Keith Jarrett American Quartet 「Complete TOKYO 1974」
キース・ジャレット(アメリカン・カルテット)の初来日'74年東京公演の記録
壮絶なカルテット演奏・・・・これは間違いなく愛蔵盤
<Jazz>
Keith Jarrett American Quartet 「Complete TOKYO 1974」
KJ-146 / 2019
Keith Jarrett : P, ss, per
Dewey Redman : Ts, musette, per
Charlie Haden : B
Paul Motian : Ds, per
キース・ジャレット(右)話も、このところここでは疎遠になっていたが、この初来日の記念音源の登場で久しぶりに話題とする。なんと1974年東京公演の記録が好録音でブートではあるが登場したのである。当時私はキース・ジャレットにはそれなりに関心があったが、威勢の良いハービー・ハンコックのクロスオーバーというかジャズ・ファンクの『ヘッド・ハンターズ』などに圧倒されていたのだった。しかしそうはいってもキースのアルバムには愛着があり、ついに彼のライブに参戦できたのは10年後の1984年であった。そして次第にジャズ・ピアノとしては、私にとってナンバー1の存在となった経過から、この初来日には非常に興味がある。
それも当時のアルバム『DEATH AND THE FLOWER 生と死の幻想』(1974年10月録音)には、プログレッシブ・ロックに夢中であった私の当時ジャズに求めた一面を十分に納得させたアルバムであった。これは今でも愛聴盤である。
さてこのブート盤は、アルバム『生と死の幻想』録音半年前の1月12日東京郵便貯金ホールの公演モノだ。なにせ45年前と言うことになり、その音質には当然疑問の持たれるところだが、なんとこれはマスター音源からのステレオ録音版で・・・"ええ、ほんと!"と思わせるCD2枚組好録音盤である。まさにオフィシャル盤といっても恥ずかしくない。
この初来日の日本公演は下のような記録になっている。9回のカルテット公演と1回のソロ公演だ。
1月4日&5日、東京厚生年金ホール
1月6日、北海道厚生年金ホール
1月8日、名古屋市民会館
1月10日、京都会館
1月11日、福岡電気会館
1月12日、郵便貯金ホール
1月13日、大阪サンケイホール
1月14日、東京厚生年金ホール
1月15日、東京厚生年金ホール(ソロ・パフォーマンス)
(Tracklist) 1974.1.12 東京郵便貯金ホール
Disc 1 (42m20s)
1.Etude N0.5
2.Death And The Flower
3.(If The)Misfites(Wear It)
Disc 2 (46m03s)
1.The Rich(and The Poor)
2.Everything That Lives Laments
3.Extension No.6
収録内容は上のように、CD2枚に納められている。会場のアナウンス、メンバー紹介もしっかり収録されていて、キース・ジャレット・トリオ+レッドマン(ts 上)のカルテットで、この会場に当時いたファンにはたまらないアルバムであろうことは想像に難くない。是非とも手に入れておくべき代物だ。
CD1-M1."Etude N0.5" キースのソプラノサックスの奇声とも言える不思議な世界からスタート、早々にモチアン(上右)のドラムスが鳴り響く。これには会場は度肝を抜かれたと思う。
CD1-M2."Death And The Flower" キースのマルチプレイヤーぶりを発揮したWoodFluteにパーカッションによる展開。続くヘイデン(上左)のベースとピアノの静寂の不思議な世界、そしてレッドマンのテナー・サックスと展開してゆく。確かにこれは後のアルバムにお目見えした"生と死の幻想"のテーマだ。後半のカルテットによるスリリングな展開は凄い。そして再びキースのピアノは思索的世界に、そしてベースの描く世界にも吸い込まれる。やはりこの日のライブものでは、私の注目はこの曲にいってしまう。
そしてCD1-M3."Misfites"のカルテットによる壮絶な即興演奏の嵐に驚愕するのである。
CD1のこれら3曲は、合間の無い40数分の連続演奏。このキースの演奏には、今となってはアルバム『生と死の幻想』を愛聴している私には何も不思議な世界では無いが、当時の会場のファンはM3を含めて驚き聴き入ったに相違ない。
CD2もなかなか面白い。CD2-M1."The Rich(and The Poor)"のクラシック調のピアノ・タッチ、テナー・サックスとピアノのユニゾン、ブルース調の変調と面白い。そして消えるようなピアノとベースの響きで終わる。
CD2-M2."Everything That Lives Laments" 静かなピアノ、テナー・サックスの歌い上げでスタート、ベースが引き続いてほぼソロで静かに語ってゆく、そしてその後次第にピアノの流麗な流れる演奏が主たる曲構成の役に移ってゆく。そしてドラムスの台頭、最後は四人の合流とこのあたりの息が合った世界はお見事である。
このCD2も3曲は40数分連続で演奏される。
しかしブートでも、このような録音盤が出てくるのは珍しい。キース・ジャレットものは色々とあるが、これは久々のブート界のヒットだ。
(評価)
曲・演奏 : ★★★★★
録音 : ★★★★☆
(視聴) この日の映像モノは見当たらない。参考までにアメリカン・カルテットものを
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