ROCK

2025年5月 7日 (水)

「ピンク・フロイド伝説-LIVE AT POMPEII」 5回目のお披露目 Pink Floyd「AT POMPEII ‐ MCMLXXII」

究極の最終形は・・・期待に耐えうるか

<Progressive Rock>

PINK FLOYD AT POMPEII-MCMLXXII
(BLue-Ray)  Sony Music / Jpn / SIXP-51 / 2025

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Music : Pink floyd
Recorded in the Roman Amphitheatre at Pompeii, 4-7 Oct. 1971

 1971年10月、イタリアのポンペイ遺跡で収録されたピンク・フロイド伝説のライヴ・パフォーマンスの映像版は、1972年9月2日に英国映画祭で初公開されたもので、プログレッシブ・ロック・バンドとして日本に定着することとなる大きな切っ掛けとなったものだ。それはどうした経過かは今となっては解らないが、1973年3月17日にNHK総合テレビ「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されたことによる。日本では英国ロックとしてビートルズは知られていたが、一つの重大分野でもあった所謂プログレ御三家のピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエスといったところまでは、今の時代のような情報はなかなか浸透するまでには時間がかかった。このNHKの映像には日本のロック・ファンへの大きな刺激をもたらした。こんなロックがあるのかという若きものにとっての関心は大きかった。それでもこの時は既にピンク・フロイドは過去に7枚のアルバムをリリースしていて(1970年アルバム『ATOM HEART MOTHER原子心母』で日本でもプログレッシブ・ロック・バンドとして定着していた)、私にとっては、1968年の『神秘』以来、リアル・タイムに聴いてきたバンドであるが、なんと現在でもロック界最高のセールスを示したアルバムであり彼らの頂点であった『The Dark Side of The Moon 狂気』の8枚目がリリースされる年であったのだ。それまで日本でピンク・フロイドは知る人ぞ知るバンドにはなってはいたが、それは少なくとも来日した「箱根アフロディーテ」(このポンペイの録画の2ヶ月前)のライブが大きかったと言える経過であった。

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 いずれにしても、ある程度の年月が経つと必ずもち上がって来るのがこのポンペイ・ライブものだ。ライブものとはいっても観衆なしのポンペイ遺跡の“世界遺産”古代ローマ「円形闘技場」でのピンク・フロイドの無観客ライヴ・パフォーマンスものである。
 そしてこの映像版は勿論現在も世界的にも"人気ロック・ライブもの"として君臨している。そして又今年2025年に新盤の登場となったもので、少なくとも最初からは主に5回の手が加えられて、40年以上の経過を経てきたモノで、それは以下のような経過である。
   ① 1972年   60分もの Edinburgh Film Festival(映画祭)の公開映像版「Live at Pompeii」
   ② 1974年 80分もの 劇場公開版「Live at Pompeii」(+studio映像)
         1976年 初めてのパッケージ化 (ベーターマックス版「ピンク・フロイドの幻想」)
       1981年 広く一般パッケージ化 (Leser Disc版, VHS版)
   ③ 2003年   ニューバージョン化「Live at POMPEII - The Director's Cut」
   ④ 2016年 「The Early Years 1965-1972」収録「Live at Pompeii」5.1ch化
   ⑤ 2025年 「PINK FLOYD AT POMPEII MCMLXXII」( 2025リミックス)

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 ①は、モノラル録音盤であったが、②はアルバム『狂気』録音中のアビー・ロード・スタジオで撮影されたフッテージを追加して80分に拡大され劇場公開された。しかしなんと、前に触れたように、その前の年の1973年にNHK総合テレビで放映され、これは世界でも最も早い一般公開であり、それはこの最初の60分ものであったが、私にとってはなかなかそれまでは彼らの姿をじっくり見るという状況にもなく手段もなかったわけで、モノクロで興奮して見たのが懐かしい。彼らのヴェスヴィオ火山を四人で歩く姿が又印象的であった。そしてその後、誰もが自分の意思で見れるようになったのが1976年のビデオ・テープのベータマックス版、1980年代になって、VHS版とレーザーディスク版として市販されたことによる。そのLD版は今も持っている代物であり、私は①②もDVDに記録されたモノを持っていて、今も比較鑑賞できる。
 そして③2003年には、新盤として「Live at POMPEII - The Director's Cut」が発売された。これは更に手が加えられスタートのイントロ映像には人工衛星の打ち上げシーンなどが加えられ、又CGなどや火山爆発の被害映像などが加えられワイドスクリーン化してのモノだった。
 そして更に2016年には、ピンク・フロイドの箱物の記念版の「The Early Years 1965-1972」が発売され、そこに収録された「Live at Pompeii」のサウンドは、ジェイムズ・ガズリーによる5.1ch化が行われたものであった。私は取り敢えずここまででフロイドのポンペイものは完璧と思っていたのである。
 こうしてこのように一定の年が経過すると何度も何度も手が加えられ、このポンペイ・ライブの映像・サウンドモノはリリースされてきたところであるが、ここに来て何と主として五回目の改良版「POMPEI」が発売されたわけである。

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 今回の目玉は、まず基本は「MCMLXXII」というタイトルにあるように、これは「1972」という意味で、これはこの映像の初公開の年を示したもので、原点回帰したものだと言う事である。それは近年最も普及した2003年の「The Director's Cut」版は、いろいろと手を入れすぎた感があって、演奏映像の途中に別のイメージ映像が入ったりで、かえって手が込んだ割にはファンは納得しなかったところも多々あった。つまりオリジナルのライブそのものの映像に魅力に期待が大きいということであって、従って、今回は当初のオリジナルに戻って画像の4K化による改善を施し、サウンドはキング・クリムゾンもののサウンド・エンジニアで知られており、自らもロック・ミュージシャンとして活躍もするスティーヴン・ウィルソンの手によるリミックス(Dolby Atmos、5.1 Dolby TrueHD Surround [96k/24b]化)された"究極の「POMPEI」モノ"としてリリースされたのである。内容は以下の通りである。

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<CD1>
1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1
3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
4.神秘 A Saucerful of Secrets
5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days
6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun
7.マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs
8.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

<CD2>
1.ユージン、斧に気をつけろ Careful With that Axe, Eugene - Alternate Take
2.神秘 A Saucerful of Secrets - Unedited

<Blu-ray>
Feature Film
1. ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2. エコーズ (Part 1) Echoes Part 1
3. 走り回って On The Run (studio footage)
4. ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
5. 神秘 A Saucerful Of Secrets
6. アス・アンド・ゼム Us and Them (studio footage)
7. 吹けよ風、呼べよ嵐 One Of These Days
8. マドモアゼル・ノブス Mademoiselle Nobs
9. 狂人は心に Brain Damage (studio footage)
10. 太陽賛歌 Set The Controls For The Heart Of The Sun
11. エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

Concert
1.ポンペイ・イントロ Pompeii Intro
2.エコーズ (Part 1) Echoes - Part 1
3.ユージン、斧に気をつけろ Careful With That Axe, Eugene
4.神秘 A Saucerful of Secrets
5.吹けよ風、呼べよ嵐 One of These Days
6.太陽賛歌 Set the Controls for the Heart of the Sun
7.エコーズ (Part 2) Echoes Part 2

Audio Specs:
2.0 Uncompressed LPCM Stereo [96k/24b]
5.1 Dolby TrueHD Surround [96k/24b]
Dolby Atmos [feature only]
Feature film run time: 1:24:58
Concert run time: 1:02:45

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 確かに無観客のライブものというのは、極めて当時のロック・ライブ映像としては珍しいモノだ。私は今は見慣れてしまって不思議に思わないのだが、初めて見たときは非常に異様に感じたものである。当初は撮影監督のエイドリアン・メイペンは、ピンク・フロイド・ミュージックの特異性から、絵画作品とピンク・フロイドの姿を融合することを考えたようであるが、ポンペイ遺跡を知ってこの情景との融合に思いを馳せたようだ。ロックというのは大観衆と共に盛り上がるものであるのが一般通念で、それを逆に無観衆という世界は、一般通念と異なるところに意味があり、このバンドの性格との一致性の試みは見事に成功した作品である。

 ピンク・フロイドが世界的にプログレッシブ・ロックとして浸透したのは1970年のアルバム『ATOM HEART MOTHER 原子心母』からであり、これは彼らがむしろ収拾の付かない曲としてあきらめていたものであり、更に又彼らは分裂の危機にもあった為、リーダーであったロジャー・ウォーターズが友人の実験音楽家のロン・ギーシン(その時、ウォーターズの力を借りてアルバム『Music from"THE BODY"』をリリースしている)に預けて、ギーシンがチェロ奏者、10人の管楽器奏者、20人の合唱団を起用してロック交響楽組曲を造り上げたもので、圧倒的支持を得た。更にこのアルバムでは、ギルモアのギターが曲"Fat old sun"で開花し、ウォーターズは、曲"If"で彼の"不安"を初めてオープンにして、以降のピンク・フロイドの方向性をスタートさせたモノだ。これからピンク・フロイドの一つの道が開け、このポンペイ・ライブは1971年のアルバム『Meddle おせっかい』の製作に関わった世界であり、「Careful With That Axe, Eugene」というシド・バレットと決別後の常連・歴史的曲から「エコーズ」「神秘」「吹けよ風、呼べよ嵐」といった極めて重要な曲がフィーチャーされ、円形闘技場の昼と夜両方の姿を捉えた神秘性のあるビジュアルは、かれらの日常から超越した演奏が作り出す幻想性をさらに強調している。そんなピンク・フロイドの重要な時期のライブがポンペイなのである。これが次のロジャー・ウォーターズ主導の始まりであった最高作品『The Dark Side of The Moon 狂気』(1973年)に繋がってゆくモノであった。

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   ロックというのは、時代を反映したミュージックでもあり、その時代を考察しないとその意義が十分に理解できない。ピンク・フロイドもこの時代から頂点に立った時代以降は、欧州社会は困惑の様相を示し、英国の経済の破綻はひどく、社会混乱も最悪の情勢を迎える。従つてピンク・フロイドを代表するプログレッシブ・ロックはパンク・ロックの台頭により否定され潰されてゆくのは自然の姿だつた。しかしプログレ界でただ一つ其れをものの見事に克服したのはピンク・フロイドでもあった。社会に目を向けずにロックは存在感はなく1977年アルバム『Animals』によって更なる存在価値を高め支持を拡大した経過(これが解らなかったのは当時の日本の音楽評論家で、"エコーズ"にピンク・フロイドの世界が留まって、発展の意味が解らないレベルだった事を知っておくべき。ロックは最高を続けるのでなく時代に相応して常に発展する宿命にある) が、これから以降のピンク・フロイドの歴史になるのであるが、それを知る意味でも、その前期のこの姿は一つの頂点として今でも貴重であり愛され続けているのである。

 こんな歴史的時期の表現でもあるライブものである「ポンペイ」はピンク・フロイド彼らを知る重要なものであり、人気も高い。したがって今回の最高と言われるサウンドと映像は貴重であるので、新しい発見のあると言うモノではなかったが、これはこれとして大きな意義あるモノとして捉えたわけである。

(評価)
□ 曲・演奏・作品の価値 : 90/100
□ 音質・映像の改善価値 : 90/100

(試聴)

 

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2025年2月22日 (土)

サンタナの近況 - Santana「 ONENESS TOUR 2024」

カルロス・サンタナは意識消失発作(2022)、転倒骨折(2025) そして回復ライブへ

<Rock>

Santana 「COUNTING CROWS - ONENESS TOUR」
- SYRACUSE 2024 -
(DVD)COLOUR NTSC Approx / Uxbridge 2285 / 2024

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Empower Federal Credit Union Amphitheater at Lakeview, Syracuse, NY, USA 24th July 2024 

Carlos Santana - lead guitar, vocals, percussion / Benny Rietveld - bass / Karl Perazzo - percussion,  vocals / Andy Vargas - vocals, percussion / Tommy Anthony - rhythm guitar, vocals / David K. Mathews - keyboards / Paoli Mejias - percussion / Cindy Blackman Santana - drums / Ray Greene - vocals, percussion, trombone

Carlossantana20247jpeg   昨年のサンタナのライブ映像を見ながら喜寿を迎えたカルロス・サンタナの近況をちょっと見てみよう。  

 とにかく彼は2年前の2022年7月5日にアメリカ・ミシガン州クラークストンで開催されたコンサート中にステージ上で倒れ、熱中症と脱水症状が原因だったと報道され驚いたのだが、32度以上の暑さの中で、サンタナは「飲食を忘れて脱水状態に陥り、倒れた」と説明した。しかしそのため直後のペンシルベニア州での予定された公演は延期となった。
 そんなところで実際のところはどうなのかと心配していたところであるが、昨年(2024年)には1月から2月、および5月、更に9月から11月には、ラスベガスのハウス・オブ・ブルースで「An Intimate Evening with Santana: Greatest Hits Live」と題したレジデンシー公演を実施しました。さらに、それとは別に6月から9月にかけては「Oneness Tour 2024」(↓左)として北米各地でツアーを行い、7月24日にはニューヨーク州シラキュースでの公演も行われた。
 一方、4月3日には、彼の音楽キャリアを追ったドキュメンタリー映画『カルロス:ザ・サンタナ・ジャーニー』がデジタル配信され、ファンや音楽愛好家の間で話題となった。
 そんなことのなんやらで、彼は健在ぶりを昨年は披露していたので、そんな状況を見てみようとこのライブDVDを入手して鑑賞しているのである。

 そして今年2025年になって、1月3日のニュースでは、なんとカルロスの転倒・骨折の話が入ってきた。彼はカウアイ島の別荘で散歩に出かけ、激しく転倒し、左手の小指を骨折した」との報告があり、「彼は指にピンを差し込まなければならなかった。残念ながら、彼は約6週間ギターを弾くことが出来ない。医者は彼が完全に回復すると言っている」との話。この為、「1月22日から開催されるレジデンシー・ショーの次の実行を延期した」との事。

 しかし現在サンタナのツアーの予定は発表されていて、4月16日にカリフォルニア州ハイランドのサンマニュエルにあるYaamava' Resort & Casinoで始まることになっている(↓右)。いずれにしてもまだまだトラブルを乗り越えて頑張っているようだ。

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 さてここに取り上げた映像アルバムだが、これは所謂ブートですが、その割には良く出来ている映像物だ。取り敢えず最新といっいい昨年のステージをフル体験できる。それは「2024年7月24日シラキュース公演」のオーディエンス・ショットもの。近年のSANTANAはラスベガスで行ったように、コンサート・レジデンシー(移動を繰り返すツアーでなく、1ヶ所の会場で何公演も重ねる興行スタイル)タイプでの"Greatest Hits Live"が主力になっている。しかし、夏には“Oneness Tour 2024”も実施していて、この「シラキュース公演」は、そのツアー公演の一幕である「北米#2」(7月18日ー30日:北米#2(10公演))の5公演目にあたるコンサートだった。

(Tracklist)
1. Opening Movie 2. Soul Sacrifice 3. Jin-Go-Lo-Ba 4. Evil Ways / Do It Again 5. Black Magic Woman 6. Gypsy Queen 7. Oye Como Va 8. Everybody's Everything 9. Bass Solo 10. Samba Pa Ti 11. The Game Of Love 12. She's Not There 13. Spill The Wine 14. Papa Was A Rollin' Stone 15. In-A-Gadda-Da-Vida 16. Hope You're Feeling Better 17. (Da Le) Yaleo 18. Put Your Lights On 19. Corazon Espinado 20. Maria Maria 21. Foo Foo 22. Are You Ready 23. Drum Solo 24. Band Introduction 25. Smooth Carlos Santana

  プロショットでなく、オーディエンスものということで多くは期待しなかったのだが、なかなか良好な映像だ。観客が一切映らないステージ映像で恐らくはステージ中央を真正面に見据える中距離ショット。そしてステージ中央のカルロスをド真ん中に据えつつ、ほぼ同じ高さで見やすい。クローズ・アップも効いていてギターを弾く指の動きも明瞭。すぐ後ろに女房のCindy Blackman Santana がドラムスを演じている。撮影者はかなりサンタナの音楽には通じているようで、演奏中もカメラ移動が演奏のポイントをかなりうまくカヴァーしている。音質も屋外スタイルの為、音はこもらず比較的良好。
  この"Oneness Tour 2024"は、内容は上記のとおり、あの華々しかった70年代クラシックス『サンタナ』(3曲)、『天の守護神』(4曲)と原点回帰をしてみせて、『SUPERNATURAL』(ヒットの"Maria Maria"そして"Smooth"などの5曲)、『SHAMAN』(2曲)の再ブレイク時代を濃縮還元し、各人のソロもたっぷりと盛られている。さらに特徴の注目は「"She's Not There"からカバー・メドレー」だが、去年から組み込んで演奏されるようになったようだが面白い。

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 バンド・メンバーも大きな変化なく、なんと言ってもカルロスの現女房のCindy Blackman Santanaがドラムスで"Soul Sacrifice"やソロで頑張っているのも印象的。このツアーのライブは彼の総決算的雰囲気もあり、今年も続けて行うというしっかり予定が出来てきているので、それなりに充実度が高く内容も落としてはいないので奮闘を期待したい。
 ただそうは言っても、カルロス自身は歩き方もちょっとおぼつかなくて、ステージ中央に椅子を置いて、2/3以上は座った状態で演奏している。従って演奏の活力低下はなんとなく感ずるのだ。そしてこれだと転倒も有りうるなぁーーと、思うところが見えている。今回の転倒事故も幸いに回復の様子であるが、なかなか春からのツアーも大変だろうと、期待はしつつ彼の頑張りに敬服し応援したいところだ。まあCindy Blackmanもついているので、安心してみて居よう。
(尚、下に参考画像を付けましたが、今回のこの映像物はYouTubeにて公開されています)

(評価)
□ 演奏          87/100
□ 画像・音質 75/100

(視聴)



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2025年2月 7日 (金)

[回顧シリーズ] サンタナ SANTANA 「Tanglewood 1970」

貴重な70年ライブをブルーレイ改善映像で楽しめる

<Rock, Latin Rock>

SANTANA 「Tanglewood 1970」 Definitive Edition
Live in Tanglewood, Lenox, MA, USA August 18th 1970
76min. Pro-shot (LNBRD-044)
  
           ⇓  ⇓ (こちら)                                                                  

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                                                                              (↑)以前の改善盤
Carlos Santana - guitar
Gregg Rolie - keyboads, lead vocal
David Brown - bass
Jose Areas - conga, timbales
Mike Carabello - congas
Michael Shrieve - drums

Live in Tanglewood, Lenox, MA, USA August 18th 1970

 いろいろとブート遊びをしていての、ロックの最も花の咲いた1970年代の回顧である。この映像版(上左 『Tranglewood 1970』(LNBRD-0044, Blu-ray DISK))は、70年8月18日、初期サンタナのライブ映像として有名なビル・グラハムが主催したTanglewood Festivalでのプロショット映像。かってはタイムコード付きの映像で昂奮しながら楽しんだことを思い出すが、その後タイムコード無の画質とサウンドが遥かに向上した映像の出現で更に喜んだのもついこの間のような気がするが、実際にはずいぶん前だが、それが上右『TANGLEWOOD 1970-improved version』(JPD-V1-115, DVD-R)である。
 そしてここに再びDefinitive Editionの登場で、それが今度はBlue-rayでのこのブート映像盤、これは、演奏部分の殆どはその画質向上してある映像を使って、古きタイムコード付き映像で曲間等を補完している。更にHD画質にリマスターして、オリジナル・サンタナを代表する映像の最強盤としてカラー画質も改善してつい最近ブルーレイにてリリースしてくれたもの。

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 そもそも私がサンタナに惚れ込んだのは、2ndアルバム『Abraxas/天の守護神』(1970)に収載された"Black Magic Woman / Gypsy Queen "であり、当時は映像モノなんて考えてもみなかったところだ。とにもかくにも69年ウッドストックでの彗星の如く現れたサンタナ・バンドの驚異の圧巻ステージにて、日本でもその筋では名前だけはなんとなく知られるところとなったが、そのために1stアルバム『Santana』(1969)がリリースされることになった。それによりあのライオンの顔(あの中に人間が何人居るか?)のアルバム・ジャケもインパクトがあり、ロック・ファンに知られるところとなったところだ。当時は所謂ラテン・ロックとして名前が広がったのだが、ジャジーなセンスの加味された"Soul Sacrifice"は、圧倒的な支持を得た。そして決定的なヒットで知れ渡ったのは2ndアルバム収載の"Black Magic Woman"である。


Vicp41459  ちょっと余談だが、こうしたラテン音楽は、日本においても根強い人気がある。もともと戦後洋楽ポピュラーとして日本で最もインパクトがあったのは、ペレス・プラード楽団だ。キューバのダンス音楽にジャズの要素を加えた「マンボ」という新しいジャンルを確立し、1950年代は世界的な大流行。特に1955年の "セレソ・ローサ(Cherry Pink and Apple Blossom White)"の流行は日本の音楽にまで影響をもたらす勢いであった(昭和の歌謡曲にも取り入れられた)。こうしたラテン音楽の因子が日本には根付いたところに、1960年代には、「セルジオメンデスとブラジル66」の出現で、ジャジーな味わいとラテン音楽の世界が広がり、更に1970年になると今度はロックの世界にラテンが聴き取れたのが「サンタナ」で、日本でも大いに湧いたわけだ。私もペレス・プラードからそんな流れに毒された(笑)人間の一人で、ラテン音楽の愛好家でもある。

Image_20250204213701  そんな経過であるので、1970年の『天の守護神』の当時のサンタナのライブ映像となると、もはや文句の付けるところがなく受け入れるのであり、こうして改良版は見過ごすことは出来ないのだ。そして私が虜になった曲"Black Magic Woman / Gypsy Queen"は、イギリスのバンド、フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)のピーター・グリーン(Peter Green)が1968年に作曲・リリースした楽曲だが、それをカバーし、世界的大ヒットし、サンタナの存在を決定付けた。それはサンタナが「Gypsy Queen」(ハンガリーのギタリストGábor Szabóによる1966年の楽曲)をメドレーとして組み込み、情熱的なラテン・ロック・アレンジに、特にカルロス・サンタナの洒落たギターソロに加えて、グレッグ・ローリー(Gregg Rolie)のボーカル、更にパーカッションのラテン・リズムがとにかく新鮮だっだ。

 

(Tracklist)

Intro
Batuka / Se a cabo
Black Magic Woman / Gypsy Queen
Oye como va
Incident at Neshabur
Toussaint L'Ouverture
Evil Ways
Hope You're Feeling Better
Treat
Savor
Jingo
Soul Sacrifice
Gumbo
Persuasion

  まあ、初期サンタナのライブ映像として、'69年のウッドストック映像、この'70年Tanglewood Festivalでのプロショット映像は、名ライブ映像として見て来ているのだが、今回のこれは、の1080PのHD画質にリマスターし、サンタナを代表する映像の最強盤だ。まあそうは言っても現在の多くのライブ映像物と比較したら、それはそれはお粗末だけれども、当時の実際の姿をじっくり見れるので嬉しくなるのである。

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(Areas, Santana)               (Santana)                 (Rolie)

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(Shreve)                     (Carabello, Santana)     (Brown, Areas, Carabello)


 そしてこの'70年8月と言えば、2nd『天の守護神』のリリース直前であるが、収録の「Se a cabo」「Black Magic Woman / Gypsy Queen」「Oye como va 」、「Incident at Neshabur」と言った2nd収録の新曲を圧巻の演奏で披露している。更にオープニングの銅鑼の連打の音から「Batuka」のフレーズでライブはスタート、これは3rdアルバム『Santana III』に収録のファンク・ロックだが、更に「Toussaint L'Ouverture」も3rdもので、ここに収録されている。従ってサンタナは、3rdぐらいまでの曲群は既に手持ちの曲としていたことが解る。'67年にはバンド名をサンタナにしていることからも、'69年のウッドストック出演時には、それまでにかなりの曲を熟してきていただろうと推測できる(以前にも紹介したアルバム『On The Road to Wood Stock』(Rokarola Records/250283-1,2/2011 )を参照)。

 又「Soul Sacrifice 」にては、Jose Areas とMike Carabello のツイン・コンガが迫ってきて、その上にMicheal Shreveにおいては、彼のSANTANA初期のベスト・パフォーマンスと言わしめたドラム・プレイがじっくり楽しめる。それに対してCarlos Santana は、タバコを吸いながらのギター・プレイで余裕たっぷり。ただGregg Rolie のキーボードと歌はなかなか気合が入っていた。
 Gregg作の「Hope You're Feeling Better」のグルーブ・ロックは鳥肌モノのカッコ良さです。そしてグレッグのピアノがリードする「Treat」も、ジャージィでいいですね。カルロスとグレッグが交互に主役が変わってそれぞれのインプロ演奏が冴えていて聴き入ってしまう。
 
 いずれにしても当時のものとしてこれ以上の改善は無理だろうというレベルに映像・音は改良されている。
 有名なライブものであるので、好きな人は一枚は所有しても良いと思われるものだ。

1539_v9_bbw  < Carlos Santana 略歴> :  1947年生まれメキシコ出身。父の影響で5歳でヴァイオリン、8歳でギターを弾く。サンフランシスコに移住し、'66年に“サンタナ・ブルース・バンド”を結成。'67年に“サンタナ”としてデビュー。'69年伝説の“ウッドストック・フェス”に出演、無名ながら衝撃的なパフォーマンスで大観衆を魅了、一気に全米で人気獲得。デビュー・アルバム『サンタナ』が全米チャート4位、2ndアルバム『天の守護神』が全米チャート1位、シングル「ブラック・マジック・ウーマン」が全米チャート4位と大ヒット、初期代表作となる。その後多くのアルバム活動。30年後の'99年のアルバム『スーパーナチュラル』は、様々なアーティストとのコラボで、特大ブレイク。サンタナ初の全米No1ヒット・シングル「スムーズ」はビルボード12週連続1位、アルバムも12週連続1位という驚異的な成功。続くシングル「マリア・マリア」も10週連続1位を記録。2枚のシングルで全米チャート1位を約半年間独占の歴史的快挙。2000年の第42回グラミー賞では、最高栄誉「最優秀アルバム賞」「最優秀楽曲賞」含む全9部門で受賞し、サンタナの第2黄金期。ローリング・ストーン誌が選ぶ「最も偉大なギタリスト100」(2003年度版)で15位に選出。これまで26枚のスタジオ・アルバム(サンタナ単独名義のみの作品)を発表。全世界で累計1億枚以上のセールスを記録。2022年にステージで倒れ心配されるも回復。現在も活躍中。

(評価)
□ 映像・録音  60/100 (当時のものとして80/100)
□ 演奏     95/100

(視聴)

* 

 

 

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2025年2月 2日 (日)

ニック・メイスン 「NICK' MASON'S SAUCERFUL SECRETS」-POMPEII 2023

ピンク・フロイド創設期からの物語

<Progressive Rock>

「NICK' MASON'S SAUCERFUL SECRETS」-POMPEII 2023
Live at Teatro Grande, Pompei, Italy 24th July 2023 
DVD, Amty 763 /  Multicam / COLOUR NTSC Approx.146min

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Nick Mason - drums, percussion / Guy Pratt - vocals, bass, guitars / Gary Kemp - vocals, guitars / Lee Harris - guitars, backing vocals / Dom Beken - keyboards, backing vocal

  ピンク・フロイド話も続きますが、久々のニック・メイスンNicholas Berkeley Mason(1944年1月27日 - )の話題だ。考えてみるとピンク・フロイドの創設メンバーで、彼は1965年のバンド結成以来(当時は建築学を学んでいた)、唯一の不変のメンバーであり、ロジャー・ウォーターズとは学友でいつの時代も仲は良い。そしてピンク・フロイドの各時代すべてのアルバムに登場する唯一のメンバーということになる。もともとドラマーが好みと言うわけでもなかったようで、バンド結成時にはメンバーの都合でドラムスの担当となったようだ。そういえば、ロジャー・ウォーターズもギタリストだったが、シド・バレットの関係でベースに落ち着いたようだ。まあ学生バンドはそんなところからスタートしているということだろう。

91eixnxbwl_ac_sl850w  そしてメイスンはピンク・フロイド時代もソロ・アルバムをリリースしているが、意外にセンスはジャジーな世界であった。1981年のソロ・アルバム『Nick Mason's Fictitious Sports 空想感覚』(⇢)なんかは、典型的なコンテンポラリー・ジャズ・ロック・アルバムで、ジャズでも異色のピアニストのカーラ・ブレイと共演していて、意外や意外の感がある。しかし当時親友のロジャー・ウォーターズからは、既にドラマーとしては旬も過ぎたと、アルバム『THE WALL』では、セカンド・ドラマーとして扱われている。それはリック・ライトも同様であった。
 しかし、ウォーターズがピンク・フロイドから去ることになって、そのピンク・フロイドの名をなんとしても欲しかったデヴィット・ギルモアから誘われて、ピンク・フロイドを続けることになり、ライトもその後復帰したわけである。

 そしてその時代も去り、意外に静かだったメイスンも、親友ウォーターズのソロ・ライブには飛び入り参加したりと、彼は嫌われるという性格の無い人間ということが見て取れる、それだけ癖がないということか。そして ウォーターズのソロ世界ライブの成功や、ギルモアの同様な成功をみて、メイスンも初期のピンク・フロイド曲を演奏するトリビュートバンド「Nick Mason’s Saucerful of Secrets」を立ち上げて2018年より二人よりは若干スケールダウンした世界ツアー・ライブ活動を続けている。このバンドは、ドラマーのニック・メイソンとギタリストのリー・ハリスによって英国のサイケデリックロックバンドでスタートしたピンク・フロイドの初期の曲を演奏している。バンドには、ギターとボーカルにシュパンダウ・バレエ団のゲイリー・ケンプ、ベースとボーカルにピンク・フロイドの長年のコラボレーターであるガイ・プラット、キーボードにプロデューサーのドム・ベケンも参加。メイソンは、グループはトリビュートバンドではなく、時代の「精神を捉える」ことを望んでと述べている。


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(ニック・メイスン・バンドに飛び入り参加のロジャー・ウォーターズと)

 バンドデビューは2018年5月にロンドンの500席のクラブ、ディングウォールズ。その後、ハーフムーン、パットニーでの3つの小さなショー、2018年9月のヨーロッパツアー、2019年の北米ツアーが行われた。2019年4月18日、ロジャー・ウォーターズがニューヨーク・ビーコン・シアターに参加して「Set the Controls for the Heart of the Sun」を歌い、観客を驚かせた。
 その後COVID-19のパンデミックにより延期、彼らは2023年に本格的に再び活動し、短期間のユーロ・ツアーより7月24日イタリア、ポンペイでのライブを行った。それをこのブートDVDは、マルチカメラ仕様によるオーディエンス映像にて、トータル2時間26分にわたりフル収録したものである。。
 なんといっても、ボンペイといえばファンなら誰もが1971年10月の同地でのピンク・フロイドの公式ライブ映像を収録した記録映画が頭に浮かぶわけで、私もそれもあって、何年か前にとにもかくにも訪れてみた遺跡の地だ。あのライブは、NHKも初めてピンク・フロイドを公に日本に紹介したものであった(1973年3月17日「ヤングミュージックショー」)。
 このオーディエンス録画は、なかなか良く出来ていてマルチカメラも駆使されサウンドも良好でうまくマッチングしている。

(Tracklist)

Disc 1 :
1. Intro Part 1 2. Intro Part 2 3. Intro Part 3
(Set 1) 4. Pre-Show 5. One Of These Days 6. Nick Mason MC 7. Arnold Layne 8. Fearless 9. Obscured By Clouds 10. When You're In 11. Candy And A Currant Bun 12. Vegetable Man 13. Nick Mason MC 14. If 15. Atom Heart Mother 16. If (Reprise) 17. Guy Pratt MC 18. Remember A Day 19. Band Introduction 20. Set The Controls For The Heart Of The Sun
Disc 2 :
(Set 2)
1. Astronomy Domine 2. The Nile Song 3. Guy Pratt MC 4. Burning Bridges 5. Childhood's End 6. Lucifer Sam 7. Echoes 8. See Emily Play 9. A Saucerful Of Secrets 10. Bike 11. Outro 12. Ending 13. Nick's Honorary Citizenship Ceremony

 ピンク・フロイドにとっても記念のポンペイであり、この日はライブ前にポンペイ遺跡の凝った約9分のムービーを挿入しており、その映像からしっかり収録。そして円形劇場遺跡の会場に風が吹き抜けるSEが流れ、「吹けよ風、呼べよ嵐」のベース・リフが轟くという演出はなかなかファンにはたまらない演出。多彩なアングルの映像を最新機器で編集、目まぐるしいライティングによってムードを一気に盛り上げる。シド時代から70年代初期までのフロイドが映像美と共に蘇ってウォーターズやギルモアとはちょっと違った趣向。
 さて、メンバーは上記のおじさん達(笑)で、しかもオーディエンスにとってはリアル・タイムに経験する以前の曲で、雰囲気は若者にアッピールするロック・バンドというよりはやはり回顧バンドという感じは致し方ない。

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 しかし、選曲は思った以上に凝っていた。アルバム『Obscured By Clouds雲の影』(1972)から三曲が登場しているのに驚いた。このアルバムは異色監督シュローダーの映画のサウンド・トラック盤だが、彼らの映像と音楽の関係の自信の表れのような作品集だ。取り上げられている曲「Obscured By Clouds」は如何にも映画音楽的で、又「Childhood's End」はブルージーで意外に面白い。更に前半のショーでの注目は、ロジャー・ウォーターズの肝いりの曲「If」を取り上げていたことだ。この曲は、ウォーターズの社会や人間への不安のスタート曲であり、諸々の暗示が歌われていて、後期ピンク・フロイドの幕開けでもある。しかもその間に「Atom Heart Mother原子心母」を挟み込んで、なかなか味な展開を見せ、後半には、やはり私が意外と好きなアルバム『モア』からの「The Nile Song」を演じたり、一方欠かせない「Echoes」を聴かせている。なかなかウォーターズとは別の世界観での違ったメイスンの心と意志が見え隠れしているように思う。

 地味なニック・メイスンの活動もこうして表に出てきて、なかなか味わいがあって良かったと思いながら視聴したところである。今年も継続してこのライブは行われるようで、各地での成功を祈りたい。

(評価)
□ 選曲、演奏   88/100
□ 録音      85/100

(試聴)

" Atom Heart Mother", " If (Reprise)"

*

Roger Watersの飛び入りの様子↓ (2019.4.18)

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2025年1月28日 (火)

デヴィット・キルモア David Gilmour 「MADISON SQUARE GARDEN 2024」

相変わらずのアメリカン・ミュージック・ショー化

<Progressive Rock, Popular>

David Gilmour 「MADISON SQUARE GARDEN 2024」
Madison Aquare Garden, New York, NY, USA 10th November 2024
DVD / Amity 795 / COLOUR NTSC Approx.164min / 2024

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 これは、デヴィット・ギルモアの昨年末のMadison Square Gardenのライブ映像版。

 歴代60年代ロックのミュージシャンも、なんと80歳前後という歳を迎えている。そんな中でもかって3大プログレッシブ・ロック・グループと言われたキング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエスは、それぞれ様々なスタイルではあるが、現在も第一線にあるというのは驚きである。それには、彼らがロックというジャンルにおいても、当時プログレッシブ(進歩する、前進する)と言われた因子をはらみつつ、リスナーの心を捉えてきたということに尽きると思うが、今日の活動を見ても第一線にそれなりの力を発揮している事には驚きと言っていいのだろう。

 さてそのピンク・フロイドだが、結成当時からのロジャー・ウォーターズ(↓上)は、今年82歳になるが、現在はソロ・アーティストとして'23年までも大々的世界ツアー(『「THIS IS NOT A DRILL 」ツアー』)を敢行し、ピンク・フロイド時代の彼の曲やソロ時代になつての曲を展開して反戦・反核のアジテーションをも行って社会的・音楽的話題を残してる。そしてその上にアルバム『The Dark Side of The Moon Redux』をリリース、若き50年前から今の姿を見直している。又ニック・メイスン(↓下)も81歳で、2023年から今年にかけて新グループを結成し『 saucerful of secrets tour 』を展開、懐かしのピンク・フロイドの原点に近いアルバムからの曲群で好評を得ている。

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Roger Waters「This is not a Drill Tour」
  

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Nick Mason「saucerful of secrets tour」


 一方メンバーの少々若いデヴィット・ギルモアは今年79歳になるところだが、昨年ソロアルバム『LUCK AND STRANGE(邂逅)』リリースし、その後のローマ・ロンドン・北米ツアー『LUCK AND STRANGE Tour』を行った。それがここで取り上げたこのブートで映像盤である。 私から見ると三者ともかってのピンク・フロイド時代の曲も多くを演じているが、全く印象の違う世界を醸し出しているのが面白い。まあ、それだけ個性があるということにもなって、それはそれ悪いことではない。

 ギルモアの昨年9月上旬ローマから始まったツアーのファイナルとなる北米ツアーの11月10日のニューヨークは Madison Square Gardenに於けるライブの全記録だ。残念ながらプロショットではない。しかしマルチ・カメラ仕様となるハイクオリティー・オーディエンス映像にて2時間44分にわたりフル収録している。これはWEB上にアップされた映像を元に、海外ファンの複数のアングル映像を最新機器を用いてマルチ化しプロショットに近いモノに仕上げたもので、アリーナ至近距離からのカメラやステージ全体を体感できるスタンド席カメラ、さらに他にも多彩なアングルを納めている。そしておまけにイメージ映像も挿入されており、黒猫や時計、太陽など、曲のイメージに沿った映像が差し込まれ、時には参加メンバーの写真やギルモアのオフショットまで登場する結構凝った編集だ。音声パートもバラバラの映像からの音源をバランス調整も施し違和感なくライブ全編を再現している。まあオーディエンスによる映像モノとしてはなかなか上出来の部類に属するものだ。

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David Gilmour 「LUCK AND STRANGE Tour」

(LUCK AND STRANGE Tour-Tracklist)
(Disc 1) : 1. Guy Pratt Intro 2. 5 A.M. 3. Black Cat 4. Luck And Strange 5. Speak To Me 6. Breathe 7. Time 8. Breathe (reprise) 9. Fat Old Sun 10. Marooned 11. A Single Spark 12. Wish You Were Here 13. Band Introductions 14. Vita Brevis 15. Between Two Points 16. High Hopes
(Disc 2) : 1. Sorrow 2. The Piper's Call 3. A Great Day For Freedom(『The Division Bell』) 4. In Any Tongue 5. Band Crew Introductions 6. The Great Gig In The Sky 7. A Boat Lies Waiting 8. MC 9. Coming Back To Life 10. MC (dedicated to Polly Samson) 11. Dark and Velvet Nights 12. Sings 13. Scattered 14.Comfortably Numb
-Bonus Footage- 15. Luck and Strange

 内容は上記の通りで、古き良き時代のピンク・フロイドの『狂気』を中心とした曲群に、ロジャー・ウォーターズの脱退後のギルモア主導型の時代の曲を交えて、今回の彼のソロ・アルバム『邂逅』から全曲披露している。所謂、1950年代ロック・ミュージックはエレクトリック・ギターのサウンドが一つのポピュラー界にインパクトを与えた重要な因子であって、プレスリーから始まってビートルズもエレキを抱えて若者にアッピールした。1960年代になっての3大プログレ・バンドもそのギター・サウンドはロック・ミュージックの中心サウンドは変わりなく、キーボードが加わって特殊な世界をも構築した。そんなところで、ピンク・フロイドに於いてもシド・バレットのバンド離脱後のウォーターズの構想に乗ってのギルモア加入、そしてギルモア・ギター・サウンドは大きな役割を果たした。

 従って、ピンク・フロイドの1970年代の大成功で、ギルモアのギター・サウンドを愛する者も多く今日まで来ていて、今回のアルバムそしてツアーによるライブはそれなりに大成功している。そしてアルバム『飛翔』と『邂逅』からのソロと、フロイド・ナンバーがちょうど半々づつというバランスの良い構成で、ちなみに『邂逅』からはやはりタイトル・ナンバーを含み計9曲を披露(ここには、娘と息子の二人も参加)。フロイド・ナンバーとしては、今回は定番ばかりでなく、70年代の「Breathe (In The Air)」や、90年代の彼の時代になってのアルバム『対』よりの「A Great Day For Freedom」「Marooned」などの4曲もセットインしているのが一応の注目点。加えてツアー・メンバーとして参加しているギルモアの娘ロマニー・ギルモアも、「Vita Brevis」「Between Two Points」でボーカルやハープを披露したりと、所謂、ロック・コンセプトの流れる社会派ウォーターズのライブのような緊迫感と世界の暗部に迫るソロ・ツアーとは違い、若干お祭り的ビック・ショーに終わらせている。そしてやはり観衆は昔のピンク・フロイドが聴きたいので、79年のウォーターズの自伝とアーティストの狂気を描いた『ザ・ウォール』からの「 Comfortably Numb」などが一番盛り上がっていて、今回のアルバムからの曲は静かに聴いている。

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 こうして、ギルモアのライブ・ステージを観ていても、やはり全盛期からもう数十年経ったピンク・フロイドの人気は衰えず、ギルモア・ギター・ファンは現在も健在だ。しかし華々しい中にアメリカ的ミュージック・ショー因子が強いのは、ギルモアのアルバムにおける曲作りに大きな役割を果たしている女房のポリー・サムソンの影響が大きい事は理解しているが(テーマは「老化と死」にあると言うが)、しかしやはりロック愛好家として若干空しくなったのは、歳はとったとはいえ、かってのロックの根底に流れる時代を見つめ、社会というものに対してのコンセプトを持って、そして問題意識を持ち、訴えて、そして大衆に主張してゆく事の価値感が薄れていることは残念である。かってウォーターズが描いたアルバム『狂気』の曲「Money」、『炎』の「Welcome To The Machine」で描いた恐ろしい現実、レコードの売り上げやソーシャルメディアでの成功を求める業界やのアーティストの欲望によって音楽の姿がしばしば変わる時代に警告を発していたが、ギルモアはむしろウォーターズに言わせると"お人好し的人間"であるだけに、なんとなくそんな世界に流されていないだろうかと・・・もう80歳になろうとしている人間に言うことでもないが、ちょっと頭によぎるものがあるのだ。

 

Fozzn84xsae7176  ウォーターズにおいては、むしろ偏屈とも言われる一貫している思想として、父親の戦死のトラウマと人生経験から流れる「いかなるものであれ、戦争で人が死ぬことは絶対悪」とすることに基ずくものから派生した「社会への批判と要求」は確固としているものがあり、そしてもともとピンク・フロイドというバンド自身が、シド・バレットの脱落後において、創造的才能creative GeniusとかBrain頭脳と言われるロジャー・ウォーターズが果たした役割により最盛期を創り上げてきた。その結果アルバムにはそのような核が存在していた。つまり60-70年代のロック・グループ・メンバーのロック・アルバムやロック・ショーと言うモノは、問題意識や形はいろいろであっても、そうしたものが存在していたのだ。そしてその結果、それが無いとどこか虚しさが感じてしまうところがあるのである。ジョン・レノンの居ないビートルズの寂しさを見てもわかる。やはりそうした根底にあるものの重要性は、特にロックにおいては、時代によって質の変化は当然しつつも、演ずる音楽を倍増するエネルギーとして大きく左右してきたし、これからもするであろう事は間違いない処と思う。

 今、かってのピンク・フロイドの三人が、それぞれの道で三人三様に活躍しているのを見ると、まあ、人間は多くの経験と歩んできた社会や人間関係によってそれぞれが個性ある人生を築いている訳で、今この三人でピンク・フロイドを再結成ということを期待しても、それにはあまりにも非現実的であると思うが、強力なプロデューサーによって、ただそのバチバチした対立と共存で各々の優れたところを凝集出来、アルバムが作られるなんて事があったとしたら、それはそれ恐ろしいロック・アルバムが作られるのではないかと、こうしたライブ・アルバムを見るにつけ、とんでもない幻想(?)を抱いてしまうというのは、シド・バレット時代からピンク・フロイドを愛してきた人間の哀しき性(さが)であるのだ。

(評価)
□ 曲・演奏      :   88/100
□   画像・録音 : 80/100

(参考視聴)

 *

 

 

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2023年10月 8日 (日)

ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」

50年の歴史を経て・・ここに帰ってきたモノは、深淵にして壮大な世界

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」
Cooking Vinyl / Import / SGB50CD / 2023

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Credits:
Roger Waters: Vocals, Bass on Any Colour, VSC3 / Gus Seyffert: Bass, Guitar, Percussion, Keys, Synth, Backing Vocals / Joey Waronker: Drums, Percussion / Jonathan Wilson: Guitars, Synth, Organ / Johnny Shepherd: Organ, Piano / Via Mardot: Theremin / Azniv Korkejian: Vocals / Gabe Noel: String,Arrangements, Strings, Sarangi / Jon Carin: Keyboards, Lap Steel, Synth, Organ / Robert Walter: Piano on Great Gig // Produced by Gus Seyffert and Roger Waters // Art Direction and Design: Sean Evans // Photography: Kate Izor


   ロック史に輝く名盤中の名盤、ピンク・フロイドの最高傑作と言われる『The Dark Side of the Moon 狂気』(1973)を、ロジャー・ウォーターズがオリジナル・レコーディングから50年、80歳を迎えるに人生の区切りに再解釈した壮大な世界をここに公開した。
 そもそもピンク・フロイドの歴史の中で、全曲をウォーターズが作詩して彼の出してきた基本的なコンセプトにメンバーが肉付けして音像を作り上げた最初のアルバムで、その流れは以降彼が在籍した最後のアルバム『Final Cut』(1983)の5作にまで続くことになった。このアルバムは当初"Eclipse"というタイトルで進行したが、謎めいたウォーターズのアイデアは人間の問題、社会の問題、個人的トラウマ、シド・バレットの狂気などを常にはらんでいて難解であると同時に聴くものの感性に訴える世界でもあった。

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 大学時代、ロック・ミュージツクを通じて夢を描いて結成したPink Floyd。それはニック・メイスン、リチャード・ライトと共に、ウォーターズは高校時代の友シド・バレツトを呼び込んでの4人バンドで、サイケデリックと言われた世界で花咲かせた。最大の難関は音楽的リーダーのシドの精神状態の悪化からの脱落であった。しかしウォーターズの執念は、ギタリスト・デヴット・ギルモアを呼び込んで更にプログレッシブな流れに重きをおいてバンド活動を続け、『Atom Heart Mother』(1970)にて一つの価値観を築き、遂に29歳のとき、Pink Floydとしてレコーディングした『The Dark Side of the Moon』は、彼の独特な人間の経験、時代の暗部、狂気への恐怖、などの彼の異常ともいえる常人の感覚を超えた世界を描くことにより圧倒的な支持を得たのだった。

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1. Speak to Me
2. Breathe
3. On the Run
4. Time
5. Great Gig in the Sky
6. Money
7. Us and Them
8. Any Colour You Like
9. Brain Damage
10. Eclipse

 このアルバムは「老いた男の記憶、それは全盛期の男の行動である」という冒頭の言葉から始まる。ご存じでしょうか、この"Speak to Me"では、なんとアルバム『Obuscured by Clouds雲の影』の曲"Free Four"の詩が登場しているではないか、驚きましたね、彼の繋がっているコンセプトの世界には。既にウォーターズは20歳代に老人への世界にまで想いを馳せていた。そして『The Dark Side of the Moon Redux』で、この50年に及ぶ経過を歩み、彼自身のトラウマ、歩んだ道、哲学、年齢という諸条件新たな視点を持って、彼自身のコンセプトで築いたオリジナルの創作物を見直し回顧し新展開を試みる。彼の近年の人生の重みを感ずるヴォーカルは、Pink Floyd時代から変わらない謎めいた表現で脚色しながら、彼の若き時代の歌詞に深遠さのあるコンセプトの拡大の味を加え、彼の哲学的風貌すら感ずる創作をここに結晶させたのである。

 制作にあたってWatersとGus Seyffertによるプロダクションは、壮大な深淵な宇宙的サウンドにウォーターズのの80歳の男としての心のつぶやきを乗せて、サイケデリックな味とプログレッシブな味とクラシックな味を乗せたオーケストレーション築き、かってのアルバムにはなかった世界を対比的に聴かせてくれる。

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 「オリジナルの『The Dark Side of the Moon』は、ある意味、人間の現状に対する年長者の嘆きのように感じられる。しかし、曲を作ったとき、Dave、Rick、Nick、そして私はとても若かった。だから、80歳の知恵が再解釈に何をもたらすかを考え始めたんだ。最初にGusとSeanに『The Dark Side of the Moon』の再レコーディングの話をしたとき、みんな私が狂っていると思った。でも、考えれば考えるほど、『肝心なのはそこじゃないよね』と思ったんだ。半世紀の時を超えて手を取り合い、堂々とオリジナルと並べることが出来る作品に仕上がったことを、私は非常に誇りに思っている」とRoger Watersは語る。

Pinkfloydrogerwatersnickmasondarjsideoft  そしてこのアルバム・リリースの試みは又してもPink Floydメンバーのデヴィット・ギルモアの猛反対という憂き目にあった。これは若き当初のこのアルバムのコンセプトの世界に存在していなかったギルモアであったことを露骨に暴露した。哀しいことに、これは真の作者にしか解らない半世紀の経過を経た人生が如何に人間の重きを築いているかが理解出来ないのである。もっともこれはアメリカ商業主義の独占欲の強いギルモアの女房のポリー・サムソンの仕業なのかもしれないが。
 しかし一方、Pink Floydのニック・メイスンはリリースに大賛成した。そこが学生時代の男の夢をバンド結成という一つの手法の下で、互いに共に築いてきた人格を持っている事の違いであった。ウォーターズはかっての『The Dark Side of the Moon』にとって代わろうなどとは全く考えておらず、勿論否定しているどころか、むしろ若き時代の結晶として評価していることが今回の「Redux」の発想に繋がっているのだ。メイスンは、あれから半世紀経過した人生の作り上げたものを確実に表現したことを理解し、更に音楽的完成度についても感動し後押ししてくれたのである。それによってウォーターズはリリースを決意したのであった。

 今や、人生の総決算に入っているウォーターズにとっては、パレスチナ支持イスラエル批判、戦争の無意味さの国連発言、彼の作品やライブの意味が理解できない反ユダヤ主義やナチス礼賛のという濡れ衣に対する反発など、常に政治思想が取り巻いているが、その中でも何につけても父親の死にまつわるトラウマを背負っての戦争否定につながる活動・運動はいまだに続いている。そんな中で、むしろ若き時代を礼賛し、そして年老いた現在の存在を確認しているのだと思う。ここまで来ると、このアルバムの評価はいろいろと言う世界を超越しているのである。

(評価)
□ 企画・演奏・歌   95/100
□ 録音        90/100

(試聴)

*

 

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2023年8月12日 (土)

ウィズイン・テンプテーション Within Temptation 「Wireless」

"戦争に目覚めろ"がテーマか

<alternative Metal Rock>

Within Temptation 「Wireless」
(Single CD)Music On Vinyl / Europe / MOV7068 / 2023

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シャロン・デン・アデル (Sharon den Adel) - ボーカル (1996年- ) 
ルード・ヨリー (Ruud Jolie) - ギター (2001年- )
ステファン・ヘレブラット (Stefan Helleblad) - リズムギター (2011年- )
イェローン・ファン・フェーン (Jeroen van Veen) - ベース (1996年- )
マルテン・スピーレンブルフ (Martijn Spierenburg) - キーボード (2001年- )
マイク・コーレン (Mike Coolen) - ドラムス (2011年- )

ローベルト・ヴェスターホルト (Robert Westerholt) - ギター(1996年- ※2011年以降は製作とスタジオ録音に専念) 

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   久々にシンフォニック・メタルの話題です。CDリリースがこのところ低迷しているロック界、この1997年オランダで誕生したWithin Temptationも、スタジオ・アルバム『RESIST』(VICP-65510 / 2019)が5年ぶりにリリースされて以来は、その前からの沈黙を破って活動が再開され歓迎されたが、あれからもう既に4年経過。
 アルバム『Hydra』(2014)の大成功後は、噂では"燃え尽き症候群"のような状態に陥り、シャロン嬢(今は既に母親としての貫禄もついて)はソロ・プロジェクトを始動させたりで、このバンドの行く末に不安がよぎったが、しかしアルバム『RESIST』が登場し、取り敢えずファンをホッとさせたのだった。
 そして2020年に「メタル・フェスティバル」(ドイツの「WAKEN OPEN AIR 2019」)の話題にてここに取り上げて以来あっという間に3年経過、その後のWithin Tについては、丁度このタイミングでシングル・アルバム『WIRELESS』のお目見えがあったので、ちょっと見てみたい。

 この間、昨年2022年に4曲入りEP『AFTERMATH』(MOV12071)が、なんとLP(CLEA VINYL 3000枚限定)でリリースされている。そしてまたここに今年新曲シングル『WIRELESS』(MOV7068)がリリースされたのだ。しかし時代の影響かフルCDアルバムの登場はなく、サブスク・ストリーミング時代の中であって、この両者の5曲とそのインスト版5曲の計10曲のアルバムとしてストリーミングで聴くことが出来るのであり、それを取り上げてみた。

(Tracklist)

351392760_9294924082w2 <Single>
A: Wireless
b: Wireless (Instrumental)

<Streaming>
1.Wireless
2.Don't Pray For Me
3.Shed My Skin
4.The Purge
5.Entertain You
6.Wireless (Instrumental)
7.Don't Pray For Me (Instrumental)
8.Shed My Skin (Instrumental)
9.The Purge (Instrumental)
10.Entertain You (Instrumental)

  とにかく目玉曲はM1."WireLess"だ。このところ無事母となったシャロン・デ・アレンが夫のローベルトの協力によってライブ活動も充実して、新曲を登場させた。なにせシャロンは一時のソロ・プロジェクトの「マイ・インディゴ」にてこのバンドとは異なるエレポップにアンビエント系をまじえながらどちらかというとオーソドックスな音に乗せての清々しく美しい歌唱を頑張ってみた経験などから、やはりWithin Tの世界は身についた充実感があるのだろう、ここに世界に訴えるところに到達している。まあそれこそロックの原点であろうから、そんな衝動にかられたということ事態、再びロック世界の開始という事にも通ずるのかもしれない。

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 なかなかパワフルですね、何年か前の彼らを思い出しながらヘビーなリフを楽しめるし、さらに壮大なコーラスをブレンドしたサウンドを堪能できる。シャロンも歳を超えて声も出ているし奮闘。彼らの問題意識が刺激したんでしょうね。ようやくロジャー・ウォーターズが叫んでいる社会や政治的問題、特に戦争と言うものの非人間性に彼らも目が覚めて、戦争を目の前にしての若者と政治問題に目が向いた。活動の目標も見えてきたというところでしょう。ロックの存在感が実感できたというパワーが感じられる。

 彼らの言葉は「このシングルは、戦争や混乱に飢えている人々、そしてメディアを操作し支配しようとする人々に対して書かれた曲です。この曲は、正当な理由があって戦地に行くのだと信じている兵士のことを歌っています。彼は政府に支配されたメディアによって洗脳され、自分が救世主として歓迎されると思っていましたが、結局自分は利用されたのだと悟ります。人々は彼を残虐な支配者として見るようになり、彼は自分が間違った側にいることに気づくのです。彼の人生は、そして他の多くの人々の人生も、欺かれ、破滅させられるのです」

 ロックの存在感と問題意識に一つの世界が確認できたというところで、エネルギーの蓄積発散に光がさしたというところだろうか、いずれにしても今後の健闘に期待したいところだ。

(評価)
□ 曲・演奏・コンセプト  87/100
□ 録音          87/100

(視聴)

 *

      (30:00から・・・"Wireless")

 

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2023年7月23日 (日)

ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

50有余年、ロックと共に戦ってきた男の心のアルバム

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

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(この動物(犬)の目の中に、あのジャケのプリズムが光を分散している=クリック拡大してみると解る。にくい演出です)

   ロジャー・ウォーターズがロック界きっての名作『狂気 The Dark Side of The Moon』(1973)のオマージュ作品を温めていたが、その公開に踏み切った。この10月にリリースされる。

Rwrockdownsw  コロナ・パンデミックにてすべてが抑制された中での先ごろの話題のロックダウン・セッションThe Lockdown Sessions』(2022 →)としてリリースされたアルバムに納められた曲を、それぞれの過去の曲からアコースティックな雰囲気への削ぎ落とされた曲として録音した時、アルバム『狂気』のリリース50周年が間近に迫っていた。このアルバムは、オリジナル作品へのオマージュとしてだけでなく、アルバム全体の政治的、感情的なメッセージに再び取り組むためにも、同様のリワークの適切な候補になる可能性があると思いついたのだという。

362115349_807288040768w  ウォーターズはこのところの協力者と話し合いリリースに向けて製作にかかることにしたもの。それは彼が言うように、明らかにかけがえのないオリジナルの代替品でなく、それは79歳の男性が29歳の目に映り描いた世界から50年経た今日のその間を振り返り、ウォーターズのトラウマと言うべき幼少時に戦死した父親との対峙であり、私の詩を引用するために、「私たちは最善を尽くし、彼の信頼を保ちました、私たちの父は私たちを誇りに思っていたでしょう」と言う世界である。

 こうした作品のリリースにはD.ギルモアは例のごとく反対したが(もう彼の独占欲はいいかげんにしてほしい)、ピンク・フロイドのスタート時からのメンバーのニック・メイスンは、むしろ当時からの制作目的、心情を知っているがゆえに、その内容に大きな評価をして、ウォーターズ主導であった『狂気』(曲は10曲中8曲にウォーターズがクレジットされており、歌詞は全て彼の当時の心情で書かれている)の半世紀の経った現在の世界をオーバータブして描いたアルバムのリリースに賛同した。このことはリリースに大きな力になったのだ。

 そしてこの10月CD、LP、ストリーム等でリリースされるが、ここに来て現在その中の曲"Money"のみが公開された。(↓)


 これを聴いてみて、やはりこのところウォーターズのライブ『This is not a Drill』(下左)や、彼の国連での発言(下中央)、又ドイツの反ユダヤ主義としての反発事件とそれに対抗しての歓迎キャンペーン(下右)など、相変わらず彼の歩むところ、問題が起きてはいるが、これこそ彼の歩んできた道であり、そのようなミュージシャンとしては異色の行動からの反発に対してもめげずに戦っている80歳を迎える男の生きざまには圧倒される。

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 ロック界においては、いろいろな老け方があるが、レナード・コーエンのような"老紳士の味わい"を前面に出しての世界も素晴らしいが、ウォーターズのように今も「Resist CAPITALISM」、「Resist WAR」、「Resist FASCISM」を掲げて戦い抜いている姿も、これ又人それぞれの道であり、評価に値するところだ。
 10月のニュー・アルバムの内容におそらく彼の80歳男の心情が見えてくると思われるが、これは過去の名作『狂気』とは全く別の観点で描くところのモノであって、ニック・メイスンも共感した時代を見つめてきたロック活動家の姿をここに味わいたいと思うのである。

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2023年6月23日 (金)

ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」

デストピアを描き、反戦・原爆廃止・人権擁護を訴える"フェアウェル・コンサート"

<Progressive Rock>

Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」
Complete Live Broadcast HD BluRay Edition
Live at O2 Arena, Prague, Czechia, 25th May 2023

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NTSC Full HD 1920 x 1080p Linear PCM Stereo + Dolby 5.1 Surround Total Duration 171min.

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Roger Waters – Vocals, Guitar, Bass
Gus Seyffert – Bass, Synth, Vocals
Joey Waronker – Drums
Dave Kilminster – Guitar
Jonathan Wilson – Guitar and Vocals
Jon Carin – Synth, Vocals, Guitar
Shanay Johnson – Vocals
Amanda Belair – Vocals
Robert Walter – Keyboards
Seamus Blake - Sax

 2022の北米ツアーでスタートしたピンク・フロイドの頭脳と言われるロジャー・ウォーターズの「THIS IS NOT A DRILL」が今年の欧州ツアーが追加され、既に各地を回っているが、この5月チェコ・プラハでの公演がプロショット映像でLinear PCM Stereo + Dolby5.1SurroundのBlue-Ray版が手に入る。
 これは全世界の劇場に生配信されたプラハ公演(上左)で、フルHDのプロショット映像の為圧巻である。
 このツアーは、間もなく80歳になろうとしている彼の「farewell Live 別れのライブ(第1章?)」ということもあってか各地で盛り上がっている。相変わらず斬新な方法論を示すライブ会場、ステージは会場の中央に設置され、その上には全方向からみれるスクリーン、そして例のごとく豚が宙を舞い、その上に今回は羊も会場の頭上を旋回する。

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 このライブは相変わらずの彼の政治思想の色づけが見られる為、ドイツでは騒動が起きた。まずドイツ・フランクフルトで「反ユダヤ主義」の疑いで公演がキャンセルされた。これは彼のイスラエル批判に端を発しているが、世界各地で長年にわたって行ってきた「人権を擁護する活動の一環」であって、エリック・クラプトン等の擁護する署名活動の展開があったり、ウォーターズ自身も「ロジャー・ウォーターズを非難している当局者はイスラエルの違法で不当な政策を批判する行為と反ユダヤ主義を混同するという危険な動きに加わっていることになる」と批判し、訴訟を起こし勝訴している。

Wall1w  更に行われた「ベルリン公演」が物議を醸している。そのことに関してはウォーターズは自分を「黙らせたい」ための「中傷」だとして声明を発表している。彼はベルリン公演でナチスを彷彿とさせる衣装が登場したことから警察の捜査を受けていることが明らかになっている。ベルリン公演ではロジャー・ウォーターズが第二次世界大戦を連想させるような服を着ていた上にホロコーストの犠牲者であるアンネ・フランクの名前もスクリーンに映し出されたことから物議を醸すこととなったのだ。しかし、彼のピンク・フロイド、そしてソロ活動の一連のアルバムにも見るとおり、彼の一貫した政治思想は個人の尊厳であってまずは、人間尊重の「反戦思想」である。

 ウォーターズは、「いかなるものであれ、戦争で人が死ぬことは絶対悪」であるという立場をとる。そしてそれに加え「弱きモノへの弾圧」に抵抗する。これも彼の父親の戦死の悲劇の事実が大きくのしかかっている。戦争のもたらす悲劇に比べたら「妥協による共存がはるかにマシである」ということ。彼が国連での発言に見るように西側、東側という立場でなく、ベルリンの壁崩壊時のゴルバチョフと約束したNATOの不拡大の約束を守らず、ウクライナを戦争に導くのではなくロシアと妥協させて戦争を防止しなかったバイデン大統領も「戦争犯罪者」であると糾弾する。

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 今回のライブにおいても反戦、イスラエル非難、反人権無視、原爆禁止などがテーマと上がってくるためにあらゆるところで物議を醸している。しかし、今回明白になったのは、ロジャー・ウォーターズを擁護するエリック・クラプトン、トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)、ニック・メイスン(ピンク・フロイド)ら多くの一連のミュージシャンによる、フランクフルト公演中止決定を覆すことを求める署名活動も行われ、「ミュージシャンの社会的主張」の存在意義が焦点になったが、法廷での否定は行われなかった。これは結果としてウォーターズ側が勝訴したことになっている。

 そんな話題の多い欧州ツアーは現在も進行中であるが、ピンク・フロイドの黄金時代を象徴するクリエイティブなロジャー・ウォーターズが、一夜限りで、プラハにおけるライブを"初のフェアウェル・ツアー「This Is Not A Drill」"としとて世界中の映画館で一斉に披露した。そしてこのBlu-Ray映像版はそれが原点と思われる。いずれにしても圧巻のサラウンド・サウンドの効果も大きく見ごたえ十分だ。

(Tracklist)
01. Intro 02. Comfortably Numb 03. The Happiest Days of Our Lives 04. Another Brick in the Wall (Part 2) 05. Another Brick in the Wall (Part 3) 06. The Powers That Be 07. The Bravery Of Being Out of Range 08. The Bar 09. Have a Cigar 10. Wish You Were Here 11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) 12. Sheep 13. Intermission 14. In the Flesh 15. Run Like Hell 16. Stop 17. Déjà Vu 18. Is This the Life We Really Want? 19. Money 20. Us and Them 21. Any Colour You Like 22. Brain Damage 23. Eclipse 24. Two Suns in the Sunset 25. The Bar (Reprise) 26. Outside the Wall N

 いずれにしても彼は反戦を主体とした政治思想をライブで展開することは彼の信条であり、面白いことに、このライブの冒頭に「ピンク・フロイドを愛すが、ロジャー・ウォーターズの政治思想が嫌なら、会場を出てバーにでも行って飲んでいてほしい」とアナウンスしている。

Images_20230716123201    しかし公演前半のスタートM2."Comfortably Numb"のニューバージョンの素晴らしさは、ギター・レスの仕上げでギルモアへのあてつけとともに社会不安を描き、今回のツアー仲間の女性歌手Shanay Johnson(→)のソロの歌声の響き、それは印象的で会場をうならせたのである。
 又M10. Wish You Were Here, M11. Shine On You Crazy Diamond (Parts VI-IX) でのピンク・フロイド結成当時とシド・バレットの思い出には彼の心情が歌い上げられる。今回のアルバム「アニマルズ」からはM12."Sheep"が取り上げられ弱き大衆の反乱を描く。

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 やはり後半に入ると「デストピアDystopia」に焦点は当てられ、発達した機械文明の、否定的・反人間的な側面が描き出され、典型例は反自由的な社会であり、隠れた独裁や横暴な官僚システムなどを批判し訴える。これを描く世界はM18. Is This the Life We Really Want? , M19. Money, M20. Us and Them で頂点に至る。そして最後には、M24. Two Suns in the Sunsetでは原爆の恐ろしさを描いて幕を閉じる。

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 ウォーターズの人生においては、彼のトラウマは「人生一度も話が出来なかった戦死した父親」であって、しかも祖父も同様であったことからの全て「反戦」が基調となって発展している。もう80歳になろうとしている今回の彼の「Farewell Concert」においても一貫してその線は崩れていないし訴え続けている。又"The Bar"の新曲も披露している。

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         (ツアー・メンバー)

 相変わらず、ウォーターズ・ツアー・メンバー(上)のDave Kilminster (Guitar)、Jonathan Wilson (Guitar and Vocals)そしてJon Carin (Synth, Vocals, Guitar)の演奏技術の高さはお見事と言いたい。見ごたえのあるライブだ。

(評価)
□ 曲・演奏・舞台装置 90/100
□ 録音・映像     90/100
(視聴)

*

 

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2023年5月 4日 (木)

イメルダ・メイ Imelda May 「11 Past the Hour」


愛を通して人間の真相にも迫らんとするイメルダ・メイの冒険性の結晶
(変身第2弾)

<Rock, Jazz, Blues>

Imelda May 「11 Past the Hour」
DeccaRecords / Import / B0033471-02 / 2021

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Back Musicians : Tim Bran(p,g,b), Charlotte Hatherley(g), Cameron Blackwood(k,Prog),Davide Rossi(Str), Charlie Jones(p,b),Matt Racher(d)

 どうもこのところ女性ジャズ・ヴォーカルもののリリースが量と中身が若干低調、そんな中で充実感と迫力でお気に入りだつたアルバムはやはり遅まきながら購入に至ったのでここに取り上げる。

Imelda_may_2018w  これは英国(と、言ってもアイルランド)のSSWのイメルダ・メイImelda Mayの6枚目のスタジオアルバムである。2021年4月のリリースで既に2年の経過があるが最近はストリーミングにより聴いていた。しかしやっぱり手元にCDとして置いておきたい思う濃いアルバムであり、意外に取り上げられていないのでここに紹介する。
 彼女に関しては、ここで何度か話をしてきたが、ジャンルはジャズというよりはロックだ。しかしジャズとして聴ける曲も多く、とにかく歌がうまい。私としては"アイルランドの美空ひばり"と名付けて以前から注目してきた。近年ではジェフ・ベックとの共演の"Cry me a River","Lilac wine"等が出色。そして、出産、離婚後の変身が凄くて前作『LIFE.LOVE.FRESH.BLOOD』(2017)でビックリ、その後のライブ活動も凄く、このアルバムも変身後の2作目で注目度も高かった。

  全曲彼女が共同プロデューサーであるティム・ブランとストリングス・アレンジャーのダヴィデ・ロッシらと共作しており、作詞も彼女自身による。そしてロニー・ウッド、ノエル・ギャラガー、マイルズ・ケインといったミュージシャンに加え、女性フェミニスト思想家、政治活動家ジーナ・マーティンなど驚きの顔ぶれが参加する。彼らをフィチャーした曲では、敢えてロックンロールを展開し問題提議しているのだ。
 バック・ミュージシャンは今盛んな多くが参加、曲により変化を付けているのも彼女のしたたかな冒険性である(末尾クレジット参照)。

 アイルランドにルーツを持つことの意義、かってあの反骨の歌手シネイド・オコナーをも仲良く良い意味で圧倒した彼女のパワーは健在だ。ここにはかってのバンドの拘束から切り放たれた彼女自身そのものの真の姿が浮き彫りされているところに魅力がある。この充実感高いアルバムは、自分の真の姿やアイルランドのルーツ、物語を伝え、魂を込めた愛の歌を展開いる。

(Tracklist)

01. 11 Past the Hour
02. Breathe
03. Made to Love(feat.Ronnie Wood etc)
04. Different Kinds of Love
05. Diamonds
06. Don't Let Me Stand On My Own(feat.Niall McNamee)
07. What We Did in the Dark(feat.Miles Kane)
08. Can't Say
09. Just One Kiss(with Noel Gallagher, feat.Ronnie Wood)
10. Solace
11. Never Look Back

 私はM1."11 Past the Hour"のタイトル曲(UKのSSWであるPedro Vitoとの共作)が大歓迎だ。ロカビリー色の欠如で彼女のファンからは異論があっただろうが、アダルトコンテンポラリーの世界は確実に魅力を倍増した。パワフルなゴスペル調(描くは失った人への思い)の曲で、Imelda Mayの圧倒的なヴォーカルが際立つ。ダークでちょっと暑いバラードだが、彼女の声がかっては考えられない重さでのしかかってくる。中盤からのきしむようなギターがこの曲の一つの焦点で悲しみと不安を描く。
 この曲は、失った世界から新しく旅する自分を赤裸々に訴えて、愛する人を失った人々に向けた慰めと希望を与える世界だ。背景には、社会から疎外されているコミュニティや制度的不平等に取り組む組織を支援することを目的にアイルランド政府の立ち上げた「Rethink Ireland」キャンペーンのために、彼女が書いた「You Don’t Get To Be Racist and Irish」という詩が、世界的に注目を集めた状況を思い出すと単純でない諸々が見えてくる。 重大なものを失った人々にその悲しみと孤独を共有し、同時に、時間が癒しの力を持つこと。しかし時間が過ぎ去っても、人間的思い出を忘れないでいることの重要性を訴えている。とにかく強い歌声と、力強く美しいメロディが圧巻。彼女の音楽性は、ロックやブルースをベースにしながらも、ジャズやソウルなどの要素を取り入れた独自のサウンドが結実している。

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ここに彼女の言葉を記す・・・・
「“11 Past the Hour”は私の真実です。私は常に意味を持って、心を込めて詩を書いています。それぞれの特別な瞬間に、自分の物語を介して人々と繋がることこそが私が書く理由であり、だからこそ、たとえほんのひと時でも、人々と繋がれることを願っているのです。私たちが折にふれて感じるものを、言葉や音楽にすることができるのだと思いたい。私たちは皆、笑い、歌い、愛し、泣き、踊り、キスをし、他人を大切に思っています。私たちは皆、欲望、怒り、喜び、心配、悲しみ、希望を経験します。時には静かに全てを抱え込み、時には踊りながら吹かれる風の中に全てを投げ出すこともありますが、一つだけ確かなことは、私たちは共にこの人生を歩んでいるということ。それぞれの歌は私の人生の瞬間です。それぞれの人生は時代の一瞬。一分一分が大切なんです」

その他一連の曲は・・・
M2."Breathe"
M3."Made To Love"(LGBTQ) とエネルギッシュでポップな曲が続く(Ronnie Woodをフィーチャー)
M4."Different Kinds of Love" 情緒豊かなヴォーカル
M5."Diamonds" ピアノのバックに叙情的スローバラード、深く美しき感謝の訴え(真純なる愛に感謝)
M6."Don't Let Me Stand On My Own" Niall McNameeとのデュオ、民族的、牧歌的世界
m7."What We Did in the Dark " Miles Kane とのデュオ。アップ・テンポで典型的ロックだがどこか切なさが・・・
M8." Can't Say" 説得力の優しさあふれるバラード。彼女の訴えの歌い上げが聴き応え十分。歌詞は重く印象的な曲。
M9." Just One Kiss" 典型的な懐かしロック(Ronnie Woodをフューチャー)
M10."Solace" かなり品格のあるバラード、彼女の美声に包まれる。人生の光明をみつけて・・・
M11."Never Look Back" 祈りに近い訴え

  このアルバムは、イメルダ・メイが、U2、ルー・リード、シネイド・オコナー、ロバート・プラント、ヴァン・モリソン、ジャック・セイボレッティ、エルヴィス・コステロら、各種そうそうたるアーティストたちとデュエットを果たし成功してきたこと、近年ではジェフ・ベック、ジェフ・ゴールドブラム、ロニー・ウッドらのアルバムやライヴ・ツアーにも参加した。こんな経験から。幅広い音楽的影響を反映した、ひとつの折衷主義作品となった。それは想像するに、彼女は、過去のロックンロール一途では国際的発展性に割り込むのはむずしいと判断したこともあり、又彼女自身のブルース、ジャズ、ラテン音楽など、多様なジャンルの要素を持ち合わせたことの創造結果かと思う。
 そしてアイルランドにルーツを持つ複雑な社会的経験が重なっての彼女のSSWとしての能力がこの重厚な内容のあるアルバムが作り上げられたと思う。ヴォーカル・アルバムとしはその中身の重さに、そして曲の多彩さに感動するアルバムであった。
 最近、女性ヴォーカルものが低調であるので、日本ではどうも一般的でないアルバムでありながら中身の濃いところを紹介した。

(参照 Credit)  クリック拡大

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(評価)
□  曲・演奏・歌  90/100
□  録音      87/100

(試聴)

*

 

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