寺島靖国

2025年3月28日 (金)

寺島靖国 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.8」

ジャズ・ヴォーカルは、もはや女性の独壇場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents「For Jazz Vocal Fans Only Vol.8」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1133 / 2025

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Producer : 寺島靖国
Remastering Engineer : 吉田 綾
Distributed by disk union

Unnamedw_20250327163301    このジャズ・ヴォーカル曲集のコンピレーション・シリーズも、もう8巻目ですね。そもそもの出発は2016年でしたかね、毎年必ずというペースでもないのだが、それに近いペースでリリースしてくれているのは嬉しいし、応援したくて何時も購入しているアルバムだ。
 しかし考えてみるとジャズ・ヴォーカルという分野は圧倒的に女性が占めていて驚きです。音楽の愛好家は現在も圧倒的に多く、それはそれでよいことだと思うが、主としてクラシック、ポップ、ロックなどは相変わらず男女別無く愛好家は多く、そしてミュージシャンも同様であるが、ジャズとなるとちょっと様相が異なる。ミュージシャンは男性が多く、ただしヴォーカリストは圧倒的に女性。そしてリスナーとしての愛好家は男性が圧倒的に多い。そんなためか、この寺島靖国の選曲によるオムニバス・アルバムにおいても全14曲全て女性ヴォーカルものだ。こんな偏った世界はそうも無いと思いつつ、私自身もその仲間の一人として何時も変な世界だと思いつつ聴いているのである。

 さて今年も13人の女性ヴォーカリストの登場だ。
 ライナー・ノーツを見ると、寺島靖国に言わせると、このCDの特徴は「未知の歌手が未知の曲を歌うことによって"曲を読みがえらせる"といったところにあるのです」と言っている。確かにこのシリーズのアルバムで知った歌手も多かった。そしてその愛好家になったという経過もあった。しかしちょっと残念なのは、このところ若干その威力も低下したのではと・・・・思うのだが、それは私の気のせいか、いずれにしても今回の紹介をざっとみると私が聴いてきたアルバムからの選曲が13人中8人と、どうも個人的に新鮮味がなかったという処であった。もう少し世界各国を深堀していてくれると個人的には有難いのだが。

<Tracklist  (曲名/歌手)>

1 The Thrill Is Gone / Carme Canela & Joan Monne *
2 The Windmills of Your Mind / Vivian Buczek
3 A Cottage for Sale / MOON haewon with Tsuyoshi Yamamoto *
4 (Sittin' On) The Dock of the Bay / Inger Marie *
5 Embraceable You / Caity Gyorgy *
6 I Get Along Without You Very Well / Clare Teal
7 Fragile / Sacha
8 The Look of Love / Denise Donatelli *
9 April in Paris / April Varner
10 Blame It on My Youth / Cajsa Zerhouni *
11 Reverie / Nicole Zuraitis *
12 They Long to be Close to You / Diana Panton *
13 From This Moment On / Naama Gheber
14 I'm a Fool to Want You / Naama Gheber

(*印 : このブログ「灰とダイアモンドと月の裏側の世界」で過去に取り上げたアルバムからの曲=詳しくはそちらを参考に(左下の検索利用))

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 収録曲は13人の14のアルバムから14曲だ。しかしこうして聴いてみるとM1."The Thrill Is Gone "のCarme Canela(上左)とか、M4."The Dock of the Bay" のInger Marieと(近作は『Five Minutes』(STUD23082, 2024))か、M8."The Look of Love "のDenise Don atelli (上左から2番目)のベテラン組がやっぱりしっとり感もあって、中でも出色ですね。新人はもっと頑張れというところか。
   そしてこのブログでかって取り上げたアルバムは8枚に及んでいた。そしてそれは若干発売も古くなっている。ただ珍しく最も新しいアルバムからは、M12." They Long to be Close to You"で、つい先日取り上げた『Soft Winds and Roses 』(FSPC-1001)(上右)からだ、彼女Diana Pantonも、もう20年のキャリアになるのだが誠実感があってよい、そしてまだ若い。
 M10."Blame It on My Youth"のスウェーデンのCajsa Zerhouni(上右から2番目)を取り上げてくれたのは私としては喜んでいる。彼女はデビュー6~7年という処だが、充実感の味は十分だ。
 M3."A Cottage for Sale"の山本剛のピアノとのデュオのMoonは韓国のポピュラーからジャズ転向組だが、もともと歌はうまかったので、今後益々ジャズで頑張ってほしいところ。
 寺島氏はM.13"From Moment On" 、M.14" I'm a Fool to Want You"のNaama Gheberに入れ込んでいるようだが、高音域が特徴あって今後の期待株か。

 まあ、ジャズ界のヴォーカルは昔は男性もフランク・シナトラなど代表に頑張っていたのだが、このところ元気がない。ジャズそのものの方向が女性にもう少し理解され愛されて頂かないと、という処なのかもしれない。
 ジャズって、なんとなく一日の仕事や行事が一段落して、ほっとした時間帯の癒しと明日のエネルギーの為と言った性格がどうしても感じられての事だろうか、いまやジャズというジャンルはこれほど不明確な分野も無いくらいに広がっている。この寺島靖国のシリーズにはオーディオに特化したシリーズもあるように、ジヤズとオーディオというのも切って話すことの難しいところにあるが、その世界にも女性の進出がもうすこしあると又いろいろな様相が変わるのかもしれない。
 いずれにしてもこのシリーズは、人気はそれなりにあると思うので、今後の健闘を期待したい。

(評価)
□ 選曲        87/100
□ 録音(全体的に)   87/100
(試聴

*

 

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2025年3月 8日 (土)

エル ELLE 「ESTATE」

ガラーティ・トリオと女性ヴォーカル(エル)の第3弾

<Jazz>

ELLE 「ESTATE」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1131 / 2025

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Elle (vocal)
Alessandro Galati (piano)
Ares Tavolazzi (bass)
Bernardo Guerra (drums)

Recorded at Larione 10 studio, Florence, on March,2024

 

Eytoggwoaiaszw   寺島靖国氏のお勧めイタリアの女性ヴォーカリストのELLE(→)のアルバム日本第3弾。私としてはバックがAlessandro Galati Trioで、タイトル曲が"Estate"とくれば買わざるを得なかったアルバム。そしてしばらく別のアルバムに現を抜かしていたので、ちょっと遅れて取り上げた。
 何故か、イタリアの夏の恨み節であるBruno Martinoの"Estate"は、私がジャズ・ヴォーカルものとしては片手の指に入る好きな曲で、既に女性ヴォーカルものとしては20曲ぐらいは押さえているものだ。最近はヴァレリー・グラシェールの歌に圧倒されたが、このアルバムの歌うはエルはイタリアではキャリアはそれなりにあるのだが、どうなんだろうか、そんなに日本では話に登らない歌手だが、Galatiが目を付けたというのでそれなりにと思って聴いている歌手である。既に3作目なので感じは解っているが、まあそれなりにと思いつつ、ちょっと興味を持って聴いたという処だ。

 エルElleは(本名ルクレツィア・フォン・ベルガーLucrezia von Berger)は、1997年からローマでマエストロ・イザベラ・ブロジーニ(合唱指揮者)にオペラ歌唱を学び、その後ローマのポリフォニック合唱団「カントーレス」でリード・シンガー(ソプラノ)として活動。 その後ジャズへの転機は2000年からで、フィレンツェのジャズ・トリオ「レディ・シングス・ザ・ブルース」のリード・シンガーとして約15年間。 他のジャズ・ミュージシャンとの共演も多い。 歌手のほかギターの演奏にも力を注いで、2003年にはボサノヴァの歌と歌詞を作曲。2003年、フィレンツェのプロデューサー、マルコ・ラミオーニと出会い、ラウンジ・ミュージックやボサノヴァのプロジェクトに参加。 その後ヘクトール・ザズーに出会い、2004年に彼のCD『L'absence』に収録された「Eye Spy」に起用された。 2005年には、ラミオーニとのラウンジ・トリオ「アクアラマ」プロジェクトでコラボレートし、様々なコンピレーションから楽曲をリリースしている。既にジャズ経歴も二十数年のキャリア。

(Tracklist)
1. Estate
2. Misty
3. The Moon Was Yellow
4. I'm Through with Love
5. My One and Only Love
6. Fly Me to the Moon
7. Round Midnight
8. Stars Fell on Alabama
9. The Thrill Is Gone
10. We Will Meet Again

 私の注目のアレッサンドロ・ガラーティに見出されて日本レコーディング・デビューを果たしてからもう5年余り経ち、イタリアの実力派歌姫のエルの、A・ガラーティ・トリオの全面バックアップを得ての三作目。録音関係ではミックス、マスターもガラーティの手によるものでなかなか音質も良好。寺島靖国の世界に属するアルバムでオーディオ的にも良い線を行っている。
 さて、女性ヴォーカルものなので、気になるのは彼女の声と歌い方だが、ダイアナ・クラール、メロディ・ガルドー、クレア・マーチンなどがOKの私にとって、なんかちょっともろ手を挙げて大歓迎という処には行かないところがある。「低音の落ち着いた安定感と高音のしなやかな張りや爽涼さの兼ね合いも絶妙のクリーン・ヴォイス」とか、「リキみの抜けた自然体調子を保ちつつ誠心こめて丁寧に情感を活写する柔和でムーディーな歌い回しが、堂々たる練達を感じさせる冴えを、キレを見せて爽快だ」更に「絹が触れ合うような繊細かつ豊かな歌声で人々を魅了する」などなど・・・好評なのだが、なにか私的にジャズ・ヴォーカルとしてどっぷりつかるには抵抗があるのだが、どう表現してよいか難しくそんな表現にしておくが、そんなところを参考にしてほしい。

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 注目のM1." Estate"だが、これぞジャズ・ヴォーカル曲といってもイタリア産であるので、彼女も過去に歌い込んできているのではと思うところで、バックと言うか導入は優しいピアノの響きにベースが乗り、ステックの音がクリアに聴きとれ、次第にガラーティの繊細なピアノが見事なアドリブの世界で支え、おもむろに彼女の美声の世界が始まる。なんとなくねちこいイタリア語の歌はこの曲の本質なのかもしれないが、中低音が響きのいい声だ。若干高音部の質がジャズとしての味がちょっと抵抗がある。
 まあしかし無難に歌い上げているのは事実で、経験豊かな世界を感ずる。M4."Misty"も注目したが編曲はなかなかガラーティらしいスロー・ペ-スの中に微妙な味付けがされたもので、静かなピアノとベースの即興的なアドリブの世界がいいが、どうも彼女の高音歌唱が異質に聴こえてくる。この辺りはいい悪いでなく、やはり好みであろうと思う処。
  M9."The Thrill Is Gone"あたりが良かったような気がする。

 しかし全体には良く出来たアルバムと評価したい。バックのピアノ・トリオもアメリカン・リリカル路線のニュアンスも忘れずにしっかり描いていて洒落ている。そんなところで聴き応えある。

(評価)
□ 歌・演奏   87/100  (演奏88, 歌86)
□ 録音・音質  88/100

(試聴)

 

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2024年12月10日 (火)

寺島靖国氏の看板アルバム 「Jazz Bar 2024」

今回もピアノ・トリオのオンパレード

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents  「Jazz Bar 2024」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1129 / 2024

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Terashima2w  毎年の年末行事と化しているTERASHIMA RECORDSからの13曲入りの「Jazz Bar 2024 」がリリースされた。ジャズ愛好家は誰も知っている寺島靖国氏(→)の選曲するところのオムニバス・アルバムだ。彼に関しては、近年日本のジャズ界では、取り敢えずジャズ喫茶オーナー、評論家としてスタートしたといってもよい彼が、今や1938年生まれと言う86歳と言う高齢でありながら、オーディオ界、ジャズ関係書籍出版界、レコード出版界、音楽評論家界などにて破竹の勢いである。そして自己のレーベル「寺島レコード」を2007年に発足させ、彼なりきの感覚でジャズ系のレコード(CD、LP)をリリースしている。
 そしてそのリリース・アルバムの骨格はこの「Jazz Bar」シリーズといってよい。これは彼のレーベル発足前の2001年に初版がdiskUnionの力を借りてリリースした。それ以来24年、毎年の1巻リリースで経過で24巻、なんと十二支を二周したことになる。こうなると恐るべき延命のオムニバス・アルバムである。そして我がCD棚をみると2001から2024まで全て欠けるもの無く並んでいるという私も好き者なのである。彼のジャズ系のオムニバス・アルバムは、これに留まらず「For Jazz Audio Fans Only」16巻、「For Jazz Vocal Fans Only」7巻「For Jazz Ballad Fans Only」5巻「For Jazz Drums Fans Only」2巻と、合わせて54巻既にリリースしているのである。

 そして話は「Jazz Bar」に戻すと、主たる内容は世界各地のピアノ・トリオものが圧倒的に多い。その点は私の好みにピッタリであり、又どちらかと言うとヨーロッパ系が多いのもクラシックやトラッドの流れの因子の強いところに寄っていて、その点も私は大賛成なのである。ただ2001年の第1巻からしばらくは、まだその他のシリーズがスタートしていないのでヴォーカルものも入っている。

71woj1mmfhl_acw  スタートの2001年版(→)では、彼はオムニバスであることに面白いことを言っている「個人色は強く出す。社会一般のことなど考慮せず、とにかく好きなものをかき集める。そして虫眼鏡でのぞき、ふるいにかけ、あたかもマッケンジー河から砂金を取り出すごとく抽出してCDに収めるのである」と、そして「一曲一曲は砂金である。ゴールドである。・・・・以上のような性格が帯びたとき、はじめて普通一般のCDを飛び越えることがありうるのである」と。なかなか面白いではないかと、私もそれにお付き合いして24年、今年も巡り合えたことを喜んでいるのである。

 そもそも、私にとって新発見の好物が一番の目的であった。ここにすばらしさを知った曲のアルバムを入手したという事は、数えきれないぐらいあって、感謝してきたのである。さて、今年はどうであったであろうか・・・・・

(Tracklist)

1.Nightfall / Diego Imbert, Enrico Pieranunzi, Andre Ceccarelli
2.Den Vilsna Tomten / Tingvall Trio
3.Home / Joonas Haavisto
4.Solveigs Sang/ Henrik Gunde, Jesper Bodilsen & Morten Lund
5.Neena / Michel Bisceglia Trio
6.Grateful / Soren Bebe Trio
7.Room 93 / Marc Martin Trio
8.Overnight / Marco Frattini
9.Kansas Skies / Walter Lang Trio
10.Elle / Colin Vallon Trio
11.Deep Blue / Colin Stranahan, Glenn Zaleski, Rick Rosato
12.Valsa Para Julieta / Alexandre Vianna Trio
13.Au fil et a mesure / Dominique Fillon Augmented Trio

  以上の13曲、それぞれ異なったミュージシャンのリリースされたアルバムからの選曲であったが、近年は少々古いものも入ることも多くなった。とにかく、Audio的に注目のもの、Balladもの、Vocalものなどは、それらのシリーズが並行して動いていることや、ここ2000年以降、コロナ禍でアルバム作成が低調であったこと、又アルバム作成がCDとしてリリースしないことも増えてきたことなど、彼にとってもこのところは選曲対象が減少しているのではないかと推測するのである。
 そんなことなどで、なんと今回の13曲中7曲という半分以上が、実は私の持っているアルバムからの曲であった。最も趣向が似ているのであるからあり得ることであろうが、新発見を目的にしている私にとっては、ちょっと空しかったのである。

  当然注目曲は、おなじみのTingvall Trio (M2.), Joonas Haavisto (M3.), Michel Bisceglia (M5.), Soren Bebe Trio (M6.), Colin Vallon  Trio (M10.)のこの流れの常連ですね。私は既に聴いているものであって、寺島氏と共通であることを実感した。今回はそれが非常に多かったところだ。これらは当然、美旋律、哀愁などの世界でお勧めアルバムである。

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 さて、私がこのアルバムで新たに注目できたのは、まずスペインのMarc Martin Troの陰影感の曲(M7."Room 93" from 「Roaming」(2017, 上左))、イタリアのドラマーのトリオの Marco Frattiniの静の世界(M8."Overnight" from 「Empty Music」(2022,上中央))、 フランスのDominique Fillon Augmented Trio の聴くほどに味の出る曲(M13."Au fil et a mesure" from 「Awiting Ship」(2021,上右) ) 等であった。これらのアルバムはまずはサブスク・ストリーミングで既に試聴はしているが、更にアプローチしてみたいと思ったところだ。
 今年のニューアルバムからは、ここでも既に私は取り上げた寺島氏自身のレーベルのアルバムHenrik Gunde Trio『MOODS』(TYR-1127)のみであった。毎年のことではあるが年の締めくくりにふさわしい寺島靖国氏の『Jazz Bar 2024』を取り上げてみた。

(評価)
□ 選曲 : 90/100
□   録音 :   87/100 (全体的に)

(試聴) Marc Martin trio "ROOM93"

 

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2024年9月 7日 (土)

ヘンリック・グンデ Henrik Gunde 「Moods」,「Moods Vol.2」

デンマークのジャズ・ピアニストの北欧流美的哀愁世界とトリオ・ジャズの楽しさを描くアルバムが2枚リリース

   北欧・デンマークの2022年、2023年の近年の一手段である配信リリースによるアルバムが寺島レコードから装い新たにLPとCDでリリース。ピアノ・トリオとはかくあるべきと寺島靖国氏に言わしめるピアニストのヘンリック・グンデとイェスパー・ボディルセン(Bass)、モーテン・ルンド(drums)のトリオだ。そして何としてもCD化をと言うことであったようで、ここにその成果が結実。
 私自身は北欧のピアニストが描く世界には共感するところが多いのだが、このグンデの作品は過去に実は入手の記憶がない。寺島靖国の推薦を知ってストリーミング・サービスにより、最近この過去の配信アルバム聴いたところであった。彼らが織り成す演奏は「北欧浪漫派ならではの繊細にしてエレガントな奥深い哀愁風情をしっとりと描いてくれる」というところで、高音質のアルバムを期待していたところである。LPが今や再人気だが、私は音質的にも価格的にもCD軍配派で、CDで購入。
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 ヘンリック・グンデ・ペデルセンHenrik Gunde(→)は、1969年にデンマークのエスビヤーで生まれたジャズピアニストだ。彼はデンマークのジャズシーンで誰もが知る存在のようだ。デンマークのラジオビッグバンドや彼自身のプロジェクトGunde on Garnerなど、さまざまなフォーメーションで演奏活動をしている。このトリオ・プロジェクトは、ジャズの伝説的存在であるエロール・ガーナーのスタイルに敬意を表したもので、特にグンデは、ガーナーのスイングとエネルギーをパフォーマンスに呼び起こす能力で称賛されている。
 イェスパー・ボディルセン(Bass ↓左)は、1970年デンマーク-シェラン島のハスレヴ生まれ、モーテン・ルンド(drums ↓右)は、1972年デンマーク-ユラン半島のヴィボー生まれと、デンマークの実力派トリオである。

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 さて、そのアルバムは下のような二枚で、ジャケも配信時のモノからリニューアルされている。

<Jazz>

Henrik Gunde 「Moods」
Terashima Records / JPN / TYR1127 / 2024

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Henrik Gunde (piano)
Jesper Bodilsen (bass)
Morten Lund (drums)

(Tracklist)
1. Blame It on My Youth
2. My Funny Valentine
3. Solveigs Sang
4. Kärlekens ögon
5. I Will Wait for You
6. Bye Bye Blackbird
7. Moon River
8. Softly as in a Morning Sunrise
9. Fanølyng

 M1."Blame It on My Youth" 冒頭から光り輝くが如くの欧州でもイタリア風とちょっと違った瑞々しい端正なるタッチのピアノの音が響き、北欧独特のどこか哀感のある世界が展開。いっやー美しいですね。
 M2."My Funny Valentine"、M5."I Will Wait for You、M6."Bye Bye Blackbird"、M7."Moon River"、M8."Softly as in a Morning Sunrise"といった日本でもお馴染みのスタンダード曲が続く。これだけポピュラーだと、特徴をどのように原曲を大切にしつつ表現するかは難しいところだと思うが、メロディーを大切にしたピアノと暴れずぐっと曲を深く支えるベースが印象的。そしてM5.は"シェルブールの雨傘"ですね、ドラムスが繊細なステックによるシンバルなどの音を軽快に流し、洗練されたピアノによるメロディーは、適度な編曲を加えて、ベースの音と共に静かな躍動感を加えて、聴くものに又新鮮な感動を与えてくれる。M7.はぐっとしっとり仕上げ、M8.は、"朝日のごとくさわやかに"ですね、詩情の世界から一転しリズミカルに、軽妙な味を3者のテクニックで楽しませ、ピアノとベースも珍しく低音部でのインプロも披露し、ドラムスも最後に出る幕を飾ってジャズを楽しませる。
 録音もただただ音で圧倒するのでなく、繊細に描くところが見事で、寺島靖国が欲しがるアルバムだということが、しっかり伝わってくる。

       * * * * * * * * * * *

<Jazz>

Henrik Gunde「Moods Vol.2」
Terashima Records / JPN / TYR1128 / 2024

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Henrik Gunde (piano)
Jesper Bodilsen (bass)
Morten Lund (drums except 1)

2023年Mingus Records作品

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1. Introduction (p & b only)
2. Ol' Man River
3. Fever
4. The Windmills Of Your Mind
5. Tennessee Waltz
6. From E's Point Of View
7. Golden Earrings
8. Olivia

  さて続編であるが、1stがあまりにも見事であったので、こちらでは少々細工が出てくるのかと思いながら聴いたのだが、ここでもスタンダードと彼のオリジナルの曲との混成によって成り立たせる手法は変わっていない。アルバムはグンデのピアノによる導入曲の後、M2."Ol' Man River"のカントリーつぽい牧歌的哀歌でスタートする。
 とにかく誰もが知っているポピュラーなM5."Tennessee Waltz"を如何に聴かせるかが、寺島靖国に言わせても大きなポイントだったようだ。それだけ有名なのだから、聴く方も何かを求めるわけで、名演でもアレンジが原曲から大きく離れてちょっと残念だということも確かにあり、そんな状況下で適度にジャズ化し適度にメロディーを聴かせ、なかなかうまく処理している。まあその点は心得た処なんでしょうね。
 戻ってM3."Fever"だが、北欧の詩情性アルバムにこの曲というのは驚いた。しかし前後の曲を聴くとこの流れは必要だったことが納得できる。アルバムというのは曲の配列によるメリハリが重要なのだ。
 その他 M4."The Windmills of Your Mind"の"微妙な心境での希望"と M7."Golden Earrings"の"展望"といった未来志向の暗さから脱皮したスタンダードに加え、グンデ作曲のM1."Introduction,M6."From E's Point of View",M8."Olivia" の3曲、これらはやはり透明感あふれるピアノの旋律美にメロディ尊重派を感ずるし、ベース、ドラムスは、単なるサポート役でない対等なインタープレイを演ずるジャズ・グルーヴ感も印象的。1stから、一歩展望ある世界に踏み出した印象の2ndアルバムだった。

 究極、ジャズの難しい面の押し売りは感じさせず、ピアノの美しい世界に、トリオとしての味をうまく加えたアルバムと言って良いだろう。ヨーロッパ耽美派ピアノ・トリオの典型と現代欧州流解釈のトリオ・ジャズの楽しさを描いている。グンデの演奏にはユーロ系の北欧独特の詩情性と抒情性が独特の繊細さで描かれるが、けっしてそれだけでないジャズのハード・バッブ系のグルーヴ感を忘れないところが、やっぱりキャリアなんだろうと感じさせられた。
 

(評価)
□ 曲・演奏 :  90/100   
□ 録音        :  88/100

(試聴) 
"Blame It on My Youth" from「Moods」

*
" Tennessee Waltz"from 「Moods Vol.2」

 

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2023年12月28日 (木)

寺島靖国 Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2023」

今年もこのアルバムで締めくくり・・・
本来のピアノ・トリオが主体で、聴き応えあり

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2023」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1119 / 2023

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  今年も締めくくりは、やはりこの寺島靖国プレゼンツとしてのコンピレーション・アルバムだ。この「Jazz Bar」シリーズは年一回のリリースで、今年もこの12月にリリースされました。なんとスタートが2001年で、今年で23年目という事になる。私も飽きずによく聴いてきたと思うのだが、しっかりこれで23枚が並ぶことになった。

Img1  その他このように寺島靖国(左)の名を冠してのコンピレーション・アルバム・シリーズで今年既にリリースされているものは、「For Jazz Audio Fans Only Vol.16」、「For Jazz Vocal Fans Only vol.6」、「For Jazz Ballad Fans Only Vol.4」があり、4種があった。しかしここまで続く彼の選曲シリーズも、おそらく世界でも稀有であろうというより、これ以上のものは無いだろうと思う。その他「For Jazz Drums Fans Only」もあるんですが、今年も出ませんでしたね。

 ジャズの楽しみ方は人それぞれですが、なんといっても私が寺島氏に協調するのは、やはりピアノ・トリオをベースとした⼼の琴線に触れるような哀愁を帯びたメロディーを重要視するところですね。それによって23年間もこのシリーズにお付き合いしているんです。近年は、ただ若干共通するところもある「Ballard Fans Only」があったり、もう長く並行してリリースされている「Audio Fans Only」との関係もあって、少し中身の充実感が下がったような気もするので、又一方若干市場からの要望への妥協もあって、彼自身の色が少し薄れてきたようにも思うので、今年はどうかなぁーーと、思うところがあるんです。

 さて、今年は?・・・以下の内容でした。

(Tracklist)

1 El dia despues / Manel Fortia
2 Nightfall / Enrico Pieranunzi / Charlie Haden / Paul Motian
3 Close to Silence / Claes Magnet Trio
4 Traumerei / Trio X of Sweden
5 In Retrospect / Bernt Moen Trio
6 Echoes from Syria Part #1 / Owls
7 Romancing / Chris Lomheim Trio
8 Condolance / John Venkiah Trio
9 Le Plat Pays / Dan Tepfer Trio
10 Hommage a A. Piazzolla / Creative Art Trio
11 In the Days of Growing Darkness / Carole Nelson Trio
12 Symphony No.8 / Nesin Howhannesijan Trio

  私がまず喜んだのは、今年は珍しく私が持っているアルバムは一枚のみだったことです(Trio X of Sweden「Trāumerei」)。と、いう事は私にとって新しい発見がある可能性が高いという事ですね、ただ昔のように、近作が少なくなっていますね。それはそうです、他のシリーズとダブるわけにもゆきませんから、他で紹介してしまっているという事もある訳です。これがちょっとシリーズものが増えた結果の欠点かも知れません。それと近作が、かってのように多くリリースされていないですね。これもちょっと残念なところです。

 今年のテーマは、どうもジャズは「名曲無くして名演あるのみ」と言うつまり「名演が名曲を生む」という見方から・・ちょっと見方を変えて「名曲が名演を生む」といったところに逆説的にアプローチしたところにあるようだ。それも決してないわけではないと思う節もあって、これも面白いと聴いた訳である。

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  その為か、今年はクラシックの登場が2曲あった。それは Trio X of SwedenのM4."Traumerei"(上左) シューマンですね。それとNesin Howhannesijan TrioのM12."Symphony No.8"(上右) シューベルトのジャズ演奏だ。私はこれは全く否定しません。それは私自身がジャズを聴くようになったのはジャック・ルーシェの「Play Bach」なんです。思い起こせばもう50年以上前の話で、1960年代にクラシックと共に、このバッハのジャズ演奏に惚れ込んだのです。そして又プログレッシブ・ロックにもまった私が、音楽三昧になったきっかけでもあったわけです。そしてキース・ジャレットのファンにもなってゆくわけですが、そんなことからも、私自身はクラシックのメロディーであれ、スタンダードのメロディーであれ、そのピアノ・トリオの原曲の旋律を生かしてのインプロヴィゼーションの演奏の世界に興味があるんです。その点が、寺島氏の注目点に重なってくるんです。

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 今回のアルバムではその他、ベース奏者がリーダーのピアノ・トリオであるM1. El dia despues / Manel Fortia「Despertar」(上左)は、沈んでちょっとやりきれない哀愁が見事に描かれていた。
 Dantw さらに M3. Close to Silence / Claes Magnet Trio「Close to Silence」 (上中央)の「静」の世界は美しさと優しさが満ちている。
 そして M9.Le Plat Pays / Dan Tepfer Trio「Five Pedals Deep」(上右) のぐっと深く物思いにふけるムードはただ暗いだけでなく、哲学的な世界を感じて素晴らしかった。リーダーのピアニストのDan Tepfer(右)及びこのトリオは少々別のアルバムを探ってみたいと思ったし、これからもチェックしていってみたい。
 こんなところが興味深く印象に残った。

 全体に選曲されたアルバムは録音は良い方のものを選んでいるように思う。ただリリース年月がちょっと古かったものが多かったのが残念だが、まあ何とかアプローチして見たくなったので、今回は良かったという事と結論付けたい。

(評価)
□ 選曲 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
El dia despues / Manel Fortia

 (ご挨拶)
 このブログを続けて17年になりますが、何とか今年もそれなり書いてくることが出来ました。もともとはカメラ・写真、絵画、映画、音楽、オーディオなどの話題で、私の記録みたいな性質のものでスタートしましたが、写真関係は別室( 参照 : blog「瞬光残像」http://photofloyd.exblog.jp)を設けてから、圧倒的に音楽関係、それもジャズが多くなりました。平均して5日に1回の掲載ですので、それでも1年では70回以上になります。考えてみるとよく続けてきたなとも思います。音楽はロツクは減りましたが、クラシックは相変わらず聴いていますので、来年は少しはそのテーマにもと、ふと思っているところです。
 いずれにしても、今年1年コメントを頂いた方々をはじめ、読んでいただいた方々に感謝申し上げます。又来年もよろしくお願いします。 

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2022年12月27日 (火)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio「Portrait in Black and White」

カルロス・ジョビンをガラティ世界にて蘇えらせる

<Jazz>

Alessandro Galati Trio「Portrait in Black and White」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1109 / 2022

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Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Andrea Beninati (drums)

Artesuono Recording Studios (Italy)
Recorded by Stefano Amerio

Ag5xw  アレッサンドロ・ガラティの新作は、なんとボサノヴァのアントニオ・カルロス・ジョビン集。ちょっとピンとこないのだが、果たしてガラティの手によるとどうなるのか、まさに興味津々のアルバムの登場。
 ガラティは、私の最も愛するイタリアのジャズ・ピアニスト、彼に関してはここで何回と取り上げているが、それはアルバム『TRACTION AVANT』(Via Veneto Jazz/1994)から始まっての歴史ではあるが、近年寺島レコードとの契約によって矢継ぎ早にアルバム・リリースがある。

 当初、寺島靖国はこの作品をリリースすることに前向きではなく、寺島レコードとしてジャズ作品のリリースを望んでいた。しかし、送られてきた音源を聴いてその思いは一転し、"アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲が、ジャズ・ピアノ・トリオ作品として成立していることに驚き、その出来栄えに感嘆したのだ"・・・と言うのがこのアルバムのリリースまでの経過らしい。
 確かに、イタリアのピアノ・ジャズ名手といえども、ユーロ・ジャズのまさに中軸にあって、ジャズとも言えないボサノヴァとは聴き手を裏切ってしまうだろうと心配するのは当然である。
 しかし、冒頭の曲から驚きはスタートするのだ。

(Tracklist)

1. O Que Tinha de Ser
2. Modinha
3. Samba de Uma Nota S
4. Inūtil Paisagem
5. STinha de Ser Com Voc
6. Fotografia
7. Dindi
8. Vivo Sonhando
9. Eu Sei Que Vou Te Amar
10. Retrato Em Branco e Preto
11. Por Toda a Minha Vida
12. Luiza

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   M1."O Que Tinha de Ser"から、完全に裏切りというか大歓迎というか・・優しくリリカルな奥ゆかしく繊細ながらしっかり描くピアノのガラティ・ムード満開で、どこにボサノヴァがあるのやら、メロディも初物感覚でジョビンもおどろきの世界ではないでしょうか。いっやーーいいムードだ。
 そして次に聴いていっても、ボサノヴァ感覚のラテン・ムードは完全に消え去られ、そこにあるのはガラティの優しく軽やかさから一方耽美なやや陰影のあるピアノの調べに、ベースがしっかり支え、ドラムスのシンバル音が響く。ああ見事なユーロ・ピアノ・トリオ作品だ。
   M4."Inutil Paisagem"ではガラティの前衛性もチラッとみせ、M9."Eu Sei Que Vou Te Amar"は、低音のベースの語りがピアノの軽さと対照的で面白い。
 M10." Retrato Em Branco e Preto"は、ドラムスのスティック・ワークが繊細の美、ベースの低音の響き、ピアノの流れる演奏が盛り上がる。
 M12."Luiza"は、ピアノの静かな旋律美で幕を閉じる。

 今回のトリオはベースはグイド・ツォルン(上左)でしっかりと低音でリズム、時にメロディーとガラティの世界を支えているし、ドラムスはアンドレア・ベニナティ(上右)が、これも私の好きなシンバル音の多様で堂々と渡り合って演じている。トリオ作品としての価値も高めている。
 とにかく、私がジョビンとして聴いたことがあるなと解ったのは、M3."Samba de Uma Nota S"だけだが、かってのセルジオ・メンディスにたたき込まれたメロディーが頭に浮かんだだけで、他は完全にガラティ・メロディとして聴き入ったことになった。

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 録音に関しては、やはり名手ステファノ・アメリオが担当し、なんとミックス、マスターはガラティというのには驚いた。とにかくベースがしっかり中央に陣取って、やはりピアノも中央だがやや左右に広がり、そしてドラムスは更に広く左右にシンバル音を響きかせ、トリオ・メンバーの音がしっかりと聴き取れる。彼の技はここまで広がっているようだ。見事な粒立ちの良さと繊細な美しさを描く好禄音盤。この年末に来て今年のベスト盤最有力候補の強力なアルバムの登場だ。

 

(評価)
□ 選曲・編曲・演奏  95/100
□ 録音        95/100

(試聴)

"O Que Tinha de Ser"

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2022年8月31日 (水)

寺島靖国シリーズ「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」

はずし物を掴んだ感の私の思う事・・・

<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1105 / 2022

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  さて、寺島靖国選曲のオムニバス・コンピレーション・シリーズものでは新しい方の「ジャス・バラッド」ものの第3巻(第1巻は2019年リリース)が登場した。この寺島シリーズものは、ここでリリースの度に全て取り上げるという事はないのだが、今回はどうも私的には(あくまでも私にとって・・と、言う事で誤解のないように)、久々に外れ物を掴んだという事になった。

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 そもそも寺島靖国のコンピレーションものは「JAZZ BAR」が最も原点というか、最初のシリーズものと思うが、これは2001年から毎年リリースという21巻となるロングもので、今や確固たる地位を築ている。そしておおよそ年一巻のペースで、その他は「for Jazz Audio Fans Only」(14巻)、「For Jazz Vocal Fans Only」(5巻)、そしてこの「For Jazz Ballad Fans Only」(3巻)、更に「For Jazz Drums Fans Only」(2巻)とリリースされていて、おそらくこれらをこなすだけでも大変になってきているのではと、ふと思うのである。

  私としては、まあ「Jazz Bar」と「for Jazz Audio Fans Only」の2シリーズでOKと思うのだが、その他も興味がないわけでなく結局のところ購入しているという事になって、こうして数えてみると目下全45巻全て持っているという形になってしまっている(やや、これで約十数万円になりますね)。

バラッド(バラード)とは・・・・
 その中で今回最も直近のものがこの「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」なのだが、名前の通りジャズ・バラッド曲の目ぼしいものを集めている。そもそも「バラッド曲」とは何ぞやという事だが、ものの本によると「ミディアム・スローからスローなテンポによるゆったりとして叙情的な演奏」という事になるようだが、そもそもかってはイギリスでは舞踏曲を指す言葉であったが、やがて一般的にはロマンティックな歌詞の民謡を指すようになり、19世紀には上流社会で歌われた感傷的な歌曲を指すようになったという。そして現在は、「ミディアムからスロー・テンポのロマンティックで感傷的なラブ・ソングを一般的にはバラッド(バラード)と呼んでいる」ということにまとめられるようだ。

 さてそこで、このアルバムの紹介だが・・・

(Tracklist)

01. Goodbye / Don Lanphere And New Stories
02. Joshua Fit the Battle of Jericho / Vincent Nilsson Quartet
03. End of a Love Afaier / Toni Sola & Ignasi Terraza Trio
04. What Are You Doing the Rest of Your Life / Eric Alexander Quartet
05. Emigrantvisa / Joonas Haavisto Trio
06. I'll Close My Eyes / Ian Hendrickson-Smith
07. The Nearness of You / Clark Terry
08. La Mer / Simon Chivallon
09. I Got It Bad (and That Ain't Good) / Steve Davis
10. I Will Wait for You / Karin Hammar
11. I Surrender Dear / Dan Barrett Trio And Quartet
12. We'll Be Together Again / Gary Smulyan
13. A Ghost of a Chance / Oliver Jackson

 このシリーズは、寺島靖国選曲の究極原点"聴きやすく親しみやすいジャズ"ということでの「For Jazz Ballad Fans Only」のシリーズ3作目だ。バラッドを取り上げたというコンピレーション・アルバムだが一通り聴いてみると、これは今回は私にとってはどうも外れものだった。その理由の一つは、ほぼ選曲されたものは"ラッパもの"がほとんどあったということ。この"ラッパもの"というのは実は表現がよくないが、私流にはサックス(ts,as, bs)、トランペット(tp)、トロンボーン(tb)などを指しているんですが、所謂管楽器ですね。私の言うところは、昔のビック・バンドの煩(うるさ)いイメージものが好まないという事なんですね。しかし、バラッド調の温かみのあるサックスとか、ミュートの効いたトランペットの深淵なる音などは好きなんです。このあたりは私個人的な感覚の世界ですからお許しを。つまり普遍的な話ではないというところです。

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 そんな中で、M1."Goodbye"(上左)、M4." What Are You Doing the Rest of Your Life "とtsの登場で、バラッドは解るしムードもある。あとは好みですね・・・私はピアノの方が好きなんです。従ってピアノ・トリオものにどうしても期待するんです。M4.でも途中で響くピアノの調べの方に魅力を感ずる。
 M2."Joshua Fit the Battle of Jericho "のtbそしてM3." End of a Love Afaier "のtsは、私にはバラッドには聴けない。
 M5." Emigrantvisa ", M8." La Mer"にようやくピアノ・トリオが登場するが、M5.のJonas Haavisto Trio(上中央)は私のお気に入りトリオだが、彼らのコンテンポラリー・ジャズでのスロー演奏といっても所謂バラッドという世界のものでないし、M8.もバラッドとは私は言わない。
 M6." I'll Close My Eyes "のas、M7." The Nearness of You"のtpもバラッドものとして納得しない。
   M9." I Got It Bad"、M10." I Will Wait for You "(上右)、M11." I Surrender Dear "はtbものだが、M9.はロマンティックな感傷など感じないし、M10.は女性ヴォーカルものを主体にしておけばいいのに、後半のtbとtpの共演などバラッドものとは別物。M11.も私にはバラッドに聴けない。
 M12." We'll Be Together Again "(下左)は、bsの登場、これは好みの問題だ。
 M13." A Ghost of a Chance "(下右)はts(Danny Moss)のバラッドものでこのアルバムの終わりをしめている。

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 と、いったところであくまでも私的には選曲もバラッドとしては疑問が多かったし(バラッドというもの自体の解釈が異なるのかも)、こうして管楽器主体の曲群は私のピアノ・トリオ好みには少々合わなかったというところ。聴きようによっては、寺島靖国のこうしたシリーズの乱発によって、ちょっと充実感が薄れたのかもと思わせるところであった。

(評価)
□ 選曲      :   80/100
□   録音    :   85/100

(試聴)

Don Lanphere "goodbye"


*
Karin Hammar "I will wait for you"

 

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2022年3月24日 (木)

アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio 「EUROPEAN WALKABOUT」

トラッドをピアノ・トリオで・・・そこには美旋律世界

<Jazz>
Alessandro Galati Trio 「EUROPEAN WALKABOUT」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1100 / 2022

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Alessandro Galati (p)
Guido Zorn (b)
Andrea Beninati (ds)
Recorded on Jan.18, 2022 at Artesuono Recording Studio
Recorded,mixed & mastered by Stefano Amerio

 驚きましたねぇーー、昨年から出る出るといっていて延期になって待たしていたアルバム、ようやく発売されたアレッサンドロ・ガラティの新作。見てみると録音がミックス・マスターリングは期待のStefano Amerioはそのまま期待通りで良いのですが、なんと録音日が今年2022年の1月18日となっていて、これなら去年の年末12月や今年1月に出るわけないですね。これでも早いくらいです。

 それはそれとして、ガラティは私の期待のミュージシャンですが、寺島レコードとの関係が出来てから、新作のリリースが早いですね。前作は昨年の『SKYNESS』(TYR-1098)ですからほぼ半年です(録音は2017年で、4年前ですが)。そしてトラッドのピアノ・トリオによる演奏集だ。このリリース目的が、おそらく彼がアルバム作りをしたいとミュージシャンとしての情熱と目さすところの集積というのでなく、希望に答えての演奏集といったところでしょう。その為、今回のアルバムで彼のこんな意思が見えてきた・・というのでなく、我々に楽しませてくれるという範疇のものなんでしょう。そんなところで実は彼の『Traction Avant』(vvj-007/1995)以来惚れ込んで新作に期待してきた私は、若干期待度というのがちょっと違った姿勢でこのアルバムに接しているのである。

 さて、このアルバム、やっぱり寺島氏からの要求に答えたものだろうとのことは、彼のライナー・ノーツを見ても想像できる。勿論、ガラティも決して今回のトラッド集は否定するものでなかったと思うが、果たして彼が今ミュージシャンとして、そしてアルバム造りとしての意思であったかどうかは疑問のところだ。そんなことも想像しながらこのアルバムを聴くのである。
 そして"際立つ美しいメロディ、細部まで行き届く繊細な表現力。哀愁の美旋律は歌心溢れる音楽世界へと誘ってくれる"という宣伝文句そのもものの美しいピアノ・トリオ作品である。

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01. Love in Portofino
02. Verde Luna
03. Dear Old Stockholm
04. Almeno tu nell'universo
05. Last Night a Braw Wooer
06. Cancao do Mar
07. Danny Boy
08. The Water is Wide
09. Liten Visa Till Karin
10. Parlami d'amore Mariu

 「トラッドは外れナシの美曲」と寺島氏は語るように、このアルバムは文句なしの哀愁の美旋律を十分堪能できるトラッド集に仕上がってますね。冒頭のM1." Love in Portofino"から聴き惚れますね。
  しかしガラティ・ファンの私にとっては期待が大きいだけ・・・・ピアニストとして旋律を愛し奏でる"メロディ至上主義"と言われてはいるガラティですが、過去の作品を聴くと必ずしもそれだけではない。彼の目指すところ、いわゆる美しい旋律の重要性と同時にミュージシャンとしての演奏をどこまで極められるかという実験的な世界も作ってきた。そんな意味からは若干虚しさも感ずるのである。

 例えば、彼の作品群の中でもどちらかというと異色に入る『JASON SALAD!』(VVJ-014/2010)の単なる美旋律というよりジャズの奥深さを探る世界とか、又『UNSTANDARD』(VVJ-068/2010)のあの美しい"CUBIQ"のオーボエ、ギターはじめメンバーとのそれぞれの描くところを一つの曲の中でまとめ上げてゆくピアノプレイ。更に『WHEELER VARIATIONS』(SCOL-4024/2017)のインタープレイの真迫のスリルなど、いわゆるジャズ・ピアニストとしての描く世界の極みが尽きない。そんな意味では、今回のアルバムは、美しく演奏するところを聴かせると決まっての曲作り、それぞれの美は素晴らしくても、どこか彼の挑戦的演奏が見えないところがちょっと寂しい。

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   しいて言えばM6."Cancao do Mar"は、ファドで有名なポルトガルの伝統的な歌謡曲のようだが、私にとってはようやくこの曲でトリオとしてそれなりに作り上げたという感じがするのだ。つまり、アルバム全体的に、ちょっと感じられる"ガラティの美旋律演奏にベース、ドラムスが合わせている"というような曲作りでは若干むなしい。私的希望として、もっとトリオとなると、三者それぞれの解釈による演奏と協調が魅力的なのであり、ある意味ではバトル的な感覚での演奏から協調へと向かい曲仕上げを高めてゆくところが聴きたいのであり、そのような流れの中でふと現れる美旋律の美学がガラティの得意とするところであり、聴く者にとっても感動が大きい。ミュージシャンというものは、期待されることは当然嬉しいが、作品に一つの枠が決められてのアルバム造りは、実はそんなに納得しているものでもないのだ。

 トリオ三者にてのスリリングなインタープレイのジャズ美学は、ガラティにもともとある一つの世界であって、その特徴への私の期待があるのである。今回、前作と異なるメンバーのグイド・ツォルン(Bass 上左)とアンドレア・ベニナチ(drums 上右)との演奏準備は十分あったのかどうか、もっと二人は我を出して頑張ってもよかったのではないかと、特にツォルンは遠慮っぽかったように感じた次第。
 しかし、そんなことより"郷愁が感じられ美しい情緒あるピアノがとにかく聴ければよい"ということであれば、やっぱりこれは素晴らしいアルバムである。まあ、テーマがそうゆうことであるので、ガラティ自身も職人ですから難しいことなしで演じたのであろう。したがってこれで実際のところ正解なのかもしれない。

 今回も、録音そしてミックス、マスターリングとStefano Amerioが担当していて、素晴らしいリアルにして繊細で美しくミュージシャンの演ずるところをしっかり描き聴かせてくれるところは見事であった。

(評価)
□ 曲、演奏 :  88/100
□   録音   :  90/100

(視聴)

私のこのアルバムでは一押しの" Cancao do Mar"

 

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2022年2月22日 (火)

ハリー・アレン Harry Allen 「My Reverie」

テナー・サックスの
ウォーム・リラクシングな憂い有る詩情演奏の結果は如何

<Jazz>
Harry Allen 「My Reverie by special request
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1102 / 2022

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Harry Allen (tenor saxophone)
Dave Blenkhorn (guitar)
Mike Karn (bass)
Quentin Baxter (drums)

  寺島レコードからハリー・アレンHarry Allen(1966年ワシントン生れ)の登場。私はサックスものはそう聴かないのだが、寺島レコードの音に拘った録音ものとして聴いてみた次第。
 ハリー・アレンは、歌心あるサックス・プレイということで定評のある訳だが、これはそのまま実現したバラード集。選曲も寺島靖国によるものと言うことで、ゆったりとしたメロディックな哀感を訴えた“歌う”サックスがたっぷり盛り込まれている。日本人好みの曲が多い構成。
 バンドはサックスにギター、ベース、ドラムスとのカルテットのパターンで演奏されている。

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01. The Rose Tattoo
02. Love, Your Magic Spell Is Everywhere
03. La Rosita
04. Boulevard Of Broken Dreams
05. Carioca
06. My Reverie
07. I Surrender Dear
08. Close As Pages In A Book
09. Lilacs In The Rain
10. St. James Infirmary (ts & g duo)

 

 

 

   まあとにかくテナー・サックスの音がリアルでファンにはたまらないでしょうね。そしてギター、ベース、ドラムスも完全にメロディーはサックスにお任せのサポート・スタイル。それでも少しはと、ギターが静かな夜のややクールな憂鬱感のある世界を描いている程度が聴きどころか。
 まあバラード集だから、しっとりとしかも抒情的にしてムーディーなサックスの響きはアレンの得意とするところにあって、全曲一貫してそれを通している。ここまで徹底されると、1曲ぐらいは暴れて、キターやベースと絡んでの曲のアクセントが欲しいと思いつつも、それも無く10曲が終わってしまった。

 実は、こんな昨年のコロナ禍の中であって、録音はリモートで行われていてレコーディングはそれぞれのアーティストが行うというスタイルだったようだ。従ってお互いのアドリブ入りのバトルなんてとても考えられるところでなく、特にリズム陣はアレンのサックス尊重擁護にまわっての演奏となったのだろう。そこが実はジャズとしての面白みに若干欠けたところなんだと思う、致し方ないですね。
 又一方、選曲は完全に日本向けとして聴き慣れたものになっている。ムードもサックス・バラードものということで、ミッド・ナイトの世界にぴったりが続くが、最後のM10."St.James Infirmary"あたりは、寺島氏の要求の曲だと思うが、夜の酒場ムードとぱ、ちょっと異なっている。しかしサックスとギターのデュオによるものだが、基本的にあまり大きな変化はなく、ただただなるほどこうなるのかとそのバラード演奏を聴いているのである。

(評価)
□ 演奏 85/100
□ 録音 88/100

(参考視聴) Allen と Blenkhorn のデュオ

 

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2021年12月23日 (木)

寺島靖国「Yasukuni Terashima Presents シリーズ」取り敢えず順調に

今年も楽しんだコンピレーション・アルバム

 今年も残すとこ10日を切ってしまいました。益々歳のせいか一年が早い、コロナ禍で活動が抑制されているためか、行事が少なかったのも影響しているかも知れない。
 例の寺島靖国のコンピレーション・アルバムも取り敢えず順調にリリースされた。特に「Jazz Bar」シリーズは2001年にスタートして21年続いているわけで、私の棚にもずらっと21枚並んでいて、なんとも偉大なシリーズになっている。とにかく日本にはジャズ・ファンがそれだけいると言うことでも有り、又寺島靖国氏の選曲が日本人の心をくすぐるモノを持っていると言うことだと思う。まあ私も好きな方で、結局のところ毎年仕入れてきたことになる。
 取り敢えず今年の3シリーズをここに取上げておきたい。


<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2021」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1101 / 2021

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(Tracklist)

1.Turnpike / Eple Trio
2.Io Te Vurria Vassa / Roy Powell Trio
3.Chez Laurette / Serge Delaite Trio
4.Madrugada / Michel Sardaby Trio
5.Hatzi Kaddish / Emmet Cohen
6.Minnesota Bridge / Bojan Assenov Trio
7.Havar Hedde / Dag Arnesen
8.Susan-Lee / Peter Auret Trio
9.Random Journey / Lisa Hilton
10.Moving Freely / mg3(Martin Gasselsberger Trio)
11.Ex Ego / Leszek Mozdzer/Las Danielsson/Zohar Fresco
12.Love Letter to Christiane / Ralf Ruh Trio
13.When Spring Comes / Frankfurt Jazz Trio

  私の場合は、毎年このコンピレーション・アルバムを聴いて、うーんこれは良いと思ったものに目を付けるのだが、寺島氏の選曲は結構知らないモノを紹介してくれるので有難い。私自身もピアノ・トリオ好きでそんなところも一致している。
 しかし、なかなか毎年の作業も大変そうで、今年の「2021」は結構古いものも多く、ちょっと残念でもあったが、私の所持しているアルバムは二枚であった。やはりもう少し当初のように最新作にアプローチして欲しい。
 特に気に入ったのは、M1 、M6、 M8 で、さらに又それなりに良かったものとして、M2、 M5、 M7 などなど、楽しめた。
  M8."Susan-Lee " のPeter Auret Trioが、2011年ものだがちょっと気になっている。

 


Yasukuni Terashima Presents 「for Jazz Audio Fans Only Vol.14」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1099 / 2021

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(Tracklist)

1.Orbiting [Mats Eilertsen Trio]
2.Due Passi Nel Mare [Alboran Trio]
3.Pool Boy - Swim IV [Florian Ross Trio]
4.Ragtime [Audun Trio]
5.Les Sebots [Adrian Frey Trio]
6.How Deep Is The Ocean [Giovanni Mazzarino Quartet]
7.Evanescence I [Casimir Liberski]
8.Fiery [Peedu Kass]
9.End of September [Tim Allhoff Trio]
10.Nardissism [Olga Konkova Trio]
11.Norr [Tingvall Trio]
12.I Fall in Love Too Easily [Peter Rozsnyoi Trio]

  この今年の「Vol.14」は、既に紹介しているが・・・・・
  このシリーズも14年と長く続いて14作だ。実は私はこのシリーズに一番気合いが入っていて、毎年新発見があって楽しみにしている。ただし今作に選ばれた曲が納まっているアルバム四枚は、既に持っているものであって少々残念。

  やはりジャズといっても私もオーディオ・ファンと言えるのか、興味あるトリオなどの小編成モノは、その音がかなり気になり、なかなかの名演奏も音が悪いと興味半減である。このシリーズで紹介されるものは、オーディオ・ファンとしても名の通っている寺島氏の推薦するものであって、結構納得しているのだ。
 冒頭のM1."Orbiting "のMats Eilertsen Trioとか、M2."Due Passi Nel Mare "のAlboran Trioなどは、、過去に既に私がこのブログで取上げたモノだが、ほんとに素晴らしい。
 未聴だったもので、M7, M8, M12等が今年は気になった。
 M10(Olga Konkova Trio)、M11(Tingvall Trio)は、やはり過去にここで取上げているが、好録音、好演奏である。

 


Yasukuni Terashima Presents 「for Jazz Ballad Fans Only Vol.2」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1097 / 2021

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(Tracklist)

1.Ralph Moore Quintet / It Might as Well Be Spring
2.Cliff Monear / Alone Together
3.George Masso All Stars / Summertime
4.Roy King / Reverie
5.Mark Nightingale / Close as Pages in a Book
6.The Kevin Hays Trio / Beautiful Love
7.Harry Allen / A Nightingale Sang in Berkeley Square
8.Albert "Tootie" Heath / Charade
9.Kai Winding Septet / The Party's Over
10.Guilhem Flouzat Trio / There's No You
11.Spike Robinson / Ghost of a Chance
12.Lisa Hilton / Willow Weep for Me

 バラッドものは、やっぱり私の好みの世界、従ってこのコンピレーションものも楽しみにしているのだが、2年ぶりの登場だった。
 今回は珍しく冒頭からRaiph Mooreとテナー・サックスものが登場する。寺島氏も本質的にはピアノ・トリオ派だが、テナーものもというファンからの要望もあったらしく、今回はその他にも登場する。私はサックスは、ソフトな演奏なら良いのだが、少々うるさい感覚になるとネガテイブになってしまう癖がある。
 結局、サックスの他、クラリネット、トロンボーンなどの登場もみるものが5曲ぐらいあって、このシリーズはまだ二作目だがピアノ・トリオものの多い寺島選曲としては珍しい。それでもやはりソフトなムーディーな演奏が主力でよかった。
 まあ、それなりにバラード調の曲と言うことで、私としては楽しめる曲が選ばれているコンピレーション・アルバムである。

 

(参考視聴)

"Eple Trio Live"  (私のお気に入りのTord Gustavsen もお祝い参加している映像)
  3分14秒にTord Gustavsenのソロ・ピアノからスタートするが、3分55秒から10秒ほど異音がでますので注意

*

"Due Passi Nel Mare / ALBORAN TRIO"

 

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