ボボ・ステンソン

2018年6月25日 (月)

(検証シリーズ)ボボ・ステンソン・トリオBobo Stenson Trio検証 アルバム「Serenity」

フリー・ジャズの世界から・・・・何が生まれたか?

Contralaindw_2  このホボ・ステンソン・トリオ(スウェーデン)は、今年久々にリリースされた『Contra La indecisión』ECM2582 5786976)(→)が素晴らしかった。そして既に過去に聴いていた二作『Reflections』(1993)、『Goodbye』(2005)を参考に、今年1月にここで感想を少々書いたのだが、この歴史あるトリオを、もう少し聴き込んでみよう思った次第。

 もともと私はアルバムを一枚の作品として聴くタイプであるので、ライブものは避けることが有り、その為聴き逃していたモノがある。しかし考えて見ると、ライブものが意外にそのトリオのその姿を如実に示すと思い、過去の8枚のアルバムの中で、2000年リリースの2枚組ライブ・アルバム『Serenity』を、ここで今になってアプローチしたのである。

<Jazz>

Bobo Stenson Trio 「Serenity」
ECM / GERM / ECM 1740/41 / 2000

Serenity

Recorded April 1999 at HageGrden Music Center, Brunskog, Sweden
Recording Engineer : Åke Linton

Bobo Stenson : piano
Anders Jormin : double-bass
Jon Christensen : drums

12012 スウェーデンの人気ベテラン・ピアニスト、ボボ・ステンソン(1944-)のリーダー・アルバム。アンデルス・ヨルミンとヨン・クリステンセンによるレギュラー・トリオ作品。ライブ演奏盤だが、そこにみるは、インプロを交えての濃密なインタープレイが楽しめるフリー・ジャズの一つの発展形、なかなかテンションも高い。録音も素晴らしくちょっとライブ盤とは思えない緻密性を感ずる。
 既にベテラン中のベテランとなっている彼であるが、この18年前のアルバムにてもその一つの形を作り上げている。もともとフリー・ジャズと言う分野になろうかと思うが、ここにはあまり実験性というものは感じない。もしろこのスタイルによってトリオが主張する北欧の音楽界に存在する芸術性の結晶をみる思いである。
 そして恐ろしいのは、なんとボボ・ステンソンの演ずるピアノの音には濁りというモノとは全く縁の無い透明感のある音であり、そこも痺れるところである。しかも全編”不思議な耽美な世界”が存在している。
 ECM盤の特徴である”静的な世界”は当然存在しているのだが、決して単なるそこに終わるので無く、結構スリリングなトリオとしてのエネルギッシュな交錯も展開しているのだ。

2000

 印象としては、このアルバム『Serenity』及びこの前後の『Reflections』、『Goodbye』の2アルバムを含めての2000年前後の3作は、今年のアルバム『Contra La indecisión』よりは、さすがにバリバリの活動期にあっただけに、その演奏の緊迫性は高い。これらを経過しての今年のアルバムを聴き込むと、成る程ボボ・ステンソンの年齢と共に構築されて来た人生観が見えてくるように思う。近作の方がどちらかというとソフトな美学が感じられ、過去のものには緊迫性の美学が感じられるのである。

Ajorminw オリジナル曲が主体のアルバムだが、ベーシストのアンデルス・ヨルミン(→)がいずれのアルバムにおいても多くの曲を提供しており、彼の役割の重さも忘れてはならないと思う。近年ではドラムス担当が変わっているが、彼の場合は現在まで長くこのトリオを支えている。
 又2枚のCDに収録されている19曲の中でも、特に評判通りWayne ShorterのM8."Swee Pea"の繊細なシンバル、そしてアルコ奏法ベースからから始まって、おもむろにピアノの語りへとの流れ、続くM9. "Simple & Sweet"(Disc1)のベースへの展開の辺りは痺れます。 又M8. " Serenity"(Disc2)のような静穏な世界も彼らの特徴に思う。 

(Tracklist)
Disc 1
1.  T 
2.  West Print 
3.  North Print 
4.  East Print 
5.  South Print 
6.  Polska Of Despair (II) 
7.  Golden Rain 
8.  Swee Pea 
9.  Simple & Sweet 
10.  Der Pfalaumenbaum 

Disc 2
1.  El Mayor 
2.  Fader V (Father World) 
3.  More Cymbals 
4.  Extra Low 
5.  Die Nachtigal 
6.  Rimbaud Gedicht 
7.  Polska Of Despair (I) 
8.  Serenity 
9.  Tonus


  このような北欧のフリー・ジャズ世界は独特の世界を持っていて、それはこの基礎にある北欧ならではのトラッドからの流れとクラシック音楽との融合から発展したジヤズ感覚によって構築されている”進歩的味わい”というものが存在すると思うのである。

(評価)
□ 演奏、曲  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★★☆

(参考視聴 1990年代 Bobo Stenson Trio)

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2018年1月29日 (月)

ボボ・ステンソンBobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

久しぶりに巨匠のピアノの世界に浮遊

<Jazz>
Bobo Stenson Trio 「Contra la indecisión」

ECM / Germ / ECM2582 5786976 / 2018

Contralaindw

Bobo Stenson (piano)
Anders Jormin (double bass)
Jon Fält (drums)

Bstriow

  しばらく聴いていなかったため、なにか懐かしい気持ちになって聴いているスウェーデンのピアニストの巨匠ボボ・ステンソンのトリオ最新作。過去のアルバムにみせた耽美で叙情詩的な世界を落ち着いた中に構築し、しかしフリー・ジャズのニュアンスのある彼ら独自のインプロをハイレベルで三位一体で展開してみせることも忘れていないアルバムとなっている。この浮ついたところのない静かな世界は、新年の新たな出発にぴったりのアルバムだ。

Bobo_stensonw2(Tracklist)
1. Canción Contra La Indecisión (Silvio Rodriguez)
2. Doubt Thou The Stars (Anders Jormin )
3. Wedding Song From Poniky (Béla Bartók)
4. Three Shades Of A House (Anders Jormin )
5. Élégie (Erik Satie)
6. Canción Y Danza VI (Frederic Mompou)
7. Alice (Bobo Stenson )
8. Oktoberhavet (Anders Jormin )
9. Kalimba Impressions (Bobo Stenson, Anders Jormin, Jon Fält)
10. Stilla(Anders Jormin )
11. Hemingway Intonations(Anders Jormin )

 さて収録曲は上のようなところ。7曲は彼らのオリジナル(ベーシストのアンデルス・ヨルミンAnders Jormin はなんと5曲、ボボ・ステンソンBobo Stenson は1曲、トリオ3人での1曲)で、その他はサティ、バルトークのほかモンポウなどの曲がお目見えするが、意外やキューバのシルヴィオ・ロドリゲスの曲(アルパム・タイトル曲)が冒頭に登場する。
 とにかく、全てを知り尽くしたと言えるベテランのボボ・ステンソンのピアノには、静謐な美しさと共に乱れのない彼の築く空間の世界が厳然とこのアルバムにも構築されている。しかし今回も私は過去のアルバムから感じているところだが、ベーシストのヨルミンの果たしている役割が意外に大きいと思っているのだが・・・。

 M1. "Canción Contra La Indecisión"、ボボ・ステンソンの美しく思いの外明るいピアノのメロディーが展開。 
 M3. "Wedding Song From Poniky"は、 Béla Bartókの曲で、特にピアノの調べは、このアルバムでもピカイチの美しさにしばし我を忘れる。
 M2. "Doubt Thou The Stars"、 M8. "Oktoberhavet"などヨルミンによる曲では、彼のアルコ奏法に織り交ぜてのシンバルの繊細な響きも加わった美しい世界で、なかになか深遠で聴き応えある。
 M7. "Alice"は、ステンソンの曲だが、彼の特徴の一つでもあるECM的空間にフリー・ジャズとも言える世界を展開している。繊細なシンバルの響き、メロディというよりは静寂な空間を描くピアノの音、こうした味付けは過去にも見られた手法である。そしてこの曲と同時に、その後の3者によるM9. "Kalimba Impressions"も、そこにはトリオのインプロヴィゼーションによる静かな中に描くスリリングなインタープレイの味が聴き所だ。
 M10. "Stilla"は、彼らのジャズ心をトリオのそれぞれの味を交錯させての見事なアンサンブルを演じた1曲。

Reflectionsw_2 私は思い起こせば、ボボ・ステンソンを最初に聴いたのは、1996年のECM盤アルバム『Reflections』(ECM/ECM1516)(右上)であったかも知れない。あのアルバムは、美しさの漂う曲と共に、決して軟弱でない彼らの凜々しさを感じたアルバムであった事を思い出す。
 その後ニューヨークに進出してのドラマーにポール・モチアンを迎えてのこれもECM盤『Goodbye』(2005年リリース、2016年再発ECM/UCCU-5753)(右下)あたりは、その取り合わせに驚きつつもGoodbyew
キース・ジャレットとは又違った北欧の臭いのするフリー・ジャズの流れに感動して聴いたのだった。

 この今回のアルバムは、過去のものとの比較では、フリージャズの実験性の色合いは減少していて、ボボ・ステンソンの野心性は後退してはいるが、やはり美しさの中に描くハイレベルの空間の美はお見事と言わざるを得ない。

(参考)Bobo Stenson
 1944 年、スウェーデン出身。音楽一家に育つ。 10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねたようだ。 1970 年代には盟友ヤン・ガルバレクと共にカルテットで活動を開始、この頃は私はあまりマークして居らず、当時の作品は歴史的名盤と言われているが実のところ聴いていない。1971 年にはアリルド・アンデルセンとヨン・クリステンセンを迎え、自己のトリオを結成。 その後、トーマス・スタンコ、チャールズ・ロイドなどのグループにも参加。現在は、トリオとしてアンデルス・ヨルミンとヨン・フェルトと活動を続けている。このトリオは、北欧の自然をイメージする音楽的空間を描きつつ、音楽をプログレッシブな感覚で構築する現代最高のアンサンブルとして尊敬を集めていると言うのだ。ステンソンは既に70歳を越えており、キース・ジャレットと双璧をなす北欧の巨匠とされている。 

<Bobo Stenson Discography>
Underwear (ECM, 1971)
Reflections (ECM, 1993)
War Orphans (ECM, 1997)
Serenity (ECM, 1999)
Goodbye (ECM, 2005)
Cantando (ECM, 2007)
Indicum (ECM, 2012)
Contra la indecisión(2018)

The Sounds around the House, Piano Solo (Caprice Records, 1983)
Very Early (Dragon Records, 1987)
Solo Piano (La Sensazione, 1999)

(視聴)

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