ビル・ギャロザース

2018年10月29日 (月)

聴き落としていたアルバム(5) ~ ビル・キャロザースBill Carrothers 「CASTAWAYS」

*この「聴き落としていたアルバム」シリーズは、諸々の事情で遅まきながら聴いたところ、なかなかの聴きどころのあったものを取りあげている~~~

内省的な抒情性が支配するピアノ・トリオ盤

<Jazz>

Bill Carrothers 「CASTAWAYS」
PIROUET / Germany / PIT3067 / 2012

Castaways

Bill Carrothers (p)
Drew Gress (b)
Dre Pallemaerts (d)
All Tunes by Bill Carrothers except "Siciliano"by J.S.Bach

List ビル・キャロザースのピアノの響きは何処か内省的というか、心に訴えてくると言うか、そんなところが魅力である。
 名盤と言われるアルバムBill Carrothers 『After Hours Volume 4』 (Go Jazz Records/GO 6037 2)や、Dave King with Bill Carrothers『I've been ringing you』 (Sunnyside Communications/SCC 1336)を聴いての感動により、もう少し更にというところで2012年リリースのこのアルバムに手を付けてみたのである。

 このアルバムは先日取りあげたDave Kingのアルバム『I've been ringing you』と期を一にして同年のリリース。こちらは彼のリーダー・ピアノ・トリオものである。  これが又期待を裏切らない。

Bc

 M2."Siciliano" 、このアルバムでは唯一カヴァーでJ.S.Bachの曲だ(BWV1053)。これがピアノ・ソロの美旋律で始まり、それを支えるが如くのブラシによるドラムス・プレイ、更にベースも美しい情景を奏でる。この抒情的美しさは素晴らしい。これが彼の真髄でもある。
 そしてそれはM5."Araby"も同様に非常に内省的とも言える世界が美しく展開する。
 M3."Trees"は、トリオそれぞれがゆったりとした演奏で、その音の余韻を生かしての美が漂う曲。
 又"Scottish Suite"は、まさにクラシックの延長線上にある感覚で、ジャズを織り込みながらもそれを超越した感覚になる組曲。

                           *         

 とにかくピアニスト Bill Carrothersが、Drew Gress(b)とDre Palleamaerts(ds)のメンバーをそろえて自己の世界を思うがままに演じたアルバムという印象だ。そこには彼独特の内省的とも言える世界が聴く者に共感を呼ぶが如く構築されている。
  私のお気に入りはM2."Siciliano"あった。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音   ★★★★☆

(My Image Photo)

Dsc04721trw
Sony ILCE-7M3, FE 4/24-105 G OSS,  PL

(試聴)

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2018年10月17日 (水)

聴き落としていたアルバム(4)~デイブ・キングDave King Trio「I've been ringing you 」

*この「聴き落としていたアルバム」シリーズは、諸々の事情で遅まきながら聴いたところ、なかなかの聴きどころのあったものを取りあげている~~~

まさにミステリアスな深遠な世界だ!!

<Jazz>
Dave King with Bill Carrothers & Billy Peterson
「I've been ringing you 」

Sunnyside / USA / SSC1336 / 2012


Davekingw_2

Dave King (ds cymbals & waterphone on "goodbye")
Bill Carrothers (p)
Billy Peterson (b)

 THE BAD PLUSそして HAPPY APPLEのドラマーであるデイブ・キングが結成したピアノ・トリオ"Dave King Trio" のアルバムだ。
  既にリリースしてから数年経ているが、今年リリースされた寺島靖国のコンピュレーション・アルバム『For Jazz Drumms Fans Only Vol.2』(Terashima Records/TYR-1068/2018)に取りあげられ私は注目した。今更ながらアルバム全編を聴いて感動している。

800pxdave_king_drummer2 デイブ・キングDavid(Dave) King(→)は、ミネアポリス出身の1970年生まれで、目下ミュージシャンとしては脂がのっている。フリー・ジャズの激しさを持つThe Bad Plus (with Reid Anderson and Ethan Iverson)のトラマーとして彼は名を知らしめている。


(Tracklist)
1 goodbye
2 lonely woman
3 so in love
4 autumn serenade
5 if i should lose you
6 people will say we’re in love
7 this nearly was mine
8 i’ve been ringing you

 このアルバム、USAと言えどもなんとECM風というか、まさにユーロ系が得意とすやや暗めにして、哲学的に迫ってくる世界を持っている演奏なのだ。それはミステリアスであるにも関わらず、しかも不思議な安らぎ感を生むという私にとってはたまらない一枚。
Billcarrothers2w この重要因子は、以前にもここで取りあげたことのあるピアニストのビル・キャロザースBill Carrothers(→)による効果も大きいと踏んでいるが、収録曲目はスタンダードが中心であるが、その描き方には驚異を感ずるのである。

  M1 "goodbye" はっきり言えば、完全に私の好みの方に期待を裏切ってくれた。デイブのドラムスがドスンと来るかと思いきや、優しいブラシ奏法に、ピアノ、ベースが静かに十分間をとって余韻を残しての演奏よる静かな水面を描くがごとき深遠な世界。
  M3. " so in love" Cole Porterの曲だが、スタートはドラムスの音で始まるも、ややスローに展開し、ここまで心に深く染み込む演奏も希有である。
 M4. "autumn serenade"は如何にもこの初秋にぴったりの気分を描いてくれる。
 M6. "people will say we’re in love"が唯一やや激しさのドラムスが響くが、このアルバムの頂点ともなる役を果たし、メリハリをつけての快演。

 驚きは、Bad Plusの”破壊的ドラマー”と言われるデイブ・キングが、ピアノにビル・キャロザース、ベースにビリー・ピーターソンというトリオを構成したのは、如何にして何を目指して結合したのか解らないのだが、ここまで意気投合してミステリアスにして深遠、哲学的世界を描くに至るのか、その過程には興味を抱かざるを得ない程である。
 いずれにしてもビル・キャロザース効果は絶大であること、そして録音もリアルで楽しめる。いっやー、しかし良いアルバムに出会ったものだ。完全に私のお気に入りアルバムに登録だ。

(参考) (ネットにみる紹介文)
David King (born June 8, 1970) is an American drummer and composer from Minneapolis. He is known for being a founding member of the jazz groups The Bad Plus (with Reid Anderson and Ethan Iverson) and Happy Apple (with Michael Lewis and Erik Fratzke) although he is active in many other projects including free jazz collective Buffalo Collision with NYC "Downtown" musicians Tim Berne and Hank Roberts and the electronic art/pop group Halloween Alaska as well as the noise/prog band The Gang Font with former Hüsker Dü bassist Greg Norton.            

(評価)
□ 演奏 ★★★★★
□ 録音 ★★★★★☆

(My Image Photo)
Dsc03500trw
Sony ILCE-7M3,  Zeiss Vario-Tessar FE 4/16-35 ZA OSS, PL

(視聴)

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2017年9月27日 (水)

ビル・キャロザーズBill Carrothersの名盤「after hours Volume 4」

都会の夜を描くジャズを演ずる

<Jazz>
Bill Carrothers 「after hours Volume 4」
Go Jazz Records / Germany / GO 6037 2 / 2002

Afterhours

Bill Carrothers(p)
Billy Peterson(b)
Kenny Horst(ds)

Recording : Steve Wiese at Creation Audio (1998)

  ビル・キャロザーズBill Carrothers(1964年、米国ミネソタ州生まれ) の90年代末期の名盤『after hours Vol.4』をあらためて聴くことになった。それも前回紹介の寺島靖国によるアルバム『FOR JAZZ DRUMS FANS ONLY vol.1』に、近年リイシューされたこのアルバムからの聴き慣れたC.Porterの曲”My Heart Belong To Daddy”が納められていて、なかなかの名演奏、そして名録音、うーんこれは是非この曲を納めたアルバムを聴いてみたいと言うことになったのだ。(この曲はBill Carrothers Trio (Gary Peacock & Bill Stewart)として全く別の演奏もあるが、私の好みからは断然こちらに軍配を挙げる)

 これは夜中から明け方にかけて録音するというちょっと珍しいシリーズものであって、これは4作目。それもリリースされた1999年当時はなかなかの評価を勝ち取っている。時間が時間のためか、とにかくキャロザーズの力みなのないそして都会の夜を見事に演じた一枚である。
 実はこのアルバムは3回のリリースを経てきている(1999,  2002,  2014)人気盤。私が今回手に入れたのは2回目の2002年リリースものだ。

Bc1
Setlist
1 In The Wee Small Hours 3:40 
2 On Green Dolphin St. 7:15 
3 On Green Dolphin St. (Reprise) 2:58 
4 For Heaven's Sake 6:20 
5 Chelsea Bridge 5:38 
6 It's Easy To Remember 3:56 
7 My Heart Belongs To Daddy 7:15 
8 Lost In The Stars 4:12 
9 A Flower Is A Lovesome Thing 5:45 
10 P.S. I Love You 5:47 
11 Young And Foolish 4:29 
12 For All We Know 4:46 

 やはり全編After Hoursのムードがたっぷりで私好み。とにかく洗練されたピアノ・トリオ・ジャズを都会の夜の世界に身を置くがごとく、しっとりと聴くことが出来る。
 そして録音が又良いのだ。ただクリアーにしてリアルな音のみを追求するというのでなく、曲としての仕上げを十分意識した適度なリアル感と音の余韻、更に楽器の配置と音の広がりなどが優れているため、実に気分良く聴ける。これはまさにミュージックを考えての録音である。

 演奏面の技術的な高さとセンスの良さも素晴らしい。M1." In The Wee Small Hours" は、スタートに相応しく流れるが如くのピアノの調べ、これが余韻のあるクリアー・サウンドで迫ってくる。その響きは優しさに満ちあふれている。そしてベース、ドラムスがバックから見事に支える演奏とサウンドで曲の厚みを作り上げる。そしてこの流れは続く曲群に置いても見事な抑揚を持って迫り、シンバル音の配置、ドラムスの適度なリズム構成、ベースの語りと楽しませて入れる。
 M.2, M,3 の2曲の"On Green Dolphin St."そしてM.4 "For Heaven's Sake"
 では、三者の音の夜を描く余韻に魅了される。M.6 "It's Easy To Remember"は思索の世界。 
 お目当ての特にM.7 "My Heart Belongs To Daddy"M. 
8 "Lost In The Stars"  等のピアノのタッチの優しさは絶妙そのもの。M.11 "Young And Foolish "のベースの語りと、ドラムスの攻めも一つの聴きどころ。

 こうしてアルバム12曲を通して聴くと、このトリオのセンスの良さがしみじみと感じられるのである。いやはやこうした名盤は再発を繰り返すのはよく解るところだ。

(試聴)

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