女性ヴォーカル(ジャズ2)

2016年7月 7日 (木)

<今夏の美女狩りシリーズ>ブリジット・ミッチェルBrgitte Mitchell 「LET'S CALL IT LOVE」

Jazzyな・・・キューティー・ヴォイスの登場

        <Jazz>
        Brgitte Mitchell 「LET'S CALL IT LOVE」
        MUZAK / JPN / MZCF1331 / 2016

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ブリジット・ミッチェルBrgitte Mitchell (vocal)

【LA session】:2,3,5,6,7,9
ラッセル・フェランテ(piano)
ディーン・パークス(guitar)
ジェフ・ハミルトン(drums)
エド・リヴィングストン(bass)
アルトゥーロ・サンドヴァル(trumpet/6)
ボブ・シェパード(soprano sax /3)
録音&ミックス:アル・シュミット/Capitol Studio, LA
マスタリング:グレッグ・カルビー/Sterling Sound, NY

【Rio de Janeiro session】:1,4,8,10
アムレット・スタマート(piano)
レオナルド・アムエド(guitar)
ネイ・コンセイソン(bass)
エリヴェルトン・シルヴァ(drums)
カルロス・マルタ(flute, bass-flute / 1,8,10)
録音:アレクサンダー・ハング/Drum Studio, Rio de Janeiro
ミックス:アル・シュミット/Capitol Studio, LA
マスタリング:グレッグ・カルビー/Sterling Sound, NY

Bm1w 2016初夏美女狩りシリーズ第3弾。(いっや~もう既に盛夏ですね)
 南アフリカ出身の女性シンガー・ブリジット・ミッチェルBrgitte Mitchell 、どうゆう流れか知らないが現在は香港を拠点として活動しているらしい。もともとはケープタウンの教会のコーラス隊で腕を磨いてきたと紹介されている。
 これは本格派ジャズというよりは、キュートなヴォイスで、かなりボピュラー寄りの女性ジャズ・ヴォーカルもの。
 バックはLAと Rio de Janeiroの2カ所でのスタジオ・セッションで、そこでの録音ものを纏めたものとなっている。
 アントニオ・カルロス・ジョビンのボサ・ノバ名曲はじめデイヴ・フィリッシュバーグやアビー・リンカーンなどのカヴァーもので構成されたアルバム。

Dont_explain 彼女はこの前には1stアルバムを2013年にリリースしており、それは「Don't Explain」(P-VINE / JPN / PCD93775)で、少し聴いてみると、そちらの方が、このアルバムよりはジャズよりのパターンのヴォーカル・アルバムだ。

   さて、今回のこの2ndアルバムは、Tracklistは下に記すが、オープニングはリオのセッション・グループの軽快なボサ・ノバ・リズムに乗っての”Lamento”。フルートもリズムを刻み昔聴いたハービー・マンを思い出した。なかなか彼女の確かにキュートと言える歌声が楽しい。
 2曲目”Throw It Away”は、LA Sessionのバックに、今度はしっとりと歌い上げる。なかなか彼女も芸達者だ。
 先の話のように、まあキュートな歌声の持ち主で若干ハスキーなところもあるが高音になるに従って澄んだ声になり、語って聴かせたり、リズムにのって体全体で歌い上げたり(イメージだが)、なかなか洒落た味も持ち合わせた楽しさ十分の聴きやすい声と曲の出来だ。
 とにかく異なったLAとRioの2つのセッションによりアメリカン・ジャズとボサ・ノバの曲の混成によって作り上げられたアルバムということで、変化があって飽きさせない。いっや~なかなか粋なアルバムです。

Bm2w  (収録曲)
1. ラメント
2. スロウ・イット・アウェイ
3. ロスト・イン・ザ・メモリー
4. メディテイション
5. ゼイ・オール・ラフト
6. コルコヴァード
7. ピール・ミー・ア・グレイプ
8. トリステ
9. ムーンライト
10. ワンス・アイ・ラヴド


(参考視聴)   Brgitte Mitchell

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2016年7月 3日 (日)

<初夏の美女狩りシリーズ>ソウルフル・ジャズ・ヴォーカル=レベッカRebecka Larsdotter「Wirlwind旋風」

スカンディナヴィアのトラッドの要素を持った女性ソウルフル・ジャズ・ヴォーカル

     <Jazz>
     Rebecka Larsdotter「Wirlwind 旋風」
      Losen Records / NOR / LOS155 / 2016

155rebecka
3278064Rebecka Larsdotter vocals on all tracks
Shai Maestro piano on tracks 2, 3, 4, 5, 9, 10, 11
Aaron Parks piano on tracks 1, 6, 7
Dayna Stephens saxophone on tracks 1, 3, 4, 6, 7, 11
Oz Noy guitar on track 8
Dennis Hamm keyboards on track 8
Rick Rosato bass on tracks 2, 3, 4, 5, 9, 10, 11
Ben Street bass on tracks 1, 6, 7
Hadrien Feraud bass on track 8
Ari Hoenig drums on tracks 2, 3, 4, 5, 9, 10, 11
Nate Wood drums on tracks 1, 6, 7
Gene Coy drums on track 8


 こうした「美女狩りシリーズ」は、我が友人のお勧めも加わって、多彩になりつつあります。
 まあこうしてジャズ・ヴォーカル界では、女性は尽きること無く出てくるわけで、完全に女性優位ですね。

3276857_2 このスウェーデン出身のレベッカ・ラーシュドッター(ラーシュドッテル)は、女性シンガー・ソングライター。オレブルーÖrebroとマルメMalmöの音楽大学の修士課程で学んだ後、ピアノの教師などしている。子供の頃からヴァイオリン、ピアノを演じてきており、2008年には大志を抱いてアメリカLAやNYにて目下活動中。
 このアルバムは第2作目で、前作は『Feathers & Concrete』(Prophone PCD113)で、ジョニ・ミッチェルをモデルにしたものらしいが目下私は未聴。しかしこれで何となく方向は想像つきます。まあ期待の新人というところか。


 さて彼女のヴォーカルものとは言え、これは簡単に片付けられない異色作。バックはピアノを始めサックス、ベース、ドラムスが中心だが、なかなか充実している。
 ピアノにはアヴィシャイ・コーエン・トリオAvishai Cohen Trioで名を上げたShai Maestro 、そしてAaron Parksが担当していて、それぞれの曲でのピアノの位置も、その占めるウェイトも大きく、そこが聴きどころでもある。

 曲は彼女のオリジナルものを中心に、ホレース・シルヴァー、ジミー・ヴァン・ヒューゼン、ハロルド・アーレンの曲も登場。しかしいずれにしてもスカンディナヴィアのトラッドか?と思われる節回しによるソウルフルな世界に包まれる。
 オープニング曲”.Peace”では、静かなオーソドックスなピアノの演奏でスタートし、しかしそこに彼女のヴォーカルが入ってくると、これはソウルフルな異色ジャズの雰囲気に一変する。更にそこにサックスが加わるのだが、この落ち着いた雰囲気は悪くない。なんとも言えない一種独特な世界。
 M2.”Tomorrow’s Yesterday”、M3.”Indigo Child”と彼女のオリジナル曲が登場し、一層その異色のジャズと言わしめる伝統的ミュージックという民謡のイメージが更に強くなる。
 M5.”Kvar”では、Shai Maestroの静かに説得力あるピアノが美しい。
  しかしM8.”Morning after Pill”では、バックにエレクリック・ギターが登場、なかなかロックぽいところを聴かせ、このアルバムでは異色な曲でアクセントになっていて面白い。
 11.”My Shining Hour”はハイテンポなリズムに、サックスとピアノの掛け合いがJazzyで面白い。
 彼女のヴォーカル自身は究めてオーソドックスであり発声も素直。中音域が主体で刺激性は少ないがなかなか好感を持って聴ける。

 このようなアルバムは、普通は私はすぐ飛びつく度胸は無いのだが、友人お勧めの”この初夏美女狩り第2号”で、そんなところから知り得たもの。取り敢えず一聴に値する。

(Tracklist)
1.Peace(Horace Silver)
2.Tomorrow’s Yesterday(Rebecka Larsdotter)
3.Indigo Child(Rebecka Larsdotter)
4.Like Someone in Love(Jimmy van Heusen/Johnny Bruke)
5.Kvar(Rebecka Larsdotter)
6.Zane’s Tune(Rebecka Larsdotter) 
7.Into(Rebecka Larsdotter)
8.Morning after Pill(Rebecka Larsdotter) 
9.If the Wind Will Allow(Ari Hoenig/Rebecka Larsdotter)
10.Hmm(Rebecka Larsdotter)
11.My Shining Hour(Harold Arlen/Johnny Mercer)

(参考視聴) Rebecka Larsdotter (vocals)

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2016年4月14日 (木)

アリーチェ・リッチャルディAlice Ricciardi のモダン・コンテンポラリー・ジャズ

大人のノーブルにしてドリーミーなジャズ・ヴォーカルは魅力

 Alice Ricciardi アリーチェ・リッチャルディ(英語ではアリス・リシャルディですかね)というイタリアの女性歌手は、2008年に日本にもアルバム・デビューしているが聴くチャンスが無かった。しかし彼女を紹介しているブログをみて何となく興味を持ったので今回アプローチしてみた訳だ。

 2008年のデビュー作『COMES LOVE』 (BLUE NOTE / EMI)で大きく脚光を浴びたのが日本で知られるスタートか。2014年に2ndアルバム『OPTICS』をリリースしている。

    <Jazz>
      Alice Ricciardi 「OPTICS」
      inner cicle music / US / INCM048CD / 2014

Opticsweb

Alice Ricciardi (vocals)
Pietro Lussu (piano, electric piano)
Enrico Bracco (guitar)
Dario Deidda (double bass, bass)
Marco Valeri (drums)


Ar1(Tracks)
1. Deep Song (G. Cory / D. Cross)
2. Anyone Lived In A Pretty How Town (poem by e.e. cummings, music by A. Ricciardi / P. Lussu)
3. Optics (S. Premazzi / A. Ricciardi)
4. I Feel A Song Coming On (D. Fields / G. Oppenheimer / J. McHugh)
5. Intro #1
6. Sorrow (poem by Edna St.Vincent Millay, music by A. Ricciardi / P. Lussu)
7. Flying In A Box (E. Bracco)
8. Intro #2
9. A Flower Is A Lovesome Thing (B. Strayhorn)
10. Intro #3
11. Worry Later (M. Guryan / T. Monk)
12. I’ve Heard An Organ Talk Sometimes (poem by E. Dickinson, music by A. Copland)

 下に彼女の1stアルバムを取りあげているので参照して欲しいが、この2ndは彼女の特徴であるノーブルにして艶やかなやや陰影を感じさせるヴォーカルが又一段と進化して、決して力を入れて歌うのではなく語りかけるようなそして包み込む暖かさもあるのだが、それが非常に聴く者にインパクトを与える。これはなかなかバックの演奏陣の近代的な演奏の洗練された曲作りに乗ってのジャズ・ヴォーカルものとして、コンテンポラリーな新分野を開拓している。私もしばらく驚きで聴き入った。
 特にM5.のピアノ・ソロのイントロに続いてのM6.” Sorrow ”のピアノ・トリオをバックにしての詩的なヴォーカルの世界はハイレベル。それはM8.のベース・ソロの弱音によるイントロから M9.”A Flower Is A Lovesome Thing ”においても詩的な夜の情景が浮かぶ世界は見事。
 Jazzy not Jazz の華やかな現在に、ジャズ・ヴォーカルというものの究極の一面を知り尽くしてのヴォーカルに喝采をするのだ。とにかく彼女の声の質も中・低音にマイルドにして美しく厚みもあって、高音に澄んで伸びる快感の質感がある。

 しかしこれだけのものが、2015年3月号「ジャズ批評」の”2014年ジャズオーディオ・ディスク大賞”ヴォーカル部門に36位まで見ても入っていないのだが、どうしたことか?不思議でならない。

 アリーチェ・リッチャルディは、1975年イタリア、ミラノ生まれ。「ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院」にてバイオリンとピアノを学ぶ。その後、「ミラノ国際音楽アカデミー」でヴォーカルの勉強もする。2002年にはフランスにて ヨーロッパでは名の知れた教育者としての学位F.N.E.I.J.を取得。2005年の「インターナショナル・モントレー・ジャズ・フェスティバル」の”ヴォーカル・コンペ”にて2位に入賞し実力を評価される。2006年N.Yで行われたIAJE(国際ジャズ教育者協会)に招待された。それを機会にその後N.Yにて多様なアーティストと共演、ロベルタ・ギャンバリーニやティツィアーナ・ギリオーニらに師事して、ローマとN.Yを行き来しつつ精力的に活躍、多くの経験を積んだ。1stの何曲かはUSで録音している。

(参考までに1stを紹介↓)

   <Jazz>
         Alice Ricciardi 「COMES LOVE」
       EMI / Italy / X5128422 / 2008

E0042361_23145756
ALICE RICCIARDI(vo), ROBERTO TARENZI(p), MARCO BOVI(g), PAOLO BENEDETTINI(b), NEAL MINER(b on M1,3,7,11), WILL TERRILL(ds), GAETANO PARTIPILO(as, fl), PASQUALE BARDARO(vib), special guest FABRIZIO BOSSO(tp:M5,12)

 (Tracks)
1. Comes Love
2. Summer Song
3. Give Me The Simple Life
4. I Was Doing Allright(The Goldwyn Follies)
5. I’m Gonna Laugh You Right Out Of My Life
6. Who Cares (As Long As You Care For Me) (Of Thee I Sing)
7. If I Should Lose You
8. The Boy Next Door
9. I’ll Remember April
10. Ghost Of Yesterday
11. Here Lies Love
12. By Myself
13. Le Tue Mani

 ”BLUE NOTEから、注目のヴォーカリストが登場! ”と言うことでデビュー。ファッショナブルでスレンダーな美人シンガーというところも注目点。今回初めて聴いたのだが、スタンダード中心で比較的オーソドックスなモダン・ジャズ世界。イタリアのトップミュージシャンがバックを固めている。そんな為か、この1stでも、近代的コンテンポラリーな雰囲気はしっかりと築いている。しかしなんと言っても、説得力のある個性ある美しい情緒溢れる歌声が魅力。
 特にM5 は、しっとりと歌い上げ、そこにイタリアの人気トランペッターFABRIZIO BOSSOが登場して一層ムードを盛り上げてくれる。

(試聴)1”Optics” from 「OPTICS」

                   *                *               *

(試聴)2”I’m Gonna Laugh You Right Out Of My Life ” from  「Comes Love」

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2016年4月11日 (月)

チェロを操る シェイナ・タッカーShana Tucker のアルバム「 SHiNE」

オリジナリティーある『チェンバー・ソウル』の世界は・・・・・

         <Jazz>
              SHANA TUCKER 「SHiNE」
               Impartmaint Inc. / JPN / RCIP-0230 / 2015

51j9eifkq8l
  しかしジャズ界も多種多様な世界、このシェイナ・タッカーShana atucker という女性ミュージシャンも希有な存在って言って良いのだろう。とにかくチェロを操ってのシンガーソングライターだ。しかもそのチェロを演じては一流でクラシックの素養を持ちながら、彼女自身の奏法によってジャズにアプローチ。聴きようによってはフォークっぽく、ソウルの味付けと、はた又聴きやすいポップな面も持っていると言うのだ。

 そしてこの作り出される音楽をして、自ら『チェンバー(室内楽)・ソウル』と称し、その独自のスタイルを推し進めている。又シンガーとしての実力とその魅力も十分というところで、チェロを弾きながら歌うという我が道を行くというスタイル。こうしたパターンに私は飛びつくということはあまりないのだが、友人からの紹介アルバムなのだ。もともとクラシック・チェロの楽曲は好きでよく聴いてきたこともあって興味をもった次第。

St1_2(Tracklist)

01.  Intro
02.  November
03.  The Precious Ones
04.  Just Go
05.  Just a Moment
06.  No Get-Back
07.  Lazy Afternoon
08.  A Secret That I Keep
09.  Amazing Grace
10.  Bow Out Gracefully
11.  Repeat Again
12.  Fast Lane
13.  Shine

 彼女のオリジナル曲が中心の構成。曲によってバンドの編成が変わっているが、彼女のチェロに、ピアノ、エレクトリック・ギター、ベース、ドラムスといったところに、女性のバッキング・コーラスが加わる。まあジャズ寄りの構成ですね。
  又、彼女はチェロを単に弓による奏法に拘らず、ピツィカートは勿論、コル・レーニョその他かなり多様な操りを熟しているようだ。
 彼女が歌い演ずる曲調を一口で表現するのは難しいが、やはり主体はソウルというところか?。声量は十分でかなり美声の持ち主。高音の伸びもいい。

 M1.”Intro”は、ピアノ、ドラムスの流れが襲ってかなりコンテンポラリー・ジャズ的で面白いが、M2.”November”になって彼女のヴォーカルが入るとイメージは変わってソウルっぽい世界であることが解る。そこにチェロの調べが流れて不思議なと言うか聴き慣れない世界に引きずり込まれる。
 そしてM2.M3.M4.と聴いて行くと、彼女の唄の巧さや声の質の良さがはっきり認識できて、これには多分お気に入りになる輩も出てくるのは解る。ソウル、フォーク調と言えば良いのか?、しかしどうもユーロ・ジャズ系を好む私にとっては、若干好むムードが違っている。
  M7.” Lazy Afternoon”、M8.” A Secret That I Keep”は、なかなかJazzyでムードも私好み。このパターンが良いですね。
 M9.”Amazing Grace”はクラシック・チェロの響きにピアノが落ち着いたメロディーを演じて、聴きようによってはトラッド的な雰囲気を感ずる曲で聴き惚れるところがある。
 最後のアルバム・タイトル曲M13.”Shine”は、フォーク調の彼女のヴォーカルをしっかり聴かせる曲。
 私にとっては、中盤から後半に好みの味が感じられた世界があった。

Shana_tucker3
 彼女はNYのロングアイランド出身で、”ジャズをルーツにしながらも、ジョニ・ミッチェルやトレイシー・チャップマン、ダイアン・リーヴスなどの系譜を継ぐ優れた女性シンガー・ソングライターにして、チェロ奏者としても一流というクラシックの素養も持つ多才なアーティスト”と紹介されている。
 彼女の演ずるスタイルは、つまりモダン・ジャズではなく、フュージョンでもなく、フリー・ジャズ、ロフト・ジャズでもなく・・・・なかなか私の感覚では表現に困る。まあこれを彼女の言う『チェンバー(室内楽)・ソウル』という独自スタイルを構築しているところの姿なのだろう。このことはアーティストとしての生き様まで感じられるところである。
 

(視聴)

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2016年1月11日 (月)

フェイ・クラーセンFay Claasseni ニュー・ライブ・アルバム「LIVE AT THE AMSTERDAM CONCERTGEBOUW」

どちらかというとNY寄りの大人のクラシック・ジャズ・ヴォーカル

  <Jazz>
       FAY CLAASSEN    TRIO PETER BEETS
「LIVE AT THE AMSTERDAM CONCERTGEBOUW」
       Challenge / Euro / CR73411 / 2015

Live_at_amsterdam(Tracklist)
1. Just One Of Those Things(02:55)
2. I'm Old Fashioned (03:06)
3. When Sunny Gets Blue (06:29)
4. The Song Is You (04:04)
5. Poor Butterfly (04:16)
6. 's Wonderful (02:31)
7. Zon In Scheveningen (04:19)
8. I've Got The World On A String (04:05)
9. Meditation (05:32)
10. You'd Be So Nice To Come Home To (04:06)
11. Detour Ahead (03:39)
12. Summertime(05:16)

Fay Claassen(vocal)
Peter Beets(piano)
Martijn van Iterson(guitar)
Ruud Jacobs(bass)


F_c1 オランダの女性ジャズ・ヴォーカリストではもはや重鎮の雰囲気すらあるフェイ・クラーセンFay Claassen(1969年生まれ46歳)ですが、私は彼女のアルバムに至ったのは最近だった(アルバム「sings Two Portraits of Chet Baker」)。その彼女のニュー・アルバムである。これはライブ盤であり、曲の間にも拍手が入る。
 彼女のジャズの出来は、既に一つの境地に至っていて、オランダを始めヨーロッパでは知れ渡っている。もちろんニュー・ヨークでの活動もある。

 さて、このアルバムは、オランダのヴォーカリストとして人気のあったリタ・ライス(2013年生涯を閉じたばかり)のトリビュート・コンサートでの収録。従つてリタ・ライスゆかりの曲で占められている。
 ポイントはバックを固める演奏陣で、これ又ライスのバックも務めていたピーター・ビーツPeter Beetsに注目。彼はやはりオランダ出身のジャズ・ピアニストだが、ヨーロッパは勿論だが、ニュー・ヨークなどを活動の場としていて、世界的なミュージシャン。このアルバムではギターとベースとでトリオを組んで、やっぱりユーロ・ジャズというよりはアメリカンなスウィング感が満ちての、どっちかというと懐かしのジャズをここでは演じてくれている。
 相変わらず、フェイ・クラーセンのヴォーカルは充実していて、ムードも大人の世界、なんとなくクラシックな味付けも見事に歌い上げている。
 このアルバム若干録音に難がある。バックの演奏にホール感は適度にあるが、それぞれの楽器の音に臨場感の艶が無い。そんなところは残念なところである。
            
           *     *     *     *

 さてここで私の好きな過去のフェイ・クラーセンのアルバムを取り上げる(↓)
 
<Jazz>
   
Fay Claassen
 「sings Two Portraits of CHET BAKER Vol.1」
   55Records / JPN / FNCJ5515 / 2006

Fay_claassen_chet_baker_2
(Tracklist)
1. Fall in love too Easily
2. I remember you
3. My funny valentine
4. Let's get lost
5. He was too good to me
6. The touch of your lips
7. The Thrill is gone
8. Look for the silver lining
9. Retro em branco e preto/Portrait in black and white
10. almost blue
11. Conception/Deception
12. Blame it on my youth

Fay Claassen : vo
Jan Wessels : tp
Karel Boehlee : p
hein van de Geyn : b, arr
John Engels : ds
Recorded on 2005 at Amsterdam

Chet_b チェット・ベイカーChet Baker(1929-1988)のトリビュート・アルバムとしてフェイ・クラーセンが歌い上げる2006年リリースの名盤。これはチェット・ベイカー生誕75年記念企画としてのもの。
 あのウェスト・コースト・ジャズのトランペット奏者チェット・ベイカーは人気が格段高かったが、ドラッグとの関係が濃厚で実生活は不安定。そして晩年オランダを愛していたが、1988年にアムステルダムのホテルの窓から謎の転落死した。オランダは彼によってのジャズ界の発展は大きく、現在も非常に充実している国で、非常に彼を愛しているのだ。
 このアルバムでのフェイ・クラーセンの歌は、そのややハスキーがかった声で、しっかりとそして情感たっぷりに、そしてものうい世界を描いてお見事。素晴らしい。ジャズの私好みのむしろ陰の部分をゆったりと、そして夜を描いたトラペットの響き、更にピアノの流れなど、どこをみても一流。
 又hein van de Geyn、John Engels などはチェット・ベイカーと一緒にプレイしていたので、このアルバムでもその演ずるところ彼への思い入れが響いてくる。そして更に嬉しいことに録音も非常に良好。
 私はフェイ・クラーセンといえば、まずこのアルバムが筆頭である。この世界なしではフェイ・クラーセンを語れないと思うくらいである。

(参考視聴)

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2015年12月20日 (日)

バーボラ・スウィンクスBarbora Swinx 「colors of love」

あれやこれやのごっちゃまぜジャズ・ヴォーカル版

    <Jazz>
       Barbora Swinx 「colors of love」
          Arta / Europe / F10212 / 2015

Colors_of_loveBarbora Swinx – vocal
Ondřej Kabrna – piano, organ
Adam Tvrdý – guitar
David Fárek – soprano, alto, tenor sax, flute
Petr Kroutil – tenor sax (4, 6, 14)
Jan Valta – violin
David Havelík – cello
Vít Švec – double bass
Zdeněk Wimpy Tichota – bassguitar
Michal Hejna – drums
Imran Musa Zangi – percussion

 チェコのジャズ・シンガー”バーボラ・スウィンクスBarbora Swinx”(前作「Close to You」はBarbora Mindrinuと言う名で紹介=本名はBarbora Swinx Řeháčková-Mindrinu と言うらしいので、どちらもありですね)の2ndアルバム。ジャズのスタンダードからシャンソン、ブラジル音楽(ボッサ)、バカラック、ポップスといやーなかなか幅広い選曲です。 (日本語では、”バルボラ・スウィンクス”と記しているものもある)

(参考)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/barbora-mindrin.html

B_s1<Song-List>
1. The Nearness of You (Hoagy Carmichael, Ned Washington)
2. Mi Tierra (Fabio “Estefano” Salgado) 
3. Fields of Gold (Sting) 
4. Blues in the Night (Harold Arlen, Johnny Mercer)
5. Everytime (Annette Stamatelatos, Prince Rogers Nelson, Britney Spears, Annette Denise Stamatelatos) 
6. Mas Que Nada (Jorge Ben) 
7. If You Go Away (Ne Me Quitte Pas) (Jacques Brel, Rod Mc Kuen) 
8. Don’t You Worry ‘Bout a Thing (Stevie Wonder) 
9. When I Dream at Night (Dan Shea, Robin Thicke) 
10. Ain’t No Sunshine (Bill Withers) 
11. Honeysuckle Rose (Fats Waller, Andy Razaf) 
12. The Windmills of Your Mind (Michel Legrand, Alan & Marilyn Bergman) 
13. Travma (Nikos Karvelas) 
14. Blues o tom, že život je chlap (Pavel Vitoch, Pavel Vrba) 

 M1はなかなかジャズのしっとりした味わいを持っていいムードです。バックの演奏もピアノ・トリオかと思われるが、その流れが良い。(ほんとは、このムードでずっと行って欲しかった)
 M2は、ここまで変わるかと思うほど、がらっと変わってラテン・ムード。陽気にサンバが軽快に流れる。バック演奏はサックスも加わりラテン・バンドそのものだ。
 StingのM3、これは多くに歌われているので、彼女の実力が比較されるところ。う~~ん、やっぱりEva Cassidyのアルバム「Live At Blue Alley」「Songbird」で聴けるものと比較すると、あの境地にはまだまだといっところか。
 M4はブルースですね、ちょっと力みすぎか?、とにもかくにも挑戦を評価。サックスも気合いが入っての演奏。
B_s_2 M8は、Stivie Wonderの曲、バックはピアノとパーカッション印象的な曲で、ラテン・ムードで歌い上げる。いやはや何でも熟すと言った彼女のレパートリーである。
 M9、M10は、ギターをバックに説得力ある歌い込み。こんなところは実力もなかなかなんだろうと思わせる。
 M12、Michel Legrandの”風のささやき”、映画「華麗なる賭け」の私の好きな曲です。これはバックにヴァイオリンの調べが流れ、彼女の唄も最高潮に歌い込み、それなりに良い出来だ。

 彼女の歌声はかなりヴォリュームのある迫力派、可憐というタイプではない。このあたりから好みは別れるところだろう。しかし既にかなりのキャリアは積んだチェコのジャズ・ディーバなんでしょうね。とにかく何でも歌うぞと言うあれやこれやとごっちゃまぜ版。
 彼女は日本ではこのアルバムで2枚お目見えしたことになるが、さて聴くものを如何にとらえるかといった未知数の段階だ。

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2015年12月 9日 (水)

女性ヴォーカルTHE COMMON BLUE : 「ELEVEN SONGS」 / 繊細美Andreas Mayerhofer trio

好感度抜群の女性ヴォーカルを立ててのカルテット・アルバム
~そして繊細美のアンドレアス・マイヤーホーファー・トリオ~

  <Fusion>
     THE COMMON BLUE 「ELEVEN SONGS」
        ATS Records / Europe / CD 0855 / 2015

Eleven_songs
Kiara Hollatko (vo)
Andreas Mayerhofer (key)
Robin Gadermaier (elb)
Wolfi Rainer (ds)


  オーストリアの若手女性ヴォーカリストとベテラン・ピアニストのアンドレアス・マイヤーホーファー率いるピアノトリオによって結成されたユニットの「The Common Blue」の作品。これは私の美女狩りを得意とする友人からの紹介アルバムで納得したもの。

Thecommonblue2_foto
 このアルバムのポイントは、私は今まで意識はして無かったアンドレアス・マイヤーホーファーAndreas Mayerhofer のキーボードなのだが、驚きは、全く知らなかった若き女性ヴォーカリストKiara Hollatko がなかなかの聴きどころでいやが上にも注目。非常にクリアでクセが無く、そして美声であり、変な力みも無く驚きのヴォーカル。

(Tracklist)
1.  When I Grow Up
2.  A Day in the Life
3.  I'll Be Seeing You
4.  Mercy Street
5.  Washboard Lisa
6.  Little Man with a Red Hat
7.  Ghosts
8.  Wayfaring Stranger
9.  Why'd You Only Call Me When You're High?
10.  Der Leiermann
11.  At Last

 収録曲はこんなとろで、聴き慣れたモノもあってのこと、彼女のマイルドな美声、そしてこのバック演奏の優しさが手伝って非常に聴きやすい好感のアルバムである。

 そこで、私としてはジャズ世界のアンドレアス・マイヤーホーファー・トリオには馴染みが無かったのでさっそくアプローチしてみた。そして結果はOKで、ここに誘導してくれたことに感謝しているのである。↓

           *          *          *          *          *

  <Jazz>
        Andreas Mayerhofer trio 「DEDICATIONS」
     ATS Records / Austria / CD-0782 / 2012

Dedications
      Recorded by Reinhard Brunner, Augast 8 and 9, 2012
      at Musikschule Ried im Innkreis, Austria


AmayerhofertrioAndreas Mayerhofer : piano 
Wayne Darling : bass
Gerald Endstrasser : drums

 (Tracklist)
1. G2
2. Estate
3. My Duchess
4. Prelude No. III From 5 Preludes Op. 16 / The Fireplace
5. Uh Oh, It's Groove Time!
6. Mauve
7. Trane's Mood
8. Bill's Place
9. Ich Ruf Zu Dir, Herr Jesu Christ. BWV 639

 以前出たコルトレーン曲集(アルバム『Cortrane』ATS / AUS / ATS3504/ 2008)が好評だったというオーストリアのピアニストであるアンドレアス・マイヤーホーファーAndreas Mayerhofer(1966〜)のトリオ。

  このアルバムはオーソドックスなピアノ・トリオ仕立てで、メンバーの自己のオリジナル曲を主体にして、スタンダード曲そしてバッハの曲をも登場させる。とにかく気品ありますね、演奏も繊細にして抑制の効いた端正な抒情的世界を披露しています。オーストリアで活躍する奏者ということで興味を持ったんですが、期待通りの正統派の耽美的欧州ピアノトリオ作品と言って間違いない。いやはやこれはとんだ獲物でした。
 こうしたピアノの耽美派には必ずエヴァンスの流れと比較と言うことなんだが、その価値十分のマイヤ-ホーファーは、哀愁メロディーを端正に演じ、抑制の利いた抒情的プレイはクラシック的ニュアンスをもって、ヨーロッパ的ジャズへの流れで聴かせる(M4など)。このピアニストは、結論的には結構硬派な渋さをもっていて品があり、さすがに自己の曲(M6、M7)は抒情的旋律をこの上なく奏で、バックの時としてみせるスリリングな演奏をもバトルするのでなく優しく包んでみせる。そんな安心して聴かせてくれるプレイヤーだと思う。
 従って、冒頭に上げた”THE COMMON BLUE” のエレクトリック・ピアノ・ベースによるユニットにての展開よりは、本来のピアノ・トリオ・スタイルがやっぱり良いですね。まああれは女性ヴォーカルを生かす一つの手法として行われたモノであろうと推測して、それはそれ評価しますが。

(視聴)

① THE COMMON BLUE 「ELEVEN SONGS」

② Andreas Mayerhofer trio

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2015年10月21日 (水)

新星バーブラ・リカBarbra Licaのニュー・アルバム「LOVE SONGS」

またまたカナダからの新星~日本でのお目見え第2弾

   <Jazz>
          BARBRA LICA 「LOVE SONGS」
       DO RIGHT! MUSIC / JPN / DR066CDDU / 2015

Love_songs_2
Barbra Lica(vocal)
James Bryan(guitar)
Lou Pomanti(piano,keyboards)
Marc Rogers(bass)
Larnell Lewis(drums)

Kevin Turcotte(trumpet on 8,9)
Scott Irvine(tuba on 9)
Reg Schwager(guitar on 8,9)
Scott Alexander(bass on 3)
Mark Kelso(drums on 3,8,9)

 またまたカナダからの女性ヴォーカルものの話題。2012年のアルバム『That's What I Do』が、日本では2013年に発売され好評であったとのことから(私は未聴)、今年このニュー・アルバムの登場によって私は初聴きとなったもの。
 彼女はカナダ・トロント生まれの若きジャズ・シンガー。Tracklistをみると、収録10曲中に彼女のオリジナル曲4曲が登場している。シンガーソング・ライターという技量の持ち主というところか。母親がプロ・シンガーで、しっかり教育されているらしい。

Tracklist)
1. So In Love (C. Porter)
2. Coffee Shop (B. Lica, J. Bryan)
3. That's What I Hate (B. Lica)
4. Waking Up (B. Lica)
5. Lovefool (P. Svensson, N. Persson)
6. How Insensitive (A.C. Jobim, N. Gimbel)
7. Did I Just Say That (B. Lica, J. Bryan)
8. I Get A Kick Out Of You (C. Porter)
9. Don't Get Around Much Anymore (D. Ellington, B. Russell)
10. Secret Heart (R. Sexsmith)

 当初からドリス・デイやエラ・フィッツジェラルド、ペギー・リーなどを歌い始めたというだけあって、若い割にはジャズ心も感じ取れるが、そうは言ってもポップフィーリングはかなり感じ取れる。バックの演奏陣も曲によって変動していて一貫しての世界というのでなく、やっぱり何かヒットを求めて彼女のパターンを色々と試みている。

Barbralica4 1曲目”So In Love ”は、リズムカルでなかなか面白いスタート。ドラムス、ベースも軽快な中に、ヴォリューム感はないが、如何にも若めの高めのしなやかな歌声による、意外に情感の込められていて、ちょっとキュートでな演唱が、粋に華々しく展開する。
 2,3,4曲目はオリジナル曲で、ジャズと言っても、かなりポップ感覚だが、アップ・テンポでない比較的しっとりと歌い込む方か。曲は思いの外簡素な仕上げ。
 こんな展開が続くアルバムだが、とにかくあどけない雰囲気のある発声で、ダイアナ・パントンもそうだがカナダってこういうのが人気があるのだろうか?。
 曲の演奏も音楽的なハイレベル・ハイセンスいう印象はなく、Jazzyに無難にこなしているといったところ。まだまだこれからの洗練されたジャズへの発展段階。
  6曲目”How Insensitive ”の歌い込みは、ギターの調べに乗って、そうは言ってもこの歳でなかなか説得力もある。これからの逸材であることは間違いなさそうだ。
 今は若い世界、こんなところで良いのだろうが、ジャズの道となると、歌唱力、曲の洗練さ、などなどもっともっと問われるところが出てくるだろう。更に深めて行くところが出来るかどうかというところであろう。

(参考視聴)

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2015年8月30日 (日)

サラ・ガザレク Sara Gazarek+ジョシュ・ネルソン : 「DUO」

美声ガザレクのヴォーカルとピアニストとのデュオ作品

Sg3_3 女性ジャズ・ヴォーカルものに求めるモノは何なんだろうと、ふと思うことがある。それは声が美しく歌うところムードがあって、ついでに美貌であればそれはそれで良いように思うのだが・・・・・。
 不思議に次のアルバムを心待ちにする訳でもないし、かといってそこにあれば取り敢えずは聴いてみたいとは思う。そんな感覚のシンガーの代表格にサラ・ガザレクがいる。
  今年そんな彼女のニュー・アルバムが登場した。果たして私にとってどんな感覚になるのだろうか?。

    <Jazz>
        SARA GAZAREK + JOSH NELSON 「DUO」
           CORE PORT / JPN / RPOZ-10011 / 2015


Duo
          SARA GAZAREK (VOCAL,編曲)
          JOSH NELSON (PIANO,編曲)

          2015年1月 Capitol Studio (Hollywood)録音

71lajfmlbll__sl1213_ 少々前に彼女のヴォーカルとTRIOSENCEとの『where time stands still』というアルバムがあったが(→)、ピアノ・トリオ+αの演奏と彼女のヴォーカルの融合は、都会派というので無く、どこか田園地帯の牧歌的ムードにピッタリの世界を構築していた。

 さて、それはそれとして今回のニュー・アルバムはデビュー以来10年以上も、サラ・ガザレクの全オリジナル・アルバムやライヴで名コンビぶりを発揮しているピアニスト、ジョシュ・ネルソンとのデュエット・アルバム。曲は彼らのオリジナルとカヴァー曲との構成だが、過去に演奏してきた曲が多い。

(Tracklist)

1.All Again (Josh Nelson)         
2.Blackbird / Bye Bye Blackbird (John Lennon - Paul McCartney) (Mort Dixon / Ray Henderson)
3.O Pato  (Neuza Teixeira - Jayme Silva)
4.(On The) Sunny Side of the Street (Dorothy Fields / Jimmy McHugh)
5. I Can't Make You Love Me  (Michael Reid - James Shamblin)
6.Petit Papillon  (Josh Nelson & Sara Gazarek)
7.Mood Indigo (Duke Ellington - Irving Mills – Albany Bigard)
8.No Moon At All (David Mann – Redd Evans)
9. I Don't Love You Anymore (Josh Nelson / Sara Gazarek / Cliff Goldmacher)
10.Father Father (Laura Mvula)
11.The River / Riverman (Poem; Sara Teasdale; Music ; Josh Nelson) (Nick Drake)
12.Behind Me (Josh Nelson / Sara Gazarek)

Saragazarek4_3
 サラ・ガザレクは歌唱派といっていいのだろう、このアルバムもデュオと言っても彼女の唄を聴くといったそのもの。そしてカヴァー曲も、彼女なりきの世界へと歌い込んでゆくところはかなりのもの。
 2曲目の”Blackbird”と”Bye Bye Blackbird”の併わせ技にみるように、彼女なりきの解釈でのカヴァーを試みている。12曲目”Behind Me”はボーナス曲なので、このアルバムの締めは11曲目の”The River / Riverman ”であって、ここでも二つの曲の併せによって、歌いたい内容を知らしめる方法を取っている。これだけ歌には歌唱力をもってそのメッセージに重点をおいていることが解る。なんとサンバも登場するが、やっぱりサンバではなくガサレク節なのである。
 とにかくこのアルバムもスタートのJosh Nelsonの曲”All Again ”を聴くと同時に、やっぱり彼女のジャズはフォークに近いとを実感する。聴く者の心に響く歌をナチュラルに歌い上げたいというところが彼女の世界なのだろう。ジャズっぽいと言えば8曲目”No Moon At All ”あたりに聴くことが出来る。

 ガザレクは透明感のある歌声と心に響く歌唱力で評判だが、紹介記事を見ると、1982年、米シアトルで生まれている。高校でジャズを学び、在学中の2000年、デューク・エリントン・ジャズ・フェスティヴァルで第1回エラ・フィッツジェラルド賞を受賞したという。南カリフォルニア大学のソーントン音楽学校に進み、ソーントン・ジャズ・オーケストラなどと共演。プロデューサーのジョン・クレイトンに認められ、2005年にコンコード・ジャズ・フェスティヴァルに出演。1stアルバム『ユアーズYours』で日本デビュー。

 ジョシュ・ネルソンJosh Nelsonは、サラ・ガザレクのデビュー以来10年以上も、彼女の全オリジナル・アルバムやライヴでピアノを演奏して名コンビと言われている。種々のカヴァー曲の編曲もタッチして、彼女のナチュナルと言われる音楽パターンを形成してきた最重要人物とされている。

 さて結論だが、このアルバムの私的偏見感想であるが、やっぱり以前感じたとおりのフォーク寄りの世界であって、美しく歌い上げるところは良いのだが、逆に面白さがどうも感じないのだ。それは私のジャズに期待する好みの世界とはちょっと違っている部分というところであろう。そして逆にそのところは、好きな人にとってはたまらないところと言えるのかも知れない。

(視聴)

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2015年7月 3日 (金)

トルド・グスタフセンTord Gustavsenから到達したアルバム :スールヴァイグ・シュレッタイェルSolveig Slettahjell「ARVEN」

トルド・グスタフセンからノルウェーの歌姫スールヴァイグの世界へ

 我が愛するノルウェーのピアニスト:トルド・グスタフセンTord Gustavsenのニュー・アルバムはまだ半年前のリリースされたところで、次作はまだまだかなり先の話になりそうだから、何か面白いものはないかと漁っていて到達したアルバム。

<Jazz, Folk, World, & Country>

  Solveig Slettahjell「ARVEN」
   
Universal Music (SoSlo Productions) / Norway
   /  602537545735 / 2013

Arven_2 これはスールヴァイグ・シュレッタイェルのヴォーカル・アルバム。彼女はノルウェーの知る人ぞ知る歌姫だが、その世界はジャズにして異色、聴きようによってはトラッドの雰囲気を持ったフォークっぽいという味付けのジャズだ。彼女は首都オスロにあるノルウェー国立音楽学院を卒業している。2001年のデビューで当時は30歳ということであったので、この作品は40歳を過ぎてのものとなる。

 私の手元には、彼女のアルバムはこの『ARVEN』の他には、後で取り上げるが、2004年のリリ-スの『Silver』(2004)という何となく気になるアルバムがあって現在に至っている。ノールウェーの土地から生まれたスケールを感ずる女性ヴォーカル・ジャズ・アルバムである。
 又彼女について初めて知ったのは、寺島靖国の『Jazz Bar 2003』に登場してのことであった。
(参照)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/rolleiflex-9124.html

Solvig_tord ところが、トルド・グスタセンが彼女のヴォーカル・アルバムのバックで、ピアノのでのデュオに近いところを演じているこのアルバムがあることを知って、さっそく聴いてみたと言った次第。

 さてその内容だが、これはジャズというよりはクラシック、トラッドと言った方が良いのか、実に深遠にして心安まる世界。グスタフセンのピアノも彼らしい哲学的な深遠な雰囲気を演奏してくれるが、なんと言ってもヴォーカルを引き立てるための演奏に徹していて、彼のピアノの世界とスールヴァイグのヴォーカルとの協調として聴く方が良い。
 トラックリストは13曲、うちトルド・グスタフセンは8曲に登場。特にここでは曲名は紹介を省略すが、それはとにかくノルウェー語と思われ全く解らない為。歌詞も理解不能。そしてこのアルバムは私の想像するところではトラッドの世界と宗教曲の世界なんだろうと思うのだが・・・・。
     (視聴)

                    
                     *     *    *    *    *

 さてそこでせっかくスールヴァイグ・シュレッタイェルの話になったので、ここで私の持つ彼女のジャズ・ヴォーカル・アルバムで、こちらは夜にじっくりと聴けば聴くほど味の出てくる一枚を紹介する。(↓)

<Jazz, Folk>

    Solveig Slettahjell「SILVER」
     BOMBA RECORDS / BOM 1531 / 2004

Silver こちらは『ARVEN』のような特異なアルバムではない。しかし彼女の個性がたっぷりのヴォーカル・アルバムといったところ。
 オープニングの曲”Take it with me”はTom Waitsの曲だが、まさしく原曲から一変して説得力がある彼女のヴォーカルで迫ってくる。ゆったりと、そして低音がややハスキーでヴォリュームのある歌声、そして何と言ってもじっくりと聴かせるスタイルはピカイチ。
  Solveig Slettahjell : Vocal
    Mats Eilertsen : bass
    Sjur Miljeteig : trumpet
    Morten Qvenild : piano
    Per Oddvar Johansen : drums


 このアルバムは主としてカヴァー曲(下のTracklist参照:クリック拡大)で占められているが、特異な彼女のヴォーカルをピアノ・トリオ+トランペットのカルテットで支えるわけだが、なかなか編曲に味のあるジャズを聴かせてくれて楽しめる。このユニットを”Slow Motion Quintet”と名付けているだけあって、ジャズの一形を成すべく試みているともとれる。
Silverlist2
 さて、このアルバムの収録曲は上の通りであるが、彼女のオリジナル曲”D.Parker's Wisdom”も登場する。この曲はアルバム全体に流れる静かにしてどちらかというと暗い中に温もりを感じさせるヴォーカルによって作られるムードから一変して、スリリングなコンテンポラリー・ジャズを展開し、このアルバムの一つのアクセントとなっている。

 しかしこうしたアルバムを聴くと、アメリカン・ジャズの明るさとは全く違った北欧の凍てつく大地から人間らしい世界を築いている民族の暖かさを演ずるジャズを知らしめられる。不思議にHenry Manciniの”Moon river”まで別物になってしまうのだ。北欧ジャズを愛するものにとっては一聴の価値がある。

(視聴)

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