ユーロピアン・ジャズ

2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

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(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

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ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

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Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

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 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

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01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

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 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

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2020年5月28日 (木)

ミシェル・レイスのソロ・ピアノ Michel Reis 「SHORT STORIES」

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(今日の一枚) 「我が家の庭に咲く花 - オオムラツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

                                      - - - - - - - - - - - - - 

クラシック色のあるオリジナル曲によるジャズ・ソロ・ピアノ作品集

<Jazz>

Michel Reis 「SHORT STORIES」
CAM Jazz / IMPORT / CAMJ7953 / 2019

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Michel Reis  : piano
Recording and mixed in Cavalicco(UD) in Feb.2019 at Artesuono Recording Studio
Recrding and mixing engineer Stefano Amerio

 ジャズ界もヨーロッパにおいては若きピアニストが続々誕生している。このミシェル・レイスもその一人だ。彼は美しい小国ルクセンブルグの出身で、日本でのジャパン・カルテット形成が、やはり日本に浸透するに至る大きな一つの道であったろうと思う。
 このアルバムは昨年Cam Jazzからリリースされた彼のソロ・ピアノ集である。基本的に彼のオリジナル曲による構成でその意欲が伝わってくるのだが、録音はステファノ・アメリオとくるからその出来映えに期待も大きい。
 日本で結成のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」では、YouTube等で見る限りスリリングな演奏をも披露していたのだが、ソロとなると彼の重要な一面が出てくる。それは2017年に水戸で録音したアルバム『MITO』(CSJ0006)に聴けるのだが、これは彼の初の即興曲・ソロ・ピアノ・アルバムであり、内省的な中に美しさが見える。従って当然、今回のこのアルバムにも期待が持てるのである。

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01. Sunae II
02. From The Eyes Of Old
03. How It All Began (The Story Of Mr. Potes)
04. Monologue
05. Could I See You Again
06. Gratitude
07. Road To Dilijan
08. Gravity And Lightness
09. Tales Of Oleander
10. Eugene And Valentina Main Theme
11. Awakening
12. Eleni (For Eleni Karaindrou)
13. Bells
14. Goodnight

  全曲、彼のオリジナル曲である。14曲と多い収録だが、2分少々の曲から始まり短編が多く、最も長いのがM5."Could I See You Again"の6分58秒だ。聴いていると短い曲が多いという印象。
  ジャズ・ピアニストという世界にて活躍しているが、彼は幼少からクラシック・ピアノを学び、なんと14歳でプロ活動を開始。バークリー音楽大学、ニューイングランド・コンサヴァトリー・オブ・ミュージックを経て来ているのだという。そして2005年に第1回モスクワ・ジャズ・パフォーマー・コンペティションの最終選考に残って注目を集め、同年『A Young Mind』でアルバム・デビュー。2006年にモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで2位。そして自国ルクセンブルクでは大きな評価を得ている。2014年1月、ピアノ・トリオ・アルバム『レイス|デムス|ウィルトゲン』を発表。

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 やはり印象はまずクラシック・タッチの美しい曲集という感じだ。聴いていると確かに詩情が豊かな世界に浸かっていくことになる。ピアノ・ソロであるせいか冒頭のM1." Sunae II" から静かな余韻のある演奏で、どこか懐かしい過去の世界に想いを馳せる気分に導かれる。
 M2."From The Eyes Of Old " は、やや早い展開の曲であるが、やはりどこかクラシック的なところにあって、スリリングという印象は全くない。
 M4." Monologue" は、高音が透き通っていて、はっとして聴き入る美しさが秀でている。曲もジャズ的即興の流れがあって、こうしたところはやはりヨーロッパ系のメロディーとハーモニーの美しさが引き立ったジャズ・ピアノ世界だ。実は私としてはその他の殆どの曲のクラシックの延長という感じよりこの線に期待したいところだ。 
 しかし、M7."Road To Dilijan"、M9."Tales Of Oleander" にみるピアノの響きとメロディはやっぱり非凡な美しさを持っていて楽しめる。そしてジャズ的面白さはM11."Awakening" にも見いだすことも出来た。
 
 とにかく新進気鋭のピアニストとして期待は大きいが、私の愛するノルウェーのトルド・グスタフセンのような、哲学的深遠さという処においては、今一歩届いてはいない。日本における彼のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」は、注目の須川崇志 (bass)、石若駿 (drums)、西口明宏 (sax)という構成(↓)で、そこには良い刺激があってのことか、ややアヴァンギャルドなスリリングな展開も見せていて、そんな世界との関係も含めてこれからどのように発展していくかは、確かに楽しみな存在である。

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 参考までの話だが、2018年の彼の日本の水戸のコルテスで録音されたソロでの即興ピアノ曲集『MITO』もなかなかのもの、内省的美の世界が素晴らしい。彼はこのアルバムを第2の故郷のような水戸の街に捧げますと言うぐらいこの地での活動に感動していたようである。そして内容的には、むしろジャズ的に見るとこちらの方が、楽しめるところもあるので紹介しておく。

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『MITO - Solo Piano Improvisations』
(Cortez Sound/ JPN / CSJ-0006 / 2018)
(Tracklist)
1. ライジング 10'50
2. スナエ 3'20
3. フォレスト・エッジ 6'35
4. ロスト・テンプル 6'51
5. ルッキング・グラス 4'19
6. エコーズ 2'54
7. フォーク・ソング 5'39
8. ラビリンス 2'31
9. リポーズ 3'12
Recorded 21st July 2017
Mixed Ken Tadokoro
Masterd Ken Tadokoro
Recorded at Jazz Room Cortez

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)
"Sunae Ⅱ"

 

"How it all began"

,

"Looking Glass" from 「MITO」

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2020年5月10日 (日)

[記録に残したいアルバム]ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロJulian Oliver Mazzariello 「DEBUT」

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(今日の一枚)  我が家に咲く花 ハナミヅキ
      (Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL)

なかなか味なグルーヴィー感たっぷりのムードとリズム感の両翼をこなす演奏

<Jazz>

Julian Oliver Mazzariello , André Ceccarelli, Rémi Vignolo「DEBUT」
Via Veneto Jazz / ITA / VVJ125 / 2018

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Julian Oliver Mazzariello (P)
André Ceccarelli (Ds)
Rémi Vignolo (Ac-B)

Recorded at the Recording Studio of Joel Fajerman
Sound Engineer: Manu Guiot
Mastered by Eugenio Vatta

 昨年の寺島靖国「Jazz Bar 2019」(2019年12月リリース)に取り上げられたこのピアニスト=ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロのピアノ・トリオ・アルバムである。実はそれまで知らなかったトリオで、そのムードの良さにアルバムを購入してみたもの。
 このアルバムの曲は、下のリストにみるように、殆どこのピアニストのオリジナル曲で占められている。従って彼の意志によるところのアルバムであろうが、ドラムスには重鎮アンドレ・チェカレリがいてこのあたりも聴きどころでもある。
 このピアニストのマッツァリエーロはイタリアの俊英といわれる存在であるが、1978年ロンドン生まれであり、その後1996年1月にイタリアに移り、現在Cava de 'Tirreniに在住。多くのミュージシャンとの共演を経て現地では広く知られている存在と。彼の流麗でグルーヴィーなそして一方躍動感に富んだピアノプレイが魅力。

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(Tracklist)

1. Accarezzame (Calvi - Nisa) 4:27
2. Funky Chunks (Mazzariello) 4:02
3. Dream Cycling (Mazzariello) 6:18
4. Battement Fondu (Mazzariello) 2:55
5. Monk in Paris (Mazzariello) 6:12
6. Modal Blues (Mazzariello) 4:05
7. Que Reste-t-il de nos Amours (Trenet - Chauliac) 4:32
8. Five for Troc (Mazzariello) 4:33
9. J's Ballad (Mazzariello) 6:37

 イタリアのトランペッターFabrizio Bossoとのデュオで何となく名前が出てきたピアニスト・マッツァリエーロの初のリーダー・アルバムとのことで、タイトルも「DEBUT」であるのだが、冒頭のM1." Accarezzame"がなかなかグルーヴィーでいいのですね。これを聴くとジャズ・ピアニストのセンスの良さが滲み出ていてジャズ・ムードの良さを知らしめられる。確か寺島靖国もこの曲を取り上げていたはずである。

Andrececcarellipaiste1_20200510174501  そしておもむろに、自己のオリジナル曲が5曲連続して出てくるのだが、まずM2." Funky Chunks "はちょっとムードが変わってなかなか軽快なジャズを展開し、M3."Dream Cycling"になると、なるほどユーロ・ジャズの匂いがしてくる。そしてバックのアンドレ・チェカレリ(右)のベテランの味のあるシンバルやブラッシ、そしてビグノーロ(右下)のベースが適度に響いて、リズムを大事にしたトリオの楽しさが伝わってくる。
 M4."Battement Fondu "などは、イタリアの伊達男の洒落たセンスというルンバ調のムードが出てきて、こうして聴いているとマッツァリエーロの流れは、M1のようなバラード調でなく、むしろ近代的流れに味付けされたリズムカルな世界なのだと知らしめられる。

Dsc_0312  更にM6."Modal Blues"の早弾きと展開するリズムなどは、アメリカ・ジャズの面白さをちゃんと身につけている。
 ただ、私好みからすると、バラード調のM1や、M7."Que Reste-t-il de nos Amours"のソロで演ずるようなこの2曲のムードたっぷりに演ずるカヴァー曲が良いのですね。こんなジャズの魅力の両者をなんとなく軽く演じてみせるというところが、ニクイニクイ魅力ですね。

 さてこれから如何様にも発展する要素をしっかり持っているマッツァリエーロは、このアルバムをベースに今後楽しみなのである。

(評価)
◇ 曲・演奏 :  ★★★★☆  85/100
◇   録音   :  ★★★★☆  85/100

(視聴)
 " Accarezzame"

*
  参考 :  Bossoとのデュオ

 

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2020年5月 6日 (水)

[記録に残したいアルバム] ジョルジュ・パッチンスキーGeorges Paczynski Trio 「LES VOIX DU SILENCE 静寂の声」

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(今日の一枚)  我が家に咲く花 三つ葉ツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS

 

品格すら感じさせる静寂の奥深さの世界
オーディオ・ファンも注目の音質と音場

<Jazz>

Georges Paczynski Trio 「LES VOIX DU SILENCE 静寂の声」
Art & Spectals / Import / ASCD 191101 / 2019

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Georges Paczynski (drums,piano #13)
Ètienne Guéreau(piano)
Marc Buronfosse (bass)

Recorded on June 7th, 2019
All compositions by Georges Paczynski

Georgesphoto  昨年末リリースのジョルジュ・パッチンスキー・トリオ、2 年半ぶりの新作。過去5作は私にとっては貴重なアルバムとして存在している。そして既にここで何度か取り上げてきている(カテゴリー: ジョルジュ・パッチンスキー)。

『8 years old』(ATEIER SAWANO 005/2000)
『GENERATIONS』 (ASCD060401/2006)
『LE CARNET INACHEVE』 (ASCD130701/2013)
『LE BUT, C'EST LE CHEMIN』(ASCD140901/2015)
『LE VOYAGEUR BANS BAGEGE』 (ASCD161101/2017)

 そして、リーダーのパッチンスキーは、“この作品でラスト”と語る注目アルバム。アルバム・ジャケも上のように、なんと日本語の「静寂の声」という文字がアートとなっているところも注目したい。
 既に「ジャズ批評」誌による"2019年ジャズ・オーディオ・ディスク大賞"を獲得している。この大賞はかなり音質、つまり録音技術にもウェイトが高いので、と言うことは、以前からのヴァンサン・ブルレVincent Bruleyの相変わらずの録音、ミックスの技術も評価の対象だ。

 このドラマーであるジョルジュ・パッチンスー率いるトリオだが、ちょっと気になるのは、今回はベースは変わらずのMarc Buronfosseだが、ピアノがStephane TsapisからÈtienne Guéreau(下右)に変わっている。

(Tracklist)

1. Le Chemin (6:07)
2. L'ombre (5:14)
3. L'attente (5:24)
4. L'inquietude (1:34)
5. L'apaisement (1:49)
6. Le Regard (4:25)
7. Le Sourire (2:41)
8. Le Geste (5:09)
9. Le Toucher (3:46)
10. L'eclair (6:07)
11. L'ineffable (2:04)
12. Le Silence (5:42)
13. Madame d… (4:00)
14. L'eternite (3:07)

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 今回も前作同様、長曲は無く比較的短曲がパッチンスキーのオリジナル曲14曲で埋め尽くされている。ピアニストの変更は大きな印象に無く、むしろそのピアノの美しさは粒立ちの良い音と繊細さに流れやや陰影すら感ずるところにあって素晴らしい。
 冒頭M1." Le Chemin"M2."L'ombre" から、品格のあるそして美しさのピアノの音、繊細にしてスティックによって演じられるシンバルが適度の音量で響き非常に気持ちが良い空間の世界を展開する。
 Paczynski3tyrw_20200504134801 フランス人の洒落た世界が感じられる独特なセンスある思索的演奏が続くが、M8."Le Geste"では見事なスウィンギーに展開し、M9." Le Toucher "になると静かに落ち着いた中にピアノの調べが訴えてくる。
 M10."L'eclair "では、終盤にドラムスによる盛り上がりが見事である。
 M12."Le Silence"の静の世界ではパッチンスキーのブラッシ奏法、繊細なスネアの響きと聴くに事欠かない。

  ユーロ・ジャズの陰影と哲学的センスにビル・エヴァンスの美しさとテンション感の高さが融合した感のあるパッチンスキーがリーダーとなるピアノ・トリオの一連の世界観はなかなか味な世界である。
 そしてそこにヴァンサン・ブルレの録音・ミックス技術が奏功して名盤を作り上げた。これが最後の作品とパッチンスキーは表明しているが、本当とすると寂しい事だ。

(評価)
◇ 曲・演奏 ★★★★★☆   90/100
◇ 録音   ★★★★★☆       95/100

(視聴)

 

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2020年5月 2日 (土)

[記録に残したいアルバム] ギヨーム・ポンスレGuillaume Poncelet 「QUATRE VINGT HUIT」

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(今日の一枚)
我が家に咲く花 「クレハモクレン」 Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

 

メロディーの美しさにどこか哀愁のあるピアノ・ソロに浸れる

<Jazz>

Guillaume Poncelet 「QUATRE VINGT HUIT」
BLEND / FRANCE / BLEND2017 / 2018

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Composition, Piano, Trumpet, Additional Programming by  Guillaume Poncelet

Artistimgzazw  きちんと記録しておきたいアルバムというのがある。これはフランスのシンガー・ソングライターのZAZ(本名イザベル・ジェフロワIsabelle Geffroy →)のアルバム「EFFET MIROIR」(WPCR-18126/2018)で、彼女がオリジナル曲とは別に最後に取り入れた曲"LAPONIEラップランド"と言うのがあるが、それが何ともいえない美しさと哀愁とに満ちた曲で気になった。彼女が北の国に旅立つ心を"過去の息を吐き出し、新たに息を吸い込む"と語る曲で印象的。
 そして調べたところ、このギョーム・ポンスレGuillaume Poncelet (フランス・グルノーブル1978年生れ)というフランスの若手ピアニストであり作曲家の曲であることが解り、その彼のアルバムを昨年取り寄せてみたのである。何回か聴いているアルバムで記録しておきたいとここに取り上げた次第。
 そしてその目当ての曲は彼のこのアルバムでは冒頭の"Morning Roots"という曲で、ここで彼のソロピアノの演奏が聴けるのである。

 

(Tracklist)

1.Morning Roots
2.Duty
3.Reverse
4.Gus Song
5.Homo Erectus
6.Le Cahier
7.Apres
8.Au Bout Du Souffle
9.Derriere La Porte
10.Teano
11.L'Ennui
12.Iceberg
13.Othello
14.The Two Of Me
- - - - - - - - - -
15.Bonus - Last Breath
16.Bonus - Mon Terroir

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 私が目当てにしていた曲"Morning Roots"は、このアルバムのオープニング曲で、彼のソロピアノで演奏される。非常に美しく繊細な流れの旋律で、どこか哀愁のあるところが印象的で、心に響く曲である。そして全14曲、この線を乱さず彼により作曲された曲が続く。彼はピアニストとして私は認識していたのだが、実はトランペット奏者でもあり。M10."Teano"などには静かなトランペットの調べが入る。
 又、M11."L'Ennui "では、更にストリングス・カルテットがバックに流れる。しかしそうした変化を盛り込んでいるのだが、全く彼のどちらかというと内向的なピアノ曲が深く沈みそしてまた静かに心安まる世界を演ずるのである。 
 このアルバムのタイトルは『88』であり、彼の話によるとその数はアップライトピアノのキーの数なんだそうだ。そしてピアノはそれだけでオーケストラだといい、彼の言葉によると"ピアノのおかげで多くの事柄を想像することが出来、88のキーは、色、調和、多くの雰囲気、多くの可能性を演ずる"と言っている。
 フランスのジャズ音楽界でも特異であると思うが、貴重な存在であると思っている。

 彼は、1978年フランスのグルノーブルで作家・劇作家の父親と介護者の母親に生まれました。 8歳にして彼はピアノを弾くことを学びながら、9年間グルノーブル地域音楽院に在籍し学ぶ。 その後4年間、ピエール・ドレヴェ率いるシャンベリーにある国立音楽学校(ENM)のジャズ科に参加し、トランペット、ジャズのハーモニー、アレンジメントのテクニックを学んだ。
 21歳のとき、彼はパリの国立音楽音楽ダンス学校に入学し、noJazzのバンドに参加して北米でのツアーに出た。ちょっと信じられない世界であるが、noJazzとともに、彼はStevie WonderやMaurice White( Earth、Wind&Fire )などの有名なアーティストとコラボレーションして来ている。
 こんな経歴の持ち主であるが、長編映画「Razzia」のオリジナル・サウンドトラックも担当したりしてきている

(視聴)
"Morning Roots"

*
ZAZ / "Laponie"

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2020年4月24日 (金)

ティグラン・ハマシアンTigran Hamasyan 「They say Nothing Stays the Same(ある船頭の話)」

ハマシアン映画音楽に初の挑戦・・・ピアノ・ソロを中心に

<Jazz>

Tigran Hamasyan 「They say Nothing Stays the Same (ある船頭の話)」
SEEBEDON Records / JPN / SBD1001 / 2020

Tigranblog

Tigran Hamasyan (p)

  ティグラン・ハマシアンが映画音楽を手掛けた映画邦題『ある船頭の話』のオリジナルサウンドトラック集である。アルバム・タイトルは「They Say Nothing Stays the Same」だ。彼が言うには「この音楽は旅と共に生まれました。アルメニアの僕の家から始まり、イギリス、エルサレム、テル・アビブ、マドリッド、そして、最後に僕の両親の住むロサンゼルスの家で完成した」と言うことのようだ。その経過はオダギリジョー監督から直々にオファーされ、脚本に深い感銘を受け、自身初となる映画音楽を担当することになったと言うこと。今回のアルバムについてハマシアンは「この映画のための音楽制作の過程と、その一瞬一瞬は、どれも忘れられないものでした。僕にとって、とても創造的な制作で、またジョーさんとの共同作業も素晴らしい体験でした。」とコメントしている。

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Tigranh3 (Tracklist)

1.The Boatman (Prelude)
2.The River
3.Toichi's Life
4.Changing Time 1
5.Deconstructed Image 1
6.The Boatman (Interlude)
7.The Sacrifice 1
8.The Ghost
9.Underwater 1
10.Changing Time 2
11.Deconstructed Image 2
12.Underwater 2
13.The Sacrifice 2
14.Processional
15.Into the Forest
16.Changing Time 3
17.The Sacrifice 3
18.The Boatman (Postlude)

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 私は映画は観てないのだが、オープニングにこのM2."The River"が流れ、そしてM1, M6, M18の"Boatman"(Prelude, Interlude, Postlude)が、全編を通して流れる主題の曲のようだ。この2曲は静かな心の世界を描いてくれるような美しいピアノの音とメロディーが、余韻を大切にして流れる曲である。
 全曲、主たるはハマシアンのソロピアノによって演じられているが、曲によってシンセやエレクトロ楽器の音も入る(M4."Changing Time"、 M8."The Ghost"など)。
 とにかく自然の中に深遠な世界を築くが如く美しい静かなメロディーが流れる。人の心の深層に迫るピアノの響きは素晴らしい。それは曲自身は短調で出来ているようであり、アルメニアにはこんな落ち着いた深いメロディーがあるのかと、驚きながらも映画のシーンの画像にみる日本のある山奥の村になんの違和感が無いのが不思議でもある。

 とにかくこの映画のオダギリジョー監督から直々にオファーされ、自身初となる映画音楽を担当したハマシアンは、かなりの意欲を持って曲を創造し演奏したようだ。それには彼自身のこの映画に描かれる世界と自己の世界とに共通点がどこかにあった為だろうと推測するのだ。

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◇ (映画) 「ある船頭の話」の紹介 ◇ (ネットにみるものの転載)
P_kawashima  「平成」から「令和」に変わる今、文明の波や時代の移り変わりに直面した山奥の村を舞台に「本当に人間らしい生き方とは何か」を世に問う問題作として注目されている。
 主人公の船頭トイチを演じるのは名優・柄本明。ヒロイン役には川島鈴遥。そして村人・源三役には、若手村上虹郎が出演。
 橋の建設と川上から流れてきた少女が、静謐だった船頭の日々を変えていくという筋立て。
 近代産業化とともに橋の建設が進む山あいの村。川岸の小屋に住み船頭を続けるトイチは、村人たちが橋の完成を心待ちにする中、それでも黙々と渡し舟を漕ぐ日々を送っていた。そんな折、トイチの前に現れた一人の少女。何も語らず身寄りもない少女と一緒に暮らし始めたことで、トイチの人生は大きく変化をみせることになる。
脚本・監督:オダギリ ジョー
出演:柄本明、川島鈴遥、村上虹郎/伊原剛志、浅野忠信、村上淳、蒼井優/笹野高史、草笛光子/細野晴臣、永瀬正敏、橋爪功
撮影監督:クリストファー・ドイル
衣装デザイン:ワダエミ そして音楽がティグラン・ハマシアン

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★☆ 85/100
□ 録音    ★★★★☆ 80/100

(視聴)

 

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2020年4月15日 (水)

アンヌ・デュクロ Anne Ducros 「SOMETHING」

スタンダード曲を自己の世界に歌い上げるベテラン・ヴォーカル

<Jazz>

Anne Ducros, Adrien Moignard, Diego Imbert 「SOMETHING」
SUNSET RECORDS / IMPORT / SUN29 / 2020

Face20avant20something

Anne Ducros - Vocal
Adrien Moignard - Guitar
Diego Imbert - Double Bass

 フランスのアンヌ・デュクロAnne Ducros(アン・デュクロとも言われている)の最新アルバム。彼女をここで取り上げたのはもう6年前で、アルバム『Either Way from Marilyn to Ella』(NJ623611/2013)であった。彼女は1959年生れですから、もうなかなかのベテランで、当時も落ち着いたオーソドックスなヴォーカルに評価を付けていたのを思い出す。私にとっては久しぶりのアルバムで興味深く聴いたというところであった。
  このアルバムはスタンダードを歌い上げているが、ベース、ギターのみのバックであり、それだけでも彼女のヴォーカルの占める位置の大きさが解る。

(Tracklist)

1. The Very Thought of You
2. Something
3. Estate
4. Honeysuckle Rose
5. I Didn't Know What Time It Was
6. Nuages
7. Samba Saravah
8. I Thought About You
9. April in Paris
10. Your Song
11. Tea for Two
12. The Good Life

 かってチック・コリア(p)などとの共演作で話題を呼んだ彼女であり、ウィーン国際ジャズ・コンクールでも優勝したことがあるという、そんな経歴からもベテラン実力派のヴォーカリストということがうかがい知れるところである。

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 スタートM1."The Very Thought of You"、そして ビートルズ1969年の「アビイ・ロード」ナンバーのM2." Something"のアルバム・タイトル曲と、静かなギターをバックに手に取るように聴けるしっとりとバラード歌を展開。それは誰をも心から包む魅力を発揮。
 そして圧巻はなんとM3."Estate"だ。これは多くのミュージシャンが取り上げているイタリアのブルーノ・マルティーノの曲で、私の好きな曲だけに注目度は高かったのだ。それがやはり静かにゆったりとしたバックのギター、ベースに彼女の編曲を凝らした展開を歌い上げる。特に中盤以降は彼女独自のオリジナル曲風に語り調を交えて歌い、いやはや暦年の実力派を知らしめる。
  M6."Nuages"も古い曲ですね、超スロー編曲でいやはや引き込まれますね。そしてM7." Samba Saravah"サンバも登場して雰囲気を明るくし、アルバムを通して聴いているものに変化を与える。
 M11."Tea for Two"の編曲も凄いですね、ハイテンポでギター・プレイと共に変調展開。こりゃ全く別の曲ですね
 M12."The Good Life"、アルバム最後曲らしく先への展開を夢見るグッバイである。

Anne20ducros201   久しく聴かなかったアンヌ・デュクロ、その健在ぶりを十分知ることが出来たアルバムであった。しかしスタンダード曲カヴァーと言っても、彼女の歌には往年の経歴によって培われた編曲の技が滲み出ていてオリジナル曲を聴いている感覚にもなる程であった。もう60歳を超えている彼女であるだけにその意味深な歌い舞わしも十分聴く価値があるアルバムである。

(評価)
□ 編曲・歌・演奏 : ★★★★☆  85/100
□ 録音                 :   ★★★★☆      80/100

(試聴)

 "Something"

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2020年4月 6日 (月)

キアラ・パンカルディChiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」

やはりパンカルディのヴォーカルはハイレベルであるが異色
~~注目のアレッサンドロ・ガラティとのデュオ

<Jazz>

Chiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1086 / 2020

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Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocalヴォーカル)
Alessandro Galati アレッサンドロ・ガラティ(piano ピアノ)

 このところジャズ・シンガーとしての話題の豊富な個性派キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ。つい先日アルバム『PRECIOUS』(CR73497/2020)のリリースがあった)と、最近、寺島レコードからリリースが多い私の注目の叙情派でありながらアヴァンギャルドな面も見せるキャリア十分のピアニスト:アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリアのフィレンツェ生まれ)のデュオ作品。両個性派同士で実は注目していたアルバム。
  主題はアルバム・タイトルどおりのコール・ポーターの作品に迫ろうとしたもの。もともとキアラ・パンカルディの唄は独特の世界があって、どうも100%万歳して受け入れている訳ではないため、このアレッサンドロ・ガラティのセンスで如何に変貌して迫ってくれるかが楽しみのポイントでもあった。

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(Tracklist)

1. Easy To Love
2. Just One Of Those Things
3. Night And Day
4. So In Love
5. All Of You
6. My Heart Belongs To Daddy
7. It's Delovely
8. Let's Do It
9. Dream Dancing

Ag5x  デュオとは言っても、やはりヴォーカルの占める位置は大きいですね。私にしてはガラティのピアノにそって優しく歌ってくれる方が期待していたんですが、なになにパンカルディの独特の節回しによっての彼女のヴォーカルの独壇場にも近い世界が造られている。パンカルディの声の質は中高音のつややかさはなかなかのものと言えるものでこれには全く不満はなく、更になんといってもハートフルでありテンダリーである点は素晴らしい。しかしその節回しと音程の変化はどこか異質であって、その歌は一種独特な世界ですね。先のアルバムとその点は全く変わっていない。この世界にぞっこん惚れ込むという人が居るとは思うが、どうも素人向けとは言えず、万人に受けるという点ではちょっと疑問にも思っている。

 イタリアのミュージシャンはあらゆる分野に多く活躍していて人気も高いが、この世界においてはパンカルディはやはり独特である。まさか私自身のみがそう感ずるのだろうか ?、ライナーノーツを担当している寺島靖国も声の質の良さを認めては居るが、あまり異質性については語っていない。
 いずれにしても彼女の唄はやっぱり上手いというのは当たっているのだろうと思う。とにかく上手い・・・しかし私は魅力については、もう少し馴染みやすい世界であってほしいと思うのである、残念ながらそんなことで万人向きではない。そうは言っても、丁寧にじっくりと語りかけてくる様は出色であり魅力も大いにあるところが聴く方は複雑ですね。一方リズムの展開においては、意外に彼女の魅力的なパンチ力のセンスもみられて、多芸な能力の持ち主と言って良いのだろう。

 そして今回のように、コール・ポーターの曲を何故選んだのかと言うことでは、ガティもパンカルディも曲の良さと言うことに一致していた。そしてこのアルバムで私が好きなのは、M4."So in Love"で、彼女の歌が情感豊かでいいですね、ムードが最高。続くM5."My Heart Belongs to Daddy"のガラティのピアノは美しい。
 しかしちょっと期待に反して、ガラティは対等なデュオというのでなく「伴奏者」に徹していて、彼の味のあるメロディーの表現は、ヴォーカルを生かす為に仕組まれたピアノの味をしっかり作り上げているのだ。

 私の個人的評価はまあ質の高さは認めるが、受け入れやすさや聴きやすさと言う点ではちょっと低くなった。こうゆうのはイタリア本国ではどんな評価か知りたいところだ。

(評価)

□   編曲・歌・演奏  ★★★★☆ 85/100
□ 録音       ★★★★☆ 85/100

(視聴)

このアルバム関係はまだ見当たらないので・・・過去のモノを
Cole Porter "So in Love" (これは惚れ惚れしますね)

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2020年3月23日 (月)

ペトラ・リネッカーpetra linecker 「Warm Embrace」

温かみの世界を狙った・・女性ヴォーカルとピアノとのデュオによる秀悦作品

<Jazz>

Petra Linecker & Martin Gasselsberger 「Warm Embrace」
ATS Records / Eu / / 2019

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Petra Linecker (vo)
Martin Gasselsberger (p)

 世界の美女狩りを得意とする我が友人から紹介のあったアルバムである。 
 オーストリアの女性ヴォーカリスト、ペトラ・リネッカーとピアニスト、マーティン・ガッセルスベルガーのデュオ作品。私にとっては全くの初物であるが、彼女は既にオーストリアではベテランであるようだ。
 とにかく"リネッカーの美しく透明感に富みながら深みと情感あふれたヴォーカル"がどうも売り物のようで、ピアノとのデュオでたっぷり聴くことが出来る。アルバム・ジャケのデザインからして並の世界でなさそうな雰囲気が伝わってくる。

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(Tracklist)
Image2_20200322094201 1. Warm Embrace *
2. Over the Rainbow
3. Lullaby of Birdland
4. The Nearness of you
5. I can't stand the Rain
6. Imagine
7. Georgia on my Mind
8. Honeysuckle Rose
9. In Heaven's Spaces *
10. On a clear Day *
11. Everything must change
12. Wrong way round *
13. Anxious Moments *

 収録曲は上のようで、*印がオリジナル。M1."Warm Embrace "は彼女自身の曲で、残るはこの二人による共作となっている。そしてその他はかなり広いジャンルからの選曲だ。
 インティメイトと表現される世界で、冒頭M1.から静かなピアノをバックに、優しい彼女のヴォーカルが響く。どうも歌詞をしっかり理解しないといけなそうな世界だ。
 M4."The Nearness of you"を聴いても解るのだが、このマーチン・ガッセルスベルガーのピアノが又クラシックに裏打ちされたと思われる知的でクラシカルな響きが秀悦である。
2176454_xxlw_20200323204101  一方M5."I can't stand the Rain "となると一変してブルージーなジャズをしっかり演じているところもあってなかなかキャリアーのあるシンガーであることがわかり、そしておなじみのM6. "Imagine "、M7."Georgia on my Mind"は、ぐっとしっとりムードで歌い上げ、心に響いてくるところは芸達者。
 リズムカルなM8."Honeysuckle Rose "に続いて、二人の共作M9."In Heaven's Spaces "は一変してフォーキーにしてトラディショナルなムードの曲で、ヴォーカルやソロピアノも美しく、この世界に安らぎを求めたような普遍性の世界。
 更にM11."Everything must change "はこのデュオの世界観を凝縮したような尊大なる思想が感じられる素晴らしい演奏。そして二人共作のM13."Anxious Moments"の二人のヴォーカル・デュオも入ったトラディッショナルな世界で幕を閉じる。

 なかなかジャズ世界としては珍しいインティメイトな心洗われる世界を構築していて好感の持てるアルバムとして、お勧めである。

(評価)
□ 曲・歌・演奏  ★★★★★☆  90/100
□ 録音      ★★★★☆   80/100

(視聴)

 
 

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2020年3月14日 (土)

シーネ・エイ Sinne Eeg 「WE'VE JUST BEGUN」

ビックバンドをバックに歌い上げる一世代前のジャズ

<Jazz>

SINNE EEG & THE DANISH RADIO BIG BAND 「WE'VE JUST BEGUN」
BFM jazz / Denmark / BFM JAZZ 7621834675 2 / 2020 

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Sinne Eeg (vocal)

The Danish Radio Big Band
Nikolai Bogelund (conductor)
Jesper Riis (arrangement on 02, 03, 06, 07, 10)
Peter Jensen (arrangement on 01, 04, 05)
Roger Neumann (arrangement on 08, 09)

録音 : 2019年1月28-31日、於:デンマーク-コペンハーゲンのDR Koncerthuset Studio 3

  ここでも何回か取り上げて来たシーネ・エイSinne Eeg(1977年デンマークのレムヴィーLemvig生まれ)のニューアルバム。北欧ジャズ・シンガーとしては日本でも来日したりの人気の彼女だ。
A93785413985582682810jpeg  今回は1964年結成の50年の歴史あるデンマークの名門楽団The Danish Radio Big Band(このバンドは何枚かのアルバムをリリースしている)と組んでのアルバム。昔ながらのジャズの一形態のビック・バンドをバックにしてのもので、私には若干の抵抗があるだが、それでも手に入れてみたもの。
  そしてこのアルバムはどのような関係があったか不明だが、彼女が"My dear friend"と表している一昨年亡くなったアメリカのサックス奏者のロジャー・ニューマンRoger Neumann(1941-2018 →)に捧げている。

(Tracklist)

01. We've Just Begun
02. Like A Song
03. Those Ordinary Things
04. Talking To Myself
05. Hvorfor Er Lykken Sa Lunefuld
06. My Favorite Things
07. Samba Em Comum
08. Detour Ahead
09. Comes Love
10. To A New Day

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 冒頭からビック・バンドが派手に演じて、ちょっと尻込み。
   M2."Like A Song "、M3."Those Ordinary Things"になって彼女のヴォーカルを中心にバックはパーカッションの音もきこえる小コンポ風の演奏になってほっとして聴くのである。相変わらず歌詞をしっかり歌い込んでいてその点は好感が持てる。
 M4." Talking To Myself "は軽快だが、やはりバックは押さえられた演奏でソロに近いギターも入り、彼女のヴォーカル・アルバムとしての形を十分意識しての曲仕上げ。
 M5."Hvorfor Er Lykken Sa Lunefuld "は朗々と歌い上げたり、リズムカルな流れもあったり、彼女の中域の味のある歌声が優しく聴け、更にスキャット風のところもあり味が濃い。
 M6."My Favorite Things " 聴き慣れた曲をシーネ節で。
   M7."Samba Em Comum" このアルバムでは珍しいサンバ曲。まあ何でも歌いますと言ったスタイル。
   M8." Detour Ahead" バラード調でしっとり。
 M9."Comes Love " 彼女らしい歌い込んでの聴かせるタイプ。こうゆうのが彼女の特徴で悪くないです。
  全体の印象は、ロジャー・ニューマンに捧げたということなのか、やはり一時代前のアメリカン・ジャズの世界、それはM10."To A New Day"に特徴的だが、大きめのキャバレー(昔懐かし)での豪勢にジャズを味わいたいという人にはそれなりに良いのでしょう。私にとってはどうでもいいですが。

 彼女のヴォーカルも低音を生かしたり、パンチを効かしたり、結構ブルージーなところもあったりと芸達者である。しかしジャズって考えてみれは幅広いですね、未だにこの昔懐かし世界も健在なんだと、ふと思うのである。そしてまあ聴いてみるのも悪くないでしょう。

(評価)
□ 演奏・歌  ★★★★☆  80/100
□ 録音    ★★★★☆  80/100

(試聴)

 

* *

(参考) 全くこのアルバムとは別のピアノ・トリオとのライブ映像、実はこのタイプの方が彼女は良いのですが・・・↓

 

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