ジョバンニ・グイディ

2019年5月22日 (水)

ジョバンニ・グイディのニュー・アルバム Giovanni Guidi 「AVEC LE TEMPS」

そこには郷愁の世界が・・・そして中盤は驚きの展開をみせる

<Jazz>
Giovanni Guidi 「AVEC LE TEMPS」
ECM / International / ECM2604 / 2019

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Giovanni Guidi (Piano) 
Francesco Bearzatti (Tenor Saxophone) 
Roberto Cecchetto (Guitar) 
Thomas Morgan(Double Bass)  João
Lobo(Drums)
 
Recorded at Studios La Buisonne in November 2017 Produced by Manfred Eicher.

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  イタリアの若手ピアニストで既にここでも取り上げて来た注目株のジョヴァンニ・グイディGiovanni Guidiのトリオによる2015This Is The Day以来のECM3作目が登場。
 このアルバムは、フランスのシンガーソングライター/作曲家レオ・フェレLeo Ferre(1916-1993)の曲をトリオで演奏し、この曲は「愛と喪失」がテーマとなっているものというが、それがアルバム・タイトルであり、オープニング曲として登場。ブックレットにはその詩が載っている凝りようだ。
 そして今年の7月に亡くなったイタリアのあのトランぺッター、トーマス・スタンコに捧げたグイディのオリジナル曲 “Tomasz”で幕を閉じる。
 この2曲はなにかやるせない気持ちにさせる郷愁感たっぷりで、美しくも哀愁ある曲に浸れるのだが、その間では、ここに演奏しているバンドは、サックス奏者のFrancesco BearzattiとギタリストのRoberto Cecchettoが参加してクインテットのバントとなり、グィディのオリジナル作品とグループの即興演奏に参加し、メンバー全員が卓越した演奏でエネルギーと色彩のコントラストを描く。

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(Tracklist)

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 スタートからアルバム・タイトル曲の"Avec Le Temps"(It may take Time)が登場。この曲は今回の主テーマであるレオ・フェレの曲で、ジョバンニ・グイディ・トリオで演奏され、郷愁感たっぷりの美しく抒情的な演奏に対面できる。とにかくピアノ、ベース、シンバルの響きと究極の美しさを聴かされる。凄い。
 続く"15th of August"は、ベースのリズムにギターが美しくしっとりと歌い上げるグイディの曲だ。そして中盤からの盛り上がりにはサックスが登場。
 3曲目"Postludium and a kiss"は、5人によるインプロヴィゼーションの曲と思われる。とにかくまず美しいグイディのピアノから始まるが、サックスがまずは暴れ始め、次第に5者が入り乱れての交錯が不思議な一体感となって響いてくる。そしてそれが続く4曲目の"No Taxi"となると、一層その前衛性は高まって第1曲目とは全くの別世界。こんなクインテット演奏が彼らのエネルギーを見る思いだ。
  そしてグイディの曲"Caino", "Johnny the Liar"と続くが、次第に異空間に引っ張られるも、初期の美しさが再び見えてくる。このあたりの技法が憎いところ。
 7曲目"Ti Stimo"でギターの再び美しい世界に戻り、ピアノの美旋律が顔を出す。最後はあれだけ暴れたサックスも美しく歌い上げるのだ。
 終曲"Tomasz"は、トーマス・スタンコに捧げた曲だけあって、そこには真摯なこころでの人間愛に満ちた美しい曲としてグイディの美しいピアノの響きを中心としてしっとりと演奏される。

  とにかくこのアルバムは、寄せては返す静かな波のような郷愁誘う叙情的哀愁的世界から、クインテットの織り成すどちらかというと即興的前衛的世界とがバランスよくアルバムを構成して素晴らしい作品となっている。推薦盤だ。

(評価)

▢ 曲・演奏  ★★★★★☆
▢ 録音    ★★★★★☆

(視聴)

 

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2015年5月16日 (土)

原点回帰 ジョバンニ・グイディ・トリオGiovanni Guidi Trioの1st「Tomorrow Never Knows」

       <My Photo Album> ~花の季節(2)~

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                *    *    *    *

<今日のミュージック>

 前回若きイタリアのピアニスト・ジョバンニ・グイディのECMからのピアノ・トリオ・アルバム「THIS IS THE DAY」を取り上げたが、彼は約十年前2006年に20歳そこそこで、Venus Records から1stリーダー・アルバムをリリースしている(1985年生まれ)。それはジャズ・ピアノ界のスタンダード曲中の逸品ポーランドのKomedaの曲”ローズマリーの赤ちゃん”を取り上げているので手に入れてあったもの。ここで紹介しておく。

<Jazz>
    Giovanni Guidi Trio 「Tomorrow Never Knows」
    Venus Records /JPN / VHCD 4128 / 2006

1st
 とにかくジョバンニ・グイディの初リーダー作、今やECMでManfred Eicherの気合いの入ったアルバムを作る(演ずる)ところまでに成長しているわけで、そんな意味でももう一度聴いておくに価値十分である。

      Giovanni Guidi : piano
      Francesco Ponticelli : bass
      Emanuele Maniscalco : drums

      Recorded at The House Recording Studio in Roma on Jan.5&6,2006

1stlist
 収録13曲、彼のオリジナルは3曲、そして特徴はロック・ナンバーを取り上げているところだが、そのあたりが若さかなぁ~と思う。特にビートルズの曲が3曲を占めていて、その他に注目はイーノとかビョークとか、彼の多分好みの世界がここに見えるような気がする。
  ビョークBjörkはアイスランド生まれの先鋭的なオルタナティブ・ロックのシンガーソングライター。そしてイーノB.Enoは、プログレッシブ・ロック界に多大な影響をもたらしたミュージシャン。こんなところに彼がまず1stアルバムで試みたところに前衛的な感覚の一面が見えるのだ。
 そしてジャズ・ピアノとしては多分誰もが演奏してみるコメダの曲”Sleep Safe And Warm”(ローズマリーの赤ちゃん)を演じている。これも我が愛するポーランドの誇る新世代ジャズ・ピアニストのマルチン・ボシレフスキーに多分影響されたんだろうと推測するところだ。若きときの挑戦の姿が見えてきて頼もしい。この曲もグイディらしい編曲が施されていて、2番煎じになっていないところは、なかなか意志も強そうだ。

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 アルバム通して聴くと、若干荒削りな感もないではないが、叙情的な美しさを持ちつつ、ビートルズの”Tomorrow Never Knows ”をアルバム・タイトルに採用し、その曲の演奏は原曲とはかなり異なったアヴァンギャルドな演奏をみせ、かなり自己の線を示しているところはお見事と言える。
  Venus Records の録音も良く、なかなかこれも味なアルバムなのである。

(参考視聴)

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2015年5月12日 (火)

これは素晴らしい! ジョヴァンニ・グイディ・トリオGiovanni Guidi Trio「THIS IS THE DAY」

     <My Photo Album>  ~花の季節(1)~

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                 (Nikon D800 , AF-S NIKKOR 50mm 1:1.4 G, PL)
 

   <今日のミュージック>

 いっや~~これはトータル・コンセプト・アルバムだ!!

 1985年生まれのイタリアの若きピアニスト、ジョヴァンニ・グイディGiovanni Guidiのアメリカ人ベーシストThomas Morganと、ポルトガルのドラマーJoão Loboとのトリオ作品。ECMからの同メンバーの2作目。Eicherのプロデュースで期待大。

   <Jazz>
          GIOVANNI GUIDI TRIO 「THIS IS THE DAY」
         
  ECM / ECM2403 / 2015
           Recorded April 19-2,2014 at RSI Lugano
           Produced by Manfred Eicher

This_is_the_day
1. Trilly
2. Carried Away
3. Game Of Silence
4. The Cobweb
5. Baiiia
6. The Debate
7. Where They'd Lived
8. Quizas quizas quizas
9. Migration
10. Trilly var.
11. I'm Trough With Love
12. The Night It Rained Forever

Giovanni Guidi (p)
Thomas Morgan (b)
João Lobo (ds)

 オープニング曲”Trilly”で、クラシック調の美しく優しい調べに圧倒される。変な話だが、いや~~これがジャズで良いのかと・・・・思ってしまう。実はこれが又10曲目に”Trilly var.”として登場するのだから、このアルバムがどんなパターンなのか押して知るべしというところ。
 Tracklistは上記のとおりだが、5.8.11.の3曲以外の9曲はグイディ自身のオリジナル曲。

Ggtriow_2

 とにかく澄んだ美しさと非常に内省的であり、そして深い心を感じさせる。それは”1. Trilly”、”2. Carried Away”、”3. Game Of Silence”と続き、特に3曲目はイタリアというよりは、北欧を連想する何故か哀しく美しい魅力的な曲。ピアノの美しさに合わせてベースももの哀しく弾く(ベーシストのトーマス・モーガンも注目点)。私の聴きようでは、この3曲が一日のスタートからの流れを描いているのか?。
 そして時として緊張感の漂う世界がチラっと顔を覗かせる。それが”4. The Cobweb”、”5. Baiiia”、”6. The Debate”の中盤の3曲。若々しい前衛的な世界で、ピアノの音の余韻が素晴らしく、ドラムスの細かく刻む世界にベースとピアノの駆け引きも面白い。若き世代の混乱と闘い。
 そして”7. Where They'd Lived”、”8. Quizas quizas quizas”、”9. Migration”と、疑問の世界を描き、一つの混乱の姿から可能性を探る世界。
 再び、”10. Trilly var.”自己を見つめる内省の姿に。
 ”11. I'm Trough With Love”、”12. The Night It Rained Forever”で愛のある落ち着いた夜を迎える。
 
 まさに、悩める若き人生の一日を描いているトータル・コンセプト・アルバムとみる。見方によっては一つの人生を描いていると言っても良いのかもしれない。プログレッシブ・ロックの世界でよくみるトータル・コンセプト・アルバム、それに似た一つの形だ。ジャズ・アルバムとしては珍しいパターンである。しかしほんとにこれは素晴らしいアルバムだ。

Gg2 グイディは、イタリアのピアニストで30歳そこそこであり、こんな世界を描くところが不思議なくらいだ。そしてこの若さで、なんと既に約十年前にVenusレコードから日本デビューしている逸材(2006年アルバム「Tomorrow never knows」)。
 今回のECM2作前にも、2009年にはフルヴィオ・シグルータ (tp)、ジョアン・ロボ(ds)、ミルコ・ルベグニ(tp)らとの作品「The Unknown Rebel Band」、そして2011年にはジャンルカ・ペトレラ(tb)、マイケル・ブレイク(ts)、ジョヴァンニ・グイディ(p)、ジェラルド・クリーヴァー(ds)によるこちらはカルテット作品で「We Don't Live Here Anymore」を発表などの多彩な経過を経て来ている。

(試聴)

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