メッテ・ジュール

2020年1月24日 (金)

メッテ・ジュール Mette Juul 「CHANGE」

究極のヴォーカル・アルバムの線をゆく

<Jazz>

Mette Juul 「CHANGE」
UNIVERSAL / Denmark / 7796107 / 2019

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Mette Juul : vocal & guitar
Ulf Wakenius : guitar
Lars Danielsson : acoustic bass, cello, cymbals
Heine Hansen : piano, rhodes, celeste, harmonica
Gilad Hekselman : guitar
Per Mollehoj : guita

Image_20200122214101  北欧デンマークの女性ギタリスト兼ヴォーカリストのメッテ・ジュールの最新盤。彼女に関しては、かってここでそのヴォーカルに高評価を付けた私だが(参照 「Comming In From The Dark」(2010) →)、あれから9年経っているんですね(その間アルバム「Moon on My Shoulder」(2013)があるが)。ここでもその流れは十分に発揮している。
 アコースティックな静かな落ち着いたギターを中心としたバックに、フォーキィーにブルージーにシンプルに際だった装飾やテクニックをこらすことなく歌い上げる。

(Tracklist)

1.Beautiful Love
2.At Home (There Is a Song) *
3.Get Out of town
4.It Might Be Time To Say Goodbye *
5.Double Rainbow
6.Just Friends
7.I`m Moving On
8.Dindi
9.Young Song *
10.Without a Song
11.Northern Woods
12.The Peacocks ( A Timeless Place )
13.Evening Song *

(*印 メッテ・ジュールのオリジナル)

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  彼女自身のギター以外にも、ウルフ・ワケニウスそしてギラッド・ヘルスマンのギターがいいですね。又ラーシュ・ダニエルソンのベースやチェロなどが入る。これらも極めてシンプルに、アコーステイックで、彼女の歌声を支える。
 その彼女の歌は、どちらかというとフォークに近い牧歌的であるが、時にブルージーでとにかく冒頭M1.".Beautiful Love"からしっとりと嫌みの無い充実感たっぷりの素直なヴォーカルである。これぞ彼女の神髄と言って良いだろう。とにかくシンプルな演奏で、彼女のヴォーカルが眼前で歌っているがごとく録音されている。
 13曲収録されているが。メッテ自身の曲も4曲ありM4."It Might Be Time To Say Goodbye"あたりはしっとり歌い聴かせる曲でなかなかいい。最後のM13."Evening Song "も同様でアコースティック・ギターの弾き語りであろうか、訴える力を持っていていつの間にか彼女の世界に引き込まれる。
 M3."Get Out of town"は、なんとコール・ポーターの書いたミュージカルの曲で、このアルバムの中でも異色で結構リズムカルに迫ってくる。
 その他、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲もM5."Double Rainbow "、M8."Dindi "と登場する。このように意外に幅広いところを網羅しているが、いずれもメッテ流の世界になっていて、このあたりは彼女の実力を評価したい。

 なかなか彼女の声の質も良く、含蓄のあるヴォーカルで、アコースティックな演奏がバックで支え、上出来のアルバムといっておく。

(評価)
□ 曲・歌  ★★★★★☆   90/100  
□ 録音   ★★★★☆   85/100

(視聴)

 

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2019年9月18日 (水)

なんとなく好きな曲 (2)  「 ESTATE (夏) 」・・夏の恨み節

どこか哀感のある美旋律が・・・・・

Thfvyj925bw  イタリアのブルーノ・マルティーノの曲「ESTATE」を取り上げたい。

 この曲は現在ジャズ界では、多くの演奏家やヴォーカリストによって歌われ演奏されている曲だ。イタリアのピアニストであり作曲家・歌手であったブルーノ・マルティーノBruno Martino(1925-2000)(右)が作曲した曲であり、彼自身が歌って1950年代にヒットしたもの。
 しかし、現在は女性ヴォーカリストに好まれて歌われているし、一方歌なしのピアノ・トリオとして演奏されている場合も多い。そんなところから、私の所持しているアルバムを紐解いてみると、取り敢えずは下のように11の演奏家、歌手のものが出てきた。
 最もポピュラーなのはピアニスト・ヴォーカリストのEliane Elias(右下)ですかね。演奏としては美しいピアノを聴かせてくれるMichele Di ToroとかLynne Arriale、Steve Rudolphなどが気になりますね。そんなわけでこの11ミュージシャンの演ずるものを取り出して、聴いて楽しんでいるのである。

 

<ESTATE を演ずる11ミュージシャン>

Elianeeliasw 1. Akira Matsuo Trio
2. Clara Vuust
3. Andreas Mayerhofer Trio
4. Mette Juul
5. Michele Di Toro
6. Sara Lancman
7. Lynne Arriale Trio
8. Francesca Tandoi Trio
9.Steve Rudolph Trio
10. Eliane Elias
11. The Kirk Lightsey Trio

 こんな演奏・歌などが出てきたので取り敢えず聴きやすいようにCD一枚にまとめてみた。
 もともと歌詞は下の通りで、ブログで日本語訳も載せているものがあったのでここに紹介する。

[ ESTATE  イタリア語歌詞 ]
Estate sei calda come i baci che ho perduto,
sei piena di un amore che è passato
che il cuore mio vorrebbe cancellar.
estate il sole che ogni giorno ci scaldava
che splendidi tramonti dipingeva adesso brucia solo con furor
Verrà un altro inverno cadranno mille di petali di rose
la neve coprirà tutte le cose e forse un po di pace tornerà.
Odio l'estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore,
l'estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolore.

Tornerà un altro inverno cadranno mille petali di rose la neve coprirà tutte le cose e forse un pò di pace tornerà.
odio estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore
estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolor.
odio estate.
odio l'estate.

Clara_vuust1wMettejuul1wLynne72145ew_20190915212101Francescatandoi1w

(Clara Vuust,  Mette Juul,  Lynne Arriale,  Francesca Tandoi)

[ Estate (夏 ) 日本語訳 ]

山本のりこ訳 (http://noriko-yamamoto.cocolog-nifty.com/memo/2011/07/estate-0e4b.html )
Cdw
それは失ったキスのように熱く
心から消してしまいたいと私が願う
ある過ぎ去った愛に満ちている

私たちを毎日温めた太陽
絵のように美しい夕暮れ
いまは怒り狂うように照りつける
また冬になれば
幾千の薔薇の花びらが落ち
雪がすべてをおおうだろう
そうすれば しばらくの平和が戻ってくる

それぞれの花に香りを与えて
夏は二人の愛をつくった
私を苦しみで殺すほどに
夏を憎む

 これはがマルティーノが「夏の恨み節」を歌ったようだが、女心なのか自分の経験の男の歌なのかそれは良く解らないが、現在は殆どが女性に歌われていて、私としては女心ではないかと。推測している
 ヴォーカルでは、Clara Vuustが素直な歌、Mette Juulはしっとりと、Sara Lancman、Francesca Tandoiは恨み節、Eliane Eliasは大人の回顧といった感じですね。
 演奏ではMichele Di Toroは静かに回顧する、Lyne Arrale Trioは思い出をかみしめて、Steve Rudolph Trioは思い出を軽く美しく、The Kirk Lightsey Trioは人生の新たな出発点として・・・と、いった異なったムードの演奏だ。

 ヴォーカルもそれぞれ違うし、演奏も全く異なる世界に・・と、十分聴き応えがあった。これぞミュージシャンってとこですね。

 

(試聴)

①   Clara Vuust

②  Eliane Elias

 

③ Lynne Arriale Trio

 

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2011年8月 8日 (月)

北欧からの女性ジャズ・ヴォーカル:メッテ・ジュール Mette Juul デビュー

説得力ある実力派の歌唱が魅力

Cuminginfrom 「METTE JUUL / COMING IN FROM THE DARK」 Cowbel Music,  Yamaha YMCJ-10005,  2010

 このデンマーク発のアルバムをどうして聴くようになったか?、おかしなことに記憶がない。ジャケ買いでもないし、多分どこかの雑誌で取り上げていたのかも・・・。いずれにしても何回か聴いてきた経過で、ここで取り上げることにする。

 このアルバムの特徴は、バックのアレックス・リール・トリオが知られていることだ。そしてこの女性ヴォーカリストのメッテ・ジュールは、アコースティック・ギターを弾きながらジャジーな歌を聴かせ自らのオリジナル曲を披露する。つまりシング・ソングライターである。多分これが彼女の1stアルバムだと思う。

 このアルバムは、彼女のオリジナル5曲とジャズ・ポピュラー曲のカヴァー7曲の構成だ。プロデュースも、メッテ・ジュール&アレックス・リールとなっている。いずれにしても彼女のヴォーカルを支えるのが、アレックス・トリオ(Alex riel: drums, Heine hansen: piano, Jesper lundgaad: bass)で、ゲストにtrumpet(Palle mikkelbrog), Guitar(Poul halberg) が入る。

Mette (list)
   1. the way you close the door*
   2. coming in from the dark*
   3. old devil moon
   4. comes love
   5. embraceable you
   6. valsen er min*
   7. what is this thing called love
   8. estate
   9. in the wee small hours of the morning
  10. little devile blue*
  11. how many hours must i travel alone*
  12. i wish you love
     (*印 メッテのオリジナル)

 メッテ・ジュールはデンマークで生まれ、2007年には国際ジャズ・アーティスト・コンペティションで優勝しているという実力派。彼女はジョニ・ミッチェルに影響を受けていると言うが、上の彼女自身の曲を聴くと、所謂そのお国柄のイメージが湧いてくるタイプで、フォークというのでなくトラッドぽいところがあるし、そのジャジィーな展開が面白い。なんと言ってもしっかりと歌うところが特徴だ。近頃はやりの呟き囁きフェイクの多用とは違う。
 デンマークのローカルな曲を知っているともう少し理解度が増すのかも知れない。いずれにしても6曲目の”Valsen er min” は、彼女のオリジナル曲であると同時に、その他の曲は英語で唄っているが、これはデンマーク語で披露しているところが骨である。
 スタートのオリジナル曲は、ボサノヴァ調でオープニングを飾りジャズ心を示しながら、2曲目にタイトル曲”coming in from the dark”を登場させトランペットと共に歌い上げるが、やはり聴き慣れたメロディーと違った作風に彼女の世界をアッピールされる。5曲目のガーシュインの曲”embraceable you”は、聴くものの心にじっくりと響いて私好み。”estate”はジャズ界を代表する曲だけあってそのアプローチは歪みのない歌唱で説得力十分。
 その他、”in the wee small hours of the morning”、”i wish you love”など聴き応えは力のある歌唱力で堪能できる。

 なんか久々に唄を聴いたという気持ちになるアルバムだ。彼女のオリジナル曲がうまく曲配列の中で印象付けられる。それはそれだけ独特のものであるからだ。トリオの演奏もさすが評価どおりの展開で、このアルバムへの貢献も大きい。とにかく実力派のデビュー・アルバムであった。さてさて、これからの世界評価がどう展開するか楽しみである。

 

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