サン・ビービー Søren Bebe Trio 「Here Now」
相変わらずの静謐・美旋律の詩的なアコースティック・ジャズの世界
<Jazz>
Søren Bebe Trio 「Here Now」
FROM HERE MUSIC / Import / FOHMCD023 / 2023
Søren Bebe(Piano)
Kasper Tagel(Bass)
Knut Finsrud(Drums)
デンマーク・コペンハーゲンを拠点に活躍しているピアニスト、サン・ビービーSøren Bebe (なかなか発音が難しい、ソーレン・ベベと記載されているものもある:下左)率いるピアノ・トリオの2023年新作6thアルバムの登場だ。以前からここでも取上げてきたのは、彼の演ずるところ静謐な美メロ・ピアノ・トリオでお気に入りだからである。過去においてトルド・グスタフセンや故エスビョルン・スヴェンソンと比較して語られることが多いのだが、トルド・グスタフセンほど哲学的な沈み方はなく、又E.S.T.ほど、コンテンポラリーな色彩は見せない。しかし如何にも北欧ピアノ・トリオらしい自然の情景をやや暗めな世界として描いたり、のどかな牧歌的な自然を聴かせたりとなかなか味わい深いところが魅力である。
彼は1975年12月生まれで47歳という脂ののった歳だ。2019年にリリースされた『Echoes』(FOHMCD015)は好評であったが、今回はノルウェーのドラマー、クヌート・フィンスルード(下右)を初めてメンンバー迎え、以前からのキャスパー・ターゲル(B /下中央)と新トリオを組んでいる。
又、サン・ビービーは、最近、デンマークの小さな村に住居を移して、家族とともに森、湖、農地に囲まれた環境にあり、このアルバムは新たに見つけた生活を反映していると言われているが。
(Tracklist)
1.Here Now 3:29
2.Tangeri 4:44
3.Grateful 3:22
4.Winter 5:12
5.Misha 3:57
6.Be Well 4:16
7.Folksy (To Jan) 3:57
8.Day by Day 3:55
9.Summer 3:37
10.On and On 3:51
確かに彼の新生活環境を反映してか、静かで瞑想的で広大な地球上の自然の姿がみえるような世界を展開させている。それは流麗で美しいフレー ズが聴きとれるし、もともと澄んだ硬質なピアノ音色がさらにメロディを引き立てていて、相も変わらず北欧ピアノトリオの特徴と言っていいのか、ちょっと沈むような感傷的な味わいが聴く者を引き付ける。
M.1 "Here Now" 冒頭から静かな世界にちょっと感傷的なピアノの美旋律が流れる
M.2 "Tangeri" どこか明るい心の展望の感ずる美しさのメロディーをピアノが歌う。中盤のベースの響きが魅力的。
M.3 "Grateful" ドラムスのスティック音が優しく響き、ピアノの明るさと安定した世界
M.4 "Winter" 厳しさよりは美しさを描く
M.5 "Misha" 明るさと牧歌的な世界
M.6 "Be Well" 安堵の情景
M.7 "Folksy (To Jan)" ドラムスからスタートしての明るい展開、ジャズとフォークの融合
M.8 "Day by Day" 若干沈む思索的世界
M.9 "Summer" ドラムスが前面に出ての珍しくアクティブな曲
M10 "On and On" 未来志向の展開が優しく響く
とにかく控えめな演奏で若干内省的なところもあるが、優雅でエレガント、究極のところ"詩的なアルバム"といった世界だ。北欧という環境から描いてくれる叙情的でメランコリックなアコースティック・ジャズがこうして聴かれるのは嬉しいことだ。
10年以上前に聴いた美しい2ndアルバム『FROM OUT HERE』(VFJCO 012/2010)の一つの回答のようなアルバムだ。
いろいろなジャズ・アルバムを聴く中で、ふと人間的癒しが必要な時には最高アルバムとして位置付けたい。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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