ユーロピアン・ジャズ

2018年7月29日 (日)

映像で観るサラ・マッケンジーSarah McKenzieのピアノ&ヴォーカル

今やダイアナ・クラールを追う有力な弾き語りピアニスト
                  (・・・・と、言うと大げさか?)

<Jazz>

 [DVD]  Sarah McKenzie 「Jazz San Javier 2016」
   Live at 19 Festival de Jazz de San Javier, Murcia, Spain, July 29th, 2016 (70min)

1

Sarah McKenzie - piano
vocals Jo Caleb – guitar
Pierre Boussaguet – bass
Marco Valeri – drums

Parisintherain79ed7869 ジャズ・ピアノを軽やかにこなしての明るいヴォーカルでこのところ人気モノになりつつあるサラ・マッケンジー、昨年ここでアルバム『PARIS IN THE RAIN』UCCI-1037)(→)を取りあげたのだが、来日したりで日本でも美貌も相まって人気を獲得しつつある。
 そんなところで、やはりブートであってもライブ映像版を観たいとう心境で、このところ観ているDVDの紹介だ。
 これは2016年のスペインに於けるライブ収録。彼女の通常のスタイルのギターの入ったピアノ・カルテット構成だ。冒頭から彼女のヴォーカルが満開。例の如く軽やかで明るい。

Smw(Tracklist)
01. Onwards And Upwards
02. I Won't Dance
03. We Could Be Lovers
04. That's It, I Quit!
05. Don't Tempt Me
06. I Got The Blues Tonight
07. Moon River
08. When In Rome (I Do As The Romans Do)
09. Love Me Or Leave Me
10. Quoi, Quoi, Quoi
11. At Last
12. The Lovers' Tune
13. Embraceable You

 なんと言っても、映像に耐える美貌がいいですね。ピアノ・タッチも軽やかで、スウィングする演奏が多く、ジャズとしては極めてオーソドックス。ここではアルバム『PARIS IN THE RAIN』がリリースされた前年だが、アルバム収録されている曲の3曲(M01, M08, M13)をも演奏している。こうしてライブ映像で観ても、声の質は高音までクリアで清楚感がある。しかし今一つ聴いて痺れるところがないのがちょっと寂しい。M06." I Got The Blues Tonight"のブルース・タッチでも、もう少し哀感が欲しいと思うところ。
  ギターのみのバックで彼女のスローバラードがM07. "Moon River"、 M13. "Embraceable You "の2曲で披露されている。ここではヴォーカルの力量が問われるところだが、天性の歌い込みの上手下手が出てしまうところで、上品さの感じるところところは良いのだが、その為少々情感に乏しい感じだ。まあそのあたりが又良いというファンもいてそれはそれ結構な事である。私から見ると、やっぱり彼女はピアニストにウェイトがあるのだなぁ~と思うところなのだが・・・・。
 しかしこのタイプはカルテット仲間との相性はむしろ良さそうで、観る者にとっては快感でもあった。

② [DVD] Sarah McKenzie 「Monteu Jazz Festival  2017」
        Live at Montreux Jazz Festival 2017 (90min)

Montreuxaww

Sarah McKenzie: vocals & piano
Geoff Gascoyne: bass
Hugo Lippi: guitar
Donald Edwards: drums
Warren Wolf: vibraphone


 こちらは、昨年2017年のMonteu Jazz Festival における彼女の上のようなメンバーでのクインテット構成によるライブ・パフォーマンス、約90分に納めている。この時の特徴は最近あまり編成されないビヴラフォンが加わっていることで、これによって一味ムードが変わっている。彼女の清楚感あるヴォーカルからして、このパターンがなかなか面白いと思った。

(List)
0:17 Road Chops
5:39 I Won't Dance
10:41 We Could Be Lovers
16:31 Paris In The Rain*
22:07 One Jealous Moon*
28:54 The Secrets Of My Heart
35:32 Small Feats
42:00 I've Got The Blues Tonight
51:15 Tight
58:45 Triste*
1:05:08 I'm Old Fashioned*
1:12:19 The Lovers' Tune
1:22:04 Embraceable You*

  演奏曲目は13曲だが、最新アルバム『PARIS IN THE RAIN』と時期が一致していているため、アルバムの5曲(*印)がここで演じられている。
 そして彼女のなんとなく上品で清楚感あるヴォーカルとピアノ・プレイで楽しませてくれる。又このライブでは、メンバーそれぞれのソロ演奏も十分に取り入れられていて楽しいライブになっている。このあたりはアルバムと違った楽しみ方が出来るところだ。
 彼女は、オーストラリア、メルボルン出身。ウエスト オーストラリアン アカデミー オブ パフォーミング アーツでジャズの博士課程を修了。その後、アメリカのバークリー音楽院に入学し、卒業後は、パリを拠点として活動している。ジャズ曲コンポーザー、ピアニスト、ヴォーカリストと活躍している。これまでに下記の4枚のアルバムをリリースしているが、嫌みの無いところが取り柄として聴いてきた。これからどのように発展して行くかも楽しみなプレイヤーと言って良いだろう。ダイアナ・クラールの痺れる味には、まだまだと言うところだが・・・。

(Sarah McKenzie - Discography)

Don't Tempt Me (2011)
Close Your Eyes (2012)
We Could Be Lovers (2014)
Paris in the Rain (2017)

(視聴)

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2018年7月22日 (日)

ヨーロピアン・ジャズ・トリオEuropean Jazz Trio来日ライブ

猛暑の中の来日ライブ

Img_1126w しかしこの夏の猛暑は異常ですね。
 その暑さの中、オランダからヨーロピアン・ジャズ・トリオが来日。なんと言っても我々以上にこの陽気には彼らはビックリしているでしょうね。これには敬意を表さなければと、「Cotton Club」を覗いてきました(21日)。なにせ熱くて外には長く居られないので・・・・・。

 オランダのジャズ・ミュージシャン3人で結成されたこのジャズ・ピアノ・トリオ。発足は1988年と言うことなので、なんとメンバー・チェンジはあったとは言え30周年と言うことになる。
 残念ながらこのところニュー・アルバムにお目に掛かっていないので(ベスト盤のようなものはありますが)、どうなっているのかちょっと不安なトリオでした。もともと欧州ジャズのリリカルな因子のあるクラシックからジャズ・スタンダードそして映画音楽、ポップスまでを広くカヴァーして気持ちよく聴かせてくれるトリオであり、来日と言うことでホッとしたと言うのが正直なところ。

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 メンバーのマーク・ヴァン・ローンMarc van Roon(p)、フランス・ホーヴァンFrans van der Hoeven(b)、ロイ・ダッカスRoy Dackus(ds)というのは、1955年から続いている。特にピアニストのマークは、ビル・エヴァンスからの影響が濃く、それも日本では結構人気の一因子でもある。20周年の2009年には日本の歌謡曲や童謡をジャズ化してみせてくれたりで、日本に根強いファンもいるのである。

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 私からすれば、どちらかというと嫌みの無いリラックスして聴きやすいジャズの範疇に入るし、それは刺激性は少ないと言うことになって、強烈な印象というのは実はないのがこのトリオであった。

 そんな抵抗のないところで、今回、取り敢えず来日ライブに参戦して来たのである。このトリオは私にとっては初めてお目に掛かるのだが、なんとなく以前から観てきたような気になるから不思議なトリオ。それだけ親近感があるというと言うところか。
 やはりロイが一番愛嬌がありますね。フランスはあまり表情を変えずの演奏だ。やはりピアノのマークがこのトリオでは重要ですね。彼が最も若いと思うが、今回のプレイでなんとクラシックからの曲が最も生き生きとしていたところが印象的だ。彼のキャリアからして当然なんでしょうね。彼はソロ・アルバムや彼名義のトリオ・アルバムもリリースしている。

 しかしまあこれほど気品を感ずるトリオも珍しい。オーディエンスも何というかお上品に聴いていた。今夜もクラシックからビートルズまでを取りあげてのとにかく好感の持てるライブ演奏であった。ちょっと気持ちの豊かになる一夜でした。

(参考視聴)

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2018年7月10日 (火)

ヤスクウケ・セクステットJaskułke Sextet 「Komeda Recomposed」

プログレッシブな~格好いいジャズだ!!

<Jazz>
Jaskułke Sextet 「Komeda Recomposed」
CORE PORT / JPN /RPOZ-10041 / 2018

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スワヴェク・ヤスクスケSławek Jaskułke  (作曲、グランドピアノ、アップライトピアノ)
エミル・ミシュクEmil Miszk (トランペット、フリューゲルホルン)
ピョトル・ヘンツキPiotr Chęcki (テナー・サックス)
ミハウ・チェシェルスキMichał Jan Ciesielski(アルト・サックス)
ピョトル・クワコフスキPiotr Kułakowski (ベース)
ロマン・シレファルスキRoman Ślefrarski (ドラムス)

 上のアルバムの演奏メンバーを見て解るとおりセクステットなのだ。ピアノ・トリオ+トランペット、テナー・サックス、アルト・サックスという珍しいタイプ。とにかく私の好きな編成じゃないのだが、聴いてみると結構格好いいジャズを展開している。

Komeda ポーランドが舞台のジャズの話題となると、なんだかんだ言っても、ポーランド・ジャズ史上最高の作曲家クシシュトフ・コメダ(Krzysztof Komeda:1931-1969)(→)と言うことになる。

 そのコメダの曲を楽しませてくれたのは過去にも取りあげたMarcin WasilewskiのSimple AcousticTrio(『Lullaby for Rosemary』(2001))やNBS Trio(『Plays KOMEDA(2010)) とかLeszek Moźdźer(『Komeda』(2011))ですね、そうそうKomeda Project(『Crazy girl』(2006))もあった。

01tr そしてここに又ポーランドの人気ピアニストのスワヴェク・ヤスクウケSławek Jaskułke(←)  によってのコメダの登場となったのだ。
 しかし・・・・それが安易にコメダの美メロディーということに期待したら、なんと一発食らうのは間違いない。ポーランドのジャズとなると今やオラシオ氏の登場となるが、彼のライナー・ノーツを見ても、これは「カヴァー・アルバム」じゃないと強調している。難しい話だが、コメダの名曲を文字通りアルバム・タイトルにある”Re-Composed”つまり”再構築”するという斬新と言えば斬新な内容。まあ原曲はそう多く私は知っているわけでは無いので、完全にここではヤスクウケのオリジナル曲に近い。

(Tracklist)
1. KATO(「Astigmatic」(1965)収録Kattoma、その他より)
2. OXIS
3. NASTIC
4. CRAZY(映画「水の中のナイフ」収録曲Crazy Girl、その他より)
5. SVANTE(「Astigmatic」(1965)収録Svantetic、その他より)
6. ETIC(SVANTEのPart2)
7. SZARO(Szara Koledaより)
8. EPILOG

  こうして見ると、あの名作と言われるコメダ・クインテットのアルバム『Astigmatic』(1965)とか、映画ロマン・ポランスキ監督の『水の中のナイフ』の曲”Crazy Girl”あたりが注目点なんですね。素人っぽい私から見ると”ローズマリーの赤ちゃん”などが最右翼なんだがちょっと違う。
 そして曲はその曲をただなぞるという手法で無く、その血となる部分、骨となる部分をヤスクウスケ流に構築し直してのコメダ独特の短いリフが複数のコメダ曲から取り出して組み上げる手法で、まさに彼自身の曲として再構築されている。成る程これが「Recomposed」という事なんだと解る。

 セクステットのメンバーは結構若くて、これが又ロックとジャズといったジャンルに拘らない世界のコンテンポラリー・ジャズを演じて、流れは静寂性を描いたり、ダイナミックなパワーを見せつけたり、この絶妙にコントロールされた両極の世界はとにかく格好いいのです。特にピアノの流れとドラムスの迫力のリズム(ジャズでも時にはこれだけ叩くのも有りだ)は聴きどころ。不思議な世界を頭に描かせる冒頭のM1." KATO"が典型。
 又ピアノとトランペット、サックスとのインタープレイも奥深い。
 アルバムを通してM1." KATO"からM8. "EPILOG"までで起承転結がきちっと出来ているところもお見事。
  ヤスクウケのピアノがこうしてコメダを自己表現の世界に引っ張り込んだでの新しいジャズ・シーンに打って出た格好で、いやはや驚きのポーランド・ジャズだ。

[スワヴェク・ヤスクスケSławek Jaskułke] 
 1979年1月2日生まれ、ポーランド・プツク出身のジャズ・ピアニスト/コンポーザー。名門カトヴィツェ音楽大学へ進むも退学し、2年間欧州の各地を放浪しながら音楽を演奏。ポーランドへ戻るとサックス奏者のズビグニェフ・ナミスウォフスキに見出され、プロキャリアをスタート。自身のピアノ・トリオやショパンのカヴァー・プロジェクトなど、多彩な活動を展開。かつてはポーランドの人気パンク・ジャズ・ユニット、ピンク・フロイトでの活動経験も。映画音楽やモダン・クラシカルの仕事にも関与。2002年の初リーダー作以来、10枚以上の作品を発表。2017年にピアノ・ソロ作『夢の中へ』(原題:SENNE)をリリース。(ネットに見る紹介内容)

(評価)

□ 演奏・曲  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★★☆

(参考視聴)

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2018年7月 6日 (金)

セルジュ・デラート・トリオSerge Delaite Trio 「SWEET AND BITTER」

何故か心が躍る~ピアノ・トリオを楽しむならこのアルバムだ!!

<Jazz>
Serge Delaite Trio 「SWEET AND BITTER」
Atelier Sawano / JPN / AS162 / 2018


Sergedw_2

Recorded, Mixed & Mastered by Francois Gaucher

Sdtrio1Serge Delaite : piano
Pascal Combeau : bass
Jean-Marc Lajudie : drums

(Tracklist)
1. Take Five
2. It Could Happen to You
3. Lover Man
4. Amazonas
5. ’Round Midnight
6. St. Louis Blues
7. Hi Fly
8. Step Lightly
9. My One and Only Love
10. Minor Mishap
11. I Fall in Love Too Easily
12. That’s All

 今年は例年より梅雨が早く明け、猛暑が襲って来ていたのだが、昨日今日は全国的な雨。梅雨の鬱陶しさが戻ってきてしまった。しかしそんな鬱陶しさを吹き飛ばす心が躍るトリオ演奏に浸ることが出来るのがこのアルバムだ。
As084_540x 澤野工房からのリリースで、既にこのトリオは多くのアルバムを蓄積している。私が最近納得したのはアルバム『Comme Bach...』(AS 084)/ 2008)(→)だった。あのバッハの捉え方には驚きでしたが、そのお洒落な発想はさすがフランス人ですね。そして今回のアルバムでもセルジュ・デラートのピアノ・タッチは優美というか、軽快というか・・・・暗さが全くない。これもピアノ・トリオの一つの楽しみ方であることをしみじみと教えてくれる。

 このアルバムは、誰もがよく知ってるM1."Take Five"からスタートするが、これが又4拍子の明るいアレンジが見事で驚かされる。そしてM6." St. Louis Blues"も、なんと心が躍ってくるから不思議。
 M3. "Lover Man"はベース、M4. "Amazonas"はドラムスと、それぞれ役どころをちゃんと持った演奏だ。  
 M9. "My One and Only Love"になって初めてしっとりした優しさのある心の安まる曲の展開となる。あまり躁状態にならないようにと、諫(いさ)められるというか慰められる気分である。アルバム・タイトルの「Sweet and Bitter」は、”甘く快くそして苦く”と言うところか?、しかし幸いにあまり苦さが無いところが味噌。
 M11. "I Fall in Love Too Easily"もしっとりとして、心に優しさと共に安らかさを与えてくれる。

 このアルバムを喩えると、懐かしのメンバーの集まる同級会のバック・クラウンド・ミュージックとして最高です(笑)。リラツクス・ムードが満載だから。
 そしてなかなか録音も楽しさを伝えるトリオのバランスとそれらの音質がお見事である。

S_d_1 セルジュ・デラートSerge Delaiteは、フランス・オーヴェルニュ生まれ。父親はバンドマスターで、その影響か7歳からピアノを始めたらしい。父が主宰するオーケストラに参加したり、後にジョ一ジ・ムラ一ツ等著名なミュージシャンと共演。彼自身のトリオでは何とも言えない快い明るさを振りまき、一方フランスらしいお洒落なジャズが人気で、ヨーロッパ各地を中心として幅広い活動を行なっている。

(評価)
□演奏: ★★★★☆
□録音: ★★★★☆

(参考視聴)

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2018年6月28日 (木)

(検証シリーズ)ロッセ・マイヤー・ガイガー・トリオRosset Meyer Geiger 「 Drü」、「What happend」

信じられないファンク・バンドからの発展形?
プログレッシブ・ジャズにリリシズムが・・・・

<Jazz>
Rosset Meyer Geiger の2アルバム


① 「 Drü」   
                
   Unit Records / UTR4665 / 2016 

Druw(Tracklist)
1. Perpetuum Mobile
2. Dreamer
3. Mantra
4. Mountain lake
5. Shakeface
6. Mande
7. La Mer
8. .Shell bay
9. Plastic
10.Arcs

 

② 「 What Happend」
 Unit Records /  UTR 4266 / 2010

Whathappendw(Tracklist)
1. The Beginning
2. Die Sau
3. Feuer von Gibraltar
4. Tritt O'Nuss
5. Another Place
6. To Do
7. Fur Gregor
8. Fragment
9. Zebra Und Dromedar
10. Dribbling
11. Matteo
12. Mannsgoggel's Groove



Recording, Mixing and Mastering : Stefano Amerio

Josquin Rosset (p)
Gabriel Meyer (b)
Jan Geiger (ds,per)

  スイス、ザンクト・ガレン出身のジョスカン・ロッセ(p)、ガブリエル・マイヤー(b)、ヤン・ガイガー(ds)の3人の連名でのピアノ・トリオ「ROSSET MEYER GEIGER」。昔はファンク・バンドであったというからその変容も驚き。
 「ジャズ批評」のジャズ・オーディオ大賞を獲得したり、一方あの寺島靖国がステファノ・アメリオの録音評価を交えての一押しているアルバムでもある。なんとスイス本国でも特に日本で売れたことが話題なったという代物のようだ。
 2016年の最近作『 Drü』においても路線は継承され、オリジナル曲による独特な進歩的サウンドによるフリー・ジャズ因子を持っての方向性は変っていない。

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 このトリオの特徴を知るとしたら、2010年の 『What Happend』の方が解りやすい。とにかくスリリングな展開がお見事。そこには即興プレイからインタープレイの緊迫感が新鮮で楽しめる。とにかくアメリオの録音もそうだが、三者が対等に演ずるところは新しいトリオの姿として聴く想いである。特にドラムスは決して奥まったサポート役のみと言うのではない。
 このトリオのかなり自由なプログレッシブとも言える演奏パターンは難解と思われやすいが、それもそうでは無く、何故か引きつける魅力を振りまいている。又結構スウィングする場面も展開しているかと思うと、そこに流れるピアノの旋律にはリリシズムも確実に存在しているところがニクイのだ。更にGabriel Meyerの曲M3." Feuer von Gibraltar"にみるように、 ベースもリズム隊のみでなく旋律を奏でる役もピアノと対等に展開する。

 そして近作のほうのアルバム『 Drü』となると、若干スリリングな展開はやや甘くなり、結構メロディー重視の曲もあって、一層聴きやすいアルバムになってきている。
 迫力という点では、アルバム『What Happend』のほうに私は軍配を挙げると同時に価値感を感じている。コードからモードへのモーダルな世界へという展開は、なるほどこうした自由度を高めた演奏を聴かせる世界を提供してくれるのである。

(評価)
□ 曲、演奏 :★★★★☆
□ 録音   :★★★★★☆

( Rosset Meyer Geiger -  Discography)

1. 「What Happened」  Unit Records UTR4266/2010
2. 「Lucy's Dance」            〃    UTR4308/2011
3. 「Trialogue」                  〃     UTR4405/2013
4. 「Drü」            〃      UTR4665/2016

(視聴)

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2018年6月25日 (月)

(検証シリーズ)ボボ・ステンソン・トリオBobo Stenson Trio検証 アルバム「Serenity」

フリー・ジャズの世界から・・・・何が生まれたか?

Contralaindw_2  このホボ・ステンソン・トリオ(スウェーデン)は、今年久々にリリースされた『Contra La indecisión』ECM2582 5786976)(→)が素晴らしかった。そして既に過去に聴いていた二作『Reflections』(1993)、『Goodbye』(2005)を参考に、今年1月にここで感想を少々書いたのだが、この歴史あるトリオを、もう少し聴き込んでみよう思った次第。

 もともと私はアルバムを一枚の作品として聴くタイプであるので、ライブものは避けることが有り、その為聴き逃していたモノがある。しかし考えて見ると、ライブものが意外にそのトリオのその姿を如実に示すと思い、過去の8枚のアルバムの中で、2000年リリースの2枚組ライブ・アルバム『Serenity』を、ここで今になってアプローチしたのである。

<Jazz>

Bobo Stenson Trio 「Serenity」
ECM / GERM / ECM 1740/41 / 2000

Serenity

Recorded April 1999 at HageGrden Music Center, Brunskog, Sweden
Recording Engineer : Åke Linton

Bobo Stenson : piano
Anders Jormin : double-bass
Jon Christensen : drums

12012 スウェーデンの人気ベテラン・ピアニスト、ボボ・ステンソン(1944-)のリーダー・アルバム。アンデルス・ヨルミンとヨン・クリステンセンによるレギュラー・トリオ作品。ライブ演奏盤だが、そこにみるは、インプロを交えての濃密なインタープレイが楽しめるフリー・ジャズの一つの発展形、なかなかテンションも高い。録音も素晴らしくちょっとライブ盤とは思えない緻密性を感ずる。
 既にベテラン中のベテランとなっている彼であるが、この18年前のアルバムにてもその一つの形を作り上げている。もともとフリー・ジャズと言う分野になろうかと思うが、ここにはあまり実験性というものは感じない。もしろこのスタイルによってトリオが主張する北欧の音楽界に存在する芸術性の結晶をみる思いである。
 そして恐ろしいのは、なんとボボ・ステンソンの演ずるピアノの音には濁りというモノとは全く縁の無い透明感のある音であり、そこも痺れるところである。しかも全編”不思議な耽美な世界”が存在している。
 ECM盤の特徴である”静的な世界”は当然存在しているのだが、決して単なるそこに終わるので無く、結構スリリングなトリオとしてのエネルギッシュな交錯も展開しているのだ。

2000

 印象としては、このアルバム『Serenity』及びこの前後の『Reflections』、『Goodbye』の2アルバムを含めての2000年前後の3作は、今年のアルバム『Contra La indecisión』よりは、さすがにバリバリの活動期にあっただけに、その演奏の緊迫性は高い。これらを経過しての今年のアルバムを聴き込むと、成る程ボボ・ステンソンの年齢と共に構築されて来た人生観が見えてくるように思う。近作の方がどちらかというとソフトな美学が感じられ、過去のものには緊迫性の美学が感じられるのである。

Ajorminw オリジナル曲が主体のアルバムだが、ベーシストのアンデルス・ヨルミン(→)がいずれのアルバムにおいても多くの曲を提供しており、彼の役割の重さも忘れてはならないと思う。近年ではドラムス担当が変わっているが、彼の場合は現在まで長くこのトリオを支えている。
 又2枚のCDに収録されている19曲の中でも、特に評判通りWayne ShorterのM8."Swee Pea"の繊細なシンバル、そしてアルコ奏法ベースからから始まって、おもむろにピアノの語りへとの流れ、続くM9. "Simple & Sweet"(Disc1)のベースへの展開の辺りは痺れます。 又M8. " Serenity"(Disc2)のような静穏な世界も彼らの特徴に思う。 

(Tracklist)
Disc 1
1.  T 
2.  West Print 
3.  North Print 
4.  East Print 
5.  South Print 
6.  Polska Of Despair (II) 
7.  Golden Rain 
8.  Swee Pea 
9.  Simple & Sweet 
10.  Der Pfalaumenbaum 

Disc 2
1.  El Mayor 
2.  Fader V (Father World) 
3.  More Cymbals 
4.  Extra Low 
5.  Die Nachtigal 
6.  Rimbaud Gedicht 
7.  Polska Of Despair (I) 
8.  Serenity 
9.  Tonus


  このような北欧のフリー・ジャズ世界は独特の世界を持っていて、それはこの基礎にある北欧ならではのトラッドからの流れとクラシック音楽との融合から発展したジヤズ感覚によって構築されている”進歩的味わい”というものが存在すると思うのである。

(評価)
□ 演奏、曲  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★★☆

(参考視聴 1990年代 Bobo Stenson Trio)

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2018年6月14日 (木)

(検証シリーズ) ステファノ・バターリア・トリオStefano Battaglia Trio検証  アルバム「In The Morning」

心を癒やし、深層に浸透していく神秘的世界を描く

<Jazz>
Stefano Battaglia Trio 「In The Morning」
ECM / GERM / ECM 2051 2768055 / 2015

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Stefano Battaglia(piano)
Salvatore Maiore(double bass)
Roberto Dani(drums)
Recorded April 28, 2014 Teatro Vittoria, Torino
Produced by Manfred Eicher
Engineer Stefano Amerio


Sb1w イタリアのステファノ・バターリア(バタグリア)Stefano Battaglia に関しては、ECMレーベル愛好家にて結構その筋での支持者がいるのだが、私としては、じっくり聴く機会も無かった為、ちょっと反省(笑)して、ここで聴き込こもうとしているのである。
 近作にピアノ・ソロ盤2枚組『Pelagos』(ECM/5768968/2017)がリリースされていてなかなかハイレベルの作品として評価されているが、ピアノ・トリオ好きの私としては、まずは彼のその筋の最新作はこの2015年のアルバムECM6作目の『In The Morning』であるので、そこから2011年のアルバム『The River of Anyder 』と共に聴いている。

(「In The Morning」Tracklist)
1.  In the Morning
2.  River Run
3.  Moon And Sand
4.  When I am Dead My Dearest
5.  The Lake Isle of Innisfree
6.  Where Do You Go?
7.  Chick Lorimer
(Music by Alec Wilder,  arranged by Stefano Battaglia)

 ステファノ・バターリアは、2003年に自身が尊敬しているというBill EvansやPaul Bleyなどに焦点を当ててのアルバム『Raccolto』(ECM/051117-02)でECMデビューを果たした。
 この6作目は、米国のコンポーザーであるアレック・ワイルダーAlec Wilder(1907-1980)を取りあげている。このワイルダーは、ペギー・リーとかフランク・シナトラなどが歌っていたポピュラー・ソングやクラシックの室内楽、オペラなどの作曲家として知られる人だと言うが、私は知らなかったに等しい。彼はこの作曲家の音楽世界の深い部分に引きつけられていて、ここに挑戦しているのだという。ライブ録音盤である。録音は今や注目のステファノ・アメリオであり素晴らしい。

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 曲はやっぱりイタリア的なしっとりねちこいと言うタイプでない。その分だけイタリアものとしてはちょと別モノのスッキリした抒情性である。私はこのワイルダーの曲に詳しくないので、どれもオリジナルな新曲に聴ける。そしてそれを優しく描くバターリアのピアノは美しい。なにかジャズものを聴いているとは思わない別の世界にいるような気分にもなる。

 M5. " The Lake Isle of Innisfree" は、極めてECM的世界である。トリオそれぞれが一つ一つの音を大切に余韻を味わうべく展開する。15分以上の長曲であるが、途中から明解なピアノのリズムが心を癒やす如く流れ、今度はベースが心の奥に浸透して行く。そして中盤になって、シンバルとピアノによる深層の世界に・・・・と、とにかくアメリオの録音がよく静寂の中に響く音に集中してしまう神秘的世界。これは一人で静かに聴くに最高の曲で、この会場ではどんな雰囲気だったんだろうと想像してしまう。最終章では聴きやすい心地よいピアノを主体としてのリズムが流れトリオの音で満たされて、安堵の中に終わる。

 とにかく全曲きわどいパターンはなく、心に響く優しさと深遠なる響きで貫いていて、曲の合間に入る拍手の会場の音が、聴いている私にとって、ふと我に返るというところである。強いて言えば、最後の曲 M7. " Chick Lorimer" のみ異色で有り、トリオそれぞれの自由度が高い中に乱れの無いハイセンスな技巧を聴かせ、彼らのトリオとしての存在を示している。ただ優しさだけで無く、テクニシャンぶりを訴えてこれで締めくくりたかった気持ちが解るところだ。

(評価)
□ 演奏 ★★★★★☆
□ 録音  ★★★★★☆

■参考としてもう一枚のトリオ・アルバム■
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Stefano Battaglia Trio 「The River of Anyder」

ECM / GER / ECM 2151 8055 / 2011

Stefano Battaglia (p)
Salvatore Maiore (double-b)
Roberto Dani (ds)


  こちらのアルバムは、ECM的世界そのもの。私にはよく解らないが、イギリスの思想家サー・トマス・モアの著書『ユートピア』に出てくるAnyder川に流れる透き通った水をテーマにとの事。この川をはじめ他にも神話や伝説で知られる場所を彼の世界で描いたという作品。全曲Battagliaのオリジナル曲。これこそ彼らの自然から受ける時代を超えた情景を描いている叙情詩。自然と人間の高尚なる存在に目を向けさせる世界感を持ったトリオなのだ。

(視聴)

*     *

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2018年5月12日 (土)

ヨーナス・ハーヴィスト・トリオJoonas Haavisto Trioのニュー・アルバム「Gradation」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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  (我が家の庭から・・・・「モッコウバラ」   NikonD800/90mm/PL/May,2018)


北欧の世界を感じさせるコンテンポラリー・ジャズ

<Jazz>
Joonas Haavisto Trio「Gradation」
BLUE GLEAM / JPN / BG009 / 2018

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Joonas Haavisto : Piano
Antti Lötjönen : double bass
Joonas Riippa : Drums
Recorded December 17-19,2017 at Kallio-Kuninkala Studio, Järvenpää, Finland


 ヨーナス・ハーヴィスト(フィンランド)は北欧気鋭のピアニストだ。その4枚目のトリオ作が日本のBlue GLEAMレーベルからリリースされた。
 前作は日本でも好評の『Okuオク』(BLUE GLEAM/BG007)で、あれから2年ぶりとなる。日本の「奥」の世界をイメージしてのあの深遠なる演奏に再び触れたいと今作にも自ずから期待してしまう。今作は、ヨーナスのトリオ結成12年目の作品となるようだ。
 彼はなんと世界からの好評を受ける中、2017年には、あの名門ピアノ・メーカーのSteinway & Sonsの専属アーティストにもなったようだ。
 今作、収録全8曲(ハーヴィストのオリジナル7曲、トラディショナル1曲)で構成されたアルバムで、今回も何とも北欧の世界を感じさせるアルバムである。


Joonas001trw(Tracklist)
1.  Surge
2.  Moriens
3.  Sitka*
4.  Flight Mode
5.  Sigh
6.  Emigrantvisa
7.  Polar Night (Bonus Track )
8.  At The Dock

All compositions by Joonas Haavisto exept "6"(traditional)
Teemu Viinikainen : guitar (*印)

 過去の様式から一歩前進しての現代感覚で作り上げるジャズ芸術も多様化しているが、彼らのピアノ・トリオのジャンルはコンテンポラリー・ジャズというところに納まるのかも知れない。
 しかし美旋律ものというものではないが、北欧の自然からの美しい印象が流れてくる。新しいセンスのジャズを構築するのだが、所謂アヴァンギャルドという印象も無く、むしろ郷愁を誘うクラシックな深い世界を感じることが出来る。

16681581_2294595660679072_52860314516711618_2294595480679090_2765969_2 スタートは意外にもダイナミックにしてやや激しいピアノ・プレイで迫ってくるが、M2. " Moriens"になると、北欧をイメージする深い味わいのトリオ演奏が展開する。特に中盤のベース独奏が深く想いをもたせ、そして続くピアノが深遠な自然の展開をイメージするリリカルな見事なプレイにしみじみとしてしまう。
 M3. " Sitka"は、アラスカにある都市だそうだが、この曲のみ美しく優しいギターが加わってイメージを変える。それがこのアルバム・・トータルからみて、一つのアクセント効果をもたらしている。
 M4. " Flight Mode"のようにピアノのエネルギーを展開する曲もあるが、スウェーデンのトラッドというM6. " Emigrantvisa"は、なんとなく郷愁を誘うところがあって北欧の自然豊かな世界を想像させるに十分な曲だ。

1888868_trio

  相変わらずこのトリオは、過去に捕らわれない世界に挑戦しつつも、人の心をつかむ技に長けていて、なんとなく引き込まれていってしまう。そんなところが持ち味で、日本的な感覚にもマッチするところがポイントだ。

(評価)
□ 曲・ 演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴) Joonas Haavisto Trio

 

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2018年5月 4日 (金)

アレッサンドロ・ガラティ・トリオALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

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(Nikon D800/90mm/PL/Apr.2018)


ガラティの「メロディー信仰の世界」で描ききった作品
    ~寺島レコード、気合いでリリース~

<Jazz>
ALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1062 / 2018

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Alessandro Galati  : piano
Gabriele Evangelista  : bass
Stefano Tamborrino :  drums

Recorded in Nov. 2017 at Artesuono Studio (Italy)
Recorded, Mixed & Mastered by Stefano Amerio
Producer : 寺島靖国Yasukuni Terashima

 先日このアルバムが到着して、「今年の目玉の一つは遂に手に」と私は感じ取った。1994年のアルバム『TRACTION AVANT』(VVJ007)以来、アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリア・フィレンツェ生まれ)に虜になってしまっている私が、ここに来て今年は彼のアルバムを近年リリースしてきた「澤野工房盤( 『OUTER GOLD, INNER LORD』(AS161) )」と、それに加えてあの寺島靖国が名エンジニアであるステファノ・アメリオの手による録音に興味を持って企画されたこの「寺島レコード盤」と、立て続けに2枚手に入ると言う事になったのである。そんな訳で、この春は私にとっては大変な感動の時となってしまった。
 もともとガラティはイタリアVia Veneto Jazzレーベルからのリリースだが、日本盤としてBLUE GLEAM盤が頑張っていたのだ。ところが、ここに来て澤野工房そして寺島レコードと、今や人気のこの両レーベルが競ってリリースしてくれることは、何に付けても頼もしい話である。

Image_triow そしてアレッサンドロ・ガラティ・トリオは、この現メンバーで落ち着いてますね。ガラティ自身もベースのGabriele Evangelistaには絶対の信頼を置いているし、Stefano Tamborrinoのドラムスの演奏についても”空気をプレイする”と絶賛している。
 それがこのところの『Seals』VVJ090/2014)『On a Sunny Day』(VVJ105/2015)『Cold Sand』 (AS155/2017)などの成功アルバムをリリースしている原点なのかもしれない。

 さて、このアルバムの音に関しては、ステファノ・アメリオの技量を十分に堪能できる。しかもそれには寺島靖国の介入がどこまで具体的にあったかは不明だが、私の聴くところによると見事寺島サウンドの味付けをも感ずることが出来た。そしてそれを聴き分けるには格好のアルバムがある。それは、つい先日リリースされた澤野工房の『OUTER GOLD, INNER LORD』である。こちらも同じガラティ・トリオでアメリオの同じスタジオにおける録音・ミックスであるが、これが若干違うところが面白い。私の気のせいかも知れないが、ドラムスの取り入れが異なっている。この寺島盤ではかなり効果を上げているのだ。
 もう一つ言うならば、さすがガラティのピアノ演奏とアメリオによる録音だ。ピアノの音色が出色の出来だ。寺島靖国の昨年の自慢のアルバム『BALLADS』(TYR-1058/2017)と比較しても、明らかにこちらは格段上の艶のある美しさだ(ピアノは名機Fazioli)。これは、演奏技術、録音技術、ピアノの質による相違であろう・・・この音こそピアノ・トリオの真髄と言いたくなる。

Sqsjfuo4(Tracklist)
1. After You Left
2. Stella By Starlight / Victor Young
3. You'll Walk In The Field
4. Blue In Green / Bill Evans
5. Coracao Vagabundo / Caetano Veioso
6. Andre / Alessandro Galati
7. The Two Lonely People / Bill.Evans
8. Nobody Else But Me / J.Kern , O.Hammerstein
9. Moments Notice / John Coltrane

 収録曲は9曲で、彼のオリジナル曲はM6のみ。Bill Evans、 Victor Young、John Coltraneなど登場するが、
M1とM3は、なんとイスラエルのトラッドということだ。この2曲は当然我々には聴いたことがない曲で、まさに新曲なのである。実は私が思うには、これがこのアルバムの一つのポイントにもなっていると思っている。
  それはまずM1. "After You Left" の抒情性溢れたメロディーとガラティの手によるピアノの哀感の響きはもはや究極のイタリア情感そのものである。これを冒頭に持ってきた寺島靖国のしたたかなこのアルバムの狙いが見えてくる。そしてM3. "You'll Walk In The Field"に置いても、ベースの語りやシンバルの響きが全くこのピアノの哀感を更に盛り上げての描いていて、そこにみる世界は歴史的に流れているイタリアの抒情性の奥深さを感じて聴き入ってしまう。
 M2. "Stella By Starlight"も、この抒情性の流れに完全に同化させ、スローにして哀感をも助長する。
 M4. "Blue In Green"はエヴァンスの色がイタリアのやや湿度のある色に描かれる。ここにもガラティの所以たるところが聴ける。
M6. "Andre"は、ガラティの唯一の曲だが、私をしてかって虜にしたこの曲。これはかなり日本を意識しての彼の美学を再現してくれたのではないだろうか。今回の演奏と録音は、かってのものと比較して、かなりドラムスの効果を上げる録音となって、如何にも三位一体のトリオ作品として聴き取れる。
 リズム感たっぷりのM8. "Nobody Else But Me"M9. "Moments Notice" にしても、やや押さえられた演奏で、ピアノの美しい音が生きていて”優美な印象の世界”に導かれる。

Trentinoinjazz

 とにかくこのアルバムは全体を通して流れはバラード調に仕上げられていて、抒情的、耽美的な流れをしみじみと感じさせる心の奥深いところに響くものになっている。ガラティの繊細な感覚による美旋律家たるところの面目躍如、これはおそらく寺島靖国の目指したアルバムに仕上がったモノと言えると思う。当然私は万歳である。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★★
□ 録音    : ★★★★★

(視聴) このニュー・アルバムに関する映像は未だ見当たりませんので・・・

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2018年4月30日 (月)

ポーランドのマテウス・パルゼクMateusz Pałka Trio「SANSA」

[My Photo Album (瞬光残像)]  Spring/2018

Dsc_3822trw_2
(Nikon D800 / 90mm / 22,Apr.2018)

ポーランドの若きトリオによる現代感覚の思索的世界

<Jazz>
Mateusz Pałka Trio「SANSA」
EMME RECORDS / POL / ERL1704 / 2017

Sansaw

Mateusz Pałka(p)
Piotr Południak(b)
Patryk Dobosz (ds)
Recorded at RecPublica Studios Lubrza, Feb 24-25, 2017

 このアルバム、つい昨年末にリリースされたものだが、どうも思い出せないのが、このポーランドの若きトリオ・アルバムをどうして購入したか?って事なんです。私の一つの興味はポーランドの音楽事情なだが、ジャズばかりでなくロック畑でもなかなかのものに逢える。そんな中でこのアルバムの接点が何であったのか・・・・?、いずれにしても味のある価値あるアルバムにお目にかかったものだ。
 このトリオは、ポーランド南部にある歴史情緒ある町クラクフ出身の新世代ピアニスト、マテウス・パルゼクMateusz Pałka(1993年生まれ)率いるトリオで、これは記念すべきデビュー作だ。若き彼らにしては、なんか意外にも円熟感すら感ずる思索的で叙情性をもったピアノトリオ作品なのである。
 (参考)このクラクフKrakówの町はポーランド王国の首都、中央ヨーロッパの文化の中心地であったところ。ポーランドは第二次世界大戦では壊滅的な打撃を受けたのだが、ここにドイツ軍の司令部が置かれていたため、戦災を逃れた都市。ポーランドの京都みたいなところ。欧州では私の好きな町の一つ。

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(Tracklist)
1.  Godbye Truth And Consequences *
2.  This Is Not A Time For A Barber *
3.  Sansa *
4.  Maia *
5.  I Love You (C.Porter)
6.  Hungry Young Rabbit *
7.  Mantra (P.Poludniak)
8.  Little Gold Man *
9.  Eleven *
      ( *印 Written by Mateusz Pałka)

 主たる曲群はマテウス・パルゼクのオリジナル曲であるが、ただ抒情的メロディーに流れるので無く、現代的なセンスに溢れたアグレッシブな因子に支えられた中での如何にも思索的な世界を築いている。
 聴いていると、あっと言う間に収録51分が流れてしまう。それは展開の変化が複雑なので飽きないのだ。そしてピアノ・トリオといえどもドラムスは奥に引っ込んでいるのでなく、見事に対等に演じている。M6."Hungry Young Rabbit"は展開も早くドラムスの威勢も良いのだが、不思議に聴きやすい。そしていつの間にかピアノがリズムを築く展開へという変化がうまいのだ。
 イタリア的なしっとり感の抒情性と異なって、やや乾いた味の旋律やリズムが抒情的なのである。そしてそこが新鮮なのだ。
 過去のものに捕らわれない自己の道を突き進んでいるようで、そこが若さなのであろうが、曲の出来は見事で新鮮にして革新的であるも、なんとそこには円熟感すら感じてしまう。
 M9.  "Eleven"は、最も静寂感あるところからスタートするが、ピアノの音が美しく響き、三者の音の間のとり方もそれぞれが 築くところがうまく融合して快感の出来。アルバム・タイトル曲のM3. " Sansa"が思索的で出色。
 これからも注目株のトリオである。

(評価)
□ 曲・・演奏:  ★★★★☆
□ 録音    : ★★★★☆

(視聴)

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