JAZZ

2024年4月11日 (木)

インガー・マリエ Inger Marie 「Five Minutes」

ぐっと落ち着いたヴォーカル・アルバム

<Jazz>
Inger Marie 「Five Minutes」
Stunt Records / Import / STUCD23082 / 2024

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Inger Marie Gundersen(vocal),
Espen Lind(guitar, keyboards, and backing vocals),
Torjus Vierli(piano, organ, and keyboards),
Tom Frode Tveita(bass),
Martin Windstad(drums and percussion),
Kristian Frostad(pedal steel, lap steel, and guitar),
Erlend Viken(fiddle),
Tore Johansen(trumpet)

 北欧を代表するディーヴァの一人として幅広い人気を誇るシンガー、インゲル・マリエ・グンデシェン(Inger Marie Gundersen インガー・マリエ 下左)の、5年ぶり、そしてパンデミック以来のニュー・アルバム。彼女は1957年ノルウェー南岸のアレンダール生まれで、約40年ロック、ジャズのシンガーとして活動してきて、2004年に遅咲きアルバム・デビュー(『Make This Moment』)で人気者に、既に60歳代後半だ。それにつけても頑張ってますね。

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 このアルバムは、母国ノルウェーのマルチ鍵盤楽器奏者、作曲家のエスペン・リンド(Espen Lind (born 13 May 1971) 上右)が共演・プロデュースしている。彼はテレビ・パーソナリティとしてのキャリアに加えてテイラー・スウィフトやビヨンセなどと仕事してきた国際的に評価を得ているノルウェーのレジェンド。そしてその他、スウェーデンのトム・フルーデ・トヴェイタ(Bass)以外すべてノルウェーのミュージシャン達が共演している。

(Tracklist)
01. Five Minutes(Gretchen Peters)
02. Sailing(Iain & Gavin Sutherland)
03. My Valentine(Paul McCartney)
04. We Kiss in a Shadow(Oscar Hammerstein II/Richard Rodgers)
05. Wild Horses(Mick Jagger/Keith Richards)
06. Thank You Lord(Bill Fay)
07. Why Worry(Mark Knopfler)
08. Litter Person(Jon Brion)
09. Narrow Daylight(Diana Krall/Elvis Costello)

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 彼女の息を呑むような歌声を聴かせつつ、ロックの流れやフォークぽい展開があったりの彼女なりのジャズの独特のサウンド世界が作られる。それは温かく、軽くなく、誠実で、過去に聴いてきた曲も共感を誘う新しい意味をもたらして迫ってくる。

 Torjus Vierli(ピアノ、オルガン、キーボード)の彼女のヴォーカルを支える技量も素晴らしく、彼女の描く曲の展開に大きく寄与している。何につけてもEspen Lind(ギター)が、彼のサウンドを上品に全体に乗せていて品格あるアルバムに作り上げているのは見事である。

M01."Five Minutes" 心を落ち着かせ思い描くことの為にタバコを吸うには5分間あればいいと、静かなしっとりとした説得力ある控えめのヴォーカルでスタート。
M02."Sailing" 愛しい人を求め大西洋を渡る歌と解釈されつつ、実はこれは自由と神の成就へと至る人類の精神的なクリスチャン・ソングとロッド・スチュアートがカヴァーした歌。そんな心深くに染みてくるマリエの歌。
M03." My Valentine" 多くの有名どころがカヴァーしている名曲。ささやかな愛が情感豊かに歌われる。
M04."We Kiss in a Shadow" 秘密裏の恋の喜び、歌声とピアノの相乗的効果の美しさが見事。
M05." Wild Horses" ストーンズの解釈がいろいろと言われる曲だが、マリエは何かを心に描いて訴えてくる。
M06." Thank You Lord" 低音でのリズムにのつて、ギターの響きと共にスロー・ロックの味わいを感じさせちょっと異色の曲で私のお気に入り。内容は"主に感謝の心を訴える・・・"といったところか。
M07."Why Worry" 暗い中に光明を見出して慰めてくれるような世界。
M08."Litter Person" 小さな人間の大切なものをしっとりと訴える。
M09."Narrow Daylight" 冬が終わって夏に向かう・・そこには展望か、Diana Krallの歌だが、なかなか味わい深く歌い上げている。

 人生の経験を歌い込んだような選曲と歌い込み、年齢的声量低下はエコーで若干補足はしているが、彼女の真骨頂の控えめな詩情ゆたかな世界をしっとりと聴くことが出来る。

(評価)
□ 選曲・歌 90/100
□ 録音   88/100

(試聴)


*



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2024年4月 6日 (土)

アンナ・グレタ Anna Greta「Star of Spring」

待望のACTからの2ndの登場・・・神秘的で感動的な世界

<Jazz>

Anna Greta「Star of Spring」
(CD) ACT MUSIC / Import / ACT 9748 / 2024

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Anna Gréta (piano, vocals, backing vocals, keys, organ),
Einar Scheving (drums & percussion),
Skúli Sverrisson (electric bass),
Þorleifur Gaukur Davíðsson(guitar and pedal steel),
Birgir Steinn Theodórsson(double bass),
Magnús Trygvason Eliassen(drums),
Sigurður Flosason(bass clarinet),
Albert Finnbogason(synthesizer)
Recorded at Sundlaugin Studio, Iceland during May 2023 and at Studio 1001 in Stockholm
during July - September 2023.

 前作2021 年のACTデビュー作『Nightjar in the Northern Sky』のアイスランド出身ジャズSSW、ピアニストのアンナ・グレタAnna Greta(下左)のアルバムは、久々の注目株としてここで一昨年前に取り上げたのだが、2年半の経過で待望の続編ともいえる2ndの登場で喜んでいるのである。
 最新北欧ジャズサウンドと神秘的でメランコリックな歌声に魅了されるアルバムだ。アイスランド出身のベテラン・ベーシスト・作曲家のスクーリ・スヴェリソン(下右 1966年生まれ、ルー・リード、デヴィッド・シルビアン、坂本龍一などとの共演)が今回もサポート。

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 アンナ・グレタは 2014 年からストックホルムに拠点を移しているが、生まれ故郷であるアイスランドの自然の風景の美しさと力強さからインスピレーションを得ている。2021 年の ACTデビューの前作は"鳥"にちなんでのアルバム・タイトルだったが、続編となる本作は、冬の終わりと春の到来を象徴する「春の星」とも呼ばれる"雪の輝き"という花をモチーフに選んだのだという。彼女は語るところ「春になると草原を覆い尽くし、緑から青へと変えていく姿にインスパイアされただけでなく、そうせざるを得ないから咲くという事実にもインスパイアされた」こんな意味深な言葉からも、彼女はアイスランドの美しさに留まっていない一つのコンセプトを持って曲を造り歌っていることが推測される。それは下に紹介する彼女の芸術作品からもうかがい知れるところである。

(Tracklist)

01 Her House 4:25
02 She Moves 2:23
03 Star Of Spring 3:05
04 Catching Shadows 3:47
05 Metamorphoses of the Moon 3:44
06 Spacetime 4:07
07 The Body Remembers 5:13
08 Mother Of Dreams 3:39
09 Imaginary Unit 3:27
10 Nowhere 3:53
11 Denouement 3:21

 全編美しさに魅了されるヴォーカルに満ちている

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  M1."彼女の家" 厳寒の地に春が訪れ、そこに単なる明るさでない厳しさの解放の複雑な気持ちが感じられる落ち着いた美しいヴォーカル。
  M2."彼女は移動" 開放された展開を描いているのか。
  タイトル曲のM3."春の星"は、何とも言えない独特のエレガントと言える世界、単なる明るさでなくそこには厳しいアイスランドのやや陰鬱な冬のイメージがあってのその雪の輝きの美しさの花の美を訴える。この後のM4.と共に、彼女自身のバックの高音のヴォーカルとハモって一層訴えを増す歌。
 M5."月の変身" 彼女の美しいピアノが中盤で神秘的情景を描く
 M6."時空" 珍しくちょっと陽気さが逆に気になる展開の曲。
 M7."肉体は覚えている" 60 年代から70 年代にかけてグリーンランドで起こった女性の強制出産管理をトピックにした暗部に切り込む。曲は美しいが哀しさが前に出ている。
 M8."夢の母" 郷愁の歌。
   M9."想像上の一人" 珍しいリズムカルな展開。
   M10."どこにもない" 感動的な美を神秘的に歌い上げる。後半の盛り上がりの意味を理解したい。
   N11."終局"でも、美しくしっとりと歌われるが決して明るいというものではない。自然の厳しさの中から生まれるものに深く思い入れているとしか思えない。メランコリックな中に未来を見据えた希望も感じられるところが救いである。

 とにかく彼女の素晴らしピアノ・テクニックの下、独特のヴォーカル・ラインは非常に神秘性をもって印象的に響いてくる。テーマが明るい世界ではないのであるが、なんとか美しさを求めているけなげな姿を想像させる。大自然と厳しさと美に人間性を求めて描く世界は非常に感動的で稀有な世界である。ジャズ因子はしっかり感じられる中での彼女の独特な音楽が感じられる。スカンジナビア・ジャズとしても重要なお勧めアルバムだ。

(参考)アンナ・グレタの芸術 =  「絵画」

 アンナ・グレタの話「私はいつも視覚芸術に興味を持っていましたが、私たちの多くが以前よりも少し時間を持っていることに気づいたCOVID中に自分自身を描き始めました。絵を描くことは私にとってです。自由な表現、手放しの方法、そして境界のない創造の方法。」
左から 「ブラックレイン」「すべての人の心の内側」「暗闇に唄う」(クリック拡大)

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(評価)
□ 曲・歌  88/100
□ 録音   88/100

(試聴)

 

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2024年4月 1日 (月)

ブランドン・ゴールドバーク Brandon Goldberg Trio 「 Live At Dizzy's」

10代の神童の技=よき時代のジャズを受け継いで現代風に展開

<Jazz>

Brandon Goldberg Trio 「Live At Dizzy's」
Cellar Live Records / Import / CMR050123 / 2024

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Brandon Goldberg (piano)
Ben Wolfe (bass)
Aaron Kimmel (drums)
Recorded at Dizzy's Club at Jazz t Lincoln Center,January 17 & 18 2023

Bgoldbergphototrw  まさに神童ピアニストとして話題の、フロリダ州マイアミ出身のブランドン・ゴールドバーグBrandon Goldberg(18歳)のサード・アルバムが登場した。2023年1月NYのディジーズ・クラブでライブ録音されたものというので、従って録音当時は17歳?)。
 彼は、3歳の頃からピアノを弾き、音楽に親しんできたと。批評家たちは彼の「揺るぎないテクニック、高度な和声理解、深いスイング感覚、そして最も印象的なのは、ほぼ完璧なまでに実行される明晰さとアイデアの多さ」と高く評価しているようだ。
 とにかく、デビュー作『Let's Play!』(2019 下左)とセカンドアルバム『In Good Time』(2021 下右)はともに、ダウンビート誌で 4つ星を獲得し、その年のトップアルバムに選出されている。2024年度ヤングアーツ優秀賞受賞、2023年度ハービー・ハンコック・インスティチュート・オブ・ジャズ国際ピアノ・コンクールのセミファイナリスト、2022年度ASCAPハーブ・アルパート・ヤング・ジャズ・コンポーザー賞を最年少で受賞という経歴も凄い。
 そして彼は今や10代でなんと、ニューポート・ジャズ・フェスティバル、サンフランシスコ(SFJazz)、PDXジャズ、リッチフィールド、ツインシティーズ、カラムーアなど、全米の主要なジャズフェスティバルで演奏し、又ディジーズ・クラブ、メズロウ、バードランド・シアター、オールド・ライムのザ・サイド・ドア、ボルチモアのキーストーン・コーナーなど、ニューヨークで指折りの有名なジャズ・クラブで演奏している。

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 ゴールドバーグ(下左)の3rdアルバムとなる本作は、彼のピアノにリズム隊はベテランのベン・ウルフ(下中央) のベース、アーロン・キンメル(下右)のドラムスという確かなメンバーによるピアノトリオ作品である。収録はスタンダードナンバーと2曲のオリジナル曲のプレイされたものだが、特に1950年代と1960年代の偉大なピアノ・トリオの音楽を彼なりきに現代風にアレンジをほどこしての新鮮な感覚でのプレイに注目、アフマド・ジャマール、レッド・ガーランド、オスカー・ピーターソン、ソニー・クラークなど、彼自身が影響を受けたピアニストや伝統に敬意を表しているというところだ。

(Tracklist)

1. Unholy Water
2. Wives and Lovers
3. It Ain't Necessarily So
4. An Affair to Remember
5. Let's Fall in Love
6. I Concentrate on You
7. Circles
8. Lujon (Slow Hot Wind)
9. Compulsion

 この若きピアニストが、古いニューヨークが舞台でのヒットを演じている。まあ昔のジャズ・ピアニストを聴き込むとこんなスタンダードが出てくるんでしょう。そしてそれにゴールトバーグが惹かれ技量発揮し、ウルフが旨くリードしキンメルの協力の結果であろう。なかなか良いトリオだ。

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M1. "Unholy Water" ピアノの快調な展開、中盤の活気あるドラムス・ソロ、トリオ・ジャズの楽しさの序奏。これが最後のM9.に繋がる。
M2. "Wives and Lovers"  軽妙なタッチのピアノの流れが聴きどころ。
M3. "It Ain't Necessarily So"   古くはLouis ArmStrongでElla Fitzgeraldが歌ったGeorge Gershwinの曲ですかね、ゴールドバーグのひいおじいさんの喜んだ曲でしょう。ここで演ずる結構軽さと展開の妙と速攻とパンチ力とが見事。
M4. "An Affair to Remember"  映画「めぐり逢い」の"過ぎし日の恋"ですね、これも古いなぁ・・・でもあの良き時代のほのぼの感としっとり感を出してますね。彼が演ずると聴く方もビックリですね、変なアドリブで攻めなくてむしろ良い感じだ。
M5. "Let's Fall in Love" 映画「恋をしてしまう」から、最近はDiana Krallが歌うので良く聴きますね。ここでは軽快な演奏。
M6. "I Concentrate on You" 映画「踊るニュウ・ヨーク」、コール・ポーターの曲ですね。やさしく演じ切るところがにくいところ。
M7. "Circles" ジュージ・ハリスンの曲なんだろうか、彼のオリジナルか良く解らないが、素晴らしい演奏。彼の新世代を演ずるスウィングへの変調の妙とインプロの技とが感じますね。
M8. "Lujon (Slow Hot Wind)" ヘンリー・マンシーニのムードを化けさせるベースとドラムス、そしてピアノの的を得たインプロに脱帽。
M9. "Compulsion" 三者の掛け合いの楽しさが満ちている。

 若い人のジャズというよりは、私の印象としては一世代前のジャズを現代風に味付けして蘇らせてくれている感がある。これが十代の演ずる世界かと、いやはや脱帽の世界。とにかくこの軽妙さぱ確かにアフマド・ジャマールの私の好きな部分を継いでくれている。なかなか味がある。

(評価)
□ 編曲・演奏  88/100
□ 録音     87/100

(試聴)

"Circles"

*
"An Affair to Remember"

 

 

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2024年3月28日 (木)

ペッテル・ベリアンデル Petter Bergander Trio 「Watershed」

葛藤・分裂とに想いを馳せ、音楽による喜びを描く

<Jazz>

Petter Bergander Trio 「 Watershed」
(CD)Prophone Records / Import / PCD324 2024

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Petter Bergander ペッテル・ベリアンデル (piano)
Eva Kruse エーファ・クルーゼ (double bass)
Robert Mehmet Sinan Ikiz ロベルト・メフメット・シナン・イキズ (drums)

 スウェーデンのキャリアある中堅ピアニストのペッテル・ベリアンデル(1973年生まれ、王立ストックホルム音楽大学で学ぶ 下中央)の、2014年結成の自己のトリオによる第3作アルバムの登場だ。前作と同じ鉄壁レギュラー・トリオであるハンブルク生まれのエーファ・クルーゼ Eva Kruse(1978‒ 下左)の女流ベース、イスタンブール生まれのロベルト・メフメット・シナン・イキズ Robert Mehmet Sina Ikiz(1979‒ 下右)のドラムだ。彼らはスウェーデンはじめヨーロッパにてのツアーを行ってきている。

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 ペッテル・ベリアンデルは音楽について次のように語っている。「私たちは人々にクレイジーでエキサイティングな体験と熱意を伝えたいと思っています。本作 『ウォーターシェッド』 は混乱した世界と時代から生まれたアルバムです。曲を書いたとき、人生における分裂の種を蒔きかねないような出来事について考えました。友人間、家族間、あるいは自分自身の中での葛藤。音楽は喜びと芸術を取り戻す手段のようになりました。」と。
 テーマは「分岐・分裂」というところか、しかしなかなか三者の連携プレイがみごとであって、その点は注目はされてきたトリオだが、この新作では、これまでよりインタープレイは更に洗練されてきて、モダンなビートと、そして即興が描くところ、葛藤を乗り越えた姿にこれまた磨きがかかってきた点が注目されるアルバムである。全曲ベリアンデルのオリジナル。

(Tracklist)

1. On The Train To Lviv
2. Watershed
3. Day Eleven
4. Get Out Of Here
5. Lilla Blåvinge
6. If I Would Have Known
7. Lucky
8. Days To Come

 「葛藤」、「分裂」などテーマは暗さをイメージさせるが、トータルに暗いアルバムではなく、極めて安定感の中にむしろ展望がイメージされる世界に聴きとれた。

 M1. "On The Train To Lviv"  ウクライナの戦争下, 列車が向かうはウクライナ小さな美しい都市Lviv、列車の進行する様と戦い中にある都市への思いが複雑に交錯して描かれる。
 M2. "Watershed" "あらゆる人間関係の対立によぎる分裂の不安とは"と問いかける。ネガティブな印象はない、真摯な気持ちの印象。
 M3. "Day Eleven"  "厳しい現実を知る事による暗い不安"が滲むピアノの低音の響きで始まる曲。中盤からのピアノ美しい音、ベースのソロに近い演奏部分に描いている世界が微妙に不安が襲う。ドラムスのブラッシ音もどこか不安な世界に導く。私の注目曲。
 M4. "Get Out Of Here" ベースの響きとクラシックを思わせるピアノ流れ(これはバツハだ)とに、ドラムスの軽快なブラッシ。最後の三者のユニゾンの響きが印象的。
 M5. "Lilla Blåvinge" 絶滅した蝶の名前のようだが、地球に対する人間の行いに問題意識を訴えているのか、繰り返すピアノの旋律が不安げ。
 M6. "If I Would Have Known" 来し方の状況分析にも光明がある姿を描いたか、どこか展望を感ずる。
 M7. "Lucky" いかにも三者対等な音楽は気持ちの浮き上がりの感ずる演奏。
 M8. "Days To Come" 冷静な心と期待感も含めての展望も感じられる曲。

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 私の印象深い曲はM3."Day Eleven"だ。人間の醜い分裂の姿を見てしまった自分に今できることは今何が求められているのだろうかと、懐疑的にしかし何かに向かおうする意志が感じられる曲として評価したい。
 このトリオは、あくまでも詩的情緒とノリの快感を重要視する今時風の抒情派の味を持ったコンテンポラリーな快演だ。従ってテーマの割には暗部にのめり込まないところが救いである。そして美しいメロディーも顔を出すが、あくまでも耽美的に溺れないところがテーマを生かす特徴なのかもしれない。クルーゼ(b)やイキズ(ds)の芸の細かい技によるバックアップも大いに印象を深めるが、しかしやはりそれより遥かに増してベリアンデル(p)のごく自然体の力みのない独創性満点のアドリブ演奏が、やや難題の曲想であるが手慣れた展開で演じ切る。なかなか卓越した技量のピアニストだ。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     87/100
(試聴)
"Day Eleven"

 

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2024年3月22日 (金)

イエス!トリオ YES! TRIO (Aaron Goldberg & Omer Avital & Ali Jackson) 「 Spring Sings」

三者のインタープレイで築くグルーブ感、これぞジャズ・トリオだ

<Jazz>

YES! TRIO ( Aaron Goldberg & Omer Avital & Ali Jackson ) 「 Spring Sings」
(CD) Jazz & People / Import / JPCD824001/ 2024

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Aaron Goldberg (piano except 03)
Omer Avital (bass)
Ali Jackson (drums except 03)

  ドラムスのアリ・ジャクソン(1976年米ミシガン州デトロイト生まれ)をリーダー格とする、ピアノのアーロン・ゴールドバーグ(1974年米マサチューセッツ州ボストン生まれ)とベースのオメル・アヴィタル(1971年イスラエルのギヴァタイム生まれ)のピアノ・トリオである。
  このYes! Trioの好評前作『Groove Du Jour』(2019)に続いての最新アルバム(第3作)が5年ぶりに登場である。
  彼ら3人は1990年代にニューヨークで出会い、それぞれが独自のジャズを極めつつ異なった経験から積み上げた違いを尊重しつつ、ここに三者で彼らならではのジャズを作り上げているところに妙味がある。

 このトリオの特徴を見る意味で、三者の略歴を下に紹介。

6303856118_dbdew  アリ・ジャクソンは、デトロイト出身のアフリカ系アメリカ人ジャズプレイヤーの家族に生まれたドラマー、10代の頃にウィントン・マルサリスに見出された。ニューヨーク市のニュースクール現代音楽大学の学生として、マックス・ローチとエルヴィン・ジョーンズに師事する機会に恵まれ、彼は全額奨学金で大学に通い、作曲の学士号を取得。1994年、伝説のジャズ・ドラマー、マックス・ローチを称えるビーコンズ・オブ・ジャズ・プログラムのゲスト・ソリストに選ばれた。セロニアス・モンク・インスティテュートとジャズ・アスペンは、才能のあるミュージシャンのための第1回ジャズ・アスペンに参加するために彼を選抜した。また、1998年にミシガン州の権威あるArtserv Emerging Artist Awardの最初の受賞者である。又トランペッターのウィントン・マルサリスのジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラで10年以上もドラマーを務める。

Omeravitalalw   オメル・アヴィダルは、イスラエルに生まれ、独自の旋律とグルーヴを生み出して彼ならではのスタイルを切り拓いたベーシスト。幼い頃からクラシック・ギターを学び、イエメン系ユダヤ人独特の聖歌を耳にして育ったという。テルマ・イエリン芸術学校に入学するとジャズにも開眼。92年、アヴィシャイ・コーエンらとともに米・ニューヨークへ移住、ニュースクール大学に在籍しながら本場ジャズ・ムーヴメントの中でキャリアを積む。2001年に初のリーダー作『Think With Your Heart』を発表。NYジャズ・シーンで頭角を表わしつつある中で、一時イスラエルへ帰国するが、再びNYへ戻り、自身のスタイルを確立。2014年2月、スタジオ・アルバム『New Song』をリリース。

Aarongoldbergw   アーロン・ゴールドバークは、ボストン生まれの秀才、両親は著名な科学者。7歳からピアノ、14歳でジャズを始める。ハーバード大学で歴史と科学の学位を取得し、意識の科学的理論に関する論文にて新プログラムの学位を取得し優等で卒業。しかし音楽にも集中し続け、国際ジャズ教育者協会のクリフォード・ブラウン/スタン・ゲッツ・フェローシップを授与された。バークリー音楽大学でもジャズ・ピアノでの演奏を習得、ボストンそしてニューヨークのジャズシーンで演奏。ブラッド・メルドーなどのバンドで頭角を現して以来、多忙を極めるピアニスト。卒業後の1996年、ニューヨークに戻り、再び音楽活動に専念。1998年、アーロン・ゴールドバーグ・トリオを結成し、1999年にデビュー・アルバム『Turning Point』をリリース。そんな多彩な音楽活動を続ける中でもタフツ大学の修士課程にて2010年に分析哲学の修士号を取得。2010年にはアルバム『Home』、ブラジル音楽も研究し2012年にギジェルモ・クライン(アルゼンチン作曲家)とのコラボによる『Bienestan』をリリース。2012年にはアルバム『Yes!』、2014年11月、自身の曲、スタンダード、ブラジルの曲のアルバム『The Now』をリリースし高評価。多くのジャズ・ミュージシャンと共演している。

(Tracklist)
01. Spring Sings
02. 2K Blues
03. Bass Intro To Sheikh Ali (solo bass)
04. Sheikh Ali
05. The Best Is Yet To Come
06. Sancion
07. Omeration
08. How Deep Is The Ocean
09. Shufflonzo
10. Fivin'

 まさに現代ピアノ・トリオと言わしめるところの三者の役割が見事に結集している。それは上の三者の紹介に見るようにそれぞれの経歴が非常に異なっている中での実力者で、その為の効果が著しく味を高めている。


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 スタートのM01."Spring Sings"からアルバム・タイトル曲が登場し、スウィングを愛しながらもジャズを探求している試みの集合がコンテンポラリーに展開。ベースは弾きに独特なうねり感があり時にアルコも響かせる、軽やかに繰り出してくるが意外なところでパンチを効かせるドラム、歯切れのよさや透明感たっぷりのクリアー・タッチのピアノが心地よい。三者の乱れぬ交錯が対等に進行してまさにトリオ演奏。     
 M02."2K Blues"は、ベースの速攻とピアノの旋律、ドラムスのブラッシ音の躍動的攻め合いはものの見事に展開される。中盤のベース、それに続くドラムスの響きが曲のメリハリに貢献、最後は早弾きピアノが印象的。
 M03."Bass Intro To Sheikh Ali "は、ベースソロ。充実した低音が心に響く。そして M04."Sheikh Ali"のピアノ・トリオ演奏に繋がって、ピアノの役割を盛り上げ最後は硬質な繊細なピアノでまとめる。
 M05."The Best Is Yet To Come" ジャズの溌溂とした流れが生きている。トリオの流れが楽しい。
 M06."Sancion" 珍しいゆったりとしたピアノ旋律主導の曲。リズム隊のドラムスとベースの協調が品格ある。
 M07. "Omeration"息の合ったトリオの繰り返すハーモニーとユニゾンが見事、それを誘導するドラムスが頼もしい。
 M09. "Shufflonzo" スウィングしてのピアノに、ベース、ドラムスが快調に展開する。軽やかなベース・ソロ、続くドラムス・ソロのパンチ力も聴きどころ。演者の楽しさが伝わってくる。
 M10 "Fivin'" ドラムスのリズムに乗ってのベースとピアノとの掛け合いがこれまた楽しさ十分。

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 ピアノ・トリオであるので、自ずから旋律がピアノによる曲の運びは当然みられるが、ベースの多彩な音、ドラムスの展開を誘うダイナミズムが、これぞトリオ演奏と色付けされ聴き応え十分。とにかく剛柔バランスが絶妙にとれていて、今日感覚溢れるコンテンポラリーな展開が続く。トリオとしての主役であるゴールドバーグ(p)の自然体な正攻法に展開する流れに、アヴィタル(b)のそれに難題を振り向けるような熱い演奏が色付けにいい役割をしている。このトリオのリーダーのジャクソン(ds)は、やはり一歩引いているが、インタープレイの誘導がなかなか旨く、三者三様の立ち振る舞いが、それぞれの個性を発揮していてグルーヴ感を築く楽しい演奏だ。これぞ現代ジャズの一つの重要な流れであろう。ユーロ・ジャズのクラシックからの発展形としての流れなどに私などは満足している今日ではあるが、ジャズの王道をしっかり築いている風格すら感ずるこのタイプは当然歓迎だ。

(評価)
□ 演奏  90/100
□ 録音  88/100

(試聴)

 

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2024年3月17日 (日)

リン・アリエル Lynne Arriale 「BEING HUMAN」

社会や文化の二極化の悪影響に反応して、愛、希望、団結をテーマに展望を描く

<Jazz>

Lynne Arriale 「BEING HUMAN」
challenge Records / Import / CR73272 / 2024

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Lynne Arriale - Piano & YAMAHA Clavinova
Alon Near - Double bass
Łukasz Żyta - Drums

Recorded dates : july 27-28, 2023

  リン・アリエル(エリエイル)(1957年生まれ ↓左)の新メンバーによるピアノ・トリオ新作アルバム。 ビルボードやThe New Yorker、United Press Internationalなどのチャートにランクインしてきたアメリカの女流ピアニスト・作曲家で、リーダーとしての17枚目である。 
 この『Being Human』は、最近のオランダのChallenge Records Internationalからの4枚目のアルバムだ。ベーシストはイスラエルのアロン・ニア(↓中央)、ドラマーはポーランドのルカシュ・ザイタ(↓右)というNYCで活躍するメンバーによるトリオにて、人生を肯定する人間の側面を探求するオリジナル曲を演じている。

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 近年、リン・アリエルの作曲やアルバムは、ライナーにも書いているが、現在の社会問題をテーマに熱く反応している。『Chimes of Freedom』(2020年)は、世界的な移民危機と、自分自身と家族のためにより良い生活を見つけるべく危険にさらす難民の経験に焦点を当て『The Lights Are Always On』(2022年)は、COVID-19がもたらした人生を変える出来事を検証し、パンデミックの最前線で介護者として活躍した人や、民主主義を擁護した人など、英雄に敬意を表した作品であった。

  今回の『Being Human』では、アリエルのオリジナル曲で主題が曲のタイトルそのものになっており、情熱、勇気、愛、信念、好奇心、魂、忍耐、心、感謝、喜びによって私たちの人生が豊かになる様を希望的に称えている。社会や文化における二極化の悪影響に反応して、愛、希望、団結を肯定するためにこのアルバムを制作したというのだ。そして曲はそれぞれ対象者に献呈している。

 実際アリエルは次のように語っている・・・「この組曲は、この世界の分裂と混乱に応えて書きました。この音楽は、私たち全員が共有する資質に焦点を当てています。それは私たちの人間性を定義します。このアルバムが高揚感と一体感と楽観主義を伝えるものになることを願っています。献呈は、音楽にインスピレーションを与えた特徴を体現していると感じる人々への私の賞賛を反映しています」

(tracklist)
02. Courage (3:35)
03. Love (3:16)
04. Faith (3:34)
05. Curiosity (2:43)
06. Soul (3:44)
07. Persistence (4:14)
08. Heart (4:29)
09. Gratitude (3:29)
10. Joy (4:13)
11. Love (Reprise) (2:42) (chorus + keyboard?)
*all compositions by Lynne Arriale

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 コンテンポラリー・ジャズの世界感で全曲アリエルの作曲だ。曲のタイトルが彼女の主張する人間のテーマであり、どちらかというとポジティヴな攻めのリズムとむしろ明るさの目立つメロディーで愉しめるピアノ・トリオ作品。印象として人間賛歌の主張といったほうが良い響きで迫ってくる。それは締めのM11."Love"が、YAMAHAのコーラスで演じられているところに全てを物語っている。
 まあ、このアルバムのテーマというかコンセプトからいっても、私の好むところの哀愁あるメロディーによるピアノの響きというピアノ・トリオ作品とは一線を画している。
 M1."Passion" 、M2."Courage"と、情熱と勇気を力強さを感ずる演奏で冒頭から攻めて来る。M1.はスウェーデンの若き女性環境活動家Greta Thunbergに捧げ、M2.は、ウクライナ国民への讃えだ。
 M3."Love" 愛情あふれるピアノが丁寧に演奏される。人類に捧げるのだ
 M4."Faith"  フォーク調の明朗(という表現が当たるだろうか)な曲、科学を超えた信仰の意思を。信仰を持つ人々へ
 M5."Curiosity" 好奇心を称え、いよいよ彼女らしいコンテンポラリーな展開。ベース、ドラムスの展開が激しい中にきらりと光るピアノの美しい音。インプロの醍醐味に迫る私の注目曲。
 M6."Soul" 魂、ブルージーで意外に落ち着いた世界。自由と民主主義を擁護活動家Amanda Gormanに捧ぐ
 M7." Persistence" 根強さ、強い不屈の精神の発展的讃歌、女性の平等と機会を求める力となったMalala Yousafzaiに捧げている
 M8."Heart" アロンのベースが語りにちかい即興メロディーで心を休める
 M9."Gratitude" 感謝、ぐっと落ち着いた迫り、難病で死に至ったMottie Stepanekに捧げている 
 M10."Joy" 明るさの展開、溌溂と。
 M11."Love (Reprise)" 混声合唱が描く人類讃歌。

 彼女が描く社会派コンセプト・アルバムとして作り上げているが、あまり難しく考えないで聴く方が、全体の意欲的な溌溂感と演奏の楽しさを味わえるかもしれないが、そこに描くところの人間という存在のプラス思考を描いている姿は感じて聴く必要があろう。
 スイング感をベースしていて、ジャズの伝統的流れを尊重しつつ、難しくしないでごく親しみやすい明快な演奏が活発に展開。フォーク調が入るのは意外だったが、哀愁感のバラードも聴かせ、得意のコンテンポラリーな即興も織り込んで、結構多彩な変化を聴かせメリハリある攻めの演奏が主体で楽しる。なかなか意欲作である。

(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音   : 88/100
(試聴)

 

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2024年3月12日 (火)

山本剛 Tsuyoshi Yamamoto Trio 「SWEET FOR K」

山本剛トリオと神成芳彦 伝説のTBMタッグが再びしっとりと美しくエロール・ガーナーを

<Jazz>
Tsuyoshi Yamamoto Trio 「SWEET FOR K」
SOMETHIN'COOL / JPN / CD / SCOL1071 /  2024

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山本 剛(piano)
香川 裕史(bass)
大隅 寿男(drums)

レコーディング、ミックス:神成芳彦  2023年11月20日音響ハウス(Tokyo)にて

 ここで、一昨年取り上げた前作『Blues for K』(SCOL-1062)で再会したピアニスト・山本剛(↓左)と、TBMレーベルの元録音エンジニア・神成芳彦の新作アルバムの登場。 『ミッドナイト・シュガー』『ミスティ』など画期的な高音質録音と名演奏で数々の日本発・世界的名盤を生み出して、我々の若き頃を楽しませてくれたこのコンビが、栃木県那須高原にある神成のプライベートスタジオで吹き込んだ前作品は、「ジャズオーディオディスク大賞2022 銅賞」も受賞するなど、話題と高い評価を得た。そして2023年には、「ぜひプロスタジオでの録音でも聴いてみたい!」という声も上がったとかで、神成芳彦が「東京・音響ハウス」に登場して、昔のTBMレーベルもレコーディングを行ったこのスタジオで老骨に鞭打って再び腕をふるう事となったもの。 選曲は山本剛が敬愛してやまないエロール・ガーナーを中心としたバラッド集。まあ二人にとってみればお互い歳を取って、ここにその昔の再現を試みたというのは、これまた注目していいものである。メンバーは、香川 裕史(bass↓中央)、大隅 寿男(drums↓右)と不変のトリオ。

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(Tracklist)

1. Night Wind (ErrollGarner)
2. Paris Bounce (ErrollGarner)
3. When Paris Cries (ErrollGarner)
4. Dreamy (ErrollGarner)
5. Mood Island (ErrollGarner)
6. Solitaire (ErrollGarner)
7. Daahoud (Clifford Brown)
8. Polka Dots and Moonbeams(Jimmy Van Heusen)
9. Sweet for K
10. Laura (David Raksin)
11. Garner Talk

46347   エロール・ガーナーErroll Louis Garner (1921,6,15 - 1977,1,2 右)と言えば、意外に皆が言わないのだが、現代ピアノ・トリオの元祖と言ってもいい人だ。それは1944年でありモダン・ジャズ時代のピアノ・トリオの先駆者である。つまり、ピアノ・トリオの元祖はナット・キング・コールであるが、実は、その最初のスタイルは、ピアノ、ベース、ギター編成だったんですね。それをピアノ、ベース、ドラムスの形に仕上げたのがエロル・ガーナーなのだ。我々はエロル・ガーナーといえば"Misty"ということになって、曲が最初に出てくるが、現代ピアノ・トリオの先駆者としてのピアニストの貢献が大きかった人である。

 山本剛は、若い時にこのガーナーの"Misty"を演じてスター・ダムに乗ることとなったので、エロル・ガーナーには相当の思い入れがあると思う。そんなわけで意外に知らないガーナーの曲をここで聴くことになったのだ。リストを見ると6曲ここに収録されている。

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 エロル・ガーナーの曲は、M1.からM6.まで6曲続く、まずM1."Night Wind" は、今回の録音の最初の演奏は気合付でM2."Paris Bounce"であったようだが、このアルバムではバラード演奏で聴かせるトップ曲に出てきた。
 そして、M2. "Paris Bounce" は軽快に
   M3. "When Paris Cries" ぐっとピアノがしっとりと演じられる。香川の旋律のアルコ奏法がさらにムードを盛り上げる。とにかくうっとりだ。
 M4. "Dreamy" 一時代前の夜のアメリカンな甘さが響いてくる。
 M5. "Mood Island" 気分を変えてちょっと軽く軽快に 
   M6. "Solitaire" ガーナーの最後は、ピアノ・ソロで美しくそして軽い中にちょっと切なく
 M7. "Daahoud" Clifford Brownの曲をバラード調で
 M8. "Polka Dots and Moonbeams" ライブではおなじみのようだが、時代的な古い感じはあるがバラードでの演奏に聴き入ってしまう
   M9. "Sweet for K" 山本の回顧的感謝の美しさの曲
   M10. "Laura" David Raksinの曲だか、ガーナーの持ち曲でもあったようだ。うっとりと聴ける
   M11. "Garner Talk" ガーナーへの想いを美しく

  とにかくうっとりとして聴いていればそれでOKというアルバム。演奏は日本のピアノ・トリオの一面として貴重な世界。
 問題の神成芳彦(上写真前)の録音だが、ここでも復活の気合が入ったことは十分に窺い聴くことができた。特に山本のピアノはパーフェクトに近い録音だと思う。ただちょっと残念なのはドラムスの響きとブラシの音やシンバル音の硬質な繊細な美しさがアメリオ録音の音には負けていた。ベースももうちょっとソリッドな音でリアルに前に出ても良かったのでは(好みもあると思いますが)とも思う、そこは私としては若干残念に思ったというところ。
 そうは言っても、これだけ音質にも迫って良質なアルバムを求めるのは嬉しいことである。評価はしたがって良いところに落ち着いた。

(評価)
□ 選曲・演奏  88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

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2024年3月 7日 (木)

ヴィクトリア・トルストイ Viktoria Tolstoy「STEALING MOMENTS」

清々しいテンダーにしてロマンティックな好印象のアルバム

<Jazz>

VIKTORIA TOLSTOY 「 STEALING MOMENTS」
ACT MUSIC / Import / ACT97472 /  2024

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Viktoria Tolstoy (vocal) (possibly tambourine? on 03)
Joel Lyssarides (piano except 01) (keyboard on 01, 08, 09, 10) (celeste on 03)
Krister Jonsson (electric guitar except 01) (acoustic guitar on 01)
Mattias Svensson (bass except 01)
Rasmus Kihlberg (drums except 01) (percussion on 06, 08, 09)

Produced by Nils Landgren

Viktoria_tolstoyaw    文豪トルストイが高祖父に当たるということで話題のロシア系スウェーデン人のジャズ歌手ヴィクトリア・トルストイ(1974年スウェーデン-シグトゥーナ地区マーシュタ生まれ)の、今回は、ACTでの第1作『Shining On You』(2004年)から20年になるのを記念しての、ピアノ、ギター、ベース、ドラムのカルテットをバックにした彼女をとりまくファミリーを意識したある意味感謝のアルバムのようだ。もともと彼女は1990年よりの活動で、既に30年以上のベテランということの仲間入りしている。もともとジャズに軸足を置いてはいるが、ポップス、ファンク畑などオールラウンドな適応力もあっての人気ヴォーカリストらしい作品となっている。
   過去にここでは彼女の映画音楽を歌ったアルバム『Meet Me At The Movie』(2017)を取り上げたことがあったが評価はよかった。
 今回のアルバム中身はデビュー作から関係しているアーティスト達の作曲した曲が中心になっている。下の曲リストを見ると解かるが、スウェーデン・ジュズ界の巨匠ニルス・ランドグレンをはじめ、イーダ・サンド、ヴォルフガング・ハフナー、セシリエ・ノルビー、ラース・ダニエルソン、イイロ・ランタラ、ヤン・ルンドグレンといったベテランミュージシャン、長年の友人や仲間たちが、彼女の歌声や造られてきたイメージを新しい曲に盛り込んで書き下ろし、また注目は、故エスビョルン・スヴェンソンのインスト曲であった「Hands Off」も収録されている。

(Tracklist)

1 A Love Song (Nils Landgren)
2 Good and Proper End (Iiro Rantala, Anna Alerstedt)
3 Wherever You're Going (Ida Sand)
4 Hands Off (Esbjörn Svensson, Eva Svensson)
5 Summer Kind Of Love (Jan Lundgren, Hanna Svensson)
6 I Don't Wanna Lose You (Ida Sand)
7 License To Love (Lars Danielsson, Caecile Norby)
8 What Should I Do (Ida Sand)
9 Synchronicity (Wolfgang Haffner, Anna Alerstedt)
10 Stealing Moments (anna alerstedt)

 プロデュサーのニルス・ラングレンの曲M1. "A Love Song" (vo-acg-key)から、オープニングということで、 アコースティック・ギターのバックがムードを盛り上げて、心から感謝をしっとりと歌い込む。
 M3. "Wherever You're Going" (vo/tambourine?-elg-p/celeste-b-ds) ポピュラーっぽい歌が展開。
 M4. "Hands Off" (vo-elg-p-b-ds) 注目のEsbjörn Svenssonのインスト曲。やはりガラっとムードが変わる。中盤のピアノの調べと対比して彼女の歌が説得力のある清々しい歌声で、情緒たっぷりに歌う。
 M5. "Summer Kind Of Love" (vo-elg-p-b-ds) ジャズっぽいエレキのサウンドとピアノの響きとで、難しい旋律をうまくこなして歌い込む。この辺りは見事なジャズに展開。
 M6. "Don't Wanna Lose You" (vo-elg-p-b-ds/per) ぐっとバラード調で、心に染み入るしっとりとしたムードで歌い上げる。時として襲う優しく歌う高音が美しく響く。やさしいギターとピアノの演奏の味付けが良い。
 M7. "License To Love" (vo-elg-p-b-ds) 清々しい歌、彼女の世界に歌う。
   M9. "Synchronicity" (vo-elg-p/key-b-ds/per) 丁寧な歌い込み。
   M10. "Stealing Moments" (vo-elg-p/key-b-ds) エレキ・ギターとの対話的ゆったりとしたヴォーカルが聴きどころ、後半のベースの旋律が効果的。

Gettyimages47017w  やはり彼女の透明感のあるクリーンに澄みきった声は貴重だ。そして歌詞の情感を見事に歌い込みちらっと見せるハスキーな味も魅力がある。又バックの繊細なピアノと優しく描くギターがヴォーカルを生かすべく見事に演じ切る。こうしたヴォーカルものは、大編成バックでないほうがしっとり感が出てよい。そしてなんとなく全編を通して品のある処が見事である。
 そもそもACTデビュー20周年の仲間というかファミリーとして関係諸氏に感謝しているということもあるのか、非常に親近感ある好印象の世界を演じ切っている。若干ポップぽいところも見せながら、非常に丁寧に歌い込むところは貴重。又一方我々にとってもエスビョルン・スヴェンソンの名前が出てくるだけで感動してしまうところがある。
 取り敢えず、お勧めのアルバムだ。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  88/100
□ 録音      87/100

(試聴)

 

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2024年3月 2日 (土)

ロブ・ヴァン・バヴェル Rob Van Bavel 「Time for Ballards - The Solo Sessions」

バラードを演じたピアノ・トリオ2作品から最後に登場のピアノ・ソロ作品

<Jazz>

Rob Van Bavel 「 Time for Ballards - The Solo Sessions」

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Rob Van Bavel : Piano

19088518880_ee84w   オランダを代表するピアノの詩人と言われるロブ・ヴァン・バヴェル(→)による人気のピアノ・トリオ作品『Time for Ballads バラードの時間』2作品に続いて、3部作の最後のソロ・ピアノ・アルバムである。
 彼は、1987年にロッテルダム音楽院を最高点で卒業した後、セロニアス・モンク・ジャズピアノ・コンペティションやオランダのグラミー賞Edisonなど数々の賞を受賞する実力派。アムステルダム音楽院(CvA)および王立音楽院(デン・ハーグ)で教師として勤務。 これは2022年から発表してきたバラード集

 ピアノは話題のベルギーのChris Maene Straight Strung Concert Piano(下) により最高峰の音を聴かせる。このピアノは、300年以上にわたるピアノ製作の深い知識と最新の技術を組み合わせたクリス・メーンのストレートストリンググランドピアノで、徹底的な研究と、現代のグランドピアノに代わる革新的で芸術的な代替品を構築したいという究極の願望からの大胆な新世代の楽器として制作されたもの。

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 ロブ・ヴァン・バヴェルについては、過去に日本では2000年に澤野工房がピアノ・トリオ・アルバム『JUST FOR YOU』(Rob van Bavel : piano, Marc van Rooij : bass, Hans van Oosterhout : drums / AS007/ 2000)をリリースしてくれて知れたところであるが、躍動感あるリズムにのりつつ、リリカルで爽快な一枚として受け入れられた。
 そしてこの2022年にリリースされた『Time for Ballads』は、彼のピアノと別メンバーのベース、ドラムスのトリオで「The The Maene Sessions」と「The Studio Sessions」の2アルバムが、リリカルにして優雅、優しさとリズムが快感で好評であった。そして2023年になってストリ-ミング及びダウンロードという方法で、このピアノ・ソロ版がお目見えしたという経過だ。

(Tracklist)

1.Everything Happens to Me 05:07
2.Love Dance 03:47
3.Ballad of the Sad Young Men 05:23
4.Two for the Road 03:26
5.Always and Forever 04:08
6.Bob's Piano Bar 04:18
7.Cinema Paradiso 02:45
8.Guess I'll hang my Tears out to Dry 03:19
9.For Lieke 02:54
10.Ballad for René 03:19
11.Ballad for Danny 02:52
12.Your Nocturne 01:24

 もともと私はジャズに於いてのピアノものは何よりも好むのだが、それはソロよりはベース、ドラムスとのトリオ好きである。しかしこのアルバムはピアノ・ソロである。しかし、実は前作の『Time for Ballads』の2つのアルバムは、トリオものであったが、実はその内容は、バヴェルのピアノ主導型のアルバムで、それぞれ3者のインタープレイも楽しめるが、インプロヴィゼーションもピアノ主体であってトリオとしての面白みは若干少なかった。ただ比較的優しい演奏であったため、今回はソロということだが、それほど大きな違和感はなく続編的な受け入れが出来た。

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 M1."Everything Happens to Me"スタートから情緒たっぷりのバヴェルの流麗なピアノが聴ける。フランク・シナトラ、チェット・ベイカーなどの歌が有名だが、しっとり感も十分。
 こんな流れで全編スタンダードなど美しい詩的なメロディで綴ってくれる。M11"Ballad for Danny",M12"Your Nocturne"の締めくくりも刺激の少ない万人向けのピアノトリオ・ファンの心を掴むであろう演奏である。夜に、部屋にそう大きな音でなく適音量で流していると快感の作品。ときにこうしたアルバムも精神衛生上良いのではとお勧めである。

                - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -  

『Time for Ballards 』の前作2アルバムは以下のようなものである

🔳Rob Van Bavell『Time for Ballards - The Maene Sessions』
    Dox Records / Import / Dox5881 / 2022

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Rob van Bavel - grand piano
Frans van Geest - bass
Marcel Serierse - drums

(Tracklist)

1.Ballad for Rene 03:44
2.In A Sentimental Mood 05:15
3.Your Nocturne 03:42
4.Search for Peace/Peace 05:53
5.Bob's Piano Bar 04:57
6.Elegie 05:08
7.I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry 03:24
8.Ballad For Danny 04:26
9.De Tor Ahead 04:50
10.For Lieke 02:40
11.Roaring Heights 04:18
12.The Shadow Of Your Smile 06:31
13.Body And Soul 04:46

 とにかくピアノ・トリオ・ファンから圧倒的支持があった人気アルバム。何んといっても難しい演奏でないところが万人受けしたと言って良い。若干トリオとしての三者のインタープレイのスリリングな味が少し薄いところが残念なところか。

 

🔳Rob Van Bavell『Time for Ballards - The Studio Sessions』
    Dox Records / Import / DU8192R001CD / 2022

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Rob van Bavel (piano)
Marcel Serierse (drums)
Frans van Geest (bass)

(Tracklist)

1.A NIGHTINGALE SANG IN BERKELEY SQUARE 4:15
2.MANHATTAN 4:23
3.TWO FOR THE ROAD 3:25
4.ALWAYS AND FOREVER 4:33
5.MISTY 4:52
6.BALLAD OF THE SAD YOUNG MEN / LARGO 5:24
7.SLOW BOAT TO CHINA 4:09
8.HARD TO SAY GOODBYE / THREE VIEWS OF A SECRET 4:58
9.EVERYTHING HAPPENS TO ME 5:07
10.THE PEACOCKS 4:49
11.DAYDREAM 4:49
12.LOVE DANCE 3:45
13.CINEMA PARADISO / I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE 5:38

 『Time for Ballads』プロジェクトの第2弾、チック・コリアの影響を受けているといわれるバヴェルのピアノが、相変わらず心地よいメロディーを展開。期待のM5."MISTY"は、意外に軽妙なアップテンポでちょっと驚いた。

<当シリーズ3作の総合評価>

(評価)
□ 編曲・演奏  :  88/100
□ 録音     :  88/100

(試聴) 

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2024年2月26日 (月)

アンドレア・モティス Andrea Motis 「Febrero」

中南米曲を中心にアンサンブル演奏をバックに歌うアルバム

<Jazz>

Andrea Motis 「Febrero」
AUTO EDITED / Import / JJAMCD00302 / 2024

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Andrea Motis(vocals & trumpet)
Camerata Papageno(young Chilean classical chamber orchestra)
Christoph Mallinger(violin & mandolin)
Federico Dannemann(guitar & direction)

20190423fbw   スペインはバルセロナ出身の人気歌手でトランペッターのアンドレア・モティス(1995年生まれ、→)の2022年の『Loop Holes』(JJAMLP00101)及び『Colors & Shadows』(kkJ187)に続くニューアルバムということで、さっそく聴いてみた。  チリのクラシック・アンサンブルであるカメラータ・パパゲーノと共演だ。レパートリーは、アンドレア・モティスが、ギタリストでアレンジャーのフェデリコ・ダンネマンとともに選曲。チリ、ペルー、アルゼンチンに由来する中南米の音楽、及び、ブロードウェイのナンバーを、親交のあるクリストフ・マリンガー(vln,mandrin)、フェデリコ・ダンネマン(g)のサポートを得て完成させたと。彼女のパートナーであるオーストリアのヴァイオリニスト、クリストフ・マリンガーとパパゲーノ文化財団とのつながりから生まれたという経過の様だ。

 モティスの言うには「繊細なアレンジと録音の響きを通して録音された曲は、チリでの夏の日々に私たちみんなが一緒に過ごした穏やかさと深い喜びの感覚を思い出させてくれる」と、いうことのようだ。そして彼女は具体的には、「ガーシュウィン兄弟の2つの作品、ピクシングイーニャとジョビンの作曲、2つのメキシコのボレロ、そしてオラシオ・サリナスによるインティ・イリマニのヴァージョンを収録したこのアルバムは、作者、演奏者、未来のリスナーなど、さまざまな世代の時代を超越した瞬間の記録である」と説明している。

(Tracklist)

1.La Pajita (Horacio Salinas / Gabriel Mistral)
2.The Man I Love (George & Ira Gershwin)
3.Carinhoso (Alfredo da Rocha Viana Filho Pixinguinha / João de Barro Braguinha)
4.Noche de ronda (George and Ira Gershwin)
5.Garota de Ipanema (Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Morales)
6.Someone to Watch Over Me (Agustín Lara)
7.Sensemayá (Horacio Salinas / Nicolàs Guillén)
8.Perfidia (Alberto Domìnguez Borrás)
9.El Carnaval (Horacio Salinas)

 ちょっと心配したのは、フェデリコ・ダンネマン指揮のカメラータ・パパゲーノの音世界だ。このあたりは私の好みの問題で、おそらくソロ楽器などでしっとり落ち着いた世界というのとは全く別物であろうと踏んでいたが、まさにその通り、ストリングスの美しさもあるが、どちらかというと中南米の独特なホットな世界だ。彼女の前作『Colors & Shadows』もビック・バンドがバックであって、ヴォーカルを聴くには若干期待に反していたのだが・・・・。
 今回のこのアルバムも、アンサンブル主体のカメラータの音とジャズやラテンアメリカのリズムをミックスした作品として聴くのがいいといったところ。彼女のトランペットも勿論入ってくるが、その演奏を聴くのか、ヴォーカルを聴くのか、その役割も気にしているのだが、どうも私の期待とは別の世界に仕上がっている。

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M1."La Pajita " チリでは子供から大人まで広く知られた曲とか、マンドリンと共に相変わらずのちょっと可愛らしさのある歌声で優しく歌って聴かせる、このあたりは期待の世界。
M2."The Man I Love" ストリングスから始まって、更に美しくしっとりと歌いあげる
ここまでは、トランペットの登場もなくファンタジーな物語の始まりのムード。
M3."Carinhoso" ブラジルの愛の有名曲。モティスの優しい歌声。どうもバックのストリングスが私のラテン印象に合わない。
M4."Noche de ronda" これも古いメキシコの歌、彼女の巻き舌の歌は初めて聴いた感じ。
M5."Garota de Ipanema" ここでは、リズムカルな誰もが知っている曲の登場、やっぱりぐっと落ち着いた歌だ。彼女のトランペットもようやく歌い上げる。最後に変わった編曲。
M6."Someone to Watch Over Me" ガーシュウィンの昔の曲、フランク・シナトラとかエラ・フィッツジェラルドの歌、ちょっと時代ものを感ずる歌だが聴き惚れるところもある。
M7."Sensemayá" これは快調のテンポの難しい曲、メキシコの曲でこのカラメータのような多楽器編成向きの曲の様だ。モティスのトランペツトも生き生きと。
M8."Perfidia" メキシコのアルベルト・ドミンゲスの曲。ちょっと変わった編曲でスタート。テンポは快調だが・・・・とにかく超有名曲を楽しくといつたところか。
M9."El Carnaval"民族ダンス・ミュージツクの仕上げ。モティスのトランペットも加わってのお祭り的世界。

 このアルバムは、勿論モティスのヴォーカルものであるが、どうもカラメータ・パパゲーノというアンサンブル演奏集団(チリの非営利団体で、クリスチャン・ボエシュが設立・会長を務めており、この財団は、地方の78の学校に通う6歳から10歳までの約2,000人の子どもたちの才能を音楽を通じて育成することを目指しているもの) の明るい演奏に大きなウエイトがあって、それ自身が私の好むジャズとしての感覚とのズレでどうも手放しに楽しめない。このようなところは聴く者の好みであるから、喝采を浴びせる人もいるのかもしれないが。
 私としてはギター、ピアノなどとのデュオぐらいのほうがかえって彼女の歌を楽しめるような気がするのだ。そんなところで今回も期待とは別世界であった。しかし、トランペッターとしての期待度もあろうから、なかなか難しい、ペットといえどもチェット・ベイカーのような世界も有るし、まだまだ彼女にはヴォーカルの質が好きなので期待はしている。従って演奏と歌をどのように聴かせてゆくかは今後の課題だろう。いずれにしても私としては次回は小編成ものに期待したいところだ。

(評価)

□ 編曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       85/100

(視聴)

"Someone to watch over me "

*
"El Carnaval"

 

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