メッテ・ジュール

2023年11月28日 (火)

メッテ・ジュール(メテ・ユール) Mette Juul 「Celeste」

テンダーな心地よい癒されるボーカルが・・・

<Jazz>

Mette Juul feat. Lars Danielsson & Mike Moreno 「Celeste」
Prophone / Import / PCD325 / 2023

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Mette Juul メテ・ユール (vocal, guitar)
Mike Moreno マイク・モレーノ (guitar)
Lars Danielsson ラーシュ・ダニエルソン (cello, double bass, celeste, kalimba, melodica, cymbals)

米ニューヨークのBass Hit Recording録音
2023年スウェーデン作品

  メッテ・ジュールと呼んでたが、最近、メテ・ユールと書かれてますね。彼女はデンマークのホアンシルの1975年生まれの北欧のギタリスト兼ヴォーカリストでこれは最新盤。このProphone Recordsのリリースする『Celeste』は、彼女のソロ・アルバム第6作。スウェーデンのベーシストのラーシュ・ダニエルソン Lars Danielsson(前作も)とアメリカのギタリスト、マイク・モレノ Mike Morenoの共演で、スタンダード曲中心に録音されたヴォーカル・アルバムだ。

02ff38519d8558b501111w  彼女は日本でも既に多くのファンを獲得しているが、若いころからシンガー・ソングライターとして活動し、2007年にエストニアのタリンで行なわれた国際ジャズ・アーティスト・コンペティションで第1位に選ばれた。2010年、ここでも取上げたアレックス・リール・トリオとのデビュー・アルバムのComing from the Dark』(YMCJ-10005)をリリースし好評で、既に13年のキャリアがある。
 彼女は今回のアルバムに関して次のように語っていることが紹介されている
「私は幼い頃にジャズヴォーカルの世界に出会いました。スタンダードのメロディーと歌詞は私に大きな印象を与え、今でも私に語りかけます。マイク・モレノとラース・ダニエルソンと一緒にツアーをして、ジャズスタンダードの曲を一緒に演奏したり、歌ったりすることは、私の長年の大きな願いでした。そしてアルバムには、ジャズのスタンダードだけでなくグラウコ・ヴィエニエやノーマ・ウィンストンの"Distance"などのオリジナルも入れることが出来ました」

  彼女の過去のアルバムも非常にしっとりと描く世界が安らぎに導くところがあり、これは秋の夜長を彩るにふさわしい女性ヴォーカル盤だ。
  今回の録音は、米ニューヨークへ出向き、マイク・モレーノ(g)、ラーシュ・ダニエルソン(b他多数)とのトリオ体制で、ヴォーカルとギターのコンビネーションを基軸に、ダニエルソンのチェレスタ、カリンバ、メロディカ、シンバル、チェロ、ベースなどの多彩な音世界のゆったりとした雰囲気で包まれた作品。いずれにしても彼女のヴォーカルは包容力もあり美しさ優しさを持っているので大歓迎の一枚。

(Tracklist)

01. Beautiful Love (Wayne King / Victor Young / Egbert Van Alstyne / Haven Gillespie)
02. My Foolish Heart (Victor Young / Ned Washington)
03. With A Song In My Heart (Richard Rodgers / Lorenz Hart)
04. Nature Boy (Eden Ahbez)
05. I'm Moving On (Mette Juul)
06. Distance (Glauco Viénier / Norma Winstone)
07. Northern Woods (Mette Juul)
08. Love Is A Many-Splendored Thing (Sammy Fain / Paul Francis Webster)
09. Celeste (Laura Pausini / Beppe Dati)
10. Where You've Never Been 

 相変わらず彼女の世界は、透明感や涼やかさのクリーン・ヴォイスでソフトな温もりをも持ち合わせていて、バラード調の流れで中音域を中心に情感をこめて優しく語りかけ叙情的で、聴く者に好感の持てるところにある。
 曲の展開としてハミング〜スキャット系統の手法も結構取り入れたヴォーカル、全体的にはテンダーにして穏やかで包容力ある美しさとロマンチックな処もある心地よい癒やされる世界である。

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M1. "Beautiful Love" スキャット風のウォーカルも入ってなんとなく幻想的。
M2. "My Foolish Heart" 彼女独特の節回しの入っての編曲効果が大きい不思議な曲仕上げ。
M3. "With A Song In My Heart" しっとりと説得力あるバラード風の世界を美しい中音域で歌い上げる。
M4. "Nature Boy" よく聴く曲が続くだが、美しいギターの調べと共にゆったりと包容力ある歌い込みが魅力的。ダニエルソンのメロディカだろうか、その調べが印象的な世界へ。
M5. "I'm Moving On" Mette Juulのギターの弾き語り調の異色のオリジナル曲。
M6. "Distance"  ギターの調べと共に、ちょっと陰影のあってなかなか美しい曲。
M7. "Northern Woods" これも彼女のオリジナル。北欧の自然の描写だろうか。
M8. "Love Is A Many-Splendored Thing" このように聴き慣れた曲をギターをバックにしっかり新たな気持ちで聴ける歌い回し。
M9. "Celeste"M10. "Where You've Never Been" 両曲はあまり特徴を出さずにソフト・タッチの優良曲と仕上げた。

 ここまで優しさを持って描ききったアルバムは近年珍しい。スウェーデン風と言って良いのか、ちょっと不思議な節回しも入ったり、ハミングで歌ったりと、新鮮味もちゃんとあって飽きさせない。秋向きのいいアルバムだ。

(評価)
□ 曲・編曲・歌  90/100
□ 録音      88/100

(参考視聴)

 

 

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2020年1月24日 (金)

メッテ・ジュール Mette Juul 「CHANGE」

究極のヴォーカル・アルバムの線をゆく

<Jazz>

Mette Juul 「CHANGE」
UNIVERSAL / Denmark / 7796107 / 2019

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Mette Juul : vocal & guitar
Ulf Wakenius : guitar
Lars Danielsson : acoustic bass, cello, cymbals
Heine Hansen : piano, rhodes, celeste, harmonica
Gilad Hekselman : guitar
Per Mollehoj : guita

Image_20200122214101  北欧デンマークの女性ギタリスト兼ヴォーカリストのメッテ・ジュールの最新盤。彼女に関しては、かってここでそのヴォーカルに高評価を付けた私だが(参照 「Comming In From The Dark」(2010) →)、あれから9年経っているんですね(その間アルバム「Moon on My Shoulder」(2013)があるが)。ここでもその流れは十分に発揮している。
 アコースティックな静かな落ち着いたギターを中心としたバックに、フォーキィーにブルージーにシンプルに際だった装飾やテクニックをこらすことなく歌い上げる。

(Tracklist)

1.Beautiful Love
2.At Home (There Is a Song) *
3.Get Out of town
4.It Might Be Time To Say Goodbye *
5.Double Rainbow
6.Just Friends
7.I`m Moving On
8.Dindi
9.Young Song *
10.Without a Song
11.Northern Woods
12.The Peacocks ( A Timeless Place )
13.Evening Song *

(*印 メッテ・ジュールのオリジナル)

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  彼女自身のギター以外にも、ウルフ・ワケニウスそしてギラッド・ヘルスマンのギターがいいですね。又ラーシュ・ダニエルソンのベースやチェロなどが入る。これらも極めてシンプルに、アコーステイックで、彼女の歌声を支える。
 その彼女の歌は、どちらかというとフォークに近い牧歌的であるが、時にブルージーでとにかく冒頭M1.".Beautiful Love"からしっとりと嫌みの無い充実感たっぷりの素直なヴォーカルである。これぞ彼女の神髄と言って良いだろう。とにかくシンプルな演奏で、彼女のヴォーカルが眼前で歌っているがごとく録音されている。
 13曲収録されているが。メッテ自身の曲も4曲ありM4."It Might Be Time To Say Goodbye"あたりはしっとり歌い聴かせる曲でなかなかいい。最後のM13."Evening Song "も同様でアコースティック・ギターの弾き語りであろうか、訴える力を持っていていつの間にか彼女の世界に引き込まれる。
 M3."Get Out of town"は、なんとコール・ポーターの書いたミュージカルの曲で、このアルバムの中でも異色で結構リズムカルに迫ってくる。
 その他、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲もM5."Double Rainbow "、M8."Dindi "と登場する。このように意外に幅広いところを網羅しているが、いずれもメッテ流の世界になっていて、このあたりは彼女の実力を評価したい。

 なかなか彼女の声の質も良く、含蓄のあるヴォーカルで、アコースティックな演奏がバックで支え、上出来のアルバムといっておく。

(評価)
□ 曲・歌  ★★★★★☆   90/100  
□ 録音   ★★★★☆   85/100

(視聴)

 

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2019年9月18日 (水)

なんとなく好きな曲 (2)  「 ESTATE (夏) 」・・夏の恨み節

どこか哀感のある美旋律が・・・・・

Thfvyj925bw  イタリアのブルーノ・マルティーノの曲「ESTATE」を取り上げたい。

 この曲は現在ジャズ界では、多くの演奏家やヴォーカリストによって歌われ演奏されている曲だ。イタリアのピアニストであり作曲家・歌手であったブルーノ・マルティーノBruno Martino(1925-2000)(右)が作曲した曲であり、彼自身が歌って1950年代にヒットしたもの。
 しかし、現在は女性ヴォーカリストに好まれて歌われているし、一方歌なしのピアノ・トリオとして演奏されている場合も多い。そんなところから、私の所持しているアルバムを紐解いてみると、取り敢えずは下のように11の演奏家、歌手のものが出てきた。
 最もポピュラーなのはピアニスト・ヴォーカリストのEliane Elias(右下)ですかね。演奏としては美しいピアノを聴かせてくれるMichele Di ToroとかLynne Arriale、Steve Rudolphなどが気になりますね。そんなわけでこの11ミュージシャンの演ずるものを取り出して、聴いて楽しんでいるのである。

 

<ESTATE を演ずる11ミュージシャン>

Elianeeliasw 1. Akira Matsuo Trio
2. Clara Vuust
3. Andreas Mayerhofer Trio
4. Mette Juul
5. Michele Di Toro
6. Sara Lancman
7. Lynne Arriale Trio
8. Francesca Tandoi Trio
9.Steve Rudolph Trio
10. Eliane Elias
11. The Kirk Lightsey Trio

 こんな演奏・歌などが出てきたので取り敢えず聴きやすいようにCD一枚にまとめてみた。
 もともと歌詞は下の通りで、ブログで日本語訳も載せているものがあったのでここに紹介する。

[ ESTATE  イタリア語歌詞 ]
Estate sei calda come i baci che ho perduto,
sei piena di un amore che è passato
che il cuore mio vorrebbe cancellar.
estate il sole che ogni giorno ci scaldava
che splendidi tramonti dipingeva adesso brucia solo con furor
Verrà un altro inverno cadranno mille di petali di rose
la neve coprirà tutte le cose e forse un po di pace tornerà.
Odio l'estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore,
l'estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolore.

Tornerà un altro inverno cadranno mille petali di rose la neve coprirà tutte le cose e forse un pò di pace tornerà.
odio estate
che ha dato il suo profumo ad ogni fiore
estate che ha creato il nostro amore
per farmi poi morire di dolor.
odio estate.
odio l'estate.

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(Clara Vuust,  Mette Juul,  Lynne Arriale,  Francesca Tandoi)

[ Estate (夏 ) 日本語訳 ]

山本のりこ訳 (http://noriko-yamamoto.cocolog-nifty.com/memo/2011/07/estate-0e4b.html )
Cdw
それは失ったキスのように熱く
心から消してしまいたいと私が願う
ある過ぎ去った愛に満ちている

私たちを毎日温めた太陽
絵のように美しい夕暮れ
いまは怒り狂うように照りつける
また冬になれば
幾千の薔薇の花びらが落ち
雪がすべてをおおうだろう
そうすれば しばらくの平和が戻ってくる

それぞれの花に香りを与えて
夏は二人の愛をつくった
私を苦しみで殺すほどに
夏を憎む

 これはがマルティーノが「夏の恨み節」を歌ったようだが、女心なのか自分の経験の男の歌なのかそれは良く解らないが、現在は殆どが女性に歌われていて、私としては女心ではないかと。推測している
 ヴォーカルでは、Clara Vuustが素直な歌、Mette Juulはしっとりと、Sara Lancman、Francesca Tandoiは恨み節、Eliane Eliasは大人の回顧といった感じですね。
 演奏ではMichele Di Toroは静かに回顧する、Lyne Arrale Trioは思い出をかみしめて、Steve Rudolph Trioは思い出を軽く美しく、The Kirk Lightsey Trioは人生の新たな出発点として・・・と、いった異なったムードの演奏だ。

 ヴォーカルもそれぞれ違うし、演奏も全く異なる世界に・・と、十分聴き応えがあった。これぞミュージシャンってとこですね。

 

(試聴)

①   Clara Vuust

②  Eliane Elias

 

③ Lynne Arriale Trio

 

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2011年8月 8日 (月)

北欧からの女性ジャズ・ヴォーカル:メッテ・ジュール Mette Juul デビュー

説得力ある実力派の歌唱が魅力

Cuminginfrom 「METTE JUUL / COMING IN FROM THE DARK」 Cowbel Music,  Yamaha YMCJ-10005,  2010

 このデンマーク発のアルバムをどうして聴くようになったか?、おかしなことに記憶がない。ジャケ買いでもないし、多分どこかの雑誌で取り上げていたのかも・・・。いずれにしても何回か聴いてきた経過で、ここで取り上げることにする。

 このアルバムの特徴は、バックのアレックス・リール・トリオが知られていることだ。そしてこの女性ヴォーカリストのメッテ・ジュールは、アコースティック・ギターを弾きながらジャジーな歌を聴かせ自らのオリジナル曲を披露する。つまりシング・ソングライターである。多分これが彼女の1stアルバムだと思う。

 このアルバムは、彼女のオリジナル5曲とジャズ・ポピュラー曲のカヴァー7曲の構成だ。プロデュースも、メッテ・ジュール&アレックス・リールとなっている。いずれにしても彼女のヴォーカルを支えるのが、アレックス・トリオ(Alex riel: drums, Heine hansen: piano, Jesper lundgaad: bass)で、ゲストにtrumpet(Palle mikkelbrog), Guitar(Poul halberg) が入る。

Mette (list)
   1. the way you close the door*
   2. coming in from the dark*
   3. old devil moon
   4. comes love
   5. embraceable you
   6. valsen er min*
   7. what is this thing called love
   8. estate
   9. in the wee small hours of the morning
  10. little devile blue*
  11. how many hours must i travel alone*
  12. i wish you love
     (*印 メッテのオリジナル)

 メッテ・ジュールはデンマークで生まれ、2007年には国際ジャズ・アーティスト・コンペティションで優勝しているという実力派。彼女はジョニ・ミッチェルに影響を受けていると言うが、上の彼女自身の曲を聴くと、所謂そのお国柄のイメージが湧いてくるタイプで、フォークというのでなくトラッドぽいところがあるし、そのジャジィーな展開が面白い。なんと言ってもしっかりと歌うところが特徴だ。近頃はやりの呟き囁きフェイクの多用とは違う。
 デンマークのローカルな曲を知っているともう少し理解度が増すのかも知れない。いずれにしても6曲目の”Valsen er min” は、彼女のオリジナル曲であると同時に、その他の曲は英語で唄っているが、これはデンマーク語で披露しているところが骨である。
 スタートのオリジナル曲は、ボサノヴァ調でオープニングを飾りジャズ心を示しながら、2曲目にタイトル曲”coming in from the dark”を登場させトランペットと共に歌い上げるが、やはり聴き慣れたメロディーと違った作風に彼女の世界をアッピールされる。5曲目のガーシュインの曲”embraceable you”は、聴くものの心にじっくりと響いて私好み。”estate”はジャズ界を代表する曲だけあってそのアプローチは歪みのない歌唱で説得力十分。
 その他、”in the wee small hours of the morning”、”i wish you love”など聴き応えは力のある歌唱力で堪能できる。

 なんか久々に唄を聴いたという気持ちになるアルバムだ。彼女のオリジナル曲がうまく曲配列の中で印象付けられる。それはそれだけ独特のものであるからだ。トリオの演奏もさすが評価どおりの展開で、このアルバムへの貢献も大きい。とにかく実力派のデビュー・アルバムであった。さてさて、これからの世界評価がどう展開するか楽しみである。

 

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