JAZZ

2020年4月 6日 (月)

キアラ・パンカルディChiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」

やはりパンカルディのヴォーカルはハイレベルであるが異色
~~注目のアレッサンドロ・ガラティとのデュオ

<Jazz>

Chiara Pancaldi & Alessandro Galati 「The Cole Porter Songbook」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1086 / 2020

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Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocalヴォーカル)
Alessandro Galati アレッサンドロ・ガラティ(piano ピアノ)

 このところジャズ・シンガーとしての話題の豊富な個性派キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ。つい先日アルバム『PRECIOUS』(CR73497/2020)のリリースがあった)と、最近、寺島レコードからリリースが多い私の注目の叙情派でありながらアヴァンギャルドな面も見せるキャリア十分のピアニスト:アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリアのフィレンツェ生まれ)のデュオ作品。両個性派同士で実は注目していたアルバム。
  主題はアルバム・タイトルどおりのコール・ポーターの作品に迫ろうとしたもの。もともとキアラ・パンカルディの唄は独特の世界があって、どうも100%万歳して受け入れている訳ではないため、このアレッサンドロ・ガラティのセンスで如何に変貌して迫ってくれるかが楽しみのポイントでもあった。

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(Tracklist)

1. Easy To Love
2. Just One Of Those Things
3. Night And Day
4. So In Love
5. All Of You
6. My Heart Belongs To Daddy
7. It's Delovely
8. Let's Do It
9. Dream Dancing

Ag5x  デュオとは言っても、やはりヴォーカルの占める位置は大きいですね。私にしてはガラティのピアノにそって優しく歌ってくれる方が期待していたんですが、なになにパンカルディの独特の節回しによっての彼女のヴォーカルの独壇場にも近い世界が造られている。パンカルディの声の質は中高音のつややかさはなかなかのものと言えるものでこれには全く不満は無いが、なんといってもハートフルでありテンダリーでありながらその節回しと音程は変化した異質であってその歌は独特ですね。先のアルバムとその点は全く変わっていない。この世界にぞっこん惚れ込むという人が居るとは思うが、どうも素人向けとは言えず、万人に受けるという点ではちょっと疑問にも思っている。
 イタリアのミュージシャンはあらゆる分野に多く活躍しているが、この世界においてはパンカルディは独特である。まさか私自身のみがそう感ずるのだろうか、ラテナーノーツを担当している寺島靖国も声の質の良さを認めては居るが、あまり異質性には語っていない。いずれにしても彼女の唄はやっぱり上手いというのは当たっているのだろうと思う。とにかく上手い・・・しかし私は魅力については、もう少し馴染みやすい世界であってほしいと思うのである。いずれにせよ残念ながら万人向きではない。しかしそれでも丁寧にじっくりと語りかけてくる様は出色であり魅力も大いにある。更にリズムの展開にも彼女の魅力的なパンチ力のセンスが生きているという処も事実なのだ。

 そして今回のように、コール・ポーターの曲を何故選んだのかと言うことでは、ガティもパンカルディも曲の良さと言うことに一致していた。そしてM4."So in Love"は彼女の歌がいいですね、ムードが最高。続くM5."My Heart Belongs to Daddy"のガラティのピアノは美しい。
 このアルバムでは、私の期待に反してガラティは「伴奏者」に徹していた。彼の味のあるメロディーの表現は、ヴォーカルを生かす為に仕組まれたピアノの味をしっかり作り上げているのだ。

 私の個人的評価はまあ質の高さは認めるが、受け入れやすさや聴きやすさと言う点ではちょっと低くなった。こうゆうのはイタリア本国ではどんな評価か知りたいところだ。

(評価)

□   編曲・歌・演奏  ★★★★☆ 85/100
□ 録音       ★★★★☆ 85/100

(視聴)

このアルバム関係はまだ見当たらないので・・・過去のモノを
Cole Porter "So in Love" (これは惚れ惚れしますね)

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2020年4月 1日 (水)

浅川太平Taihei Asakawaピアノ・ソロ・アルバム 「Waltz for Debby」

空間を描く静寂にして深遠な世界
~ビル・エバンスの世界に独自の美意識を

<Jazz>

Taihei Asakawa 「Waltz for Debby」
Cortez Sound / JPN / CSJ0008 / 2019

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Piano : Taihei Asakawa

Executive Producer: Teruhiko Ito / Recorded & Mixed & Mastered by Ken Tadokoro / Recorded on May 19 2018 at Jazz Room Cortez / Photo by Tatsuo Minami Mikio Tashiro

 最近知ることとなったジャズ・ピアニストの浅川太平のソロピアノのアルバム。2枚組で、誰もが愛するビル・エバンスの名盤『Waltz for Debby』と、同日録音された『Sunday at the Village Vanguard』の2枚からの選曲により構成されている形をとっている。
81wyqczaaiw  彼は1977年生まれということで、40歳代になっての目下脂がのってきたと言える歳で期待度は高い。私にとっては過去の彼のアルバムには接してこなかったのだが、このアルバムのビル・エバンスの変化に驚きを隠せず、さっそくこのソロ・スタイルを演ずるところは何処に ? と、参考までに彼のピアノ・トリオ盤の『Touch of Winter』(DMCD26)(→)を取り寄せてみたという経過であるが、それはそれとしてこの『Waltz for Debby』を検証してみよう。
 
(Tracklist) 

DISC1
01.My Foolish Heart〔13:34〕
02.Waltz for Debby〔10:02〕
03.Detour Ahead〔7:06〕
04.My Romance〔11:12〕
05.Some Other Time〔11:51〕

DISC2
01.Milestones〔7:15〕
02.Porgy〔9:40〕
03.Gloria's Step〔4:18〕
04.My Man's Gone Now〔7:03〕
05.Solar〔3:42〕
06.Alice in Wonderland〔5:09〕
07.All of You〔8:06〕
08.Jade Visions〔4:29〕

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  さて、ビル・エバンスに迫ると言うことで、それだけでもそんな世界を目指しているのか想像が付くところだが、どんなアレンジの世界かと興味津々。しかし結果は想い以上に、簡潔に言うと緊張感と静寂の世界にピアノによる描かれる空間に響く繊細な音に驚きを隠せなかった。
 まず、DISC1"My Foolish Heart", "Waltz for Debby"の冴えたる代表曲、ビル・エバンスの世界を日本的(?)にリラックスして聴きやすく再現してくれるのかと思いきや、はっきり言うとそんな生やさしい世界では無い。気楽に聴こうと居直ってみたが、そこに描かれる情景は、双方10分を超える演奏で、静寂にして一音一音意味の込めた音には美しさという処をある意味で超えたむしろ厳しさも感ずるところであり、しかしそう言っても優しさの美しさはちゃんと散りばめらていて、その世界はエバンスと違った浅川自身の個性ある変化に圧倒されるのである。
  そして"My Romance"も、ここまで深淵の美といったところに演じられるのも聴きどころ。

 DISC2になって、ややリラックスを誘導してくれるところを演じてくれている。そんな意味では、特に"Porgy""Alice in Wonderland"では、ゆったりした気持ちで美しく優雅に聴けるところである。

 ちょっと日本版エバンスものの演奏というところで安易に構えていたのだが、最初から彼の個性をしっかり提示しての哲学的な、思想的なところを感じさせる演奏でビックリしたわけだ。しかし何回と繰り返し聴くに付け、三度目ぐらいからかなりその世界にある美しさが見えてきてぐっと親しみがわいてくると言うアルバムであった。

Asakawa20191 浅川 太平 (あさかわ たいへい)略歴 (ネット記事から)

1977年札幌出身。
父が札幌のライブハウス「銀巴里」(~2012)を経営し、母が歌手であったため、幼いころはシャンソンをよく聴く。3才よりクラシックピアノを始める。 1996年、洗足学園短期大学でジャズを専攻し、卒業後バークリー音楽大学より奨学金つきの編入資格を得るも独学の道を選ぶ。 2004年、横浜JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション、ベストプレイヤー賞受賞。
2007年に1stアルバム『Taihei Asakawa』(Roving Spirits)、2011年に2ndアルバム『Catastrophe in Jazz』(Roving Spirits)、2013年に3rdアルバム『Touch of Winter』(D-musica)、2018年に初のスタンダードでのライブ録音となる4thアルバム『Waltz for Debby』(Cortez Sound)をそれぞれリリース。
2019年、日本とヨーロッパを中心に国際的な活動を続けているドラマー池長一美とデュオユニットNordNoteを結成し、2020年デュオアルバム『NordNote』(Time Machine Records TMCD-1020)をリリース。


(評価)
□ 編曲・演奏   ★★★★★☆   90/100
□ 録音      ★★★★☆   80/100

 

(視聴)               "My Foolish Heart"

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2020年3月23日 (月)

ペトラ・リネッカーpetra linecker 「Warm Embrace」

温かみの世界を狙った・・女性ヴォーカルとピアノとのデュオによる秀悦作品

<Jazz>

Petra Linecker & Martin Gasselsberger 「Warm Embrace」
ATS Records / Eu / / 2019

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Petra Linecker (vo)
Martin Gasselsberger (p)

 世界の美女狩りを得意とする我が友人から紹介のあったアルバムである。 
 オーストリアの女性ヴォーカリスト、ペトラ・リネッカーとピアニスト、マーティン・ガッセルスベルガーのデュオ作品。私にとっては全くの初物であるが、彼女は既にオーストリアではベテランであるようだ。
 とにかく"リネッカーの美しく透明感に富みながら深みと情感あふれたヴォーカル"がどうも売り物のようで、ピアノとのデュオでたっぷり聴くことが出来る。アルバム・ジャケのデザインからして並の世界でなさそうな雰囲気が伝わってくる。

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(Tracklist)
Image2_20200322094201 1. Warm Embrace *
2. Over the Rainbow
3. Lullaby of Birdland
4. The Nearness of you
5. I can't stand the Rain
6. Imagine
7. Georgia on my Mind
8. Honeysuckle Rose
9. In Heaven's Spaces *
10. On a clear Day *
11. Everything must change
12. Wrong way round *
13. Anxious Moments *

 収録曲は上のようで、*印がオリジナル。M1."Warm Embrace "は彼女自身の曲で、残るはこの二人による共作となっている。そしてその他はかなり広いジャンルからの選曲だ。
 インティメイトと表現される世界で、冒頭M1.から静かなピアノをバックに、優しい彼女のヴォーカルが響く。どうも歌詞をしっかり理解しないといけなそうな世界だ。
 M4."The Nearness of you"を聴いても解るのだが、このマーチン・ガッセルスベルガーのピアノが又クラシックに裏打ちされたと思われる知的でクラシカルな響きが秀悦である。
2176454_xxlw_20200323204101  一方M5."I can't stand the Rain "となると一変してブルージーなジャズをしっかり演じているところもあってなかなかキャリアーのあるシンガーであることがわかり、そしておなじみのM6. "Imagine "、M7."Georgia on my Mind"は、ぐっとしっとりムードで歌い上げ、心に響いてくるところは芸達者。
 リズムカルなM8."Honeysuckle Rose "に続いて、二人の共作M9."In Heaven's Spaces "は一変してフォーキーにしてトラディショナルなムードの曲で、ヴォーカルやソロピアノも美しく、この世界に安らぎを求めたような普遍性の世界。
 更にM11."Everything must change "はこのデュオの世界観を凝縮したような尊大なる思想が感じられる素晴らしい演奏。そして二人共作のM13."Anxious Moments"の二人のヴォーカル・デュオも入ったトラディッショナルな世界で幕を閉じる。

 なかなかジャズ世界としては珍しいインティメイトな心洗われる世界を構築していて好感の持てるアルバムとして、お勧めである。

(評価)
□ 曲・歌・演奏  ★★★★★☆  90/100
□ 録音      ★★★★☆   80/100

(視聴)

 
 

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2020年3月14日 (土)

シーネ・エイ Sinne Eeg 「WE'VE JUST BEGUN」

ビックバンドをバックに歌い上げる一世代前のジャズ

<Jazz>

SINNE EEG & THE DANISH RADIO BIG BAND 「WE'VE JUST BEGUN」
BFM jazz / Denmark / BFM JAZZ 7621834675 2 / 2020 

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Sinne Eeg (vocal)

The Danish Radio Big Band
Nikolai Bogelund (conductor)
Jesper Riis (arrangement on 02, 03, 06, 07, 10)
Peter Jensen (arrangement on 01, 04, 05)
Roger Neumann (arrangement on 08, 09)

録音 : 2019年1月28-31日、於:デンマーク-コペンハーゲンのDR Koncerthuset Studio 3

  ここでも何回か取り上げて来たシーネ・エイSinne Eeg(1977年デンマークのレムヴィーLemvig生まれ)のニューアルバム。北欧ジャズ・シンガーとしては日本でも来日したりの人気の彼女だ。
A93785413985582682810jpeg  今回は1964年結成の50年の歴史あるデンマークの名門楽団The Danish Radio Big Band(このバンドは何枚かのアルバムをリリースしている)と組んでのアルバム。昔ながらのジャズの一形態のビック・バンドをバックにしてのもので、私には若干の抵抗があるだが、それでも手に入れてみたもの。
  そしてこのアルバムはどのような関係があったか不明だが、彼女が"My dear friend"と表している一昨年亡くなったアメリカのサックス奏者のロジャー・ニューマンRoger Neumann(1941-2018 →)に捧げている。

(Tracklist)

01. We've Just Begun
02. Like A Song
03. Those Ordinary Things
04. Talking To Myself
05. Hvorfor Er Lykken Sa Lunefuld
06. My Favorite Things
07. Samba Em Comum
08. Detour Ahead
09. Comes Love
10. To A New Day

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 冒頭からビック・バンドが派手に演じて、ちょっと尻込み。
   M2."Like A Song "、M3."Those Ordinary Things"になって彼女のヴォーカルを中心にバックはパーカッションの音もきこえる小コンポ風の演奏になってほっとして聴くのである。相変わらず歌詞をしっかり歌い込んでいてその点は好感が持てる。
 M4." Talking To Myself "は軽快だが、やはりバックは押さえられた演奏でソロに近いギターも入り、彼女のヴォーカル・アルバムとしての形を十分意識しての曲仕上げ。
 M5."Hvorfor Er Lykken Sa Lunefuld "は朗々と歌い上げたり、リズムカルな流れもあったり、彼女の中域の味のある歌声が優しく聴け、更にスキャット風のところもあり味が濃い。
 M6."My Favorite Things " 聴き慣れた曲をシーネ節で。
   M7."Samba Em Comum" このアルバムでは珍しいサンバ曲。まあ何でも歌いますと言ったスタイル。
   M8." Detour Ahead" バラード調でしっとり。
 M9."Comes Love " 彼女らしい歌い込んでの聴かせるタイプ。こうゆうのが彼女の特徴で悪くないです。
  全体の印象は、ロジャー・ニューマンに捧げたということなのか、やはり一時代前のアメリカン・ジャズの世界、それはM10."To A New Day"に特徴的だが、大きめのキャバレー(昔懐かし)での豪勢にジャズを味わいたいという人にはそれなりに良いのでしょう。私にとってはどうでもいいですが。

 彼女のヴォーカルも低音を生かしたり、パンチを効かしたり、結構ブルージーなところもあったりと芸達者である。しかしジャズって考えてみれは幅広いですね、未だにこの昔懐かし世界も健在なんだと、ふと思うのである。そしてまあ聴いてみるのも悪くないでしょう。

(評価)
□ 演奏・歌  ★★★★☆  80/100
□ 録音    ★★★★☆  80/100

(試聴)

 

* *

(参考) 全くこのアルバムとは別のピアノ・トリオとのライブ映像、実はこのタイプの方が彼女は良いのですが・・・↓

 

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2020年3月10日 (火)

カレン・ソウザ Karen Souza 「LANGUAGE OF LOVE 愛の囁き」

オリジナル曲を中心に・・相変わらずのセクシー・ヴォイス

<Jazz>
KAREN SOUZA 「LANGUAGE OF LOVE」
JVCCKENWOOD / JPN / VICJ-61784 / 2020

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KAREN SOUZA カレン・ソウサ (VOCAL)

  アルゼンチン ブエノスアイレス出身、ジャズをベースととして、セクシー度満点で歌い上げることで話題になってはや9年、ジャズ・シンガー=カレン・ソウサの約2年ぶりとなる通算でもう5作目となる新作アルバムの登場。こうしたアルバムはなんだかんだと言っても買ってしまうところが哀しい性(さが)といったところ。
 今アルバムは、オリジナル曲10曲を中心していて意気込みのわかるところと、レオン・ラッセルの「マスカレード」、レナルド・コーエン「哀しみのダンス」や、「枯葉」などのスタンダード・ナンバーも編曲をこらして収録している。

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(Tracklist)

1 マスカレード THIS MASQUERADE
2 エヴリバディ・ノウズ EVERYBODY KNOWS
3 ラヴズ・ノット・フェア LOVE'S NOT FAIR
4 愛の囁き LANGUAGE OF LOVE
5 レス・イズ・モア LESS IS MORE
6 サムワン・ブロート・ミー・ワイン SOMEONE BROUGHT ME WINE
7 ゼア・ユー・アー(セカンド・チャンス)THERE YOU ARE (SECOND CHANCE)
8 リズム・アンド・ブルース RHYTHM AND BLUES
9 イッツ・ゴナ・ハプン・トゥナイト IT'S GONNA HAPPEN TONIGHT
10 イット・ウィル・オール・ワーク・アウト IT WILL ALL WORK OUT
11 枯葉/哀しみのダンス1AUTUMN LEAVES / DANCE ME TILL THE END OF LOVE
(日本盤ボーナス・トラック)
12 ウェイティング・フォー・ア・トレイン WAITING FOR A TRAIN

Press_conference_of_karenw   ジャズ、女性ヴォーカルとなると、やっぱりこのセクシー・ムードのパターンは無くなりませんね。近年では最もその最右翼の彼女のアルバムだけあって、スリーブ・デザインもその世界だ。
 そしてその中身、スタートのレオン・ラッセルのM1."THIS MASQUERADE"からストリングスの入った豪勢なバック演奏だ。そしてあの物憂いいつもの低音を生かした彼女の歌声が響く。そんな意味ではM9." IT'S GONNA HAPPEN TONIGHT"も同様だ。
 二曲目からはずーとオリジナル曲が続くが、やや軽快なM2."EVERYBODY KNOWS"でもセクシーな歌い方はお見事と言いたいところだ。
  M4." 愛の囁き LANGUAGE OF LOVE"は何となくどこかで聴いたことがあるメロディーでなかなかいいです、途中ちょっと変調するところがニクイ。
 しかし曲は多彩です、M5." LESS IS MORE"はピアノをバックにバラード調で少々暗いが、M6."SOMEONE BROUGHT ME WINE"は、一変してサンバ風となるといった具合。
 M11."AUTUMN LEAVES / DANCE ME TILL THE END OF LOVE "はピアノだけをバックに彼女のしっとり歌い上げるところが聴け、この2曲を組み合わせたのもにくいところ。これがアルバムの締めくくりになっている。まあファンにしてはたまらないところだろう。

 こうして聴いてみると、今やジャズ・ヴォーカル界のベテランの雰囲気すら感ずる世界を構築している。ニューヨークが主たる活躍の場としている彼女も、ジャズ・ヴォーカル世界をリードした存在になっていることは事実であり益々の健闘を期待したいところだ。

(評価)
▢ 曲・歌・演奏 :    ★★★★★☆ 90/100
▢ 録音              :  ★★★★★☆ 90/100

(試聴)

 

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2020年3月 5日 (木)

寺村容子YOKO TERAMURA & 山中千尋 CHIHIRO YAMANAKAのピアノ・トリオ対決

日本女性ピアニスト・ジャズにちょっと耳を
まさに対照的なジャズ・ピアノ・トリオ世界

 

 日本女性ジャズ・ピアニストの寺村容子と山中千尋を取り上げる。たまたま昨年ニュー・アルバムを両者リリースしていて、ただし私はここで取り上げてこなかったのだが、なんと今年の「ジャズ批評」214号のジャズ・オーディオ・ディスク大賞に銀賞と7位に入っていたので、ちょっと感想を書いておきたくなった。

 

<Jazz>
YOKO TERAMURA TRIO 「GRACEFUL TOUCH」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1084 / 2019

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寺村容子(ピアノ)
新岡 誠(ベース)
鳥山 悠(ドラムス)

Yokot (Tracklist)

1.No Problem 危険な関係のブルース (Duke Jordan)
2.Last Tango In Paris ラスト・タンゴ・イン・パリ (Gato Barbieri)
3.These Foolish Things ジーズ・フーリッシュ・シングス (Jack Strachey)
4.Who Wants To Live Forever リヴ・フォーエヴァー (Brian Harold May)
5.Graceful Touch グレイスフル・タッチ (Tord Gustavsen)
6.Children's Crusade チルドレンズ・クルセイド (Sting)
7.You Must Believe In Spring ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング (Michel Legrand)
8.Bay Walk ベイ・ウォーク (Yoko Teramura)
9.Left Alone レフト・アローン (Mal Waldron)
10.Wish Of The Ancients いにしえの願い (Yoko Teramura)

 寺島レコードが気合いを入れているどちらかというと美旋律ピアノを演ずる寺島容子の2019年リリース新作だ。私の場合どちらかというと録音が話題になったアルバム『TERAMURA YOKO MOODS』(TYR-1026)以来である。
  アルバム・タイトルが、あのトルド・グスタフセンの名曲"Graceful Touch"で、彼女はここでその曲のカヴァーを披露している。こんなところからも目指している方向が解ると言うところだが、なにせトルド・グスタフセンは哲学的深遠な世界に踏み込むという強者、これを描くにはまだ荷が重いと言わざるを得ない。このアルバムでは一番の聴きどころであり、しかし今後に期待で目指すことは悪くない。

 おそらくプロデューサー寺島靖国の方向性を描こうとしたところは、その録音からも解るところだ。なんと同一音源に二種類のマスタリングを行って、二枚組にしている。一枚は通常と思われるトリオのエネルギー・バランスで、もう一枚はピアノをやや引っ込めてドラムス、とベースが少し表に出てくる。私は後の方のタイプが良かったのですが、演奏よりもこんなオーディオ的遊びが出来る楽しいアルバムである。
 いずれにしてもバラード系演奏を聴かせてくれて私好みであるのだが、ならばもう少し情感のあるピアノタッチの強弱による描く世界が欲しいと思うところであった。まあ彼女もこれからなんでしょうね。録音にもよるのかも知れないが、音ばかりが表に訴えてくるアルバム。

                  - - - - - - - - -

<Jazz>
Chiro Yamanaka 「Del Tramonto」
UNIVERSAL MUSIC / JPN / UCCJ-2167 / 2019

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Chihiro Yamanaka : Piano, FenderRhodes, Hammond B-3 Organ

Yoshi Waki: Bass
John Davis: Drums
Vincente Archer: Bass
Damion Reid:Drums

録音年 2019年5月
録音場所 Boomtown Studio Brooklyn

Profile_3w (Tracklist)
1 ジェンナリーノ Gennarino (Chihiro Yamanaka)
2 パソリーニ Pasolini (Aldo Romano)
3 シンキング・オブ・ユー Thinking Of You (Chihiro Yamanaka)
4 ネヴァー Never (Chihiro Yamanaka)
5 チェロキー Cherokee (Ray Noble)
6 スイート・ラヴ・オブ・マイン Sweet Love Of Mine (Woody Shaw)
7 ルッキング・アップ Looking up (Micheal Petrucciani)
8 ブルー・マイナー Blue Minor (Sonny Clark)
9 ソリチュード〜C・ジャム・ブルーズ Solitude〜C jam blues (Chihiro Yamanaka / Duke Ellington)
10 プリマ・デル・トラモント Prima Del Tramonto (Chihiro Yamanaka)

 このアルバムは数多い山中千尋ピアノ・ジャズの最新作である。ブルーノート80周年記念作としての位置にもある。そして中身はソニー・クラークなどブルーノートの名曲をカバーし、フランスの障害を克服した最高のジャズ・ピアニストと評されていたミシェル・ペトルチアーニの没後20年にも焦点を合わせた作品を収録している。しかしそれでも主たるは彼女自身のオリジナル5曲が占めている。 リズムセクションは、ニューヨーク・トリオのレギュラーであるヨシ・ワキとジョン・デイビス。そして、ロバート・グラスパー・トリオのリズムセクションであるヴィセンテ・アーチャーとダミオン・リードという2組のリズムセクションとの共演もの。

 M1." Gennarino "は軽快なタッチでスタートし、M3."Thinking Of You"彼女の特技である転がるような打鍵さばきが惚れ惚れするほど見事である。
 M5."Cherokee"は、ドラムソロから始まり、疾走するベース、そして続くピアノの早引き、この流れはピアノ・トリオの醍醐味を地でゆき圧巻。確かに彼女の技量はハイレベル。
 M10."Prima Del Tramonto"はバラード調で聴きやすい流れ、しかしドラムスは疾走しており、後半は変調するという一筋縄ではゆかない。

 これは彼女の技量の高さをいやでも迫ってくるアルバムでジャズ古典的スタイルでの超絶技巧はナンバー1だ。しかし面白みという点ではやや欠けている。ニューヨークを拠点に活躍し、ボストンのバークリー大学の助教授という実力者だからこそ、彼女はもう一歩力まず余裕を持って新しい現代ジャズ手法に迫ってくれると面白いのだがと思う。又録音も一世代前の標準型で面白くない、寺島レコードのようなサウンドに挑戦があればアルバムの価値も上がろうとゆうところ。

(評価)

         (寺村容子)         (山中千尋)

□ 曲・演奏    75/100                    90/100
□ 録音      90/100              75/100

 

█ 日本女性ピアニストの二人のアルバムを並べてみたが、とにかく対照的。技量は圧倒的に山中千尋、アルバム作りは寺村容子というか寺島レコードに、というところで面白い対決となった。「ジャズ批評」の"ジャズオーディオ・ディスク大賞2019"の「インストゥルメンタル部門」では、寺村容子が銀賞、山中千尋が7位というところであった。やっぱりこの賞は演奏より録音にウェイトがあるのかなと、又は演奏の技量と深さより聴きやすさを選んだのかと思わせる、そんな結果であったが、これからも両者の奮闘に期待したい。

(試聴)

寺村容子

 

*

山中千尋

 

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2020年3月 1日 (日)

エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「COMMON VIEW」

オリジナル曲による創意の結晶といった流れ

<Jazz>

Enrico Pieranunzi  Jesper Somsen  Jorge Rossy
「COMMON VIEW」
CHALLENGE RECORDS / AUSTRIA / CR73459 / 2020

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Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Jasper Somsen イェスパー・サムセン (double bass)
Jorge Rossy ホルヘ・ロッシー (drums)
Recorded at MotorMusic, Mechelen(Belgium)
Recording dates : September 10 & 11,2018

 はっきり言ってこのアルバムも難物です。これは2018年の録音モノだが、エンリコ・ピェラヌンツィは近年この傾向にあることは解っての上でのアプローチであった。とにかくヨーロッパ叙情派ピアノの代名詞的彼であるが(1949年、ローマ生まれ)、このアルバムは極めて端麗なピアノ・タッチが聴かれるもハードにして軽快な転回をみせたり、美旋律を奏でるので無くトリオのそれぞれのアクセントを許容し協調してゆく妙を描く世界に専念していての曲作り。安易な叙情的美を求めるとしっぺ返しが来る。

 

Enricopieranunzi2w (Tracklist)

01. Falling From The Sky (JS)
02. Silk Threads  (JS)
03. Sofa  (JR)
04. Turn In The Path  (EP)
05. Love Waiting Endlessly (JS) 
06. Perspectives  (EP)
07. Instant Reveal I *
08. Who Knows About Tomorrow  (JR)
09. Instant Reveal II * 
10. Recuerdo  (JR)
11. Song For An August Evening (EP)

(JS):Jasper Somsen、(JR):Jorge Rossy 、(EP):Enrico Pieranunzi 、*印:三者

 それにしてもこのトリオのそれぞれの演奏の切れ味は見事と言いたい。けっしてピアノを前面に出してのベース、ドラムスが単なるリズム隊としてのサポートという単純なトリオ演奏では無い。収録曲は彼らがそれぞれ3曲づつ提供し、そして三者による2曲のオリジナル計11曲である。単なるカヴァーという世界で無いので、それは彼らの意志の見せ処としての曲構成展開が演じられているところにある。

 とにかく私にとってようやくゆったり許容できたのは、M2."Silk Threads "、M11."Song For An August Evening "の2曲くらいであった。多分こうゆうアルバムは聴いたことのある旋律が顔を出してホッとさせてくれるというものでないので、恐らく何回と聴いていく内に何かが見えてくるのであろうという世界なのだ。
 冒頭のM1." Falling From The Sky "は三者のお披露目、コラボレーションの妙。M2."Silk Threads "はがらっと変わってゆったりした世界。M3.Sofa""、M4."Turn In The Path"はコンテンポラリーにして実験音楽的ニュアンス。
 M7."Instant Reveal I"はピアノの音の美しさが演じられるも、曲の展開が異様で緊張感を誘う。そしてM9."Instant Reveal II"に繋かがり、三者の交錯が興味をひく。

Trio1

 近年のエンリコ・ピエラヌンツィの単なる耽美性から一歩も二歩も歩んだ彼の創意の意欲から生まれる世界だ。それはトリオのコラボレーションを楽しむ瞑想感覚のあるミステリアスにしてスリリングな一つの世界なのである。
 私からすると、とくにM11."Song For An August Evening "が往年のエンリコ・ピエラヌンティの演奏を思い起こさせて、救われた感じを持ったエンリコ・ワールドであった。

(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★☆  80/100
□ 録音   ★★★★☆  80/100

(試聴) 

 

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2020年2月25日 (火)

キアラ・パンカルディChiara Pancaldi 「PRECIOUS」

歌唱能力は高いが、全体に馴染めないコンテンポラリー・ジャズの極み

<Jazz>

Chiara Pancaldi 「PRECIOUS」
CHALLENGE Records / AUSTRIA / CR73497 / 2020

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Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocal)
Roberto Tarenzi ロベルト・タレンツィ (piano except 3, 7, 8) (electric piano on 3, 8)
Darryl Hall ダリル・ホール (bass except 5)
Roberto Pistolesi ロベルト・ピストレージ (drums except 5)
Diego Frabetti ディエゴ・フラベッティ (trumpet on 2, 9)
Giancarlo Bianchetti ジャンカルロ・ビアンケッティ (guitar on 4, 7)

  キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ)のヴォーカル・アルバム3作目。過去の2作はここでも既に取り上げてきた1st『I WALK A LITTLE FASTER』(CR73409/2015)2nd『WHAT IS THERE TO SAY』(CR73435/2017)で、スタンダード・カヴァー集という形あったが、今作はなんと自己のオリジナル曲で埋め尽くされている(9曲中7曲)。そんなところは、イタリア・シーンで活躍中の彼女の意欲作と言ってよいものだ。そしてロベルト・タレンツィ(p)以下のピアノ・トリオ(+ゲスト入りも4曲)をバックにしたもの。
 1stアルバムは、なんと突然のデビューで「ジャズ批評」企画の年間ジャズオーディオ・ディスク大賞2015ヴォーカル部門を取ってしまったものだった。あれは私自身は若干疑問に思っていたのであったが、新たらしモノに弱い大賞という感じでもあった。しかしこの3作目となると新人のインパクトでなく、実力がかなり評されるところである。

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1. Better To Grow *
2. Nothing But Smiles* 
3. Urban Folk Song
4. Adeus *
5. Precious (vo & p duo) *
6. The Distance Between Us* 
7. Songs Don't Grow Old Alone (omit piano)*
8. You And I (We Can Conquer The World)
9. Our Time*

( *印:キアラのオリジナル曲 )

 まずは印象は、ジャズ・ヴォーカルの線はしっかりしている。しかしどちらかというと躍動感ある現代風の流れが感じられるが少々難物。
 オープニングのM1." Better To Grow "では、やはりとマイナスの予想が当たってしまった。この曲は彼女のクリーン・ヴォイスは解るが、曲自身が魅力が感じられない。なにせブラジル音楽からの影響を受けていると言うとおりのテンポが快調なコンテンポラリーものであるが、私にとってはよりどころのない曲。
 そのイメージが続いて、彼女のかなり歌い上げる力量は理解しつつ、どうも旋律自身心に響いてこない。演奏の美旋律という処ではなく、フリー・ジャズっぽいところにむしろ興味は行ってしまった。
 アルバム・タイトル曲M5."Precious "は、初めてゆったりした物語調の曲となる。このあたりになってようやくピアノの美しさをバックに彼女のヴォーカルが私にとって美を感じられる世界となった。
 いずれにしても残すところM7.,M9.の2曲ぐらいが、馴染めると言えば馴染めた曲だ。
   M7."Songs Don't Grow Old Alone"はギターの美しい音と旋律を主としたバックに彼女の深みのある美しさのある歌声が展開して、スキャット系のヴォーカルも色づけしてなかなか技量の深さも感じ、これはなかなか良い。M8."You And I"はS.Wonderの曲というが、それも彼女のジャズ世界に変容していて見事言えば見事。
  そして最後のM9."Our Time" この曲はピアノの美しさに誘われての彼女の深い歌い込みが聴かれ好きなタイプ、そこには美しさと哀感も感じられてトランペットの響きもナイス、これはいい。変にブラジルっぽくなくこうした曲なら私は大歓迎だ。

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61kw1h2xjglw  アルバムを通して、彼女の美声と歌う技量の高さは実感できる。ただこれは好みの問題だが、私にとっては受け入れられる曲がなんと3-4曲のみと言うところで、少々残念であった。やはり何曲かはスタンダードをじっくり歌って欲しいと思うのであるが如何なものだろうか。
 彼女は私の好きなピアニストのアレッサンドロ・ガラティとの共演ものが次に控えているようで(「The Cole PorterSongbook」→)、そちらはピアニストのパターンからして期待に添ってくれるかもしれないと思うところである。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  ★★★★☆  曲より技量をかって 80/100
□ 録音      ★★★★☆            80/100

 

(試聴)

 

 

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2020年2月21日 (金)

須川崇志Banksia Trio 「Time Remembered」

スリリングにしてミステリアスな世界の構築

<Jazz>

Takashi Sugawa Banksia Trio 「Remembered」
DAYS OF DELIGHT / JPN / DOD005 / 2020

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林 正樹 (piano)
須川 崇志 (bass)
石若 駿 (drums except 6)

Recorded at Sound City Setagaya Studio on 31 July 2019

 Marc Copland話から発展して、ozaさんからご示唆頂いたアルバム。日本のピアノ・ジャズ・トリオものとしてはどうしても小曽根真となりがちな私だが、どうもその他は意外に多いのが一世代前のアメリカン・ジャズ世界、それがなんとも私には馴染めないで来ているのだ。しかしこのアルバム、こんな現代的センスのあるピアノ・トリオであることには驚いているのだ。リーダーはベーシストの須川 崇志だが、完全なピアノ・トリオのスタイルを守りながらの即興がらみのトリオ演奏は新鮮だ。そして重要なのは知的で美しい林正樹のピアノ、又石若駿の演ずるは繊細にしてダイナミックなドラミングの世界である。

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1. Time Remembered
2. Yoko no Waltz
3. Nigella
4. Banksia
5. Under The Spell
6. Lamento (p & b duo)
7. Largo Luciano
8. Yoshi
( S.Ishikawa : 2, 7, 8 /  M.Hayashi : 3 / T.Sugawa : 4, 5, 6)

 収録曲は上のような8曲、M1."Time Remembered"はビル・エヴァンスの曲で、それ以外は全て彼らのオリジナル曲。それはライナーによると、録音前日や当日の朝に書かれた曲をはじめ収録曲の半分はほぼお互いの初提出で演奏されたというのだから驚きである。この収録内容は、3人のこれまでに築き上げられた演奏技術によって、ここに集約されて作り上げられた曲であるというところのようだ。

 しかし、このオープン曲のアルバム・タイトル曲でもある"Time Remembered"は、繊細なシンバルの音から入って・・・・所謂エヴァンス美学とはまた一歩異なった世界観を構築していて見事である。私はこれを聴いて是非アルバムを聴き通したくなったのであった。アルバムの帯に平野暁臣のライナーからの言葉"須川崇志と石若駿が紡ぎ出すうねりのなかを林正樹がリリカルに駆け抜ける"まさにこのタイプなのだ。私が聴くエヴァンスのこの曲はカヴァーでありながら彼らの作り出すものは、今演じている彼らそれぞれのセンスから生まれるインプロヴィゼーションが加味され、それが有機的に結合してゆく流れが手に取るように聴けて、そこに現代的な新鮮さが加味されていて好感度が高まるのだ。
  私の聴くエヴァンス自身のこの曲演奏は、72年のパリ・ライブものだが、それは彼のピアノの美しさとその世界に並ぶベースの世界など協調の美が満ち満ちているが、このBanksia Trioは、ベース、ドラムスの疾走感が加わってトリオのバトル感覚のスリリングさが生まれていることだ。エヴァンスものの取り扱いは難しいと思うが、彼らの意志が感じられて頼もしい。

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 冒頭で彼らの意志を示され、残る彼ら自身のオリジナル曲に入るのだが、M3."Nigella"は録音前日に出来たという林正樹の曲だが、これはむしろスリリングな展開の後の心のゆとりを謳歌するが如きの展開で三者のつながりが見事。
 M4."Banksia "は静かなピアノに始まり、次第にベースの主導に入り、次第にスリリングなドラムが絡んでインタープレイの妙を描く異世界に突入。
 M5." Under The Spell " ドラムス主導で流れる神秘世界。
 M6."Lamento (p & b duo)" 須川のアルコ奏法を中心にピアノがサポートして描くちょっと哲学的深い世界。
 M7."Largo Luciano" ドラムスのブラシ奏法の流れの中で、ゆったりと余韻の音を残したピアノ、それにベースの和音で綴る静かな神秘性ある沈んだ世界。

 とにかく、三者のバトルによるスリリングな味に美しさを乗せた緊張感ある硬質な世界と静かな奥深い心象風景にも迫るという演奏が聴かれ、ジャズ・トリオの醍醐味の感じられる久々に聴き込んでしまうアルバムであった。

 

( ネット上に見られた三者の紹介を載せておく )

T02200220_0320032013480396589 ■須川崇志
 1982年生まれで11歳の頃にチェロを弾き始め、18歳でジャズベースを始める。2006年、ボストンのバークリー音楽大学を卒業。その直後に移住したニューヨークでピアニスト菊地雅章氏に出会い、氏のアートフォームや音楽観から多大な影響を受ける。2009年に帰国後、辛島文雄トリオを経て日野皓正バンドのベーシストを6年間務める。現在は峰厚介カルテット、本田珠也トリオ、八木美知依トリオ、石若駿トリオほか多くのグループに参加。現在までに東京ジャズ、デトロイト(米)、モントルー(スイス)、ブリスベン(豪)、メールス(独)などの数多くの国際ジャズフェスティバルに出演。2018年11月にデビューアルバム『Outgrowing』を発表。

Hayashiw ■林正樹
 独学で音楽理論を学び、佐藤允彦らに師事してジャズピアノと作編曲を習得。渡辺貞夫バンドのレギュラーを務める傍らで、椎名林檎、長谷川きよし、小野リサら他ジャンルのアーティストとも幅広く共演。自身のリーダーアルバムにおいても、ジャズと他領域を行き来するチャレンジングな試みを続けている。

 

Ishiwakashunw_20200221094801 ■石若駿
 14歳で日野皓正クインテットの一員としてライブに出演し、高校時代には奨学生として米・バークリー音大に留学。東京藝大打楽器科在学中からジャズシーンのド真ん中で活躍を続ける万人が認める日本のトップドラマー。さらに活動範囲はストレートジャズにとどまらず多彩な領域におよび、参加アルバムは100枚を超える。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆  95/100
□ 録音    ★★★★☆  85/100

(視聴)

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2020年2月17日 (月)

パトリシア・バーバーPatricia Barber 「HIGHER」

ベテランの醸し出す世界は展望に満ちていた

<Jazz>

Patricia Barber 「HIGHER」
ArtistShare / U.S.A / AS0171 / 2019

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Patricia Barber, piano, voice
Patrick Mulcahy, bass
Jon Deitemyer, drums
Neal Alger, acoustic guitar
Jim Gailloreto, tenor saxophone
Katherine Werbiansky, lyric soprano

 ヴォーカリスト、ピアニストにして作曲家でもあるパトリシア・バーバーの久々の新作(レーベルはArtistShare、彼女のDiscographyは末尾参照)。私の米国では最もと言ってよい関心の高い女流ミュージシャンだ。なんと1955年生まれであるから、歳はおして知るべしというところ。
 過去にここで何回か取り上げてきたように、様々な作品に取り組んできたヴェテランである。そして今回は8曲の自作曲でジャズの枠組みの中での組曲的手法によって聴かせるところに、まだまだチャレンジ精神はみなぎっている。そんな意欲作であるが、極めてヴォーカルは聴きやすく優しく説得力あるところにある。いずれにしてもヴェテランならではの味わいが溢れている。

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1. Muse (Patricia Barber)
2. Surrender (Patricia Barber)
3. Pallid Angel (Patricia Barber)
4. The Opera Song (Patricia Barber)
5. High Summer Season (Patricia Barber)
6. The Albatross Song (Patricia Barber)
7. Voyager (Patricia Barber)
8. Higher (Patricia Barber)
9. Early Autumn (words: Johnny Mercer, Ralph Burns, Music: Woody Herman)
10. In Your Own Sweet Way (Music: Dave Brubeck)
11. Secret Love (Words: Paul Francis Webster, Music: Sammy Fain
12. The Opera Song with Katherine Werblansky (Patricia Barber)

 スタートのM1."Muse "がいいですね、語り調で優しいヴォーカル、そしてそれにも増して優しさ溢れるピアノの美旋律。
   このM1.からM8.まで彼女のオリジナル曲が連なり、" Angels, Birds, and I "命名されたこの8曲の組曲に仕上げているようだ。
 M2."Surrender "はアコースティック・ギターを中心にバックを支える。ここにも後半のピアノの美しさの流れは圧巻。
 M3."Pallid Angel"にはサックスの登場と多彩。M4."The Opera Song "はこの流れの中で、特異な展開に驚く。
 流れは比較的ゆったりとしていて、一つ一つかみしめての味わいを示すが、曲は多彩な展開をしている。
 M6."The Albatross Song "の描くところは解らないにしても、何か抵抗との対抗的な雰囲気あり。
 それに続くM7."Voyager"では、新しき迫る世界に向かってのやや複雑な試みと展開がなされる。そしてアルバム・タイトルのM.8""Higher は、ゆったりとしたピアノ・ソロのバックで、ここに来る展開を経ての身に感じての射してくる光明を感じさせ、展望の中に終わる。

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 続いて組曲によるコンセプトは一締めとなって・・・カヴァー曲となる。
 M9."Early Autumn "の優しいヴォーカル、そして後半のピアノの流れは美しいの一言。
 M10."In Your Own Sweet Way "では、彼女のジャズ・ピアノのテクニカルな聴かせどころ。ここに来てベース、ドラムスとのジャズ展開が堪能出来る。
 M11."Secret Love"は、聴き慣れた曲をハイテンポで演奏してみせ、彼女の一筋ならないところを垣間見せる。
 M12."The Opera Song with Katherine Werblansky " ここで締めとして彼女の曲となり、高音のオペラティックなヴォーカルには驚かされる。いっやー、ただでは終わらないのが彼女だ。

 パトシア・バーバーは、音楽一家で育った米シカゴ州出身のジャズ・ピアニスト・作曲家でありヴォーカリスト。アイオワ大学では当初クラシック・ピアノを専攻、しかし次第にジャズへの要素が濃くなる。89年に1stアルバム『Split』で30歳代半ばでCDデビューを果たすと、94年の3rdアルバム『Cafe Blue』(BN 90760)で一気に日本でも知られるところとなる。注目点は20世紀時代の米国音楽芸術に対して、なんと私も注目のロックの要素も大胆に取り入れた。それらは彼女独自のむしろクールと言われる感覚の一つの姿であり、そんなジャズを超えた作品を多く発表している。2002年に通算7枚目となるスタジオ・アルバム『VERSE』(KOC-CD-5736)やその後『Smash』(Concord Music/2013)などをリリース。又2017年に『Modern cool』(Blu-ray Audio/2013)をサラウンド・サウンドで再発している。
 いずれにしても、米国ジャズ界での一つの世界を築いてきており、私にとっても貴重なミュージシャンだ。

83775193pb2bw (参考) <Patricia Barber  : Discography>
1. Split : Premonition Records (1989)
2. Distortion of Love : Antilles (1992)
3. Cafe Blue (Two versions) : Blue Note Premo. Records (1994)
4. Modern Cool (Three versions) : Blue Note, Premo. Records (1998)
5. Companion : Blue Note, Premonition Records (1999)
6. Nightclub : Blue Note, Premonition Records (2000)
7. Verse : Blue Note, Premonition Records (2002)
8. Live: A Fortnight In France : Blue Note (2004)
9. Live: France 2004 :DVD Blue Note (2005)
10. Mythologies (Two versions) : Blue Note (2006)
11. The Premonition Years : 1994-2002 Blue Note (2007)
12. The Cole Porter Mix : Blue Note (2008)
13. Smash : Concord Records (2013)
14. MONDAY NUGHT (Live at the Green Mill) : not an Label (2016)
15. Higher : ArtistShare  (2019)

(評価)
□ 曲・演奏・歌  ★★★★★☆    90/100
□ 録音      ★★★★☆    80/100  

(試聴)

 

 

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