JAZZ

2020年7月10日 (金)

ディナ・ディローズ Dena DeRose 「Ode To The Road」

叙情性と風格のある円熟ヴォーカルの本格的ジャズ・アルバム

<Jazz>

Dena DeRose 「Ode To The Road」
HIGH NOTE / US / HCD 7323 / 2020

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Dena DeRose (vocal, piano)
Martin Wind (bass)
Matt Wilson (drums)
Sheila Jordan (vocal on 04, 06)
Houston Person (tenor saxophone on 07, 11)
Jeremy Pelt (trumpet on 02, 08)

2019年10月1&2日ニュージャージー州ティーネックのTeaneck Sound録音

 

  ピアノ弾き語りの、もうベテラン組に入る私の注目女性歌手ディーナ・ディローズ(1966年ニューヨーク州ビンガムトン生まれで今年54歳)の、前作『United』(HCD7279/2016)以来の4年ぶりのニュー・アルバムだ。なんか非常に久しぶりって感じで聴いている。
 今作もマーティン・ウィンド(b)&マット・ウィルソン(ds)とのトリオ作品だが、シーラ・ジョーダン(vo)、ヒューストン・パーソン(ts)、ジェレミー・ペルト(tp)というゲスト陣を迎えて本格的ジャズ・ヴォーカル・アルバム。
 彼女の演ずるは、NYジャズそのものだが、現在はオーストリアに住んでいてグラーツ音楽大学で教鞭をとっているという。そしてNYには頻繁に戻って活動しているという生活のようだ。

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(Tracklist)

01. Ode To The Road
02. Nothing Like You
03. Don't Ask Why
04. All God's Chillun Got Rhythm / Little Willie Leaps
05. That Second Look
06. Small Day Tomorrow
07. The Way We Were
08. Cross Me Off Your List
09. I Have The Feeling I've Been Here Before
10. A Tip Of The Hat
11. The Days Of Wine And Roses

 

  スタートはアルバム・タイトル曲M1."Ode To The Road"、ピアノ・トリオのバックに堂々の彼女のヴォーカルは、風格すら感ずるダイナミックスさとパッションある躍動感はジャズそのもので、安心してリリカルなハード・パップの世界に身を寄せて聴くことの出来る世界だ。
  そしてM3."Don't Ask Why" 、M6."Small Day Tomorrow"のスロー・ナンバーになると、その叙情性と円熟感あるヴォーカルにうっとりというところ。私はバラード好きであって、このテンダーであるにも関わらずブルージーな情熱の世界を演ずる彼女の世界は貴重である。
 M7."The Way We Were"は、ヒューストン・パーソンのテナー・サックスが加わって、更にスロー・ナンバーを朗々と歌い上げてお見事。
 M8."Cross Me Off Your List"は、今度はジェレミー・ペルトのトランペットが加わって軽快な展開に快活スウィンギン・ジャズ。
   M9."I Have The Feeling I've Been Here Before"のバラードは、説得力十分。
 締めくくりのM11."The Days Of Wine And Roses"は、ミディアム・テンポのトリオ演奏とパーソンのテナー・サックスも快感。

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 彼女はピアニストであり"弾き語り"だけあって、メロディーを十分意識しての歌詞に味付けと叙情性を描いている。その様は風格のヴォーカルでありお見事だ。中音域を中心としての歌声には温かみもあって細かいニュアンスをじっくり訴えてくれる。そして躍動感あるスウィンギーな曲にはドラマティックにパンチ力も備わっていてパッションを感じ、文句の言いようのない歌世界だ。
 もともとの彼女のピアノ・プレイも文句なく快調に流れて快適だ。
 又、このアルバムでのゲストのシーラ・ジョーダンの90歳の若々しいヴォーカルには驚かされた。更にゲスト陣も奮戦していて良いアルバムに仕上げられている。久々の本格ジャズ・ヴォーカル・アルバムを聴いた思いである。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌  90/100
□ 録音       85/100

(試聴)

 

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2020年7月 6日 (月)

ブラッド・メルドー Brad Mehldau 「Concert in Hannover 2020」

オーケストラとの圧巻の協演による・・・
メルドーの欧州伝統クラシックへの挑戦 (歴史的貴重盤登場)

<Classic>

Brad Mehldau,piano
Clark Rundell, conductor NDR Radiophilharmonie
「Concert in Hannover 2020」
HEADLESS HAWK / HHCD-20703 / 2020

Hannover2020

Bm1  ここに来て、コロナ渦への心象のアルバム『Suite:April2020』、そして先般の聴く方はあまり気合いが入らなかったアルバム『Finding Gabriel』と違って、本格的ジャズ・アルバム『Round Again』と発売が続くフラッド・メルドー(→)だが、今年2020年の一月に、ドイツにてのメルドーの古典派からロマン派音楽のクラーク・ランデル指揮によるNDRラジオフィルハーモニーとの共演ライブの模様を収録した最新ライブ盤がコレクター相手にリリースされている。
 つまり今やジャズ・ピアニスト世界ナンバー1とまで言われるブラッド・メルドーの驚きのヨーロッパ伝統クラシック音楽への挑戦だ。考えてみれば、2年前にはアルバム『アフターバッハ』では、バッハ曲のクラシック演奏に加えて、それをイメージしての彼自身のオリジナル曲を展開したわけで、クラシック・ファンにも驚きを持って歓迎されたわけで、そんなことから、今回のドイツでのこんな企画もさもありなんと思うのである。
 このコレクター・アルバムは、音質も期待以上に良好で、メルドー・ファンにとっては彼を語るには是非必要で内緒に持っていたい貴重盤になりそうだ。

 

(Tracklist)

1.Prelude No.10 In E Minor(The Well-Tempered ClavierBbook I), BWV 855 7:50
        プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855
2.Concerto For Piano And Orchestra 1st Movement      14:17
3.Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement     12:12
4.Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement      12:30
        プレリュードBの後のプレリュード 10の短調
       「フーガの芸術」BWV 1080から:コントラプンクトゥスXIX
        ヨハンセバスチャンバッハ/アントンウェーバーン
       「ミュージカルの犠牲者」BWV 1079/5から:フーガ(2nd Ricercata)

(Bonus Track) ライブ・アット・コンサートホール、ハノーファー、ドイツ 01/31/2020

5.West Coast Blues  /  Brad Mehldau Trio

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Rundell100w_20200705162301   やっぱりスタートは、バッハの楽曲「プレリュードとE短調フーガ第10号「よりよく:強化クラヴィエI」BWV 855」からで、クラークランデル(→)の指揮によるこのオーケストラ(NDR-Radiophilharmonie 右下)にメルドーのピアノが融合というか協演というか素晴らしい刺激的演奏が展開する。しかもこのアルバムはコレクターものではあるが、放送音源を収録しているもので、所謂オーディエンス録音モノとは異なり、プロ収録でクリアな迫力のある音が聴ける。
 パターンはピアノ協奏曲スタイルであって、この録音はオーケストラ自身のそれぞれの音の分離もよく、更にメルドーのピアノは中央にはっきりクリアーに聴ける録音となっていてファンにはたまらない。

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 M3."Concerto For Piano And Orchestra 2nd Movement"は、素晴らしい勢いを描いて演奏され展開するが、管楽器群の高揚をメルドーのピアノがそれをきちっとまとめ上げるが如く響き渡り、それを受け手のストリングスの流れが美しい。普段のジャズの響きとは全く異なったメルドーのピアノ迫力の音に圧倒される。一部現代音楽的展開もみせるところが、なんとメルドーのピアノによってリードしてゆくところが快感。ちょっとショスタコーヴィッチを連想する演奏にびっくり。
   M4."Concerto For Piano And Orchestra 3rd Movement"は、ストリングスのうねりが納まると、ほぼソロのパターンでピアノがやや強めの打鍵音でゆったりしたテンポで響き次第に落ち着く中にホルンが新しい展開を、そして再びストリングスの美しい合奏とコントラバスのひびき、ハープの美音、それを受けてのメルドーの転がるようなピアノの響きを示しつつも次第に落ち着いたメロディーに繋がってゆく。
 こうゆうクラシック・スタイルの評価には何の術もない私であって、感想も至らないのだが、そこにみるメルドーのジャズにおける音との違いがくっきりとしてこれを一度はファンは聴いておくべき処だろう。
 
 なお、このアルバムには、ブラッド・メルドー・トリオが最近よく演奏する曲"West Coast Blues"がボーナス収録されている。こちらは録音はそう期待できないが、演奏の内容はそれなりに楽しい。

 2年前にリリースされた名作『アフター・バッハ』の成功により、クラシック畑からも絶賛を浴びたことで彼の多様なピアノ・スタイルは絶好調だ。今回、ドイツで行われたクラシック・ライブも彼にとっては更なる充実の一歩になることは間違いないところだ。

(評価)
□ 演奏 90/100 
□ 録音 85/100

(視聴)

 現在、このHannoverのライブ映像は、見当たらないので「アフターバッハ」を載せます

 

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2020年7月 3日 (金)

ジュリア・カニングハム Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」

ハープ奏者のエレガントな優しさ溢れるヴォーカル・アルバム


<Jazz>
Julia Cunningham 「SONGS FROM THE HARP」
Soul Harp Music / IMPORT / JC1901 / 2019

Songsfromtheharp

Harp & Vocals: Julia Cunningham
Piano: Miles Black
Violin & viola: Richard Moody
Trumpet: Miguelito Valdes
Guitar: Reuben Wier (tracks 1, 2, 4, 5, 10-12)
Adam Dobres (tracks 2, 7, 8, 10, 11)
Quinn Bachand (solos on tracks 1 & 4)
Joey Smith (track 13)
Bass: Joey Smith (tracks 1, 2, 4-6, 10, 12, 13, 15)
Joby Baker (tracks 3, 7, 8, 11)
Congas: Joby Baker
Drums: Kelby MacNayr

Recorded at Baker Stugios, Prospect Lake, BC, Canada

 カナダの美人ハープ奏者でありヴォーカリストであるジュリア・カニングハムが、変動的コンポ編成をバックに録音したアメリカン・スタンダードを中心としての作品。彼女はカナダのブリティッシュ・コロンビア州ヴィクトリアを拠点として活動を続けているという。
 ノスタルジックなムードで優しくエレガントなヴォーカルと彼女のハープ演奏も入ってのなかなか聴きやすいアルバムだ。

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(Tracklist)

1. Medley: Dream a Little Dream of Me & I’ve Got a Crush on You
2. Sunny Side of the Street
3. There’s a Small Hotel
4. Aged and Mellow Blues
5. God Bless the Child
6. My Romance
7. Besame Mucho
8. Bye Bye Blackbird
9. All I Do Is Dream of You
10. Pennies from Heaven
11. L-O-V-E
12. Boy from Ipanema
13. What the World Needs Now
14. Smile

  このハープ奏者がどのような経過でジャズ・ヴォーカリストとなったかは知らないのだが、非常に落ち着いた優しく優雅なジャズ・ヴォーカルを展開する。曲によっては得意のハープの演奏も入って、ジャズとしてはちょっと変わったタイプの味が出ている。
 このアルバムはジャズ特有の夜のムードとか、ちょっとした酒場のムードとかとは違った暗さは全くなく又哀愁という世界でもない。どちらかというと難しさのない自然体での心地よいエレガントな親近感たっぷりの世界を展開する。恐らく彼女はヴォーカルというよりはハープ演奏が主体であったと思われる若干素人っぽいヴォーカルもなかなか聴きどころというか、特別のところがないのが取り柄という面白い世界なのである。
   M7."Besame Mucho"はハープ演奏を主体にビオラも入ってインストでの演奏、久々にハープの良さも堪能した。
 14曲の中で最も長い曲がM6."My Romance"であり5分12秒だが、なかなかシットリとしたムードが漂って彼女の囁き様のヴォーカルで気持ちが休まる。M14."Smile"も同様だ。
 M9."All I Do Is Dream of You" 3分弱の短い曲だが、ハープ演奏に加えて最も彼女らしいやや夢のある展望の曲だ。
 M.11"L-O-V-E" 聴き慣れたこうゆう曲もなかなか軽快に無難にこなしている。

 しかしカナダは後から後から、女性・ジャズ・ウォーカリストが出てきて、ちょっとしたブームを感じますね。そんな中からの一枚だ。とにかく彼女は期待株。

(評価)
□ 選曲・歌     80/100
□   録音       80/100

(視聴)
   このアルバムの曲が見つからないので参考までに・・曲「Fragile」の彼女の演奏

 

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2020年6月28日 (日)

ナーマ・ゲーバー Naama Gheber 「Dearly Beloved」

NYシーンのジャズムードたっぷりのロマンティック・ヴォーカル

<Jazz>

Naama Gheber 「Dearly Beloved」
Cellar Live Recors / Canada / CM100119 / 2020

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Naama Gheber (vocal)
Ray Gallon (piano)
David Wong (bass except 09)
Aaron Kimmel (drums except 09)
special guest:Steve Nelson (vibraphone on 01, 05, 08, 10, 12)

2019年3月31日&4月1日Bunker Studios(NY)録音

 名前は初聞きと思いきや、これはイスラエル出身の若手女性ヴォーカリスト:ナーマ・ゲーバーNaama Gheber(1991年イスラエルのベエルシェヴァ=Be'er Sheva生まれ ) のデビュー・アルバム。中身はスタンダード集で、バックはピアノ・トリオにヴィブラフォンのスティーヴ・ネルソンがゲスト参入していてしっかりしたジャズ演奏。
 彼女は テル・アヴィヴの音楽学校でジャズ・ヴォーカルとクラシックの声楽を学び、更に米ニューヨークのThe New Schoolにも学んで修練を積み、2017年に同校卒業後はNYシーンでかなり意欲的にライヴ活動を続けてきたという若手女性ヴォーカリストだ。

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01. Dearly Beloved
02. So In Love
03. 'S Wonderful
04. Since I Fell For You
05. I Can't Give You Anything But Love
06. Get Out Of Town
07. This Time The Dream's On Me
08. You Stepped Out Of A Dream
09. What's New (vocal & piano duo)
10. Just Squeeze Me
11. Sometimes I'm Happy
12. Good Night My Love

 

 久々にこうしてスタンダード曲を演じて、ヴィブラフォンが入ると、如何にも一時代のアメリカン・ジャズを思い出すというところ。そんな落ち着いたジャズの典型的演奏をバックに彼女がしっかりと歌い上げる。声の質はややトーンは高めにあるがどちらかというとかなり純粋な清澄ヴォイスと言っておきたい。しかし曲によっては甘い潤いが大人っぽくあって、そこに若干癖を感ずる。時折イメージの変わる芸をみせるという芸達者ぶりも感ずるし、また時には適度に渋い味もみせハスキーになるところもあって、ジャズ・ヴォーカリストとしてはなかなか良い線をいっているのだ。
 所謂都会派のムードもった世界を描くが、それもコール・ポーターなどの30-40年代の作曲家に興味があるのか、ジャズのある意味でのよき時代を描いている。

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 M1." Dearly Beloved "は、意識してのことと思うが、ちょっと癖のある発声が気になったが、コール・ポーターのM2."So in Love"になって、かなり素直なバラード・ヴォーカルになって、この方は頂けるぞといったところでスタート。
 M4."Since I Fell For You"では、彼女のアレンジもあって大人っぽく歌い上げたり、M5." I Can't Give You Anything But Love "はヴィブラフォン入りのバック演奏のウェイトも多く取って曲を十分楽しめる。
 M6."Get Out Of Town"そしてM9."What's New"もバラード仕上げで、しっかり歌い込んでいて情感の歌唱力は十分。
  その他、スウィングする曲の対応も手慣れていて、バックのトリオもなかなかジャジィな味付け良く、NYシーンを描くには十分の仕上げ。

 スウィート・テンダーなしっとりと艶っぽいバラード・シンガーとしてのアプローチと、スウィンギン調やブルージーな曲では、意外に姉御肌の色合いを見せたりと、若いと言われていても百戦錬磨のイメージのある歌いっぷりだ。私はバラード派だが、これからどう発展していくか楽しみでもある。

 

(評価)
□ 選曲・歌・演奏    80/100
□ 録音         80/100

 

(視聴)

*

 

 

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2020年6月19日 (金)

大石 学 OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」 

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(今日の一枚)   「初夏の高原にて」
             Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL
                                  - - - - - - - - - - - - - - - -

貫禄の美旋律・叙情派を軸にトリオ・アンサンプルの妙も展開

<Jazz>

OHISHI MANABU TRIO 「飛翔」
月下草舎 / JPN / GEKKA 0006 / 2019

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大石 学(p)
米木康志(b)
則武 諒(ds)
Recorded September 29/2018
Live at GEKKASOSHA
All Manabu Ohishi Composition

  先日、今年リリースされた大石学ピアノ・トリオのニュー・アルバム『ONE NIGHT AT GEKKA』(GEKKA0007)をここで取上げたので、それに至る昨年リリースし好評であった同メンバーによるこのアルバム『飛翔 Hisyou』を、前後するがここに検証し記録しておく。
 こちらは2015年に久々にトリオでリリースしたアルバム『JUST TRIO』(GEKKA0004)に続いて、4年の間をおいて当時からのメンバーによるトリオものである。このところの大石学のCD盤リリースに熱心な月下草舎よりお目見えし、非常に評価高く売れ行きも好調で、一般に手に入れがたい時もあったほどのもの。この月下草舎は山梨県小淵沢町にあるペンションだが、そこでのライブ録音盤である。

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(Tracklist)

1.CRESCENT(大阪北新地)
2.Gemini
3.0607
4.CONTINUOUS RAIN 
5.雨音
6.飛翔
7.Vanguard(気仙沼)

Mo3w  大石学の持ち味である詩情と優しさとが溢るる美旋律がやはり十二分に堪能出来るアルバムに仕上がっている。そんな叙情性がいっぱいであるが、それに止まらずジャズの歴史的に流れてきた醍醐味としてのトリオのアンサンブルの妙と躍動感という意味での曲は、このアルバム・タイトルにもなっているM6."飛翔"にて、ハイレベル技巧を駆使してジャズの楽しさも味合わせてくれる。
 スタートのM1."CRESCENT(大阪北新地)"は、 静かなピアノとべースの音にブラシの音が流れ、優しさの大石トリオがまずお目見え。
 M2."Gemini "  物思いにふける夜に・・・といった落ち着いたピアノ・ムードでスタート。バックは優しいシンバルとベース音。そして次第にピアノの流れは密度のある流れるような旋律を演じテンポを上げて盛り上がり、そして再び静かな世界に、最後は消えるように終わるところが洒落ている。
 M3."0607" やや異色で、強打のドラムス・ソロからスタートし、変調してピアノがおもむろに登場し旋律を流し、ベースの水を得たような展開と相まって、ジャズをトリオで楽しむスタイル。
 M4."CONTINUOUS RAIN "中盤の注目曲。しっとりの世界の最高峰だ。9分以上に演ずる世界はピアノとベースとの協調が聴きどころ。私の好きな世界。そして更に雨をテーマにM5."雨音"が続くが、こちらはリズムカルに流れるようなピアノで美意識を構築。
 最後にM7."Vanguard(気仙沼)"が日本的なメロディーでしっとりと終わる。

 トリオ・メンバーが固定して、おそらく三者による実質中身の充実も図られ、満を持しての2枚目のアルバムのリリースだ。登場する7曲中3曲は10分前後の長曲となり、アルバムを通して、大石の描く世界が十分堪能出来る素晴らしいアルバムとして聴いた。

(評価)
□  曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(参考視聴)  "Continuous Rain" 別バージョン


 

(参考) 大石学のピアノ・ソロ・アルバムがリリース

24p1 Ohisi Manabu 「FAZIOLI F278 AGAIN」
北千住プロジェクト 

(Tracklist)
1. Les Jardins 
2. HANAUTA
3. Pleasure
4. Change
5. 令和の詩
6. ひまわり
7. 雨音
8. Peace
9. TOSCA
 
大石 学(p)
2020年1月12日 豊洲シビックセンターホール収録

  かって澤野工房の録音で、イタリアのピアノ Fazioli(ファッチオリ)F278を弾いた大石学。そしてそのアンコール企画を「北千住プロジェクト」が企画し、10年後となる今年2020年1月12日に同じピアノがある豊洲シビックセンターホールで、ソロコンサートを開催した。演奏は、新曲2曲と" 雨音", " Peace",  "TOSCA" などの代表曲と"ひまわり"など。その模様を収録したアルバムである。

 

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2020年6月14日 (日)

栗林すみれ Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』

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(今日の一枚) 「初夏の高原に咲く花」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS , PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - -

刺激のないスウィート・テンダーな世界が・・・流麗なタッチで

<Jazz>

Sumire Kuribayashi 『Nameless Piano』
SOMETHIN'COOL / JPN / SCOL-1038 / 2020

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Sumire Kuribayashi -Piano,Voice

01, 02, 06-10:
2019年2月13日,14日,8月18日,9月18日録音
(plays Yamaha S400B)

03-05:
2018年10月27日北海道 Rankoshi Palm Hall録音
(plays Yamaha C7)

 どちらかというと親しみやすく、優しく独創性のある詩情世界を描くというところで人気が上昇中であるという栗林すみれ、5作目のアルバムがソロ・ピアノでの作品で登場である。又それに加えてマスタノリングはイタリアのジャズ録音では今や人気者のエンジニアであるステファノ・アメリオということで、我がオーディオ・マニアの友人が演奏が気に入ったのか、録音が気に入ったのかは不明だが薦めてきたアルバム。

 実は私は彼女のことは名前と噂は若干聞いたことがある程度で白紙状態、今回初めてじっくり聴くことになった。

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01. Nameless Piano (栗林 すみれ)
02. Cow Daisy (Jesse Van Ruller)
03. Believe, Beleft, Below (Esbjorn Svensson)
04. Nel Col Più Non Mi Sento (Giovanni Paisiello)
05. I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
06. Improvisation "Colored Woods" (inspired by Kaii Higashiyama) (栗林 すみれ)
07. Improvisation "Piangere" (栗林 すみれ)
08. Ship (Giovanni Scasciamacchia)
09. A Lovely Way To Spend An Evening (Jimmy McHugh)
10. Edelweiss (Richard Rodgers)

 

 栗林すみれのオリジナル曲は3曲で、他はカヴァー曲。全体にバラード調でなかなか透明感たっぷりのスウィート・テンダーという世界が流れる。6-7年前にデビューという若き女性と言うことで、なんとなくこのアメリオの録音によるピアノの音も瑞々しさを感ずるところはいいですね。
 とにかくゆったりのうららか気分に心地よく聴けるというところでは、最近聴いたものの中ではピカイチだ。それは特にクラシカルなイメージと、とにかく編曲が優しく難しいところと刺激的なところがないことによる。

 アルバム・タイトルとなっている彼女自身の曲M1."Nameless Piano"を聴くとクラシック練習曲のようなスタートであり、優美に流れは大きくうねっていて、時として聴かれる高音の美旋律があり、いわゆる刺激的な展開はない。もう一つ山があるのかと思ったら終わってしまった。
 M2."Cow Daisy"は通して聴いた結果としては、この曲が最も低音のダイナミズムがある曲かも知れないが、厳しさには至らない。
 一方、三曲目"Believe, Beleft, Below"にはEsbjorn Svenssonの曲が出てきて驚いているのだが、このあたりで少々変化を見せるのかと思いきや、全く彼女のプレイは変わらず優雅な美的世界なのである。
 M4."Nel Col Più Non Mi Sento"は如何にも女性的なクラシカル・ピアノの世界。
 M6."Improvisation "Colored Woods"", M7." Improvisation "Piangere"は彼女のオリジナル即興曲と言うことのようだが、この2曲がちょっとしたクラシック調の演奏ではあるが、ちょっとした宇宙空間を描いていて、やや欧州ジャズのニュアンスも感じ、むしろこのアルバムのなかでも注目曲だ。

 アルバム全体として、一つ一つの音を丁寧に心を込めているところ、端正な流麗なタッチは評価出来るところであり、刺激性の少ない詩情的な世界にスイート・テンダーに迫ると行ったところである。ここが若き女性の一つの世界なのかも知れない。
 さて、そんなところにもう少し哀感や悲壮感が入ると良いのだがと思うし、もう少しジャズ的緊張感に迫るところも場合によっては欲しい。一方こうした世界なら、若干暗めの哲学的深遠さがある曲を交えるところがあるといいのだがと、私好みの要求もしてみたくなる。

(評価)
□ 曲・選曲・演奏  85/100
□ 録音       85/100

Unnamed_20200613130201 栗林すみれ (ネットに見る(KOBE JAZZ.JP)紹介を転載)
 ピアニスト、作曲家。埼玉県立芸術総合高等学校音楽科、尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科 ジャズ&ポップスコース卒。2014年栗林すみれトリオとしてJAZZAUDITORIAにてオープニング・アクトを飾り、その後3回に亘ってブルーノートトーキョーに出演。同年、行方均氏のプロデュースでサムシンクールレーベルからデビュー。 1stアルバム”TOYS”がジャズライフ、ジャズジャパンなどに取り上げられ2014年ディスクグランプリニュースター賞受賞。 2015年早くもセカンドアルバム”Travellin’”をリリース。2017年金澤英明との双頭リーダー作"二重奏"をローヴィングスピリッツから発売。2018年、総勢11名参加のアンサンブル作品とピアノトリオ作品を二ヶ月に渡りリリース。ジャズライフでは3rdAlbum”Pieces of Color”が表紙、巻頭特集でとりあげられる。 溝口肇のジャズアルバムへの参加や、NHKBSプレミアム『美の壺』でオリジナル曲が使用されるなど作曲やアレンジ方面の才能も発揮している。先人への敬意と幅広い音楽性の融合から紡ぎだされるオリジナル曲とインプロヴィゼーションは新たな世界を切り開きながらも心地よく、多くの聴衆の心を掴む。

(視聴)

 

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2020年6月 9日 (火)

大石学 manabu ohishiトリオ 「ONE NIGHT AT GEKKA」

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                                                                                      (クリック拡大)

(今日の一枚)  「初夏の高原」- 赤外線撮影 -
 Sony α6000(full specrrum), Zeiss Vario-Tessar FE 4/16-35,  IR760

                                  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -         

詩情と優しさ溢るる美旋律が・・・・

<Jazz>

Manabu Ohishi Trio 「ONE NIGHT AT GEKKA 月下の一夜」
月下草舎 / JPN / GEKKA0007 / 2020

Onenight

Manabu Ohishi(piano)
Yasushi Yoneki (bass)
Ryo Noritake (drums)

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Recorded at pension GEKKASOSHA

  このところ月下草舎からリリースが続くピアニスト大石学のトリオによる最新アルバム。これも取り上げようと思っている昨年リリースされたアルバム『飛翔』(GEKKA0006 / 2019)と同一の米木康志(bass)と則武諒(Drums)との月光草舎にてのライブ・トリオ演奏だ。
 大石学は私としてはAtelier Sawanoからのトリオ・アルバム『Gift』(AS-122, 2012)や『WATER MIRROR』(AS-108, 2011)が過去に素晴らしかったモノとしてあるのだが、『WATER MIRROR』では名器FAZIOLIを演ずるところが印象深いのだ。そんなところから最近リリースされた『FAZIOLI F278 AGAIN』(北千住プロジェクト/2020 ↓)というソロ・アルバムも貴重。

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Profiletrw  さてこのアルバムは大石学にとって1stアルバムから25年経過してのアルバムとなるようだ。この間確かに彼に関してはソロ・アルバムも我々には印象深い。まあどちらかというと、そのソロは近年のヨーロッパ・ジャズ系に近い印象で私には好評なのだが、彼にはジャズのよってきたるところのビ・バップ系も得意と言うこともあって、やはりベース、ドラムスといったオーソドックスなトリオとして演ずることは極めて妥当なところであると思われる。

 このGEKKAレーベルではこのアルバムで6枚目と言うことになる。2018年録音の昨年リリースしたトリオ・アルバム『飛翔』が好評で、ここにこの『月下の一夜』を見ることになった。そしてこのアルバムは彼とこのレーベル立ち上げのきっかけとなったという曲"Peace"が納められている。これは過去にソロとデュオ版があって、ここではトリオ版として新しいイメージを造ってくれている。

(Tracklist)
1.Lonesome
2.GEZELLIG
3.うたたね
4.FORELSKET
5.I've Never Been in Love Before
6.Change
7.Peace

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 5曲目以外は大石学のオリジナル曲で構成されているが、そこには詩情と優しさとが溢るる美旋律が惜しげも無く出てきて、月下の一夜に身を寄せる聴くモノを幸せにしてゆく叙情性がいっぱいだ。ベースの米木、ドラムスの則武はそのあたりは既にこのトリオとしての実績も多く、演ずる世界は見事に一致している。

   F1."Lonesome" から透明感のあるピアノの音に詩情豊かな旋律が流れ、そして曲の後半はトリオのジャズ・スピリットがあふれた演奏が楽しめる。
 F4."FORELSKET" の聴きやすく詩情溢れた曲もいいですね。
 これらの曲の中では若干異色なのがF6."Change "だ。ここでは意外に楽天的にして明快な展開の楽しさが演じられている。
 このアルバムでは、重要な変化のあるところとしては、唯一カヴァー曲のF5."I've Never Been in Love Before "だ。これこそ大石が単なる叙情派だけでなく、スウィング・ジャズの発展系としてのホットであるアドリブの楽しさを加味してのビ・パップの流れを聴かせてくれる。スピード感も抜群で、ここでのベース・ソロそしてドラムス・ソロも聴きどころ。
 最後は恐らくこの夜のアンコール曲だろうと思われる彼の代名詞的曲M7."Peace"が登場する。このアルバムではソロでなくトリオ版だ。これだけしんみりとした曲だけに、シンバルの弱音、ベースは合わせての語り調によってサポート。後半はいつも通りの盛り上がりも美しく説得力ある。トリオもやはり良いですね。

 このところ、月下草舎から立て続けにリリースされている大石学のトリオ・ライブ版の最新盤を取上げた。いずれ昨年の『飛翔』や北千住プロジェクトからのソロ版も取上げたいと思っている。

(評価)
□ 曲・演奏   85/100
□ 録音     80/100

(視聴)

 

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2020年6月 5日 (金)

マルチン・ヴォシレフスキ Marcin Wasilewski Trio 「ARCTIC RIFF」

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(今日の一枚) 「春から初夏へ (高原の湖面)」
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS,  PL

                                    - - - - - - - - - - - - - - - - -

ピアノ・トリオにテナー・サックスをフューチャーしてのカルテット作品
ヴォシレフスキの挑戦は続く・・・

<Jazz>

Marcin Wasilewski Trio, Lovano 「ARCTIC RIFF」
ECM / GERM / ECM 2678 / 2020

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Marcin Wasilewski (p)
Slawomir Kurkiewicz (double-b)
Michal Miskiewicz(ds)

Joe Lovano (ts)

Recorded Aug.2019 Studio La Buissonne,Pernes-les Fontaines, France
Produced by Manfred Eicher

 

Wasilewski_triow  もう20年以上前になるんですね、あの1995年のコメダの名曲の演奏アルバム『Komeda』が気に入ってから(Simple Acoustic Trio)マークしているポーランドの人気ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年生まれ→)の、今回は当時の学生時代からのレギュラー・トリオに当然初顔合わせとなるアメリカのテナーサックスの大御所たるジョー・ロヴァーノ(1952年オハイオ州クリーヴランド生)をフューチャーしての更なる挑戦の作品。
 このトリオは近年は一貫してアイヒヤー率いるECMからのリリースとなって、その質もトリオとしての美意識の世界が基本ではあるが、このような実験的世界も決しておろそかにしていない。まだまだ前進、開拓のトリオで一枚一枚楽しみでもある。

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 今回、ヴォシレフスキ自身のオリジナル4曲、ジョー・ロヴァーノ(右下)のオリジナル1曲、さらにカーラ・ブレイの “Vashkar” , そして4人によるインプロヴィゼーションと、多彩にして実験色の強い曲とヴォシレフスキ独特の情感あるリリスズムの世界がミックスしたこれまた興味深いアルバムとなった。

Joelovano_byjimmykatz (Tracklist)

01. Glimmer Of Hope
02. Vashkar
03. Cadenza
04. Fading Sorrow
05. Arco
06. Stray Cat Walk (ts-b-ds trio)
07. L'Amour Fou
08. A Glimpse
09. Vashkar (var.)
10
. On The Other Side
11. Old Hat

 M1."Glimmer Of Hope " ヴォシレフスキ独特の美的センスのトリオ演奏が始まり、そこにロヴァーノのサックスが優しく添えるように入り、次第に柔らかく旋律を歌い上げる。そしてカルテットの形で曲を完成させる。ここにはトリオの本来の詩情がたっぷり盛り込まれていて、冒頭から私の心に響いてきた。これは私の期待した姿そのものであり、このアルバムはその流れで展開してゆくのかと思いきや・・・・。
 M3." Cadenza ", M5."Arco ",  M6."Stray Cat Walk (ts-b-ds trio) " ,M8."A Glimpse" は、カルテットによるインプロヴィゼーションの世界が展開する。それは実は驚きでもあったのは、ヴォシレフスキの優しさ、哀愁、甘さのリリシズムの芸風を超越したクールな抽象性に徹したフリー・インプロヴィセイションを果敢に発揮してのプレイがみれたところだ。更に注目は、ベースのクルキーヴィツ(下左)、ドラムスのミスキーヴィツ(下右)が水を得たように活躍していることである。それは特にM5."Arco", M6."Stay Cat Walk"にみるように、異空間をさまようがごとくのトリオ・メンバーのそれぞれの空間を築きつつ交錯し形作るところに、ロヴァーノのアグレッシブな面を誘導するも、そこには独特の深遠さがあってフリーな型破りな吹奏を展開する。究極のところカルテットとしての協調性が長年培ってきたかの如くの緻密に展開してゆくこととなり、そしてシャープにしてリアルな音による異次元の出現に圧倒されるのである。

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 ロヴァーノ自身、ヴォシレフスキ独特のリリスズムを受け入れつつ、彼のメロウな演奏も披露するのだが、それに止まらずインプロヴィゼーション世界に引き込んだところは見事な老獪ぶりである。しかもこうしたカルテットでは、管演奏が主体で演奏して終わってしまう事になりがちだが、ちゃんとピアノ・トリオの場を生かしている間の取り方も熟練の技とみる。そしてそれを十二分に昇華できるマルチン・ヴォシレフスキ・トリオもここまで成長した姿に偉大なりと喝采するのだ。

(参考)
 [マルチン・ヴォシレフスキMarcin Wasilewski]
ピアニスト、作曲家。1975年ポーランド・スワヴノ生まれ。コシャリン音楽ハイスクール卒。同校在学中に結成したピアノトリオSimple Acoustic Trioで、今日まですでに20数年のキャリアを持ち、それが現在のマルチン・ヴォシレフスキ・トリオである。
 いまや彼はポーランドを代表するジャズ・ピアニスト。我々が知るようになるのは、1995年にGowi RecordsよりSimple Acoustic Trioのデビュー作『Komeda』であった。これは2001年に『Lullaby for Rosemary』と改題して日本でも広く行き渡った。
 その後、ポーランドの名トランペッターTomasz Stańkoとのカルテット結成にともないドイツのECMと契約する。ECM移籍後はWasilewski,Kurkiewicz,Miśkiewicz名義で『Trio』、Marcin Wasilewski Trioと再改名後に『January』『Faithful』『Spark of Life』をリリースしている。Stańkoのカルテットとしてのアルバムは2002年の『Soul of the Things』、続いて『Suspended Night』『Lontano』の3作がリリースされている。更にピアニストとしては、トランペット奏者Jerzy Małekの『Air』があり、女性ヴォーカリストDorota Miśkiewiczの『Piano.pl』等。

(評価)
□ 曲・演奏 :  95/100
□   録音    :   85/100

(視聴)

 

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2020年5月28日 (木)

ミシェル・レイスのソロ・ピアノ Michel Reis 「SHORT STORIES」

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(今日の一枚) 「我が家の庭に咲く花 - オオムラツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

                                      - - - - - - - - - - - - - 

クラシック色のあるオリジナル曲によるジャズ・ソロ・ピアノ作品集

<Jazz>

Michel Reis 「SHORT STORIES」
CAM Jazz / IMPORT / CAMJ7953 / 2019

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Michel Reis  : piano
Recording and mixed in Cavalicco(UD) in Feb.2019 at Artesuono Recording Studio
Recrding and mixing engineer Stefano Amerio

 ジャズ界もヨーロッパにおいては若きピアニストが続々誕生している。このミシェル・レイスもその一人だ。彼は美しい小国ルクセンブルグの出身で、日本でのジャパン・カルテット形成が、やはり日本に浸透するに至る大きな一つの道であったろうと思う。
 このアルバムは昨年Cam Jazzからリリースされた彼のソロ・ピアノ集である。基本的に彼のオリジナル曲による構成でその意欲が伝わってくるのだが、録音はステファノ・アメリオとくるからその出来映えに期待も大きい。
 日本で結成のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」では、YouTube等で見る限りスリリングな演奏をも披露していたのだが、ソロとなると彼の重要な一面が出てくる。それは2017年に水戸で録音したアルバム『MITO』(CSJ0006)に聴けるのだが、これは彼の初の即興曲・ソロ・ピアノ・アルバムであり、内省的な中に美しさが見える。従って当然、今回のこのアルバムにも期待が持てるのである。

190814michelreisw (Tracklist)
01. Sunae II
02. From The Eyes Of Old
03. How It All Began (The Story Of Mr. Potes)
04. Monologue
05. Could I See You Again
06. Gratitude
07. Road To Dilijan
08. Gravity And Lightness
09. Tales Of Oleander
10. Eugene And Valentina Main Theme
11. Awakening
12. Eleni (For Eleni Karaindrou)
13. Bells
14. Goodnight

  全曲、彼のオリジナル曲である。14曲と多い収録だが、2分少々の曲から始まり短編が多く、最も長いのがM5."Could I See You Again"の6分58秒だ。聴いていると短い曲が多いという印象。
  ジャズ・ピアニストという世界にて活躍しているが、彼は幼少からクラシック・ピアノを学び、なんと14歳でプロ活動を開始。バークリー音楽大学、ニューイングランド・コンサヴァトリー・オブ・ミュージックを経て来ているのだという。そして2005年に第1回モスクワ・ジャズ・パフォーマー・コンペティションの最終選考に残って注目を集め、同年『A Young Mind』でアルバム・デビュー。2006年にモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで2位。そして自国ルクセンブルクでは大きな評価を得ている。2014年1月、ピアノ・トリオ・アルバム『レイス|デムス|ウィルトゲン』を発表。

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 やはり印象はまずクラシック・タッチの美しい曲集という感じだ。聴いていると確かに詩情が豊かな世界に浸かっていくことになる。ピアノ・ソロであるせいか冒頭のM1." Sunae II" から静かな余韻のある演奏で、どこか懐かしい過去の世界に想いを馳せる気分に導かれる。
 M2."From The Eyes Of Old " は、やや早い展開の曲であるが、やはりどこかクラシック的なところにあって、スリリングという印象は全くない。
 M4." Monologue" は、高音が透き通っていて、はっとして聴き入る美しさが秀でている。曲もジャズ的即興の流れがあって、こうしたところはやはりヨーロッパ系のメロディーとハーモニーの美しさが引き立ったジャズ・ピアノ世界だ。実は私としてはその他の殆どの曲のクラシックの延長という感じよりこの線に期待したいところだ。 
 しかし、M7."Road To Dilijan"、M9."Tales Of Oleander" にみるピアノの響きとメロディはやっぱり非凡な美しさを持っていて楽しめる。そしてジャズ的面白さはM11."Awakening" にも見いだすことも出来た。
 
 とにかく新進気鋭のピアニストとして期待は大きいが、私の愛するノルウェーのトルド・グスタフセンのような、哲学的深遠さという処においては、今一歩届いてはいない。日本における彼のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」は、注目の須川崇志 (bass)、石若駿 (drums)、西口明宏 (sax)という構成(↓)で、そこには良い刺激があってのことか、ややアヴァンギャルドなスリリングな展開も見せていて、そんな世界との関係も含めてこれからどのように発展していくかは、確かに楽しみな存在である。

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 参考までの話だが、2018年の彼の日本の水戸のコルテスで録音されたソロでの即興ピアノ曲集『MITO』もなかなかのもの、内省的美の世界が素晴らしい。彼はこのアルバムを第2の故郷のような水戸の街に捧げますと言うぐらいこの地での活動に感動していたようである。そして内容的には、むしろジャズ的に見るとこちらの方が、楽しめるところもあるので紹介しておく。

51ymrlw5l_ac_(参考)
『MITO - Solo Piano Improvisations』
(Cortez Sound/ JPN / CSJ-0006 / 2018)
(Tracklist)
1. ライジング 10'50
2. スナエ 3'20
3. フォレスト・エッジ 6'35
4. ロスト・テンプル 6'51
5. ルッキング・グラス 4'19
6. エコーズ 2'54
7. フォーク・ソング 5'39
8. ラビリンス 2'31
9. リポーズ 3'12
Recorded 21st July 2017
Mixed Ken Tadokoro
Masterd Ken Tadokoro
Recorded at Jazz Room Cortez

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)
"Sunae Ⅱ"

 

"How it all began"

,

"Looking Glass" from 「MITO」

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2020年5月19日 (火)

リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」

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(今日の一枚) 薔薇の開花 (我が家の庭から)
       Sony α7RⅣ,  FE4/24-105 G OSS , PL
 
       
           --------------------------------

リン・エリエイルの強い意志の情熱的芸術的表明
・・・深刻さのあるコンセプト・アルバム

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」
Challenge Records / AUSTRIA / CR73494 / 2020

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Pianist : Lynne Arriale (USA)
bassist/co-producer : Jasper Somsen (NL)
drummer : E.J. Strickland (USA) 
guest vocalist : K.J. Denhert (USA)

  所謂「コンテンポラリー・ジャズ」の注目女流ピアニストのリン・エリエイルのニュー・アルバム。前作『GIVE US THESE DAYS』に続いて、オランダのChallenge Recordsから(2作目)、自身のリーダー作全体としてはもう15枚目となるベテランの作品。
 しかし今作は彼女の作品群からみても異色である。ボブ・ディランの初期の名曲「自由の鐘(Chimes of Freedom)」を中心に、自身のオリジナル7曲とポール・サイモンを取り上げ、その精神を通して、現在の社会現象に自由と高邁な思想の文化を取り上げて訴えるアルバムとして作り上げている。そこには所謂メロディーの美しさといったところから一歩厳しさに打って出ていて、彼女の一つの世界を思い知らされる。

Lynnearrialetriofeatjaspersomsenejstrick

 メンバーは、オランダの名ベーシストであり副プロデューサーのイェスパー・サムセンとニューヨーク・ジャズ・シーンで活躍するE.J.ストリックランドとの強力トリオで、ややアグレッシブなテクニックを展開している。
 なんと、ボブ・ディランの「自由の鐘」、ポール・サイモンの「アメリカン・チューン」では、アーバン・フォーク&ジャズ・シンガーのK.J.デンハートがゲスト参加でのヴォーカルが入ってくる。 

 

Imageasset (Tracklist)

1.Sometimes I Feel Like A Motherless Child (Harry Burleigh)
2.Journey *
3.The Dreamers *
4.3 Million Steps *
5.Hope *
6.The Whole Truth* 
7.Lady Liberty *
8.Reunion *
9.Chimes Of Freedom (Bob Dylan)
10.American Tune (Paul Simon)

*印 compositions by Lynne Arriale

 アルバム・タイトルからしてボブ・ディランの「自由の鐘」が中心であることが解る。そこには自由という基本的な流れが見て取れるが、このアルバムでの彼女のオリジナル曲のM2-M8までの7曲が、如何にも今までのアルバムと変わって意志の強さが聴き取れるし、彼女の個人的な人生からの感覚的でありながら、社会にも向いている姿が現れている。それはM1."Sometimes I Feel Like A Motherless Child"を取り上げ、彼女自身の感覚「ときどき母のいない子供のように感じる」というところからの人生の過去も振り返りつつ、この曲を重低音で始めて、このアルバムで語る物語の重要性を意識させ、ピアノで語る哀しい旋律にはどこか人間性を語っているように聴ける。
 M2."Journey"から始まるリンの刺激的な人生の旅の物語からの7曲によって、自由と文化、そして世界に見る難民への心、それは彼らが民主的な国家によって安全に迎えられることを祈ると言うことに通じてゆく彼女の世界を演じているようだ。従って甘い演奏はこのアルバムでは見られない。強いて言えばM7."Lady Liberty"に、どこか広く包容力のある愛情の感じられる曲が救いでもあった。
Safe_image_20200518201501  最後のM9"Chimes Of Freedom",M10"American Tune "は、デンハート(→)のヴォーカルが入る。彼女はジャズ、フォーク、レゲエなどを身につけている。そしてそのスピリチュアルな歌唱力によって、ボブ・ディランとポール・サイモンのアメリカンチューンを歌い上げ、そこにかってのアメリカに見た精神を訴えているのかも知れない。

 前作もそうだったが、ベーシストのイェスパー・サムセンの力は、あまり目立たないがトリオとしての土台の役割を果たしつつ、曲仕上げにも大きく貢献している。又ストリックランドのドラムスもアグレッシブなところがテーマの意志と決意を表すに十分だ。
 
 このアルバムはリン・エリエイルとしては異色の範疇に入る。ここに来て世界的にも戦後の真摯な姿勢からやや異常な世界に変動しているところに、自己の歴史と重ね合わせ、このような深刻なコンセプト・アルバムを作り上げ、一つのけじめを付けようと試みているように感じた。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100
 
(視聴)

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