フランチェスカ・タンドイ Francesca Tandoi 「WHEN IN ROME」
相変わらずピアノ演奏は現代的なリアル感たっぷりの力強さが
<Jazz>
Francesca Tandoi 「WHEN IN ROME」
bird box Records / Import / BB2201 / 2023
Francesca Tandoi - piano, vocals
Matheus Nicolaiewsky - doublebass
Sander Smeets - drums
Recorded at Nightingale Studios, Palombara Sabina, Rome, Italy on April 22-24 2021 and June 3 2022
しばらくニュー・アルバムがお目にかかってないイタリア出身の女流ピアニスト・ヴォーカリストのフランチェスカ・タンドイであるが、私がここで取り上げたのは、2016年のアルバム『Wind Dance』(A.Sawano/AS150)で既に6年の経過がある。澤野工房からのリリースであり、この間、澤野からみてお目にかなうアルバムがなかったのかもしれない。当時と時代は変わって、今やストリーミング世界であって、ふとみるとこんなアルバムがあった。これは日本でも3月にCDにてリリースされるようだ。
彼女はイタリア出身だが、オランダに移り、2009年ハーグ王立音楽院に学び、更にコダーツ音楽院を2015年に優等で卒業し、まもなく国際的なキャリアを開始し、コンサートやツアーに熱心に従事してい.る。その後作曲家、編曲家、ピアニスト、ヴォーカリスト、バンドリーダーとして活躍。過去の数枚のアルバムは日本でもお目見えしている。今回のアルバムもオランダでのリズム隊で、ローマで録音されたようだ。
このアルバムは、トリオ・メンバーの出身が世界のさまざまな地域の3つの文化からで、それがオランダでの出会いによる結果であり、ジャズを愛する力によって密接に結びつき、3つのサウンドが融合して出来たものと言えるようだ。
コントラバスのマテウス・ニコライエフスキー(上左)とドラムのサンダー・スミーツ(上右)が、フランチェスカ・タンドイとの出会いによって共感を感じて生まれたバンドで、既にこのトリオの相互作用による息の合ったところは評判になっている。
収録は7曲で、ジャズの伝統のスタンダード曲、ドビュッシーへとジョビンへのオマージュ曲、フランチェスカ・タンドイのオリジナル曲(4曲)によって構成されている。
1. Tin Tin Deo (C. Pozo / G. Fuller) 6:11
2. Eternal Dusk (F. Tandoi) 8:23
3. Estrada Branca (A.C. Jobim/V.d. Moraes) 6:43
4. Winter Love (F. Tandoi/I. Heijliger) 3:03
5. P.C.R. (F. Tandoi) 4:59
6. Arabesque No.1 (C. Debussy arr. F. Tandoi) 5:50
7. Two Lonley Souls (F. Tandoi) 3:57
7曲のトータル録音時間39分は少々短い、リリースCDには更に追加があるのかもしれない。ちょっと寂しいのは、彼女の歌はM4."Winter Love"の一曲のみだ。かなりソフトにしっとりと歌い上げている。私としては、彼女の演奏も否定しないが、もう数曲は歌が聴きたかったというのが本音。しかし見方によればピアノ・プレイがしっかり楽しめるともいえるのだが・・・演奏者として今までそう注目していたわけでもなかったので。
もともと明快にしてエネルギッシュな現代的ピアノを聴かせてくれる彼女だが、ここではイタリアの哀感を滲ませるロマンティックな弾奏をも期待したが、やはりその因子は少なく、現代的でリアルなアプローチのピアノ・トリオの作品。
M1."Tin Tin Deo"の有名ナンバーからやはり活発な演奏。
M2."Eternal Dusk"の彼女のオリジナル曲は、冒頭からメロディーに哀愁感あるが、次第に弱弱しさはなく持ち味のやや陰影がある中に力強さが感じられる出来となっている。このアルバムでは出色であった。
ジョビンのM3."Estrada Branca"も、憂いの表現にしては少々活発すぎないかとも思った。
注目のドビュッシーの曲M6."Arabesque No.1"だが、クラシックの流れは十分意識してのジャズ・アレンジだが、むしろ攻めを感ずる演奏。
M7."Two Lonley Souls"は、ニコラエフスキーのアルコ奏法と彼女のピアノによるちょっと牧歌的な哀感がいい。
結論的には、私自身はタンドイのヴォーカルものの期待が大きいので、ちょっと残念なところ。又彼女自身の演奏の味は、技術力、アレンジ編曲力など十分出ていて見事。ただそれと私の好みのメロディーの哀愁と美旋律のものとはちょっと別物で、やはりトリオ演奏の現代的なリアルなところに終始している感があり面白みと価値は解るが、好みとして絶賛というところにはなかった。
(評価)
□ 曲・演奏 87/100
□ 録音 87/100
(試聴) "Eternal Dusk"
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