メッテ・ジュール(メテ・ユール) Mette Juul 「Celeste」
テンダーな心地よい癒されるボーカルが・・・
<Jazz>
Mette Juul feat. Lars Danielsson & Mike Moreno 「Celeste」
Prophone / Import / PCD325 / 2023
Mette Juul メテ・ユール (vocal, guitar)
Mike Moreno マイク・モレーノ (guitar)
Lars Danielsson ラーシュ・ダニエルソン (cello, double bass, celeste, kalimba, melodica, cymbals)
米ニューヨークのBass Hit Recording録音
2023年スウェーデン作品
メッテ・ジュールと呼んでたが、最近、メテ・ユールと書かれてますね。彼女はデンマークのホアンシルの1975年生まれの北欧のギタリスト兼ヴォーカリストでこれは最新盤。このProphone Recordsのリリースする『Celeste』は、彼女のソロ・アルバム第6作。スウェーデンのベーシストのラーシュ・ダニエルソン Lars Danielsson(前作も)とアメリカのギタリスト、マイク・モレノ Mike Morenoの共演で、スタンダード曲中心に録音されたヴォーカル・アルバムだ。
彼女は日本でも既に多くのファンを獲得しているが、若いころからシンガー・ソングライターとして活動し、2007年にエストニアのタリンで行なわれた国際ジャズ・アーティスト・コンペティションで第1位に選ばれた。2010年、ここでも取上げたアレックス・リール・トリオとのデビュー・アルバムの『Coming from the Dark』(YMCJ-10005)をリリースし好評で、既に13年のキャリアがある。
彼女は今回のアルバムに関して次のように語っていることが紹介されている
「私は幼い頃にジャズヴォーカルの世界に出会いました。スタンダードのメロディーと歌詞は私に大きな印象を与え、今でも私に語りかけます。マイク・モレノとラース・ダニエルソンと一緒にツアーをして、ジャズスタンダードの曲を一緒に演奏したり、歌ったりすることは、私の長年の大きな願いでした。そしてアルバムには、ジャズのスタンダードだけでなくグラウコ・ヴィエニエやノーマ・ウィンストンの"Distance"などのオリジナルも入れることが出来ました」
彼女の過去のアルバムも非常にしっとりと描く世界が安らぎに導くところがあり、これは秋の夜長を彩るにふさわしい女性ヴォーカル盤だ。
今回の録音は、米ニューヨークへ出向き、マイク・モレーノ(g)、ラーシュ・ダニエルソン(b他多数)とのトリオ体制で、ヴォーカルとギターのコンビネーションを基軸に、ダニエルソンのチェレスタ、カリンバ、メロディカ、シンバル、チェロ、ベースなどの多彩な音世界のゆったりとした雰囲気で包まれた作品。いずれにしても彼女のヴォーカルは包容力もあり美しさ優しさを持っているので大歓迎の一枚。
(Tracklist)
01. Beautiful Love (Wayne King / Victor Young / Egbert Van Alstyne / Haven Gillespie)
02. My Foolish Heart (Victor Young / Ned Washington)
03. With A Song In My Heart (Richard Rodgers / Lorenz Hart)
04. Nature Boy (Eden Ahbez)
05. I'm Moving On (Mette Juul)
06. Distance (Glauco Viénier / Norma Winstone)
07. Northern Woods (Mette Juul)
08. Love Is A Many-Splendored Thing (Sammy Fain / Paul Francis Webster)
09. Celeste (Laura Pausini / Beppe Dati)
10. Where You've Never Been
相変わらず彼女の世界は、透明感や涼やかさのクリーン・ヴォイスでソフトな温もりをも持ち合わせていて、バラード調の流れで中音域を中心に情感をこめて優しく語りかけ叙情的で、聴く者に好感の持てるところにある。
曲の展開としてハミング〜スキャット系統の手法も結構取り入れたヴォーカル、全体的にはテンダーにして穏やかで包容力ある美しさとロマンチックな処もある心地よい癒やされる世界である。
M1. "Beautiful Love" スキャット風のウォーカルも入ってなんとなく幻想的。
M2. "My Foolish Heart" 彼女独特の節回しの入っての編曲効果が大きい不思議な曲仕上げ。
M3. "With A Song In My Heart" しっとりと説得力あるバラード風の世界を美しい中音域で歌い上げる。
M4. "Nature Boy" よく聴く曲が続くだが、美しいギターの調べと共にゆったりと包容力ある歌い込みが魅力的。ダニエルソンのメロディカだろうか、その調べが印象的な世界へ。
M5. "I'm Moving On" Mette Juulのギターの弾き語り調の異色のオリジナル曲。
M6. "Distance" ギターの調べと共に、ちょっと陰影のあってなかなか美しい曲。
M7. "Northern Woods" これも彼女のオリジナル。北欧の自然の描写だろうか。
M8. "Love Is A Many-Splendored Thing" このように聴き慣れた曲をギターをバックにしっかり新たな気持ちで聴ける歌い回し。
M9. "Celeste" 、M10. "Where You've Never Been" 両曲はあまり特徴を出さずにソフト・タッチの優良曲と仕上げた。
ここまで優しさを持って描ききったアルバムは近年珍しい。スウェーデン風と言って良いのか、ちょっと不思議な節回しも入ったり、ハミングで歌ったりと、新鮮味もちゃんとあって飽きさせない。秋向きのいいアルバムだ。
(評価)
□ 曲・編曲・歌 90/100
□ 録音 88/100
(参考視聴)
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