メラニー・デ・ビアシオ

2024年10月16日 (水)

メラニー・デ・ビアシオ Melanie De Biasio 「Il Viaggio」

移民者であるルーツに自分を見つめる探索の旅から生まれた世界

<Electronic,  Jazz,  Pop>  (Style : Easy Listening, Ambient)

Melanie De Biasio 「Il Viaggio」
Pias Le Label / Germany / PIASLL202CD / 2023

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Malenie De Biasio : Vocals,Flute,Lansdcapes,Guitar 
Pascal N.Paulus : Keyboards, Clavinet, Rjhodes,Guitars,Drums etc.
David Baron : Wurlitzer,Mellotron,Synthetisers,Felt Piano
Rubin Kodheli : cello

   私が2014年の2ndアルバム『No Real』以来注目している女性ジャズ・SSW/Singer のメラニー・デ・ビアシオの5作目のアルバム。これは昨年末にリリースされたが、取り上げるのをためらって今になってしまった。過去のアルバムはやはりここで考察・悪戦苦闘したのだが、それにも増してこのアルバムとはある種の覚悟を持って入って行かないと対応が難しい。と、言うのも過去のアルバムを聴きこんでのイメージから発展しないと、まともな理解が出来ないところにあるからだ。

Melanie_de_biasio_credit_jer_me_witzw  メラニー・デ・ビアシオ(Melanie De Biasio、1978年7月12日 - )は、ベルギーのジャズ歌手、フルート奏者、作曲家。ベルギー人の母とイタリア人の父の間にシャルルロワで生まれた。3歳からバレエを習い、8歳からウエスタン・コンサートフルートを習い始める。ニルヴァーナ、ポーティスヘッド、ピンク・フロイド、ジェスロ・タルなどのロック・グループのファンだった彼女は、15歳のときにしばらくの間ロックバンドに参加していた。ブリュッセル王立音楽院で3年間の歌唱学を学んだ後、彼女は最高の栄誉を持つ一等賞を受賞。2004年、ロシアでのツアー中に、深刻な肺感染症にかかり、丸1年間歌唱能力を失った。この間、彼女は特徴的なささやき声の詠唱を発達させた。

 彼女のルーツはジャズだが、長年ジャズを、または少なくとも純粋なジャズを作っていない。彼女の過去のアルバムは、2007年『A Stomach Is Burning(胃が焼けている)』、 2013年『No Deal(合意なし)』、2016年『Blackened Cities(黒く染まった都市)』 (EP、これが又かなりの問題作) 、2017年『Liles』とあって、今作は6年ぶりの第5作だった。
 このアルバム『Il Viaggio』(旅)のアイデアは、2021年に学際的な芸術祭「Europalia」がデ・ビアシオに"Trains & Tracks(列車と線路)"をテーマにするよう依頼したことから生まれたという。それをきっかけに彼女は、父方の祖父母がイタリアからベルギーへの移民のルートを再構築してみることを決意した。古いカメラと軽量の録音機器だけを武器にフィールドレコーディングを行ったメラニー・デ・ビアシオは、イタリアのアブルッツォ州(下写真のような高原や山岳地帯が多い=snsより借用)にある小さな山間の村レットマノッペッロに一人で定住した。そしてそこから家族の出身地であり、子供の頃に夏を過ごしたドロミテを旅した。この旅こそが彼女の内省的な姿に、又それだけでなく、この作品作りに中心的な影響をもたらしたというのである。

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Disc1
Lay Your Ear To The Rail
1 Lay Your Ear to the Rail
2 Nonnarina
3 Il Vento
4 We Never Kneel to Pray
5 I'm Looking for
6 Mi Ricordo Di Te
7 Chiesa
8 Now Is Narrow
9 San Liberatore
Disc2
The Chaos Azure
10 The Chaos Azure
11 Alba

 このアルバムは、彼女の「芸術的進化と音楽技術への献身の証」だと言わしめている。音楽的、肉体的、精神的な再生のための探求であり、目覚めた感情的な記憶から生まれた作品だと言う。コンクリート(楽器ではなく、生活音や騒音、川の流れや鳥の音などの自然の音を使って創作される音楽)とアンビエントが融合し、映画一シーンのような自然に恵まれた中での人間の営む静かな風景を見つめるが如くの世界に引き込まれる。これにはフィールドレコーディングとか、おそらくサウンド・コラージュも行われての曲作りだったと推測する。そして収録された11曲が、一つの世界として聴き込む必要があるアルバム造りである。さらに幸い私はイタリアの長靴のような形の国を車で南から北へ縦断した経験があるが、あの途中で見た山や高原に点在する古い村落などを見たことが、なんとなくこのアルバムに描かれる世界が見えてくるのである。

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 まずは、オープニングトラックのM1."Lay Your Ear to the Rail"から音の流れに魅了される。メラニーのバラードは、ジャズに根ざしながらも、そんなジャンルを超越した普遍的な魅力を持っており、ささやく歌詞が、移民の安堵のない不安定な荒涼たる世界にすぐに引き混まれてしまう。
 そしてM2."Nonnarina"に入ると、いかにも親密な人間の姿が浮かび上がるが如く彼女の歌が響く。そしてM3."Il Vento"では深遠な世界に沈み込む。
 そしてM4." We Never Kneel to Pray"においては祈りの世界に導いている。
 M5."I'm Looking for"のギターの響きは、決して明るい安堵の世界でなく暗雲が広がるような展開に。しかし続くM6."Mi Ricordo Di Te"のギターと彼女の歌声に救われる。
 しかしM7."Chiesa"では再びアルバムの冒頭に引き戻される。不安に満ちたこの世界こそが、彼女の発見した現実なのかもしれない。彼女の声がアンビエントな空間に響く。
 M10."The Chaos Azure" のチェロの響きは深層心理への響きが感じられる。M11."Alba"はミニマル奏法で永遠なる大地と自然と人間の営みの世界からの別れを描くのか、是非聴いてほしい18分の世界。

 こうして彼女のルーツを探索する旅が進行し、果たして得られたモノは何かは私のような聴く者には解らない。ただシンセの響きに、彼女の不思議な歌声、そしてギターが異様な世界を描き、彼女のフルートが深遠な人間集団を表現する。単なる回顧に終わらない彼女の世界の複雑性が深く印象に残るのである。
 このアルバムは、ジャズ、オルタナティブ、チルアウト(電子音楽のスローテンポなさまざまな形式の音楽を表す包括的な言葉として)のジャンルが調和して融合しており深みのある世界は抜きんでている、不思議にして複雑であるが普遍的な聴覚体験をさせてもらうことが出来る。これには、Pascal N.Paulus (Key, Guitar 下左)とDavid Baron(Mellotron,Synthetisers 下右)の力も大きいと推測している。


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  不思議に何度聴いても飽きない、それは歌詞の意味がまったく解らないところにあって、それがむしろ聴く者の個人の世界に一つの空想空間を築く様に誘導してくれるのだ。私のこのアルバムとの格闘はまだまだ続いている。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  95/100
□ 録音      88/100

(試聴)

*
"Lay Your Ear To The Rail"

(解説) イタリア・アブルッツォ州   (snsを参考にした)
 ローマの東に位置するイタリアの州で、アドリア海沿岸とアペニン山脈に面しています。内陸部には険しい山岳地帯が広がり、多くが国立公園や自然保護区に指定されている。丘の上に築かれている町は歴史が古く、中世やルネサンス時代にまでさかのぼる。州都は城壁都市のラクイラですが、2009 年に地震が発生し被害を受けた。州の65%が山岳地帯で、アドリア海とアペニン山脈の間には丘陵地帯があり、平地はわずか1%しかない。中央イタリアに位置していますが、1860年にイタリア王国に統一されるまではナポリ王国の領土であったため、歴史的にも文化的にもイタリア南部に近いと言える。山岳が多いこともあり人口密度が低く、他の南イタリアの州同様経済は遅れており、戦前まではイタリアで最も貧しい州の一つでした。1960年代以降は、首都ローマとアブルッツォを結ぶ高速道路の完成を契機に工業化が進みました。ドウ畑は海と山に挟まれた丘陵地帯に広がっている。基本的に夏は暑く乾燥し、冬は温暖で雨が多い地中海性気候だが、内陸部の標高の高いエリアは冷涼です。ただ、アドリア海から内陸に入るとすぐに丘陵地帯で、30〜50kmで山岳地帯となるため、ほとんどのブドウ畑は海と山の両方の影響を受ける。

 レットマノッペッロ(Lettomanoppello)は、イタリアのアブルッツォ州に位置する小さな村。自然豊かな環境に囲まれた村で、特にマイエッラ国立公園の一部に位置しているため、ハイキングや自然愛好家に人気の場所。村自体は人口が非常に少なく、歴史的な建造物や教会が点在しています。主な見どころの一つとして、石材の加工で知られるこの地域特有の建築物や彫刻があり、古くから採石業が盛ん。特に、白色の石灰岩「マイエッラ石」がこの地域で採れ、伝統的な建物や彫刻に使用されている。住民は、地域の伝統や文化を大切にしており、村では小さな祭りやイベントが開催されることもある。アブルッツォ州全体としても、豊かな食文化があり、特にパスタやワイン、チーズなどが有名です。歴史的には、レットマノッペッロは中世からの村であり、その歴史を今も感じることができる静かで魅力的な場所。

 

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2019年3月31日 (日)

寺島靖国プレゼント「For Jazz Vocal Fans Only Vol.3」

 

今回も女性ヴォーカルで満たされた

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Vocal Fans Only Vol.3」
 Terashima Records / JPN / TYR-1078 / 2019 

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 寺島靖国のコンピレーション・アルバム・シリーズの中ではニューフェースである「Vocal Fans Only」の第3巻目が登場した。彼のシリーズも「Jazz Bar」「Audio Fans Only」「Drums Fans Only」と増加の一途をたどって若干近頃乱発ぎみの為、このシリーズもちょっとどうなのかなぁと不安を抱きながらの購入である。
 過去の二巻、比較的マイナーなところにも焦点を当ててくれて大いに楽しんだことがあった為、どうしても注目してしまうのである。さて今回の3巻目はいかなるところに至ったか、ちょっと見てみることにする。

 

(Tracklist)

1 Carme Canela & Joan Monn / Left Alone (Billie Holiday, Mal Waldron)
2 Pascale Lavoie / Speak Low (Ogden Nash, Kurt Weill)
3 Cara Campanelli / Smile (John Turner, Geoffrey Parsons, Charlie Chaplin)
4 Connie Evingson / Close Your Eyes (Bernice Petkere)
5 Melanie De Biasio / I'm Gonna Leave You (Rudy Stevenson)
6 Orla Murphy / The Old Country (Curtis Lewis, Nat Adderley)
7 Bonnie J Jensen / Just The Two Of Us (Bill Withers, William Salter, Ralph MacDonald)
8 Jane Krakowski / Let's Face The Music And Dance (Irving Berlin)
9 Karolina / If You Go Away (Jacques Brel, Rod McKuen)
10 Lauren Koval and The Page Cavanaugh Trio / Embraceable You (Ira Gershwin, George Gershwin)
11 Anna Luna / What Are You Doing The Rest Of Your Life (Michel Legrand, Alan Bergman, Marilyn Berg man)
12 Kendra Lou / Black Coffee (Paul Francis Webster, Sonny Burke)
13 Lauren Meccia / You Don't Know What Love Is (Don Raye, Gene de Paul)
14 Shannon Forsell / Georgia On My Mind (Stuart Gorrell, Hoagy Carmichael)

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 一番の評価はスタートM1"Left Alone"のカルメ・カネラCarme Canelaだろうか、この曲が収録されているアルバム「Ballads」(FSNT559)(上左)は2018年リリースで、それ程話題にはならなかったのだが・・こうして聴いてみると成程「ジャズ批評」で"ジャズオーディオ・ディスク大賞2018"のヴォーカル部門で金賞に選ばれたアルバムだと言える。とにかくこの曲、彼女は哀愁の伴った切なさをもって歌いあげていて聴く者に訴えてくるんですね。私は即、このアルバムを注文してしまった(感想は又いずれ)。
  M2 Pascale Lavoie / Speak Low M5 Melanie De Biasio / I'm Gonna Leave You は、特にMalanie De Biasioは注目。既に私はここで3年前の2016年3月に取り上げたアルバムからである。私の評価は良好ではあるが、そちらを見てもらうということで、ここでは省略だ。
  M3.Cara Campanelli / Smile : アルバム「So Near」(2009)(上中央)より、このアルバムはピアノ等がほぼソロ状態で静かにサポートするスタイルでデュオの形をとっている。 しっとりと彼女の細工のない唄が聴ける。高音も伸びるが低音も魅力あり、ちょっと注目したくなる歌手。Adam Birnbaumのピアノも聴きどころ。
 M9 KaroliNa / If You Go Away も注目。このカロリーナという歌手、ポーランド生まれ、アメリカ在住、ビオラ奏者だという。これがなかなかのヴォーカル、質の良さが伝わってくる。この曲の納められているアルバム「Song of Hope」(RHO7129)(上右)は2016年のリリースで今やプレミアもの。
 M11 Anna Luna / What Are You Doing The Rest Of Your Life :なかなかしっとりと聴かせる。アルバム「Sketches」(FAM22042/2007)(下左)から。
   M12 Kendra Lou / Black Coffee : アルバム「To The End Of The World」(CALI111/2010)(下中央)から。このケンドラ・ルーはデンマーク国籍、このアルバムは殆ど彼女のオリジナル曲で埋め尽くされているが、このスタンダードがここでは選ばれた。情感たっぷりの唄で、意外にユーロ的でないクラシック・ジャズ・ムードがある。
   M14 Shannon Forsell / Georgia On My Mind  : アルバム「The Nearness Of You」(LML CD 254/2011)(下右)から 、これは米国ピアニストで歌手の"スターダスト"を作曲したHoagy Carmichaelのトリビュート・アルバム。ヒット曲"我が心のジョージア"をなかなかの芸達者な歌声で聴ける。

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 今回も女性ヴォーカルものになっている。寺島靖国流の選曲にはやはり女性独特の世界を追求する姿勢があって参考になる。ただ少々古いアルバムからの選曲もあって苦労しいる様子が伺えた。もっと新しい発掘に期待したいのだが。

(評価)
▢ 選曲・歌 :  ☆☆☆☆★
▢ 録音        : ☆☆☆☆★

(視聴)  Carme Canela "LEFT ALONE"

  



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2018年3月24日 (土)

メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasio 「LILIES」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No7

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「異世界」       (Feb. 2018  撮影)


ダークな世界はその止まるところを知らない・・・

<Jazz, Blues, Soul, Rock>
Melanie De Biasio 「LILIES」
Hostess Entertainment / JPN / HSE-4286 / 2017

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Melanie De Biasio : Vocals
Pascal Paulus : Piano, electric Guitars, Clavinet
Pascal Mohy : Piano
Dre Pallemaerts : Drums

 個性派女性ジャズ・ヴォーカリストと言えば、なんといってもこのベルギーのメラニー・デ・ビアシオでしょうね。自己のオリジナル曲を中心に彼女の描く世界は類をみないダークの中に社会派とも思えるメッセージを感ずるところだ。又そればかりでなく女性独特の人生観に自己を裏切らずに訴えているところだと思う。しかも唄もうまい。私の最も注目している一人で、ここでは数回目の登場である。

 そのメラニーの最新盤はつい昨年10月に思ったより早くにリリースされた。遅まきながらここに登場だ。
 今回のアルバムは前作のEP盤『BLACKENED CITIES』(PIASLO-50CD/2016)を別にして3枚目のアルバムだ。なにせ1stアルバムが『a stomach is burning』(IGL193/2007)という強烈なタイトルでデビュー、2ndアルバム『NO DEAL』(PIASR-690CDX/2014)では、そのダークな特異性と音楽性の高さによって圧倒的賞賛を得た。そして直近EP盤『BLACKENED CITIES』では、そのダークさと深刻さが一層増し、もう救う道すらあり得ないところまで沈みきった。そしてその後の今作、果たして何処へ行くのかと興味津々であったのだ。

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1.  Your Freedom Is The End Of Me *
2.  Gold Junkies *
3.  Lilies *
4.  Let Me Love You *
5.  Sitting In The Stairwell *
6.  Brother *
7.  Afro Blue
8.  All My Worlds *
9.  And My Heart Goes On *

                            (*印 Original)

  例の如く音は少ないが深みがある。又その余韻が効果抜群、そして低音から響くメラニーの歌声。それでも冒頭のM1. "Your Freedom Is The End Of Me"は、過去の一連の曲からすればリズムとメロディーの豊富な流れで音もクリア、前作とは異なるスタート。
 なかなか難解なM2." Gold Junkies" 、これも思いの外アップテンポの軽快な曲。しかし決して彼女のヴォーカルは明るくない。この"黄金の中毒者"(?)というのが彼女の重大テーマ、EP盤の前作から続いている。
  M3. "Lilies"になって、いよいよメラニー節の登場。 暗く不安の世界から何処かに光明があるのか?。
  M4. " Let Me Love You" ラブ・ソング?、深刻の愛?。もちろんメラニーの詩"あなたを愛させて、でなきゃ私を刺し殺して・・・ちゃんと殺して、息を引き取るまで・・・でもベイビー私は生きている、だからあなたは私のものになるはず"。
 彼女はもともとフルート奏者、M7. "Afro Blue"でようやくその音が聴ける。
 M8. "All My Worlds" 深く静かに沈み行く世界に更に深くメラニーのスローな歌声。
 M9. "And My Heart Goes On" 深く陰鬱に、唄うと言うよりは・・語り、しかしそこに不思議なメロデイーが流れている。

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 相変わらず総じて暗い。彼女の唄声にしても深く重く暗い。しかしそこに引き込むパワーは凄い。相変わらず背筋にゾクゾクくる世界だ。

 メラニー・デ・ビアシオは、ジャズ、ブルース、ソウルの影響を受けるというベルギー出身のまさに個性派シンガー(1978年生まれ、父はイタリア人、母はベルギー人)。その歌唱力と、音と余韻を曲に仕上げる抜群の能力を身につけている。ベルギーの名門大学ブリュッセル王立音楽院で音楽を探究。2007年に発表したデビュー・アルバム『ア・ストマック・イズ・バーニング』から注目を浴び、2ndアルバム『ノー・ディール』は絶賛を浴びた。2015年、2016年と"モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン"出演のため来日している。

  • (評価)
    □曲・演奏     ★★★★☆
    □唄             ★★★★★
    □録音          ★★★★☆
  • (視聴)

    **

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    2016年9月 7日 (水)

    メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasioの1st「a stomach is burning」

    ブルーな世界、憂鬱なる哀愁によって描かれる「メラニーの奥深い心情の世界」

    <Contemporary Jazz,  Soul>
    Melanie De Biasio 「a stomach is burning」
    Igloo / EU / IGL193 / 2007


    Astomachw
    <a atomach is burning> was a "3 days live session"recorded and mixed in Dec.2006 at Igloo Studio by Daniel Léon

    MELANIE DE BIASIO (vocal)
    PASCAL MOHY (P)
    PASCAL PAULUS (HAMMOND他)
    TEUN VERBRUGGEN (DS)
    AXEL GILAIN (B)
    FEAT.STEVE HOUBEN (SAX,FL)

    Melaniedebiasio ベルギーの個性的異色女性シンガーのメラニー・デ・ビアシオは、有能なコンポーザーでもあり、どうも私の気になるところである。
     その為なんとなくいろいろと知りたくなるのだが、その結果、この1stアルバムも、しばらく前に海外発注で手に入れてみたものである(今から9年前のリリースものであるのだが)。
     そこで、このアルバムを考察してみたいのだが、彼女を取りあげるのはこれで3回目ということになってしまった。

     彼女には自己名義のアルバムが3枚ある。その3枚を私の場合は、2nd『No Real』2014)から聴いて、次に3rd『Blackened Cities』(2016)を、そしてその後この1st(2007)という順に聴いたんですが、異色性は1st<2nd<3rdの順にニューアルバムに従って濃くなり、この1stも異色ではあるが最も一般ジャズに近いアルバムだった。

     このアルバムでも、彼女のヴォーカルは近代ジャズ演奏とともにその芸の域は深い。声の質も中低音に幅の広さがあり端麗ヴォイス、高音域はクリアーで快感。2ndで受けた印象通りのブルーな世界、憂鬱なる哀愁が漂っていて、しかしそこには彼女の不思議な魅力が溢れている。歌詞は英語であるが歌詞カードが無いため詳しくは知り得ていないが、ここには彼女の奥深い心情の世界が訴えられているのでは?と思うところ。
     ”a stomach is burning”という曲があり、アルバム・タイトルにもなっているのだが、”胃が焼ける”という意味なのか”欲望が燃える”との意味なのか?不明だ。
     しかし既にこの1stから、独特な「メラニー・デ・ビアシオ世界」が築かれていてお見事。

    (Tracklist)
    1 DWON *
    2 A STOMACH IS BURNING *
    3 NEVER GONNA MAKE IT *
    4 MY MAN'S GONE NOW *
    5 BLUE
    6 LET ME LOVE YOU *
    7 THE LATEST LIGHT OF LOVE
    8 CONVICTIONS *
    9 ONE TIME *
    10 LES HOMMES ENDORMIS
    (*印 Comp. M. De Biasio)


    Bando5  曲は彼女自身の手によるものと、このアルバム・メンバーの曲が中心で、基本的にはオリジナル曲構成のアルバム(←)。

     アメリカン・スウィング・ジャズの軽快にして気持ちを高揚させるものとは全く異なるところで、ジャズ形式も多彩で゛、ブルースあれば、ファンクそしてスウィングもみられる。
     そのバック演奏は、全体にスローではあるがそこにあるスリリングな演奏によって緊張感たっぷりの陰影を描ききる。このあたりからも、かなり洗練されたバンド・メンバーであることが解るが、特にヴォーカルとのバランスにおいてもその締める位置も控えめではあるが、ジャズ演奏の質の高さは、クールな中に繊細な演奏を極め、キラリと光るものを感ずる。特にピアノ、サックスのジャズィーな競合は聴くに十分な味を堪能させる。そしてメラニーの物語調のバラード歌唱を支えるのだ。

     いや~~、これも埋もらせては惜しい異色の名盤である。

    (視聴)

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    2016年8月20日 (土)

    メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasioの問題作「BLACKENED CITIES」

    ロック、ソウルからの発展型?=異色の女性ヴォーカル・ジャズ

       <Soul, Jazz, Alternative Rock
       Melanie De Biasio「BLACKENED CITIES」
       Play It Again Sam / UK / PIASLO-50CD / 2016

    Blackenedcities3

      (Tracklist)
       M1.Blackened Cities   24:14

     ベルギーの異色の個性派女性ジャズ・シンガーのメラニー・デ・ビアシオ。彼女の最新作3rdアルバムだ(このアルバムは約25分の1曲のみ)。
     これを取りあげたいために、先日彼女の前作2ndアルバム(2014年『ノー・ディールNo Deal』((参考) ”Melanie De Biasio「No Deal」” ))を紹介した訳だが、この3rdアルバム『BLACKENED CITIES』は、更に負けず劣らずの衝撃の問題作である。私にとっては今年の注目作の最右翼。

      このアルバム(というかこの曲)は、明らかに社会派の作品とみれる。まずジャケからみても暖かさの感じられない工業都市のモノクロ写真。真っ黒な雲の合間からさす逆光によって浮き出る工業建造物の影は印象深い。そこに果たして人間の世界はどのように構築されているのか?、そして人間性の回復は得られたのか?、まずそんなテーマを感ずるアルバム・ジャケなのだ。
     この”Blackened Cities”という作品、”黒ずんだ工業都市”ということなのだろうが、メラニーが18歳までに過ごした事のある街、マンチェスター(英国)、デトロイト(米国)、バルバオ(スペイン)そして地元でもあるシャルルロワ(ベルギー)などの脱工業地域の街の風景から、インスピレーションを得て完成させたものだという。
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     曲は深く暗く静かにして荒涼たる世界を聴く者に描かせるところから始まり、メラニーの美しい中・低音の訴えかけるようなヴォーカルが静かにスタートする。繰り返し歌え上げる”goldjunkies”という言葉が焼き付けられる。
     明らかに、「黒ずんだ工業都市」にうごめいてきた人達の生活は・・・・・そこにはこの曲が描くところにみるとおり”明るさ”というものは感じとれない。彼女はこの曲によってこのような都市の再生を期して歌うのであろうか?・・・それに関しては、今聴いている私には解らない。
     前作『ノー・ディール』とはテーマは異なるところであろうが、その暗さはやはり共通している。しかしそこに響くメラニーの歌声が、妙に暖かく美しく心に響いてくるのである。

    Bcs このアルバム製作に当たっては、メラニー自身の発想と曲づくりから行われているが、ブリュッセル王立音楽院で出会ったバンド・メンバーや気の知れたアーティスト達と本作を作り上げようだ(←参照)。

    Melanie De Biasio : Voice, Flute
    Pascal Mohy - Piano
    Sam Gerstmans - Double Bass
    Dre Pallemaerts - Drums
    Pascal Paulus - Synth, Backing Vocals
    Bart Vincent - Backing Vocals

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     メラニー・デ・ビアシオは、1978年7月12日、ベルギーのCharleroiに生まれ38歳、フルート奏者にしてコンポーザー。紹介は前回アーティクルを見てもらうことで省略するが、彼女のアルバムは既に世界的に評価が高く、2015年度「ヨーロピアン・ボーダーブレーカーズ(EBBA)賞」を受賞している。

     コンセプティブな発想が盛り込まれていることや、その曲のタイプからも、Jazz分野から見ればContemporary Jazz、 Crossover Jazz、Club Jazz、 Experimental Ambientと言えるのか、一方Rock側からも、Alternative Rock として評価されたりで、一種のProgressive Rockとも言えるところにある。こんなところからもおおよその彼女の世界が見えてくるところである。
     とにかくJazz界からは、その曲の異色性からも関心度が高く、抜群の歌唱力と相まってクールにして、聴きようでは熱い心が感じられ、その矛盾した世界は高評価を持って注目されているわけだ。
     ある紹介によると、彼女は、影響を受けたミュージシャンとしてNina Simone, Betty Davis, Abbey Lincoln, Betty Carter, Funkadelic, Billie Holiday,Siouxsie and The Banshees, Duke Ellington, Sly and The Family Stone, Delroy Washington, burning spearなどの名が挙げられている。

      取り敢えずの評価としては、私が興味を持った前作『No Deal』を彼女のアルバムとしては、お勧めだ。

    (視聴) ”Blackened Cities”

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    2016年8月 6日 (土)

    (問題盤)メラニー・デ・ビアシオMelanie de biasio 「NO DEAL」

    ベルギーからの物憂い陰影漂う完璧なジャズ・ヴォーカル
        ~このダークなムードは??~

          <Jazz>
                
    Melanie de Biasio「NO DEAL」
          Hostess Entertainmen / UK / PIASR-690CDX / 2014

    Nodeal
    MELANIE DE BIASIO(vo, flute)
    DRE PALLEMAERTS(ds)
    PASCAL PAULUS(clavinet analog synths)
    PASCAL MOHY(p)

     なんと言っても評価が難しく、私のところで埋もれていたアルバムを今この夏に登場させる。とにかく重い、深く暗い、ジャケの黒そのもの、その響き渡る物憂げな歌声。そしてそれは欠点の無い恐ろしいほどの完璧なジャズ・ヴォーカル。

    (Tracklist) 1.I Feel You   2.The Flow   3.No Deal    4.With Love   5.Sweet Darling Pain   6.I'm Gonna Leave You   7.With All My Love

      唄うは、ベルギーの個性派シンガー、メラニー・デ・ビアシオMelanie de biasio 。ビリー・ホリデイの再来かと比較され期待されているが?。
     このアルバムは彼女がデビューしてから7年目の2014年リリースの2ndアルバムだ。そしてこのアルバムを今となってここに登場させるのは、現在3rdアルバム( 『Blackened Cities』(PLAY IT AGAIN SAM / UK / PIASLO 50 CD / 2016))もリリースされ、それにも焦点を当てたいからである。

     とにかく彼女はフルートを演ずるが、このアルバムでのヴォーカルはその録音もやや残響を聴かせホール感を十分に出したもので、クールにして官能的なところがあり、その深さは尋常では無い。
     又曲の仕上げはなかなか現代的であり、スムースジャズとして評価も受けている。
     このアルバムは上記のとおり7曲の30分少々の短いものだが、過去に無かった世界で強烈な印象を受ける。最近で言うとメロディ・ガルドーのアルバム『CURRENCY of MAN』 に近い印象のところもあって、若干ロックっぽいところも私には好評、その重厚な陰影の世界はまさにピカイチ。

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     紹介文はこんなところだ・・・・→「古き良きジャズ、ブルース、ソウルの影響を受けるメラニーはベルギーの名門大学、ブリュッセル王立音楽院で音楽の才能を開花させ、2007年に『Stomach Is Burning』でアルバム・デビュー。母国ベルギーやフランスなどのフランス語圏の国で高い評価を受けた。クラシック・ダンスからフルート、ヴォーカルの勉強を続けてきた彼女の歌声はビリー・ホリデイやニーナ・シモンを彷彿とさせ、本作からは大人のスムースジャズのフレイヴァーが漂う。またポーティスヘッドなどのトリップ・ホップの世界観も見事に表現している」・・・・・・と。

    A328269114659421017140_jpeg さて、このアルバムは「好きか?」と聞かれれば、私は即「好きだ」と言える。それほど暗い中にバック陣のハイレベルな演奏と曲仕上げ、重厚な魅力のあるヴォーカルが漂っているからだ。ちょっと類の無い恐ろしいどちらかというとクールなヴォーカルのコンテンポラリー・ジャズ・アルバムだ。

     本人に言わせると・・・・・・・・”前作と比べるとよりジャズの要素が少なくなっていると思う。空間の広がり、反響するものがそこにはあって、もっとインディーでアンダーグラウンドな雰囲気を出すことができた。プロデュース、ミックス、マスタリング……すべての工程に私が関わったから、より私らしい作品になったわ”・・・・・・・と。
     彼女の意志がこの世界を構築しているようだ。やっぱり恐ろしい。

     このアルバム聴いたことのある方は・・・・是非感想聞かせてください!!(聴く人により、いろいろな感想があるのでは?と思うのである)

    (視聴)

    ① ”The Flow

    ② ”.I'm Gonna Leave You

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