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

Audio CLASSIC Progressive ROCK アイオナ アガ・ザリヤン アデル アヤ アレクシス・コール アレッサンドロ・ガラティ アンジェイ・ワイダ アンナ・マリア・ヨペク アンヌ・デュクロ アヴィシャイ・コーエン アーロン・パークス イエス イタリアン・プログレッシブ・ロック イメルダ・メイ イモージェン・ヒープ イリアーヌ・イリアス イーデン・アトウッド ウィズイン・テンプテーション ウォルター・ラング エスビョルン・スヴェンソン エスペン・バルグ エミリー・クレア・バーロウ エミール・ブランドックヴィスト エレン・アンデション エンリコ・ピエラヌンツィ エヴァ・キャシディ カティア・ブニアティシヴィリ カレン・ソウサ ガブレリア・アンダース キアラ・パンカルディ キャメル キャロル・ウェルスマン キング・クリムゾン キース・ジャレット クィダム クレア・マーティン ケイテイ・メルア ケイト・リード ケティル・ビヨルンスタ コニー・フランシス コリン・バロン ゴンザロ・ルバルカバ サスキア・ブルーイン サラ・ブライトマン サラ・マクラクラン サラ・マッケンジー サンタナ サン・ビービー・トリオ ザーズ シェリル・ベンティーン シゼル・ストーム シネイド・オコナー シモーネ・コップマイヤー シャイ・マエストロ ショスタコーヴィチ シーネ・エイ ジェフ・ベック ジャック・ルーシェ ジョバンニ・グイディ ジョバンニ・ミラバッシ ジョルジュ・パッチンスキー スザンヌ・アビュール スティーヴン・ウィルソン スティーヴ・ドブロゴス ステイシー・ケント ステファン・オリヴァ スノーウィ・ホワイト スーザン・トボックマン セリア セルジオ・メンデス ターヤ・トゥルネン ダイアナ・クラール ダイアナ・パントン ダイアン・ハブカ チャンピアン・フルトン チャーリー・ヘイデン ティエリー・ラング ティングヴァル・トリオ ディナ・ディローズ デニース・ドナテッリ デヴィット・ギルモア デヴィル・ドール トルド・グスタフセン ドリーム・シアター ナイトウィッシュ ニコレッタ・セーケ ニッキ・パロット ノーサウンド ハービー・ハンコック パスカル・ラボーレ パトリシア・バーバー ヒラリー・コール ビル・ギャロザース ピアノ・トリオ ピンク・フロイド フェイツ・ウォーニング フランチェスカ・タンドイ フレッド・ハーシュ ブッゲ・ヴェッセルトフト ブラッド・メルドー ヘイリー・ロレン ヘルゲ・リエン ペレス・プラード ホリー・コール ボボ・ステンソン ポーキュパイン・ツリー ポーランド・プログレッシブ・ロック ポール・コゾフ マツシモ・ファラオ マティアス・アルゴットソン・トリオ マデリン・ペルー マリリオン マルチン・ボシレフスキ マーラー ミケーレ・ディ・トロ ミシェル・ビスチェリア メコン・デルタ メッテ・ジュール メラニー・デ・ビアシオ メロディ・ガルドー モニカ・ボーフォース ユーロピアン・ジャズ ヨアヒム・キューン ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ ヨーナ・トイヴァネン ラドカ・トネフ ラーシュ・ダニエルソン ラーシュ・ヤンソン リサ・ヒルトン リッチー・バイラーク リリ・ヘイデン リン・エリエイル リン・スタンリー リヴァーサイド リーヴズ・アイズ ルーマー レシェック・モジュジェル ロジャー・ウォーターズ ロバート・ラカトシュ ロベルト・オルサー ローズマリー・クルーニー ヴォルファート・ブレーデローデ 中西 繁 写真・カメラ 北欧ジャズ 問題書 回顧シリーズ(音楽編) 女性ヴォーカル 女性ヴォーカル(Senior) 女性ヴォーカル(ジャズ2) 女性ヴォーカル(ジャズ3) 寺島靖国 戦争映画の裏側の世界 手塚治虫 文化・芸術 映画・テレビ 時事問題 時代劇映画 波蘭(ポーランド)ジャズ 相原求一朗 私の愛する画家 私の映画史 索引(女性ジャズヴォーカル) 絵画 趣味 雑談 音楽 JAZZ POPULAR ROCK SONYα7