寺島靖国 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.8」
ジャズ・ヴォーカルは、もはや女性の独壇場
<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents「For Jazz Vocal Fans Only Vol.8」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1133 / 2025
Producer : 寺島靖国
Remastering Engineer : 吉田 綾
Distributed by disk union
このジャズ・ヴォーカル曲集のコンピレーション・シリーズも、もう8巻目ですね。そもそもの出発は2016年でしたかね、毎年必ずというペースでもないのだが、それに近いペースでリリースしてくれているのは嬉しいし、応援したくて何時も購入しているアルバムだ。
しかし考えてみるとジャズ・ヴォーカルという分野は圧倒的に女性が占めていて驚きです。音楽の愛好家は現在も圧倒的に多く、それはそれでよいことだと思うが、主としてクラシック、ポップ、ロックなどは相変わらず男女別無く愛好家は多く、そしてミュージシャンも同様であるが、ジャズとなるとちょっと様相が異なる。ミュージシャンは男性が多く、ただしヴォーカリストは圧倒的に女性。そしてリスナーとしての愛好家は男性が圧倒的に多い。そんなためか、この寺島靖国の選曲によるオムニバス・アルバムにおいても全14曲全て女性ヴォーカルものだ。こんな偏った世界はそうも無いと思いつつ、私自身もその仲間の一人として何時も変な世界だと思いつつ聴いているのである。
さて今年も13人の女性ヴォーカリストの登場だ。
ライナー・ノーツを見ると、寺島靖国に言わせると、このCDの特徴は「未知の歌手が未知の曲を歌うことによって"曲を読みがえらせる"といったところにあるのです」と言っている。確かにこのシリーズのアルバムで知った歌手も多かった。そしてその愛好家になったという経過もあった。しかしちょっと残念なのは、このところ若干その威力も低下したのではと・・・・思うのだが、それは私の気のせいか、いずれにしても今回の紹介をざっとみると私が聴いてきたアルバムからの選曲が13人中8人と、どうも個人的に新鮮味がなかったという処であった。もう少し世界各国を深堀していてくれると個人的には有難いのだが。
<Tracklist (曲名/歌手)>
1 The Thrill Is Gone / Carme Canela & Joan Monne *
2 The Windmills of Your Mind / Vivian Buczek
3 A Cottage for Sale / MOON haewon with Tsuyoshi Yamamoto *
4 (Sittin' On) The Dock of the Bay / Inger Marie *
5 Embraceable You / Caity Gyorgy *
6 I Get Along Without You Very Well / Clare Teal
7 Fragile / Sacha
8 The Look of Love / Denise Donatelli *
9 April in Paris / April Varner
10 Blame It on My Youth / Cajsa Zerhouni *
11 Reverie / Nicole Zuraitis *
12 They Long to be Close to You / Diana Panton *
13 From This Moment On / Naama Gheber
14 I'm a Fool to Want You / Naama Gheber
(*印 : このブログ「灰とダイアモンドと月の裏側の世界」で過去に取り上げたアルバムからの曲=詳しくはそちらを参考に(左下の検索利用))
収録曲は13人の14のアルバムから14曲だ。しかしこうして聴いてみるとM1."The Thrill Is Gone "のCarme Canela(上左)とか、M4."The Dock of the Bay" のInger Marieと(近作は『Five Minutes』(STUD23082, 2024))か、M8."The Look of Love "のDenise Don atelli (上左から2番目)のベテラン組がやっぱりしっとり感もあって、中でも出色ですね。新人はもっと頑張れというところか。
そしてこのブログでかって取り上げたアルバムは8枚に及んでいた。そしてそれは若干発売も古くなっている。ただ珍しく最も新しいアルバムからは、M12." They Long to be Close to You"で、つい先日取り上げた『Soft Winds and Roses 』(FSPC-1001)(上右)からだ、彼女Diana Pantonも、もう20年のキャリアになるのだが誠実感があってよい、そしてまだ若い。
M10."Blame It on My Youth"のスウェーデンのCajsa Zerhouni(上右から2番目)を取り上げてくれたのは私としては喜んでいる。彼女はデビュー6~7年という処だが、充実感の味は十分だ。
M3."A Cottage for Sale"の山本剛のピアノとのデュオのMoonは韓国のポピュラーからジャズ転向組だが、もともと歌はうまかったので、今後益々ジャズで頑張ってほしいところ。
寺島氏はM.13"From Moment On" 、M.14" I'm a Fool to Want You"のNaama Gheberに入れ込んでいるようだが、高音域が特徴あって今後の期待株か。
まあ、ジャズ界のヴォーカルは昔は男性もフランク・シナトラなど代表に頑張っていたのだが、このところ元気がない。ジャズそのものの方向が女性にもう少し理解され愛されて頂かないと、という処なのかもしれない。
ジャズって、なんとなく一日の仕事や行事が一段落して、ほっとした時間帯の癒しと明日のエネルギーの為と言った性格がどうしても感じられての事だろうか、いまやジャズというジャンルはこれほど不明確な分野も無いくらいに広がっている。この寺島靖国のシリーズにはオーディオに特化したシリーズもあるように、ジヤズとオーディオというのも切って話すことの難しいところにあるが、その世界にも女性の進出がもうすこしあると又いろいろな様相が変わるのかもしれない。
いずれにしてもこのシリーズは、人気はそれなりにあると思うので、今後の健闘を期待したい。
(評価)
□ 選曲 87/100
□ 録音(全体的に) 87/100
(試聴
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