JAZZ

2017年4月24日 (月)

ジョエル・レンメル・トリオJoel Remmel Trio 「SOME THINGS NEVER CHANGE」

美旋律ジャズでありながらフリー・インプロヴィゼーション展開重視

<Jazz>
Joel Remmel Trio「SOME THINGS NEVER CHANGE」
Atelier Sawano / JPN / JRT003 / 2016

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Joel ‐ Rasmus Remmel : piano
Heikko ‐ Joseph Remmel : bass
Aleksandra Kremenetski : drums

  取りあえず2013年の1stアルバム『LumeKristall』から注目してきた東欧はエストニアの若きピアノ・トリオの昨年リリースされた3rdアルバム。
 今回のアルバムは過去の2作よりは一歩前進というか発展というか進化を示していると思う。聴きやすいメロディーを取り入れた曲を主とするところから脱却して、おそらく即興を重視したややスタイルを複雑にした曲のため、ちょっと評価に躊躇するところがあって、しばらく横に置きっ放しになっていた。しかし彼らの流れは注目価値ありというところで、そのため遅まきながら今になってここ登場することになった。

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(Tracklist)
1. Kolmekesi Paadis
2. Stepping Into The Basement
3. Some Things Never Change
4. Taevatahed Laulvad
5. By The Book
6. Vaikse Aja Ilu
7. Mul On Hea Jeesuses
8. Turn Out The Stars

 殆どが、ピアニストのJoel Remmelの曲だが、女流ドラマーのAleksandra Kremenetskiの曲も1曲(M4)登場。

 オープニングから、メロディ中心と言うよりは、演奏のスリリングな交錯がみられるフリー・インプロヴィゼーションの展開となる。メロディの美しい欧州のピアノ中心のトリオ曲というところから完全に脱却を図っている。もともとフリージャズ世界に足を入れていたところがあるようで、過去の2作品にもそんな因子が顔を出していたが、若いといえども結成して7年経過したこの3rdでは、思い切ってその世界に展開を広げた感がある。
 アルバム・タイトルとなっているM3.”Some Things Never Change”は、ベースの低音からスタートとして次第にメロディーの美しさを交えつつも、やや前衛的ジャズ印象を貫いて展開するため、聴く方はこれらの多様なスタイルについて行けるかがポイントだろう。
 M6.”Vaikse Aja Ilu”では彼らの特徴であるピアノ・メロディの美しさと、変調する中にも優しい展開が支配し、ここにきて彼らの過去のアルバムの美しさを思い出した。それもそのはずこの曲1stアルバムにも登場していたもの。後半に入ってのインプロヴィゼーションに手を加えている。そして最後の1分間は安堵の流れを聴かせてくれて、なにかほっとする響きで終える。
 そしてM7.”Mul On Hea Jeesuses”では、この曲の前半はクラシック流の美ピアノの音で支配して、後半は一転してやや荒々しい古典的ピアノ・ジャズと化すという変化のアレンジを見せる。
 M8.”Turn Out The Stars”は最終トラックにふさわしいこのアルバムの締めくくりである。ビル・エヴァンスの曲のアレンジだ。それは美しいメロディのみに止まらない彼らの姿勢を変調ジャズにて示すのだ。

  進化する若きトリオの1シーンを感じさせるアルバムであった。

(視聴)

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2017年4月16日 (日)

ベネディクト・ヤーネル・トリオBenedikt Jahnel Trio 「THE INVARIANT」

流麗なピアノと風格あるクラシック調な哲学的ジャズ世界

<Jazz>

Benedikt Jahnel Trio 「THE INVARIANT」
ECM / JERM / ECM2523 5712837 / 2017

Theinvariant

Benedikt Jahnel: piano
Antonio Miguel: double bass
Owen Howard: drums

Recorded March 2016 at Rainbow Studio, Oslo
produced by Manfred Eicher.

 ECM盤が続きます。前回、Julia Hülsmann Trio の『Sooner and Later』を取りあげたが、あのアルバムのジャケからふと思い出したアルバム。私はジャケに結構拘っているのですが、訴えてくる印象が似ているのでこのアルバム『THE INVARIANT』を再考するに至った。
 ところがなんとジャケ(Cover photo)の作成者をみると、『Sooner and Later』のLiner photosを担当したArne Reimerという人の写真によるものだった。
 まあそれはそれとしてこれもドイツですね、ベルリンを拠点にして活躍中のピアニストのベネディクト・ヤーネルBenedikt Jahnel によるトリオ作品。5年ぶりのECM第2作目となるもの。
 このアルバムのタイトルは「不変」と訳せば良いのか、いずれにしてもこのトリオ結成して10年と不変で来たようで契りは深い。そのトリオ・メンバーはスペイン人ベーシスト、アントニオ・ミゲルと、カナダ人ドラマー、オーウェン・ハワードと国際的。

(Tracklist)
1. Further Consequences
2. The Circuit
3. Mirrors
4. Mono Lake
5. Part Of The Game
6. For The Encore
7. Interpolation One
8. En Passant

 曲は全てベネディクト・ヤーネルによるもの。彼は1980年生まれのドイツ人、2000年にベルリン芸術大にて学位取得し、2005年米国N.Y.に渡り、2007年にベルリンに戻っている。

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 とにかくオープニングM1.” Further Consequences ”から聴かれる彼のピアノはクラシック調にして流麗そのもの。その曲名も哲学的であり描くところも深い。それがECM流に流れて、M2.”The Circuit ”に繋がって行く。
 そして9分以上のM3.” Mirrors ”には、その深遠な世界にはまってしまう。
 M4.” Mono Lake ”は、やや安堵感が漂ってほっとする。
 M5.”For The Encore ”は欧州的美の広がる静謐さが感じ取れる優しい曲。
 M7.”Interpolation One ”のベースとピアノの音で描く暗さは凄いが、M8.”En Passant ”で一転して明るい陽光の差す様な世界に、そして流麗なピアノの調べを経て静かに幕を閉じる。
 はっきり言って、曲の流れは聴きやすく難解では無い、しかし描く世界の哲学的世界は深い。しばらく解釈に時間がかかって横に置いておいたが、今こうして聴き直してみると、これはなかなかハイレベルな格調高い名盤です。

(視聴)

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2017年4月12日 (水)

ジュリア・ハルスマン・トリオJulia Hülsmann Trio 「Sooner and Later」

ECM流のピアノ・トリオ・アルバムだが・・・・高尚の一言

<Jazz>
Julia Hülsmann Trio 「Sooner and Later」
ECM / JERM / ECM 2547 / 2017

Soonerandlater

Julia Hülsmann(p)
Marc Muellbauer(double bass)
Heinrich Köbberling(ds)

Produced by Manfred Eicher
Recorded Sep. 2016, Rainbow Studio, Oslo

(Tracklist)
1. From Afar *
2. Thatpujai *
3. You & You +
4. Biz Joluktuk 
5. All I Need
6. The Poet (For Ali) -
7. Offen -
8. J.J. *
9. Soon *
10. Later +
11. Der Mond *
(Composer : "*印"Julia Hülsmann、  "+印"Heinrich Köbberling"、  "-印"Marc Muellbauer)

Julia_huelsmannw 1968年生まれのドイツの女流ジャズ・ピアニストにしてコンポーザーのジュリア・ハルスマンのピアノ・トリオ作品。
  彼女はベルリンを拠点にしてのベテラン・ジャズ・ピアニストだ。このところはクインテット、カルテットという作品が続いていたが、久々の6年ぶりのトリオ作品と言うことだ。

 まずECMと言えどもジャケの印象は更に地味で、そしてそこには日常の姿をしっかり見つめようとする想(こころ)を感じ取れる。
 そして演奏は明らかに”ECMサウンド”で、物静かに哲学的に流れて行く。演奏の特徴は彼女の名前を冠したアルバムだが、ピアノが決して前面に出て振る舞うと言うところがないところだ。三者の対等なるトリオ演奏が聴きどころ。

  とにかく、M1、M2と冒頭から詩的な世界が広がる。そしてその流れはM3, M4ても同様だ。刺激性の無い演奏が彼らの持ち味として安定性の感覚を聴く者に及ぼしてくる。
 これはどこかで見たが「文学性の演奏」と言わしめる世界なのである。全編、静かに流れるが、これは単なる抒情性とか美旋律といったところとは異なるのだ。ただし静かな流れと言っても、快調なリズムをも展開する。とにかく高尚という言葉に尽きる演奏なのだ。
 あまりにも整然とした演奏に、はっとするような山が無いと言えばそうなのだが、従ってなんとなく始まって、快く聴いてなんとなく終わるというアルバムなのである。そんなところは北欧ものの大自然をイメージするとか、逆に南のイタリアにおける演歌調を味うとは違っている。これが・・・ドイツなのか?。
 なにせ、花粉症の季節、抗アレルギー剤を内服しているせいか、聴き入っているとすぐ寝てしまうのである。

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  収録11曲中の殆どの9曲が彼らのオリジナル曲(ジュリアが5曲)であるが、作品紹介をみると・・・・、"ツアーでヨーロッパ、アメリカ、ペルー、中央アジア、中国も一緒に廻ったとのことでアジアでの演奏は「自分たちの世界を広げてくれた」という。M-4”Biz Joluktuk ”はその中央アジアでのツアー時にキルギスで12歳のヴァイオリニストが弾くのを聴いた曲に インプロヴィゼーションを施したものと言うのだ。
 M-2”Thatpujai ”ドイツのピアニスト、ユタ・ヒップのソロで聴かれるフレーズをテーマにしているとか"・・・・など、彼らの印象を受けたものにインプロヴィゼーションを繰り広げた曲群のようだ。
 結論、こうした真摯な高尚なアルバムも好感が持てるし私にとっては価値あるアルバム。

(視聴)

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2017年4月 8日 (土)

チャーリー・ヘイデンCharlie Haden (with C. Baker, E. Pieranunzi, B. Higgins) 「Silece」

1989年のリマスター復刻盤に感動

<Jazz>
Charlie Haden with Chet Baker, Enrico Pieranunzi, Billy Higgins 「Silece」
Soul Note / ITA / SNGG116-2 / 2017

Silence

Recorded Nov.11-12. 1987 at CMC Studio, Roma

 Charlie Haden ( Bass ), Chet Baker (Trumpet , Vocal), Enrico Pieranunzi ( Piano ), Billy Higgins ( Drums )

Mi0003186081 "Soul Note Remastered Reissue Series"としての登場盤で、これはチャーリー・ヘイデンのSoul Note での初の録音盤(1987年)。
  ヘイデンが、ウエスト・コースト・ジャズへの思いをこめたというコンセプトのもと制作された作品と言うが、今こうしてみると豪勢なメンバーによるカルテットだ。
 なんと言っても、チェット・ベイカーが亡くなる半年前の演奏で、それだけでも興味がある。これは私は過去に一度も聴いてなかった盤であるだけに尚更だ。しかもあの抒情的ピアノ・プレイを聴かせてくれるピエラヌンツィが絡んでいて文句なしだ。

(Tracklist)
1.  Visa
2.  Silence
3.  Echi
4.  My Funny Valentine
5.  ’Round About Midnight
6.  Conception

Chet675 とにかくチェット・ベイカーの演奏が印象的で、これはまさに彼のアルバムかと思わせる程です。2曲目の”Silence ”がチャーリー・ヘイデンの曲でこのアルバムの主役をなしていて、これが静かなエンリコのピアノに続いて、どちらかというと陽ではなく陰に包まれていると言って良いのだが、チェット・ベイカーの押さえてのペットの響きが支配する。それは極めて叙情的な世界であって、それにおもむろに登場するヘイデンのベースが更に深淵なる雰囲気を構築するんですね。私から見るとこれはチェット・ベイカーの人生を象徴するがごとくの出来映えだ。
  M4.”My Funny Valentine”においては、何とか陽の世界を見せようとしているが、やっぱり聴く方の気持ちも入ってしまって、チェット・ベイカーのヴォーカルも登場するが、如何にもこのバンド4者の最大限の花ではあるが、やっぱり抒情的な世界になっている。

Chetbakerenricopieranunzi そしてこのアルバムの私の最大の焦点はM5.” ’Round About Midnight”だ。なんと11分を超える演奏だが、繊細な感覚が4者のそれぞれの全ての音に秘められている。この曲には完全に聴く私は取り込まれてしまった。ベイカーから続くピエラヌンツィにメロディー演奏が引き継がれ、両者の抒情的美が溢れている。そしてその後は優しいヘイデンのベースがほぼソロで演じられ、もう満足の極みである。

 いやはや良いアルバムをリマスター再発してくれたものだ。当時リアル・タイムに聴いた人たちは、どんな気持ちで直後のベイカーの悲しみを送ったのだろうか、今こうして聴いていてその想は想像に難くないのであった。

(視聴)

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2017年4月 1日 (土)

イリアーヌ・イリアスEliane Eliasのニュー・アルバム「DANCE OF TIME」

イリアーヌ流のブラジル・テイストなヴォーカルとピアノのジャズ・アルバム

<Jazz>
ELIANE ELIAS 「DANCE OF TIME」
CONCORD / US / 7202305 / 2017

Danceoftimew

Eliane Elias(piano,vocal,compose,arrange,produce)
Marcelo Mariano(bass)
Marcus Teixeira(guitar)
Conrado Goys(guitar)
Edu Ribeiro(drums)
Celso de Almeida(drums)
Gustavo di Dalva(percussion)
Marivaldo dos Santos(percussion)

Produced by Steve Rodby and Marc Johnson
Recording information: Dissenso Studio, Sao Paulo, Brasil; NaCena Studios, Sao Paulo, Brasil.

 そう言えば前作『Made In Brazil』 (2015年)が第58回グラミー賞にてBest Latin Jazz Albumを受賞したピアニストにしてシンガーのイリアーヌ・イリアス。まあ適度なタイミングでニュー・アルバムの登場だ。なんと25作目と言うことになるらしい。

 もともとピアニストからの出発しての彼女、コンポーザーでもあり、曲の編曲もうまい。それはそうですね、もう還暦になろうとしているベテランですから。
  ここでは何回か彼女の多くのアルバムを取りあげてきたので、彼女の紹介は過去のモノに譲るが、基本的にはジャズと言ってもブラジリアン・テイストな曲が得意なのだが、結構ピアノ・トリオとしてのオーソドックスな演奏も聴かせてきた。今回は前作の流れを繋いでやっぱりブラジリアン・スタイル・ジャズ演奏とヴォーカルを聴かせる。
 そしてブラジルでの録音だが、ゲスト・ミュージシャンとしてブラジルからAmilton Godoy(p)、João Bosco(g, voc)、Toquinho(g, voc)の3人に加え、そこにアメリカからもRandy Brecker(flug.), Mike Mainieri(vib.)、Mark Kibble(voc.)の参加もある。このあたりが、彼女の目指しているジャズのスタイルを知ることが出来るところだ。
 
Ee2 オープニングM1.” O Pato ”これは"ガチョウのサンバ"だ。典型的ブラジル・ムードを展開、このアルバムが前作からの流れを感じさせるテイスト。
 M2.”A Habit With Me ”となると得意のピアノ・プレイが中盤で展開して、彼女のソフトなヴォーカルも味わい深い。
 前半はとにかく楽しいボサノヴァ・アルバム。そして中盤から後半に入ると・・・・
 M7.” Little Paradise ” は、彼女の包み込むような優しく暖かいヴォーカルとピアノそしてビブラフォンがJazzyな静かなムードを盛り上げる。このあたりはイリアーヌ世界も絶頂に。実はこのパターンが、私が彼女に期待するところ。
 M8. ”Speak Low ”は、flugelhorneも入って、ブラジル・ムードとNYスタイルの交錯が感じられる仕上げ。

  こうしてこのアルバムは、やっぱり単なるブラジル版というのでなく、何時ものように、イリアーヌ流のヴォーカルとピアノが演ずるブラジル・テイストなジャズ・アルバムとして楽しませてくれる。

(Tracklist)
1. O Pato
2. A Habit With Me
3. Copacabana
4. Coisa Feita
5. By Hand
6. Sambou Sambou
7. Little Paradise
8. Speak Low
9. Samba de Orly
10. Na Batucada da
11. An Up Dawn
12. Not to Cry


(視聴)

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2017年3月28日 (火)

ブリア・スコンバーグBria Skonberg 「Bria」

女流トランペッターの多彩なヴォーカル・アルバム

<Jazz>
Bria Skonberg  「Bria」

Okeh / US / 88985337522 / 2016

Albumbria

Bria Skonberg (vocal, trumpet)
Aaron Diehl (piano)
Reginald Veal (bass)
Ali Jackson (drums, percussion)
Evan V Arntzen (harmony vocal, clarinet, tenor saxophone, percussion)
Stefon Harris (vibraphone)

Bria_1  カナダ出身ニューヨークで活躍する女性歌手兼トランペッター(兼ソングライター)のブリア・スコンバーグBria SkonbergのOkeh移籍第一作アルバム(彼女の通算3枚目)。
 聴き慣れたスタンダード曲に加えて5曲のオリジナルを収録している。

  収録曲は、全体的にはピアノ・トリオをバックに、彼女のトランペットの調べとヴォーカルが乗ってくる。その他曲によってジャズ味100%のヴィブラフォン、クラリネット、サックスも加わってのジャズ色オンパレード。

 M2.”Que Sera Sera ”は、中間部のトランペットはミュートがかかっており、これがケセラ・セラ?と疑いたくなるところは、私には好感度たっぷりの演奏。
 M4.は彼女のオリジナル曲。トランペットが唄ったかと思うと、がらっとムードを変えてタンゴのリズムとなり、彼女のヴォーカルがリードし、又トランペットとクラリネットの競演となってジャズそのものの味付けがゴージャスだ。
 しかし続くM5.”Trust In Me ”は、ヴィブラフォンとピアノの静かな演奏に、これも弱音でのドラムスで、そこに彼女のしっとりとしたヴォーカルが聴かれ、こうゆうのは私好みなんですね。
 明るさが主体の曲群の中でM10.” My Shadow ”は、ちょっとタイプは異なるがM5とともに異色で、ベースの響きと低空飛行のヴォーカル、この暗さは別のアルバムかとも思わせるが、これがあって他の曲の華もあるのかもしれない。
 一方なんとM12. ”Malaguena”も登場し、トランペットの派手さと、ピアノ・トリオのそれぞれのパートを軽快な疾走と三者の綾取りを混ぜての演奏も面白い。
 
 とにかく登場する曲調はスウィングして豪華・快活であったり、タンゴの軽快な華々しさ、かと思いきやしっとりとした曲、更にはブルース調と、その取り混ぜは多彩そのもの。
  多分、このアルバムは彼女の多能力のデモ的なものであったのかもしれない。

42471c_ このブリアは、1983年カナダ-ブリティッシュ・コロンビア州チリワック生まれで、30歳代半ば、これから更に充実の年頃だ。トランペッターというのも女性としては異色であるだけに、しかもなかなかの美人と条件は揃っている。まあこれからが楽しみとも言える。
  ヴォーカルの質も優しく語りかけるようなロマンティック・ムードたっぷりから、軽快にして軽妙なる洒落た味付け、はたまた陰影たっぷりの都会の陰を歌い込んだりとなかなか芸達者で、期待できる。
 いやはやカナダのジャズ界進出ウーマン・パワーは見事である。

(Tracklist)
1. Don't Be That Way
2. Que Sera Sera (Whatever Will Be Will Be)
3. From This Moment On
4. Curious Game
5. Trust In Me
6. I Was A Little Too Lonely And You Were A Little Too Late
7. You're Getting To Be A Habit
8. How Can It Be
9. Egyptian Fantasy
10. My Shadow
11. Wear And Tear
12. Malaguena
13. Midnight Sun
14. Down In The Deep

(視聴)

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2017年3月24日 (金)

ヴィクトリア・トルストイViktoria Tolstoy 「Meet Me At The Movies」

北欧の世界観の感じられるヴォーカル

<Jazz>
Viktoria Tolstoy 「Meet Me At The Movies」
Act Music / Germ / ACT9827-2 / 2017


Vtw

Viktoria Tolstoy (vo),
Krister Jonsson (g),
Mattias Svensson (electric & acoustic bass),
Rasmus Kihlberg (ds)
Special Guests:
Iiro Rantala(p), Nils Landgren: trombone(vo)

 スウェーデンの人気女性ヴォーカリスト、ヴィクトリア・トルストイViktoria Tolstoy 。彼女はロシア系で文豪トルストイの孫娘だということで一目置かれてきた。1974年生まれで、もうベテラン歌手。
 これはアメリカ・クラシック映画主題曲を歌ってのアルバムだ。ACT-Musicのアルバムだけあって録音が良い。又彼女の唄声は低音から高音まで標準的で聴き応えがソフトでヴォリュームもあってなかなかの良質モノ。 過去に10枚のアルバムをリリースしているが、私自身はそれ程興味を持つこともなく今日に至っていたが、このアルバムで彼女のファンには叱られそうだが、実はを見直しているんです。(そこで彼女のDiscographyを参考までに末尾に記す)

(当アルバムのTracklist)
1. Calling You (Bob Telson) from the movie “Bagdad Café”
2. As Time Goes By (Herman Hupfield) from the movie “Casablanca”
3. En Man [Marlowe‘s Theme] David Shire (Swedish lyrics by Rolf Börjlind)
from the movie “Farewell, My Lovely”
4. Out Here On My Own (Michael & Leslie Gore) from the movie “Fame”
5. Why Should I Care (Clint Eastwood) from the movie “The Bridges of Madison County”
6. The Book of Love (Peter Gabriel) from the movie “Shall We Dance?”
7. Love Song For A Vampire (Annie Lennox) from the movie “Bram Stokers Dracula”
8. Kiss From A Rose (Seal) from the movie “Batman Forever”
9. Angel (Sarah McLachlan) from the movie “City Of Angels”
10. New World (Björk / von Trier) from the movie “Dancer In The Dark”
Bonus track
11. Smile (Chaplin / Turner / Parsons) from the movie “Modern Times”

Viktoria_tolstoy まずスタートから映画『バグダッド・カフェ』のM1.”Calling You ”を持ってくるというのは、なんとも気迫の感じられるところだ。それもなかなか味付けが良い。ホリー・コールとつい比較したくなるのだが、彼女流を貫いていてVegasというよりは、北欧の自然風景が浮かんでくるところは恐ろしい。"I am calling you"と歌いあげるところも大人の雰囲気を醸し出している。この曲だけでも一聴の価値ありだ。
 バックはギター、ベースで洒落た演奏を聴かせるが、曲によってピアノも加わる。
 又サラ・マクラクランとこれも比較したくなるM9.”Angel”が登場。ギターはカントリー風に演ずるが、やっぱり彼女の唄声が入るとなんとなく北欧風に聴こえてくるところが不思議。
 M3.”En Man [Marlowe‘s Theme]”は、スウェーデン語で唄われるが、これが全く意味不明。その為私には静かな都会のムードが感じられて納得。
 映画『カサブランカ』、『モダン・タイムス』からも登場(M2.”As Time Goes By”,M11.” Smile” )で、クラシック・ムードも近代北欧に仕上げている。
 映画『マジソン郡の橋』の一曲M5."Why Should I Care"も優しくしっとり唄うところはお見事。
 映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークの曲M10.” New World ”は、さすがちょっとこのアルバムではイメージの変わった曲となった。

 映画音楽というのは、その映画の印象が強いので、自己流の展開はある意味では避けられることが多い。しかしこのヴィクトリアの場合はさすがベテラン、果敢に北欧風に仕上げたところは、冒険であったと思うが、それがむしろ私には北欧の世界観が感じられてなかなか良いアルバムに仕上げたと思うのである。

<参考 Viktoria Tolstoy - Diacography>
1994 – Smile, Love and Spices
1996 – För Älskad
1997 – White Russian
2001 – Blame It On My Youth
2004 – Shining on You
2005 – My Swedish Heart
2006 – Pictures Of Me
2008 – My Russian Soul
2011 – Letters to Herbie
2013 – A Moment of Now (with Jacob Karlzon)
2017 – Meet Me At The Movies

(視聴)

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2017年3月14日 (火)

ヘルゲ・リエン・トリオHelge Lien Trio「GUZUGUZU」

ノルウェーから極東日本との更なる深まりが・・・・・・

<Jazz>

Helge Lien Trio「GUZUGUZU」
ozella music / GERM / OZ070CD / 2017


Guzuguzu

Helge Lien(p)
Frode Berg(b)
Per Oddvar Johansen(ds)

All music composed by Helge Lien
Recorded and Mixed on Raimbow Studio , Oslo, Sept.2-4 2016

 ノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・トリオによるニャー・アルバム。彼のカメラ好きによる写真ジャケのアルバム『Natsukasii』はインパクトがあったが、あれは2012年だったんですね。あのアルバムの抒情性に惹かれてから彼のファンになってしまった。それも私のカメラ好きと、なんとピンク・フロイド好きが彼と一致していることもあって、なお共感してしまったと言うことなんです。
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 その後このトリオのドラマーは、ペル・オッドヴァ―ル・ヨハンセンに2013年に代わった。そしてアルバム『Badgers & Other Being』発表して2014年に来日。その際には新潟県のライブ会場での一コマで、屋外で彼と一緒に皆既月食を観たり撮影したのを思い出しますが(8, Oct, 2014)、あのアルバム以来3年ぶりの新生ヘルゲ・リエン・トリオ第2弾(通算5作目)だ(今回のカヴァー・デザインは替わって、リエン作ではないですね)。
 そしてこの4月は、またまた来日公演のスケジュールとなっている。

Trio2

 日本好きのヘルゲ・リエンとは言え、アルバム・タイトル”Natsukasii懐かしい”で驚かされたが、今回アルバムは下のTracklistを見てのとおり、なんと日本語の擬音言葉を曲名として創作されたオリジナル曲によって構成されたものとして登場となった。

(Tracklist)
1.Gorogoro (thundering)
2.Guzuguzu (moving slowly)
3.Nikoniko (smilling
4.Garari (completely)
5.Jasmine
6.Chokichoki (cutting)
7.Kurukuru (spinning around)
8.Shitoshito (raining quietly)


Hl1w M1.”Gorogoro”って"thundering"って言うのですから雷鳴ですかね?。転がるようなピアノ演奏、ベースのアルコ奏法による黒い雲の襲うイメージ、そんなところで聴くと面白いのだが・・・・それにしては美しすぎるか。
 M2.”Guzuguzu” ("moving slowly"の意味というのもちょっと"?"だが) これはピアノとドラムスの掛け合いが面白い。

  彼は、ミュージックというものに関わることになったのは、ピンク・フロイドがその大きな因子であると何時も語っている。
  彼のオリジナル曲、そして演奏は、ある時は郷愁的優しさのあるメロディーを聴かせ、またある時はやや前衛的なスリリングな味つけをしてインパクトの効いたドラマティック展開を聴かせる。伝統的ジャズ手法による美に加えインプロヴィゼーションによる革新性(何方かが言っていた言葉ですが私は納得)を追求するタイプだ。今回のアルバムもそんな因子を持って迫ってくる。写真で言えばややスモーキーな柔らかい像とコントラストの効いた堅めの像との絶妙な交錯といった感覚でその点が上手い。

 M3.”Nikoniko” (smilling) は、なかなかピアノ表現が難しいと思うが、優しいピアノの音が響く印象の曲に仕上がっている。
 M5.”Jasmine”は、この中でも趣向が変わって異国情緒。
 M6.”Chokichoki” (cutting)や M7.”Kurukuru” (spinning around)の躍動感と陰影とがドラマチックで、叙情性とは別物。彼らのこれからの一つの方向性を感じさせる演奏だ。
 M8.”Shitoshito” (raining quietly) しっとりとした雰囲気でアルバムを納めるのである。

      *          *

 とにかく、今回のアルバムはテーマがユニークそのもので(ウォーターズのピンク・フロイドの頃の手法も感ずる)、何か一歩脱皮というか、壁を破りたい試みというか、前作もそうだったがヘルゲ・リエン・トリオとしての挑戦も感じられる。それは平坦な叙情にのみ収まりきれない何かエネルギーの発露を求めたような印象を持つのである。

(参考視聴) 映像はニュー・アルバム関係は見つからず・・・・参考までに前作から

  *   *

(試聴) ニュー・アルバムから”Jasmine”

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2017年3月 8日 (水)

ジョヴァンニ・ミラバッシGiovanni Mirabassiのピアノ・ソロ・ライブ 「LIVE IN GERMANY」

これはミラバッシらしい音の洪水に溢れたアルバムだ

<Jazz>
Giovanni Mirabassi「LIVE IN GERMANY」
CAM Jazz / ITA / CAMJ79102 / 2017.2

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Giovanni Mirabassi (piano) solo
Recorded on 16 Sept. 2014 at Bauer Studio, Ludwigsburg

  私はあのアルバム「AVANTI」 以来、イタリア出身でフランスで活躍しているのミラバッシGiovanni Mirabassiのファンなんですが、このライブ・アルバムの購入は若干躊躇していたんです。それも近作の2016年「NO WAY OUT」は、彼の一つの挑戦がみえて良かったんですが、 「VIVA V.E.R.I」、「Animessi」あたりが、実はそれ程面白くなかったせいかも知れない。
 ところが、そうこうしている時に爵士さんからこのアルバムを薦められました。いっやー、このアルバムは成る程あのミラバッシらしさが聴かれて喜んでいるんです。それも彼のかなり力みの無いリラックスした姿を感じ取れるんです。

 このアルバムは、ドイツでのステージ・ライブものなんだが、どうゆう訳か?エラ・フィッツジェラルド、メルセデス・ソーサ、エディット・ピアフ という3人のシンガーに捧げるという酒肴なんですね。
 エラ・フィッツジェラルド(Ella Jane Fitzgerald、1917- 1996年)はコール・ポーター、ジョージュ・ガーシュィン、アントニオ・カルロス・ジョビンなど唄ったし、メルセデス・ソーサ(Haydée Mercedes Sosa, 1935 - 2009年)はアルゼンチン・フォルクローレの女性歌手である。
 そしてエディット・ピアフ(Édith Piaf, 1915 - 1963年)は、フランスのシャンソン歌手で、有名な”ばら色の人生”とか”愛の賛歌”等のヒットがある。何故この3人三様の全く異なった歌手を選んだのかよく解らないが、とにかく共通点は人間模様、喜びと哀しみ、熱い情熱と陰のある憂愁 と・・・・多彩な人生模様といったところなのか。それによって彼の心の一部を覗かせてくれているんです。

Mirabasshi01(Tracklist)
1. Sous Le Ciel De Paris (J. Dréjac - H. Giraud) 4:31
2. Canción Con Todos (A. Tejada Gomez - J. C. Isella) 4:42
3. The Man I Love (I. Gershwin - G. Gershwin) 6:21
4. Hymne À L’Amour (E. Piaf - M. Monnot) 3:29
5. Sólo Le Pido A Dios (L. Gieco) 5:51
6. Mercedes (G. Mirabassi) 3:58
7. My Old Flame (S. Coslow - A. Johnson) 5:11
8. J' M'en Fous Pas Mal (M. Emer) 5:44
9. Ella (G. Mirabassi) 6:17
10. Duerme Mi Tripón (O. Galíndez) 4:43
11. Bewitched (L. Hart - R. Rodgers) 4:48
12. Edith (G. Mirabassi) 5:03
13. I've Grown Accustomed To Her Face (A. J. Lerner - F. Loewe) 2:56


 いやはや、これはやはりミラバッシですね。非常にポピュラーな曲を演じているのだが、それぞれ1曲1曲の展開が複雑な展開を加味させて、何か一度に二つ以上の曲を聴いているような気分になります。
 まずはオープニングM1. ”Sous Le Ciel De Paris”で、このソロ・コンサートの意味を聞かせるが如くシャンソンがミラバッシ流のピアノの音の洪水で満たされるのである。
 今回はあの気になる唸りを上げるような熱演と言うよりは、かなりさらりとした演奏をベースにしているので、違和感なく気楽に聴けるところが良いです。ただライブということで曲間に拍手が入って、どうも私の感覚だと、ミラバッシの世界にのめり込めずにやや客観的に冷静に聴くというところになってしまうのですね。記録と言うよりは聴かせるアルバムとして、拍手を入れたかったら最後だけで良かったのでは?。
 しかし彼はやっぱり技法としては尋常なパッサージ・ワークではないですね。これだけ単調なメロディーでありながらも、そこに聴かれる音の多彩さに圧倒されます。
 アルバム全体で見ると、後半になるにつれ優しさが溢れてきて、心も落ち着いてホッとする世界に連れて行ってくれます。

(ジョヴァンニ・ミラバッシ紹介=http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/giovanni-miraba.html 参照)

(視聴)

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2017年3月 4日 (土)

ルネ・マリーRené Marie貫禄のヴォーカル・アルバム「SOUND OF RED」

多彩なタイプを盛り込んだジャズ・ヴォーカルに堪能

<Jazz>
René Marie 「SOUND OF RED」
Motema Music / USA / MTA-CD-194 / 2016

Soundofredw

René Marie (vocal)
John Chin (piano)
Elias Bailey (bass)
Quentin E. Baxter (drums)

GUEST ARTIST :
Romero Lubambo (guitar 6)
Sherman Irby (alto saxophone 1)
Etienne Charles (trumpet 2, 10)
Shayne Steele (background vocal 8, 11)

Renemariew  1955年生まれのベテラン・ルネ・マリーRené Marie(→)の近作。彼女はヴァージニア出身の女性ボーカリスト。99年、42歳の時にプロキャリアをスタートさせた遅咲きではあるが、セントルイスを拠点とするレーベルMAXJAZZ(ここにはDena DeRoseが居ますね)で多くのアルバムをリリースしている。アカデミー賞にも何回かノミネートされてきたようだ。
 そしてこれは2013年以来の昨年リリースされたニュー・アルバム。とにかく還暦過ぎの貫禄十分の強力アルバムだ。

 ブルース、ジャズの本場での百戦錬磨だけあって、自身のオリジナル曲によって作り上げたなかなか味のあるアルバム。意味深に唄ったり、軽く唄ったり、又ジャズ本場を唸らせるムードを醸し出したりと、そのテクニックは安心して聴く者を楽しませる。実は私はじっくり聴くのは今回が初めてなんです。

 M1. ”Sound of Red”がなかなか評判なんですね。 ゆったりと流してブルース調の味を生かしたジャズで、アルト・サックスの加わったバック演奏の流れも良くなかなか聴かせる。
  M2. ”If You Were Mine” この軽快な曲運びは洗練されていますね。
 M3. ”Go Home”は完全に哀愁のスロー・ナンバー・フォーク・ロック。
 M6. ”Certaldo”のアコースティック・ギターをバックに説得力のあるヴォーカルも見事、後半のピアノも美しい。
 M7. ”Colorado River Song” はなかなか洒落た懐かしのよき時代を思い起こすジャズ。
 M8. ”This is (not) A ProtestSong” 、M9. ”Many years ago”これらは懐かしのフォークっぽいナンバーで哀愁感も醸し出す。聴いていると20-30歳代のシンガーをイメージしてしまう。
 M11. ”Blessings”はジャズというよりはフォーク・ロックぽい味を感じさせる曲。語りかけるところから朗々と歌いあげるところまで披露してアルバムを締めるのである。

(Tracklist)
1. Sound of Red
2. If You Were Mine
3. Go Home
4. Lost
5. Stronger Than You Think
6. Certaldo
7. Colorado River Song
8. This is (not) A ProtestSong
9. Many years ago
10. Joy of Jazz
11. Blessings

(視聴)

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