ロベルト・オルサー ROBERTO OLZER TRIO 「AURORA 」
今回はメランコリーよりは優美な世界の印象を受けるアルバムだ
<Jazz>
ROBERTO OLZER TRIO 「AURORA 」
ATELIER SAWANO / JPN / AS-505 / 2024
Roberto Olzer(piano)
Yuri Goloubev(bass)
Mauro Beggio(drums)
Rcorded, mixed & mastered on 1-3 march 2023 at Artesiono Recording Studios-Cavalicco (Udine)-Italy
Sound Engineer : Stefano Amerio
澤野工房から久々に待望のイタリアのロベルト・オルサー・トリオ作品の六枚目がリリースされた。何んと言ってもヨーロッパ耽美詩情派の典型たるこのトリオは、憂いや物悲しいメランコリーを描くには最右翼、今回も鉄壁の不変のトリオで、いよいよ脂の乗ってきたロベルト・オルサー(1971年イタリアのドモドッソラ生まれ、→)のピアノに実力派ソヴィエト系のクラシックからの転向したユーリ・ゴルベフ(下右)のベース、そしてドラムスはイタリアでの経験豊富なマウロ・ベッジオ(下左)という構成である。
そしてなんと世界的にも神秘的な美と言われる「オーロラ」をテーマにしている。今年2024年の不思議にも連続で発生した太陽フレアが起こした大規模な磁気嵐によって、世界の低緯度の国々にもオーロラを出現させ、日本でも観察できたというが、それはこのアルバムの出現とは偶然で、昨年イタリアのスタジオ録音物である。そして嬉しいことに録音エンジニアは、あの名録音技師のステファノ・アメリオが担当している。それだけでもオーディオ・マニアにとっても期待されるものだ。
そして収録曲は12曲で、オリジナルはオルサーの4曲(下*印)と今回も大きな協力をしているコルベフの3曲(下#印)の7曲で、残るはカヴァー5曲だ。
(Tracklist)
01. After You Went Away
02. Saharan Dream
03. Aurora*
04. A Minuet Mint#
05. Torre del lago*
06. Parisian Episode IX#
07. Piano Concerto
08. Heimweh*
09. Yumeji's Theme
10. Blue Eyes Blue#
11. Corale*
12. A Little Waltz
冒頭のM1."After You Went Away"からピアノの美旋律が顔を出す、しかしアルバム・タイトル曲は3曲目で、それとの関連付けがあるのかどうなのか、この曲は哀愁と言うよりはピアノとベースによる旋律の運びが歴史的なイタリア風の美的な優雅さが感じられる。
M2."Saharan Dream"は、エンニオ・モリコーネの「サハラの夢」で、さっそくゴルベフのアルコのベース音が導いて、ピアノの旋律がここでも優雅に流れる。
M3."Aurora"は、オルサー自身ののタイトル曲で、ピアノのリズムカルな流れで繊細で端正なしっとり感漂うメロディック演奏にベースもむしろ軽く流れを維持して美しく演じ上げる。そこにはなんとなく物語を語る雰囲気があるのだ。
このようにこのアルバムは沈む込む暗さと言うか、どこか悲しき不安が主たる世界ではなく、M4."A Minuet Mint"に繋がって描くはメランコリーな因子もあるが、むしろファンタジックなと言ってよさそうな世界に美旋律を乗せての世界で流れてゆく。
M05."Torre del lago"で、アグレッシブなドラムスも聴かせ、ジャズの面白さも演じてくれる。
そしてM06." Parisian Episode IX"では、不思議な世界へと、そして陰影のある世界へと導き、美旋律のピアノとベースの連携プレイが哀感を感じさせる。
M7."Piano Concerto"では結構鮮やかさがあり、M8." Heimweh"に繋がる。
全体的にも、オーロラの如く空間に描かれる神秘性のある美的な北欧の世界を描いたのかもしれない。それにしてもM9."夢二のテーマ"などは心に響くピアノとベースの調べにはM10."Blue Eyes Blue", M11."Corale"と共に人情の深みにも通ずる。そしてM12."A Little Waltz"においては、未来に開かれる感覚が広く展開する。
とにかく私においては、究極エレガンスに包まれ詩人っぽい文学性のある世界に美旋律で導かれ、優しさと美しさに描かれた世界を浮遊するようなアルバムとして聴きとれた。クラシック・ピアノの気品が生きている中で、ジャズをしっかり描いているところも味がある。いろいろと暗さの最近の世情の中ではちょっと稀有なアルバムだった。
(評価)
□ 曲、演奏 : 90/100
□ 録音 : 90/100
(試聴)
当アルバムの曲が澤野工房盤(日本)でまだ未公開の為、彼のソロ"Torre del lago"を供覧
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