ステイシー・ケント

2023年10月13日 (金)

ステイシー・ケント Stacey Kent 「Summer me, Winter me」

多彩な世界を、誠実感のある歌いこみに好感

<Jazz>
Stacey Kent 「Summer me, Winter me」
Naive / Import / BLV8224 / 2023

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Stacey Kent (vocal)
Jim Tomlinson (tenor saxophone, flute, alto flute, clarinet, guitar, percussion, keyboard)
Art Hirahara (piano)
Graham Harvey (piano)
Tom Hubbard (double bass)
Jeremy Brown (double bass)
Anthony Pinciotti (drums on 01, 02, 03, 04, 05, 07, 09, 10)
Joshua Morrison (drums on 06, 08, 11)
Aurélie Chenille (first violin on 05)
Claire Chabert (second violin on 05)
Fabrice Planchat (viola on 05)
Gabriel Planchat (cello on 05)

#06, #08, #11:2019年5月6日英国ウェスト・サセックス(州)アーディングリー=ArdinglyのCurtis Schwartz Studio録音
#01, #04, #09, #10:2019年8月2日米ニューヨークシティのEastside Studios録音
#02, #03, #05, #07:2019年12月12日米ニューヨークシティのSpin Studios録音
(追加録音)米コロラド州カーボンデイルのStirling Studio、米ヴァージニア州アーリーズヴィルのLake Studios

 ステイシー・ケントもここで取り上げるのも久しぶりだと思いましたが、2年前にピアノとのデュオ・アルバム『Songs from Other Places』(2021)が出ていたんですね。今回もなかなかバックは小コンポで、彼女の充実したヴォーカルがじっくり聴けるアルバムの登場である。
 なんとそれは、彼女のコンサートでアルバムとしてリリースされていないが高評価の人気曲を集めたというまさにファン・サービス・アルバムで、古いレパートリーであったり新しいものもあり統一感というよりは、聴きたいという希望に答えている。しかもフランスのレーベルNAIVEからのリリースである。

 彼女は、ニュージャージー州サウスオレンジ出身(1965年生まれ)のアメリカのジャズ歌手だが、父方の祖父はロシア人で、フランスで育った。サラローレンス大学を卒業した後、彼女はロンドンのギルドホール音楽演劇学校で音楽を学ぶためにイギリスに渡航し、そこで1991年に結婚したサックス奏者のジム・トムリンソンに会ったという事だ。

 過去にグラミー賞にノミネートされ、2009年にフランス文化大臣から芸術文学勲章シュヴァリエを授与されている。夫のジム・トムリンソンは彼女のアルバムをプロデュースし、彼女のために曲を書いたりしている。もともとフランスでの人気が先行して今やインターナショナルにファンがいる。

 

O0460069114486459352 (Tracklist)

01. Summer Me, Winter Me (vo-fl-p-b-ds)
02. La Valse Des Lilas (vo-ts-p-b-ds)
03. Thinking About The Rain (vo-afl/cl/fl?/key?-p-b-ds)
04. Under Paris Skies (vo-fl/ts-p-b-ds)
05. If You Go Away (vo-cl-p-b-ds-strings)
06. Happy Talk (vo-fl/ts/acg-p-b-ds)
07. Show Me (vo-p-b-ds)
08. Postcard Lovers (vo-afl-p-b-ds)
09. Corcovado (vo-fl/ts/acg-p-b-ds)
10. A Song That Isn't Finished Yet (vo-ts-p-b-ds)
11. Ne Me Quitte Pas (vo-p-b-ds)

  彼女はもうベテランの範疇だが、声は全く衰えることもなく以前からのままであるが、歌いっぷりはやはり充実していて、いろいろという事が憚れるといったところ。バックの演奏もヴォーカルものにぴったりの小コンポで、ピアノ・トリオにフルート、テナーサックス、ギターなど曲により加わりいいムードである。
 アルバム・タイトル曲であるM1."Summer Me, Winter Me"は元々、ミッシェル・ルグランが作曲した映画「おもいでの夏」のテーマ曲"Summer Song"に後付けで歌詞が付けられたもので、シナトラや、エラ・フィッツジェラルドなどの大物がカバーしている名曲らしい。ケントは軽快なバックに優雅に歌い上げていて歴史を感じられる曲だ。
 M2."La Valse Des Lilas" ゆったりしたフランス・ムードの情景豊かな曲で聴いていて気持ちがいい。
 M4."Under Paris Skies"は、誰でも知っているという名曲だが、快適なテンポでパリの華やかさと明るさを歌い上げていてこれも気持ちが良い。

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 M5."If You Go Away"は、彼女の歌うコンサートでは人気曲のようで、このピアノのバックでしっとりと歌での味付けとムードはさすがである。これが収録されてファンは大喜びというところだ。
 M8."Postcard Lovers"は、カズオ・イシグロ氏の作詩、なかなか落ち着いた大人の歌が聴ける。
 M9." Corcovado"は、彼女が尊敬しているというジョビンの曲で、リオデジャネイロのコルコバードの象徴的美しい場所を見てのブラジルの自然の美しさや愛情を歌った曲で、しっとりと歌いこまれていて聴きごたえ十分。
 M11."Ne Me Quitte Pas"は、これはフランス語の歌詞で、英語では"If You go away"(いかないで)と歌われる。このアルバムではM5.と同一曲のフランス語版。なんと、かってシンディ・ローパーが見事に歌って私は驚いた曲である。アルバム締めくくりとして、ケントはスタートはアカペラで歌い上げ、控えめなピアノと共にしっとりと歌いこんで切ないムードを盛り上げる。

 彼女のヴォーカルは、不思議なのは、年齢とは別のなんとなくあどけなさも感ずるところがあったり、しっとりと大人のムードで包容力があったり、パリ・ムードの華やかさを若々しく歌ったり、このアルバムの選曲によって多彩で至れり尽くせりといったところにある。とにかくなんとなく彼女が一つの節目として誠実真摯に変な色付けなく自然なムードで歌い上げたアルバムのような感覚になる。取り敢えず推薦アルバムだ。

(評価)

□ 選曲・演奏・歌  88/100
□ 録音       88/100
(試聴)

(フランス語版)

*
(英語版)

 

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2018年1月 8日 (月)

ステイシー・ケントStacey Kent 「I know I dream」

(2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-7)

 

ストリングス・オーケストラをバックに、とにかく優美なアルバム

 今年も美女狩りシリーズは相変わらず続きそうですが・・・・

<Jazz>
Stacey Kent 「I know I dream」
Okeh / IMPORT / 88985462882 / 2017

 

Iknowidream

Stacey Kent : Vocals
Jim Tominson : Saxophones
Graham Harvey : Piano
John Pericelli : Guitars
Jeremy Brown : Bass
Joshua Morrison : Drums      
Adrian Bending : Orchestra Contractor

etc.

 

 ステイシー・ケントはデビューは1997年と言うことで、20年のキャリアーでのニュー・アルバム登場。それも今回は初めてオーケストラとの共演と言うことで、彼女としてはかなりジャズ一点張りというのでなく広く対象を求めた感のある作品となった。
  彼女は、米国ニューヨーク生まれの女性ヴォーカリスト。サラ・ローレンス大学では文学を専攻したという(その為か、英語、フランス語、ポルトガル語がお見事)。91年のヨーロッパ旅行の際、ロンドンで英国のミュージシャンと交流を深めて以降、ロンドンを拠点に活動中ということだ。
  過去のアルバムはここでも何度か取り上げてきたが、前作は『Tenderly』(Okeh/88875156772/2015)で、これはそれからの2年ぶりの新作。
  こうして彼女もベテランとなってきているが、しかしなんとこのアルバムでも相変わらずその歌声はキュートで愛着あるところは昔と同じで、ファンも納得のところだろう。
 プロデュースはなんと彼女の夫でサックス奏者のジム・トムリンソン。Jazzy not Jazzを前面に出したのは、多分広く彼女を売って行こうという企み(笑)なんでしょうね。
 

 

Gallerietrw(Tracklist)
1. Double Rainbow
2. Photograph
3. Les amours perdues
4. Bullet Train
5. To Say Goodbye
6. Make It Up
7. Avec le temps
8. I Know I Dream
9. La Rua Madureira
10. Mais Uma Vez
11. That's All
12. The Changing Lights

 

 オープニング曲はカルロス・ジョビンの"Double Rainbow"で、冒頭からフルートそしてストリングス・オーケストラの響きが流れ中盤ではサックスが響く、なるほどこれは所謂ジャズ・アルバムとは違って、Jazzy not Jazzの世界だ。M2. "Photograph"でも彼女のヴォーカルはひときわ丁寧に優しく美しく唄う。
 驚きはM4."Bullet Train"だ。これは”弾丸列車”と訳せば良いのか、なんと日本の新幹線のことだ。ここでは名古屋駅でのアナウンスがSEとして流れ、新幹線をテーマにした昨年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが歌詞を手掛けたと言う新曲の登場である。なかなか軽めに歌いあげて聴く方も何というか不思議な感覚になる。
 M5. "To Say Goodbye"もストリングスの流れが優美で、それとともに美しく歌いあげる。後半はサックスも歌いあげて曲の仕上げは美しさ一本に迫るものだ。
 M7. "Avec le temps"は、これはフランス語か、とにかく哀愁を持って歌いあげて聴かせる技も見事。彼女は意外にフランス語がなかなか合いますね。
 M8. "I Know I Dream"はタイトル曲だが、新曲のようでしっとりと聴かせてくれる。
 最後のM12. "The Changing Lights"は過去のアルバムからのストリングス・バージョン。

 

 とにかく、ジャズに捕らわれず彼女の魅力をたっぷりと多くの者に聴かせようとしたジャケのとおりの優美なアルバムであった。

 

(視聴)

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2015年12月23日 (水)

ステイシー・ケントstacey kent のアルバム 「Tenderly」

まさにテンダリーそのもののアルバム

    <Jazz>
         Stacey Kent「Tenderly」
          OKeh / Euro / 88875156772 / 2015

Tenderly
1. Only Trust Your Heart
2. Tangerine
3. The Very Thought Of You
4. Embraceable You
5. There Will Never Be Another You
6. Tenderly
7. No Moon At All
8. If I m Lucky
9. Agarradinhos
10. In The Wee Small Hours Of The Morning
11. That s All
12. If I Had You

STACEY KENT (VOCAL)
ROBERTO MENESCAL (GUITAR,ARRANGEMENT)
JEREMY BROWN (DOUBLE BASS)
JIM TOMLINSON (TENOR SAXOPHONE,ALTO FLUTE)

 ”Tenderly”と言えばもう何十年も昔のRosemary Clooneyの曲ですね、その曲名をアルバム・タイトルにしたステイシー・ケントStacey Kentのヴォーカル・アルバム。ソニー・ミュージック移籍第1弾作品で、私が初めて接点を持った2013年にリリースした『チェンジング・ライツThe changing lights』(”How Insensitive”は惚れ惚れした曲でした)以来、約2年振りのニュー・アルバムとなる。
 このアルバムの話題はボサノヴァの巨匠ギタリスト作曲家、ロベルト・メネスカルとの共演が実現したというところにあるようだ。従ってバックはギター、ベース、サックス(時にフルート)と言う構成でボサノヴァ調。

Staceykent_2_2 彼女はキュートな歌声で可憐に歌いチャーミングな歌手であり、それに加えて何となく知性を感ずるというところで人気者ですね。
 米国ニューヨーク生まれ。サラ・ローレンス大学では文学を専攻。現在英国ロンドンを拠点に活躍中。それも1991年のヨーロッパ旅行の際、ロンドンで英国のミュージシャン・サックス奏者のJIM TOMLINSONと交流を深め結婚したためだ。デビューは1997年のアルバム『Close your Eyes』。夫のトムリンソンは必ず彼女のアルバムにはバックを固めている。
 又祖父はフランスに長く住んでいたことがあって、フランスを愛しており、彼女にフランス語で子供の頃には教育をしたため彼女もフランス語に通じ、フランスとの交流も深く、フランスの芸術文化勲章を授章している。

 今作も基本的には前作と同じパターンのヴォーカル・スタイルだ。とにかく可憐に優しくといっところ。前作はピアノ・トリオ+サックス、ギターと言ったところが主たるバック演奏であったが、今作はピアノ・レスでボサノバ調ギターが主役であるところが違い。それによっての雰囲気の違いを描いてはいるといったところ。
 従って、スタンダードの名曲をボッサ調に、優しく、歌い上げている。そして”Tenderly”にしても、Rosemary Clooneyとは全く異なったステイシー・ケントの世界で、とにかく心安まるヴォーカル・アルバムですね。このパターンを崩さずしっかり自己のものにしているところはお見事である。

(試聴)

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