ユーロピアン・ジャズ

2024年7月17日 (水)

シモーネ・コッブマイヤー Simone Kopmajer 「Hope」

相変わらずのスウィートにしてマイルドな歌声

<Jazz>

Simone Kopmajer 「Hope」
自主制作 /Import / SKLMR24  /2024

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Simone Kommajer - vocals
Terry Myers - saxophone
Paul Urbanek - piano
Karl Sayer - bass
Reinhardt Winkler - drums

Foto1w  過去に取り上げてきたオーストリア出身の歌姫、シモーネ・コップマイヤー(1981年生まれ)の新作、今回は自主製作版ようだ。もともと彼女の持ち味である爽やかな可愛らしさにスウィートにしてマイルドな歌声は相変わらずで聴きやすさが売り物だ。
  ここでも取り上げた評判の良かったアルバム『MY WONDERLAND』(2020)でバックを務めたTerry Myers(ts), Paul Urbanek(p)が今回もゆったりムードの演奏でシモーネの歌唱を支え。選曲は彼女自身の曲のほか、AORといわれる分野の曲からJazzまでの比較的やさしい曲で、シモーネの魅力を満たそうとした作品だ。

(Tracklist)

1. Pick Yourself Up (Dorothy Fields/Jerome Kern) (3:27)
2. Black Tattoo (Karolin Tuerk/Simone Kopmajer) (3:46)
3. Careless Whisper (George Michael/Andrew Ridgeley) (3:29)
4. Little Green Apples (Robert Russell) (4:19)
5. What A Difference A Day Makes (Stanley Adams/Maria Grever) (4:29)
6. Sittin´ On The Dock Of The Bay (Steve Cropper/Otis Redding) (4:01)
7. Amsterdam (Karolin Tuerk Paul Urbanek) (3:01)
8. Old Devil Moon (Burton Lane, E.Y. Harburg) (4:14)
9. Hope (Simone Kopmajer & Paul Urbanek) (4:02)
10. As The Night Goes By (Paul Urbanek) (4:40)
Bonus Track
11. So Faengt Das Leben An (Simone Kopmajer/Paul Urbanek) (3:13)

 彼女も年期も入ってきたので、このアルバムでは、もう少しジャズらしくなってきたかと思ったが、むしろポップス色が強くなっている感がある。その点は少々残念であったが、自主製作盤であって彼女自身の好みに準じての作風かも知れない。まあ時に気楽に聴くヴォーカルものとして良いとしておこう。

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 彼女のオリジナル曲に注目してみたが、ピアノのPaul Urbanekの協力を得ていて、アルバム・タイトル曲M9."Hope"は、AORタイプでちょっとカントリーっぽい曲だ。又M11." So Faengt Das Leben An"はあまり特徴のない曲となっている。
 M6."Sitting on the Dock of the Bay"は、オーティス・レディングの曲で有名だが、ペギー・リーなども歌っていて私にとっても最も親しみやすい曲だが、しっとりと仕上げていてこれはこれで納得。M3."Careless Whisper"ジョージ・マイケルの曲、これはまさにポップですね。本人が好きなのか、ファン・サービスか。
  ダイアナ・クラールなども歌っているM1."Pick Yourself Up"は、ちょっとジャズ・ムードでオープニング曲。ダイアナ・ワシントンの歌っていたM5."What a Difference a Day Makes"(縁は異なもの)はむしろ若々しく軽快にこなしている。

 そんな感じで、元来の彼女のソフトなスウィート、マイルドといったところを維持しながら、そろそろ円熟味もちょっと出したといった感じのヴォーカルでポップな味付けのジャズ・ヴォーカルが全編に渡って展開。ジャズ・ヴォーカル・ファンとしてはそのスタイルにちょっと物足りなさを感じたところだが、無難で広く勧められるアルバムとして結論づける。

(評価)
□ 曲・編曲・歌 :  87 /100
□   録音     :  85 /100

(試聴)
"What a Difference a Day Makes"

 

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2024年7月13日 (土)

ファーガス・マクリーディー Fergus McCreadie Trio 「 Stream」

見事な独創性で民族音楽とコンテンポラリー・ジャズの融合を図る

<contemporary Jazz>

Fergus McCreadie Trio / Stream
Edition Records / Import / EDN1228 / 2024

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Fergus McCreadie (piano)
David Bowden (double bass)
Stephen Henderson (drums)

 私にとっては初物の登場です。スコットランドの注目のピアニスト・作曲家ファーガス・マクリーディーの ピアノ・トリオ4thアルバム。ジャズとスコットランドの伝統音楽の革新的な融合で、スコットランドの伝統の美旋律を現代的なセンスで演ずるコンテンポラリー・ジャズ・サウンドが注目されている。
 彼はスコットランド出身のピアニスト兼作曲家。彼の注目度は2021年発表の2nd『Cairn』(下中央)以降急速に高まり、2022年マーキュリー賞の最終候補に選ばれ、同年の3rdアルバム『Forest Floor』(下右)はスコットランド・アルバム・オブ・ザ・イヤー(SAY)を獲得した。
 今回のこの新作を聴くにあたり前作『Forest Floor』を聴いてみたが、『Cairn』以来取り上げている「自然のテーマ」を明らかに継続しているようだ。そして今回は「水の本質」に焦点を当てているというのだが・・・。

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 そしてこのトリオ構成は、デヴィッド・ボウデン(David Bowden, bass 下左)とスティーヴン・ヘンダーソン(Stephen Henderson, drums下右)という長年の仲間で、十代の2016年に権威あるピーター・ウィッティンガム・ジャズ・アワードを受賞したほか、その他各種の賞を受賞している。そしてトリオは、スコットランド各地のジャズフェスティバルに定期的に出演し、北欧などでツアーを行って、オスロやストックホルムのジャズ・フェスティバルにも参加。

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 デビュー・アルバムはマクリーディー20歳時の2018年春にリリースされた自主製作盤『Turas』(上左)で、"スコットランドの風景や音楽の伝統との関わりを反映しながら、ジャズ・ピアノの伝統をしっかりと理解している"と称賛され、国の名誉ある賞に輝いている。聴いてみるとスコットランドの風土をイメージさせる"静"と、民族的な雰囲気のある"動"の曲展開が見事。

 ファーガス・マクリーディーFergus McCreadie ( piano  上中央)は1997年スコットランドの小さな町・ジェームスタウン生まれ。幼少期からピアノの才能を示し、12歳の頃にはすでにピアニストの道を決めていたという。15歳で「U17s Young Scottish Jazz Musician award」を受賞。翌年も受賞し、同賞創立以来初の2連覇の偉業を成し遂げた。2018年にスコットランド王立音楽院を卒業し、最も影響を受けたピアニストはキース・ジャレットだという。

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1. Storm 4.11
2. The Crossing 12.37
3. Driftwood 5.38
4. Snowcap 3.31
5. Sun Pillars 6.29
6. Mountain Stream 2.16
7. Stony Gate 5.26
8. Lochan Coire Àrdair 13.12
9. Coastline 5.47

 

 アルバム・タイトル通りの時に穏やかで、時に嵐のように、しかし常に前進する、水のように流れる音楽が展開される。
マクリーディーは「このアルバムで一番好きなのは、アルバムが進むにつれて暗いものから明るいものへと進化していくところだ。曇り空から晴れ空への旅みたいな感じで、曲の順番が恣意的だった以前のアルバムとは全く違うんだ」と。
 繊細なタッチと若さ漲る大胆なストロークを展開する彼らのサウンドは、過去の2作から積み上げてきた自然との対話と民族的な誇りに支えられての彼ら自身の独特な道を切り開く世界に確固たる前進の心をもってこのアルバム「Stream」を展開している。又一枚のアルバムにトータルに捉え描く意欲が見事と言いたいところだ。

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 M1. "Storm " は、オープニングにふさわしくいかにも物語の始まり風の動と静の美学で迫る。中盤のの荒々しさは攻撃的な世界観を感ずる。そして再び静の世界に・・そして締めくくりの三者の合奏の盛り上がりで見事。
 M2. "The Crossing"12分以上の長曲。メロディーがどこか民族風で豊か、そして動の盛り上がりとの対比が面白い。
 M3. "Driftwood" "流木" 活発なドラムスから速攻展開のピアノと中盤のアクティブなピアノ が聴かせどころか
   M4. "Snowcap" 前半のピアノとベースの軽快なユニゾンが続く、山頂の雪の融雪と流れを描いているのか
   M5. "Sun Pillars" 確かに明るい展開が、中盤のベース・ソロが快活に、そして続くピアノも快活に展開
 M6. "Mountain Stream " ぐっと深遠なピアノの響き
   M7. "Stony Gate" 確かに心弾む展開に、民族的古来のメロディーか
   M8. "Lochan Coire Àrdair " ベースがメロディーを奏でる・・そして澄んだピアノの音とのユニゾンが美しく展開し、次第に雄大な流れを描く
   M9. "Coastline " 静かに美しく豊かなメロディー、最後は広大な海に

 こうして聴いてみると確かに水の流れから始まって雄大な川となる物語のようである。しかし描くところ自然の壮大さであろうが、そこには彼らの"人生観"をオーバーラップさせているようにも思う。時には穏やかで、時には激しく、しかし常に流れ続ける「stream」は、スコットランドの豊かな風景に反映された民族音楽と彼らの構築したコンテンポラリー・ジャズの世界を淀み無く流れている感がある。「暗」から「明」へという点に聴く者にとっては好感が持てる姿である。見事な独創性で民族音楽とコンテンポラリー・ジャズの融合を図る好作品と結論づける。

(評価)
□ 曲・演奏 :  88/100
□ 録音       :  88/100

(視聴)
"Stony Gate"

*
"Live in Glasgow 2023"

 

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2024年7月 8日 (月)

ディミトリ・ナイディッチ Dimitri Naïditch「Chopin Sensations」

ショパンをモチーフに自己のピアノ・トリオ・ジャズを展開

<Jazz>

Dimitri Naïditch「Chopin Sensations」
Piano Ma Muse / import / AD7876C / 2024

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Dimitri Naïditch(piano)
Gilles Naturel (bass)
Lukmil Perez (drums)

   クラシックとジャズ両ジャンルの世界で活躍しているピアニスト、ウクライナ出身でフランスで活躍中のディミトリ・ナイディッチ(↓左)がピアノ・トリオとソロで、今度はショパンの楽曲をジャズとして解釈した作品。過去に2019年バッハ集(『Bach Up』)、2020年モーツァルト集(『Ah! Vous dirai-je...Mozart』)、 2022年フランツ・リスト集(『Soliszt』) をリリースしていて、ここでも過去に取上げてきたが、それに続くものだ。
 相変わらず美しいクラシカルなタッチで、軽妙にジャズ・アプローチを行って、表現の豊かさはさすがと言うところで魅力の演奏を聴かせてくれる。そしてドラムスのキューバ人のルクミル・ペレス(1970- ↓右)とフランス人のベテランベーシスト、ジル・ナチュレル(1960- ↓中央)の現在フランスで活躍している二人との相性もなかなか良さそうだ。

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🔳 ディミトリ・ナイディッチDimitri Naïditchは・・・・
  父は科学者で母ピアノ教師のもと、1963年にウクライナの首都キーウ(キエフ)で生まれた。幼少期よりピアノを演奏してきている。1988年から翌年にかけて、リトアニアで開催された全国ピアノコンクールとポーランドで開催された国際コンクールで優勝し、その後キーウの高等音楽学校とモスクワのグネーシン音楽大学で学び技術を磨き上げる。
  1991年にフランスに渡りクラシックとジャズのコンサート活動を続け、1994年からはリヨン国立高等音楽院で教鞭を取るようになった。その後もフランスを拠点にソロ・コンサートから交響楽団との共演まで幅広く演奏活動を行っている。また、2007年から2009年にかけて、彼はウクライナの伝承音楽に焦点をあてた Les Chants d’Ukraine, Davnina と Trio Kiev というプロジェクトで各地でコンサートを行った。

(Tracklist)

1 Nocturne du Jour
2 Valse à Trois
3 Lasse Étude
4 Improvisation sur le Prélude n°7
5 Nocturne à Peine
6 Prélude en Boléro Bémol Majeur
7 Improvisation sur la Marche Funèbre
8 Valse des Astres
9 Pleine Étude
10 Improvisation sur le Prélude n°20
11 Ballade en Bolide
12 Valse N° 2en do dièse mineur Op.64

 編曲を駆使し又自由な即興演奏を取り入れて、原曲を見事にジャズ化している。ピアノトリオ編成でショパンに捧げる叙情性たっぷりのジャズだが、彼のセンスが溢れている即興演奏は見事で圧倒してくる。つまりショパンを演ずるのでなく、ショパンの味を自己の世界に取り入れるというところにあるのである。

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 つまり収録曲のラストのM12."Valses, Op. 64: n°2 en do dièse mineur"(ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2)以外の曲は、なんと全てディミトリ・ナイディッチの作曲クレジットとしており、それぞれ曲の要所にショパンのフレーズを引用して自分の曲や即興との交流を図り自己の曲として構築し美しい世界を描くところが凄い。
 それでも原曲のモチーフである前奏曲作品28-15「雨だれ」をしっかり聴けるM6."Prélude en boléro bémo lmajeur"とか、誰でも知っている練習曲10-3の「別れの曲」をちょっとイメージを変えたM9."Pleine étude"などのような曲もあり、親しく面白く聴けるのも楽しいところである。
 唯一このアルバムでショパンを名乗るM12.は、ショパンが晩年に残した有名なワルツだが、ここでは最後にその他の曲とは一線を画し、即興をほぼ入れずに、ディミトリのソロでショパンの世界を我々に知らしめるのである。

 全体に少々残念なのは、ベース、ドラムスがうまくアクセントをつけてサポートして盛り上げているのだが、ピアノ主導の因子が強く、もう少し彼らも前面に出ての独自の世界の主張の即興などを織り交ぜてくれるとジャズ・トリオらしさが出たのではと思ったところがあった。

 過去のナイディッチのバッハ、モーツァルト、リストものに於いては、それぞれが全く異なった世界を聴かせたところは驚きであったが、このショパンものは、これ又それらとは全く異なるセンチメンタルな抒情性の美学が漂っていて、これはそれぞれの歴史的作曲家の本質を知り尽くしての技であろう。そんなところも聴き込むに価値ある演奏であった。

(評価)
□ 編曲・即興・演奏  90/100
□ 録音        88/100

(試聴)

"Pleine Ētude"

 

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2024年7月 3日 (水)

トーマス・スタンコ・カルテット TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」

スタンコの荒々しさとダーティーな哀感の世界をマルチン・ボシレフスキ・トリオが支える

<Jazz>

TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」
Universal Music / Jpn / UCCE-1207 / 2024

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トーマス・スタンコ TOMASZ STANKO (trumpet)
マルチン・ボシレフスキ MARCIN WASILEWSKI (piano)
スワヴォミル・クルキエヴィッツ SLAWOMIR KURKIEWICZ (bass)
ミハウ・ミスキエヴィッツ MICHAL MISKIEWICZ (drums)

録音年 2004年9月9日
録音場所 ミュンヘン、ムファットホール

 2018年に享年76歳で他界したポーランドを代表するトランペッターのトーマス・スタンコ(1942-2018 下左)が、“21世紀のECM”を代表する同じポーランドのピアノ・トリオと繰り広げた今から20年前の2004年のライヴ音源が登場した。つまりECMデビュー前夜のマルチン・ボシレフスキ・トリオ(下右、まだ“シンプル・アコースティック・トリオ”として活動していた頃)をフィーチャーしたカルテットで繰り広げた2004年のミュンヘンでのライヴ音源。
 この年には、このカルテットでのアルバム『Suspended Night』がリリースされて、彼としても更なる発展段階にあった時で魅力的なドキュメントであり、又我が愛するマルチン・ボシレフスキにおいても、若手としての技能の高さで注目度の高まった時期の状況を知れるものとしても魅力たっぷりのアルバム。

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  この組み合わせは、2年前の2002年にこのポーランドのカルテットとしての共演作がお目見えし、トーマス・スタンコを新たな評価へと押し上げた。 それがボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィツとのECM第1弾『Soul of Things』(2002)であり、 ヨーロッパ・ジャズ賞を受賞することになる。
 そして今回のこのライブ音源は、その2004年このカルテットでの第2作アルバム『Suspended Night』のレパートリーである歌曲の形式と、翌2005年に録音された第3作アルバム『Lontano』で探求された即興的な分野の間を巡り巡っているところが、グループの音楽の発展段階を捉えた魅力的なドキュメントとなっていて貴重であるのだ。

  この2004年には、ボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィッツは、彼ら自身も確固たる国際的評価を確立していた。10代に結成した「シンプル・アコースティック・トリオ」として10年間を経て、彼らは「マルチン・ボシレフスキ・トリオ」として新たなアイデンティティを確立し、アーティストとしてますます力をつけている。これにはトーマス・スタンコは当時、彼らを評価し語っている「ポーランドのジャズ史上、このようなバンドは存在しなかった」「私は毎日、このミュージシャンたちに驚いている。 そして、彼らはますます良くなっている」と。

(Tracklist)
1. Hermento’s Mood ヘルメントズ・ムード 5:28
2. Song For Sarah ソング・フォー・サラ 6:20
3. Euforia ユーフォリラ  9:44
4. Elegant Piece エレガント・プレイス 10:22
5. Kaetano カエターノ 8:48
6. Celina セリーナ 10:44
7. Theatrical シアトリカル 6:34

 このこのミュンヘン公演は、スタンコ・カルテットがアメリカとヨーロッパで大規模なツアーを行った年の最高潮の演技と言えるものであると言われている。当時、過去にポーランド・ジャズの大御所クリシュトフ・コメダとの共演などの多くの実績のある偉大なトランペッターとしての評価のあるスタンコは、ここでリーダーシップと最高の魅力を十二分に発揮し、スラブの伝統に根ざしクラシック音楽からの発展形をベースに新しいジャズを演じてきていた若きボシレフスキ、クルキエヴィッツ、ミスキエヴィッツのピアノトリオのエネルギッシュなサポートと見事なカルテットとしての演奏力に力を得て、彼らしい素晴らしい演奏を披露している。

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  M2."Song For Sarah "あたりから、マルチン・ボシレフスキ・トリオの本質がちゃんと見えてきて、彼らがピアノによる深遠な世界を構築し、スタンコがダーティーに乗って行くかのスタイルが見える。
 M3."Euforia"は、ベースのリードからスタートして、それにスタンコがエネルギッシュに盛り上がると、反応するがごとくピアノ・トリオが動を即興で演じ更にエモーショナルな展開をみせ、中盤は今度はピアノが語り始め、ドラムスが展開を形作る。まさにピアノ・トリオの主導のバトルに再び終盤にはトランペットが逆に収める役を果たし、ドラムスが答えて最後はトリオとスタンコでまとめあげる。
 そしてM4."Elegant Piece "は再び静の世界に、10分を超える曲で中盤からトランペットの訴えが始まり、つづいてピアノが延々と語り始める。最後は両者の響きでハーモニックなところを見せながら納める。

 このような、四人の対等なカルテットの演奏が流れ、やはりスタンコのトランペットは彼独特の荒々しい音色は響かせるのだが、ドラマチックな展開の中に憂鬱感の暗さがあったり、哀愁感に満ちたりと人間的な世界を描くところは抜きんでている。そこに又ジャズの激しさをちらっと見せグルーヴ感をちゃんと聴かせながらも、どこか深淵にして人の心を哀感を持って描いてくれるポーランド風ボシレフスキ・ピアノ・トリオの世界が顔を出し、いつの間にか引き付けられてしまう。これがライブ録音かと思うぐらいカルテットとして充実していて、曲の配列も見事でアルバムとしても完成している。
 ここに来て、スタンコの名盤に入るアルバムが登場した感がある。

(評価)
□ 曲・演奏   90/100
□ 録音     87/100

(試聴)

 

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2024年6月23日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi 「HINDSIGHT - Live At La Seine Musicale」

ピエラヌンツィ流メランコリックとグルーヴ感溢るる即興と・・・

<Jazz>

Enrico Pieranunzi 「HINDSIGHT - Live At La Seine Musicale」
Free Flying / Japan / FFPC004 / 2024

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Enrico Pieranunzi (piano)
Marc Johnson (bass)
Joey Baron (drums)

Concertienricopieranunzi1w  私が愛するヨーロッパ・ジャズのパイオニア的な存在であり、イタリアが世界に誇る抒情派ピアノの大御所と言われるエンリコ・ピエラヌンツィ(1949年ローマ生まれ →)のここでは1年半ぶりの登場だ。今回のアルバムは彼のキャリアの中でも重要なトリオ・メンバーのマーク・ジョンソン(b, 1953年米国ネブラスカ州生まれ、下左 )とジョーイ・バロン(d, 1955年米国バージニア州生まれ, 下右)との初録音作品から35年を記念して再集結し、パリの芸術拠点ラ・セーヌ・ミュジカルLa Seine Musicaleに興奮を巻き起こしたといわれる2019年12月のライブの模様を収めたアルバムである。

 コンサートの提案もピエラヌンツィ自身から始まったとのことで、演奏には、この3人で音楽を奏でる喜びの伝わってくるような演奏で、楽曲は1曲をのぞき、全てピエラヌンツィのオリジナル曲だ。そし録音・ミックスはStefano Amerioで好音質で聴くことが出来る。

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(Tracklist)

1. Je Ne Sais Quoi 6:54
2. Everything I Love 5:28
3. B.Y.O.H. (Bring Your Own Heart) 7:23
4. Don't Forget The Poet 9:16
5. Hindsight 7:27
6. Molto Ancora (Per Luca Flores) 5:54
7. Castle Of Solitude 5:21
8. The Surprise Answer 6:00

 メロディーやハーモニーの美は勿論、近年ダイナミックなスイング感をも重んじてのピエラヌンツィ独自の世界が見事に展開する。ヨーロピアン独特のアートな色合いもみせてのインタープレイも尊重されたリリカル・アクション演奏もやっぱり持ち味として迫ってくる。それはもともと結構訴えてくるウォームなジョンソンのベース、バロンのアクティブなドラムスが、ちゃんと見せ場を築いてピアノに迫るところが頼もしい。従ってトライアングルな相互触発によってピエラヌンツィピアノも一層アドリブ奮戦がもともと彼の持っているエレガントでいて精悍な冴えを聴かせながら爽快な演奏へと導かれる。従って究極抒情性には決して溺れないところが彼の味として近年は展開している姿がここにも表れている。

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 M2."Everything I Love"のみ、ピエラヌンツィの曲でなく、コール・ポーターのものだが、ここではジョンソンのベースが旋律を流しそれを追ってピアノ、ドラムスの展開が主役に変わって、トリオの楽しさを聴かせている。ヨーロッパ的世界でなくアメリカン・ジャズの色合いをトリオで楽しんだ姿をこのライブに色付けしている。
 私自身はM3."B.Y.O.H. (Bring Your Own Heart)"のヨーロッパ的世界の方に好みは寄ってゆくのだが、そのM2.との対比によって一層それが強調されて、なかなか組み合わせの妙も感ずるところである。
   M5."Hindsight"のアルバム・タイトル曲は、それぞれのダイナミックな演奏を交えてのての展開に再会トリオの楽しさとグルーヴ感を伝えてくれる。
 M6."Molto Ancora (Per Luca Flores)"では、ぐっと落ち着いた世界に。
 M8."The Surprise Answer "パワフルなドラム・ソロからスタート、そしてピアノ、ベースのユニゾン展開も激しく、トリオのインタープレイにも花が咲き聴衆と一体感の世界に突入。お見事。

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 もともとピエラヌンツィの端正でキレと滑らかさのクリアー・タッチのピアノが十二分に堪能できる。そして哀感の世界とバップ的グルーヴ感を曲により見事に演じ切って飽きさせない。かっての抒情性の世界にクラシック的メロディーで哀愁にどっぷり浸かる様は見られないため、その点は少々寂しいが、むしろ近年の躍動型のスリリングすら感ずる中にリリカルな世界を描くという点に注目して聴いた次第。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

 

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2024年6月13日 (木)

ドゥ・モンテベロ Do Montebello 「B・O PARADISO」

ソフトにして優美な歌で聴きやすいヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Do Montebello 「B・O PARADISO」
Fremeaux & Associes / Import / LLL346 / 2024

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DO MONTEBELLO : VOCAL
MARC BERTHOUMIEUX : ACCORDÉON
FRED SOUL : PIANO, FENDER RHODES
HERVÉ MORISOT : GUITAR
RICARDO FEIJÃO : ELE-BASS
CHRISTOPHE DE OLIVEIRA : DRUMS
JULIO GONÇALVES : PERCUSSIONS
JULIA SARR : CHORUS

Domontebelloivansilvaw  フランス・シーンで活躍の女性歌手ドゥ・モンテベロ(フランス南部のアルビAlbi生まれ)の第3作。彼女はポップスやボサノバをセンス良くジャズに取り入れたアプローチを得意とし過去の作品も好評を博している。今作は、彼女の人生を特徴づけた映画音楽を敬意を表し感謝して取り上げ、自己の曲(3曲)と合わせて収録している。
 実は彼女の歌は私は初めて聴いたのだが、非常に聴きやすく素直でソフトな歌が快感で取り上げた次第である。

(Tracklist)

1.NATURE BOY (EDEN AHBEZ)
2.I’M IN THE MOOD FOR LOVE (DOROTHY FIELDS / JIMMY MCHUGH)
3.MANHA DE CARNAVAL (ANTÔNIO MARIA / LUIZ BONFÁ)
4.LA CHANSON D’HÉLÈNE (JEAN-LOUP DABADIE / PHILIPPE SARDE)
5.THE CIRCLE GAME (JONI MICHELL)
6.EVERYBODY’S GOT TO LEARN SOMETIME (J. WARREN & THE KORGIS)
7.ALGER, RUE DEBUSSY (DO MONTEBELLO / SERGIO FARIAS)
8.AUGUSTOU (DO MONTEBELLO / HERVÉ MORISOT)
9.NOVEMBRE (DO MONTEBELLO / MARC BERTHOUMIEUX)
10.MOON RIVER (JOHNNY MERCER / HENRI MANCINI)
11.LES MOULINS DE MON CŒUR (EDDY MARNAY / MICHEL LEGRAND)
12.SMILE (JOHN TURNER & GEOFFREY PARSONS / CHARLIE CHAPLIN)

  取上げた曲は良く知られた映画音楽で、歌は安らぎと詩情をソフトに優雅に歌い上げていて非常に聴きやすい。自己の曲もそれを支えるように歌われて見事にマッチングしている。
  プロデュサーのMarc Berthoumieuxは、ジャズ、ポップミュージック、ボサノヴァのムードを巧みに盛り込んで軽めにアレンジして中身は豪華に施してなかなかサービス精神旺盛に作り上げている。彼女の声の質も中低音が中心で高音もソフトで聴きやすい。
 そしてバックのミュージシャン(ギター、チェロ、コントラバス、アコーディオン)のスウィングに乗せられ、彼女の澄んだ物憂げな歌声は、ポルトガル語、英語、フランス語を繊細に駆使して、決して重くない快適な空間に誘導してくれる。

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 それぞれの曲はよく聴くもので懐かしさ一杯である。基本的には彼女の姿勢は一貫して丁寧なヴォーカルを披露していて、スタートのM1."Nature Boy"つづくM2."I'm in the Mood for Love"などから、むしろ早速懐かしさに誘導し、問題なく彼女の世界に入り込める。
   そしてM3."Manha de carnavel""カーニバルの朝"は、日本では"黒いオルフェ"ですね、そしてM4."エレーヌの歌" これはロミー・シュナイダーの歌で人気曲。フランス・ムード一杯で、私にとっても益々懐かしさに浸ってしまう。
   M7."Alger,rue Debussy"等の自己オリジナル曲もフランス・ムードを維持して異色感がない。
   とにかく殆ど皆知っている曲ばかりだが、彼女らしさがちゃんと歌い込まれていて、その点Berthoumieuxの編曲も原曲に素直で、聴かせの効果も上がっての良作と言って良いだろう。最後M12."Smile"を無難に演じて締めくくるあたりも映画音楽の世界を旨く収めたという処である。

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏・歌 87/100
□ 録音         87/100

(試聴)
"Smile"


*

 

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2024年5月19日 (日)

ダグ・アーネセン Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」

メロディー主導型からトリオでの多くのジャズ要素に挑戦

<Jazz>

Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」
LOSEN RECORDS / Import / LOS 296-2 / 2024

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Dag Arnesen (piano)
Magne Thormodsæter (bass)
Øyvind Skarbø (drums except 9)

Recorded November 19– 21, 2023 by Davide Bertolini
at Griegakademiet Studio, Bergen, Norway
Mixed January 17 and 23, 2024
by Davide Bertolini at Griegakademiet, Bergen
Mastered February 2024 by Morten Lund
at Lund’s Lyd, Oslo, Norway

  1970年代から既に半世紀の評価ある活動の歴史がある中で、近年、ノルウェーの伝統的な音楽やメロディを取り入れノルウェーの音楽文化とジャズの融合を探求したアルバム『Norwegian Song』シリーズ(ⅠからⅣの4枚のCD,2007-2017)が人気を呼び、日本でもおなじみのピアニストのダグ・アルネセン(1950年ノルウェー-ホルダラン県ベルゲン生まれ 下左)の最新ピアノ・トリオ作品。彼はクラシック・ピアノからノルウェーの音楽遺産やグリーグなどの作曲家/ピアニストたちからインスピレーションを受けての美しい世界を築いてきている。

 今回のトリオは新生で、ベースのマグネ・トルモドセーター (下中央)は、ノルウェーでジャズ・ミュージシャンとして活動。作曲家でもあり、グリーグ・アカデミー(出身地ベルゲン)の准教授でとしても活躍する。 ドラムスのオイヴィン・スカルボ (下右)は、グリーガ・アカデミーのテリエ・イスンセに師事し、ノルウェー、キューバ、ナイジェリアの伝統音楽も研究している。ノルウェーの即興音楽シーンを牽引する存在であり、数多くのバンドのメンバーやオーガナイザーとして活躍している。  
 今回のアルバムは、2曲を除いて全曲アーネセンの新作オリジナルが収録。相変わらず聴く者をして一種独特な北欧の世界に導いてくれる。

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(Tracklist)

1. A New One 5:48
2. Ice Breaking 4:33
3. Sarah 5:00
4. That's OK 4:52
5. Podstrana 5:40
6. Bim Bam Bom 4:27
7. After Dinner 5:42
8. Jumping Around 4:34
9. A Special Memory 4:18 (p & b duo)
total time 44:54
*all compositions by Dag S. Arnesen

 メロディーが過去の彼の作品のテーマであったと思うが、このアルバムは進化と言えるのだろうか、音楽的により多くの要素が含まれた多様なアプローチがなされている。例えばリズムやハーモニーが中心的な役割と思われる曲もある。ピアノの響きはなかなか精緻で丁寧な印象でクリアー・タッチ。ベースも印象を深める貢献が大きく、ドラムスも的確にグルーヴ感とスリルを演じている。

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 やはり従来のメロディラインが魅力的なスタート曲M1."A New One"、そして続くアルバム・タイトル曲M2."Ice Breaking "、愛猫に捧げた曲らしいM3."Sarah "では、従来の枠から一歩進んでの形を破る意味合いも込めてトリオで描くジャズ・グルーブとスリルをも楽しんでいるが如くである。
 注目は、複雑なコードの繋がりの味を楽しめるM7."After Dinner"など、彼の音楽的世界の一面を見せている。
 又昔に作曲されたM9."A Special Memory"は、ノスタルジックな味を記憶をたどるように聴かせてくれる。一方やはり古い異色の曲M6."Bim Bam Bom "などのかっての試みを再び再現しているような、これも一つの回顧なのかもしれない。
 M8."Jumping Around"も、今回のアルバムの特徴としての美メロディーに留まっていないところを主張しているようだ。

 従って、彼の『Norwegian Song』のアルバムのような北欧の風土色や独自の心象スケッチ傾向を感じさせるところもあるものの牧歌的・美メロディー、リリカルな世界に期待するとちょっと、それだけに留まっておらず、バラードからアップビートの曲もあり、躍動的なフレーズには意外性を感ずるところがあった。しかしその変化も適度でハード・バップの本道にあり、70歳超えての進化と言うかそんな姿勢だけでも頭が下がるところである。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

 

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2024年5月 4日 (土)

インギ・ビャルニ・スクラソン Ingi Bjarni Trio 「 Fragile Magic」

北国らしい神秘性と叙情性が感じられる世界

<Jazz>

INGI BJARNI TRIO 「Fragile Magic」
Skarkali / import / IBS003 / 2024

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Ingi Bjarni Skúlason – piano
Bárður Reinert Poulsen – bass
Magnús Trygvason Eliassen – drums

Nyglerauguwebw   アイスランド・フェロー諸島出身のジャズ・ピアニスト、インギ・ビャルニ・スクラソンIngi Bjarni Skúlason(→)率いるピアノ・トリオ作品。彼は、既に6枚のアルバムをリリースしているが、トリオものは3枚目のようだ。私は今回初めて彼のアルバムを聴いた。経歴は、オランダのデン・ハーグでジャズ・パフォーマンスの学士号を取得し、その後、ヨーテボリ大学で作曲の修士号を取得した。コペンハーゲンとオスロで交換留学を行ったとの紹介がある。
 彼はピアニストであり作曲家でもあり、即興のサウンド・マジシャンの評価で魅惑的な音色と詩的なメロディーを作り上げ、「表現の自由と、叙情的で自由な即興演奏の両方のためのスペースを備えた独自のフォークミュージック」との紹介がある。ユニークなサウンドと即興演奏への革新的なアプローチで賞賛されているようだ。

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 そしてトリオ・メンバーは、同じくフェロー諸島出身のコントラバス奏者バルズル・ライナート・ポウルセン(上右)とアイスランド人のドラマー、マグナス・トリグヴァソン・エリアセン(上中央)という同郷の三人。 このトリオは、Nordic Jazz Comets、Jazzahead 、VetrarJazz、コペンハーゲン・ジャズ・フェスティバル、レイキャビク・ジャズ・フェスティバルなどの数多くフェスティバルに出演してきたと。そして2018年にはアイスランド音楽賞の年間最優秀ジャズプレイヤーにもノミネート。更に2020年春、クインテットでの録音『Tenging』でアイスランド・ミュージック・アワードに5部門にノミネートされ、最も有望なアイスランドのジャズ・アーティストとして表彰された。硬質さとエレガンスが共存するフォーキーなピアノトリオと評されている。

(Tracklist)

1.Impulsive 06:16
2.Fragile Magic 05:20
3.Visan 05:33
4.Glimpse 05:56
5.Suburb 03:29
6.Úti á götu 05:55
7.Introduction 03:42
8.My Sleepless Nights in June 03:33
9.Einn, tveir, þrír 06:17

   「冷涼な空気感の中に、北の国らしい抒情性が込められたピアノトリオ演奏」と記されたモノがあったが、なんとなく神秘的で世俗から一歩離れた感覚になる世界である。主体は即興演奏からの発展系なのか、アルバム・タイトル曲のM2."Fragile Magic"では、"はかない魔術"ということであろうか、静かな世界に、ピアノによる美しいメロディーが奏でられ、それをベースが独特に叙情的に発展させ、再びピアノが更にその流れから発展し展開する形をとって、私の感覚では、冷涼と言うよりはむしろ季節の自然の変化との対面による厳しい環境下からむしろゆったりと開放的に受け入れる季節の到来に人間的な暖かさを感ずるところがある。非常に叙情的であり、又その中に詩情があって素晴らしい。

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 とにかく全編淀むところが無く、一つの物語の展開の中に没入出来て神秘的な世界を感ずることが出来る。
 又、このトリオのスタイルは、それぞれの描くところが即興の中に綿密な互いの結びつきがあって快感である。特にピアノの美しい流れに加えて、ベースのメロディー及び時に見せるピアノとのハーモニーとユニゾンが魅力的であり、ドラムスは地味ではあるが確かなサポートが大きい。このようなユニークで即興重視の世界はなかなか安易には構築できないと思われ、今後も更に発展して行って欲しいと願うところである。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

 

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2024年4月11日 (木)

インガー・マリエ Inger Marie 「Five Minutes」

ぐっと落ち着いたヴォーカル・アルバム

<Jazz>
Inger Marie 「Five Minutes」
Stunt Records / Import / STUCD23082 / 2024

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Inger Marie Gundersen(vocal),
Espen Lind(guitar, keyboards, and backing vocals),
Torjus Vierli(piano, organ, and keyboards),
Tom Frode Tveita(bass),
Martin Windstad(drums and percussion),
Kristian Frostad(pedal steel, lap steel, and guitar),
Erlend Viken(fiddle),
Tore Johansen(trumpet)

 北欧を代表するディーヴァの一人として幅広い人気を誇るシンガー、インゲル・マリエ・グンデシェン(Inger Marie Gundersen インガー・マリエ 下左)の、5年ぶり、そしてパンデミック以来のニュー・アルバム。彼女は1957年ノルウェー南岸のアレンダール生まれで、約40年ロック、ジャズのシンガーとして活動してきて、2004年に遅咲きアルバム・デビュー(『Make This Moment』)で人気者に、既に60歳代後半だ。それにつけても頑張ってますね。

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 このアルバムは、母国ノルウェーのマルチ鍵盤楽器奏者、作曲家のエスペン・リンド(Espen Lind (born 13 May 1971) 上右)が共演・プロデュースしている。彼はテレビ・パーソナリティとしてのキャリアに加えてテイラー・スウィフトやビヨンセなどと仕事してきた国際的に評価を得ているノルウェーのレジェンド。そしてその他、スウェーデンのトム・フルーデ・トヴェイタ(Bass)以外すべてノルウェーのミュージシャン達が共演している。

(Tracklist)
01. Five Minutes(Gretchen Peters)
02. Sailing(Iain & Gavin Sutherland)
03. My Valentine(Paul McCartney)
04. We Kiss in a Shadow(Oscar Hammerstein II/Richard Rodgers)
05. Wild Horses(Mick Jagger/Keith Richards)
06. Thank You Lord(Bill Fay)
07. Why Worry(Mark Knopfler)
08. Litter Person(Jon Brion)
09. Narrow Daylight(Diana Krall/Elvis Costello)

7653648162_5d69ec80ea_z   年輪を重ねたこの低音のぐっと落ち着いたヴォーカルはいいですね。歌と共に詩情が込められていく、そして心に直接響く控えめの歌声が静かで温かい世界を築き聴くものを包んでくれる。
 彼女の息を呑むような歌声を聴かせつつ、ロックの流れやフォークぽい展開があったりの彼女なりのジャズの独特のサウンド世界が作られる。それは温かく、軽くなく、誠実で、過去に聴いてきた曲も共感を誘う新しい意味をもたらして迫ってくる。

 Torjus Vierli(ピアノ、オルガン、キーボード)の彼女のヴォーカルを支える技量も素晴らしく、彼女の描く曲の展開に大きく寄与している。何につけてもEspen Lind(ギター)が、彼のサウンドを上品に全体に乗せていて品格あるアルバムに作り上げているのは見事である。

M01."Five Minutes" 心を落ち着かせ思い描くことの為にタバコを吸うには5分間あればいいと、静かなしっとりとした説得力ある控えめのヴォーカルでスタート。
M02."Sailing" 愛しい人を求め大西洋を渡る歌と解釈されつつ、実はこれは自由と神の成就へと至る人類の精神的なクリスチャン・ソングとロッド・スチュアートがカヴァーした歌。そんな心深くに染みてくるマリエの歌。
M03." My Valentine" 多くの有名どころがカヴァーしている名曲。ささやかな愛が情感豊かに歌われる。
M04."We Kiss in a Shadow" 秘密裏の恋の喜び、歌声とピアノの相乗的効果の美しさが見事。
M05." Wild Horses" ストーンズの解釈がいろいろと言われる曲だが、マリエは何かを心に描いて訴えてくる。
M06." Thank You Lord" 低音でのリズムにのつて、ギターの響きと共にスロー・ロックの味わいを感じさせちょっと異色の曲で私のお気に入り。内容は"主に感謝の心を訴える・・・"といったところか。
M07."Why Worry" 暗い中に光明を見出して慰めてくれるような世界。
M08."Litter Person" 小さな人間の大切なものをしっとりと訴える。
M09."Narrow Daylight" 冬が終わって夏に向かう・・そこには展望か、Diana Krallの歌だが、なかなか味わい深く歌い上げている。

 人生の経験を歌い込んだような選曲と歌い込み、年齢的声量低下はエコーで若干補足はしているが、彼女の真骨頂の控えめな詩情ゆたかな世界をしっとりと聴くことが出来る。

(評価)
□ 選曲・歌 90/100
□ 録音   88/100

(試聴)


*



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2024年4月 6日 (土)

アンナ・グレタ Anna Greta「Star of Spring」

待望のACTからの2ndの登場・・・神秘的で感動的な世界

<Jazz>

Anna Greta「Star of Spring」
(CD) ACT MUSIC / Import / ACT 9748 / 2024

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Anna Gréta (piano, vocals, backing vocals, keys, organ),
Einar Scheving (drums & percussion),
Skúli Sverrisson (electric bass),
Þorleifur Gaukur Davíðsson(guitar and pedal steel),
Birgir Steinn Theodórsson(double bass),
Magnús Trygvason Eliassen(drums),
Sigurður Flosason(bass clarinet),
Albert Finnbogason(synthesizer)
Recorded at Sundlaugin Studio, Iceland during May 2023 and at Studio 1001 in Stockholm
during July - September 2023.

 前作2021 年のACTデビュー作『Nightjar in the Northern Sky』のアイスランド出身ジャズSSW、ピアニストのアンナ・グレタAnna Greta(下左)のアルバムは、久々の注目株としてここで一昨年前に取り上げたのだが、2年半の経過で待望の続編ともいえる2ndの登場で喜んでいるのである。
 最新北欧ジャズサウンドと神秘的でメランコリックな歌声に魅了されるアルバムだ。アイスランド出身のベテラン・ベーシスト・作曲家のスクーリ・スヴェリソン(下右 1966年生まれ、ルー・リード、デヴィッド・シルビアン、坂本龍一などとの共演)が今回もサポート。

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 アンナ・グレタは 2014 年からストックホルムに拠点を移しているが、生まれ故郷であるアイスランドの自然の風景の美しさと力強さからインスピレーションを得ている。2021 年の ACTデビューの前作は"鳥"にちなんでのアルバム・タイトルだったが、続編となる本作は、冬の終わりと春の到来を象徴する「春の星」とも呼ばれる"雪の輝き"という花をモチーフに選んだのだという。彼女は語るところ「春になると草原を覆い尽くし、緑から青へと変えていく姿にインスパイアされただけでなく、そうせざるを得ないから咲くという事実にもインスパイアされた」こんな意味深な言葉からも、彼女はアイスランドの美しさに留まっていない一つのコンセプトを持って曲を造り歌っていることが推測される。それは下に紹介する彼女の芸術作品からもうかがい知れるところである。

(Tracklist)

01 Her House 4:25
02 She Moves 2:23
03 Star Of Spring 3:05
04 Catching Shadows 3:47
05 Metamorphoses of the Moon 3:44
06 Spacetime 4:07
07 The Body Remembers 5:13
08 Mother Of Dreams 3:39
09 Imaginary Unit 3:27
10 Nowhere 3:53
11 Denouement 3:21

 全編美しさに魅了されるヴォーカルに満ちている

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  M1."彼女の家" 厳寒の地に春が訪れ、そこに単なる明るさでない厳しさの解放の複雑な気持ちが感じられる落ち着いた美しいヴォーカル。
  M2."彼女は移動" 開放された展開を描いているのか。
  タイトル曲のM3."春の星"は、何とも言えない独特のエレガントと言える世界、単なる明るさでなくそこには厳しいアイスランドのやや陰鬱な冬のイメージがあってのその雪の輝きの美しさの花の美を訴える。この後のM4.と共に、彼女自身のバックの高音のヴォーカルとハモって一層訴えを増す歌。
 M5."月の変身" 彼女の美しいピアノが中盤で神秘的情景を描く
 M6."時空" 珍しくちょっと陽気さが逆に気になる展開の曲。
 M7."肉体は覚えている" 60 年代から70 年代にかけてグリーンランドで起こった女性の強制出産管理をトピックにした暗部に切り込む。曲は美しいが哀しさが前に出ている。
 M8."夢の母" 郷愁の歌。
   M9."想像上の一人" 珍しいリズムカルな展開。
   M10."どこにもない" 感動的な美を神秘的に歌い上げる。後半の盛り上がりの意味を理解したい。
   N11."終局"でも、美しくしっとりと歌われるが決して明るいというものではない。自然の厳しさの中から生まれるものに深く思い入れているとしか思えない。メランコリックな中に未来を見据えた希望も感じられるところが救いである。

 とにかく彼女の素晴らしピアノ・テクニックの下、独特のヴォーカル・ラインは非常に神秘性をもって印象的に響いてくる。テーマが明るい世界ではないのであるが、なんとか美しさを求めているけなげな姿を想像させる。大自然と厳しさと美に人間性を求めて描く世界は非常に感動的で稀有な世界である。ジャズ因子はしっかり感じられる中での彼女の独特な音楽が感じられる。スカンジナビア・ジャズとしても重要なお勧めアルバムだ。

(参考)アンナ・グレタの芸術 =  「絵画」

 アンナ・グレタの話「私はいつも視覚芸術に興味を持っていましたが、私たちの多くが以前よりも少し時間を持っていることに気づいたCOVID中に自分自身を描き始めました。絵を描くことは私にとってです。自由な表現、手放しの方法、そして境界のない創造の方法。」
左から 「ブラックレイン」「すべての人の心の内側」「暗闇に唄う」(クリック拡大)

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(評価)
□ 曲・歌  88/100
□ 録音   88/100

(試聴)

 

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