ティングヴァル・トリオ

2023年8月23日 (水)

 ティングヴァル・トリオ Tingvall Trio 「BIRDS」

「鳥」のテーマの目的コンセプトがあまり伝わってこない

<Jazz>

 Tingvall Trio 「BIRDS」
Skip / Import / SKP91972 / 2023

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Martin Tingvall (p)
Omar Rodriguez Calvo (b)
Jurgen Spiegel (dr)

 ドイツ・ハンブルグを拠点に活動するヨーロッパを代表する美メロ・ピアノトリオ「ティングヴァル・トリオ」の9thアルバム。トリオ・リーダーのスウェーデンのピアニスト、マーティン・ティングヴァルが自然界をテーマとしての作品の一環として「鳥」にインスピレーションを得た作品だ。

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 彼の言葉は「彼らは自然の音楽家です。彼らは毎日素晴らしい音楽と信じられないほどインスピレーションを与えてくれます。ただ注意深く耳を傾けなければなりません。残念ながら、私たちはもうそれをやっていないようです、雑音が多すぎるのです。他の騒音が私たちを取り囲んで、気が散ってしまいます。このアルバムが人々に、私たちの周囲の環境を違った見方で認識するきっかけになれば幸いです。私自身、地球温暖化によって引き起こされる鳥の行動の変化をすでに観察しています。S.O.S、もうやめるべき時です。 自然に耳を傾けて行動してください。」 と・・・地球上の自然破壊につながる問題点に言及している。

 Tingvall Trioはもう結成して15年以上となる。リーダーのピアノのMartin Tingvallはスウェーデンで、ベースのOmar Rodriguez Calvoはキューバ、ドラムスのJürgen Spiegelはドイツ生まれという国際トリオだ。。
 過去のTingvallのソロも含めてアルバムは全て聴いてきて、ここでも何度か彼らを取り上げたが、全てオリジナル曲を中心にどちらかというと美旋律の自然を対象とした曲に魅力がある。今回も期待度は高かった。

(tracklist)

1 Woodpecker
2 Africa
3 SOS
4 The Day After
5 Air Guitar
6 Birds
7 Birds of Paradise
8 The Return
9 Nuthatch
10 Humming Bird
11 Nighttime
12 A Call for Peace

 鳥の状況を描いているのかM1." Woodpecker(キツツキ)"M2."Africa"は軽快な曲。 M3."SOS"は、いかにも問題に直面しての姿か、不安が感じられる。ティングヴァルの声が入るが・・・これは好感度は無し。
 M4."The Day After"になって、ようやく私の期待する美しく優しいピアノの旋律の聴ける曲が登場。後半にアルコ奏法のベースが不安感を感じさせて気になる曲だ。

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 M5."Air Guitar"は演奏技法が多彩で面白い。ピアノはミュート奏法のようだが。
 M6."Birds" タイトル曲、スタートからやや暗めのベースのアルコの音で始まる、ピアノが入って小躍りする印象。次第にトリオで盛り上がるも意味不明、M7."Birds of Paradise"も軽妙な世界だが、印象にあまり残らない。
 M8."The Return"優しく美しくのピアノのメロディーが登場し再びベースのアルコ。夏に戻ってくる鳥の姿か?、物語を感ずる世界は見事。
 M9." Nuthatch" ゴジュウガラか、良く解らない曲。
 M10."Humming Bird" ハチ鳥の姿(?)、何を描いているか不明だが、メロディーは優美で軽快。M11." Nighttime" ピアノの透明感ある美しい音を聴かせる。これら2曲はM4.M12.の2曲に続いて納得曲。
 M12."A Call for Peace"彼の鳥に思いを馳せての究極の曲として聴いている。ピアノ・ソロで美しい。

 どうも私自身が「鳥」の世界に興味がないせいか、全体にあまり目的が良く解らない曲群でこの「鳥」にまつわるコンセプトも理解が難しい。又このアルバムは、時に聴ける演者の声がどうも私には気分良くなかった(キースのようなうなり声ではないけれど)。そして私のお気に入りのアルバム『Dance』(2020)の"In Memory"のような曲を期待してはいけないのかもしれないが、過去のアルバム『CIRKLAR』(2017)の"Bland Molnen"、"Cirklar"とか、やはりいろいろと期待度が高いので、評価は決して低いアルバムではないのだが、今回は若干空しかったような感覚であった。

(評価)
□ 曲・演奏  87/100
□   録音    87/100

(試聴)

 

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2022年12月23日 (金)

寺島レコード:コンピレーション・アルバム「Jazz Bar 2022」

今年の最後を飾るは、なんと22年続いてのアルバムだ

<Jazz>

  Yasukuni Terashima presents 「Jazz Bar 2022」
 TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1108   / 2022

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2138c60anzl_ac_    寺島靖国プレゼンツとしてのオムニバス(コンピレーション)・アルバム・シリーズは、目下5種が継続中だ。その最も長く根源的なアルバムが「Jazz Bar」シリーズだが、2001年にスタートして(→)、この12月に22年目を迎え第22巻がリリースされた。
 こうした彼の名を冠してのシリーズは、1巻を1年以上空けてのリリース・スタイルで、今年は私の好きな「For Jazz Audio Fans Only」(Vol.15)、そして「For Jazz Vocal Fans Only」(Vol.5)、「For Jazz Ballad Fans Only」(Vol.3)が既にリリースされていて4巻が登場したわけだ。(今年リリースしなかったのが、「For Jazz Drums Fans Only」)
Yt-1w_20221223164801   いずれにしても、既に47巻がリリースされていて、考えてみるとほぼ600曲は紹介してきていることになる。これもかなりの偉業ですね。もともとオーディオ的興味とジャズ分野ではピアノ・トリオもの、女性ヴォーカルものなどが好む私は、丁度お手頃の世界であって、特に寺島氏の好みともやや似通ったところがあって、私的には満足してきた。又彼の選曲は、その年のヒット曲ということでなく、彼自身が出会って評価に値するとしたものを選んでいるので、マイナーなものあり、更に彼のあまり形にこだわらないライナー・ノーツも楽しく、その点も私にとっては興味深いところがある。

 この最も基本的な「Jazz Bar」シリーズは、ジャズのジャンルを問わず、彼自身がその年何らかの意味で評価したものを集めている。従って意外に古いものを敢えて取り上げることもあるが、基本的には近年のリリースもので、注目点は何びとにもという普遍的なところを狙うのでなく、彼自身の世界からの選定で、しかもリリース・レーベル・会社などが許可してくれるものに限られている。この彼の意志というのが面白いところでもある。

 さて今年の最後のこの「Jazz Bar 2022」は、以下の内容であった。

(Tracklist)

01. In Memory / Tingvall Trio
02. Rendezvous / Roy Powell
03. Ojos Carinosos / Joe Farnsworth
04. O Que Sera / The Hans Ulrik, Steve Swallow, Jonas Johansen Trio
05. Aniram / Andrea Beneventano Trio
06. Arrolo de Toques / Nani Garcia Trio
07. Anastasia / Al Foster
08. Returning / Jeff Johnston Trio
09. Don't Give Up / Philippe Lemm Trio
10. Brother Can You Spare a Dime / Dylan Cramer
11. Ballada na Wschod / Jana Bezek Trio
12. My Old Flame / Domenic Landolf
13. Mi Sono Innamorato Di Te / Enrico Pieranunzi, Marc Johnson, Joey Baron

 今年の22巻は、私から見ての特徴は、既に聴いているものが少なかったところで、これも私としては嬉しいところ。初めてのものが多いほど私には収穫があるという事でして・・・。
Tingvall_trio_dance  冒頭のTingvall Trio の名を見て・・やや、これは私の結構好みのドイツのトリオ(ピアニストはスウェーデン出身)であるが、このアルバムは知らなかった。・・と、言うより彼らの事を忘れていて、このところマークしてなかった。この曲M1."In Memory"が収められているアルバムは『Dance』(Skip Records / SKP9177/2020 →)は聴いてなかったのだ。2年前のアルバムだったが、その13曲(スタート曲は"Tokyo Dance")の最後を飾る曲である。さっそくそのアルバムを聴いてみることとなったのだが、ほゞ全体的にはこの曲とはイメージが違う世界である。リズムカルな曲集だ。そしてこの曲のみ悲しみを描きアルバムを纏め上げるという不思議なアルバム。とにかくこの曲がいいですね。この悲しいメロデイーとシンバルの音の響きがピッタリ、ベースのアルコも有効、ユーロ・ジャズの極み。これだけで聴く価値あり。

 M3." Ojos Carinosos"は、持ってましたね、ドラマーのピアノ・トリオ。ピアノはケニー・バロン。ここでも紹介しました。私も評価は良かった。
 M4." O Que Sera" ちょつと面白いギターとサックスの取り合わせ。
 M8."Returning" ジャズ世界には珍しい色気のない淡々とした静かな世界を描くピアノ。
 M10."Brother Can You Spare a Dime"は、アルト・サックスの魅力と、M.12" My Old Flame "ちょっと変わったサックスで、好きな人向き。
 M11." Ballada na Wschod"は、正座して聴いた方がいいようなピアノ・トリオ。   
 M13." Mi Sono Innamorato Di Te"は、これは又古いものをここに持ってきましたね、10年前のピエラヌンツィのアルバム『Ballads』(CAM77852/2012)。再聴の為、私は手持ちのアルバムを引っ張り出すに苦労しました。これが締めくくりに来た意味はちょっと解らないが、まあ良いでしょう、お手本を示したかったのか。

 今年のこのシリーズは、知らなかったものが多く興味深かった。そんな意味で購入して良かったと思うのでお勧め盤としよう、なんと言ってもM1.が最高でしたね。

 (評価)
□ 選曲    88/100
□ 録音    88/100

       ---------------------------

参考までに、今年2022年にリリースしたその他の「Yasukuni Terashima presents シリーズ」は以下のようだった。

■ 4月『For Jazz Vocal Fans Only Vol.5』(TYR-1103)

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 女性ヴォーカルが中心のアルバム。美女狩りの範囲が広がります。しかし、今作は知っているものが多すぎて残念でした。

■ 8月『For Jazz Ballad Fans Only Vol.3』(TYR-1106)

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 今回は、寺島氏も反省したのか管ものが多くなって、私にとってはイマイチでした。
   参照: http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-a75acb.html

■ 10月『For Jazz Audio Fans Only Vol.15』(TYR-1107)

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 これはかなり私の期待度の高いシリーズ、もう15年経過。前作のVol.14が良かったので、今年は若干空しいところもあったが、75点としておこう。

(参考試聴)
"In Memory"

 

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2018年1月14日 (日)

寺島靖国選曲シリーズ「Jazz Bar 2017」 * ミケーレ・ディ・トロ Michele Di Toro Trio 

これで17巻目、今回もやはり・・・ピアノ・トリオが中心で
  注目:ミケーレ・ディ・トロ・トリオMichele Di Toro Trio

 

<Jazz>
Y.Terashima Presents 「Jazz Bar 2017」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1061 / 2017

 

2017jazzbar

(Tracklist)
1. Lilofee [Edgar Knecht]
2. Un Sogno d'estate [Lello Petrarca]
3. Se non avessi piu' te [Jesper Bodilsen]
4. On The Horizon [Jacob Christoffersen]
5. Kasztany [L.A. Trio]
6. Machismo Mouse [Darin Clendenin]
7. A Bruxa [Abe Rábade]
8. Pinocchio [Tingvall Trio]
9. Esperanza [Michel Bisceglia]
10. Purple Quarry [J.S. Trio]
11. Distances [Michele Di Toro]
12. My Love And I [Frank Harrison]
13. Paris 2002 [Stephan Becker]

 

 2001年から始まったこのシリーズ、もう17年ですね。当初寺島靖国はこのオムニバスはレコード会社の選曲したものとは違う、だから売れても売れなくてもいい、だから個人色は出す、とにかく好きなものをかき集める・・・とスタートしたもの。結果は売れたと言うことですね、17年も続いているんですから。
 さて、今回の2017年盤は、上のように13曲選曲収録されている。ここで私は何時も取りあげているTingvall Trio(M8. "Pinocchio" ) そしてMichel Bisceglia(m9. "Esperanza" ) は当然と思っているが、M1. "Lilofee" [Edgar Knecht] そしてM3. "Se non avessi piu' te" [Jesper Bodilsen] 、M5. "Kasztany" [L.A. Trio]もなかなか素晴らしい。

 そして今回私の注目は、Michele Di Toro Trio(M11. "Distances" )とFrank Harrison Trio(M12. "My Love And I" )だった。そこでまずミケーレ・ディ・トロMichele Di Toro Trioについてここで焦点を当ててみたい。↓↓

 

 ① Michele Di Toro Trio 「PLAY」
     abeat for JAZZ / Italy / ABJZ134 / 2014

 

Play

  「ジャズ批評2015 年3 月号」”ジャズオーディオ・ディスク大賞2014” の8 位に選ばれた注目盤であるが(この時のNo.1は、Alessandro Galati「Seals」だった)、ピアニストのミケーレ・ディ・トロの評判は聞いていながらも、実は彼のこのアルバムには手を付けてこなかったので、ここで敢えてよいチャンスと挑戦してみたわけである。

Michele Di Toro (p)
Yuri Goloubev (b)
Marco Zanoli (ds)
Recorded on January, 30th and 31th 2014 at Protosound Polyproject, Chieti, Italy

 

(Tracklist)
1.Lutetia *
2.Ninna Nanna *
3.Daunted Dance %
4.Corale *
5.Distances
6.Remembering Chopin *
7.Joni... %
8.Change Of Scene %
9.Touch Her Soft Lips And Part 
10.Chorale VIII - Ascension %
       
 (*印:Michele Di Tro  、 %印:Yuri Goloubev)

 このトリオ・メンバーからもその内容は押して知るべしと言うところ。1曲を除いてその他全曲彼らのオリジナル曲。このアルバムのリーダーであるミケーレ・ディ・トロは4曲。そしてなんとベースのユーリ・ゴロウベフYuri Goloubevは頼もしいことに4曲も提供していて、彼はロシアのクラシック・ベーシストで今やユーロ・ジャズには無くてはならないベーシスト(私の好みのロベルト・オルサー・トリオのベーシストだ)。
 過去にマーシャル・ソラール賞やフリードリッヒ・グルダ賞を受賞したという名ピアニスト、ミケーレ・ディ・トロとユーリ・ゴロウベフのピアノトリオとなればやはり注目。とにかく上品で流麗なタッチで耽美な世界が展開して感動もの。繊細なメロディを奏でて、それに見合ったテクニックを披露するリズム陣の黄金トリオのアルバムだ。
 このアルバムのM5."Distances"が、今回の『Jazz Bar2017』に取りあげられたのだった。

 

 

 

 ② Michele Di Toro 「PLAYING WITH MUSIC」
      MUSIC CENTER / IMP / BA 161 CD / 2017

 

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  イタリア・ジャズ界でも、ナンバー1の美男子と言われるこのミケーレ・ディ・トロ。1974年生まれ。これは2003-2004年の彼の30歳を迎える時の録音もの。もともとクラシック・ピアノを身につけ、ショパンを愛し、あのエンリコ・ピエラヌンツィの流れにある。
 そしてこのアルバムは廃盤状態にあり”幻のイタリア・ジャズ・ピアノ盤”と言われ中古市場を賑わせていたもの。そして昨年再販盤がリリース。そんな訳で注目し、手に入れたのだが、ミケーレ・ディ・トロのピアノ・ソロ、デュオ、トリオ演奏で、ライブとスタジオ録音版。いかにもヨーロピアン・ジャズのピアニストと言った印象で、クラシックの影響も受けており、上品で流麗なタッチで耽美な世界が繰り広げられている。しかしここにみる彼のアレンジやインプロヴィゼーションは驚きの凄さで圧倒する。成る程名盤と言われるのも解る。聴いていてふと数歳年上のGiovanni Mirabassiが頭に浮かんだ。

DitorowMichele Di Toro (p)
Franco Cerri (g)
Marcello Sebastiani (b)
Marco (b)
Alberto Biondi (ds)
Tony Arco (ds)

(Tracklist)
1.  Sabrina *
2.  Sensual Thought *
3.  Honeysuckle Rose
4.  How Insensitive
5.  L'Importante E Finire
6.  My Funny Valentine
7.  In A Sentimental Mood
8.  Playing "A La Turque" *
9.  Farmer's Trust
10.  See You! *
11.  Marrakech * 
         (*印:Michele Di Toro)

 

 かって私は、プログレッシブ・ロツクの世界でイタリアのメロディアスな曲仕上げとロマンティズムは群を抜いていることに圧倒されたわけだが、これは長い歴史の中から国民的に培われて来たものであろうと思っている。そしてジャズ界においても全くその道はしっかりと息づいていて、彼の作品もその流れを十二分に演じきっている。

 

(視聴) Michele Di Toro Trio

 

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2017年8月 6日 (日)

ティングヴァル・トリオTINGVALL TRIOのニュー・アルバム 「CIRKLAR」

新世代ピアノ・トリオと言われる中の美旋律が堪らない

<Jazz>
TINGVALL TRIO 「CIRKLAR」
SKIP Records / Germ / SKIP 9157-2 / 2017

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Martin Tingvall  マーティン・ティングヴァル   -  piano and compositions
Omar Rodriguez Calvo
オマール・ロドリゲズ・カルヴォ - double bass
Jürgen Spiegel
ユルゲン・シュピーゲル   - drums and percussion

 私の期待度の高いティングヴァル国際トリオの前作『BEAT』(SKIP Records/SKP9137-2)から3年ぶりの7作目が登場。
 リーダーのティングヴァルMartin Tingvallは、近作はソロ・アルバム(『distance』 SKIP Records / SKP9147-2)が登場していたが、やっぱりこのドイツ、ハンブルグを拠点としたこのトリオは健在でした。国際トリオと言うのは、Martin Tingvallはスウェーデン、Omar Rodriguez Calvoはキューバ、Jürgen Spiegelはドイツ生まれと言うところによる。
 今回も全曲ティングヴァルによるところから、ダイナミックな曲展開である中に、北欧の世界感がにじみ出ているところであるが、それが今までの魅力の一つでもあった。一部にはあのE.S.Tと比較されるものとして、新世代ジャズのピアノ・トリオと言われ注目されているが、意外に聴きやすい安堵感もある。
  ドイツのEcho Jazz (今や世界的な権威ある賞となっている)は、前作までにジャズ部門でゴールド・ディスクを与えている。

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(Tracklist)
01. Evighetsmaskinen 
02. Bumerang 
03. Vulkanen 
04. Bland Molnen 
05. Skansk Blues 
06. Cirklar 
07. Sjuan 
08. Det Grona Hotellet 
09. Tidlos 
10. Psalm 
11. Karusellen 
12. Elis Visa

Tingt4 さて、このアルバムだが、スタートからの三曲は、親しみやすいリズム・旋律と共に、アグレッシブでダイナミックな展開を示し、ピアノの重低音も交えて結構威勢の良いところを聴かせ、三者の意気込みが感じられる曲から始まる。続くM04.”Bland Molnen”  になって深遠なベースのアルコ奏法と期待のピアノの美旋律の登場だ。とにかく彼らの一見するところの出で立ちからは、信じがたいほどの北欧の大地を崇めるが如くの美旋律を聴かせてくれるのだ。こうした新しいピアノ・トリオの姿を試みる代表的トリオとして、今作も聴く者をして感動に導く。
 私はM.06.” Cirklar ” なども好きな曲だが、物語的展開、安堵感、暗さの無い世界でリズミカルな流れに乗ってのピアノとベースの美旋律に注目だ。
  ピアノの静かに流れる美しさは更にM.08.” Det Grona Hotellet”  にも聴くことが出来、10.”Psalm ” にも繊細なシンバルの音の中に堪能できる。
 M 07.”Sjuan” 、 M 09.”Tidlos”  は、彼らの面目躍如の"動"の曲。
 M.12. ”Elis Visa” は、締めくくりに相応しい大地からの声が感じ取れる曲。

 近代的なダイナミックなセンスを持ちながら、そこにはクラシック的表情も見せつつ北欧的優しい美旋律を聴かせるという愛着の感じられるピアノ・トリオである。

(参考) ~Tingvall Trio Discography
   Skagerrak (2006)
   Norr       (2008)
   Vattensaga (2009)
   Vägen        (2011)
   In Concert (2013)
   Beat         (2014)
   CIRKLAR   (2017)


(視聴)

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2016年12月29日 (木)

2016年の別れに・・・マーティン・ティングヴァルMartin Tingvall 「distance」

深遠な世界を感じ・・・心安らかにこの年を送る

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                                                   (我が家の白南天)
            *          *          *

<Jazz ,   Piano solo>
Martin Tingvall 「distance」
SKIP RECORDS / GERM / SKP 9147-2 / 2015

Diaance

All Songs composed and produced by Martin Tingvall
Martin Tingvall played on a Steinway D Grand Piano, Fender Rhodes and Celeste


Martin_tingvall_05_fcm  Tingvall Trio でお馴染みのスウェーデン生まれのマーティン・ティングヴァルMartin Tingvall のソロ・ピアノ・アルバム。
 アイスランドを旅してインスプレーションを得たと言うピアノ・ソロ作品。前作の『en ny dag』(SKIP91172/2012)が素晴らしかったのが印象深いのだが、今作も全曲彼のオリジナルで負けず劣らずの快作である。

 スタートM1.”an idea of distance”から、ゆったりと叙情的なピアノの音が如何にももの悲しく展開する。それはやっぱり都会のイメージでなく何処か人々の生活圏から離れた孤独な地に立っての雰囲気が感じられ、深遠なる自然の中に自己を見つめるに相応しい時間を作ってくれる。

List 彼はドイツで活躍しているのだが、やはりその心は北欧なんでしょうね。私が勝手にそう思うのだがこの世界はまさに北欧なんです。
 珍しくM6.”a blues”では、強い鍵打音で心に強く響くが、その後M7.”black sand”では再び元に戻って、クラシック調の優しい美しいピアノの響きに変わる。

 ”アメリカのジャズとヨーロッパの芸術音楽の要素とそれを兼ね備えた”と彼の演奏を紹介しているのを見たが、彼のピアノは、非常に透明感ある響きを基調にして、牧歌的という表現が良いのか、人間の雑踏とは離れた世界観を聴かせてくれ、そしてしかも非常に美しいのです。これはジャズというより全ジャンルに広めたいとふと思わせる。

 そして・・・・このアルバムを聴きながら、全ての原点に戻った気持ちで今年2016年を送りたいのである。

                      ----------------------------

 今年もこの拙いブロクを覗いて頂き、いろいろとご指導有り難うございました。来る2017年も又よろしくお願いします。皆様にもご多幸なる新年をお迎えになりますよう祈念いたします。
                   
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(視聴)

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2015年9月10日 (木)

初秋に聴くピアノ・ソロ2題 ブッゲ・ヴェッセルトフトBugge Wesseltoft「SONGS」と マーティン・ティングヴァルMartin Tingvall「en ny dag」

あの猛暑から一転して秋は確実に訪れて・・・・・

 今年の夏は7月からの猛暑で圧倒された年ではあったが、考えて見ると短かったとも言える。もう外は虫の声の合唱で、秋が来たことを知らせてくれているのだ。
 こんな時にはふと、心安まるピアノ・ソロが何とも言えずこの秋を歓迎するのだ。

 ここに2012年リリースされた二枚のアルバムが私にとってはこの秋スタートである。

        <Jazz>  
                  BUGGE WESSELTOFT  「SONGS」
                       Jazzland / Europe / 2791733 / 2012

Songs2
         Recorded in Bugges Room,April-September 2011
                 Bugge Wesseltoft : Piano

Buggelist
 もともとノルウェーのジャズ界の革新派で、この自ら作り上げたJazzlandレーベルで、エレクトロニクス派としてのサウンドを売り物に、まさしく未来ミュージックを作ってきたというブッゲ・ヴェッセルトフトJens Christian Bugge Wesseltoft。
 その彼の全くのピアノの原点を探るような聴き慣れたスタンダード曲(左リスト参照)のソロ演奏。2012年にリリースされたこのアルバムに今にして聴き惚れている。
 とにかくあの曲が、ここまで静かに美しく情緒たっぷりに心の奥まで鎮めてくれる曲となって、私にとってのこの秋の夜を演出してくれるとは・・・・・。

Bugge2
 彼のピアノ・ソロとしては1997年『It's Snowing on My Piano』、2007年『Im』、2009年『Playing』に続くもの。
 私は彼の作品にはあまり接触してこなかったが、ここに来て友人の紹介もあって納得して聴いている訳である。秋の夜にはふと我を見つめるに格好のアルバムだ。しかしこの落ち着き感は凄い・・・・。

                    *          *          *          *          *          *

     
      <Jazz>

               Martin Tingvall  「en ny dag」
               SKIP / GER / SKP91172 / 2012

En_ny_dag            
                  Martin Tingvall : Piano

 こちらはドイツの俊英ピアニスト(と言っても生まれは1974年スウェーデン)のマーティン・ティングヴァルMartin Tingvallによる2012年リリースの初のピアノ・ソロ・アルバムである。彼が主催する異色のインター・ナショナル・メンバーのピアノ・トリオ「TINGVALL TRIO」は私のお気に入りで、過去のECM的なスタジオ・アルバム(『Skagerrak (2006)、『Norr 』(2008)、『Vattensaga 』(2009)、『Vägen 』(2011)、『Beat 』(2014))は私の愛蔵盤でもある。

 (参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/tingvall-trio.html

 そんな訳で、彼のピアノ・トリオ・アルバムはここでも既に取り上げてきたところだが、このソロ・アルバムは、実は今回初めて聴くことになったもの。

  • (Tracklist)
    1. En Stjärna Faller 2:10
    2. En Början 4:25
    3. Debbie And The Dogs 4:20
    4. Efter VI Skildes Åt 4:22
    5. En Ny Dag 4:45
    6. Det Är Åska I Luften 3:46
    7. Så Hissas Flaggan På Midsommarafton 4:09
    8. Utan Ström I Harare 3:30
    9. Till Dem Därhemma 4:41
    10. Kvällens Sista Dans 4:14
    11. Myggan Som Inte Ville Dö 3:05
    12. När Barnen Sover 3:15
    13. Dagens Slut 1:55
  • Martin1 彼の描くところ、北欧からのメロディーがやっぱり流れてくると言うところか。その美しさというところは、何故か日本人の我々の郷愁を誘うという世界。
     4曲目”Efter VI Skildes Åt” は、”パーティーの後”という意味になるのだろうか、又12曲目”När Barnen Sover ”(”幼子が眠る時”?)などのこの郷愁感はもはや絶好調。
     美しいピアノ・メロディーの世界には、”都会の夜の静かさ”と”どこか都会から離れた自然に包まれた世界”と二つに分けてみると、彼の世界はやっぱり後者だろうなぁ~と思うのである。

     秋になってふと我に返って聴いた万人に推薦できる二枚のアルバムだった。

  • (視聴) Bugge Wesseltoft
  • (視聴) Martin Tingvall

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    2014年9月15日 (月)

    ティングヴァル・トリオTingvall Trio : ニューアルバム「BEAT」

    インターナショナル・トリオの6作目も美しい世界だった

    <Jazz> 
          TINGVALL TRIO 「BEAT」
                   SKIP RECORDS   SKP9137-2  , Germany , 2014

    Beat
     スウェーデンのピアニストのティングヴァルMARTIN TINGVALLとキューバのベーシストOMAR RODRIGUEZ CALVO、ドイツのドラマーJÜRGEN SPIEGELよりなるインター・ナショナル・トリオの6作目。今作はハイレゾ音源の供給やLPでのリリースもあり、音にもかなりこだわった作品。彼等の2006年からのDiscographyは下記のとおりである。

    Skagerrak (2006)
    Norr (2008)
    Vattensaga (2009)
    Vägen (2011)
    In Concert (2013)
    Beat (2014)

     そしてこのアルバムのtracklistは下のような12曲。

    Beatlist_2

      2ndアルバム「Norr」を聴かせていただく機会がもてて興味を持つことになり、2006年の1stアルバム「SKAGERRAK」 、そしてこの最新アルバムに手を付けてみた・・・。従って私にとっては彼等は3作目になるのだが、ブログなどの諸氏の感想を見ると、E.S.T.と良く比較されているが、リズム・テンポの変化はあっても私はあまりそうしたイメージは感じない。もしろ彼等の世界の基本的な印象はクラシック調にあって、それにジャズ心が絡んでくる。アップテンポぎみになったときに、なんとなくロックからの影響を受けているのかなと思わせるところもあるが、それでも主流は端麗なメロディーをメランコリックに流してくれる。あまりフュージョンぽいところにはゆかない。

    Trio2_2
     全曲、ピアニストのティングヴァルによるもので、それをトリオのメンバーがそれぞれの個性を出して編曲しているというパターン。一曲目”Den Gamla Eken”は、ウッド・ベースのアルコ奏法にピアノの旋律が美しく流れ、まるでクラシックを聴いている世界だが、2曲、3曲とジャズゥイな演奏を展開。そしてアルバム・タイトル曲の4曲目”Beat”は再び耽美的な演奏に戻り、アルバムの中ではそうした曲の配列の抑揚の見事さを感ずるところ。
     又7曲目”Heligt”は、一つの物語を映画で見ている気持ちにさせるピアノの調べで、壮大に展開する。
     技巧的に高度な演奏かどうかということは私には難しい評価で、ここではそれは別にして、極めて真摯な世界を折り目正しい姿勢で展開してくれるのである。とにかく聴き安いジャズ・ピアノ・トリオで安心して対応できる。そして最後の”De Vilsna Tomten”の美しいピアノには感服してしまう。

    (視聴)
       ”BEAT”

       
           ”Den Gamla Eken”

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