アンヌ・デュクロ Anne Ducros 「SOMETHING」
スタンダード曲を自己の世界に歌い上げるベテラン・ヴォーカル
<Jazz>
Anne Ducros, Adrien Moignard, Diego Imbert 「SOMETHING」
SUNSET RECORDS / IMPORT / SUN29 / 2020
Anne Ducros - Vocal
Adrien Moignard - Guitar
Diego Imbert - Double Bass
フランスのアンヌ・デュクロAnne Ducros(アン・デュクロとも言われている)の最新アルバム。彼女をここで取り上げたのはもう6年前で、アルバム『Either Way from Marilyn to Ella』(NJ623611/2013)であった。彼女は1959年生れですから、もうなかなかのベテランで、当時も落ち着いたオーソドックスなヴォーカルに評価を付けていたのを思い出す。私にとっては久しぶりのアルバムで興味深く聴いたというところであった。
このアルバムはスタンダードを歌い上げているが、ベース、ギターのみのバックであり、それだけでも彼女のヴォーカルの占める位置の大きさが解る。
(Tracklist)
1. The Very Thought of You
2. Something
3. Estate
4. Honeysuckle Rose
5. I Didn't Know What Time It Was
6. Nuages
7. Samba Saravah
8. I Thought About You
9. April in Paris
10. Your Song
11. Tea for Two
12. The Good Life
かってチック・コリア(p)などとの共演作で話題を呼んだ彼女であり、ウィーン国際ジャズ・コンクールでも優勝したことがあるという、そんな経歴からもベテラン実力派のヴォーカリストということがうかがい知れるところである。
スタートM1."The Very Thought of You"、そして ビートルズ1969年の「アビイ・ロード」ナンバーのM2." Something"のアルバム・タイトル曲と、静かなギターをバックに手に取るように聴けるしっとりとバラード歌を展開。それは誰をも心から包む魅力を発揮。
そして圧巻はなんとM3."Estate"だ。これは多くのミュージシャンが取り上げているイタリアのブルーノ・マルティーノの曲で、私の好きな曲だけに注目度は高かったのだ。それがやはり静かにゆったりとしたバックのギター、ベースに彼女の編曲を凝らした展開を歌い上げる。特に中盤以降は彼女独自のオリジナル曲風に語り調を交えて歌い、いやはや暦年の実力派を知らしめる。
M6."Nuages"も古い曲ですね、超スロー編曲でいやはや引き込まれますね。そしてM7." Samba Saravah"サンバも登場して雰囲気を明るくし、アルバムを通して聴いているものに変化を与える。
M11."Tea for Two"の編曲も凄いですね、ハイテンポでギター・プレイと共に変調展開。こりゃ全く別の曲ですね
M12."The Good Life"、アルバム最後曲らしく先への展開を夢見るグッバイである。
久しく聴かなかったアンヌ・デュクロ、その健在ぶりを十分知ることが出来たアルバムであった。しかしスタンダード曲カヴァーと言っても、彼女の歌には往年の経歴によって培われた編曲の技が滲み出ていてオリジナル曲を聴いている感覚にもなる程であった。もう60歳を超えている彼女であるだけにその意味深な歌い舞わしも十分聴く価値があるアルバムである。
(評価)
□ 編曲・歌・演奏 : ★★★★☆ 85/100
□ 録音 : ★★★★☆ 80/100
(試聴)
"Something"
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