アーロン・パークス Aaron Parks 「Little Big Ⅲ」
パークスの別の面を見るプロジェクトだが、今作は意外に大人しかった
<Jazz>
Aaron Parks 「Little Big Ⅲ」
Blue Note Records / International Version / 6578465 / 2024
Aaron Parks(p,key)
Greg Tuohey(g)
David Ginyard Jr.(b)
Jongkuk Kim(ds,per)
いっやーーアーロン・パークスのアルバムは久しぶりだ。彼は、かって2008 年に名盤『Invisible Cinema』で名門ブルーノートからデビューし、"メロディの繊細さとサウンド・メイキングの素晴らしさ"ということで、知るに至るのだが、その後のECMの活動を経て14年振りにブルーノートへ移籍し、ここに新作をリリースした。それは2018年からの「リトル・ビッグ」プロジェクトの第三弾にあたる。これはブルーノートの社長ドン・ウォズとパークス自身の共同プロデュースとなるもので、紹介されているように「即興音楽をエレクトロニカやヒップホップ、サイケデリアなどあらゆるジャンルと融合させること」と言うことをコンセプトとしているものだ。
私自身は、彼に関しては『Invisible Cinema』の充実度の高さに驚き、ECMからリリースの2013年のピアノ・ソロ・アルバム『ARBORESCENCE』、2017年のピアノ・トリオ・アルバム『Find The Way』あたりでお気に入りであったが、この「リトル・ビック」プロジェクトに関しては・・・このアルバムを聴いていて前作を思い出したのであるが、「ECMもの」のような期待度とは少々異なる。彼らは実験的な世界を構築し、次への進歩の道を探っているような研究と実践効果を狙っている。そんなところから、むしろ私が聴くところでは遊び感覚の方が前に出そうだ。まあそれはそれで楽しいと言えば楽しいのでやっぱりじっくり聴きこみたいのである。
(Tracklist)
1. Flyways
2. Locked Down
3. Heart Stories
4. Sports
5. Little Beginnings
6. The Machine Says No
7. Willamina
8. Delusions
9. Ashé
曲の構成は、M1, 2, 3とM8, 9の5曲がパークスの曲でメインの役割を果たしている。M4、M7はギターリストのテューイ、そしてM5はベーシストのギンヤードの曲である。
結論的には想像していた世界からスリリングな味が後退していた。しかしここにみる未来感覚というのはミュージシャンの持っている創造性の重要な感覚であろうか、パークスもなんとなくリーダー作の演奏と異なって、トリオのお互いが同等に演ずるのびのびした演奏の雰囲気を出している。
M1."Flyways"は、ピアノからギターへと旋律を橋渡しして、思ったより大人しい出だし。M2."Locked Down"がやはりこのアルバムを特徴づけるピアノとベースの低音のリズムとりの響きが異様で面白い。M3."Heart Stories"はパークスらしい美世界。
そしてこのプロジェクトのスリリングな味を特徴とする世界を作っているのはドラムスのように思う、特にM6."The Machine Says No"のようにたたみ込んでくる様がこのプロジェクトの特徴になっているように思うのだ。
又M7."Willamina"のように、テューイの曲らしくギターのリードが主役をなして展開し、やはりピアノ・トリオの味と異なったピアノ・トリオ+ギターのカルテットとしての形が印象的。
M8."Delusions"は、ピアノとギターの旋律のユニゾンが見事で、次第にミニマムな演奏にて流れてゆく。M9."Ashé"は、パークス作らしく、ピアノ、ベース、ギターの特徴的ユニゾンを聴かせ、しっとりと美世界を築く。
今作になって、良いのか悪いのかこのプロジェクトとしては、パークスならではの美しいメロディと絶妙なバランスのアコースティック、エレクトリック・サウンドが聴けるも、前作よりは大人しくなっていた。それぞれ円熟してきたということも言えるのかもしれない。しかしいつも通り、パークスはここにて新たな創造への道を探っているのだろう、そんな実験が次作の彼のリーダー作に反映する基礎として作り上げているアルバムの印象である。私は好みからは、このプロジェクトよりは彼の場合はECM盤に軍配を上げるのだが、しかしそれにはこの世界もプラス効果として影響して貴重なのかもしれない。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 87/100
(試聴)
"Heart Stories"
*
"The Machine Says No"
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