セリア

2025年4月27日 (日)

セリア・ネルゴール Silje Nergaard 「Tomorrow We'll Figure Out the Rest」

両親への感謝の気持ちを込めた感動的豪華さのあるアルバム

<Jazz>

Silje Nergaard 「Tomorrow We'll Figure Out the Rest」
(CD)Masterworks / Import / 19802890702 / 2025

Cs107879801abig

Produced by SILJE NERGAARD and MIKE HARTUNG

SILJE NERGAARD (vocals) 
HELGE LIEN (piano)
JARLE VESPESTAD (drums)
FINN GUTTORMSEN (bass)
GEORGE (JOJJE) WADENIUS (guitars)
HÅKON KORNSTAD (saxophone)
MARTIN WINSTAD (percussion)
BEATE S. LECH (guest vocals)
KARLA NERGAARD (backing vocals)
MIKE HARTUNG (backing vocals)

STAVANGER SYMPHONY ORCHESTRA VINCE MENDOZA conductor & arranger

Recorded and mixed by MIKE HARTUNG at PROPELLER MUSIC DIVISION Oslo 2022-2024
Mastered by MORGAN NICOLAYSEN at PROPELLER MASTERING Oslo nov 2024
STAVANGER SYMPHONY ORCHESTRA recorded at STAVANGER KONSERTHUS May 2024
Conducted by VINCE MENDOZA

800pxsilje_nergaardw  ノルウェーを代表するジャズ&ポップス・シンガーの通称セリア=Silje Nergaar(セリア・ネルゴール, →)のニュー・アルバム。彼女に関してはここでも何度か取り上げた。特に私の注目はトルド・グスタフセンTord Gustavsenのピアノとの共演の『Nightwatch』であったが、今回は私の一つの注目点は、やはりピアノが私の好きなヘルゲ・リエンHelge Lien(↓右)ということだ。いやはや彼女は名ジャズ・ピアニストをしっかり確保し、しかも、2010年にリリースされ、グラミー賞にノミネートされたアルバム『A Thousand True Stories』でもコラボレーションした、ヴィンス・メンドーザVINCE MENDOZA (↓中央)が、今作ではスタヴァンゲル交響楽団を指揮し、曲に感動的なオーケストラアレンジ効果を発揮している。

  そして、このアルバム・ジャケが古めかしいですね。なんと戦後のジャズ・アルバムの再発盤かと思わせるジャケ。それは実は彼女の両親の若い時の二人の写真を見つけてジャケにしたということのようだ(その写真↓左)。彼女も1966年生まれであるから今年は59歳、来年は還暦を迎えるという歳になって、どうも両親への深い思いが込められたアルバムという事のようで、タイトルも『Tomorrow We'll Figure Out the Rest』と、訳すと「明日多分私たちは残りを理解するでしょう」「明日、続きを解明する」ということだろうが、両親への深い思いが込められており、かっての自分の幼少期からの遠い日の記憶、家族やさまざまな人生の物語等にインスパイアされた曲を収録したということだ。とにかく音楽というものを通じて人々の心を動かす彼女の資質と才能が溢れたアルバムと仕上げられたものである。

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 彼女は、1985年にノルウェー代表としてユーロビジョン・ソング・コンテストに出場してのスタートで、アルバム・デビューは1990年で、パット・メセニーのプロデュースで1990年にリリースされたアルバム『Tell me where you're going やさしい光につつまれて』が、日本はじめ世界各国で大ヒットし、以来、北欧ジャズ・ポップス・シーンを代表するシンガーとして活躍している。当時はポップよりのものであったが、2000年発表の『Port of Call』、2003年『Nightwatch』よりジャズ・ピアニストのトルド・グスタフセンを起用したことより、ジャズよりの作品になって近年はもっぱらジャズに傾倒している経過で、キャリア40年となる。又ヘルゲ・リエン(↑右)もそうであるようにノルウエーには結構親日家が多く、彼女もその一人で、1991年発表の『Quiet Place〜心のコラージュ』には「Kyoto Wind」という曲を、さらに2001年発表の『At First Light 初めてのときめき』には「Japanese Blue」という曲をそれぞれ収録している。

(Tracklist)

1. You Are the Very Moon (Vince Mendoza;Stavanger Symphony Orchestra)
2. Lover Man (Håkon Kornstad)
3 Mamma og pappa synger00:36
4. A Perfect Night to Fall in Love (Vince Mendoza;Stavanger Symphony Orchestra)
5. Vekket i tide (Vince Mendoza;Stavanger Symphony Orchestra)
6. Before You Happened to Me
7 Silje synger00:58
8. Dance me Love (Vince Mendoza;Stavanger Symphony Orchestra)
9. My Man My Man
10. Brooklyn Rain (Håkon Kornstad)
11. Here There and Everywhere
12 Silje og pappa snakker00:48
13. Tomorrow We'll Figure Out the Rest (Vince Mendoza;Stavanger Symphony Orchestra)

 両親への深い思いが込められているというだけあって、とにかく心温まるような素直にして愛情にあふれた優しいヴォーカルと曲いうアルバムに仕上がっている。遠い日の記憶、家族との交わり、そして経てきたさまざまな人生の物語に思いで込めて演じられている楽曲を収録されていて、Helge Lien(ピアノ)、Jarle Vespestad(ドラムス)、Finn Guttormsen(ベース)、George Wadenius(ギター)、Håkon Kornstad(サックス)といったヨーロッパを代表するジャズ・ミュージシャンが彼女をサポートし、ヴィンス・メンドーザが、今作では5曲においてスタヴァンゲル交響楽団を指揮し、作品にジャズというよりはジャンルを超えた広い世界を描くムードを真摯に演じて盛り上げている。ジャズ・アンサンブルとオーケストラの競演で支えているわけだ(↓は両親とビニール盤アルバムの完成を喜ぶセリア)

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 彼女のヴォーカルは、まず若い印象で驚くが、一層癖のない表現の世界にあって、ジャズといつた世界とはむしろ別物に感ずる。M4." A Perfect Night to Fall in Love "(恋に落ちるには最適な夜)は、オーケストラとバッキング・ヴォーカルが入ってむしろ荘厳に近い雰囲気を盛り上げるところが印象深い。
   又M3.7.12は、彼女や両親との交わりの思い出の録音された会話や歌を挿入して一層のムード盛り上げを図っているのも、如何にも個人的な世界ではあるがアルバムの充実度を図っている。
 M8." Dance me Love"はゆつたりとした曲で、ストリングスの美しさ、ピアノの美しさと静かに語るドラムスの響きと、曲の演奏も聴きどころで、彼女の歌い上げるヴォーカルも見事である。

 いずれにしても聴いていて印象は極めて良い。そんな両親への感謝の世界を知らしめたと言う彼女のアルバム造りも一つの区切りとしては、意義があったと思うし、聴く方もわが身に置き換えて感謝の気持ちを持てたということであれば有意義である。

(評価)
□ 曲・演奏・歌  88/100
□ 録音      87/100

(試聴)

 

 

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2012年8月15日 (水)

セリアSiljeの最新アルバム : 「UNCLOUDED」

ツイン・ギターをバックに落ち着いた優しき世界

 ノルウェーのトルド・グスタフセンの流れから、何となく行き着いたセリア(Silje Nergaard = シリエ・ネルゴー(ル))であるが、最新アルバムもあるので聴いてみた。

SILJE NERGAARD 「UNCLOUDED」
Sony Music  88691928342  ,  2012

Unclouded

 ノルウェー出身のジャズ系シンガー・ソングライターのセリアは、1989年ロンドンから”tell me where you're going”でシングル・デビュー。日本では翌年1990年に東芝EMIよりこの曲で同様にシングル・デビューして好評だったとか。当時から私は気になるところになく、全くその筋のことは知らなかったが、その後の彼女はインター・ナショナルな方向に向かったが、泣かず飛ばずであったらしい。そしてノルウェーに落ち着いての1995年にリリースしたノルウェー版のアルバム「Brevet」が好評で息を吹き返し、2000年のアルバム「Port of Call」あたりからジャズ路線に落ち着いたようだ。

 過去に12枚のアルバムをリリースしているが、これが最新アルバムで、このアルバムも、かなり彼女の活動履歴から国際的な活動があっての結果、彼女自身の作品を英語歌詞で収められている。

01 – All I Had*
02 – Norwegian Boatsong*
03 – Gods Mistakes*
04 – The Moon’s A Harsh Mistress
05 – Ordinary Sadness
06 – When The Morning Comes (Song For Karla)*
07 – Det Var For Sent*
08 – When Our Tune Is Played*
09 – He Must Have Been Telling A Lie*
10 – I Will Write You Every Day*
11 – Human*
                    *印 Music: Silje Nergaard
Siljenergaard3 Silje Nergaard : vocals
  Hargrimm Bratberg : Guitars
  Hävar Brendikson : Guitars


 メンバーはこのように、バックはツインのアコーステイック・ギターが演じている。曲によっては、サックス、トランペットも聴かれる。
 彼女はデビュー当初はポップな曲を歌っていたようだが、近年はジャズ・ヴォーカルの地位を築いている。そしてこのアルバムもジャズとは言え、ちょっと違いを感ずる。アメリカン・ジャズっぽいところも”gods mistakes”には見え隠れするが、主力は別世界。
 やはりどこか北欧っぽい”静”と”郷愁”と”優しさ”が流れてくる。ちょっと簡単にジャズと言う世界ではない。私には解らないが、彼女の曲というところからノルウェーのトラッドな世界に通ずるものがあるのであろうと推測しているのである。このバックの二人のギタリストはヨーロッパ・ツアーなど同行していて、新しい音を作り上げたともホーム・ページに記している。
 もともと彼女のヴォーカルは、優しさに充ち満ちているし、安堵の世界に導いてくれる。このあたりにファンはやっぱり魅せられているのだろうと想像する。
 デビューから既に20年以上経過しているわけで、力みのない唄い回しからも、円熟期の彼女のアルバムという雰囲気はやはり感じられるところであった。
(参考)セリアSilje Nergaardの過去のアルバム
  • Tell Me Where You're Going (1990)
  • Silje (1991)
  • Cow on the Highway (1995)
  • Brevet (1995)
  • Hjemmefra - From Home (1996)
  • Port of Call (2000)
  • At First Light (2001)
  • Nightwatch (2003)
  • Darkness Out of Blue (2007)
  • A Thousand True Stories (2009)
  • If I Could Wrap Up a Kiss (2010)
  • Unclouded (2012)
  •  

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    2012年8月13日 (月)

    トルド・グスタフセンのピアノで聴く女性ヴォーカル・アルバム(2):セリア「nightwatch」

    ノルウェーのセリア(シリエ・ネガード)Silje Nergaardは、日本での北欧ブームの先駆け

    SILJE NERGAARD 「nightwatch」 
    Universal Music  0602498656488 ,  2003

    Nightwatch_3

     ノルウェーのトルド・グスタフセンのピアノ・ブレイに惚れ込んでいる私ですが、彼はそれなりに唄もののバックもこなしているようだ。
     このアルバムは90年前半から日本でも知る人ぞ知るノルウェーの女性ジャズ・シンガー・セリアSilje Nergaard の2003年のアルバム。彼女も歴史的には1989年にあのギタリストのパット・メセニーの力を得てロンドンでデビューして好評を得ている。曲調は、ジャズといってもポップ色もかなり濃く、そして声の質はやや細身であって、パワーのあるタイプでなく、なんとなくあどけない感じのするところもある。そんなところが持ち味で日本では結構1990年代にお馴染みにもなっていた。しかし私自身は当時はそれほど興味を持っていたわけではなかった。
     このように経歴をみると既にベテランのシンガー・ソングライターといっていい。その他、芸術に広く才能を発揮しているようで、彫刻、絵画などの活動もあるという。
     

    Siljenergaard1  さて、このアルバムのメンバーは下記の通り・・・・

     Silje Nergaard : vocals
      Tord Gustavsen : piano + fender rhodes
      Harald johnsen : acoustic bass
      jarie vespestad : drums

      
        ・・・このメンバーに加えて曲によってストリングスが加わったり、ギター、トランペット、フリューゲルホーン、サックスがバックを支えている。
     そうは言っても、私にとってはトルド・グスタフセンのピアノを聴きながらというのが嬉しいところ。そんなところから手にしたアルバムでもある。

    Nightwatchlist  収録全12曲中11曲が彼女のオリジナル曲。シンガー・ソングライターの面目躍如と言ったところ。
     ”this is not america”のみパット・メセニーとデヴィット・ボウイによる曲だが、何故この1曲のみが加わったのか?と言うところは解らないが、このアルバムの中では一つのポイントとなる出来の良い曲だ。
     Jazzyな曲で、トルド・グスタフセンのピアノが中盤や、後半にソロに近い演奏が聴かれる曲”how am i supposed to see the stars”、”in a sentence”などがなかなか良いし、”unbreakable  heart”もピアノの味と彼女のヴォーカルの聴かせどころの曲だ。その他”dance me love”などのピアノとトランペットをバックにしてのバラード調の曲もいい線をいっている。
     しかし全体のアルバムの印象としては、英語で国際的なところを狙っているとは思うが、ジャズ特有の演奏やヴォーカルの面に於いて、妖しげでスリリングなところがあまりないというところで、私好みからは若干物足りなさも感ずるアルバムでもあった。

    (参考)トルド・グスタフセンhttp://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/tord-gustavsen-.html

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