(検証シリーズ)ボボ・ステンソン・トリオBobo Stenson Trio検証 アルバム「Serenity」
フリー・ジャズの世界から・・・・何が生まれたか?
このホボ・ステンソン・トリオ(スウェーデン)は、今年久々にリリースされた『Contra La indecisión』(ECM2582 5786976)(→)が素晴らしかった。そして既に過去に聴いていた二作『Reflections』(1993)、『Goodbye』(2005)を参考に、今年1月にここで感想を少々書いたのだが、この歴史あるトリオを、もう少し聴き込んでみよう思った次第。
もともと私はアルバムを一枚の作品として聴くタイプであるので、ライブものは避けることが有り、その為聴き逃していたモノがある。しかし考えて見ると、ライブものが意外にそのトリオのその姿を如実に示すと思い、過去の8枚のアルバムの中で、2000年リリースの2枚組ライブ・アルバム『Serenity』を、ここで今になってアプローチしたのである。
<Jazz>
Bobo Stenson Trio 「Serenity」
ECM / GERM / ECM 1740/41 / 2000
Recorded April 1999 at HageGrden Music Center, Brunskog, Sweden
Recording Engineer : Åke Linton
Bobo Stenson : piano
Anders Jormin : double-bass
Jon Christensen : drums
スウェーデンの人気ベテラン・ピアニスト、ボボ・ステンソン(1944-)のリーダー・アルバム。アンデルス・ヨルミンとヨン・クリステンセンによるレギュラー・トリオ作品。ライブ演奏盤だが、そこにみるは、インプロを交えての濃密なインタープレイが楽しめるフリー・ジャズの一つの発展形、なかなかテンションも高い。録音も素晴らしくちょっとライブ盤とは思えない緻密性を感ずる。
既にベテラン中のベテランとなっている彼であるが、この18年前のアルバムにてもその一つの形を作り上げている。もともとフリー・ジャズと言う分野になろうかと思うが、ここにはあまり実験性というものは感じない。もしろこのスタイルによってトリオが主張する北欧の音楽界に存在する芸術性の結晶をみる思いである。
そして恐ろしいのは、なんとボボ・ステンソンの演ずるピアノの音には濁りというモノとは全く縁の無い透明感のある音であり、そこも痺れるところである。しかも全編”不思議な耽美な世界”が存在している。
ECM盤の特徴である”静的な世界”は当然存在しているのだが、決して単なるそこに終わるので無く、結構スリリングなトリオとしてのエネルギッシュな交錯も展開しているのだ。
印象としては、このアルバム『Serenity』及びこの前後の『Reflections』、『Goodbye』の2アルバムを含めての2000年前後の3作は、今年のアルバム『Contra La indecisión』よりは、さすがにバリバリの活動期にあっただけに、その演奏の緊迫性は高い。これらを経過しての今年のアルバムを聴き込むと、成る程ボボ・ステンソンの年齢と共に構築されて来た人生観が見えてくるように思う。近作の方がどちらかというとソフトな美学が感じられ、過去のものには緊迫性の美学が感じられるのである。
オリジナル曲が主体のアルバムだが、ベーシストのアンデルス・ヨルミン(→)がいずれのアルバムにおいても多くの曲を提供しており、彼の役割の重さも忘れてはならないと思う。近年ではドラムス担当が変わっているが、彼の場合は現在まで長くこのトリオを支えている。
又2枚のCDに収録されている19曲の中でも、特に評判通りWayne ShorterのM8."Swee Pea"の繊細なシンバル、そしてアルコ奏法ベースからから始まって、おもむろにピアノの語りへとの流れ、続くM9. "Simple & Sweet"(Disc1)のベースへの展開の辺りは痺れます。 又M8. " Serenity"(Disc2)のような静穏な世界も彼らの特徴に思う。
(Tracklist)
Disc 1
1. T
2. West Print
3. North Print
4. East Print
5. South Print
6. Polska Of Despair (II)
7. Golden Rain
8. Swee Pea
9. Simple & Sweet
10. Der Pfalaumenbaum
Disc 2
1. El Mayor
2. Fader V (Father World)
3. More Cymbals
4. Extra Low
5. Die Nachtigal
6. Rimbaud Gedicht
7. Polska Of Despair (I)
8. Serenity
9. Tonus
このような北欧のフリー・ジャズ世界は独特の世界を持っていて、それはこの基礎にある北欧ならではのトラッドからの流れとクラシック音楽との融合から発展したジヤズ感覚によって構築されている”進歩的味わい”というものが存在すると思うのである。
(評価)
□ 演奏、曲 ★★★★★☆
□ 録音 ★★★★★☆
(参考視聴 1990年代 Bobo Stenson Trio)
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